説明

播種機

【課題】繰出ロールからの種子の繰出量を均一化できる繰出装置を備えた播種機を提供すること。
【解決手段】圃場面に播種する種子の繰出装置6に回転しながら種子を繰り出す繰り出しロール19と、該ロール19の表面に先端が接触するブラシ23と、該ブラシ23の設置部よりロール19の回転方向後方部位のロール19の近傍にロール19の外周部から間隔を開けて繰り出しロール19の表面に対向する繰出装置6の壁面に配置した案内板41とを設けた播種機である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田んぼや圃場に種を蒔くための播種機に関する。
【背景技術】
【0002】
水稲の湛水直播栽培などに使用する播種機は、機体の前進に伴って泥土を左右方向に押し分けて作溝する作溝器と、種子タンク内の種子を繰り出す繰出装置などが設けられ、その繰出装置に複数の移送管と播種管とを連通して構成されている。そして、播種機は、作溝器により溝を作って該溝内に繰出装置から繰り出された種子を、エアチャンバ−から吹き出してくる圧縮空気によって、前記移送管内を播種管まで空気搬送し、圃場面に播種する構成としている。
【0003】
また、種子タンク内の種子を繰り出す繰出装置の外周に多数の種子溝を形成した繰出ロールの表面に接触するブラシを設けておき、該繰出ロールの表面を均して種子溝内の種子の量を均一化して繰出量を一定になるようにしている。
【特許文献1】特開平11−318122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されている繰出装置に設けられたブラシは繰出ロールの種子溝から繰出される種子量を均一化するためのものであるが、ブラシに種子がからみつくなどして繰出ロールからの種子の繰出量がなかなか均一化しないことがあった。
本発明の課題は、繰出ロールからの種子の繰出量を均一化できる繰出装置を備えた播種機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を有する。
すなわち、請求項1記載の発明は、走行車体(1)に、該走行車体(1)の前進に伴って圃場面に播種する種子の繰出装置(6)を設けた播種機において、前記繰出装置(6)には、回転しながら種子を繰り出す繰り出しロール(19)と、該繰り出しロール(19)の表面に先端が接触するブラシ(23)と、該ブラシ(23)の設置部より繰り出しロール(19)の回転方向後方部位の繰り出しロール(19)の近傍に繰り出しロール(19)の表面から間隔をあけて繰り出しロール(19)の表面に対向する繰出装置(6)の壁面に配置した案内板(41)とを設けた播種機である。
【0006】
本発明によれば、繰り出しロール19の表面に対向する繰出装置6の壁面に設けた案内板41と繰り出しロール19との間に、例えば1mm程度の隙間があるので、ブラシ23により、種子溝18に入っている籾などの種子を掃き出す際に、ブラシ23に種子が引っ掛かり、種子溝18からの種子の落下タイミングが狂うという不具合がなくなり、また、案内板41を設けることで案内板41と繰り出しロール19との間の隙間があるため、前記隙間で種子が行き来できるので種子が種子溝18内でフリーとなり、搬送中の種子が案内板41に激しく衝突しにくく、種子のコーティング膜が剥離し難い。
【0007】
またブラシ23で種子溝18に入っている種子量を整えた後、案内板41によって種子の繰り出しタイミングを揃えることができる。
【0008】
さらに案内板41の設置により、案内板41から繰出溝18が開放されたところで種子が落下するので任意の位置で種子溝18に入っている種子を落下させることができ、繰り出しロール19の下方の繰出装置6の壁面に落下中の種子が当たることもなくスムーズに繰り出すことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、繰り出しロール19の表面と案内板41との間に間隔を設けたので、種子溝18に入っている種子を掃き出す際にブラシ23に種子が引っ掛かることがなく、またブラシ23で種子溝18に入っている種子量を整えた後、案内板41によって種子の繰り出しタイミングを揃えることができ、また、搬送中の種子が案内板41に激しく衝突しにくく、種子のコーティング膜が剥離し難い。
【0010】
さらに案内板41から繰出溝18が開放されたところで種子が落下するので繰り出しロール19の下方の繰出装置6の壁面に落下中の種子が当たることもなくスムーズに繰り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。
図1には、本発明の一実施形態である播種機の側面図を示し、図2には、図1の播種機の平面図を示し(操作板は省略)、図3には図2のフロート付近の拡大図を示す。また、図4には種子タンク部分の側断面図を示し、図5には種子タンク部分の背面断面図を示す。
【0012】
本実施形態の播種機により、種子は種子タンク5から繰出装置6、移送管7、播種管2a、2bなどを経て圃場に播種される。播種機には、その他、空気を起風するための起風翼車8や空気が送風されるエアチャンバ9等の付属装置が設けられており、走行車体1の後部に装着して湛水直播機としている。また播種機の前進する方向を前、後退する方向を後といい、前進方向に向かって左側と右側をそれぞれ左右という。
【0013】
走行車体1は、操舵用の前輪10、10’と推進用の後輪11、11’とを設け、中央のエンジンル−ム(エンジンという場合もある)12上に操縦座席13を配置して設け、水田の耕盤上を回転しながら走行できる構成としている。そして、昇降リンク14は、上下一対の平行リンクからなり、前部が前記走行車体1の後部機枠15に枢着連結し、後部に連結用のヒッチ16を取り付け、車体1側の油圧シリンダ17によって昇降する構成としている。そして、前記ヒッチ16には、以下具体的に説明する播種機を取り付けて支持し、上下昇降自由に構成している。
【0014】
つぎに、播種機の構成を、図面に基づいて具体的に述べる。まず、繰出装置6は、図4および図5に示すように、外周に多数の種子溝18を形成した繰り出しロ−ル19を種子タンク5の下側に臨ませて伝動可能に軸架して設け、その下方には種子を搬送する移送管7の始端部を臨ませて設けた構成としている。なお、種子溝18は、図5に示すように、側部の調節具20を回転調節輪21の回転調節操作によって軸19aに沿わせて左右に摺動し、種子の貯留容積を大小調節できる構成としている。エンジン12からの動力は入力スプロケット22に伝達されて繰り出しロ−ル19の回転軸19aは回動する。
【0015】
そして、種子タンク5は、図1および図2に示すように、走行車体1の後部に連結した播種機の構成部材の一つとして搭載している。つぎに、図4および図5に示すように、前記繰出装置6の下側の後に円筒形状のエアチャンバ9を横向きに配置して設け、エアチャンバ9の一端に起風翼車8を連結し、他端を蓋で密封して起風された空気を貯留できる構成としている。また、移送管7の搬送始端部を開口して前記エアチャンバ9に連通して設けることで、高圧状態で貯留した空気(送風)が移送管7に送り込まれ、前述のように上方から供給されてくる所定量の種子を空気搬送するように構成している。
【0016】
このようにして、移送管7は、その始端部をエアチャンバ9に連通し、終端部側を圃場面に近い側に向けて延長し、播種位置に設けている播種管2a、2bにそれぞれ連通して構成している。そして、接地面に設けて、迎い角センサ44の検出値に応じてその上下位置が制御され、表土を均しながら滑動するフロ−ト24に播種管2a、2bを取り付け、前進に伴って整地された圃場面に種子を噴出し、播種する構成である。
【0017】
そして、図3に示すように、前述した播種管2a、2bを設けている播種条の後方に覆土板25をそれぞれ配置している。覆土板25は、圃場が硬い場合は支点軸25aを中心として右方向に回動して播種位置に土を寄せ集め、圃場が軟らかく、泥土の状態の場合は支点軸25aを中心として左側に回動して播種位置に土を寄せないようにし、平面視で左右方向の角度が変更調節できる構成である。なお、圃場の硬度はアーム45を介してヒッチ16に取り付けられた硬軟センサ40が圃場面に接地して回転することで検出できる。
【0018】
このように、覆土板25はワイヤー33の緊張と弛緩によって回動する構成である。例えば操縦座席13に感度調節レバー48を設け、該感度調節レバー48にケーブル33を接続させれば、オペレータが感度調節レバー48を操作することで容易に覆土板25の覆土調整量を変えることができる。
【0019】
また、図2に示す前記フロ−ト24、24の間の点線部分X、Yの位置に、作溝器(図示せず)を設け、走行車体1の前進に伴って圃場面に排水溝を形成するように構成しても良い。
そして、作溝器と前記播種管2とは後輪11、11’が通過した後に、播種条の側方に沿わせて略平行に排水溝を形成する関係位置に配置すれば良く、取付け位置の前後関係は自由に選択すれば良い。なお、図1に示すように、肥料は肥料タンク29から肥料移送管30、施肥管31を経て圃場に施肥される。
【0020】
このように構成した播種機を、整地作業が終わって湛水状態にした圃場に入れて肥料タンク29に肥料を充填し、種子タンク5には種子を充填して前進させて播種作業を開始する。そして、作業を開始すると、種子タンク5内の種子は図4に示すように、下方の回転している繰り出しロ−ル19に達し、繰り出しロ−ル19の外周の種子溝18にそれぞれ供給されて溜り回転方向に送られる。そのとき、種子溝18内の種子は、回転下手側にあるブラシ23に達して表面が均平に均されて定量となり、繰り出しロ−ル19の回転に伴って下方の移送管7の搬送始端部に落下する。そのとき、エアチャンバ9には、起風翼車8によって起風された圧縮空気が貯留されており、連通している各移送管7に流入することになる。
【0021】
こうして、種子はエアチャンバ9から吹き込まれてくる圧風によって移送管7内を空気搬送されて先端側の播種管2a、2bに達し、フロ−ト24によって整地された後の圃場に噴出、播種される。そして、覆土板25は、進行方向に対して所定の角度を保ち圃場面の表土を掻き寄せ、種子が播かれている播種溝の上に覆土を行い、播種作業を完了する。播種機は、上記した方法で走行車体1の前進に伴って湛水した圃場面に播種作業を行なう。
【0022】
そして、繰り出しロ−ル19の一部表面をブラッシングするためのブラシ23を設ける。ブラシ23は、前記した繰り出しロ−ル19の表面に接触して均す働きをする。すなわち、ブラシ23は種子溝18の種子量を均一にするために、種子溝18の無い部分の繰り出しロール19の表面に付着した種子を掃き取る作用もある。
【0023】
また図6に図4に示す繰出装置6の繰り出しロール19とブラシ23を設置した部分の縦断面図を示すようにブラシ23と接触する繰り出しロール19の表面に対向する繰出装置6の壁面に案内板41を設ける。該案内板41と繰り出しロール19との間には1mm程度の隙間を設けている。
【0024】
ブラシ23により、種子溝18に入っている籾などの種子を移送管7側に向けて掃き出す際に、ブラシ23に種子が引っ掛かり、種子溝18からの種子の落下タイミングが狂うことがあったが、案内板41を設けることで案内板41と繰り出しロール19との間の隙間があるため、前記隙間で種子が行き来できるので種子が種子溝18内でフリーとなり、案内板41で種子を搬送中も種子が案内板41に激しく衝突しにくく、種子のコーティング膜が剥離し難い。また、ブラシ23で種子溝18に入っている種子量を整えた後、案内板41によって種子の繰り出しタイミングを揃えることができる。さらに案内板41の設置により、案内板41から繰出溝18が開放されたところで種子が落下するので任意の位置で種子溝18に入っている種子を落下させることができ、繰り出しロール19の下方の繰出装置6の壁面に落下中の種子が当たることもなくスムーズに繰り出すことができる。
【0025】
また、図7に繰出装置6の下部の一部縦断面図を示すように、繰り出しロール19の下方の移送管7への連結管26を設け、該連結管26の外周部にエアチャンバ9からの空気流を導く誘導管27を設けた構成としても良い。この様な構成を採用することで、誘導管27内に流入する空気流がエアーカーテンを形成して種子を移送管7へスムーズに落下させることができる。また空気流が種子に付着した水分を除去して、圃場表面からの播種深さを安定させることができる。さらに上記構成で種子の落下流と空気流を別々にすることにより、種子の連結管26内での落下通路を狭くして、点播幅を小さくすることができる。
【0026】
さらに、図8に繰出装置6の繰り出しロール19部分の縦断面図を示すように、繰り出しロール19の側面に設けたブラシ23の下方部分には仕切板28を配置してブラシ23の保護を図ることができる。また、仕切板28とブラシ23との間に空間部を設けてもよい。
上記空間部があることで、ブラシ設置部から繰り出された種子が仕切板28の上に溜まり、種子溝18が仕切板28を跨ぐときに、前記仕切板28上に溜まっていた種子が一斉に繰り出されて点播長さが安定的に一定化させることができる。
【0027】
また、繰出装置6から繰り出される種子に適宜の量の鉄粉を混ぜておくと、種子を圃場に播いた箇所をサイドマーカ43の先端に設けた磁気センサ43aで検出できるので、点播条が容易に検出可能であるため、前記点播条に隣接する次の点播条の開始位置だけでなく、その点播条を前回の点播条に沿ってきれいに揃えることができる。
【0028】
また繰出装置6に図4〜図8に示す繰り出しロール19に代えて図9に概略図を示す回転羽根46を装着することで点播性能を高めることができる。図9(a)には回転羽根46の側面図を示し、図9(b)には図9(a)のA−A線矢視の繰出装置部分の図を示す。
【0029】
繰出装置6の壁面に回転羽根46の基部を一時的に係止する突起47を設けておき、回転羽根46は回転軸46aに断面十文字状に設けたロッド46bの先端にスプリング46cを取り付けた種子又は肥料を入れたカップ46dを設けた構成である。回転羽根46は突起47に達するとカップ46dを設けた先端部分が折れ曲がりながら回転するので、回転羽根46の基部の切欠部は突起47を越え、スプリング46cの付勢力でに元の状態に戻り、肥料を放出する。図9(a)に示すように、回転軸46aが矢印方向に回転する間に補給位置でカップ46d内に補給される種子又は肥料が補給位置から180度回転した位置で放出される。このとき、カップ46dが折れ曲がり状態で前記放出位置に回転移動するため、放出される種子又は肥料はスプリング46cの付勢力によって勢い良く放出され、カップ46d内の種子又は肥料が一度に播かれるため点播効果が繰り出しロール19を用いる場合に比較して大きい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、播種機に限らず他の農作業機にも有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態である播種機の側面図である。
【図2】図1の播種機の平面図である。
【図3】図2のフロート付近の拡大図である。
【図4】図1の播種機の種子タンク部分の側断面図である。
【図5】図1の播種機の種子タンク部分の背面断面図である。
【図6】図4に示す繰出装置の繰り出しロールとブラシを設置した部分の縦断面図である。
【図7】図4に示す繰出装置の下部の一部縦断面図である。
【図8】図4に示す繰出装置の繰り出しロール部分の縦断面図である。
【図9】図4に示す繰出装置の繰り出しロール部分に置き換えた回転羽根の側面図(図9(a))と図9(a)のA−A線矢視図(図9(b))である。
【符号の説明】
【0032】
1 走行車体 2 播種管
3 作溝器 5 種子タンク
6 繰出装置 7 移送管
8 起風翼車 9 エアチャンバ
10 前輪 11 後輪
12 エンジンル−ム 13 操縦座席
14 昇降リンク 15 機枠
16 ヒッチ 17 油圧シリンダ
18 種子溝 19 繰り出しロ−ル
19a 回転軸 20 調節具
21 回転調節輪 22 入力スプロケット
23 ブラシ 24 フロート
25 覆土板 25a 支点軸
26 連結管 27 誘導管
28 仕切板 29 肥料タンク
30 肥料移送管 31 施肥管
33 ワイヤ 40 硬軟センサ
41 案内板 43 サイドマーカ
43a 磁気センサ 44 迎い角センサ
45 アーム 46 回転羽根
46a 回転軸 46b ロッド
46c スプリング 46d カップ
47 突起 48 感度調節レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)に、該走行車体(1)の前進に伴って圃場面に播種する種子の繰出装置(6)を設けた播種機において、
前記繰出装置(6)には回転しながら種子を繰り出す繰り出しロール(19)と、該繰り出しロール(19)の表面に先端が接触するブラシ(23)と、該ブラシ(23)の設置部より繰り出しロール(19)の回転方向後方部位の繰り出しロール(19)の近傍に繰り出しロール(19)の表面から間隔をあけて繰り出しロール(19)の表面に対向する繰出装置(6)の壁面に配置した案内板(41)とを設けたことを特徴とする播種機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−201359(P2009−201359A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43748(P2008−43748)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】