説明

摩擦圧接装置

【課題】各ボールねじ側からの推力の差が小さい推力機構を有する摩擦圧接装置を提供する。
【解決手段】摩擦圧接装置1であって、保持台3を移動させて一対のワークを押し当てる推力機構4を有し、推力機構4は、推力用モータ4aと、複数のボールねじ軸4b1,4c1と、複数のナット4b2,4c2と、各ナット4b2,4c2と保持台3の間に設けられる複数の推力液圧器5,6を有する。各推力液圧器5,6は、保持台3側に取付けられるシリンダ5a,6aと、ナット4b2,4c2側に取付けられるピストン5b,6bを有し、ピストン5b,6bがシリンダ5a,6a内の液圧によってシリンダ5a,6aに対して推力を発生可能に連結される。推力液圧器5,6の間には、シリンダ5a,6a内の液圧を補正することで各推力液圧器5,6によって保持台3を押す力の差を小さくする補正器7が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のワークを相対回転させつつ押し当てることで一対のワークを摩擦圧接する摩擦圧接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦圧接装置は、一般に、一対のワークを保持する一対の保持台と、ワークの一つを回転させる主軸モータと、保持台の一つを移動させて一対のワークを押し当てる推力機構を有している。従来の推力機構は、例えば、推力用モータと、その推力用モータによって作動する一対のボールねじを備えている(特許文献1参照)。また従来、一つのボールねじと、ボールねじと保持台の間に生じる実推力を測定するロードセルを有し、ロードセルからの検知信号に基づいて推力用モータを制御する推力機構も知られている。この機構によると、所望の推力を確実に得ることができる(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−113379号公報
【特許文献2】特開平9−141454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし複数のボールねじを備える推力機構の場合、ボールねじのねじピッチ差等によって生じるリード差や、ボールの転がり抵抗等によって生じる伝達効率差によって各ボールねじによって発生する推力に差が生じる場合があった。そのため精度良く摩擦圧接ができないという問題があった。そこで各ボールねじにロードセルを設けて、各ボールねじを各推力用モータによって制御する方法も考えられ得る。しかしながらこの構成にすると、コスト高または大型になるという問題が生じてしまう。そこで本発明は、複数のボールねじを備え、かつ各ボールねじ側からの推力の差が小さく、かつ安価に構成され得る推力機構を有する摩擦圧接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える摩擦圧接装置であることを特徴とする。すなわち請求項1に記載の発明によると、推力機構は、一つの推力用モータと、その推力用モータによって軸回転する複数のボールねじ軸と、各ボールねじ軸に螺合される複数のナットと、各ナットと一つの保持台との間に設けられる複数の推力液圧器を有している。推力液圧器は、それぞれナット側または保持台のいずれか一方側に取付けられるシリンダと、いずれか他方側に取付けられるピストンを有し、該ピストンがシリンダ内の液圧によってシリンダに対して推力を生じさせるように連結されている。そして複数の推力液圧器の間には、各推力液圧器のシリンダ内の液圧を補正することで各推力液圧器によって保持台を押す力の差を小さくする補正器が設けられている。
【0005】
したがって推力用モータによって複数のボールねじ軸が軸回転し、ボールねじ軸とナットの間に推力が生じる。そして各ボールねじ軸側からの推力に差が生じると、推力液圧器のシリンダ間に液圧差が生じる。そして補正器によって推力液圧器内の液圧が補正されて、各推力液圧器によって保持台を押す力の差が小さくなる。そのため保持台は、各推力液圧器側から略均等の力を受け得る。かくして精度良く摩擦圧接をすることができる。また複数のボールねじ軸を一つの推力用モータによって軸回転させる構成であるために、複数の推力用モータによって複数のボールねじ軸を軸回転させかつ制御する構成等に比べて安価かつ小型に構成され得る。
【0006】
請求項2に記載の発明によると、ボールねじ軸は、推力液圧器を貫通している。したがってボールねじ軸と推力液圧器を並設させた構成等に比べて、推力機構を小型にすることができる。
【0007】
請求項3に記載の発明によると、補正器は、推力液圧器のシリンダとピストンから交互に突出する凸部によってシリンダ内に仕切られた第一〜第三の液圧室と、一つのシリンダの第一の液圧室と他のシリンダの第三の液圧室とを連通する第一の連通路と、一つのシリンダの第三の液圧室と他のシリンダの第一の液圧室とを連通する第二の連通路を有している。したがってシリンダ内の第一と第三の液圧室は、それぞれ他のシリンダ内の第三と第一の液圧室と同じ液圧になる。そして第一の液圧室と第三の液圧室の液圧は、同じ方向にシリンダとピストン間に力を発生させる。そのため一対の推力液圧器から発生する力は、ほぼ同じになり、一対の推力液圧器が保持台を押す力がほぼ等しくなる。
【0008】
請求項4に記載の発明によると、補正器は、推力液圧器のシリンダとピストンから交互に突出する凸部によってシリンダ内に仕切られた第一と第二の液圧室と、一つのシリンダの第一の液圧室と他のシリンダの第一の液圧室との液圧差を利用して一つのシリンダの第二の液圧室と他のシリンダの第二の液圧室との間に液圧差を形成する差圧発生器を有している。したがって差圧発生器は、第一の液圧室の液圧を利用して第二の液圧室の液圧を調整するために簡便な構造になる。そして差圧発生器によって一対の推力液圧器によって保持台を押す力を調整することができる。
【0009】
請求項5に記載の発明によると、差圧発生器は、一対の推力液圧器のシリンダの第一の液圧室間の液圧差を差圧ピストンの推力に変換する第一の補正液圧器と、差圧ピストンと連動する連動ピストンを備え該連動ピストンの推力によって液圧差を形成する第二の補正液圧器を有している。そして第二の補正液圧器で形成した液圧差によって一対の推力液圧器のシリンダの第二の液圧室間に液圧差を形成する。したがって第一と第二の補正液圧器によってシリンダの第二の液圧室の液圧を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施の形態1)
実施の形態1を図1〜4にしたがって説明する。摩擦圧接装置1は、図1に示すようにベッド9と、ベッド9に移動不能に取付けられる第一の保持台2と、ベッド9にスライド可能に取付けられる第二の保持台(主軸ユニット)3を有している。第一の保持台2は、第一のワークW1を把持するクランプ2aを有している。
【0011】
第二の保持台3は、図1に示すように一端部に第二のワークW2を把持するチャック3aを有している。第二の保持台3の他端部には、主軸モータ8aを有する主軸モータ体8が取付けられる。主軸モータ体8と第二の保持台3の間には、主軸モータ8aからの動力をチャック3aに伝達して、第二のワークW2をチャック3aとともに軸回転させる動力伝達機構が設けられている(図示省略)。第二の保持台3の上下部には、ベッド9に形成されたレール9a,9bにスライド可能に装着されるガイド部3c,3dが設けられている。
【0012】
摩擦圧接装置1は、図1に示すように第二の保持台3を第一の保持台2に向けてスライドさせる推力機構4を有している。推力機構4は、推力用モータ4aと、複数(例えば一対)のボールねじ4b,4cと、第一と第二の推力液圧器5,6を有している。推力用モータ4aは、ベッド9の一端部に設けられたモータブラケット9cに装着される。
【0013】
ボールねじ4b,4cは、図1に示すようにボールねじ軸4b1,4c1と、ナット4b2,4c2と、これらの間に転動可能に設けられる複数のボール(図示省略)を有している。ボールねじ軸4b1,4c1は、長軸棒状であって、外周面に雄ねじを有している。ボールねじ軸4b1,4c1の一端部は、モータブラケット9cに軸回転可能に支持され、他端部は、ベッド9の中央に設けられた中間ブラケット9d,9eに軸回転可能に支持される。ナット4b2,4c2は、雌ねじを有しており、雌ねじにボールねじ軸4b1,4c1が螺合される。
【0014】
図2に示すように各ボールねじ軸4b1,4c1の一端部には、滑車4fが取付けられる。滑車4fは、タイミングベルト4hを介してモータブラケット9cに設けられた滑車4gに連結される。そして滑車4gは、タイミングベルト4hを介して推力用モータ4aの出力軸と連結される。したがって推力用モータ4aによって複数(例えば一対の)ボールねじ軸4b1,4c1を同時に軸回転させることができる。
【0015】
ボールねじ軸4b1,4c1の他端部には、図1に示すようにタイロッド4j,4kが連結される。タイロッド4j,4kは、長軸棒状であって、一端部が中間ブラケット9d,9eに軸回転不能に取付けられ、他端部がベッド9の他端部に設けられたタイロッドブラケット9fに軸回転不能に取付けられる。したがって推力機構4によって発生する推力は、ボールねじ軸4b1,4c1とタイロッド4j,4kによって受け止められ得る。
【0016】
第一と第二の推力液圧器5,6は、ボールねじ4b,4cの推力差を調整する機器であって、図1,3に示すようにナット4b2,4c2と保持台3の間に設けられる。推力液圧器5,6は、シリンダ5a,6aとピストン5b,6bを有している。シリンダ5a,6aは、円筒状であって外周面の一部が第二の保持台3側に取付けられる。ピストン5b,6bは、シリンダ5a,6aに挿通され、一端部がナット4b2,4c2に相対回転不能に取付けられる。
【0017】
図3,4に示すようにピストン5bは、略円筒状であって、軸孔5b3にボールねじ軸4b1が挿通される。これによりボールねじ軸4b1は、推力液圧器5を貫通し、推力液圧器5と同軸状に配設される。シリンダ5aの内周面には、ピストン5bに向けて突出する第一と第二のシリンダ凸部5a1,5a2が形成されている。ピストン5bの外周面には、シリンダ5aに向けて突出する第一と第二のピストン凸部5b1,5b2が形成されている。シリンダ凸部5a1,5a2とピストン凸部5b1,5b2は、軸方向に交互に配設されている。そしてこれらの間には、補正器7の一構成部となる第一〜第三の液圧室5c〜5eが仕切られ、オイルなどの液体が封入される。
【0018】
第一〜第三の液圧室5c〜5eは、保持台3の進出方向に順に位置している。シリンダ凸部5a1,5a2は、それぞれピストン凸部5b1,5b2よりも保持台3の進出方向側に位置している。したがってシリンダ5aは、第一と第三の液圧室5c,5eの液体の液圧上昇によってピストン5bに対して進出方向に推力が生じる。第二の液圧室5dは、図示しないタンクに連通され、第一と第三の液圧室5c,5eからの液漏れを吸収するドレン室として機能させるのが望ましい。
【0019】
図3に示すように第二の推力液圧器6も、第一の推力液圧器5と同様に形成されており、第一〜第三の液圧室6c〜6e、第一と第二のシリンダ凸部6a1,6a2、第一と第二のピストン凸部6b1,6b2および軸孔6b3を有している。第一と第二の推力液圧器5,6の間には、補正器7が設けられている。
【0020】
補正器7は、シリンダ5a,6a内の液圧を補正する機器であって、図3に示すように第一と第二の連通路7a,7bを有している。第一と第二の連通路7a,7bは、保持台3内に、もしくは保持台3の外に設けられる。第一の連通路7aは、第一の推力液圧器5の第一の液圧室5cと、第二の推力液圧器6の第三の液圧室6eに開口してこれらを連通する。第二の連通路7bは、第一の推力液圧器5の第三の液圧室5eと、第二の推力液圧器6の第一の液圧室6cに開口してこれらを連通する。
【0021】
摩擦圧接装置1によって第一と第二のワークW1,W2を摩擦圧接する場合は、先ず、主軸モータ8aによって第二のワークW2を軸回転させる(図1参照)。そして推力機構4によって第二の保持台3を第一の保持台2に向けて移動させて、第二のワークW2を第一のワークW1に押当てる。これにより第一と第二のワークW1,W2の間に摩擦熱が生じ、その摩擦熱によって第一と第二のワークW1,W2が結合する。
【0022】
推力機構4によって推力を発生させる場合は、先ず、図3に示すように推力用モータ4aによって一対のボールねじ軸4b1,4c1を回転させる。これによりボールねじ軸4b1,4c1とナット4b2,4c2の間に推力F1,F2が生じる。そして推力F1,F2によって、推力液圧器5,6の第一の液圧室5c,6c内の液圧が上昇する。液圧室5cの液圧は、第一の連通路7aを介して推力液圧器6の液圧室6eに伝わって液圧室5c,6eの液圧が同じになる。液圧室6cの液圧は、第二の連通路7bを介して液圧室5eに伝わって液圧室5e,6eの液圧が同じになる。
【0023】
そのため推力F1,F2に差がある場合には、第一の液圧室5c,6c間に液圧差が生じる。しかし連通路7a,7bによって液圧室5cと液圧室6eが同じ液圧になり、かつ液圧室6cと液圧室5eが同じ液圧になる。そしてシリンダ5a,6aは、第一の液圧室5c,6cの液圧と、第三の液圧室5e,6eの液圧によってピストン5b,6bに対して進行方向に力を受ける。そのためシリンダ5a,6aが受ける進行方向の力がほぼ等しくなる。これによって第一と第二の推力液圧器5,6によって保持台3を押す力がほぼ等しくなる。
【0024】
以上のように推力機構4は、図3に示すように推力用モータ4aと、複数のボールねじ軸4b1,4c1と、複数のナット4b2,4c2と、複数の推力液圧器5,6と、補正器7を有している。
【0025】
したがって推力用モータ4aによって複数のボールねじ軸4b1,4c1が軸回転し、ボールねじ軸4b1,4c1とナット4b2,4c2の間に推力F1,F2が生じる。そして各ボールねじ軸4b1,4c1側からの推力F1,F2に差が生じると、推力液圧器5,6のシリンダ5a,6a間に液圧差が生じる。そして補正器7によって推力液圧器5,6内の液圧が補正されて、各推力液圧器5,6によって保持台3を押す力の差が小さくなる。そのため保持台3は、各推力液圧器5,6側から略均等の力を受け得る。かくして精度良く摩擦圧接をすることができる。また複数のボールねじ軸4b1,4c1を一つの推力用モータ4aによって軸回転させる構成であるために、複数の推力用モータによって複数のボールねじ軸を軸回転させかつ制御する構成に比べて安価かつ小型に構成され得る。
【0026】
またボールねじ軸4b1,4c1は、図3に示すように推力液圧器5,6に貫通される。したがってボールねじ軸と推力液圧器を並設させた構成等に比べて、推力機構4を小型にすることができる。
【0027】
また補正器7は、図3に示すように第一〜第三の液圧室5c〜5e,6c〜6eと、第一の連通路7aと第二の連通路7bを有している。したがってシリンダ5a内の第一と第三の液圧室5c,5eは、他のシリンダ6a内の第三と第一の液圧室6e,6cと同じ液圧になる。そして第一の液圧室5c,6cと第三の液圧室5e,6eの液圧は、同じ方向にシリンダ5a,6aとピストン6b,6b間に力を発生させる。そのため一対の推力液圧器5,6から発生する力は、ほぼ同じになり、一対の推力液圧器5,6が保持台3を押す力がほぼ等しくなる。
【0028】
また推力液圧器5,6および補正器7の液路は、図3に示すように閉じた系で構成されている。したがって推力液圧器5,6および補正器7は、簡易に構成され得る。
【0029】
(実施の形態2)
実施の形態2は、実施の形態1とほぼ同様に形成されている。しかし実施の形態2は、図3に示す推力液圧器5,6と補正器7に代えて、図5に示す第一と第二の推力液圧器11,12と補正器15を有している点において実施の形態1と相違している。以下、相違点を中心として実施の形態2について説明する。
【0030】
第一と第二の推力液圧器11,12は、図5に示すようにシリンダ11a,12aとピストン11b,12bを有している。シリンダ11a,12aは、第二の保持台3側に取付けられ、ピストン11b,12bは、ナット4b2,4c2側に取付けられる。ピストン11b,12bの軸孔11b3,12b3には、ボールねじ軸4b1,4c1が挿通される。シリンダ11a,12aは、シリンダ凸部11a1,12a1を有しており、ピストン11b,12bは、第一と第二のピストン凸部11b1,11b2,12b1,12b2を有している。交互に配設されたシリンダ凸部11a1,11a2,12a1,12a2とピストン凸部11b1,12b1の間には、補正器15の一構成部となる第一の液圧室11c,12cと第二の液圧室11d,12dが保持台3の進行方向に順に形成されている。
【0031】
補正器15は、図5に示すように第一と第二の補正液圧器13,14から構成される差圧発生器16を有している。第一と第二の補正液圧器13,14は、シリンダ13a,14aとピストン(差圧ピストン13b、連動ピストン14b)を有している。シリンダ13a,14aの内周面には、ピストン13b,14bに向けて突出する第一と第二のシリンダ凸部13a1,13a2,14a1,14a2が形成されている。ピストン13b,14bの外周面には、シリンダ13a,14aに向けて突出するピストン凸部13b1,14b1が形成されている。交互に配設されたシリンダ凸部13a1,13a2,14a1,14a2とピストン凸部13b1,14b1の間には、第一の液圧室13c,14cと第二の液圧室13d,14dが保持台3の進行方向に順に形成されている。
【0032】
差圧ピストン13bと連動ピストン14bは、連結軸14eによって連結されている。連動ピストン14bの液圧室14c,14dに面する面積(軸方向に垂直な面の面積)は、差圧ピストン13bの液圧室13c,13dに面する面積(軸方向に垂直な面の面積)の略二倍に設定されている。例えば1.8〜2.2倍に設定されている。第一の補正液圧器13は、第一の液圧室13cが連通路15bを介して第二の推力液圧器12の液圧室12cに連通され、第二の液圧室13dが連通路15aを介して第一の推力液圧器11の液圧室11cに連通される。第二の補正液圧器14は、第一の液圧室14cが連通路15cを介して第一の推力液圧器11の液圧室11dに連通され、第二の液圧室14dが連通路15dを介して第二の推力液圧器12の液圧室12dに連通される。なお連動ピストン14bの液圧室14c,14dに面する面積は、第一の推力液圧器11の液圧室11c,11dおよび第二の推力液圧器12の液圧室12c,12dの面積と同等である。
【0033】
図5に示すように推力用モータ4aによって一対のボールねじ軸4b1,4c1を回転させると、ボールねじ軸4b1,4c1とナット4b2,4c2の間に推力F1,F2が生じる。そして推力F1,F2によって、推力液圧器11,12の第一の液圧室11c,12c内の液圧が上昇する。推力F1,F2に差がある場合には、液圧室11c,12cの間に液圧差が生じる。そしてその液圧差が第一の補正液圧器13によって差圧ピストン13bの推力に変換される。
【0034】
差圧ピストン13bに生じた推力が第二の補正液圧器14の連動ピストン14bに伝達され、液圧室14c,14dに液圧差が形成される。そして液圧室14c,14d内は、液圧室11c,12cの液圧差の略半分の液圧上昇および液圧下降が生じる。例えば、差圧ピストン13bが液圧室13c,13dの液圧差によって第二の補正液圧器14方向への推力が生じると、第一の液圧室14cには、液圧室13c,13dの液圧差の略半分の液圧上昇が生じる。一方、第二の液圧室14dには、液圧室13c,13dの液圧差の略半分の液圧下降が生じる。
【0035】
そして連通路15c,15dによって第一の液圧室14cと第一の推力液圧器11の液圧室11dが同じ液圧になり、第二の液圧室14dと第二の推力液圧器12の液圧室12dが同じ液圧になる。そしてシリンダ11a,12aは、シリンダ凸部11a1,12a1を介して第一の液圧室11c,11cの液圧上昇によってピストン11b,12bに対して進行方向に力を受ける。そして第二の液圧室11d,12dの液圧上昇あるいは液圧下降によってピストン11b,12bに対して後退方向あるいは進行方向に力を受ける。
【0036】
したがってシリンダ11a,12aは、第一の液圧室11c,12cと第二の液圧室11d,12dの液圧差によってピストン11b,12bに対して進行方向に押される。そしてこれら液圧差は、補正器15によってほぼ同じになるために、シリンダ11a,12aによって保持台3を押す力がほぼ等しくなる。
【0037】
以上のように、補正器15は、第一と第二の液圧室11c,11d,12c,12dと、差圧発生器16を有している。したがって差圧発生器16は、第一の液圧室11c,12cの液圧を利用して第二の液圧室11d,12dの液圧を調整するために簡便な構造になる。そして差圧発生器16によって一対の推力液圧器11,12によって保持台3を押す力を調整することができる。また差圧発生器16は、第一と第二の補正液圧器13,14を有している。したがって第一と第二の補正液圧器13,14によってシリンダ11,12の第二の液圧室11d,12dの液圧を調整することができる。
【0038】
(他の実施の形態)
本発明は、実施の形態1,2に限定されず、以下の形態等であっても良い。
(1)実施の形態1、2の推力機構4は、一対のボールねじ4b,4cと、一対の推力液圧器5,6;11,12と、補正器7;15を有していた。しかし一つの推力用モータよって軸回転する三つ以上のボールねじと、三つ以上の推力液圧器と、これら推力液圧器の間の推力差を小さくする補正器を有している形態であっても良い。
(2)実施の形態1、2の推力液圧器5,6;11,12は、シリンダ5a,6a;11a,12aが保持台3側に取付けられ、ピストン5b,6b;11b,12bがナット4b2,4c2側に取付けられていた。しかしシリンダがナット側に取付けられ、ピストンが保持台側に取付けられる形態であっても良い。
(3)実施の形態1、2の推力機構4は、第二の保持台3を第一の保持台2に対して移動させる形態であった。しかし第一の保持台2を第二の保持台3に対して移動させる形態、あるいは両保持台2,3を近接・離間させる形態であっても良い。
(4)実施の形態1、2のボールねじ軸4b1,4c1は、推力液圧器5,6;11,12に貫通される形態であった。しかしボールねじ軸が推力液圧器に貫通されず、ボールねじ軸が推力液圧器に並設される形態等であっても良い。
(5)実施の形態2の推力液圧器11,12は、一対のピストン凸部11b1,11b2,12b1,12b2と、その間に突出するシリンダ凸部11a1,12a1を有していた。しかし一対のシリンダ凸部と、その間に突出するピストン凸部を有している形態であっても良い。
(6)実施の形態1の推力液圧器5,6は、図3に示すようにピストン凸部5b1,6b1が後端部側、シリンダ凸部5a2,6a2が進行端部側に位置する形態であった。しかし左右逆の向き、すなわちピストン凸部5b1,6b1が進行端部側、シリンダ凸部5a2,6a2が後退端部側に位置する形態であっても良い。
(7)実施の形態1、2の推力液圧器または補正器に、液体を補充する補充器を接続しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】摩擦圧接装置の正面図である。
【図2】図1のII―II線矢視図である。
【図3】推力機構の概略図である。
【図4】推力液圧器の断面図である。
【図5】実施の形態2の推力機構の概略図である。
【符号の説明】
【0040】
1…摩擦圧接装置
2…第一の保持台
3…第二の保持台
4…推力機構
4a…推力用モータ
4b,4c…ボールねじ
4b1,4c1…ボールねじ軸
4b2,4c2…ナット
4j,4k…タイロッド
5,6,11,12…推力液圧器
5a,6a,11a,12a,13a,14a…シリンダ
5a1,5a2,6a1,6a2,11a1,11a2,12a1,12a2,13a1,13a2,14a1,14a2…シリンダ凸部
5b,6b,11b,12b…ピストン
5b1,5b2,6b1,6b2,11b1,11b2,12b1,12b2,13b1,14b1…ピストン凸部
5b3,6b3,11b3,12b3…軸孔
5c,6c,11c,12c,13c,14c…第一の液圧室
5d,6d,11d,12d,13d,14d…第二の液圧室
5e,6e…第三の液圧室
7,15…補正器
7a,7b,15a〜15d…連通路
8…主軸モータ体
8a…主軸モータ
9…ベッド
13…第一の補正液圧器
13b…差圧ピストン
14…第二の補正液圧器
14b…連動ピストン
14e…連結軸
16…差圧発生器
W1,W2…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のワークを互いに相対回転させつつ押し当てることで前記一対のワークを摩擦圧接する摩擦圧接装置であって、
前記各ワークを一対の保持台それぞれに保持させ、該一対の保持台を互いに相対的に近接させて前記一対のワークを押し当てる推力機構を有し、
前記推力機構は、一つの推力用モータと、その推力用モータによって軸回転する複数のボールねじ軸と、前記各ボールねじ軸に螺合される複数のナットと、前記各ナットと前記一つの保持台との間に設けられる複数の推力液圧器を有し、
前記各推力液圧器は、前記ナット側または前記保持台のいずれか一方側に取付けられるシリンダと、いずれか他方側に取付けられるピストンを有し、該ピストンが前記シリンダ内の液圧によって前記シリンダに対して推力を発生可能に連結され、
前記複数の推力液圧器の間には、前記各推力液圧器のシリンダ内の液圧を補正することで前記各推力液圧器によって前記保持台を押す力の差を小さくする補正器が設けられていることを特徴とする摩擦圧接装置。
【請求項2】
請求項1に記載の摩擦圧接装置であって、
ボールねじ軸は、推力液圧器を貫通していることを特徴とする摩擦圧接装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の摩擦圧接装置であって、
補正器は、推力液圧器のシリンダとピストンから交互に突出する凸部によって前記シリンダ内に仕切られた第一〜第三の液圧室と、一つの前記シリンダの前記第一の液圧室と他の前記シリンダの前記第三の液圧室とを連通する第一の連通路と、前記一つのシリンダの前記第三の液圧室と前記他のシリンダの前記第一の液圧室とを連通する第二の連通路を有することを特徴とする摩擦圧接装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の摩擦圧接装置であって、
補正器は、推力液圧器のシリンダとピストンから交互に突出する凸部によって前記シリンダ内に仕切られた第一と第二の液圧室と、一つの前記シリンダの前記第一の液圧室と他の前記シリンダの前記第一の液圧室との液圧差を利用して前記一つのシリンダの前記第二の液圧室と前記他のシリンダの前記第二の液圧室との間に液圧差を形成する差圧発生器を有することを特徴とする摩擦圧接装置。
【請求項5】
請求項4に記載の摩擦圧接装置であって、
差圧発生器は、一対の推力液圧器のシリンダの第一の液圧室間の液圧差を差圧ピストンの推力に変換する第一の補正液圧器と、前記差圧ピストンと連動する連動ピストンを備え該連動ピストンの推力によって液圧差を形成する第二の補正液圧器を有し、前記第二の補正液圧器で形成した液圧差によって前記一対の推力液圧器のシリンダの第二の液圧室間に液圧差を形成することを特徴とする摩擦圧接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−255123(P2009−255123A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106762(P2008−106762)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000101994)イヅミ工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】