説明

撮像素子、撮像装置、撮像素子の製造方法

【課題】遮光マスクが設けられた透明板と撮像素子基板とを短時間に高い精度で位置合わせして貼設可能な構造を備えた撮像素子等を提供する。
【解決手段】複数の画素が2次元状に配列された撮像素子基板に対して透明板が画素位置を合わせて貼設された撮像素子3であって、透明板上の瞳分割用遮光マスク領域13に、第1の瞳領域の光を通過させるための第1の遮光マスクと、第2の瞳領域の光を通過させるための第2の遮光マスクと、を設けると共に、例えば瞳分割用遮光マスク領域13外の所定位置に、遮光面積を徐々に異ならせながら特定の画素を含む複数の画素を遮光するように配置される位置合わせ用の位置検出用遮光マスク38H,38Vと、を設け、画素および第1の遮光マスクの組が第1の焦点検出画素を、画素および第2の遮光マスクの組が第2の焦点検出画素を、それぞれ構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点検出機能を備えた画素を有する撮像素子、該撮像素子を用いた撮像装置、および該撮像素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置において合焦位置からのずれ量を検出する技術として、位相差検出方式が知られている。この位相差検出方式は、結像光学系の射出瞳を通過した光束を2分割し、2分割した光束を焦点検出用センサにより受光して、その受光量に応じて出力される信号のずれ量、つまり分割された光束により結像される2つの像の相対的位置ずれ量(位相差)を検出することにより、結像光学系の焦点のずれ量を求めるものである。
【0003】
このような位相差の検出を、結像光学系を通して撮像素子上に結像された像を利用して行うために、瞳分割を行う遮光部を設けた撮像素子と、この撮像素子を用いた位相差検出方法と、が提案されている。このような提案としては、例えば特開2009−44535号公報に記載された技術が挙げられ、該公報には、撮像素子を製造するための半導体製造プロセスにおいて、撮像素子を構成するフォトダイオードとカラーフィルタとの間に瞳分割用の遮光部を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−44535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記公報に記載されたような構成の場合には、新規の専用撮像素子の開発が必要であるために開発コストが大幅に高くなるとともに、通常の撮像素子を製造するのとは異なる半導体製造プロセスが必要となるために、製造コストも高価となる。さらに、製造後においても、通常撮像素子と焦点検出機能付き撮像素子とを区別する必要があるために、管理コストが高くなる。
【0006】
このような点に対応するための構成として、通常の半導体製造プロセスにより製造された撮像素子に対して、瞳分割用の遮光部である遮光マスクを設けた透明板(例えば、ガラス板など)を貼設することで、焦点検出機能付き撮像素子を製造することが考えられる。このような構成によれば、上述した点に対応し得るだけでなく、実績のある撮像素子を使用することができるために、安定した性能が得られる利点もある。
【0007】
このような構成の撮像素子の画素値から位相差検出用の情報を正しく得るためには、位相差検出用として予め位置を定められた画素上に、遮光マスクが正しく配置される必要がある。従って、遮光マスクを設けた透明板を通常の撮像素子に対して正確に位置合わせしなければならない。しかも、生産性を考慮すると、なるべく短時間で位置合わせを行い得ることが望ましい。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、遮光マスクが設けられた透明板と、複数の画素が2次元状に配列された撮像素子基板とを、短時間に高い精度で位置合わせして貼設可能な構造を備えた撮像素子、該撮像素子を用いた撮像装置、および該撮像素子の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様による撮像素子は、光学的な被写体像を光電変換するための画素が、複数、2次元状に配列されるように、半導体製造プロセスにより形成された撮像素子基板と、上記撮像素子基板に対して画素位置を合わせて貼設された透明板と、を具備した撮像素子であって、上記撮像素子基板に配列された複数の画素は、第1の所定位置にある第1の画素と、第2の所定位置にある第2の画素と、第3の所定位置にある第3の画素と、を含み、上記透明板上に、該透明板が上記撮像素子基板に画素位置を合わせて貼設された際に、上記第1の画素の中心から一方向へ偏心した部分を遮光するように設けられた第1の遮光マスクと、上記透明板上に、該透明板が上記撮像素子基板に画素位置を合わせて貼設された際に、上記第2の画素の中心から他方向へ偏心した部分を遮光するように設けられた第2の遮光マスクと、上記透明板上に、該透明板が上記撮像素子基板に画素位置を合わせて貼設された際に、上記撮像素子基板に配列された複数の画素の内の、一部の複数の画素を、遮光面積を徐々に異ならせながら遮光するように設けられ、遮光面積の変化に基づいて定められる特定位置が上記第3の画素に一致するように設けられた位置検出用遮光マスクと、をさらに具備し、上記第1の画素および上記第1の遮光マスクの組が第1の焦点検出画素を、上記第2の画素および上記第2の遮光マスクの組が第2の焦点検出画素を、それぞれ構成する。
【0010】
また、本発明の第2の態様による撮像装置は、上述した撮像素子と、上記撮像素子上に被写体像を形成する結像光学系と、上記第1の焦点検出画素からの出力により形成される第1の画像と、上記第2の焦点検出画素からの出力により形成される第2の画像と、の位相差を検出する位相差検出部と、を具備したものである。
【0011】
さらに、本発明の第3の態様による撮像素子の製造方法は、上述した撮像素子であって、上記撮像素子基板は、複数の画素が、水平方向および垂直方向に沿って2次元状に配列されたものであり、上記位置検出用遮光マスクは、水平方向に配列された複数の画素の画素毎の遮光面積を、徐々に増加させる部位と、徐々に減少させる部位と、を備えた水平方向位置検出用遮光マスクと、垂直方向に配列された複数の画素の画素毎の遮光面積を、徐々に増加させる部位と、徐々に減少させる部位と、を備えた垂直方向位置検出用遮光マスクと、を含み、上記特定位置は、画素毎の遮光面積が、徐々に増加する線と、徐々に減少する線と、が交差する位置である撮像素子、を製造するための方法であって、上記撮像素子基板に対して上記透明板を配置し、透明板が配置された撮像素子基板に平行光を照射して、該撮像素子基板により第1の撮像を行うステップと、上記第1の撮像により上記撮像素子基板から得られた画像信号に基づき、上記水平方向位置検出用遮光マスクの陰影が形成された第1の特定位置と、上記垂直方向位置検出用遮光マスクの陰影が形成された第2の特定位置と、を取得するステップと、取得された第1の特定位置および第2の特定位置を結ぶ直線と、上記水平方向位置検出用遮光マスクと上記垂直方向位置検出用遮光マスクとが配置されるべき2つの上記第3の所定位置を結ぶ直線と、がなす傾き角を求めるステップと、上記傾き角を0にするように、上記撮像素子基板に対して上記透明板を回転するステップと、上記透明板の回転が終了した後の撮像素子基板に平行光を照射して、該撮像素子基板により第2の撮像を行うステップと、上記第2の撮像により上記撮像素子基板から得られた画像信号に基づき、上記水平方向位置検出用遮光マスクの陰影が形成された第1の特定位置の水平方向成分と、上記垂直方向位置検出用遮光マスクの陰影が形成された第2の特定位置の垂直方向成分と、を取得するステップと、上記取得された第1の特定位置の水平方向成分と、上記水平方向位置検出用遮光マスクが配置されるべき上記第3の所定位置の水平方向成分と、の差分である水平方向差分と、上記取得された第2の特定位置の垂直方向成分と、上記垂直方向位置検出用遮光マスクが配置されるべき上記第3の所定位置の垂直方向成分と、の差分である垂直方向差分と、を算出するステップと、上記水平方向差分および上記垂直方向差分を相殺するように、上記撮像素子基板に対して上記透明板を平行移動するステップと、を含む方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の撮像素子、該撮像素子を用いた撮像装置、および該撮像素子の製造方法によれば、遮光マスクが設けられた透明板と、複数の画素が2次元状に配列された撮像素子基板とを、短時間に高い精度で位置合わせして貼設可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1における撮像素子の構成を示す正面図。
【図2】上記実施形態1において、複数の画素が2次元状に配列された撮像素子基板の構成を示す正面図。
【図3】上記実施形態1において、撮像素子基板上の画素の構造を示す図2のA−A断面図。
【図4】上記実施形態1において、遮光マスクが形成された特定ライン部分の透明板の構成を示す要部正面図。
【図5】上記実施形態1において、遮光マスクが形成された特定ライン部分の透明板の構造を示す図4のB−B断面図。
【図6】上記実施形態1における撮影画素および2種類の焦点検出画素の構成を示す断面図。
【図7】上記実施形態1において、撮像素子上に設けられた焦点検出画素の配置を示す図。
【図8】上記実施形態1における位置検出用遮光マスクの形状の一例を示す図。
【図9】上記実施形態1における水平方向位置検出用遮光マスクと焦点検出画素との位置関係を示す図。
【図10】上記実施形態1における撮像素子の製造装置の構成を示すブロック図。
【図11】上記実施形態1において、撮像素子の製造装置により位置調整を行う前の、撮像素子基板と透明板との位置関係の例を示す図。
【図12】上記実施形態1において、撮像素子基板に対する透明板の傾きがないときの(A)配置例を示す図、(B)垂直方向加算信号の信号レベルの分布を示す線図、(C)水平方向加算信号の信号レベルの分布を示す線図。
【図13】上記実施形態1において、撮像素子基板に対する透明板の傾きがあるときの(A)配置例を示す図、(B)垂直方向加算信号の信号レベルの分布を示す線図、(C)水平方向加算信号の信号レベルの分布を示す線図。
【図14】上記実施形態1において、垂直方向加算信号の信号レベルグラフを用いて、水平方向位置検出用遮光マスクのV字形切欠の頂点のX座標を求める手順を説明するための図。
【図15】上記実施形態1において、撮像素子の製造装置による位置調整の処理を示すフローチャート。
【図16】上記実施形態1において、位置検出用遮光マスクの特定位置であるV字形切欠の頂点の現在位置を取得する処理を示すフローチャート。
【図17】上記実施形態1における撮像装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
[実施形態1]
【0015】
図1から図17は本発明の実施形態1を示したものであり、図1は撮像素子3の構成を示す正面図である。
【0016】
撮像素子3は、例えば周辺部を除く中央の矩形状部分に、後述する焦点検出画素が配置された領域である瞳分割用遮光マスク領域13が設けられている。ここに、瞳分割用遮光マスク領域13は、そのほとんどが、複数の撮影画素14(図6等参照)が2次元状に配列された部分となっているが、この撮影画素14の配列中の幾つかの箇所に焦点検出画素13A,13B(図6等参照)が対をなして配置された構成となっている。
【0017】
さらに、撮像素子3の例えば周辺部には、複数の画素を含む横長の矩形領域である水平方向位置情報領域15Hと、複数の画素を含む縦長の矩形領域である垂直方向位置情報領域15Vと、が設けられている。特に、図1に示す例においては、水平方向位置情報領域15Hは撮像素子3の左上角部に、垂直方向位置情報領域15Vは撮像素子3の左下角部に、それぞれ設けられている。
【0018】
この撮像素子3は、図2および図3に示すような、半導体製造プロセスにより形成された撮像素子基板3P(この撮像素子基板3Pは、通常の撮像素子と同様の構成である)と、図4および図5に示すような、半導体製造プロセスによることなく形成された透明板37とを、画素位置を合わせて貼設した構成(図6参照)となっている。
【0019】
そして、撮像素子基板3Pに対して画素位置を合わせて透明板37が貼設された後においては、水平方向位置情報領域15H内の所定位置には水平方向位置検出用遮光マスク38Hが、垂直方向位置情報領域15V内の所定位置には垂直方向位置検出用遮光マスク38Vが、それぞれ位置している。
【0020】
ここに、図2は複数の画素14Pが2次元状に配列された撮像素子基板3Pの構成を示す正面図、図3は撮像素子基板3P上の画素14Pの構造を示す図2のA−A断面図、図4は遮光マスク38A,38Bが形成された特定ライン部分の透明板37の構成を示す要部正面図、図5は遮光マスク38A,38Bが形成された特定ライン部分の透明板37の構造を示す図4のB−B断面図、図6は撮影画素14および2種類の焦点検出画素13A,13Bの構成を示す断面図、図7は、撮像素子3上に設けられた焦点検出画素13A,13Bの配置を示す図である。
【0021】
図2に示すように、撮像素子基板3Pは、光学的な被写体像を光電変換するための画素14Pが、複数、2次元マトリックス状に配列されていて、この図2に示す例では、ライン方向(行方向、あるいは水平方向)およびこのライン方向に垂直な方向(列方向、あるいは垂直方向)に沿って2次元状に配列されている。
【0022】
各画素14Pは、図3に示すように、半導体基板31内に不純物をドープして形成されたフォトダイオード32と、半導体基板31上に形成された配線パターン33,34と、マイクロレンズ35と、を有しており、深部から表層へ向かって、光電変換部層PD、配線層WL、マイクロレンズ層MLが形成された積層構造となっている。
【0023】
配線パターン33,34は、遮光機能を有するとともにフォトダイオード32に各対応する位置に開口が形成されていて、この図3に示す構成例では、配線パターン34に設けられた開口(およびマイクロレンズ35)がこの画素14Pの開口率を規定している。
【0024】
また、マイクロレンズ35は、中心がフォトダイオード32の中心の鉛直線(1点鎖線で示す線)上に位置するように構成されている。
【0025】
図4および図5に示すように、透明板37は、ガラス等の素材により形成された透明な平板に、2種類の遮光マスク38A,38Bと、位置検出用遮光マスクと、を設けたものである。ここに本実施形態においては、位置検出用遮光マスクとして、上述したように、水平方向の位置検出を高精度に行うための水平方向位置検出用遮光マスク38Hと、垂直方向の位置検出を高精度に行うための垂直方向位置検出用遮光マスク38Vと、の2種類がある。ただし、この2種類に限らず、斜め方向の位置検出を高精度に行うための位置検出用遮光マスク等を設けても構わない。
【0026】
そして、図1に示した例においては、水平方向位置検出用遮光マスク38Hは撮像素子3の左上角部に1つ設けられた水平方向位置情報領域15Hに対応して透明板37の左上角部に1つ設けられ、垂直方向位置検出用遮光マスク38Vは撮像素子3の左下角部に1つ設けられた垂直方向位置情報領域15Vに対応して透明板37の左下角部に1つ設けられている。
【0027】
これら水平方向位置検出用遮光マスク38Hと垂直方向位置検出用遮光マスク38Vと、とは、後で説明するように、撮像素子基板3Pと透明板37とを位置合わせする際の角度のずれ量の検出精度を向上するためには、透明板37上の周辺領域に互いに離隔して設けることが望ましい。そして、図1に示した配置は、このような条件を満たす一例である。ただし、位置検出用遮光マスクは、図1に示したように配置するに限るものではなく、各方向用に1つずつ設けるに限るものでもない。
【0028】
これらの遮光マスク38A,38Bおよび位置検出用遮光マスク38H,38Vは、例えば、黒色のクロム膜を、透明板37の撮像素子基板3Pに対向する側の面に蒸着して構成したものとなっている。なお、図4および後述する図9においては、点線を用いて各画素の範囲を示しているが、この点線は説明のために記載しただけであり、実際の透明板37上には存在していない。
【0029】
ここに、第1の遮光マスク38Aは、透明板37上に、該透明板37が撮像素子基板3Pに画素位置を合わせて貼設された際に、撮像素子基板3P上の第1の所定位置にある第1の画素14Pの中心から一方向へ偏心した部分を遮光する(図6も参照)ように設けられたものである。そして、第1の画素14Pおよび第1の遮光マスク38Aの組が、図6に示す第1の焦点検出画素13Aを構成するようになっている。このような構成により、第1の焦点検出画素13Aは、後述する結像光学系1(図17参照)の射出瞳を異なる2つの瞳領域に区分した(すなわち、瞳分割した)内の、第1の瞳領域(ここに、第1の瞳領域を瞳Aということにする)を通過した光束を受光することになるために、以下では適宜、瞳A焦点検出画素13Aなどと呼ぶことにする。
【0030】
また、第2の遮光マスク38Bは、透明板37上に、該透明板37が撮像素子基板3Pに画素位置を合わせて貼設された際に、撮像素子基板3P上の第2の所定位置にある第2の画素14Pの中心から他方向へ偏心した部分を遮光する(図6も参照)ように設けられたものである。そして、第2の画素14Pおよび第2の遮光マスク38Bの組が、図6に示す第2の焦点検出画素13Bを構成するようになっている。このような構成により、第2の焦点検出画素13Bは、後述する結像光学系1(図17参照)の射出瞳を異なる2つの瞳領域に区分した(すなわち、瞳分割した)内の、第2の瞳領域(ここに、第2の瞳領域を瞳Bということにする)を通過した光束を受光することになるために、以下では適宜、瞳B焦点検出画素13Bなどと呼ぶことにする。
【0031】
なお、撮影画素14は、撮像素子基板3Pの画素14P上に、透明板37の透明部分のみが配置されることにより構成される。
【0032】
そして、撮像素子基板3Pに透明板37を貼設することにより、撮像素子3は、図6に示すように、遮光マスク透明板層MGをさらに設けた積層構造となり、瞳分割用遮光マスク領域13には、図7に示すように、瞳A焦点検出画素13Aの群と瞳B焦点検出画素13Bの群とが一対となって配列される。
【0033】
続いて図8は、位置検出用遮光マスク38H(ほぼ同様に、位置検出用遮光マスク38V)の形状の一例を示す図である。
【0034】
位置検出用遮光マスク38H,38Vは、透明板37上に、透明板37が撮像素子基板3Pに画素位置を合わせて貼設された際に、撮像素子基板3Pに配列された複数の画素14Pの内の、一部の複数の画素14Pを、遮光面積を徐々に異ならせながら遮光するように設けられている。そして、位置検出用遮光マスク38H,38Vにおける遮光面積の変化に基づいて定められる特定位置(下記に一例を説明する)が、撮像素子基板3P上の第3の所定位置にある第3の画素14Pに一致するように設けられている。
【0035】
具体的には、水平方向位置検出用遮光マスク38Hは、水平方向に配列された複数の画素14Pの遮光面積を、徐々に増加させる部位と、徐々に減少させる部位と、を備え、例えば図8に示すように、垂直方向を画素幅の短手方向とし、水平方向を複数画素に渡る長手方向とする矩形型の遮光マスクを、その中央部がくびれとなるようにV字形に切り欠いた形状となっている。従って、水平方向位置検出用遮光マスク38Hは、複数の水平ラインにまたがらないように一水平ライン上のみに配置することが可能な構成である。
【0036】
ほぼ同様に、垂直方向位置検出用遮光マスク38Vは、垂直方向に配列された複数の画素14Pの遮光面積を、徐々に増加させる部位と、徐々に減少させる部位と、を備え、例えば図8に示す形状を垂直方向に立てた形状となっている。従って、垂直方向位置検出用遮光マスク38Vは、複数の垂直ラインにまたがらないように一垂直ライン上のみに配置することが可能な構成である。
【0037】
そして、位置検出用遮光マスク38H,38Vは、例えば、画素毎の遮光面積が、徐々に増加する線と、徐々に減少する線と、が交差する位置、すなわち図8におけるV字形切欠の頂点38Hc(図9も参照)を、特定位置としている。
【0038】
図9は、水平方向位置検出用遮光マスク38Hと焦点検出画素13Aとの位置関係を示す図である。
【0039】
第3の画素14P、すなわち、画素位置を合わせて透明板37が撮像素子基板3Pに貼設されたときの位置検出用遮光マスク38H,38Vの特定位置である頂点38Hcは、焦点検出画素13A,13Bに対して予め定められた位置関係を有するように配置されている。この図9に示す例においては、第3の画素14P(すなわちここでは、位置合わせ後の水平方向位置検出用遮光マスク38H)に最も近接している瞳分割用遮光マスク領域13内の焦点検出画素(ここでは、瞳A焦点検出画素13A)の中央に対して、V字形切欠の頂点38Hcが、水平方向に距離Oh、垂直方向に距離Ovを隔てるように配置されている。ここに、距離Ohは水平方向の画素ピッチの整数倍、距離Ovは垂直方向の画素ピッチの整数倍である。
【0040】
次に、図10は、撮像素子の製造装置の構成を示すブロック図である。
【0041】
この図10の構成によって行う撮像素子の製造工程は、半導体製造プロセスが終了した撮像素子基板3Pと、遮光マスク38A,38Bおよび位置検出用遮光マスク38H,38Vが既に形成された透明板37と、を位置合わせして貼設する工程であり、図10に示す撮像素子の製造装置は、貼り合わせ調整装置であるということもできる。
【0042】
この撮像素子の製造装置は、コリメータ光源21と、透明板移動装置22と、撮像素子駆動部23と、位置情報領域分離タイミングデコーダ24と、座標演算部25と、ズレ量算出部26と、走査制御回路27と、を含んで構成されていて、製造の対象となる透明板37および撮像素子基板3Pが取り付けられるようになっている。
【0043】
コリメータ光源21は、平行光であるコリメータ光を、透明板37を介して撮像素子基板3Pへ照射するものである。
【0044】
透明板移動装置22は、ピックアップ部により透明板37を保持して、保持した状態の透明板37を平行移動したり、回転移動したりする装置である。ここに、ピックアップ部は、例えば、真空ポンプによる吸引によって透明板37を引き付け保持し、吸引を停止することによって透明板37を開放するようになっている。
【0045】
撮像素子駆動部23は、通常の撮像素子として機能する撮像素子基板3Pへ水平同期信号HDと垂直同期信号VDとを出力して、撮像素子基板3P上に配列された複数の画素14Pを所定の順序で駆動するようになっている。従って、画像信号は、読み出された画素順に、画素単位の画像信号(画素データ)として撮像素子基板3Pから出力されることになる。さらに、撮像素子駆動部23は、撮像素子基板3Pへ出力している水平同期信号HDおよび垂直同期信号VDに基づいて、撮像素子基板3Pから読み出されている画素位置の情報である読出位置情報を位置情報領域分離タイミングデコーダ24へ出力すると共に、演算タイミング信号を座標演算部25へ出力するようになっている。ここに、読出位置情報は、例えば、マトリックス配列された複数の画素14Pの位置に対応した、所定のタイミングを有するパルス信号である。
【0046】
位置情報領域分離タイミングデコーダ24は、撮像素子駆動部23からの読出位置情報に基づいて、その読出位置の画素14Pが位置情報領域15H,15Vに含まれる画素(この位置情報領域15H,15Vには、位置検出用遮光マスク38H,38Vが位置するべき第3の所定位置にある第3の画素14Pが含まれている)であることを示す信号である位置情報領域指示信号を生成し、座標演算部25へ出力する回路である。すなわち、位置情報領域分離タイミングデコーダ24は、例えば、読出位置情報のパルス信号をカウントするカウンタと、位置情報領域15H,15Vに含まれる全画素14Pの位置に対応する値を保持する記憶部とを備え、カウント値が所定値(すなわち位置情報領域15H,15Vに含まれる画素14Pの位置に対応する値)になったときに、位置情報領域指示信号を出力するように構成されている。
【0047】
座標演算部25は、位置情報領域分離タイミングデコーダ24から位置情報領域指示信号が入力されると、撮像素子基板3Pから入力された画像信号が位置情報用の画素14Pの信号であると識別し、その画素データを内部の図示しないバッファに蓄積する。その後、撮像素子駆動部23から演算タイミング信号を受信すると、座標演算部25は、バッファに水平方向位置情報領域15Hまたは垂直方向位置情報領域15V内の全画素14Pのデータが蓄積されたと識別する。後述するように、透明板37は、最初の段階で、撮像素子基板3Pに対して例えば数十ミクロンの精度で位置合わせをされており、このときの位置ずれを考慮しても、位置検出用遮光マスク38H,38Vの陰影が位置情報領域15H,15V内にほぼ確実に投影されるように、位置情報領域15H,15の位置や領域の大きさが設定されている。従って、位置情報領域15H,15V内に、位置検出用遮光マスク38H,38Vの陰影が投影されていると期待することができる。そして、座標演算部25は、後述するような演算を行うことにより、位置検出用遮光マスク38H,38VのV字形切欠の頂点38Hcの陰影の座標を求めて、求めた座標をズレ量算出部26へ出力する。
【0048】
ズレ量算出部26は、座標演算部25により求められた、水平方向位置検出用遮光マスク38HのV字形切欠の頂点38Hcの陰影の座標と、垂直方向位置検出用遮光マスク38VのV字形切欠の頂点38Hcの陰影の座標と、これらの頂点38Hcの陰影が投影されるべき第3の画素14Pの座標と、に基づいて、後述するように、撮像素子基板3Pに対して透明板37を移動するべき走査方向(平行移動方向、回転移動方向など)および走査量(平行移動量、回転移動量など)を決定するものである。
【0049】
走査制御回路27は、ズレ量算出部26により決定された走査方向および走査量に基づいて、透明板移動装置22を制御し、撮像素子基板3Pに対する透明板37の2次元的な位置を変更する走査を行わせるものである。
【0050】
次に、図11は、撮像素子の製造装置により位置調整を行う前の、撮像素子基板3Pと透明板37との位置関係の例を示す図である。
【0051】
上述したように、撮像素子の製造装置により位置調整を行う前に、透明板37は、観察カメラ等によって観察を行いながら、撮像素子基板3Pに対して例えば数十ミクロンの精度で位置合わせをされているものとする。従って、この初期の位置合わせ誤差を考慮しても、この状態でコリメータ光を照射すれば、位置検出用遮光マスク38H,38Vの陰影が、位置情報領域15H,15V内に投影されるものとする。
【0052】
そして、この初期状態では、一般に、透明板37は撮像素子基板3Pに対して、水平方向および垂直方向に位置ずれが生じているとともに、回転方向にも位置ずれが生じていると考えられる。
【0053】
このような前提の下に、撮像素子の製造装置により位置調整を行う。ここに図15は、撮像素子の製造装置による位置調整の処理を示すフローチャートである。
【0054】
この処理を開始すると、まず、水平方向位置検出用遮光マスク38HのV字形切欠の頂点38Hcの陰影の座標、すなわち第1の特定位置の座標(Xc1,Yc1)と、垂直方向位置検出用遮光マスク38VのV字形切欠の頂点38Hcの陰影の座標、すなわち第2の特定位置の(Xc2,Yc2)と、を求める(ステップS1)。この処理の詳細について、図16を参照して説明する。
【0055】
図16は、位置検出用遮光マスク38H,38Vの特定位置であるV字形切欠の頂点38Hcの現在位置を取得する処理を示すフローチャートである。
【0056】
この処理を開始すると、透明板37が配置された撮像素子基板3Pにコリメータ光源21からコリメータ光を照射する。そして、撮像素子駆動部23の制御により、撮像素子基板3Pに露光(第1の撮像)を行わせ、画像信号の読み出しを行う(ステップS11)。
【0057】
撮像素子基板3Pからの画像信号の読み出しは、上述したように、画素単位で順に行われる。そこで、座標演算部25は、位置情報領域分離タイミングデコーダ24からの位置情報領域指示信号に基づいて、まず水平方向位置情報領域15Hに含まれる全ての画素14Pの画素データを蓄積する。これにより、水平方向位置情報領域15Hの画像データが抽出される(ステップS12)。この水平方向位置情報領域15Hの画像データの抽出が完了した後に、撮像素子駆動部23からの演算タイミング信号が座標演算部25に入力されて、以下のステップS13〜S19の処理が行われる。
【0058】
するとまず、複数の画素14Pを含む横長の矩形領域である水平方向位置情報領域15H内の各画素データを、垂直方向と水平方向とに各加算する(ステップS13)。
【0059】
ここに、図12は撮像素子基板3Pに対する透明板37の傾きがないときの(A)配置例を示す図、(B)垂直方向加算信号の信号レベルの分布を示す線図、(C)水平方向加算信号の信号レベルの分布を示す線図である。
【0060】
水平方向位置検出用遮光マスク38Hは、入射する光を遮光するものであるために、その陰影の面積が大きいほど、画素14Pから出力される信号レベルは低くなる。従って、水平方向位置検出用遮光マスク38HがV字形の切欠を有する形状に形成されているのに伴って、垂直方向加算信号の信号レベルの分布は、図12(B)に示すように略2等辺三角形状をなす山形となる。また、水平方向加算信号の信号レベルの分布は、図12(C)に示すように、水平方向位置検出用遮光マスク38Hが最も大きい面積で配置された水平ラインの加算信号が極小値をなすような谷形となる。
【0061】
次に、図13は撮像素子基板3Pに対する透明板37の傾きがあるときの(A)配置例を示す図、(B)垂直方向加算信号の信号レベルの分布を示す線図、(C)水平方向加算信号の信号レベルの分布を示す線図である。
【0062】
図13(A)に示したように透明板37の傾きが比較的小さい場合には、垂直方向加算信号の信号レベルの分布は、図12(B)に示した略2等辺三角形状をなす山形と類似した波形の形状となる。一方、水平方向加算信号の信号レベルの分布は、図12(C)に示した谷形の波形において、山と谷との振幅が小さくなった波形となる。
【0063】
従って、水平方向位置検出用遮光マスク38Hの特定位置であるV字形切欠の頂点38Hcの水平方向位置(X座標)は、比較的小さい傾きの有無に関わらず、安定して求めることが可能であることが分かる。同様に、垂直方向位置検出用遮光マスク38Vの特定位置であるV字形切欠の頂点38Hcの垂直方向位置(Y座標)も、比較的小さい傾きの有無に関わらず、安定して求めることが可能である。
【0064】
図14は、垂直方向加算信号の信号レベルグラフを用いて、水平方向位置検出用遮光マスク38HのV字形切欠の頂点38HcのX座標を求める手順を説明するための図である。
【0065】
上述したステップS13の処理により算出された内の、垂直方向加算信号について、まず、極大値を検出し、この極大値を与える垂直ラインのX座標XDpnを求める(ステップS14)。ここで求めたX座標XDpnは、水平方向の画素ピッチを単位とする座標値となる。
【0066】
次に、垂直方向加算信号について、極大値と、極大値の次に大きな値(以下では、第2の極大値と称することにする)とを除いた、極大値の左側において、最も大きな値とその次に大きな値(以下では、準極大値と称することにする)Dlmax1、Dlmax2を抽出するとともに、極大値の右側において、最も大きな値とその次に大きな値(上述したように、準極大値)Drmax1、Drmax2を抽出する(ステップS15)。
【0067】
そして、図14に示すような垂直方向加算信号の信号レベルグラフにおいて、左側の2個の準極大値Dlmax1と準極大値Dlmax2とを通る直線L1と、右側の2個の準極大値Drmax1と準極大値Drmax2とを通る直線L2とを、1次関数として各求める(ステップS16)。
【0068】
続いて、直線L1と直線L2との交点を求めて、求めた交点と上述したX座標XDpnの極大値とのX座標距離XDpsubを求める(ステップS17)。
【0069】
その後、XDpnとXDpsubとを加算することにより、第1の特定位置である直線L1と直線L2との交点のX座標Xc1を求める(ステップS18)。
【0070】
次に、上述したステップS13の処理により算出された内の、図13(C)に示すような水平方向加算信号において、極小値を与えるY座標位置を求め、求めたY座標位置を第1の特定位置のY座標Yc1として設定する(ステップS19)。
【0071】
このような処理により、図11に示す第1の特定位置の座標(Xc1,Yc1)が求められた。続いて、同様の処理を行うことにより、図11に示す第2の特定位置の座標(Xc2,Yc2)を求める。
【0072】
すなわち、座標演算部25は、位置情報領域分離タイミングデコーダ24からの位置情報領域指示信号に基づいて、まず垂直方向位置情報領域15Vに含まれる全ての画素14Pの画素データを蓄積する。これにより、垂直方向位置情報領域15Vの画像データが抽出される(ステップS20)。この垂直方向位置情報領域15Vの画像データの抽出が完了した後に、撮像素子駆動部23からの演算タイミング信号が座標演算部25に入力されて、以下のステップS21〜S27の処理が行われる。
【0073】
するとまず、複数の画素14Pを含む縦長の矩形領域である垂直方向位置情報領域15V内の各画素データを、水平方向と垂直方向とに各加算する(ステップS21)。
【0074】
このステップS21の処理により算出された内の、水平方向加算信号について、まず、極大値を検出し、この極大値を与える水平ラインのY座標YDpnを求める(ステップS22)。ここで求めたY座標YDpnは、垂直方向の画素ピッチを単位とする座標値となる。
【0075】
次に、水平方向加算信号について、極大値と、極大値の次に大きな値(第2の極大値)とを除いた、極大値の上側において、最も大きな値とその次に大きな値(準極大値)Dumax1、Dumax2を抽出するとともに、極大値の下側において、最も大きな値とその次に大きな値(準極大値)Ddmax1、Ddmax2を抽出する(ステップS23)。
【0076】
そして、水平方向加算信号の信号レベルグラフにおいて、上側の2個の準極大値Dumax1と準極大値Dumax2とを通る直線L3と、下側の2個の準極大値Ddmax1と準極大値Ddmax2とを通る直線L4とを、1次関数として各求める(ステップS24)。
【0077】
続いて、直線L3と直線L4との交点を求めて、求めた交点と上述したY座標YDpnの極大値とのY座標距離YDpsubを求める(ステップS25)。
【0078】
その後、YDpnとYDpsubとを加算することにより、第2の特定位置である直線L3と直線L4との交点のY座標Yc2を求める(ステップS26)。
【0079】
次に、上述したステップS21の処理により算出された内の、垂直方向加算信号において、極小値を与えるX座標位置を求め、求めたX座標位置を第2の特定位置のX座標Xc2として設定する(ステップS27)。
【0080】
このような処理により、図11に示す第2の特定位置の座標(Xc2,Yc2)が求められたところで、図15に示す処理にリターンする。
【0081】
なお、上述では左と右または上と下の2個の準極大値により求められる直線同士の交点として特定位置の座標を求めたが、これに限るものではなく、例えば3個以上の準極大値を用いて回帰直線を求め、回帰直線同士の交点として特定位置の座標を求めるようにすればより精度を向上することが可能となる。
【0082】
また、カラーフィルタアレイが配置された単板式の撮像素子基板3Pの場合には、コリメータ光の面輝度が一定であっても、色が異なると画素14Pから出力される信号レベルが異なることになるために、そのままでは上述したような演算を正確に行うことができない。そこで、上述したような演算を、位置情報領域15H,15V内の同色の画素14Pについてのみ行うようにしても良いし、あるいは、分光感度補正を行うことにより色毎の感度特性がほぼ同一となるように補正して位置情報領域15H,15V内の全画素14Pのデータを用いることができるようにしても構わない。
【0083】
図15の説明に戻って、水平方向位置検出用遮光マスク38HのV字形切欠の頂点38Hcが配置されるべき目標配置位置(第3の画素14Pの位置)の座標は、図11に示すように(X1,Y1)であり、垂直方向位置検出用遮光マスク38VのV字形切欠の頂点38Hcが配置されるべき目標配置位置(第3の画素14Pの位置)の座標は(X1,Y2)であって、これらはX座標が同一でY座標のみが異なっている。従って、まず、第1の特定位置のX座標と第2の特定位置のX座標とが一致するように、撮像素子基板3Pに対する透明板37の傾き角θを求めることにする。
【0084】
このために、ズレ量算出部26は、上述した処理により座標演算部25により求められた第1の特定位置の座標(Xc1,Yc1)と第2の特定位置の座標(Xc2,Yc2)とを用いて、これらの差分(Xa,Ya)を(Xc2−Xc1,Yc2−Yc1)により算出する(ステップS2)。
【0085】
次に、ズレ量算出部26は、Xa/Yaの逆正接(アークタンジェント)を算出することにより、撮像素子基板3Pに対する透明板37の傾き角θを求める(ステップS3)。
【0086】
なお、ステップS2およびステップS3においては数式を用いて傾き角θを求めているが、これに限るものではなく、例えばテーブル参照することにより求めるようにしても勿論構わない。
【0087】
続いて、走査制御回路27は、透明板移動装置22を制御することにより、ズレ量算出部26により求められた傾き角θを相殺する分(すなわち、−θ)だけ、透明板37を回転する(ステップS4)。
【0088】
透明板37が回転されたら、図16を参照して説明したステップS1の処理とほぼ同様にして、撮像素子基板3Pに露光(第2の撮像)を行わせて読み出された画像信号に基づき、水平方向位置検出用遮光マスク38HのV字形切欠の頂点38Hcの陰影の座標、すなわち第1の特定位置の座標(Xc1’,Yc1’)と、垂直方向位置検出用遮光マスク38VのV字形切欠の頂点38Hcの陰影の座標、すなわち第2の特定位置の(Xc2’,Yc2’)と、を求める(ステップS5)。
【0089】
なお、ここでは図16に示したような処理を行うことを前提としているが、以下の処理においては第1の特定位置のY座標Yc1’と第2の特定位置のX座標Xc2’とを必ずしも使用しないために、これらの座標を求める処理(つまり、図16におけるステップS19およびステップS27の各処理)は省略しても構わない。すなわち、第1の特定位置の水平方向成分であるX座標Xc1’と、第2の特定位置の垂直方向成分であるY座標Yc2’と、を少なくとも求めれば良い。
【0090】
ただし、上述したステップS4の処理により傾き角θが補正されていれば、第1の特定位置のX座標Xc1’と第2の特定位置のX座標Xc2’とは一致するはずであるから、処理結果の検証を行うために第2の特定位置のX座標Xc2’を求めるようにしても良い。そして、もしX座標が一致する検証結果が得られない場合には、さらに第1の特定位置のY座標Yc1’も求めて、取得した現在位置(Xc1’,Yc1’)および(Xc2’,Yc2’)に基づき上述したステップS2〜S4の処理を繰り返して行えば良い。
【0091】
次に、現在の第1の特定位置の座標(Xc1’,Yc1’)と目標配置位置(X1,Y1)との水平方向差分であるX座標差分ΔXをXc1’−X1として求めるとともに、現在の第2の特定位置の座標(Xc2’,Yc2’)と目標配置位置(X1,Y2)との垂直方向差分であるY座標差分ΔYをYc2’−Y2として求める(ステップS6)。
【0092】
そして、差分(ΔX,ΔY)を相殺する分(すなわち、(−ΔX,−ΔY))だけ、透明板37を平行移動する(ステップS7)。
【0093】
こうして透明板37と撮像素子基板3Pとの位置合わせが完了したら、その後は、撮像素子基板3Pと透明板37とを例えば接着剤を用いて固定し、ピックアップ部の真空ポンプによる吸引を停止して、透明板移動装置22から透明板37を取り外す。
【0094】
これにより焦点検出画素が所定の画素位置において正しく機能する撮像素子3が製造されたことになるために、この処理を終了する。
【0095】
続いて、図17は撮像装置の構成を示すブロック図である。
【0096】
上述したように製造された撮像素子3が適用される本実施形態の撮像装置は、例えばAF機能を有するデジタルカメラ等として構成されたものであり、図17に示すように、結像光学系1と、撮像部2と、位相差検出部6と、フォーカス制御部7と、画像処理部10と、補間部11と、を備えている。
【0097】
結像光学系1は、光学的な被写体像を撮像部2内の撮像素子3上に結像するための対物光学系であり、図示しない光学絞りや、焦点位置を調節するためのフォーカスレンズを含んで構成されている。
【0098】
撮像部2は、上述した撮像素子3と、撮像素子駆動部4と、画素種別信号出力部5と、を備えている。
【0099】
撮像素子駆動部4は、撮像素子3を駆動制御するものである。すなわち、撮像素子駆動部4は、水平同期信号HDと垂直同期信号VDとを撮像素子3へ出力して、該撮像素子3上に上述したように配列された複数の画素を所定の順序で駆動するようになっている。従って、画像信号は、読み出された画素順に、画素単位の画像信号(画素データ)として撮像素子3から出力されることになる。さらに、撮像素子駆動部4は、撮像素子3へ出力している水平同期信号HDおよび垂直同期信号VDに基づいて、撮像素子3から読み出されている画素位置の情報である読出位置情報を画素種別信号出力部5へ出力すると共に、相関演算を行うタイミングを示す相関タイミング信号を位相差検出部6へ出力するようになっている。
【0100】
ここに、撮像素子駆動部4から画素種別信号出力部5へ出力される読出位置情報は、例えば、マトリクス状に配列された複数の画素の位置に対応した、所定のタイミングを有するパルス信号である。
【0101】
また、撮像素子駆動部4は、上述したような制御信号(垂直同期信号、水平同期信号、読出位置情報、相関タイミング信号)のそれぞれを、図示しないレリーズボタンの操作に同期して出力するようになっている。
【0102】
画素種別信号出力部5は、撮像素子駆動部4からの読出位置情報に基づいて、撮像素子3から画素単位で順次出力される画像信号の種類を示す画素種別信号を生成し、位相差検出部6へ出力する回路である。
【0103】
ここに、画素種別信号は、焦点検出画素信号(以下に説明する位置情報画素の信号も含む)と瞳種別信号とを含んでいる。前者の焦点検出画素信号は、撮像素子3から出力されている画素データが、焦点検出画素13A,13Bまたは位置検出用遮光マスク38H,38Vが位置する画素(以下では、位置情報画素という)の信号であることを示す信号である。また、後者の瞳種別信号は、撮像素子3から出力されている画素データが、焦点検出画素の内の瞳A焦点検出画素13Aと瞳B焦点検出画素13Bとの何れの画素からのものであるかを示す信号である。
【0104】
この画素種別信号出力部5は、例えば、読出位置情報のパルス信号をカウントするカウンタと、焦点検出画素13A,13Bおよび上述した位置情報画素の位置に対応する値を保持する記憶部と、を備えて構成されている。そして、画素種別信号出力部5は、カウント値が、焦点検出画素13A,13Bまたは位置情報画素の位置に対応する所定値になったときに、焦点検出画素信号(位置情報画素信号も兼ねる)を出力する。さらに、画素種別信号出力部5は、カウント値が、焦点検出画素13A,13Bの位置に対応する所定値であるときには、さらに瞳種別信号を出力する。
【0105】
従って、撮像素子3から出力されている画像信号が、撮影画素14の信号である場合には焦点検出画素信号および瞳種別信号の何れも出力されず、位置情報画素の信号である場合には焦点検出画素信号は出力されるが瞳種別信号は出力されず、焦点検出画素13A,13Bの信号である場合には焦点検出画素信号および瞳種別信号の両方が出力されることになる。
【0106】
さらに、画素種別信号出力部5は、焦点検出画素信号を、補間部11へも出力するようになっている。
【0107】
位相差検出部6は、撮像素子3からの画像信号と、画素種別信号出力部5からの画素種別信号と、撮像素子駆動部4からの相関タイミング信号とに基づいて、瞳A焦点検出画素13Aに結像されている被写体像(第1の画素群からの出力により形成される第1の画像)と、瞳B焦点検出画素13Bからの画像信号に結像されている被写体像(第2の画素群からの出力により形成される第2の画像)と、の位相差を検出し、検出結果を位相差信号としてフォーカス制御部7へ出力するものである。
【0108】
フォーカス制御部7は、デフォーカス量算出部8とフォーカスレンズ駆動部9とを備えており、位相差検出部6により検出される位相差を0に近付けるように結像光学系1を駆動するものである。
【0109】
すなわち、デフォーカス量算出部8は、位相差検出部6からの位相差信号に基づきデフォーカス量を算出して、フォーカスレンズ駆動部9へ出力する。
【0110】
フォーカスレンズ駆動部9は、デフォーカス量算出部8により算出されたデフォーカス量に応じて、撮像素子3に結像される被写体像が合焦状態となるように、結像光学系1内のフォーカスレンズを駆動する。これにより、撮像装置のAF機能が実現される。撮像装置には図示しない操作部(例えば、デジタルカメラのレリーズボタン)が設けられており、この操作部からの操作信号により撮影処理の実行が指示されると、その実行時に焦点検出が行われてAF機能が実行される。
【0111】
補間部11は、撮影処理の実行により得られた撮像素子3からの撮像信号に対して、画素種別信号出力部5からの焦点検出画素信号(位置情報画素信号も兼ねる)に基づき、焦点検出画素13A,13Bおよび位置情報画素の補間処理を行うものである。すなわち、焦点検出画素13A,13Bおよび位置情報画素は、撮影用の画素として使用することができないために、この補間部11が、焦点検出画素13A,13Bおよび位置情報画素の位置の画素データを、周囲の撮影画素14の画素データを用いて補間して生成する処理を行う。
【0112】
画像処理部10は、補間部11により補間された画像信号に対して画像処理を行うものである。この画像処理部10により生成された画像データは、図示しない記録媒体等に記録されたり、図示しない表示装置に表示されたりするようになっている。
【0113】
なお、上述では位置検出用遮光マスク38H,38Vを透明板37の撮像素子基板3Pに対向する側の面に設けているが、これに代えて、位置検出用遮光マスクH,38Vを透明板37の撮像素子基板3Pに対向する側の面とは反対側の面に設けるとともに、さらに位置決めして取り付けた後に消去可能となるように形成すれば、位置情報画素は再び撮影画素14として使用可能となり、補間部11による位置情報画素の補間も不要となる利点がある。
【0114】
このような実施形態1によれば、遮光マスク38A,38Bに対して所定の位置関係にある位置検出用遮光マスク38H,38Vを設け、これらの位置検出用遮光マスク38H,38Vが位置するべき第3の画素14P上に、位置検出用遮光マスク38H,38Vが移動されるように位置合わせを行うことにより、遮光マスク38A,38Bが位置するべき第1,第2の画素14P上に該遮光マスク38A,38Bを、短時間で高精度に位置合わせすることが可能となる。
【0115】
また、位置検出用遮光マスク38H,38Vを、画素毎の遮光面積を、徐々に増加させる部位と、徐々に減少させる部位と、を備えるように構成したために、画素毎の遮光面積が、徐々に増加する線と、徐々に減少する線と、が交差する位置(ひいては、画素からの出力値が、徐々に減少する線と、徐々に増加する線と、が交差する位置)として特定位置を求めることができ、算出が容易になる利点がある。
【0116】
特に、水平方向に配列された複数の画素14Pの遮光面積を、徐々に増加させる部位と、徐々に減少させる部位と、を備えた水平方向位置検出用遮光マスク38Hを設けることにより水平方向の特定位置を高い精度で求めることが可能となる。また、垂直方向に配列された複数の画素14Pの遮光面積を、徐々に増加させる部位と、徐々に減少させる部位と、を備えた垂直方向位置検出用遮光マスク38Vを設けることにより垂直方向の特定位置を高い精度で求めることが可能となる。このような構成は、複数の画素14Pが、水平方向および垂直方向に沿って2次元状に配列された撮像素子基板3Pに対して、特に有効となる。
【0117】
さらに、位置検出用遮光マスク38H,38Vを、透明板37上の周辺領域に設けることにより、画像の中央部に位置することが多い主要被写体の画質低下を防止することができる。加えて、水平方向位置検出用遮光マスク38Hと垂直方向位置検出用遮光マスク38Vとを、透明板37上に互いに離隔して設けることにより、位置合わせの精度を向上することができる。
【0118】
そして、位置検出用遮光マスク38H,38Vを、透明板37の、撮像素子基板3Pと貼設される面とは反対側の面に設けて、位置合わせ後に消去する場合には、位置検出用遮光マスク38H,38Vによる画質の低下が全く生じることのない利点がある。
【0119】
なお、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。このように、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0120】
1…結像光学系
2…撮像部
3…撮像素子
3P…撮像素子基板
4…撮像素子駆動部
5…画素種別信号出力部
6…位相差検出部
7…フォーカス制御部
8…デフォーカス量算出部
9…フォーカスレンズ駆動部
10…画像処理部
11…補間部
13…瞳分割用遮光マスク領域
13A…瞳A焦点検出画素(第1の焦点検出画素)
13B…瞳B焦点検出画素(第2の焦点検出画素)
14…撮影画素
14P…画素
15H…水平方向位置情報領域
15V…垂直方向位置情報領域
21…コリメータ光源
22…透明板移動装置
23…撮像素子駆動部
24…位置情報領域分離タイミングデコーダ
25…座標演算部
26…ズレ量算出部
27…走査制御回路
31…半導体基板
32…フォトダイオード
33,34…配線パターン
35…マイクロレンズ
37…透明板
38A…第1の遮光マスク
38B…第2の遮光マスク
38H…水平方向位置検出用遮光マスク
38Hc…頂点(特定位置)
38V…垂直方向位置検出用遮光マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的な被写体像を光電変換するための画素が、複数、2次元状に配列されるように、半導体製造プロセスにより形成された撮像素子基板と、
上記撮像素子基板に対して画素位置を合わせて貼設された透明板と、
を具備した撮像素子であって、
上記撮像素子基板に配列された複数の画素は、第1の所定位置にある第1の画素と、第2の所定位置にある第2の画素と、第3の所定位置にある第3の画素と、を含み、
上記透明板上に、該透明板が上記撮像素子基板に画素位置を合わせて貼設された際に、上記第1の画素の中心から一方向へ偏心した部分を遮光するように設けられた第1の遮光マスクと、
上記透明板上に、該透明板が上記撮像素子基板に画素位置を合わせて貼設された際に、上記第2の画素の中心から他方向へ偏心した部分を遮光するように設けられた第2の遮光マスクと、
上記透明板上に、該透明板が上記撮像素子基板に画素位置を合わせて貼設された際に、上記撮像素子基板に配列された複数の画素の内の、一部の複数の画素を、遮光面積を徐々に異ならせながら遮光するように設けられ、遮光面積の変化に基づいて定められる特定位置が上記第3の画素に一致するように設けられた位置検出用遮光マスクと、
をさらに具備し、
上記第1の画素および上記第1の遮光マスクの組が第1の焦点検出画素を、上記第2の画素および上記第2の遮光マスクの組が第2の焦点検出画素を、それぞれ構成することを特徴とする撮像素子。
【請求項2】
上記位置検出用遮光マスクは、画素毎の遮光面積を、徐々に増加させる部位と、徐々に減少させる部位と、を備え、
上記特定位置は、画素毎の遮光面積が、徐々に増加する線と、徐々に減少する線と、が交差する位置であることを特徴とする請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
上記撮像素子基板は、複数の画素が、水平方向および垂直方向に沿って2次元状に配列されたものであり、
上記位置検出用遮光マスクは、水平方向に配列された複数の画素の遮光面積を、徐々に増加させる部位と、徐々に減少させる部位と、を備えた水平方向位置検出用遮光マスクと、垂直方向に配列された複数の画素の遮光面積を、徐々に増加させる部位と、徐々に減少させる部位と、を備えた垂直方向位置検出用遮光マスクと、を含むことを特徴とする請求項2に記載の撮像素子。
【請求項4】
上記水平方向位置検出用遮光マスクと上記垂直方向位置検出用遮光マスクとは、上記透明板上の周辺領域に、互いに離隔して設けられていることを特徴とする請求項3に記載の撮像素子。
【請求項5】
上記位置検出用遮光マスクは、上記透明板の、上記撮像素子基板と貼設される面とは反対側の面に、消去可能に設けられたものであることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の撮像素子。
【請求項6】
請求項1に記載の撮像素子と、
上記撮像素子上に被写体像を形成する結像光学系と、
上記第1の焦点検出画素からの出力により形成される第1の画像と、上記第2の焦点検出画素からの出力により形成される第2の画像と、の位相差を検出する位相差検出部と、
を具備したことを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
上記結像光学系は、焦点位置を調節可能であり、
上記位相差検出部により検出される位相差を0に近付けるように上記結像光学系を駆動するフォーカス制御部をさらに具備したことを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
請求項3に記載の撮像素子を製造するための方法であって、
上記撮像素子基板に対して上記透明板を配置し、透明板が配置された撮像素子基板に平行光を照射して、該撮像素子基板により第1の撮像を行うステップと、
上記第1の撮像により上記撮像素子基板から得られた画像信号に基づき、上記水平方向位置検出用遮光マスクの陰影が形成された第1の特定位置と、上記垂直方向位置検出用遮光マスクの陰影が形成された第2の特定位置と、を取得するステップと、
取得された第1の特定位置および第2の特定位置を結ぶ直線と、上記水平方向位置検出用遮光マスクと上記垂直方向位置検出用遮光マスクとが配置されるべき2つの上記第3の所定位置を結ぶ直線と、がなす傾き角を求めるステップと、
上記傾き角を0にするように、上記撮像素子基板に対して上記透明板を回転するステップと、
上記透明板の回転が終了した後の撮像素子基板に平行光を照射して、該撮像素子基板により第2の撮像を行うステップと、
上記第2の撮像により上記撮像素子基板から得られた画像信号に基づき、上記水平方向位置検出用遮光マスクの陰影が形成された第1の特定位置の水平方向成分と、上記垂直方向位置検出用遮光マスクの陰影が形成された第2の特定位置の垂直方向成分と、を取得するステップと、
上記取得された第1の特定位置の水平方向成分と、上記水平方向位置検出用遮光マスクが配置されるべき上記第3の所定位置の水平方向成分と、の差分である水平方向差分と、上記取得された第2の特定位置の垂直方向成分と、上記垂直方向位置検出用遮光マスクが配置されるべき上記第3の所定位置の垂直方向成分と、の差分である垂直方向差分と、を算出するステップと、
上記水平方向差分および上記垂直方向差分を相殺するように、上記撮像素子基板に対して上記透明板を平行移動するステップと、
を含むことを特徴とする撮像素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−175144(P2012−175144A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32007(P2011−32007)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】