説明

撮像レンズおよびこの撮像レンズを用いた撮像装置

【課題】撮像レンズにおいて、小型、軽量で広角の性能を維持しつつ、装置コストを増大させることなく光学性能を高める。
【解決手段】物体側から、負の第1レンズL1、近軸領域で物体側に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第2レンズL2、絞りSt、正の第3レンズL3をこの順に備える。第2レンズL2の物体側のレンズ面S3を、近軸領域で凹面をなし有効径端で凸面をなすものとし、第1レンズ、第2レンズ、および第3レンズを、いずれもd線に対するアッベ数が40以上のものとし、条件式(1):−9.5<f2/f<−4.0、および(2):0.6<(D4+D5)/f<1.5を満足するようにする。ただし、fは撮像レンズ全系の焦点距離、f2は第2レンズL2の焦点距離、D4は第2レンズL2と絞りStとの間隔、D5は絞りStと第3レンズL3との間隔である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を撮像する撮像レンズおよびこの撮像レンズを用いた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の前方、側方、後方の状況等を確認するための車載用カメラ、携帯電話用カメラ、および建物等に固定して使用される監視用カメラ等が知られている。このような、車載用カメラ、携帯電話用カメラ、あるいは監視用カメラには、例えば画角が130°を超えるような広角のレンズでありながら小型で軽量の撮像レンズを用いたものが知られている。
【0003】
このような、小型、軽量で広角の撮像レンズ、すなわち比較的レンズ枚数の少ない広角の撮像レンズとしては、以下の特許文献1〜3に記載のものが知られている。
【0004】
特許文献1に記載の撮像レンズは、回折光学素子を適用したものである。特許文献2および特許文献3に記載の撮像レンズは、3枚のレンズによって構成されたものである。しかしながら特許文献1に記載の撮像レンズは回折光学素子を使用しているため色収差は良好に補正可能だが、コストが高くなってしまう。また、特許文献3に記載の撮像レンズは小型化が十分でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−114545
【特許文献2】特開2007−114546
【特許文献3】特開2005−321742
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、CCDやCMOS等の撮像素子の高画素化が進むとともに、この撮像素子の価格も低下している。これにともない、撮像装置に搭載する撮影レンズについても、小型、軽量、広角である撮像レンズの特性を維持するとともに、装置コストを増大させることなく光学性能をさらに向上させたいという要請がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、装置コストを増大させることなく光学性能を高めることができる小型、軽量で広角の撮像レンズおよびこの撮像レンズを用いた撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の撮像レンズは、物体側から、負の第1レンズ、近軸領域で物体側に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第2レンズ、絞り、正の第3レンズをこの順に備え、第2レンズの物体側のレンズ面が、近軸領域で凹面をなし、該レンズ面の有効径端では凸面をなすものであり、第1レンズ、第2レンズ、および第3レンズが、いずれもd線に対するアッベ数が40以上であり、条件式(1):−9.5<f2/f<−4.0および(2):0.6<(D4+D5)/f<1.5を満足することを特徴とするものである。
【0009】
ただし、fは撮像レンズ全系の焦点距離、f2は第2レンズの焦点距離、D4は第2レンズと絞りとの間隔、D5は絞りと第3レンズとの間隔である。
【0010】
前記撮像レンズは、条件式(3):1.0<f3/f<2.5を満足することが望ましい。
【0011】
ただし、fは撮像レンズ全系の焦点距離、f3は第3レンズの焦点距離である。
【0012】
前記第2レンズの像側のレンズ面は、近軸領域で凸面をなし、有効径端では凹面なすものとすることが望ましい。
【0013】
前記第3レンズの像側のレンズ面は、近軸領域で凸面をなし、有効径端では近軸領域よりも正のパワーが弱くなるものとすることが望ましい。
【0014】
前記第3レンズの像側のレンズ面の有効径端の曲率半径の絶対値は、この第3レンズの像側のレンズ面の近軸曲率半径の絶対値の1.1倍以上とすることが望ましい。
【0015】
前記第3レンズは、近軸領域で両凸形状をなすものとすることが望ましい。
【0016】
前記撮像レンズは、条件式(4):2.5<|f1/f23|<4.2を満足するものとすることが望ましい。
【0017】
ただし、f1は第1レンズの焦点距離、f23は第2レンズと第3レンズの合成焦点距離である。
【0018】
前記撮像レンズは、条件式(5):6.0<L/f<10.0を満足することが望ましい。
【0019】
ただし、fは撮像レンズ全系の焦点距離、Lは第1レンズの物体側のレンズ面から撮像レンズの結像面までの距離である。
【0020】
前記第1レンズをガラスレンズとし、第2レンズおよび第3レンズをプラスチックレンズとすることが望ましい。
【0021】
前記撮像レンズは、青色光をカットする青色光遮断手段を備えたものとすることが望ましい。
【0022】
前記撮像レンズは、赤色光をカットする赤色光遮断手段を備えたものとすることが望ましい。
【0023】
本発明の撮像装置は、前記撮像レンズと、この撮像レンズにより形成される光学像を電気信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とするものである。
【0024】
なお、前記「近軸領域で物体側に凹面を向けたメニスカス形状をなすレンズ」とは、このレンズ中の近軸領域が物体側に凹面を向けたメニスカス形状をなすことを意味するものである。すなわち、このレンズの物体側のレンズ面の近軸領域および像側のレンズ面の近軸領域が、両方ともに物体側に凹面を向けた形状をなすことを意味するものである。
【0025】
また、前記「レンズ面の有効径端」は、レンズ面を通過する全有効光線のうち最も外側(レンズの光軸から最も離れた位置)を通る光線とレンズ面とが交わるこのレンズ面上の領域を意味する。有効光線とは、被写体の像の結像に用いられる光線である。
【0026】
また、「レンズ面が、近軸領域で凸面をなし、有効径端では近軸領域よりも正のパワーが弱くなる」とは、有効径端および近軸領域がともに凸面をなし、近軸領域における曲率半径の絶対値よりも有効径端における曲率半径の値の絶対値の方が大きくなる場合、または、有効径端が平面をなし近軸領域が凸面をなす場合を意味する。
【0027】
なお、レンズ面が有効径端において凸面をなす、あるいは有効径端において正のパワーを有する場合には、このレンズ面の有効径端へ入射した平行光線は収束する。
【0028】
また、レンズ面が有効径端において凹面をなす、あるいは有効径端において負のパワーを有する場合には、このレンズ面の有効径端へ入射した平行光線は発散する。
【0029】
また、レンズ面が近軸領域において凸面をなす、あるいは近軸領域において正のパワーを有する場合には、このレンズ面の近軸領域へ入射した平行光束は収束する。
【0030】
また、レンズ面が近軸領域において凹面をなす、あるいは近軸領域において負のパワーを有する場合には、このレンズ面の近軸領域へ入射した平行光束は発散する。
【発明の効果】
【0031】
本発明の撮像レンズおよび撮像装置によれば、物体側から、負の第1レンズ、近軸領域で物体側に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第2レンズ、絞り、正の第3レンズをこの順に備え、第2レンズの物体側のレンズ面を、近軸領域で凹面をなし、このレンズ面の有効径端では凸面をなすものとし、第1レンズ、第2レンズ、および第3レンズを、いずれもd線に対するアッベ数が40以上のものとし、条件式(1):−9.5<f2/f<−4.0および条件式(2):0.6<(D4+D5)/f<1.5を満足するようにしたので、小型、軽量、広角である撮像レンズの特性を維持し、かつ、装置コストを増大させることなく光学性能を高めることができる。
【0032】
すなわち、本発明によれば、小型、軽量で全画角が130度を超えるような広角である撮像レンズの特性を維持するとともに、装置コストの増大を抑制しつつ光学性能を向上させることができる。
【0033】
より詳しくは、第1レンズおよび第2レンズを負のレンズにすることで、レンズ系の広角化を容易とし、第2レンズの物体側のレンズ面を近軸領域で凹面をなし有効径端では凸面をなすものとすることで、小型化、広角化と同時に像面湾曲を良好に補正することが可能となる。また、第2レンズを、近軸領域で物体側に凹面を向けたメニスカス形状をなすものとすることで、像面湾曲とコマ収差とを良好に補正することができる。
【0034】
さらに、第1レンズ、第2レンズ、および第3レンズに、いずれもd線に対するアッベ数が40以上の光学材料を使用することにより、色収差の発生を抑えることができ、良好な解像性能を得ることが可能となる。
【0035】
また、条件式(1):−9.5<f2/f<−4.0を満足することにより、球面収差を良好に補正しつつ容易に広角化することができる。ここで、条件式(1)の上限以上となるようにレンズ系を構成すると、球面収差を良好に補正することが困難となる。一方、条件式(1)の下限以下となるようにレンズ系を構成すると、第2レンズの負のパワーが弱くなり広角化が困難となる。
【0036】
また、条件式(2)0.6<(D4+D5)/f<1.5を満足することにより、像面湾曲を良好に補正しつつレンズ系を小型化することができる。ここで、条件式(2)の上限以上となるようにレンズ系を構成すると、第2レンズと第3レンズの間隔が大きくなってしまいレンズ系が大型化してしまう。一方、条件式(2)の下限以下となるようにレンズ系を構成すると、レンズ系を小型にすることは可能だが、絞りよりも物体側で軸上の光線と周辺の光線とを分離することが困難となり像面湾曲の補正が困難となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の撮像レンズおよび撮像装置の概略構成を示す断面図
【図2】第2レンズの物体側のレンズ面での近軸領域と有効径端の曲率半径を示す断面図
【図3】青色光遮断特性および赤色光遮断特性を示す図
【図4】第2レンズの像側のレンズ面での近軸領域と有効径端の曲率半径を示す断面図
【図5】第3レンズの物体側のレンズ面での近軸領域と有効径端の曲率半径を示す断面図
【図6】第3レンズの像側のレンズ面での近軸領域と有効径端の曲率半径を示す断面図
【図7】実施例1の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図8】実施例2の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図9】実施例3の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図10】実施例4の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図11】実施例5の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図12】実施例6の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図13】実施例7の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図14】実施例8の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図15】実施例1の撮像レンズの諸収差を示す図
【図16】実施例2の撮像レンズの諸収差を示す図
【図17】実施例3の撮像レンズの諸収差を示す図
【図18】実施例4の撮像レンズの諸収差を示す図
【図19】実施例5の撮像レンズの諸収差を示す図
【図20】実施例6の撮像レンズの諸収差を示す図
【図21】実施例7の撮像レンズの諸収差を示す図
【図22】実施例8の撮像レンズの諸収差を示す図
【図23】本発明の撮像装置を備えた車載機器が搭載されている自動車を示す図
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明の撮像レンズおよびこの撮像レンズを用いた撮像装置の実施の形態の概略構成を示す断面図、図2は撮像レンズの第2レンズの物体側のレンズ面における近軸の曲率半径と有効径端の曲率半径とを示す断面図である。
【0039】
図示の撮像装置100は、自動車の前方、側方、後方などを撮影するための車載用カメラ等に適用されるものである。この撮像装置100は、CCDやCMOS等からなる撮像素子10と撮像レンズ20とを備えている。
【0040】
撮像レンズ20は、撮像素子10の受光面Jk上に被写体の光学像を結像させる。この撮像素子10は、撮像レンズ20によって受光面Jk上に結像された被写体の光学像を電気信号に変換して、この光学像を示す画像信号を出力するものである。この撮像レンズ20は、全画角が130°を超える広角の撮像レンズである。
【0041】
<撮像レンズの基本構成およびその作用、効果について>
はじめに、撮像レンズ20の基本構成について説明する。
【0042】
撮像レンズ20は、光軸Z1に沿って物体側(図中矢印−Z方向の側)から、負のパワーを持つ第1レンズL1、近軸領域で物体側に凹面を向けたメニスカス形状をなす負のパワーを持つ第2レンズL2、開口絞りSt、正のパワーを持つ第3レンズL3をこの順に備えている。
【0043】
第2レンズL2の物体側のレンズ面S3は、近軸領域で凹面をなし、有効径端では凸面をなす。
【0044】
また、第1レンズL1、第2レンズL2、および第3レンズL3は、いずれもd線に対するアッベ数が40以上である。
【0045】
さらに、この撮像レンズ20は、条件式(1):−9.5<f2/f<−4.0および条件式(2):0.6<(D4+D5)/f<1.5を満足するものである。
【0046】
ただし、fは撮像レンズ20全系の焦点距離、f2は第2レンズL2の焦点距離、D4は第2レンズL2と開口絞りStとの間隔、D5は開口絞りStと第3レンズL3との間隔である。
【0047】
この撮像レンズ20を通して被写体を表す光学像が結像される結像面S10には、上記のように撮像素子10の受光面Jkが配置されている。
【0048】
さらに、この撮像レンズ20は、第3レンズL3と撮像素子10との間には、例えば赤外線カットフィルタや受光面Jkを保護するカバーガラスなどの平板状の光学部材CG1を備えることができる。この光学部材CG1は、撮像装置100の仕様に応じて選択されたものが配置される。
【0049】
なお、図1中の符号S1〜S10は以下の構成を指している。
【0050】
符号S1とS2は第1レンズL1の物体側(図中矢印−Z方向の側)のレンズ面と像側(図中矢印+Z方向の側)のレンズ面、S3とS4は第2レンズL2の物体側のレンズ面と像側のレンズ面、S5は開口絞りStの開口部、S6とS7は第3レンズL3の物体側のレンズ面と像側のレンズ面、S8とS9は光学部材CG1の物体側の面と像側の面、S10は上記のように撮像素子10の受光面Jkと一致する撮像レンズ20の結像面を示している。
【0051】
また、符号Sk1は、第1レンズL1の像側の表面に配された遮光板、Sk2は第2レンズL2の像側の表面に配された遮光板を示している。さらに、符号2ωは撮像レンズ20の全画角を示している。
【0052】
◇レンズ面S3に付加される構成について
第2レンズL2の物体側のレンズ面S3が近軸領域Kj3において凹面をなし有効径端では凸面をなすとは、具体的には、図2に示すように、レンズ面S3の有効径端における1点をX3としてその点X3での法線H3と光軸Z1との交点をP3とし、レンズ面S3と光軸Z1との交点をC3としたときに、点P3が点C3よりも像側にあるような形状であって、レンズ面S3の近軸領域Kj3が凹面をなす場合である。
【0053】
このレンズ面S3は、レンズ面S3の近軸領域Kj3に入射した平行光束を発散させ、レンズ面S3の有効径端(例えば点X3)に入射した平行光線を収束させる。
【0054】
図2中に示す円Urx3は、有効径端上の点X3においてレンズ面S3と接し、レンズ面S3の有効径端(点X3)における曲率半径と同じ曲率半径を持つ円であって、中心が光軸Z1上に位置する円である。この図2中に示す円Urx3は、有効径端での内接円を表す。
【0055】
また、図2中に示す円Ur3は、近軸領域Kj3上の上記点C3においてレンズ面S3と接し、レンズ面S3の近軸の曲率半径と同じ曲率半径を持つ円であって、中心が光軸Z1上に位置する円である。
【0056】
なお、レンズ面S3における有効径端の曲率半径の絶対値は、点X3から点P3までの長さ|RX3|である。
【0057】
第2レンズL2の物体側のレンズ面S3をこのような非球面形状とすることにより、小型化、広角化と同時に像面湾曲を良好に補正することが可能となる。
【0058】
ここで、レンズ面S3の有効径端の曲率半径の絶対値|RX3|が、レンズ面S3の近軸の曲率半径の絶対値|R3|の0.5倍以上(|RX3/R3|≧0.5)であることが望ましい。レンズ面S3の形状をこのように定めることにより、像面湾曲を良好に補正することができる。
【0059】
<撮像レンズの基本構成に付加される構成およびその作用、効果について>
次に、この撮像レンズ20の備える上記基本構成にさらに付加される構成およびその作用、効果について以下に説明する。
【0060】
なお、本実施の形態の撮像レンズは、基本構成に付加することができる以下の複数の構成のうちの1つのみを満足するものとしてもよいし、あるいは、基本構成に付加することができる複数の構成のうちの2つ以上の組合わせを満足するものとしてもよい。
【0061】
なお、上記撮像レンズの基本構成に付加する構成を示す条件式(2)〜(12)中に記号で示す各パラメータ等の意味をまとめて以下に示す。なお、既に説明済みのパラメータ等の意味についてもまとめて以下に示す。
【0062】
f:撮像レンズ全系の焦点距離(第1レンズL1〜第3レンズL3の合成焦点距離)
f23:第2レンズL2と第3レンズL3の合成焦点距離
f1:第1レンズL1の焦点距離(近軸領域での焦点距離)
f2:第2レンズL2の焦点距離(近軸領域での焦点距離)
f3:第3レンズL3の焦点距離(近軸領域での焦点距離)
D1:第1レンズL1の光軸上における厚み
D2:第1レンズL1と第2レンズL2との間隔(空気間隔)
D3:第2レンズL2の光軸上における厚み
D4:第2レンズL2と開口絞りStとの間隔(空気間隔)
D5:開口絞りStと第3レンズL3との間隔(空気間隔)
|R6|:第3レンズL3の物体側のレンズ面S6の近軸曲率半径の絶対値
|RX6|:第3レンズL3の物体側のレンズ面S6の有効径端の曲率半径の絶対値
|R7|:第3レンズL3の像側のレンズ面S7の近軸曲率半径の絶対値
|RX7|:第3レンズL3の像側のレンズ面S7の有効径端の曲率半径の絶対値
R2:第1レンズL1の像側のレンズ面S2の近軸曲率半径
R3:第2レンズL2の物体側のレンズ面S3の近軸曲率半径
R4:第2レンズL2の像側のレンズ面S4の近軸曲率半径
L:第1レンズL1の物体側のレンズ面S1から結像面S10(撮像素子10の受光面Jk)までの距離(バックフォーカス分は空気換算)
ここで、各レンズの焦点距離及び複数のレンズの合成焦点距離としては近軸の焦点距離を用いるものとする。
【0063】
Bf:バックフォーカス(第3レンズL3の像側のレンズ面S7から結像面S10までの空気換算した距離(空気換算長))
ED:第1レンズL1の像側のレンズ面S2の有効径
N1:第1レンズL1を構成する材料のd線に対する屈折率
撮像レンズ20は、第1レンズL1をガラス材料で形成し、第2レンズL2と第3レンズL3を樹脂材料で形成することが望ましい。
【0064】
このように、外部環境に直接触れる第1レンズL1をガラスレンズとすることにより、耐候性の高い撮像レンズを得ることができる。また、第2レンズL2と第3レンズL3をプラスチックレンズとすることで、安価で軽量な撮像レンズを得ることができる。
【0065】
条件式(3):1.0<f3/f<2.5は、像面湾曲やバックフォーカスBfに関するものである。条件式(3)を満足するようにレンズ系を構成すれば、像面湾曲を良好に補正できるとともに、フィルター等の光学部材を挿入するためのバックフォーカスBfを確保することができる。
【0066】
しかしながら、条件式(3)の上限以上となるように、すなわち、f3/fの値が2.5以上となるようにレンズ系を構成すると、像面湾曲を良好に補正することが困難となる。一方、条件式(3)の下限以下となるように、すなわち、f3/fの値が1.0以下となるようにレンズ系を構成すると、第3レンズL3のパワーが強くなりすぎてバックフォーカスBfが短くなってしまい、第3レンズL3と撮像素子10との間にカバーガラスや各種フィルターを挿入することが困難となる。
【0067】
なお、バックフォーカスは、撮像レンズを構成するレンズ面のうち最も像側に位置するレンズ面からこの撮像レンズの結像面までの距離であり、上記最も像側のレンズ面から結像面までの間にフィルタやカバーガラス等の光学部材が配されている場合には、その光学部材の厚みを空気換算して定められる最も像側のレンズ面から結像面までの距離である。
【0068】
空気間隔D2は、1.5mm以上とすることが望ましい。空気間隔D2を1.5mm以上とすることで、広角化を達成することが容易となる。
【0069】
第3レンズは、両凸レンズであることが望ましい。
【0070】
条件式(4):2.5<|f1/f23|<4.2は、像面湾曲やコマ収差に関するものである。条件式(4)を満足するようにレンズ系を構成すれば、像面湾曲およびコマ収差を良好に補正することができる。
【0071】
しかしながら、条件式(4)の上限以上となるように、すなわち、|f1/f23|の値が4.2以上となるようにレンズ系を構成すると、像面湾曲を良好に補正することが困難となる。一方、条件式(4)の下限以下となるように、すなわち、|f1/f23|の値が2.5以下となるようにレンズ系を構成すると、コマ収差を良好に補正することが困難となる。
【0072】
なお、|f1/f23|は、f1/f23の値の絶対値を意味する。
【0073】
条件式(5):6.0<L/f<10.0は、広角化の度合いやレンズ系の大きさに関するものである。条件式(5)を満足するようにレンズ系を構成すれば、レンズ系の広角化と小型化を両方共に達成することができる。
【0074】
しかしながら、条件式(5)の上限以上となるように、すなわち、L/fの値が10.0以上となるようにレンズ系を構成すると、広角化を容易に達成できるが、レンズ系が大型化してしまう。一方、条件式(5)の下限以下となるように、すなわち、L/fの値が6.0以下となるようにレンズ系を構成するとこのレンズ系を小型化することはできるが、レンズ系の広角化を達成することが困難となる。
【0075】
第1レンズL1を構成する材料のd線に対する屈折率N1の値は1.6以上、1.9以下とすることが望ましい。
【0076】
屈折率N1を1.6以下にすると、広角化を達成するために物体側のレンズ面S1の曲率半径を大きくしなければならずディストーションを良好に補正することが困難となる。また、上記屈折率N1を1.9以上にすると、第1レンズL1を構成する材料のアッベ数が小さくなり、色収差が大きくなってしまう。またレンズ材料のコストも高くなり撮像レンズのコストアップの原因となってしまう。
【0077】
条件式(6):1.4<ED/R2<1.9は、第1レンズL1の像側のレンズ面S2の加工性やディストーションの補正に関するものである。条件式(6)を満足するようにレンズ系を構成すると、レンズの加工が容易になるとともにディストーションを良好に補正することができる。
【0078】
しかしながら、条件式(6)の上限以上となるように、すなわち、ED/R2の値を1.9以上にすると像側のレンズ面S2が半球に近い形状となりレンズの加工が困難となって、第1レンズL1の製造コストが上昇してしまう。
【0079】
一方、条件式(6)の下限以下となるように、すなわち、ED/R2の値を1.4以下にすると、レンズの加工は容易となるが、ディストーションを良好に補正することが困難となる。
【0080】
条件式(7)−7.0<f2/f3<−2.5は、像面湾曲やバックフォーカスBfに関するものである。条件式(7)を満足するようにレンズ系を構成すると、像面湾曲を良好に補正できるとともに、フィルター等の光学部材を挿入するための大きなバックフォーカスBfを確保することができる。
【0081】
しかしながら、条件式(7)の上限以上となるように、すなわち、f2/f3の値が−2.5以上になるようにレンズ系を構成すると像面湾曲の補正が困難となる。一方、条件式(7)の下限以下となるように、すなわち、f2/f3の値が−7.0以下になるようにレンズ系を構成するとバックフォーカスBfが小さくなり、レンズ系と撮像素子との間にフィルタやカバーガラスなどを配置することが困難となる。
【0082】
条件式(8):0.5<D3/f<1.8は、レンズ系の大きさと第2レンズL2の加工性に関するものである。条件式(8)を満足するようにレンズ系を構成すると、レンズ系の小型化と第2レンズL2の良好な加工性を両立させることができる。
【0083】
しかしながら、条件式(8)の上限以上となるように、すなわち、D3/fの値が1.8以上となるようにレンズ系を構成すると、レンズ系が大型化してしまう。一方、条件式(8)の下限以下となるように、すなわち、D3/fの値が0.5以下になるようにレンズ系を構成すると第2レンズL2の光軸上における厚み(以後、中心厚ともいう)が小さくなりすぎて加工が困難となり、第2レンズL2の製造コストが上昇してしまう。
【0084】
条件式(9):0.5<D1/f<1.20は、レンズ系の大きさと第1レンズL1の強度に関するものである。条件式(9)を満足するようにレンズ系を構成すると、レンズ系を大型化することなく第1レンズL1の強度を所定の外力に耐えられるようにすることができる。
【0085】
しかしながら、条件式(9)の上限以上となるように、すなわち、D1/fの値が1.20以上になるようにレンズ系を構成すると、第1レンズL1の中心厚が厚くなりすぎてレンズ系が大型化してしまう。一方、条件式(9)の下限以下となるように、すなわち、D1/fの値が0.5以下になるようにレンズ系を構成すると、第1レンズL1が薄くなりすぎて所定の外力に耐えられるだけの強度が得られなくなる。
【0086】
なお、第1レンズL1の中心厚D1は0.7mm以上とすることが望ましい。中心厚D1を0.7mm以上とすることで、レンズ系を割れにくくすることが可能となる。さらに、中心厚D1を1.0mm以上、より望ましくは1.2mm以上とすることで、第1レンズL1をさらに割れにくくすることができる。
【0087】
条件式(10):1.0<D2/f<2.0は、レンズ系の大きさと第1レンズL1と第2レンズL2との位置関係に関するものである。条件式(10)を満足するようにレンズ系を構成すると、レンズ系を大型化することなく、第1レンズL1と第2レンズL2との位置関係を適切に定めることができる。
【0088】
しかしながら、条件式(10)の上限以上となるように、すなわち、D2/fの値が2.0以上となるようにレンズ系を構成すると、レンズ系が大型化してしまう。一方、条件式(10)の下限以下となるように、すなわち、D2/fの値が1.0以下となるようにレンズ系を構成すると、第1レンズL1と第2レンズL2とが近接しすぎるため、広角化が困難となる。
【0089】
条件式(11):R3/R4<0.5は、第2レンズL2のパワーに関するものである。条件式(11)を満足するようにレンズ系を構成すると、広角化を容易に達成することができる。
【0090】
しかしながら、条件式(11)の上限以上となるように、すなわち、R3/R4の値が0.5以上となるようにレンズ系を構成すると、第2レンズL2の負のパワーが弱くなってしまい広角化を達成することが困難となる。
【0091】
撮像レンズ20には、青色光をカットする青色光カット手段や赤色光をカットする赤色光カット手段を備えるようにしてもよい。
【0092】
本実施の形態の撮像レンズは、第1レンズL1、第2レンズL2、および第3レンズL3それぞれのレンズ材料としてd線に対するアッベ数が40以上のものを適用することにより、色収差を使用上問題のない範囲に抑えることができる。しかしながら、実際の撮影時に倍率の色収差が顕著に表れる青色光や赤色光をカットする青色光カット手段や赤色光カット手段を備えることにより、撮像レンズで撮影され出力される画像の品質をより高めることができる。
【0093】
なお、青色光カット手段と赤色光カット手段とを両方共に備えるようにすれば、撮像レンズを通して撮影され出力される画像の品質をさらに向上させることができる。
【0094】
青色光カット手段および赤色光カット手段は、光学フィルタであることが望ましい。
【0095】
この光学フィルタは、第1レンズL1と第2レンズL2との間、あるいは第2レンズL2と第3レンズL3との間に配置することが望ましい。しかしながら、この光学フィルタを、第3レンズL3と撮像素子10との間に配置したり(すなわち、光学部材CG1として配置したり)、第1レンズL1の物体側のレンズ面S1よりもさらに物体側に配置するようにしても良い。
【0096】
また、上記青色光カット手段および赤色光カット手段は、いずれかのレンズ面上にコーティングを施して形成した薄膜としたり、または、撮像面保護用のカバーガラス上にコーティングを施して形成した薄膜としたり、あるいは、このカバーガラスを青色光または赤色光を吸収する材料で形成したものとしてもよい。
【0097】
図3は縦軸に透過率ε、横軸に波長λを示す座標上に青色光カット手段の青色光遮断特性FL1および赤色光カット手段の赤色光遮断特性FL2を示す図である。
【0098】
図3に示すように、青色光カット手段は、350nmから450nmの間に半値T1を持つ青色光遮断特性を有するものとすることができる。このように青色光遮断特性の半値T1を350nmから450nmの間とすれば、レンズ系を通して取得した画像の色味の変化を抑えながら画質を向上させることが可能となる。
【0099】
また、青色光カット手段は、380nmから430nmの間に半値を持つ青色光遮断特性を有するものとしてもよい。半値を380nmから430nmの間とすれば、レンズ系を通して取得した画像の色味の変化を最小限に抑えながら画質を向上させることが可能となる。
【0100】
また、図3に示すように、赤色光カット手段は650nmから750nmの間に半値T2を持つ赤色光遮断特性を有するものとすることができる。このように赤色光遮断特性の半値T2を650nmから750nmの間とすれば、レンズ系を通して取得した画像の色味の変化を抑えながら画質を向上させることが可能となる。
【0101】
また、撮像レンズ20が、例えば車載カメラや監視カメラのような厳しい環境下において使用される場合、第1レンズL1の材料には高い耐候性が要求されるため、耐水性、耐酸性、耐薬品性等に優れた材料を用いることが望ましい。また、第1レンズL1の材料として堅い材質を用いることが望ましい。
【0102】
第1レンズL1の材料としてガラスを用いることが好ましい。また、第1レンズL1の材料として透明なセラミクスを用いてもよい。第1レンズL1を形成する材料をガラスやセラミックスとすることで、撮像レンズを耐候性に優れた割れにくいレンズとすることができる。
【0103】
第2レンズL2および第3レンズL3はプラスチックレンズとすることが望ましい。
【0104】
第2レンズL2と第3レンズL3をプラスチックレンズとすることで、非球面の形状を正確に形成することができ、また、これらのレンズを安価に作製することができる。
【0105】
なお、第2レンズL2および第3レンズL3を構成するプラスチック材料として、プラスチックの素材に光の波長より小さな粒子を混合させたいわゆるナノコンポジット材料を用いてもよい。
【0106】
◇レンズ面S4に付加される構成について
図4は撮像レンズ20の第2レンズL2の像側のレンズ面S4における近軸の曲率半径と有効径端の曲率半径とを示す断面図である。
【0107】
第2レンズL2の像側のレンズ面S4は、非球面とすることが望ましく、近軸領域が凸面をなし有効径端が凹面をなす非球面とすることがより望ましい。
【0108】
このようにレンズ面S4を、近軸領域で凸面をなし、有効径端では凹面をなすものとすることで、像面湾曲を良好に補正することができる。
【0109】
上記近軸領域で凸面をなし有効径端では凹面をなすレンズ面S4の形状は、図4に示すように、レンズ面S4の有効径端における1点をX4としてその点X4での法線H4と光軸Z1との交点をP4とし、レンズ面S4と光軸Z1との交点をC4としたときに、点P4が点C4よりも像側にあるような形状であって、レンズ面S4の近軸領域Kj4が凸面をなす形状である。
【0110】
図4中に示す円Urx4は、有効径端上の点X4においてレンズ面S4と接し、レンズ面S4の有効径端(点X4)における曲率半径と同じ曲率半径を持つ円であって、中心が光軸Z1上に位置する円である。この図4中に示す円Urx4は、有効径端での内接円を表す。
【0111】
図4中に示す円Ur4は、近軸領域Kj4上の上記点C4においてレンズ面S4と接し、近軸の曲率半径と同じ曲率半径を持つ円であって、中心が光軸Z1上に位置する円である。
【0112】
なお、レンズ面S4における有効径端の曲率半径の絶対値は、点X4から点P4までの長さ|RX4|である。
【0113】
ここで、レンズ面S4の有効径端の曲率半径の絶対値|RX4|が、レンズ面S4の近軸の曲率半径の絶対値|R4|の0.5倍以下(|RX4/R4|≦0.5)であることが望ましい。レンズ面S4の形状をこのように定めることにより、像面湾曲を良好に補正することができる。
【0114】
また、レンズ面S4の有効径端の曲率半径の絶対値|RX4|が、レンズ面S4の近軸の曲率半径の絶対値|R4|の0.3倍以下(|RX4/R4|≦0.3)としてもよい。レンズ面S4の形状をこのように定めることにより、像面湾曲をさらに良好に補正することができる。
【0115】
◇レンズ面S6に付加される構成について
図5は撮像レンズの第3レンズL3の物体側のレンズ面S6における近軸の曲率半径と有効径端の曲率半径とを示す拡大断面図である。なお、図5は実施例6の第3レンズの拡大図を適用したものである。
【0116】
第3レンズL3の物体側のレンズ面S6は非球面とすることが望ましい。
【0117】
このレンズ面S6は近軸領域と有効径端がともに凸面をなし、有効径端の曲率半径の絶対値が近軸の曲率半径の絶対値よりも大きくなっていることが望ましい。
【0118】
上記近軸領域と有効径端がともに凸面をなすレンズ面S6の形状は、図5に示すようにレンズ面S6の有効径端における1点をX6としてその点X6での法線H6と光軸Z1との交点をP6とし、レンズ面S6と光軸Z1との交点をC6としたときに、点P6が点C6よりも像側にあるような形状であって、レンズ面S6の近軸領域Kj6が凸面をなす形状である。
【0119】
なお、レンズ面S6における近軸の曲率半径の絶対値を|R6|で、また、レンズ面S6における有効径端の曲率半径の絶対値を、点X6から点P6までの長さ|RX6|で示す。また、曲率半径を|R6|とする円をUr6、曲率半径を|RX6|とする円をUxr6で示す。この図5中に示す円Urx6は、有効径端での内接円を表す。
【0120】
ここで、レンズ面S6は近軸領域および有効径端がともに凸面をなし、有効径端の曲率半径の絶対値が近軸の曲率半径の絶対値よりも大きくなっているとは、点P6が点C6よりも像側にあり、有効径端の曲率半径の絶対値|RX6|が近軸の曲率半径の絶対値|R6|より大きく、レンズ面S6の近軸領域Kj6が凸面をなすことを意味する。
【0121】
このように、レンズ面S6の形状を定めることにより、球面収差と像面湾曲を良好に補正することが可能となる。
【0122】
なお、レンズ面S6は、近軸領域が凸面をなし、有効径端が凹面をなすものとしてもよい。
【0123】
ここで、レンズ面S6は近軸領域が凸面をなし、有効径端が凹面をなすとは、点P6が点C6よりも物体側にあり、レンズ面S6の近軸領域Kj6が凸面をなすことを意味する。
【0124】
このように、レンズ面S6の形状を定めることにより、球面収差と像面湾曲を良好に補正することが可能となる。
【0125】
ここで、レンズ面S6の近軸領域および有効径端がともに凸面をなす場合には、レンズ面S6の有効径端の曲率半径の絶対値|RX6|が、レンズ面S6の近軸の曲率半径の絶対値|R6|の1.0倍以上(1.0≦|RX6/R6|)であることが望ましい。レンズ面S6の形状をこのように定めることにより、球面収差と像面湾曲を良好に補正することができる。
【0126】
また、レンズ面S6の有効径端の曲率半径の絶対値|RX6|を、レンズ面S6の近軸の曲率半径の絶対値|R6|の1.2倍以上(1.2≦|RX6/R6|)とすることで、球面収差と像面湾曲をさらに良好に補正することが可能となる。
【0127】
◇レンズ面S7に付加される構成について
図6は撮像レンズの第3レンズL3の像側のレンズ面S7における近軸の曲率半径と有効径端の曲率半径とを示す拡大断面図である。なお、図6は実施例6の第3レンズの拡大図を適用したものである。
【0128】
第3レンズL3の像側のレンズ面S7は非球面とすることが望ましい。
【0129】
レンズ面S7は、上記レンズ面S6の場合と同様に、近軸領域と有効径端とがともに凸面をなし、有効径端の曲率半径の絶対値が近軸領域の曲率半径の絶対値よりも大きくなっていることが望ましい。
【0130】
上記近軸領域と有効径端がともに凸面をなすレンズ面S7の形状は、図6に示すようにレンズ面S7の有効径端における1点をX7としてその点X7での法線H7と光軸Z1との交点をP7とし、レンズ面S7と光軸Z1との交点をC7としたときに、点P7が点C7よりも物体側にあるような形状であって、レンズ面S7の近軸領域Kj7が凸面をなす形状である。
【0131】
なお、レンズ面S7における近軸の曲率半径の絶対値の長さを|R7|で、また、レンズ面S7における有効径端の曲率半径の絶対値の長さを、点X7から点P7までの長さ|RX7|で示す。また、曲率半径を|R7|とする円をUr7、曲率半径を|RX7|とする円をUxr7で示す。この図6中に示す円Urx7は、有効径端での内接円を表す。上述のように、各図中の円Urx3,4,6,7はいずれも有効径端での内接円を表している。
【0132】
ここで、レンズ面S7は近軸領域および有効径端がともに凸面をなし、有効径端の曲率半径の絶対値が近軸の曲率半径の絶対値よりも大きくなっているとは、点P7が点C7よりも物体側にあり、有効径端の曲率半径の絶対値|RX7|が近軸の曲率半径の絶対値|R7|より大きく、レンズ面S7の近軸領域Kj7が凸面をなすことを意味する。
【0133】
レンズ面S7をこのような形状とすることにより、球面収差と像面湾曲を良好に補正することができる。
【0134】
また、レンズ面S7の有効径端の曲率半径の絶対値|RX7|が、レンズ面S7の近軸の曲率半径の絶対値|R7|の1.1倍以上(1.1≦|RX7/R7|)であることが望ましい。レンズ面S7をこのような形状に定めることにより、球面収差と像面湾曲を良好に補正することができ、さらに、有効径端の曲率半径の絶対値|RX7|を、近軸の曲率半径の絶対値|R7|の1.2倍以上(1.2≦|RX7/R7|)とすれば、球面収差と像面湾曲をさらに良好に補正することができる。
【0135】
また、撮像レンズ20は、この撮像レンズ20を構成する全てのレンズを均質な材料によって形成する場合に限らず、屈折率分布型のレンズ等を用いてもよい。
【0136】
第2レンズL2と第3レンズL3の各レンズ面には非球面を採用してもよいし、一つの面もしくは複数の面に回折光学素子を採用してもよい。
【0137】
第1レンズL1や第2レンズL2の有効径外を通過する光束は迷光となって伝播し、その迷光が結像面に達するとゴーストが発生するため、第1レンズL1や第2レンズL2の有効径外のレンズ面上の領域に遮光手段である遮光板Sk1、Sk2を設けて迷光を遮断することが望ましい。
【0138】
この遮光板は、光を遮断する板材をレンズ上の有効径外の領域に配置したものとしたり、遮光塗料からなる被膜をレンズ上の有効径外の領域に塗布したものとすることができる。
【0139】
なお、後述する実施例では第1レンズにはすべてガラス球面レンズを用いているが、第1レンズの片側のレンズ面もしくは両側のレンズ面を非球面としてもよい。第1レンズをガラス非球面レンズとすることで、諸収差をさらに良好に補正することが可能となる。
【0140】
<具体的な実施例>
次に、図7〜図22および表1〜表9を参照し、実施例1〜実施例8の各撮像レンズに係る数値データ等についてまとめて説明する。なお、図7〜図14は、実施例1〜実施例8の撮像レンズそれぞれの概略構成を示す断面図であり、図1中の符号と一致する図7〜14中の符号は、互に対応する構成を示している。
【0141】
また、以下に示す表1〜表9は、実施例1〜実施例8の撮像レンズそれぞれの基本的なデータを示す表である。
【0142】
表1〜表8中の上左部(図中符号(a)で示す)にレンズデータを、上中央部(図中符号(b)で示す)に撮像レンズの概略仕様を示す。さらに、下左部(図中符号(c)で示す)にレンズ面の形状(非球面の形状)を表す非球面式の各係数を示す。下右部に、各レンズ面の有効径端における曲率半径の絶対値(図中符号(d))および各レンズ面の近軸領域における曲率半径の絶対値と有効径端における曲率半径の絶対値との比率(図中符号(e))を示す。
【0143】
なお、回転対象な形状をなすレンズを構成するレンズ面の有効径端は、レンズの光軸からの距離が一定な円形状をなす領域となる。
【0144】
表1〜表8中の上左部のレンズデータにおいて、レンズ等の光学部材の面番号を物体側から像側に向かうに従い順次増加するi番目(i=1、2、3、…)の面番号として示す。なお、これらのレンズデータには、開口絞りStの面番号(i=5)、および平行平面板である光学部材Cg1の物体側の面と像側の面の面番号(i=8、9)、結像面の面番号(i=10)等も含めて記載している。
【0145】
Riはi番目(i=1、2、3、…)の面の近軸曲率半径を示し、Di(i=1、2、3、…)はi番目の面とi+1番目の面との光軸Z1上の面間隔を示す。なお、レンズデータの近軸曲率半径を示す符号Riは、図1中のレンズ面を示す符号Si(i=1、2、3、…)と対応している。
【0146】
また、各レンズデータ中の、Ndjは物体側から像側に向かうに従い順次増加するj番目(j=1、2、3、…)の光学要素のd線(波長587.6nm)に対する屈折率を示し、νdjはj番目の光学要素のd線に対するアッベ数を示す。
【0147】
また、近軸曲率半径および面間隔の単位はmmであり、近軸曲率半径は物体側に凸の場合を正、像側に凸の場合を負としている。
【0148】
なお、各非球面は下記非球面式により定義される。
【数1】

【0149】
表1〜表8中の上中央部の概略仕様において、以下の各値を示す。
【0150】
Fナンバー:Fno、半画角:ω、像高:IH、バックフォーカス:Bf(in Air)、第1レンズの物体側のレンズ面から結像面までの距離:L(in Air)、第1レンズの像側のレンズ面の有効径:ED、レンズ全系の焦点距離(第1レンズ〜第6レンズの合成焦点距離):f、第1レンズの焦点距離:f1、第2レンズの焦点距離:f2、第3レンズの焦点距離:f3それぞれの値を概略仕様として示す。さらに、第2レンズと第3レンズの合成焦点距離:f23の値を概略仕様として示す。
【0151】
さらに、表1〜表8中の下左部に、各非球面Ri(i=3,4・・・)を表す非球面式の各係数K、A3、A4、A5・・・の値を概略仕様として示す。
【0152】
なお、表1〜表8中の下右部には、上記のように各レンズ面の有効径端における曲率半径の絶対値(図中符号(d))、および各レンズ面の近軸領域における曲率半径の絶対値と有効径端における曲率半径の絶対値との比率(図中符号(e))を示す。
【0153】
表9は、条件式(1)〜(11)の各パラメータの値を1〜8の各実施例毎に示すものである。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【0154】
図14〜21は、実施例1〜実施例8の撮像レンズそれぞれの諸収差を示す図である。図14〜21それぞれは、各実施例の撮像レンズ毎の、d線(波長587.6nm)、F線(波長486.1nm)、C線(波長656.3nm)についての収差を示している。
【0155】
なお、各図の上部が縦収差、下部が横収差を示している。
【0156】
下部の横収差はコマ収差を示している。さらに、各図中の下部には、左右方向に、タンジェンシャル方向のコマ収差とサジタル方向のコマ収差とを対応させて示している。
【0157】
なお、ディストーションの図は、全系の焦点距離f、半画角θ(変数扱い、0≦θ≦ω)を用いて、理想像高をf×tanθとし、それからのずれ量を示す。
【0158】
収差図中においてd線(587.6nm)は実線で表示し、F線(486.1nm)は1点鎖線で表示し、C線(656.3nm)は2点鎖線で表示している。
【0159】
実施例1〜8の基本的なデータおよび諸収差を示す図等から分かるように、本発明の広角の撮像レンズによれば、レンズそれぞれの形状や材質の最適化を図ることで、小型、軽量、広角である撮像レンズの特性を維持するとともに、装置コストを増大させることなく光学性能を高めることができる。
【0160】
なお、本発明は、上記実施の形態および各実施例に限定されず種々の変形実施が可能である。例えば、各レンズ成分の曲率半径、面間隔および屈折率の値などは、上記各図中に示した数値に限定されず、他の値を取り得る。
【0161】
図23は、本発明の撮像レンズと、この撮像レンズによって結像された光学像を形成する光を受光し電気信号に変換して出力する撮像素子とを備えた、本発明の撮像装置の1例である車載カメラを搭載した自動車を示す図である。
【0162】
図23に示すように、本発明の撮像装置を備えた車載機器502〜504は、自動車501等に搭載して使用することができる。車載機器502は、助手席側の側面の死角範囲を撮像するための車外カメラであり、車載機器503は、自動車1の後方の死角範囲を撮像するための車外カメラである。また、車載機器504は、ルームミラーの背面に取り付けられ、ドライバーと同じ視野範囲を撮影するための車内カメラである。
【符号の説明】
【0163】
10 撮像素子
20 撮像レンズ
100 撮像装置
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
St 開口絞り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から、負の第1レンズ、近軸領域で物体側に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第2レンズ、絞り、正の第3レンズをこの順に備え、
前記第2レンズの物体側のレンズ面が、該レンズ面の有効径端では凸面をなすものであり、
前記第1レンズ、第2レンズ、および第3レンズが、いずれもd線に対するアッベ数が40以上であり、
以下の条件式(1)および(2)を満足するものであることを特徴とする撮像レンズ。
−9.5<f2/f<−4.0 ・・・(1)
0.6<(D4+D5)/f<1.5 ・・・(2)
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f2:前記第2レンズの焦点距離
D4:前記第2レンズと絞りとの間隔
D5:前記絞りと第3レンズとの間隔
【請求項2】
以下の条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1記載の撮像レンズ。
1.0<f3/f<2.5 ・・・(3)
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f3:前記第3レンズの焦点距離
【請求項3】
前記第2レンズの像側のレンズ面が、近軸領域で凸面をなし、有効径端では凹面なすものであることを特徴とする請求項1または2記載の撮像レンズ。
【請求項4】
前記第3レンズの像側のレンズ面が、近軸領域で凸面をなし、有効径端では前記近軸領域よりも正のパワーが弱くなるものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の撮像レンズ。
【請求項5】
前記第3レンズの像側のレンズ面の有効径端の曲率半径の絶対値が、前記第3レンズの像側のレンズ面の近軸曲率半径の絶対値の1.1倍以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の撮像レンズ。
【請求項6】
前記第3レンズが、近軸領域で両凸形状をなすものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の撮像レンズ。
【請求項7】
以下の条件式(4)を満足することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の撮像レンズ。
2.5<|f1/f23|<4.2 ・・・(4)
ただし、
f1:第1レンズの焦点距離
f23:第2レンズと第3レンズの合成焦点距離
【請求項8】
以下の条件式(5)を満足することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の撮像レンズ。
6.0<L/f<10.0 ・・・(5)
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
L:第1レンズの物体側のレンズ面から撮像レンズの結像面までの距離
【請求項9】
前記第1レンズがガラスレンズであり、前記第2レンズおよび前記第3レンズがプラスチックレンズであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の撮像レンズ。
【請求項10】
前記撮像レンズが、青色光をカットする青色光遮断手段を備えたことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の撮像レンズ。
【請求項11】
前記撮像レンズが、赤色光をカットする赤色光遮断手段を備えたことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の撮像レンズ。
【請求項12】
前記請求項1から11いずれか1項記載の撮像レンズと、該撮像レンズにより形成される光学像を電気信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−164960(P2010−164960A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283593(P2009−283593)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】