説明

撮像レンズおよび撮像装置

【課題】撮像レンズにおいて、可視域から近赤外域までの広い波長域で良好な光学性能を保持しながら、長いバックフォーカスと小さなF値を有し、小型で安価に構成する。
【解決手段】最も物体側に配置されて物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負の第1レンズL1と、最も像側に配置されて最も物体側の面が凸面である接合レンズLCと、該接合レンズの物体側の直前に配置された絞りとを備え、下記条件式を満足する。
0.05<(R2−R1)/(R1+R2)<0.25 … (1)
νd1−νd2>15 … (2)
ただし、
R1:第1レンズの物体側の面の曲率半径
R2:第1レンズの像側の面の曲率半径
νd1:前記接合レンズを構成するレンズのうち最も物体側のレンズのd線に対するアッベ数
νd2:前記接合レンズを構成するレンズのうち最も像側のレンズのd線に対するアッベ数

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像レンズおよび撮像装置に関し、より詳しくは、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を用いた車載用カメラ、携帯端末用カメラ、監視カメラ等に使用されるのに好適な撮像レンズ、および該撮像レンズを備えた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CCDやCMOS等の撮像素子は近年非常に小型化及び高画素化が進んでいる。それとともに、これら撮像素子を備えた撮像機器本体も小型化が進み、それに搭載される撮像レンズにも小型化、軽量化が求められている。
【0003】
一方、車載用カメラや監視カメラなどでは、寒冷地の外気から熱帯地方の夏の車内まで高い耐候性を持ちながら広い温度範囲で使用可能な、安価で高性能のレンズが求められている。
【0004】
特許文献1には、物体側から順に、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正の第1レンズと、正の第2レンズと、負の第3レンズと、絞りと、負の第4レンズおよび正の第5レンズの接合レンズとが配列されてなる中望遠レンズが記載されている。また、特許文献2には、物体側から順に、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正の3枚のレンズからなる第1レンズ群と、メニスカス形状の負のレンズからなる第2レンズ群と、絞りと、負のレンズおよび正のレンズの接合レンズからなる第3レンズ群と、1枚以上の正のレンズからなる第4レンズ群とが配列されてなる中望遠レンズが記載されている。
【特許文献1】特開平11−271610号公報
【特許文献2】特開平5−224119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車載用カメラや監視カメラは昼夜を通して使用されるものであり、特に、車載用カメラは、昼間は可視光、夜間は近赤外光による撮影を行うため、可視域から近赤外域までの広い波長域に対応した光学系が必要となる。また、低照度での撮影に対応するため、大口径比で明るい光学系が必要となる。さらに、レンズ系と撮像素子との間にカバーガラスやフィルタ等を配置することを考えると、バックフォーカスが長い光学系が好ましい。
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載の中望遠レンズは、可視域の収差補正は考慮されているものの、近赤外域の性能は保証されていない。また、特許文献1に記載のものは、F値が4程度の暗い光学系となっており、夜間での使用に不向きである。特許文献2に記載のものは、レンズ枚数が7〜8枚と多いことから光学系が大型になり高コストになる上に、非球面レンズを使用しているため加工・組立時の要求精度が厳しくなり結局コストアップにつながる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、可視域から近赤外域までの広い波長域で良好な光学性能を保持しながら、長いバックフォーカスと小さなF値を有し、小型で安価な撮像レンズ、および該撮像レンズを備えた撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の撮像レンズは、最も物体側に配置されて物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負の第1レンズと、最も像側に配置されて最も物体側の面が凸面である接合レンズと、該接合レンズの物体側の直前に配置された絞りとを備え、下記条件式を満足することを特徴とするものである。
0.05<(R2−R1)/(R1+R2)<0.25 … (1)
νd1−νd2>15 … (2)
ただし、
R1:第1レンズの物体側の面の曲率半径
R2:第1レンズの像側の面の曲率半径
νd1:最も像側の接合レンズを構成するレンズのうち最も物体側のレンズのd線に対するアッベ数
νd2:最も像側の接合レンズを構成するレンズのうち最も像側のレンズのd線に対するアッベ数
【0009】
なおここで、「接合レンズの物体側の直前に配置された絞り」の「直前」とは、距離的なものを意味するのではなく、接合レンズと絞りとの間に、別の光学要素が入らないという意味である。
【0010】
なおここで、第1レンズが非球面レンズのときは、条件式(1)のR1,R2として近軸の曲率半径を用いるものとする。
【0011】
本発明の第1の撮像レンズにおいては、最も物体側に配置されて物体側に凹面を向けた負メニスカスの第1レンズにより、バックフォーカスが長く、F値が小さな明るい光学系を得やすくなる。条件式(1)を満たすように第1レンズの負のパワーを規定することにより、長いバックフォーカスと諸収差の良好な補正を両立させやすくなる。また、本発明の第1の撮像レンズにおいては、最も像側に接合レンズを配置し、条件式(2)を満たすようにこの接合レンズの材質の分散特性を規定することにより、コマ収差、非点収差の抑制と広い波長域での倍率色収差の良好な補正を両立させやすくなる。そして、上記構成を採用することにより、必ずしも非球面レンズを用いなくても小型で高性能の光学系を得ることが可能になる。
【0012】
この際に、本発明の第1の撮像レンズにおいて、最も像側の接合レンズを構成するレンズが全て正のレンズであるように構成することができる。
【0013】
本発明の第2の撮像レンズは、物体側から順に、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負の第1レンズと、物体側に凸面を向けた正の第2レンズと、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正の第3レンズと、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負の第4レンズと、絞りと、物体側に凸面を向けた正の第5レンズおよび正の第6レンズからなる接合レンズとを備えたことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第2の撮像レンズにおいては、最も物体側に配置されて物体側に凹面を向けた負メニスカスの第1レンズにより、バックフォーカスが長く、F値が小さな明るい光学系を得やすくなる。また、本発明の第2の撮像レンズにおいては、最も像側に接合レンズを配置し、第1〜第6レンズの各レンズの形状、パワー等の構成を上記のように好適に設定することにより、コマ収差、非点収差の抑制と広い波長域での倍率色収差の良好な補正を両立させやすくなり、必ずしも非球面レンズを用いなくても小型で高性能の光学系を得ることが可能になる。
【0015】
ここで、本発明の第1および第2の撮像レンズにおいては、下記条件式を満足することが好ましい。
0.10<(R2−R1)/(R1+R2)<0.20 … (1−1)
ただし、
R1:第1レンズの物体側の面の曲率半径
R2:第1レンズの像側の面の曲率半径
【0016】
また、本発明の第1および第2の撮像レンズにおいては、最も像側の接合レンズにおいて、各面の曲率半径の絶対値が、物体側から像側に向かうに従い大きくなるように構成してもよい。
【0017】
また、本発明の第1および第2の撮像レンズにおいては、全系の全てのレンズのd線に対する屈折率が1.75より大きいことが好ましく、さらには全系の全てのレンズのd線に対する屈折率が1.8より大きいことがより好ましい。
【0018】
また、本発明の第1および第2の撮像レンズにおいては、下記条件式を満足することが好ましい。
νd1−νd2>20 … (2−1)
ただし、
νd1:最も像側の接合レンズを構成するレンズのうち最も物体側のレンズのd線に対するアッベ数
νd2:最も像側の接合レンズを構成するレンズのうち最も像側のレンズのd線に対するアッベ数
【0019】
なお、上記条件式の各値は、e線(波長546.07nm)を基準波長としたものであり、本明細書においては特に断りのない限り、e線を基準波長とする。
【0020】
本発明の撮像装置は、上記記載の本発明の撮像レンズと、該撮像レンズにより形成される光学像を電気信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、各レンズの形状、パワー等の構成が好適に設定されているため、可視域から近赤外域までの広い波長域で良好な光学性能を保持しながら、長いバックフォーカスと小さなF値を有し、小型で安価な撮像レンズ、および該撮像レンズを備えた撮像装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。まず、本発明の撮像レンズの実施形態について説明し、その後で撮像装置の実施形態について説明する。
【0023】
図1に本発明の一実施形態にかかる撮像レンズ1のレンズ断面図を示す。図1には、軸上光線の最外周光線2、軸外光線の主光線3、軸外光線の最外周光線4も合わせて示してある。なお、この図1に示す構成例は、図2に示す後述の実施例1のレンズ構成に対応している。また、図3〜図7には、本発明の実施形態にかかる撮像レンズの別の構成例のレンズ断面図を示しており、これらは後述の実施例2〜6のレンズ構成に対応している。実施例1〜6の撮像レンズは、基本的なレンズ構成は同じであるため、以下では本発明の実施形態にかかる撮像レンズとして、図1に示す構成例の撮像レンズ1を例にとり説明する。
【0024】
撮像レンズ1は、物体側から順に、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負の第1レンズL1と、物体側に凸面を向けた正の第2レンズL2と、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正の第3レンズL3と、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負の第4レンズL4と、開口絞りStと、物体側に凸面を向けた正の第5レンズL5および正の第6レンズL6からなる接合レンズLCとが配列されてなる。
【0025】
なお、図1における開口絞りStは形状や大きさを表すものではなく光軸Z上の位置を示すものである。また、図1では、撮像レンズ1が撮像装置に適用される場合を考慮して、撮像レンズの結像位置Pimを含む像面に配置された撮像素子5も図示している。撮像素子5は、撮像レンズにより形成される光学像を電気信号に変換するものであり、例えばCCDイメージセンサ等からなる。
【0026】
図1では示していないが、撮像レンズ1を撮像装置に適用する際には、撮像レンズ1と撮像素子5との間に、レンズを装着するカメラ側の構成に応じて、カバーガラスや、ローパスフィルタ、赤外線カットフィルタ、紫外線カットフィルタなどの各種フィルタを配置することが好ましい。例えば、本撮像レンズが、車載カメラに使用され、夜間の視覚補助用の暗視カメラとして使用される場合には、レンズ系と撮像素子との間に紫外光から青色光をカットするようなフィルタを挿入することが好ましい。このようなカバーガラスやフィルタ等を余裕を持って配置し、取付時に調整できるように、撮像レンズ1は長いバックフォーカスを有する光学系となっている。
【0027】
撮像レンズ1において、最も物体側に配置された第1レンズL1は、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負のレンズであり、これにより、長いバックフォーカスを確保することが容易になるとともに、F値が小さな明るい光学系を得ることが容易になる。
【0028】
撮像レンズ1は、下記条件式(1)を満足することが好ましい。
0.05<(R2−R1)/(R1+R2)<0.25 … (1)
ただし、R1は第1レンズL1の物体側の面の曲率半径であり、R2は第1レンズL1の像側の面の曲率半径である。
【0029】
条件式(1)は、最も物体側に配置される第1レンズL1の負のパワーに関する好適な範囲を規定するものである。条件式(1)の下限を超えると、長いバックフォーカスの確保、軸上色収差の補正、像面湾曲の補正が困難になる。条件式(1)の上限を超えると、像面湾曲、倍率色収差を補正しきれなくなる。
【0030】
撮像レンズ1は、さらに下記条件式(1−1)を満足することがより好ましい。
0.10<(R2−R1)/(R1+R2)<0.20 … (1−1)
さらに、条件式(1−1)を満足することにより、長いバックフォーカスの確保、軸上色収差の補正、像面湾曲の補正、倍率色収差の補正がより容易になる。
【0031】
撮像レンズ1において、最も像側の接合レンズLCは、下記条件式(2)を満足することが好ましい。
νd1−νd2>15 … (2)
ただし、νd1は最も像側の接合レンズLCを構成するレンズのうち最も物体側のレンズのd線に対するアッベ数であり、νd2は最も像側の接合レンズLCを構成するレンズのうち最も像側のレンズのd線に対するアッベ数である。
【0032】
条件式(2)は、最も像側に配置された接合レンズの材質の分散特性の好適な範囲を規定するものである。条件式(2)を満足することで、コマ収差、非点収差を抑制しつつ倍率色収差を良好に補正することが容易となる。
【0033】
撮像レンズ1は、さらに下記条件式(2−1)を満足することがより好ましい。
νd1−νd2>20 … (2−1)
さらに条件式(2−1)を満足することにより、コマ収差、非点収差を抑制しつつ倍率色収差を良好に補正することがより容易になる。
【0034】
また、最も像側の接合レンズLCにおいて、各面の曲率半径の絶対値が、物体側から像側に向かうに従い大きくなるように構成することが好ましく、図1に示す撮像レンズ1はそのように構成されている。この構成により、長いバックフォーカスを確保するとともに、軸上色収差と倍率の色収差のバランスをとりつつ、像面湾曲を良好に保つことができる。
【0035】
なお、接合レンズLCの最も物体側の面である、第5レンズL5の物体側の面が、物体側に凸面を向けるよう構成した場合には、収差補正上有利となる。
【0036】
図1に示す撮像レンズ1の接合レンズLCの接合面は、像側に曲率中心を有する。また、後述の実施例2〜6の撮像レンズにおいても、この接合面は、像側に曲率中心を有する(曲率半径の符号が正)か、あるいは物体側に曲率中心を有する(曲率半径の符号が負)場合は小さな曲率を有するものである。かかる構成によれば、接合面に対する軸外光線の入射角度が大きくなり、効果的に倍率色収差を補正することができる。
【0037】
また、接合レンズLCの接合面の曲率を大きくしなくても、本撮像レンズ1のようにF値の小さな光学系では、軸上光線の外周光線と接合面のなす角が大きくなるため、軸上色収差についても効果的に補正することができる。
【0038】
撮像レンズ1において、接合レンズLCは、2つの正のレンズ(第5レンズL5、第6レンズL6)を接合したものである。本発明の撮像レンズは、このように、最も像側に配置される接合レンズを全て正のレンズで構成することができる。かかる構成によれば、バックフォーカスを長くとりつつ、色収差と像面湾曲を補正するのに有利となる。
【0039】
このような正のレンズからなる接合レンズLCの構成は、ゴースト防止、ゴースト低減の点からも好ましいものである。仮に、最も像側のレンズを負のレンズとした場合、全系の最も像側のレンズ面(以下、最終面という)が曲率の大きな凹面となり、撮像素子5で反射した光が最終面で再度反射して撮像素子5上に再び集光し、強度の強いフレア、つまりゴーストとなる可能性がある。これに対して、本撮像レンズ1では、最も像側のレンズを正のレンズとすることで、最終面を凸面または曲率の小さな凹面とすることができ、撮像素子5で反射して最終面で再度反射したフレア光が撮像素子5上で高密度に集光するのを防止することができる。
【0040】
撮像レンズ1を構成する第1レンズL1〜第6レンズL6は、物体側から順に、負、正、正、負、正、正のパワー配置を有しており、負の第1レンズL1で長いバックフォーカスを有するように入射光束を拡大した後、正の第2、第3レンズL2,L3で徐々に光束を収束していき、一旦負の第4レンズL4で正負の収差のバランスをとった後、正の第5、第6レンズL5,L6により光束を収束して結像させるものである。また、撮像レンズ1は、両凸形状や両凹形状に比べて収差発生量が少ないメニスカスレンズを多用することにより、全体の収差発生量を低減でき、特にコマ収差、非点収差を良好に抑制して、小さなF値を確保しながら高い光学性能を実現することができる。
【0041】
また、隣接して配置される第3レンズL3,第4レンズL4,第5レンズL5をそれぞれ、物体側に凸面を向けたメニスカス形状、物体側に凸面を向けたメニスカス形状、物体側に凸面を向けた形状とすることで、レンズ間隔を詰めてこれらのレンズを配置することが可能となり、小型化に寄与することができる。
【0042】
本実施形態にかかる撮像レンズにおいては、全系を構成する全てのレンズのd線に対する屈折率が1.75より大きいことが好ましく、さらにはこれら全てのレンズのd線に対する屈折率が1.8より大きいことが好ましい。小型化のためには個々のレンズのパワーが大きい方が好ましいが、パワーを大きくするために面の曲率半径を小さくすると色収差を始めとする諸収差の補正が困難になってしまう。面の曲率半径を小さくすることなく、パワーを大きくするためには、上記のように高い屈折率の材質を採用すればよく、これにより、諸収差を抑制しつつ小型化を図ることができる。
【0043】
なお、本撮像レンズが例えば車載用カメラ等の厳しい環境において使用される場合には、最も物体側に配置されるレンズは、風雨による表面劣化、直射日光による温度変化に強く、さらには油脂・洗剤等の化学薬品に強い材質、すなわち耐水性、耐候性、耐酸性、耐薬品性等が高い材質を用いることが好ましい。
【0044】
また、最も物体側に配置されるレンズの材質としては堅く、割れにくい材質を用いることが好ましく、具体的にはガラスもしくは透明なセラミックスを用いることが好ましい。セラミックスは通常のガラスに比べ強度が高く、耐熱性が高いという性質を有する。
【0045】
また、本撮像レンズが、例えば車載用カメラに適用される場合には、寒冷地の外気から熱帯地方の夏の車内まで広い温度範囲で使用可能なことが要求される。広い温度範囲で使用される場合には、レンズの材質としては線膨張係数の小さいものを用いることが好ましい。また、安価にレンズを製作するためには、全てのレンズが球面レンズであることが好ましい。
【実施例】
【0046】
次に、本発明にかかる撮像レンズの具体的な数値実施例について説明する。まず、実施例1を例にとり説明する。実施例1にかかる撮像レンズのレンズ構成図を図2に、レンズデータを表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1のレンズデータにおいて、Siは最も物体側の構成要素の面を1番目として像側に向かうに従い順次増加するi番目(i=1、2、3、…)の面番号を示し、Riはi番目の面の曲率半径を示し、Diはi番目の面とi+1番目の面との光軸Z上の面間隔を示し、Ndjは最も物体側の光学要素を1番目として像側に向かうに従い順次増加するj番目(j=1、2、3、…)の光学要素のd線に対する屈折率を示し、νdjはj番目の光学要素のd線に対するアッベ数を示す。表1において、曲率半径および面間隔の単位はmmであり、曲率半径は物体側に凸の場合を正、像側に凸の場合を負としている。なお、表1のレンズデータには開口絞りStも含めて示している。
【0049】
実施例2〜6にかかる撮像レンズのレンズ構成図を図3〜図7に、レンズデータを表2〜表6にそれぞれ示す。なお、図2〜図7では、結像位置Pimを含む像面に配置された撮像素子5も含めて示しており、図示の開口絞りStは形状や大きさを表すものではなく光軸Z上の位置を示すものである。また、各実施例において、レンズデータの表のRi、Di(i=1、2、3、…)は、レンズ構成図の符号Ri、Diと対応している。
【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
【表5】

【0054】
【表6】

【0055】
実施例1〜6の撮像レンズにおける各種データを表7に示す。表7において、焦点距離は全系の焦点距離であり、f5は第5レンズL5の焦点距離であり、f6は第6レンズL6の焦点距離であり、(R2−R1)/(R2+R1)は条件式(1)に対応する値であり、νd1−νd2は条件式(2)に対応する値であり、Ndminは全系のレンズにおけるd線の屈折率の最小値である。表7において、焦点距離、バックフォーカス、f5,f6の単位はmmであり、全画角の単位は度である。表7からわかるように、実施例1〜6は、条件式(1)、(2)を全て満たしている。
【0056】
【表7】

【0057】
上記実施例1〜6にかかる撮像レンズの球面収差、非点収差、ディストーション(歪曲収差)、倍率色収差の収差図をそれぞれ図8〜図13に示す。各収差図には、e線(波長546.07nm)を基準波長とした収差を示すが、球面収差図および倍率色収差図には、g線(波長435.83nm)、C線(波長656.3nm)、s線(波長852.11nm)についての収差も示す。ディストーションの図は、全系の焦点距離f、半画角θ(変数扱い、0≦θ≦ω)を用いて、理想像高をf×tanθとし、それからのずれ量を示す。球面収差図のFNo.はF値であり、その他の収差図のωは半画角を示す。
【0058】
以上のデータからわかるように、上記実施例1〜6は、F値が1.40〜1.46という小さな値でありながら、可視域から近赤外までの広い波長帯域にわたり、各収差が良好に補正されている。また、上記実施例1〜6は、フィルタ等の挿入が容易に可能な長いバックフォーカスを有し、小型に構成されている。さらに、上記実施例1〜6は、非球面を全く用いず全て球面レンズで構成されているため、安価に製造可能である。このような実施例1〜6の撮像レンズは、自動車の前方、側方、後方などの映像を撮影するための車載用カメラなどに好適に使用可能である。
【0059】
図14に使用例として、自動車100に本実施形態の撮像レンズおよび撮像装置を搭載した様子を示す。図14において、自動車100は、その助手席側の側面の死角範囲を撮像するための車外カメラ101と、自動車100の後側の死角範囲を撮像するための車外カメラ102と、ルームミラーの背面に取り付けられ、ドライバーと同じ視野範囲を撮影するための車内カメラ103とを備えている。車外カメラ101と車外カメラ102と車内カメラ103とは、撮像装置であり、本発明の実施形態による撮像レンズ1と、撮像レンズ1により形成される光学像を電気信号に変換する撮像素子5とを備えている。
【0060】
上述したように、本発明の実施形態にかかる撮像レンズ1は、可視域から近赤外域までの広い波長域で良好な光学性能を保持しながら、小さなF値を有し、小型に構成され、安価に製造可能なため、車外カメラ101、102および車内カメラ103も小型で安価に構成することができ、その撮像素子5の撮像面には可視域から近赤外までの広い波長帯域にわたり明るく良好な像を結像することができる。
【0061】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズ成分の曲率半径、面間隔および屈折率の値は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得るものである。
【0062】
また、撮像装置の実施形態では、本発明を車載用カメラに適用した例について図を示して説明したが、本発明はこの用途に限定されるものではなく、例えば、携帯端末用カメラや監視カメラ等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態にかかる撮像レンズの光路図
【図2】本発明の実施例1にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図3】本発明の実施例2にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図4】本発明の実施例3にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図5】本発明の実施例4にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図6】本発明の実施例5にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図7】本発明の実施例6にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図8】本発明の実施例1にかかる撮像レンズの各収差図
【図9】本発明の実施例2にかかる撮像レンズの各収差図
【図10】本発明の実施例3にかかる撮像レンズの各収差図
【図11】本発明の実施例4にかかる撮像レンズの各収差図
【図12】本発明の実施例5にかかる撮像レンズの各収差図
【図13】本発明の実施例6にかかる撮像レンズの各収差図
【図14】本発明の実施形態にかかる車載用の撮像装置の配置を説明するための図
【符号の説明】
【0064】
1 撮像レンズ
2 軸上光線の最外周光線
3 軸外光線の主光線
4 軸外光線の最外周光線
5 撮像素子
100 自動車
101、102 車外カメラ
103 車内カメラ
Di i番目の面とi+1番目の面との光軸上の面間隔
Pim 結像位置
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
L6 第6レンズ
LC 接合レンズ
Ri i番目の面の曲率半径
St 開口絞り
Z 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最も物体側に配置されて物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負の第1レンズと、最も像側に配置されて最も物体側の面が凸面である接合レンズと、該接合レンズの物体側の直前に配置された絞りとを備え、下記条件式を満足することを特徴とする撮像レンズ。
0.05<(R2−R1)/(R1+R2)<0.25 … (1)
νd1−νd2>15 … (2)
ただし、
R1:第1レンズの物体側の面の曲率半径
R2:第1レンズの像側の面の曲率半径
νd1:前記接合レンズを構成するレンズのうち最も物体側のレンズのd線に対するアッベ数
νd2:前記接合レンズを構成するレンズのうち最も像側のレンズのd線に対するアッベ数
【請求項2】
前記接合レンズを構成するレンズが全て正のレンズであることを特徴とする請求項1記載の撮像レンズ。
【請求項3】
物体側から順に、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負の第1レンズと、物体側に凸面を向けた正の第2レンズと、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正の第3レンズと、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負の第4レンズと、絞りと、物体側に凸面を向けた正の第5レンズおよび正の第6レンズからなる接合レンズとを備えたことを特徴とする撮像レンズ。
【請求項4】
下記条件式を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の撮像レンズ。
0.10<(R2−R1)/(R1+R2)<0.20 … (1−1)
ただし、
R1:第1レンズの物体側の面の曲率半径
R2:第1レンズの像側の面の曲率半径
【請求項5】
前記接合レンズにおいて、各面の曲率半径の絶対値が、物体側から像側に向かうに従い大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の撮像レンズ。
【請求項6】
全てのレンズのd線に対する屈折率が1.75より大きいことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の撮像レンズ。
【請求項7】
全てのレンズのd線に対する屈折率が1.8より大きいことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の撮像レンズ。
【請求項8】
下記条件式を満足することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の撮像レンズ。
νd1−νd2>20 … (2−1)
ただし、
νd1:前記接合レンズを構成するレンズのうち最も物体側のレンズのd線に対するアッベ数
νd2:前記接合レンズを構成するレンズのうち最も像側のレンズのd線に対するアッベ数
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載の撮像レンズと、
該撮像レンズにより形成される光学像を電気信号に変換する撮像素子と
を備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2009−151046(P2009−151046A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328236(P2007−328236)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】