撮像レンズおよび撮像装置
【課題】撮像レンズにおいて、小型かつ安価でありながら高い光学性能を持たせる。
【解決手段】物体側より順に、両凹レンズである第1レンズL1と、正のパワーを持つ第2レンズL2と、正のパワーを持つ第3レンズL3と、物体側に凹面を向けた負のパワーを持つメニスカスレンズである第4レンズL4とからなる撮像レンズ1において、第1レンズL1のアッベ数をνd1、第2レンズL2のアッベ数をνd2としたとき、下記条件式(1)を満足するようにする。
νd1+νd2≦65.5 (1)
【解決手段】物体側より順に、両凹レンズである第1レンズL1と、正のパワーを持つ第2レンズL2と、正のパワーを持つ第3レンズL3と、物体側に凹面を向けた負のパワーを持つメニスカスレンズである第4レンズL4とからなる撮像レンズ1において、第1レンズL1のアッベ数をνd1、第2レンズL2のアッベ数をνd2としたとき、下記条件式(1)を満足するようにする。
νd1+νd2≦65.5 (1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像レンズおよび撮像装置に関し、より詳しくは、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を用いた監視用カメラ、携帯端末用カメラ、車載用カメラ等に使用されるのに好適な撮像レンズ、および該撮像レンズを備えた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CCDやCMOS等の撮像素子は近年非常に小型化及び高画素化が進んでいる。それとともに、これら撮像素子を備えた撮像機器本体も小型化が進み、それに搭載される撮像レンズにも良好な光学性能に加え、小型化が求められている。一方、監視用カメラや車載用カメラ等の用途では、広角のレンズでありながら高い耐候性を持ち、小型で高性能を有するレンズが求められている。
【0003】
上記分野において従来知られている比較的レンズ枚数の少ない撮像レンズとしては、例えば下記特許文献1〜3に記載のものがある。特許文献1〜3には、4枚構成の撮像レンズが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−039207号公報
【特許文献2】特開2004−163986号公報
【特許文献3】特開2006−030290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の撮像レンズは、画角が60°程度に制限され、また色収差も残存している。また、上記特許文献2の実施例2に記載の撮像レンズは、広角化を満足していない。また、上記特許文献3の実施例3に記載の撮像レンズは、コンパクト性を優先し、画角が61°程度に制限されている。
【0006】
すなわち、上記特許文献1〜3には、広画角とコンパクト性を高次元で満足するものはなく、4枚構成のレンズ光学系においてさらなる広画角とコンパクト性の両立が望まれている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、広画角とコンパクト性を高次元で満足する撮像レンズおよびこの撮像レンズを備えた撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の撮像レンズは、物体側より順に、両凹レンズである第1レンズと、正のパワーを持つ第2レンズと、正のパワーを持つ第3レンズと、物体側に凹面を向けた負のパワーを持つメニスカスレンズである第4レンズとからなる撮像レンズにおいて、第1レンズのアッベ数をνd1、第2レンズのアッベ数をνd2としたとき、下記条件式(1)を満足することを特徴とするものである。
νd1+νd2≦65.5 (1)
【0009】
ここで、「両凹レンズである第1レンズ」、「正のパワーを持つ第2レンズ」、「正のパワーを持つ第3レンズ」、「物体側に凹面を向けた負のパワーを持つメニスカスレンズである第4レンズ」とは、各々光軸上における特性を意味する。
【0010】
また、第1レンズの焦点距離をf1、第2レンズの焦点距離をf2としたとき、下記条件式(2)を満足することが好ましい。
0.45<|f1/f2|<0.65 (2)
【0011】
また、下記条件式(3)を満足することが好ましい。
|νd1−νd2|<10.0 (3)
【0012】
また、第3レンズおよび第4レンズは、互いに接合されてなるものとすることが好ましい。
【0013】
本発明の撮像装置は、上記記載の撮像レンズを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の撮像レンズによれば、物体側より順に、両凹レンズである第1レンズと、正のパワーを持つ第2レンズと、正のパワーを持つ第3レンズと、物体側に凹面を向けた負のパワーを持つメニスカスレンズである第4レンズとからなる撮像レンズにおいて、第1レンズのアッベ数をνd1、第2レンズのアッベ数をνd2としたとき、下記条件式(1)を満足するように構成したので、広画角とコンパクト性を高次元で満足させた撮像レンズを実現することができる。
νd1+νd2≦65.5 (1)
【0015】
本発明の撮像装置は、本発明の撮像レンズを備えているため、広画角でありながら装置の構成を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図2】本発明の実施例2にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図3】本発明の実施例3にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図4】本発明の実施例4にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図5】本発明の実施例5にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図6】本発明の実施例6にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図7】本発明の実施例7にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図8】(a)〜(d)は本発明の実施例1にかかる撮像レンズの各収差図
【図9】(a)〜(d)は本発明の実施例2にかかる撮像レンズの各収差図
【図10】(a)〜(d)は本発明の実施例3にかかる撮像レンズの各収差図
【図11】(a)〜(d)は本発明の実施例4にかかる撮像レンズの各収差図
【図12】(a)〜(d)は本発明の実施例5にかかる撮像レンズの各収差図
【図13】(a)〜(d)は本発明の実施例6にかかる撮像レンズの各収差図
【図14】(a)〜(d)は本発明の実施例7にかかる撮像レンズの各収差図
【図15】本発明の実施形態にかかる監視用カメラ用の撮像装置の配置を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態にかかる撮像レンズの構成を示す断面図であり、後述の実施例1の撮像レンズに対応している。
【0019】
撮像レンズ1は、光軸Zに沿って物体側から順に、両凹レンズである第1レンズL1と、正のパワーを持つ第2レンズL2と、正のパワーを持つ第3レンズL3と、物体側に凹面を向けた負のパワーを持つメニスカスレンズである第4レンズL4とが配列されてなる。
【0020】
なお、図1における開口絞りStは形状や大きさを表すものではなく光軸Z上の位置を示すものである。
【0021】
なお、図1では、撮像レンズ1が撮像装置に適用される場合を考慮して、撮像レンズ1の結像位置を含む像面に配置された撮像素子5(Sim)も図示している。撮像素子5は、撮像レンズ1により形成される光学像を電気信号に変換するものであり、例えばCCDイメージセンサ等からなる。
【0022】
また、撮像装置に適用する際には、レンズを装着するカメラ側の構成に応じて、図1にPPとして示すように、第4レンズL4と像面との間に、カバーガラスや、ローパスフィルタまたは赤外線カットフィルタ等を配置することが好ましい。例えば、撮像レンズ1が、車載カメラに使用され、夜間の監視用カメラとして使用される場合には、第4レンズL4と像面との間に紫外光から青色光をカットするようなフィルタを挿入してもよい。
【0023】
なお、第4レンズL4と像面との間にローパスフィルタや特定の波長域をカットするような各種フィルタ等を配置する代わりに、各レンズの間にこれらの各種フィルタを配置してもよい。あるいは、撮像レンズ1が有するいずれかのレンズのレンズ面に、各種フィルタと同様の作用を有するコートを施してもよい。
【0024】
ここで、上記撮像レンズ1は、第1レンズのアッベ数をνd1、第2レンズのアッベ数をνd2としたとき、下記条件式(1)を満足するものである。このような構成とすることにより、90°程度の広画角を確保するとともに、倍率色収差を良好に補正することが可能となる。ここで、条件式(1)の上限を超えると、広画角域での倍率色収差の補正が困難になり、広画角での性能を維持出来なくなる。
νd1+νd2≦65.5 (1)
なお、条件式(1−1)を満足することがより好ましく、条件式(1−2)を満足すればさらに好ましい。ここで、条件式(1−1)および(1−2)の下限を下回ると、軸上色収差が大きくなってしまう。
【0025】
34.0≦νd1+νd2≦65.0 (1−1)
40.0≦νd1+νd2≦60.0 (1−2)
【0026】
また、上記撮像レンズ1は、下記条件式のいずれかあるいは全てを満足することが望ましい。
【0027】
第1レンズの焦点距離をf1、第2レンズの焦点距離をf2としたとき、下記条件式(2)を満足することが好ましい。ここで、条件式(2)の範囲から外れると、球面収差の補正が困難になり、性能低下につながる。
0.45<|f1/f2|<0.65 (2)
なお、条件式(2−1)を満足することがより好ましい。
【0028】
0.5<|f1/f2|<0.6 (2−1)
【0029】
また、下記条件式(3)を満足することが好ましい。ここで、条件式(3)の上限を超えると、倍率色収差の短波長側がオーバーになる傾向を補正できない。
|νd1−νd2|<10.0 (3)
なお、条件式(3−1)を満足することがより好ましく、条件式(3−2)を満足すればさらに好ましい。
【0030】
|νd1−νd2|<8.0 (3−1)
|νd1−νd2|<6.0 (3−2)
【0031】
また、第3レンズL3および第4レンズL4は、互いに接合されてなるものとすることが好ましい。このような態様とすることにより、倍率色収差を軽減させることができる。
【0032】
また、第3レンズL3は、両凸レンズとすることが好ましい。このような態様とすることにより、球面収差の発生を抑えると同時に、軸上色収差および倍率色収差の発生をも抑えることができる。
【0033】
なお、第1レンズL1は、最も物体側のレンズであるため、例えば屋外の監視用カメラ等の厳しい環境において使用される場合には、風雨による表面劣化、直射日光による温度変化に強く、さらには油脂・洗剤等の化学薬品に強い材質、すなわち耐水性、耐候性、耐酸性、耐薬品性等が高い材質を用いることが好ましい。また、第1レンズL1の材質としては堅く、割れにくい材質を用いることが好ましく、具体的にはガラスもしくは透明なセラミックスを用いることが好ましい。セラミックスは通常のガラスに比べ強度が高く、耐熱性が高いという性質を有する。
【0034】
撮像レンズ1が、例えば屋外の監視に適用される場合には、寒冷地の外気から熱帯地方の夏の車内まで広い温度範囲で使用可能なことが要求される。そのため全てのレンズの材質がガラスであることが好ましい。具体的には−40℃〜125℃の広い温度範囲で使用可能なことが好ましい。また、安価にレンズを製作するためには、全てのレンズが球面レンズであることが好ましいが、コストよりも光学性能を優先する場合には非球面レンズを用いてもよい。
【0035】
撮像レンズ1において、第1レンズL1と第2レンズL2との間で軸外光線の最外周光線よりも外側を通過する光束は迷光となるおそれがあるため、第1レンズL1と第2レンズL2との間に遮光手段を設けて迷光を遮断することが好ましい。この遮光手段としては、例えば第1レンズL1の像側の有効径外の部分に不透明な塗料を施したり、不透明な板材を設けたりしてもよい。または、迷光となる光束の光路に不透明な板材を設けて遮光手段としてもよい。このような目的の遮光手段は、第1レンズL1と第2レンズL2との間だけでなく、必要に応じて他のレンズ間に配置してもよい。さらに、第1レンズL1の物体側前方に、迷光を防止するフード状のものを配置してもよい。
【実施例】
【0036】
次に、本発明にかかる撮像レンズ1の具体的な数値実施例について説明する。
【0037】
<実施例1>
実施例1にかかる撮像レンズのレンズ構成図を図1に、レンズデータおよび各種データを表1に示す。表1のレンズデータにおいて、面番号は最も物体側の構成要素の面を1番目として像側に向かうに従い順次増加するi番目(i=1、2、3、…)の面番号を示す。なお、表1のレンズデータには開口絞りStも含めて付している。
【0038】
表1のRiはi番目(i=1、2、3、…)の面の曲率半径を示し、Diはi(i=1、2、3、…)番目の面とi+1番目の面との光軸Z上の面間隔を示す。また、Ndjは最も物体側の光学要素を1番目として像側に向かうに従い順次増加するj番目(j=1、2、3、…)の光学要素のd線に対する屈折率を示し、νdjはj番目の光学要素のd線に対するアッベ数を示す。表1において、曲率半径および面間隔の単位はmmであり、曲率半径は物体側に凸の場合を正、像側に凸の場合を負としている。
【0039】
表1の各種データにおいて、fは全系の焦点距離、FnoはFナンバー、2ωは全画角である。表1の各種データにおける単位は全てmmである。なお、表1中の記号の意味は後述の実施例についても同様である。
【0040】
【表1】
【0041】
<実施例2>
実施例2にかかる撮像レンズのレンズ構成図を図2に、レンズデータおよび各種データを表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
<実施例3>
実施例3にかかる撮像レンズのレンズ構成図を図3に、レンズデータおよび各種データを表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】
<実施例4>
実施例4にかかる撮像レンズのレンズ構成図を図4に、レンズデータおよび各種データを表4に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
<実施例5>
実施例5にかかる撮像レンズのレンズ構成図を図5に、レンズデータおよび各種データを表5に示す。
【0048】
【表5】
【0049】
<実施例6>
実施例6にかかる撮像レンズのレンズ構成図を図6に、レンズデータおよび各種データを表6に示す。
【0050】
【表6】
【0051】
<実施例7>
実施例7にかかる撮像レンズのレンズ構成図を図7に、レンズデータおよび各種データを表7に示す。
【0052】
【表7】
【0053】
実施例1〜7の撮像レンズにおける条件式(1)〜(3)に対応する値を表8に示す。表8の各値は、d線(波長587.56nm)に対するものである。表8からわかるように、実施例1〜7は、条件式(1)〜(3)を全て満たしている。
【0054】
【表8】
【0055】
上記実施例1〜7にかかる撮像レンズの球面収差、非点収差、ディストーション(歪曲収差)、倍率色収差の収差図をそれぞれ図8(a)〜(d)〜図14(a)〜(d)に示す。各収差図には、d線(587.56nm)を基準波長とした収差を示すが、球面収差図および倍率色収差図には、g線(波長435.83nm)、C線(波長656.27nm)についての収差も示す。ディストーションの図は、レンズ全系の焦点距離f、光束のレンズへの入射角θ(変数扱い、0≦θ≦ω)を用いて、理想像高をftanθとし、それからのずれ量を示す。球面収差図の縦軸のFはFナンバーであり、その他の収差図の縦軸(ω)は半画角を示す。
【0056】
上述した撮像レンズ1および実施例1〜7の撮像レンズは、4枚構成であるにも関わらず良好な光学性能を有し、広画角とコンパクト性を高次元で満足させたものであるため、監視用カメラなどに好適に使用可能である。
【0057】
図15に、本発明の撮像装置の一実施形態として、監視用カメラの概略構成図を示す。図15に示す監視用カメラ10は、略円筒状の鏡筒の内部に配置された本発明の実施形態にかかる撮像レンズ1と、撮像レンズ1によって結像された被写体の像を撮像する撮像素子5とを備える。撮像素子5の具体例としては、撮像レンズ1により形成される光学像を電気信号に変換するCCDやCMOS等を挙げることができる。撮像素子5は、その撮像面が、撮像レンズ1の像面に一致するように配置される。
【0058】
本発明の実施形態にかかる撮像レンズ1は前述した長所を有するため、本実施形態の監視用カメラ10は、小型の筐体とすることができるとともに、広画角の撮影を行なうことができる。
【0059】
以上、実施形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズ成分の曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、非球面係数等の値は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得るものである。
【0060】
また、撮像装置の実施形態では、本発明を監視用カメラに適用した例について図を示して説明したが、本発明はこの用途に限定されるものではなく、例えば、ビデオカメラや電子スチルカメラ、車載用カメラ等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 撮像レンズ
5 撮像素子
10 監視用カメラ
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
St 開口絞り
PP フィルタ
Z 光軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像レンズおよび撮像装置に関し、より詳しくは、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を用いた監視用カメラ、携帯端末用カメラ、車載用カメラ等に使用されるのに好適な撮像レンズ、および該撮像レンズを備えた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CCDやCMOS等の撮像素子は近年非常に小型化及び高画素化が進んでいる。それとともに、これら撮像素子を備えた撮像機器本体も小型化が進み、それに搭載される撮像レンズにも良好な光学性能に加え、小型化が求められている。一方、監視用カメラや車載用カメラ等の用途では、広角のレンズでありながら高い耐候性を持ち、小型で高性能を有するレンズが求められている。
【0003】
上記分野において従来知られている比較的レンズ枚数の少ない撮像レンズとしては、例えば下記特許文献1〜3に記載のものがある。特許文献1〜3には、4枚構成の撮像レンズが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−039207号公報
【特許文献2】特開2004−163986号公報
【特許文献3】特開2006−030290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の撮像レンズは、画角が60°程度に制限され、また色収差も残存している。また、上記特許文献2の実施例2に記載の撮像レンズは、広角化を満足していない。また、上記特許文献3の実施例3に記載の撮像レンズは、コンパクト性を優先し、画角が61°程度に制限されている。
【0006】
すなわち、上記特許文献1〜3には、広画角とコンパクト性を高次元で満足するものはなく、4枚構成のレンズ光学系においてさらなる広画角とコンパクト性の両立が望まれている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、広画角とコンパクト性を高次元で満足する撮像レンズおよびこの撮像レンズを備えた撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の撮像レンズは、物体側より順に、両凹レンズである第1レンズと、正のパワーを持つ第2レンズと、正のパワーを持つ第3レンズと、物体側に凹面を向けた負のパワーを持つメニスカスレンズである第4レンズとからなる撮像レンズにおいて、第1レンズのアッベ数をνd1、第2レンズのアッベ数をνd2としたとき、下記条件式(1)を満足することを特徴とするものである。
νd1+νd2≦65.5 (1)
【0009】
ここで、「両凹レンズである第1レンズ」、「正のパワーを持つ第2レンズ」、「正のパワーを持つ第3レンズ」、「物体側に凹面を向けた負のパワーを持つメニスカスレンズである第4レンズ」とは、各々光軸上における特性を意味する。
【0010】
また、第1レンズの焦点距離をf1、第2レンズの焦点距離をf2としたとき、下記条件式(2)を満足することが好ましい。
0.45<|f1/f2|<0.65 (2)
【0011】
また、下記条件式(3)を満足することが好ましい。
|νd1−νd2|<10.0 (3)
【0012】
また、第3レンズおよび第4レンズは、互いに接合されてなるものとすることが好ましい。
【0013】
本発明の撮像装置は、上記記載の撮像レンズを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の撮像レンズによれば、物体側より順に、両凹レンズである第1レンズと、正のパワーを持つ第2レンズと、正のパワーを持つ第3レンズと、物体側に凹面を向けた負のパワーを持つメニスカスレンズである第4レンズとからなる撮像レンズにおいて、第1レンズのアッベ数をνd1、第2レンズのアッベ数をνd2としたとき、下記条件式(1)を満足するように構成したので、広画角とコンパクト性を高次元で満足させた撮像レンズを実現することができる。
νd1+νd2≦65.5 (1)
【0015】
本発明の撮像装置は、本発明の撮像レンズを備えているため、広画角でありながら装置の構成を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図2】本発明の実施例2にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図3】本発明の実施例3にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図4】本発明の実施例4にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図5】本発明の実施例5にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図6】本発明の実施例6にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図7】本発明の実施例7にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図8】(a)〜(d)は本発明の実施例1にかかる撮像レンズの各収差図
【図9】(a)〜(d)は本発明の実施例2にかかる撮像レンズの各収差図
【図10】(a)〜(d)は本発明の実施例3にかかる撮像レンズの各収差図
【図11】(a)〜(d)は本発明の実施例4にかかる撮像レンズの各収差図
【図12】(a)〜(d)は本発明の実施例5にかかる撮像レンズの各収差図
【図13】(a)〜(d)は本発明の実施例6にかかる撮像レンズの各収差図
【図14】(a)〜(d)は本発明の実施例7にかかる撮像レンズの各収差図
【図15】本発明の実施形態にかかる監視用カメラ用の撮像装置の配置を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態にかかる撮像レンズの構成を示す断面図であり、後述の実施例1の撮像レンズに対応している。
【0019】
撮像レンズ1は、光軸Zに沿って物体側から順に、両凹レンズである第1レンズL1と、正のパワーを持つ第2レンズL2と、正のパワーを持つ第3レンズL3と、物体側に凹面を向けた負のパワーを持つメニスカスレンズである第4レンズL4とが配列されてなる。
【0020】
なお、図1における開口絞りStは形状や大きさを表すものではなく光軸Z上の位置を示すものである。
【0021】
なお、図1では、撮像レンズ1が撮像装置に適用される場合を考慮して、撮像レンズ1の結像位置を含む像面に配置された撮像素子5(Sim)も図示している。撮像素子5は、撮像レンズ1により形成される光学像を電気信号に変換するものであり、例えばCCDイメージセンサ等からなる。
【0022】
また、撮像装置に適用する際には、レンズを装着するカメラ側の構成に応じて、図1にPPとして示すように、第4レンズL4と像面との間に、カバーガラスや、ローパスフィルタまたは赤外線カットフィルタ等を配置することが好ましい。例えば、撮像レンズ1が、車載カメラに使用され、夜間の監視用カメラとして使用される場合には、第4レンズL4と像面との間に紫外光から青色光をカットするようなフィルタを挿入してもよい。
【0023】
なお、第4レンズL4と像面との間にローパスフィルタや特定の波長域をカットするような各種フィルタ等を配置する代わりに、各レンズの間にこれらの各種フィルタを配置してもよい。あるいは、撮像レンズ1が有するいずれかのレンズのレンズ面に、各種フィルタと同様の作用を有するコートを施してもよい。
【0024】
ここで、上記撮像レンズ1は、第1レンズのアッベ数をνd1、第2レンズのアッベ数をνd2としたとき、下記条件式(1)を満足するものである。このような構成とすることにより、90°程度の広画角を確保するとともに、倍率色収差を良好に補正することが可能となる。ここで、条件式(1)の上限を超えると、広画角域での倍率色収差の補正が困難になり、広画角での性能を維持出来なくなる。
νd1+νd2≦65.5 (1)
なお、条件式(1−1)を満足することがより好ましく、条件式(1−2)を満足すればさらに好ましい。ここで、条件式(1−1)および(1−2)の下限を下回ると、軸上色収差が大きくなってしまう。
【0025】
34.0≦νd1+νd2≦65.0 (1−1)
40.0≦νd1+νd2≦60.0 (1−2)
【0026】
また、上記撮像レンズ1は、下記条件式のいずれかあるいは全てを満足することが望ましい。
【0027】
第1レンズの焦点距離をf1、第2レンズの焦点距離をf2としたとき、下記条件式(2)を満足することが好ましい。ここで、条件式(2)の範囲から外れると、球面収差の補正が困難になり、性能低下につながる。
0.45<|f1/f2|<0.65 (2)
なお、条件式(2−1)を満足することがより好ましい。
【0028】
0.5<|f1/f2|<0.6 (2−1)
【0029】
また、下記条件式(3)を満足することが好ましい。ここで、条件式(3)の上限を超えると、倍率色収差の短波長側がオーバーになる傾向を補正できない。
|νd1−νd2|<10.0 (3)
なお、条件式(3−1)を満足することがより好ましく、条件式(3−2)を満足すればさらに好ましい。
【0030】
|νd1−νd2|<8.0 (3−1)
|νd1−νd2|<6.0 (3−2)
【0031】
また、第3レンズL3および第4レンズL4は、互いに接合されてなるものとすることが好ましい。このような態様とすることにより、倍率色収差を軽減させることができる。
【0032】
また、第3レンズL3は、両凸レンズとすることが好ましい。このような態様とすることにより、球面収差の発生を抑えると同時に、軸上色収差および倍率色収差の発生をも抑えることができる。
【0033】
なお、第1レンズL1は、最も物体側のレンズであるため、例えば屋外の監視用カメラ等の厳しい環境において使用される場合には、風雨による表面劣化、直射日光による温度変化に強く、さらには油脂・洗剤等の化学薬品に強い材質、すなわち耐水性、耐候性、耐酸性、耐薬品性等が高い材質を用いることが好ましい。また、第1レンズL1の材質としては堅く、割れにくい材質を用いることが好ましく、具体的にはガラスもしくは透明なセラミックスを用いることが好ましい。セラミックスは通常のガラスに比べ強度が高く、耐熱性が高いという性質を有する。
【0034】
撮像レンズ1が、例えば屋外の監視に適用される場合には、寒冷地の外気から熱帯地方の夏の車内まで広い温度範囲で使用可能なことが要求される。そのため全てのレンズの材質がガラスであることが好ましい。具体的には−40℃〜125℃の広い温度範囲で使用可能なことが好ましい。また、安価にレンズを製作するためには、全てのレンズが球面レンズであることが好ましいが、コストよりも光学性能を優先する場合には非球面レンズを用いてもよい。
【0035】
撮像レンズ1において、第1レンズL1と第2レンズL2との間で軸外光線の最外周光線よりも外側を通過する光束は迷光となるおそれがあるため、第1レンズL1と第2レンズL2との間に遮光手段を設けて迷光を遮断することが好ましい。この遮光手段としては、例えば第1レンズL1の像側の有効径外の部分に不透明な塗料を施したり、不透明な板材を設けたりしてもよい。または、迷光となる光束の光路に不透明な板材を設けて遮光手段としてもよい。このような目的の遮光手段は、第1レンズL1と第2レンズL2との間だけでなく、必要に応じて他のレンズ間に配置してもよい。さらに、第1レンズL1の物体側前方に、迷光を防止するフード状のものを配置してもよい。
【実施例】
【0036】
次に、本発明にかかる撮像レンズ1の具体的な数値実施例について説明する。
【0037】
<実施例1>
実施例1にかかる撮像レンズのレンズ構成図を図1に、レンズデータおよび各種データを表1に示す。表1のレンズデータにおいて、面番号は最も物体側の構成要素の面を1番目として像側に向かうに従い順次増加するi番目(i=1、2、3、…)の面番号を示す。なお、表1のレンズデータには開口絞りStも含めて付している。
【0038】
表1のRiはi番目(i=1、2、3、…)の面の曲率半径を示し、Diはi(i=1、2、3、…)番目の面とi+1番目の面との光軸Z上の面間隔を示す。また、Ndjは最も物体側の光学要素を1番目として像側に向かうに従い順次増加するj番目(j=1、2、3、…)の光学要素のd線に対する屈折率を示し、νdjはj番目の光学要素のd線に対するアッベ数を示す。表1において、曲率半径および面間隔の単位はmmであり、曲率半径は物体側に凸の場合を正、像側に凸の場合を負としている。
【0039】
表1の各種データにおいて、fは全系の焦点距離、FnoはFナンバー、2ωは全画角である。表1の各種データにおける単位は全てmmである。なお、表1中の記号の意味は後述の実施例についても同様である。
【0040】
【表1】
【0041】
<実施例2>
実施例2にかかる撮像レンズのレンズ構成図を図2に、レンズデータおよび各種データを表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
<実施例3>
実施例3にかかる撮像レンズのレンズ構成図を図3に、レンズデータおよび各種データを表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】
<実施例4>
実施例4にかかる撮像レンズのレンズ構成図を図4に、レンズデータおよび各種データを表4に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
<実施例5>
実施例5にかかる撮像レンズのレンズ構成図を図5に、レンズデータおよび各種データを表5に示す。
【0048】
【表5】
【0049】
<実施例6>
実施例6にかかる撮像レンズのレンズ構成図を図6に、レンズデータおよび各種データを表6に示す。
【0050】
【表6】
【0051】
<実施例7>
実施例7にかかる撮像レンズのレンズ構成図を図7に、レンズデータおよび各種データを表7に示す。
【0052】
【表7】
【0053】
実施例1〜7の撮像レンズにおける条件式(1)〜(3)に対応する値を表8に示す。表8の各値は、d線(波長587.56nm)に対するものである。表8からわかるように、実施例1〜7は、条件式(1)〜(3)を全て満たしている。
【0054】
【表8】
【0055】
上記実施例1〜7にかかる撮像レンズの球面収差、非点収差、ディストーション(歪曲収差)、倍率色収差の収差図をそれぞれ図8(a)〜(d)〜図14(a)〜(d)に示す。各収差図には、d線(587.56nm)を基準波長とした収差を示すが、球面収差図および倍率色収差図には、g線(波長435.83nm)、C線(波長656.27nm)についての収差も示す。ディストーションの図は、レンズ全系の焦点距離f、光束のレンズへの入射角θ(変数扱い、0≦θ≦ω)を用いて、理想像高をftanθとし、それからのずれ量を示す。球面収差図の縦軸のFはFナンバーであり、その他の収差図の縦軸(ω)は半画角を示す。
【0056】
上述した撮像レンズ1および実施例1〜7の撮像レンズは、4枚構成であるにも関わらず良好な光学性能を有し、広画角とコンパクト性を高次元で満足させたものであるため、監視用カメラなどに好適に使用可能である。
【0057】
図15に、本発明の撮像装置の一実施形態として、監視用カメラの概略構成図を示す。図15に示す監視用カメラ10は、略円筒状の鏡筒の内部に配置された本発明の実施形態にかかる撮像レンズ1と、撮像レンズ1によって結像された被写体の像を撮像する撮像素子5とを備える。撮像素子5の具体例としては、撮像レンズ1により形成される光学像を電気信号に変換するCCDやCMOS等を挙げることができる。撮像素子5は、その撮像面が、撮像レンズ1の像面に一致するように配置される。
【0058】
本発明の実施形態にかかる撮像レンズ1は前述した長所を有するため、本実施形態の監視用カメラ10は、小型の筐体とすることができるとともに、広画角の撮影を行なうことができる。
【0059】
以上、実施形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズ成分の曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、非球面係数等の値は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得るものである。
【0060】
また、撮像装置の実施形態では、本発明を監視用カメラに適用した例について図を示して説明したが、本発明はこの用途に限定されるものではなく、例えば、ビデオカメラや電子スチルカメラ、車載用カメラ等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 撮像レンズ
5 撮像素子
10 監視用カメラ
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
St 開口絞り
PP フィルタ
Z 光軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側より順に、両凹レンズである第1レンズと、正のパワーを持つ第2レンズと、正のパワーを持つ第3レンズと、物体側に凹面を向けた負のパワーを持つメニスカスレンズである第4レンズとからなる撮像レンズにおいて、
前記第1レンズのアッベ数をνd1、前記第2レンズのアッベ数をνd2としたとき、下記条件式(1)を満足することを特徴とする撮像レンズ。
νd1+νd2≦65.5 (1)
【請求項2】
前記第1レンズの焦点距離をf1、前記第2レンズの焦点距離をf2としたとき、下記条件式(2)を満足することを特徴とする請求項1記載の撮像レンズ。
0.45<|f1/f2|<0.65 (2)
【請求項3】
下記条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1または2記載の撮像レンズ。
|νd1−νd2|<10.0 (3)
【請求項4】
前記第3レンズと前記第4レンズとが接合されてなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の撮像レンズ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の撮像レンズを備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項1】
物体側より順に、両凹レンズである第1レンズと、正のパワーを持つ第2レンズと、正のパワーを持つ第3レンズと、物体側に凹面を向けた負のパワーを持つメニスカスレンズである第4レンズとからなる撮像レンズにおいて、
前記第1レンズのアッベ数をνd1、前記第2レンズのアッベ数をνd2としたとき、下記条件式(1)を満足することを特徴とする撮像レンズ。
νd1+νd2≦65.5 (1)
【請求項2】
前記第1レンズの焦点距離をf1、前記第2レンズの焦点距離をf2としたとき、下記条件式(2)を満足することを特徴とする請求項1記載の撮像レンズ。
0.45<|f1/f2|<0.65 (2)
【請求項3】
下記条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1または2記載の撮像レンズ。
|νd1−νd2|<10.0 (3)
【請求項4】
前記第3レンズと前記第4レンズとが接合されてなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の撮像レンズ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の撮像レンズを備えたことを特徴とする撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−128210(P2011−128210A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284013(P2009−284013)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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