説明

播種装置

【課題】播種部内にエアノズルを設けて、播種部内の残留物を効率的に除去清掃可能とし、作業性を向上させた播種装置を提供する。
【解決手段】育苗箱8を搬送する搬送部3上に、搬送始端部から順に、育苗箱8に用土を充填する用土充填部9と、この充填した用土に灌水する灌水部12と、灌水させた用土に播種する播種部13と、播種した用土を覆土する覆土部14とを備えるとともに、播種部13は、ケースc内にホッパー16および回転ロール20を設け、ホッパー16内に投入した種籾を、回転ロール20の回転によって繰出し、用土上に播種し、播種部13は、ケースc内にエアノズル21を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育苗箱を搬送する搬送部上に、搬送始端部から順に、育苗箱に用土を充填する用土充填部と、充填した用土に灌水する灌水部と、灌水させた用土に播種する播種部と、播種した用土を覆土する覆土部とを備えるとともに、播種部は、ケース内にホッパーおよび回転ロールを設け、ホッパー内に投入した種籾を、回転ロールの回転によって繰出し、用土上に播種する播種装置に関し、より詳細には、播種部が、ケース内にエアノズルを備える播種装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の播種装置には、トレイ供給装置より搬出された育苗箱(育苗ポット)を内包するトレイに、まず用土充填装置でポット内に用土を均一に充填し、次いで灌水装置で灌水された後、鎮圧播種装置の鎮圧具で表土に播種用の孔が施され、播種部(播種具)がホッパ内の種子を吸着して、この孔内に落下させることにより播種され、さらに覆土装置で覆土された後、再び灌水装置により灌水させて播種を完了する装置であって、トレイの肩部にエアノズルの吹きだし口を配置し、用土充填装置を経たトレイが搬送されてくると、用土清掃ノズルよりエアがトレイ肩部に吹きつけられ、余分の用土が除去された状態となって、次行程の灌水部や播種の精度を向上させるもの(例えば、特許文献1)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−284815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような播種装置では、播種作業における種籾の品種替えや、播種部内のメンテナンスなどにより播種部内の清掃を行う度に、ホッパーを分解して、エアガンなどで、育苗箱内に種籾を繰り出すための回転ロールにおける外周面上に残留した、前ロッドの種籾などの残留物を、除去清掃しなければならず、多くの手間と労力を費やし、作業効率が低いという問題があった。
そこで、この発明の目的は、播種部内にエアノズルを設けて、播種部内の残留物を効率的に除去清掃可能とし、作業性を向上させた播種装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、育苗箱を搬送する搬送部上に、搬送始端部から順に、前記育苗箱に用土を充填する用土充填部と、該充填した用土に灌水する灌水部と、該灌水させた用土に播種する播種部と、該播種した用土を覆土する覆土部とを備えるとともに、前記播種部は、ケース内にホッパーおよび回転ロールを設け、前記ホッパー内に投入した種籾を、前記回転ロールの回転によって繰出し、前記用土上に播種する播種装置において、前記播種部は、前記ケース内にエアノズルを備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の播種装置において、前記エアノズルは、前記回転ロールの種籾供給口側方に設置するとともに、前記回転ロールの中央に向けてエアを噴風することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の播種装置において、前記エアノズルによるエアの噴風中には、前記回転ロールを、通常の回転速度よりも高速で回転させることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の播種装置において、前記播種部は、前記ケース内に、吸引部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、育苗箱を搬送する搬送部上に、搬送始端部から順に、育苗箱に用土を充填する用土充填部と、この充填した用土に灌水する灌水部と、この灌水させた用土に播種する播種部と、この播種した用土を覆土する覆土部とを備えるとともに、播種部は、ケース内にホッパーおよび回転ロールを設け、ホッパー内に投入した種籾を、回転ロールの回転によって繰出し、用土上に播種する播種装置において、播種部は、ケース内にエアノズルを備えるので、播種作業における種籾の品種替えや播種部内の清掃を行う場合、回転ロールの外周面上に残った種籾などの残留物を、エアノズルにより容易に噴風除去できるため、次の播種作業を行う際に、前作業ロッドの残留物の混入を防ぐことができる。従って、作業性および生産性を向上させた播種装置を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、エアノズルは、回転ロールの種籾供給口側方に設置するとともに、回転ロールの中央に向けてエアを噴風するので、必要最小限数のエアノズルを適切な位置および噴射方向に設置することにより、簡単な装置構成で、回転ロール外周面上の残留種籾を効率的に噴風除去することができる。従って、作業性および生産性を向上させた播種装置を提供することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、エアノズルによるエアの噴風中には、回転ロールを、通常の回転速度よりも高速で回転させるので、回転ロール外周面上の残留種籾を迅速、かつ回転ロールと、ケースとの隙間に滞留する種籾を確実に除去させることができる。従って、作業性を向上させた播種装置を提供することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、播種部は、ケース内に、吸引部を備えるので、回転ロールの外周面上の残留種籾の噴風除去により拡散した種籾を、吸引部により吸引することで、ケース内の残留し易い位置や、再度回転ロール上への落下による種籾の残留を防ぎ、ケース内の残留種籾を確実に除去することができる。従って、作業性を向上させた播種装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一例を示す播種装置の全体側面図である。
【図2】本発明の播種装置の全体平面図である。
【図3】播種装置の全体斜視図である。
【図4】播種部の拡大側面図である。
【図5】播種部の内部構造を示す側面模式図である。
【図6】播種部の内部構造を模式的に示した斜視図である。
【図7】エアノズルの噴風方向を示す播種部の平面模式図である。
【図8】播種部における清掃操作のブロック制御図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1は、本発明の一例を示す播種装置の全体側面図、図2は播種装置の全体平面図、図3は播種装置の全体斜視図を示す。この例の播種装置1は、図1〜3に示すように、複数のスタンド2で立設された、搬送部3を備える機台4の長手方向の搬送部3上には、搬送始端側sから搬送終端側eに向けて適宜間隔で順に各作業部5が配設されるものである。
【0015】
まず、前後方向に適宜長さを有する機台4内部に沿って架設した、無端状ベルトなどの搬送装置からなる搬送部3は、搬送終端側eの機台4底部などに取付けられた搬送モ−タ7により、搬送始端側sから搬送終端側eに向けて周回される。
【0016】
この搬送部3上を、長方形で比較的深さの浅い育苗箱8が、その長辺部を機体前後方向にし、互いに接触し合って切れ目のない連続状態で、搬送部3の周回により搬送始端側sから搬送終端側eに向けて搬送される。
【0017】
そして、搬送部3上の搬送始端側sには、まず用土充填部9が配設される。この用土充填部9は、それぞれ図示しないモ−タにより駆動するコンベヤによってタンク内の用土を育苗箱8内に床土としての用土を充填するものである。次いで、用土充填部9後部には、図示しないモ−タにより駆動する螺旋ブラシなどで、育苗箱8内の用土の表面を均平にする均平部10が用土充填部9と一体設置されるとともに、均平部10の後方には、図示しないエアノズルなどで育苗箱8隅部の余分な用土を取り除くスミトリ部11が配設される。
【0018】
次いで、スミトリ部11に続いて、搬送部3の中央近傍上に設けられた、図示しないモ−タにより駆動するポンプによって用土に灌水し水分を与える灌水部12のさらに後方には、詳細後述の、モ−タMにより駆動される回転ロール20で、ホッパー15内の種籾を、育苗箱8内の用土上に播種する播種部13が配設される。
【0019】
次いで、播種部13の後方であって、搬送部3の搬送終端側eには、図示しないモ−タによって駆動するコンベヤによりタンク内の覆土を搬出し、育苗箱8内に播種された種 籾に覆土する覆土部14が配設される。
【0020】
従って、搬送部3により搬送される育苗箱8に用土を入れ、その用土の表面を均平にした後、育苗箱8隅部の余分な床土を取り除き、さらに用土に灌水して播種し、これに覆土して一連の作業が終了する。なお、上述した播種装置1における各各作業部5の構造や作用などは、例えば特開平5−284815号公報や特開平8−154429号公報他などに開示される周知の技術であるため、それら詳細な説明は省略する。
【0021】
次に、本願発明の特徴である播種部について詳述する。図4は播種部の拡大側面図、図5は播種部の内部構造を示す側面模式図、図6は播種部の内部構造を模式的に示した斜視図、図7はエアノズルの噴風方向を示す播種部の平面模式図、図8は播種部における清掃操作のブロック制御図である。
【0022】
播種部13は、図4〜5に示すように、ケースcを構成する左右側板15間の上部にホッパー16が形成されており、下部板17,18を漏斗状に傾斜配置し、中央下部を開口して種籾供給口19とされる。なお、この種籾供給口19は、種籾の種類などによって大きさを変更可能としている。
【0023】
このホッパー16の下方には、左右側板15間に軸支した回転ロール20が配置されており、この軸の一端が、不図示の動力伝達機構を介して、コントローラCに接続されたモーターMと連動連結され、搬送部3の搬送速度や播種量に応じて回転ロール20が回転駆動される。なお、図6に示すように、回転ロール20の外周面には、ホッパー16からの種籾を嵌入させる種籾嵌入溝mが、等間隔に複数形成されている。
【0024】
また、回転ロール20の上部には、回転ロール20外周面の種籾を均平にするとともに、芒付き種籾などを除去する回転ブラシ23が、左右側板15間に軸支されており、このブラシ23は、その先端を回転ロール20の外周面に接触させて配置される。
【0025】
なお、回転ロール20の下部近傍にも、育苗箱8内に繰り出せずに回転ロール20の外周面上に残留した種籾を除去する1個または複数の回転ブラシ26を、左右側板15間に軸支し、その先端を回転ロール20の外周面に接触させて取付けることができる。
【0026】
さらに、回転ロール20の回転方向前方の上部から下部にわたる側面には、種籾嵌入溝に入った種籾が、回転ロール20の回転によって下方へ搬送される際、脱落を防ぐためのガイド板24が、回転ロール20の外周面に密着配置される。
【0027】
この播種部12のケースc内であって、種籾供給口19の側方の左右いずれかの側板15には、図7にも示すように、噴射口21aを回転ロール20の中央に向けて、コンプレッサ26に接続したエアノズル21が設置される。なお、このエアノズル21の電磁弁22は、コントローラCに接続される。
【0028】
また、ケースc内の下方であって、左右いずれかの側板15には、ダクト23に連通して開口形成された吸引部24が設けられる。なお、ダクト23は、吸引ポンプ25に接続されるとともに、吸引ポンプ25は、コントローラCに接続される。
【0029】
ここで、例えば、一連の播種作業を終え、播種部13内を清掃する場合もしくは、前作業ロッドとは異なる種籾を用いた播種作業のために播種部13内を清掃する際には、播種装置1の稼動中または停止中に、作業者が、図示しない播種部13の近傍または制御盤など任意の位置に設けられた、図8に示すように、播種部清掃スイッチSなどを投入すると、コントローラCは、播種装置1が停止中であれば駆動させるとともに吸引ポンプ25を駆動させることで、播種部13内が、吸引部24により適当な吸引圧で吸引される。
【0030】
また、コントローラCは、モーターMの駆動を制御して、回転ロール20を、通常の回転速度よりも速く回転させる。なお、この場合の回転ロール20の回転速度は、通常の回転速度よりも1.2倍〜1.5倍前後にすることが好ましい。これは、回転ロール20の回転速度を速くしても、後述するエアノズル21の噴風を回転ロール20の外周面に確実に当てることができる良好な回転速度である。
【0031】
さらに、コントローラCは、コンプレッサ26を駆動させるとともに、電磁弁22を開放して、エアノズル21先端の噴風口21aから圧縮エアを、回転ロール20の外周面における側方から中央に向けて噴射させる。なお、このとき、エアノズル21の噴風は、清掃中連続して噴射させてもよいが、所定の時間間隔で間欠的に噴射させてもよいし、段階的に噴射圧を変更して噴射させることもできる。
【0032】
このエアノズル21からの噴風により、図7に示すように、回転ロール20の外周面上に残留した種籾などの残留物を、播種部13内に吹き上げて、回転ロール20の外周面から脱着させ、ケースc内の残留し易い位置や、再度回転ロール20外周面上への落下による種籾の残留を防ぎ、それら残留物が播種部13内を自重により落下し、その一部は、播種部13の下部において吸引部24からダクト23を介して機外に排出されるとともに、他は搬送部3上に落下して機体後部に搬送された後、機外に排出される。
【0033】
また、上記播種部13内の清掃中に、回転ロール20を、通常の回転速度よりも速く回転させることで、回転ロール20の外周面に残留する残留物に、エアノズル21からの噴風を早く繰り返して当てることで、残留物の除去効率を向上させるとともに、回転ロール21と、ケースcとの隙間に滞留する種籾を確実に除去させることができる。
【0034】
このような構成により、播種作業における種籾の品種替えや播種部13内の清掃を行う場合、回転ロール20の外周面上に残った種籾などの残留物を、エアノズル21により容易に噴風除去できるため、次の播種作業を行う際に、前作業ロッドの残留物の混入を防ぐことができる。
【0035】
また、種籾供給口19の側方に必要最小限数である1本のエアノズル21を設けたことで、簡単な装置構成により回転ロール21外周面上の残留種籾を効率的に噴風除去することができる。
【0036】
また、エアノズル21によるエアの噴風中には、回転ロール20を、通常の回転速度よりも高速で回転させるので、回転ロール21外周面上の残留種籾を迅速、かつ回転ロール21と、ケースcとの隙間に滞留する種籾を確実に除去させることができる。
【0037】
さらには、ケースc下部に形成した吸引部24により、回転ロール20外周面上の残留種籾の噴風除去により拡散した種籾を容易に吸引することで、ケースc内の残留し易い位置や、再度回転ロール20外周面上への落下による種籾の残留を防ぎ、ケースc内の残留種籾を確実に除去することができる。
【0038】
なお、エアノズル21の噴射口21aには、複数の孔を形成してもよい。この場合、図示しないが、例えば噴射口21aに5〜6個の孔からなる噴射口21aにすることで、エアノズル21からの圧縮エアの噴射方向を拡散させ、回転ロール20外周面上に広くエアを当てることで、より迅速に回転ロール20外周面上の残留物を除去させることができる。
【0039】
また、装置構成上の面から、エアノズル21は、上述したように、種籾供給口19の側方に1本設置したが、より清掃効率を高めるために、種籾供給口19の左右側方である各左右側板15に1本ずつ、または、回転ブラシ23の側方や、回転ロール20底部側方などに複数設置させてもよい。
【0040】
以上詳述したように、この例の播種装置1は、育苗箱8を搬送する搬送部3上に、搬送始端部から順に、育苗箱8に用土を充填する用土充填部9と、この充填した用土に灌水する灌水部12と、灌水させた用土に播種する播種部13と、播種した用土を覆土する覆土部14とを備えるとともに、播種部13は、ケースc内にホッパー16および回転ロール20を設け、ホッパー16内に投入した種籾を、回転ロール20の回転によって繰出し、用土上に播種し、播種部13は、ケースc内にエアノズル21を備えるものである。
【0041】
加えて、エアノズル21は、回転ロール20の種籾供給口19側方に設置するとともに、回転ロール20の中央に向けてエアを噴風し、エアノズル21によるエアの噴風中には、回転ロール20を、通常の回転速度よりも高速で回転させるとともに、播種部13は、ケースc内に、吸引部24を備える。
【産業上の利用可能性】
【0042】
なお、この発明は、あらゆる種子や籾など農作物の種籾を播種可能とする播種部を備える播種装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
3 搬送部
8 育苗箱
13 播種部
15 側板
16 ホッパー
19 種籾供給口
20 回転ロール
21 エアノズル
21a 噴射口
22 電磁弁
23 ダクト
24 吸引部
25 吸引ポンプ
26 コンプレッサ
C コントローラ
M モーター
c ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
育苗箱を搬送する搬送部上に、搬送始端部から順に、前記育苗箱に用土を充填する用土充填部と、該充填した用土に灌水する灌水部と、該灌水させた用土に播種する播種部と、該播種した用土を覆土する覆土部とを備えるとともに、前記播種部は、ケース内にホッパーおよび回転ロールを設け、前記ホッパー内に投入した種籾を、前記回転ロールの回転によって繰出し、前記用土上に播種する播種装置において、
前記播種部は、前記ケース内にエアノズルを備えることを特徴とする播種装置。
【請求項2】
前記エアノズルは、前記回転ロールの種籾供給口側方に設置するとともに、前記回転ロールの中央に向けてエアを噴風することを特徴とする、請求項1に記載の播種装置。
【請求項3】
前記エアノズルによるエアの噴風中には、前記回転ロールを、通常の回転速度よりも高速で回転させることを特徴とする、請求項1に記載の播種装置。
【請求項4】
前記播種部は、前記ケース内に、吸引部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の播種装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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