撮像装置、画像処理装置および撮像方法
【課題】被写界深度が拡大された画像を高精度に生成する。
【解決手段】撮像素子11は、被写体からの光を位相変調素子12を通じて受光する。画像抽出部13は、撮像素子11によって得られた撮像画像P1から、点画像が分散された領域を含む部分画像P2を抽出する。復元処理部14は、画像抽出部13によって抽出された部分画像P2を点像分布関数(PSF)として用い、撮像素子11によって得られた撮像画像(例えば撮像画像P1)に対して被写体像を復元する処理を施す。実際の撮像画像から得られた点像分布関数を用いて被写体像の復元処理が行われるので、光学系の製造誤差などの起因する点像分布関数の誤差が生じにくくなり、被写体を精度よく復元できる。
【解決手段】撮像素子11は、被写体からの光を位相変調素子12を通じて受光する。画像抽出部13は、撮像素子11によって得られた撮像画像P1から、点画像が分散された領域を含む部分画像P2を抽出する。復元処理部14は、画像抽出部13によって抽出された部分画像P2を点像分布関数(PSF)として用い、撮像素子11によって得られた撮像画像(例えば撮像画像P1)に対して被写体像を復元する処理を施す。実際の撮像画像から得られた点像分布関数を用いて被写体像の復元処理が行われるので、光学系の製造誤差などの起因する点像分布関数の誤差が生じにくくなり、被写体を精度よく復元できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、画像処理装置および撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル方式の撮像装置は、一般に、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの固体撮像素子に被写体を結像させることで、撮像動作を行う。近年、このような撮像装置に適用される技術として、WFC(Wavefront Coding)と呼ばれる技術が注目されている。
【0003】
WFC技術が採用された撮像装置では、固体撮像素子に対する被写体からの光路上に、位相変調素子が配置される。位相変調素子は、被写体から発せられる光束を規則的に分散させ、固体撮像素子の受光面に結ぶ像を変形させる。これにより、固体撮像素子からは、ピントがずれた状態の画像が得られ、このときに得られる画像は「中間画像」と呼ばれる。撮像装置は、固体撮像素子から得られた中間画像に対して、点像分布関数(PSF:Point Spread Function)を用いたデジタル処理を施すことにより、被写体の画像を復元する。
【0004】
位相変調素子を用いて得られた中間画像に生じるボケの度合いは、撮像装置と被写体との距離が変動した場合であっても、大きく変動しない。このことから、ボケ度合いの変動量が小さい中間画像に対してデジタル処理を施して被写体の画像を復元することにより、被写界深度を拡大することができる。
【0005】
このようなWFC技術は、デジタルカメラなどの一般的なカメラ製品の他、電子内視鏡システムに搭載された撮像機構に採用することも考えられている。
なお、PSFを用いた画像処理を行う他の撮像装置としては、撮影画像内の小領域ごとに点像分布関数(PSF:Point Spread Function)を算出し、算出した点像分布関数を基に、色収差によるボケを解消するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−235794号公報
【特許文献2】特開2010−147926号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Edward R. Dowski, Jr. and W. Thomas Cathey, "Extended depth of field through wave-front coding", Applied Optics, vol.34, no.11, April, 1995, pp. 1859-1866
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のWFC技術において、被写体からの距離によらずボケ度合いの変動量が小さいということは、被写体からの距離によらずPSFの変動量が小さいことを意味する。このため、画像の復元時には、被写体からの距離に関係なく、位相変調素子を含む光学系の設計値から求めた同一のPSFを用いて画像処理が行われる。しかしながら、光学系の製造誤差などの原因により、画像復元時に用いるPSFと、実際の光学系におけるPSFとは、微妙に異なる場合がある。
【0009】
WFC技術では、画像の処理時に用いるPSFの精度が、画像の復元精度に直結する。画像復元時に用いるPSFと、実際の光学系の設計値に基づくPSFとの誤差がある場合、復元された画像にゴーストが発生するなど、画像の復元精度が劣化するという問題があった。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、被写界深度が拡大された画像を高精度に生成することが可能な撮像装置、画像処理装置および撮像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、被写体からの光を位相変調素子を通じて受光する撮像素子と、前記撮像素子によって得られた撮像画像から、点画像が分散された領域を含む部分画像を抽出する画像抽出部と、前記画像抽出部によって抽出された前記部分画像を点像分布関数として用い、前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して被写体像を復元する処理を施す復元処理部と、を有する撮像装置が提供される。
【0012】
また、上記課題を解決するために、上記の撮像装置と同様の処理が実行される画像処理装置および撮像方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
上記の撮像装置、画像処理装置および撮像方法によれば、被写界深度が拡大された画像を高精度に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【図2】第2の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【図3】位相板の形状例を示す図である。
【図4】PSFの例を示す図である。
【図5】位相板を用いないで撮像された画像におけるMTFの分布例を示すグラフである。
【図6】位相板を用いて撮像された画像におけるMTFの分布例を示すグラフである。
【図7】画像の復元に使用する逆フィルタの特性例を示すグラフである。
【図8】図7の逆フィルタを用いて被写体像が復元された画像におけるMTFの分布例を示すグラフである。
【図9】第2の実施の形態に係る撮像装置の撮像処理手順を示すフローチャートである。
【図10】第3の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【図11】PSF検出モードにおける撮像動作例を示す第1の図である。
【図12】PSF検出モードにおける撮像動作例を示す第2の図である。
【図13】PSF検出モードにおける撮像動作例を示す第3の図である。
【図14】第3の実施の形態に係る撮像装置のPSF検出モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
【図15】第3の実施の形態に係る撮像装置の本撮像モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
【図16】PSF検出モードにおいて撮像の対象とする被写体の例を示す図である。
【図17】第4の実施の形態に係る撮像装置のPSF検出モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
【図18】第5の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【図19】第5の実施の形態に係る撮像装置の撮像処理手順を示すフローチャートである。
【図20】第6の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【図21】PSF検出モードにおいて撮像の対象とする被写体の例を示す図である。
【図22】部分画像を抽出する領域の設定例を示す図である。
【図23】中間画像を分割した分割領域の例を示す図である。
【図24】第6の実施の形態に係る撮像装置のPSF検出モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
【図25】第6の実施の形態に係る撮像装置の本撮像モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【0016】
図1に示す撮像装置1は、撮像素子11によって被写体像を撮像するデジタル方式の撮像装置である。また、この撮像装置1は、WFC技術によって被写界深度が拡大された画像を撮像可能になっている。すなわち、撮像素子11は、被写体からの光を位相変調素子12を通じて受光する。位相変調素子12は、入射した被写体像を一定の方向に分散させる。撮像装置1では、撮像素子11によって得られた撮像画像に対して、点像分布関数(PSF)を用いて画像処理を施すことで、被写界深度が拡大された被写体像を復元できるようになっている。
【0017】
なお、図示しないが、撮像素子11の被写体側には、位相変調素子12の他、レンズなどの光学部材が配置される。レンズは、例えば、位相変調素子12の被写体側、または位相変調素子12の撮像素子11側、またはそれら両方に配置される。
【0018】
ここで、被写体像を復元する際の演算処理の例について説明し、その後に、図1の構成についてあらためて説明する。
位相変調素子12を用いて撮像された画像、すなわち、図1の撮像素子11から得られる撮像画像は、中間画像と呼ばれる。ここで、中間画像を「h」、PSFを「g」、位相変調素子12を通過せずに撮像素子11に入射したときに撮像される被写体画像を「f」とすると、「h」「g」「f」の間には次の式(1)の関係が成り立つ。
【0019】
【数1】
【0020】
上記の式(1)をフーリエ変換すると、次の式(2)のようになる。
F・G=H ・・・(2)
上記の式(2)のうち、PSF「g」をフーリエ変換した結果である「G」は、光学伝達関数(OTF:Optical Transfer Function)であり、結像光学系における空間周波数の伝達特性を表す。なお、OTFの絶対値は、MTF(Modulation Transfer Function)と呼ばれる。
【0021】
フーリエ変換後の被写体画像「F」は、下記の式(3)を用いて求めることができる。この式(3)では、中間画像「h」をフーリエ変換した結果である「H」に対して、OTF「G」の逆フィルタ「Hinv」を乗算することで、フーリエ変換後の被写体画像「F」が求められる。従って、被写体画像「f」は、式(3)の「F」を逆フーリエ変換することによって求めることができる。
F=Hinv・H ・・・(3)
なお、式(3)に示した逆フィルタ「Hinv」は、次の式(4)のように表される。
【0022】
【数2】
【0023】
また、他の演算方法として、上記の逆フィルタ「Hinv」を逆フーリエ変換することで逆カーネル「hinv」を求め、次の式(5)に示すように、中間画像「h」と逆カーネル「hinv」との畳み込み演算を行うことで、被写体画像「f」を求めることもできる。
【0024】
【数3】
【0025】
以上の式(1)〜(5)に示したように、WFC技術では、PSFを用いて被写体像の復元演算が行われる。また、位相変調素子を用いて撮像された中間画像に生じるボケの度合いは、撮像装置と被写体との距離によらずほぼ一定となる。このことから、WFC技術では、位相変調素子を含む光学系の設計値から求められる同一のPSFを用いて復元演算を行うことで、被写界深度が拡大された画像を得ることが可能であった。
【0026】
しかしながら、光学系の製造誤差などの要因により、画像復元時に用いられるPSFと、実際の光学系におけるPSFとは、微妙に異なる場合がある。このようなPSFの誤差が発生すると、復元された画像にゴーストが発生するなど、画像の復元精度が劣化する可能性がある。
【0027】
このような問題点に対して、本実施の形態の撮像装置1では、撮像素子11によって実際に撮像された画像からPSFを求め、求めたPSFを用いて被写体像の復元演算を行う。これにより、光学系の製造誤差などによるPSF誤差の発生量を低減し、被写体像をより高精度に復元できるようにする。
【0028】
図1に示すように、撮像装置1は、撮像素子11、位相変調素子12の他、画像抽出部13および復元処理部14を備えている。画像抽出部13は、撮像素子11によって得られた撮像画像から、点状の画像(点画像)が分散された領域を含む部分画像を抽出する。復元処理部14は、撮像素子11によって得られた撮像画像に対して、被写体像を復元する処理を施す。この復元処理部14は、被写体像の復元処理の際に、画像抽出部13によって抽出された部分画像をPSFとして使用する。
【0029】
図1の下側には、撮像装置1において撮像される画像の例を示す。撮像画像P1は、撮像素子11によって撮像され、撮像素子11から画像抽出部13に入力される画像である。この撮像画像P1は、「中間画像」とも呼ばれ、主として位相変調素子12の作用により、被写体像にボケが生じた状態になっている。前述のように、位相変調素子12は、入射した被写体像を一定の方向に分散させる。
【0030】
部分画像P2は、画像抽出部13によって、例えば、撮像画像P1の右下側の領域から抽出された画像である。この部分画像P2は、被写体像に含まれる点状の像(点画像)が撮像された領域を含む。部分画像P2内の点画像は、主として位相変調素子12の作用によって分散された状態になっている。従って、部分画像P2における信号分布は、実際に撮像された光学系のPSFを示すことになる。
【0031】
部分画像P2は、例えば、パターンマッチングによって抽出することができる。この場合、例えば、撮像装置1の光学系の設計値から求めたPSFをとる比較画像を、撮像装置1内のメモリ(図示せず)に記憶しておく。画像抽出部13は、撮像素子11から得られた撮像画像P1に対して、メモリに記憶された比較画像とのパターンマッチングを行い、比較画像と類似する画像領域を部分画像P2として抽出する。
【0032】
復元処理部14は、抽出された部分画像P2をPSFとして用いて、撮像素子11によって得られた撮像画像に対して、上記の式(3)や式(5)などに従って被写体像を復元する処理を施す。図1の下側に示した画像P3は、画像抽出部13による部分画像P2の抽出対象とされた撮像画像P1と同一の画像から、復元処理部14によって復元されたものである。この場合、復元処理部14によって、撮像画像P1において生じていたボケが解消した画像P3が復元される。
【0033】
この画像P3の例のように、復元処理部14が処理対象とする撮像画像は、画像抽出部13によって部分画像の抽出対象とされた撮像画像と同一であってもよい。あるいは、復元処理部14が処理対象とする撮像画像は、画像抽出部13によって部分画像が抽出された後に、あらためて撮像素子11によって得られた撮像画像であってもよい。これらのいずれの場合でも、復元処理部14は、撮像素子11によって実際に撮像された画像から求められたPSFを用いて被写体像の復元処理を行うので、光学系の設計値から求めたPSFを用いて復元処理を行う場合と比較して、被写体像をより高精度に復元できるようになる。
【0034】
なお、上記の画像P3の例のように、復元処理部14が処理対象とする撮像画像が、画像抽出部13によって部分画像の抽出対象とされた撮像画像と同一とされる場合には、撮像装置1と被写体との距離に応じたPSFの誤差も低減し、被写体像をより高精度に復元することもできる。被写体との距離に応じたPSFの誤差が低減される点については、次の第2の実施の形態において詳しく説明する。
【0035】
〔第2の実施の形態〕
図2は、第2の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
撮像装置100は、光学ブロック110、撮像素子121、A/D(Analog/Digital)コンバータ122、画像復元処理部130、不揮発性記憶部140、DSP(Digital Signal Processor)151、表示部152、メモリカード153、撮像制御部154および入力部155を備える。
【0036】
光学ブロック110は、被写体からの光束を撮像素子121に対して集光する光学系を搭載するブロックであり、レンズ111,112、アイリス113、位相板114などを備える。位相板114は、位相変調素子の一例であり、被写体からの光束を規則的に分散させる。なお、図2の例では、位相板114はアイリス113の直後に配置されているが、位相板114の位置はこのような位置に限らない。
【0037】
撮像素子121は、例えば、CCD、CMOSセンサなどとして実現され、光学ブロック110を通じて入射した光をアナログ画像信号に変換する。A/Dコンバータ122は、撮像素子121から出力されたアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換する。
【0038】
画像復元処理部130は、A/Dコンバータ122から出力された画像信号に対してWFC技術に基づくデジタル画像処理を施すことにより、被写界深度が拡大された画像を復元する。不揮発性記憶部140は、画像復元処理部130での処理時に使用される各種データを記憶する。
【0039】
DSP151は、画像復元処理部130から出力された画像信号に対して、所定のデジタル画像処理を施す。DSP151は、例えば、各種の画質補正処理、画質補正のための検波処理、表示用画像信号の生成処理、記録用画像信号を生成するための圧縮符号化処理などを実行する。なお、画像復元処理部130の処理機能は、DSP151の一機能として実現されてもよい。
【0040】
表示部152は、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスなどによって実現され、DSP151から出力された表示用画像信号に基づいて画像を表示する。メモリカード153は、可搬型の半導体記憶装置であり、DSP151から出力された記録用画像信号を記憶する。なお、メモリカード153は、記録用画像信号を記憶する記憶媒体の一例であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、光ディスクなどの他の種類の記憶媒体に対して画像信号が記憶されてもよい。
【0041】
入力部155は、シャッタボタンなどの各種の入力スイッチを備える。撮像制御部154は、入力部155のシャッタボタンの押下などをトリガとして、撮像装置100における撮像動作を制御する。撮像制御部154は、例えば、シャッタボタンが押下されたとき、画像復元処理部130に対して、A/Dコンバータ122から取り込んだ撮像画像信号に対するデジタル画像処理を実行させる。
【0042】
次に、画像復元処理部130の構成例について説明する。画像復元処理部130は、画像メモリ131、画像抽出部132、コンボリューション制御部133およびコンボリューション演算部134を備える。
【0043】
画像メモリ131は、画像復元処理部130での処理の際の作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)であり、画像データをはじめとする各種のデータを一時的に記憶する。画像メモリ131は、例えば、撮像素子121によって撮像され、A/Dコンバータ122によってデジタル化された撮像画像のRAWデータを、一時的に記憶する。以下、画像メモリ131に記憶される撮像画像のRAWデータを「中間画像データ」と呼び、この中間画像データに基づく画像を「中間画像」と呼ぶ。
【0044】
画像抽出部132は、画像メモリ131に記憶された中間画像データを用いて、中間画像から、点画像が分散された部分領域を抽出する。本実施の形態では、画像抽出部132は、不揮発性記憶部140に記憶された設計PSF141を用いて部分領域を抽出する。設計PSF141は、光学ブロック110内の光学系の設計値を基にシミュレーションなどによって算出されたPSFである。画像抽出部132は、中間画像に対して設計PSF141を用いたパターンマッチングを行うことにより、部分領域を抽出する。
【0045】
コンボリューション制御部133およびコンボリューション演算部134は、画像抽出部132によって抽出された部分画像をPSFとして利用して、画像メモリ131に記憶された中間画像データに対して画像処理を行うことにより、被写体像を復元する処理を行う処理部である。本実施の形態では、コンボリューション演算部134は、前述した式(5)に従って、画像復元の演算を行うものとする。
【0046】
コンボリューション制御部133は、画像抽出部132によって抽出された部分画像をPSFとし、このPSFを基に式(5)に示した逆カーネル「hinv」を求めて、コンボリューション演算部134に投入する。なお、逆カーネル「hinv」は、部分画像に基づくPSFをフーリエ変換することで式(4)の「G」を求め、この「G」を用いて式(4)の逆フィルタ「Hinv」を求めた後、逆フィルタ「Hinv」を逆フーリエ変換することによって求めることができる。
【0047】
図3は、位相板の形状例を示す図である。
本実施の形態で使用される位相板114は、通過する光の位相に対して、例えばexp{iψ(x,y)}のズレを与える。ここで、例としてψ(x,y)=α(x3+y3)/2とすると、位相板114は、一方の面が平面で、他方の面が、図3に示すようなz=iα(x3+y3)/2で表される3次曲面の形状をなす。なお、図3は、xおよびyがともに−1から1までの範囲をとるときの3次曲面の形状を示す。
【0048】
図4は、PSFの例を示す図である。なお、この図4では、わかりやすくするために、信号レベルが高いほど黒く、低いほど白く示している。
図3に示すような位相板114を用いた場合のPSFは、図4のようになる。この図4によれば、図3の位相板114は、通過した光束を左方向および下方向の2方向に分散させる特性を持つことがわかる。
【0049】
本実施の形態の撮像装置100は、図4に示すようなPSFのデータを設計PSF141として不揮発性記憶部140にあらかじめ記憶しておく。そして、画像抽出部132は、パターンマッチングにより、撮像素子121によって得られた撮像画像から、設計PSF141に類似する信号分布特性を持つ領域を部分領域として抽出する。
【0050】
なお、設計PSF141が図4のようなものとなる場合、画像抽出部132は、パターンマッチングの代わりに、撮像画像から、点状の画像を中心として左および下の2方向に画像の分散が生じた画像を探索することで、部分画像を抽出してもよい。
【0051】
ここで、撮像画像の特性について説明する。まず、図5は、位相板を用いないで撮像された画像におけるMTFの分布例を示すグラフである。
図5の直線L1は、位相板114を使用せずに、被写体からの光束が撮像素子121に合焦した状態で得られる撮像画像におけるMTFの分布例を示す。この直線L1のように、焦点が合った状態で撮像された画像では、MTFは直線状に分布する。
【0052】
一方、図5の曲線L2,L3は、位相板114を使用せずに、光学ブロック110内のレンズを焦点が合う位置からずらして撮像したときに得られる撮像画像におけるMTFの分布例を示す。すなわち、直線L1および曲線L2,L3は、撮像装置100からの距離がそれぞれ異なる被写体を撮像したときに得られる画像の特性を示す。
【0053】
曲線L2,L3に示すように、焦点がずれた状態で撮像された画像では、MTFの分布は直線L1から離間する。図5において、曲線L3は、曲線L2と比較してレンズを合焦位置からより大きくずらしたときのMTFであり、焦点のずれが大きいほどMTFの劣化度が大きくなることがわかる。
【0054】
図6は、位相板を用いて撮像された画像におけるMTFの分布例を示すグラフである。
図6の曲線L11は、図5の直線L1の特性が得られる場合と同様のレンズ位置状態で、位相板114を挿入して撮像を行った場合に得られる撮像画像(以下、中間画像Aと呼ぶ)におけるMTFの分布例を示す。また、図6の曲線L12,L13は、それぞれ図5の曲線L2,L3の特性が得られる場合と同様のレンズ位置状態で、位相板114を挿入して撮像を行った場合に得られる撮像画像(以下、それぞれ中間画像B,Cと呼ぶ)におけるMTFの分布例を示す。
【0055】
これらの曲線L11〜L13でわかるように、光学系に位相板114を挿入した場合には、撮像装置100から被写体までの距離の変化に対するMTFの変化量は、位相板114を挿入しない場合と比較して極めて小さい。換言すると、光学系に位相板114を挿入した場合には、撮像装置100から被写体までの距離が変化しても、中間画像に現れるボケの度合いは大きく変化しない。
【0056】
図7は、画像の復元に使用する逆フィルタの特性例を示すグラフである。この図7のグラフに示した曲線は、図4に示したPSFを用いて式(4)によって得られる逆フィルタ「Hinv」の特性を示す。
【0057】
図8は、図7の逆フィルタを用いて被写体像が復元された画像におけるMTFの分布例を示すグラフである。
図8の曲線L21〜L23は、それぞれ前述の中間画像A〜Cに対して図7に示した逆フィルタを用いて演算を行うことで被写体像を復元した画像におけるMTFの分布例を示す。逆フィルタを用いた演算後の画像は、図6に示したようにMTFの違いが小さい中間画像A〜Cに対して同じ逆フィルタを用いて演算されたものであるので、図8に示すように、これらの画像におけるMTFの分布も比較的同じような状態となる。WFC技術では、このような特性を利用して、位相板を用いて得られた中間画像を同じMTFを用いて演算することで、被写界深度が拡大された画像を得る。
【0058】
しかしながら、撮像装置100からの距離が異なる被写体を撮像した場合には、図8に示すように、実際にはMTFの分布が全く同じになる訳ではない。これは、位相板114を用いて撮像された中間画像におけるMTFが、被写体との距離に応じてわずかに変動することに起因する。このようなMTFの違いは、PSFを用いた復元処理後の画像においてゴーストなどとして現れ、画質劣化の原因となる。
【0059】
これに対して、本実施の形態の撮像装置100では、撮像を行うたびに、その撮像によって得られた中間画像からPSFを求め、求めたPSFを用いて中間画像に対する復元処理を行うようにする。このような処理により、被写体との距離の違いによるPSFの誤差が理論上生じなくなるので、被写体像を高精度に復元できるようになる。
【0060】
なお、本実施の形態の撮像装置100では、被写体との距離の違いによるPSF誤差だけでなく、第1の実施の形態と同様に、位相板114を含む光学系の製造誤差によるPSFの誤差も低減できることは言うまでもない。
【0061】
図9は、第2の実施の形態に係る撮像装置の撮像処理手順を示すフローチャートである。
[ステップS11]撮像制御部154は、入力部155のシャッタボタンが押下されたかを監視する。撮像制御部154は、シャッタボタンが押下されたことを検知すると、画像復元処理部130に対して撮像動作の開始信号を出力する。開始信号を受信した画像復元処理部130は、ステップS12以降の処理を実行する。
【0062】
[ステップS12]撮像素子121によって撮像された画像(中間画像)の信号が、A/Dコンバータ122によってデジタルデータ化される。撮像制御部154からの開始信号を受信した画像復元処理部130において、画像メモリ131は、A/Dコンバータ122から出力された中間画像データを取り込む。
【0063】
[ステップS13]画像抽出部132は、不揮発性記憶部140から設計PSF141を読み込む。画像抽出部132は、読み込んだ設計PSF141を用いてパターンマッチングを行うことにより、画像メモリ131に記憶された中間画像データに基づく中間画像から部分画像を抽出する。
【0064】
[ステップS14]コンボリューション制御部133は、画像抽出部132によって抽出された部分画像のデータをPSFとし、このPSFを基に逆カーネル「hinv」を算出する。コンボリューション制御部133は、例えば、算出された逆カーネル「hinv」を画像メモリ131に一時的に格納する。
【0065】
[ステップS15]コンボリューション演算部134は、ステップS14でコンボリューション制御部133によって算出された逆カーネル「hinv」を用いて、ステップS12で画像メモリ131に記憶された中間画像データに対して、式(5)に従って畳み込み演算を行う。これにより、被写体像の復元処理が実行される。
【0066】
コンボリューション演算部134によって演算処理された画像データは、DSP151によって所定の画質補正処理および圧縮符号化処理が施された後、メモリカード153に記録される。
【0067】
なお、上記の図9では静止画像の撮像動作について説明したが、例えば、表示部152に対してモニタ画像を表示する場合や、動画像を撮像して記録する場合には、上記のステップS12〜S15の処理が繰り返されればよい。また、モニタ画像の表示時や動画像の記録時には、部分画像の抽出および逆カーネル「hinv」の算出を一定時間ごとに実行するようにしてもよい。この場合、新たな逆カーネル「hinv」が算出されるまでの間、コンボリューション演算部134は同一の逆カーネル「hinv」を用いて演算処理を行う。このように、部分画像の抽出および逆カーネル「hinv」の算出を一定時間ごとに実行することにより、画像復元処理部130における処理負荷や消費電力を低減することができる。
【0068】
また、図9の処理では、部分画像の抽出と被写体像の復元処理とを、画像メモリ131に記憶された同一の中間画像データを基に実行した。しかし、他の処理例として、被写体像の復元処理は、部分画像の抽出後に新たに画像メモリ131に記憶された中間画像データを基に実行されてもよい。
【0069】
例えば、被写体像の復元処理の対象とする中間画像データは、部分画像の抽出対象とする中間画像データが画像メモリ131に取り込まれてから、画像抽出部132およびコンボリューション制御部133での処理に要する時間分だけ後に、画像メモリ131に取り込まれたものとされてもよい。このような処理により、画像の撮像タイミングと撮像画像のデータが画像復元処理部130から出力されるタイミングとの間に遅延が発生しないようになり、特にモニタ画像の表示時において、表示の遅延によってユーザに与える違和感をなくすことができる。
【0070】
また、例えば、静止画像を撮像する際には、次のような処理が行われてもよい。まず、シャッタボタンが半押し状態にされたときに、部分画像の抽出および逆カーネル「hinv」の算出が行われる。そして、その後にシャッタボタンが全押しされたとき、その時点で画像メモリ131に取り込まれた中間画像データに対して、半押し状態の際に算出された逆カーネル「hinv」を用いて被写体像の復元処理が実行される。
【0071】
〔第3の実施の形態〕
図10は、第3の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。なお、この図10では、図2に対応する構成要素については同じ符号を付して示す。
【0072】
第3の実施の形態に係る撮像装置100aは、撮像モードとして、部分画像の抽出および逆カーネル「hinv」の算出を行うPSF検出モードと、PSF検出モードで算出された逆カーネル「hinv」を用いて撮像画像に対する被写体像の復元処理を行う本撮像モードの2種類を備える。これらの撮像モードは、例えば、入力部155が備えるモード選択ボタンをユーザが操作することにより選択される。撮像制御部154aは、選択された撮像モードに従って、画像復元処理部130aの動作を制御する。
【0073】
画像復元処理部130aは、図2に示した画像メモリ131およびコンボリューション演算部134を備える。ただし、コンボリューション演算部134は、上記2つの撮像モードのうち本撮像モードにおいてのみ動作する。また、画像復元処理部130aは、画像抽出部132aおよびコンボリューション制御部133aを備える。画像抽出部132aは、上記2つの撮像モードのうちPSF検出モードにおいてのみ動作する。
【0074】
画像抽出部132aは、画像メモリ131に記憶された中間画像データに基づく中間画像から、あらかじめ決められた領域を部分画像として抽出する。本実施の形態では例として、画像抽出部132aは、中間画像の中心部を中心とした一定領域を部分画像として抽出する。
【0075】
コンボリューション制御部133aは、PSF検出モードにおいては、図2に示したコンボリューション制御部133と同様、画像抽出部132によって抽出された部分画像を基に、逆カーネル「hinv」を算出する。ただし、コンボリューション制御部133aは、算出した逆カーネル「hinv」を、カーネルデータ142として不揮発性記憶部140に記憶する。そして、本撮像モードに切り替えられた後、コンボリューション制御部133aは、不揮発性記憶部140からカーネルデータ142を読み出し、コンボリューション演算部134に供給する。
【0076】
ここで、PSF検出モードにおける撮像動作について説明する。PSF検出モードは、例えば、撮像装置100aの製品出荷前の段階、製品出荷後における撮像装置100aの初回電源投入時などに選択される。あるいは、撮像装置100aの電源が投入されるごとに、自動的にPSF検出モードになるようにしてもよい。
【0077】
PSF検出モードでは、撮像装置100aは、点画像を含む被写体を撮像することによって中間画像を取得し、得られた中間画像からPSFを検出する。点画像を含む被写体を撮像する方法としては、次のような方法がある。
【0078】
図11は、PSF検出モードにおける撮像動作例を示す第1の図である。
PSF検出モードでは、撮像装置100aは、図11に示すようなPSF検出モード専用の検出用被写体200を撮像する。検出用被写体200は、例えば、ピンホール201と光源202とを備え、ピンホール201の背面側から光源202によって光が発せられる。検出用被写体200の撮像面は単色とされることが望ましく、ピンホール201から撮像装置100a側に出射される光は、検出用被写体200の撮像面とは輝度が異なるか、あるいは色が異なるものとされる。撮像装置100aは、検出用被写体200を撮像することで、ピンホール201を点画像として認識することができる。
【0079】
図12は、PSF検出モードにおける撮像動作例を示す第2の図である。
図12に示すように、任意の撮像面211に対して、レーザポインタなどの光源212からの光を照射することにより、撮像面211に点画像213を生成することもできる。この場合、撮像面211は単色であることが望ましく、撮像面211に生成された点画像213は、撮像面211とは異なる明るさか、あるいは撮像面211とは異なる色とされる。PSF検出モードにおいて、撮像装置100aは、撮像面211に生成された点画像213を撮像することで、PSFを検出する。
【0080】
なお、光源212は、撮像装置100aに搭載されてもよい。ただし、この場合、撮像面211と撮像装置100aとの距離を所定の距離としたときに、光源212によって生成された点画像213が撮像装置100aからの画角の中心に配置されるように、光源212の照射角度が調整される。
【0081】
図13は、PSF検出モードにおける撮像動作例を示す第3の図である。
図13に示すように、撮像装置100aは、PSF検出モードにおいて、点画像221があらかじめ配置された画像を撮像してもよい。ただし、点画像221は、他の画像222と離間して配置され、なおかつ、点画像221と、この点画像221が位相板114の作用によって分散された画像成分とが、単色の領域に配置されることが望ましい。
【0082】
図14は、第3の実施の形態に係る撮像装置のPSF検出モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
[ステップS21]撮像制御部154aは、入力部155のシャッタボタンが押下されたかを監視する。撮像制御部154aは、シャッタボタンが押下されたことを検知すると、画像復元処理部130aに対して撮像動作の開始信号を出力する。開始信号を受信した画像復元処理部130aは、ステップS22以降の処理を実行する。
【0083】
[ステップS22]撮像素子121によって撮像された画像(中間画像)の信号が、A/Dコンバータ122によってデジタルデータ化される。撮像制御部154aからの開始信号を受信した画像復元処理部130aにおいて、画像メモリ131は、A/Dコンバータ122から出力された中間画像データを取り込む。
【0084】
[ステップS23]画像抽出部132aは、画像メモリ131に記憶された中間画像データに基づく中間画像から、あらかじめ決められた領域を部分画像として抽出する。ここで、ユーザは、ステップS21でシャッタボタンを押下する際に、点画像が画角の中心に配置されるようにする。これにより、画像抽出部132aは、中間画像の中央部を中心とした所定の大きさの領域を抽出することで、点画像とその点画像が分散した成分とを含む領域を、部分画像として抽出することができる。
【0085】
なお、このステップS23では、第2の実施の形態の画像抽出部132と同様に、中間画像と設計PSF141とをパターンマッチングすることにより、部分画像が抽出されてもよい。
【0086】
[ステップS24]コンボリューション制御部133aは、画像抽出部132aによって抽出された部分画像のデータをPSFとし、このPSFを基に逆カーネル「hinv」を算出する。コンボリューション制御部133aは、算出した逆カーネル「hinv」を、カーネルデータ142として不揮発性記憶部140に記憶する。
【0087】
図15は、第3の実施の形態に係る撮像装置の本撮像モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
[ステップS31]撮像制御部154aは、入力部155のシャッタボタンが押下されたかを監視する。撮像制御部154aは、シャッタボタンが押下されたことを検知すると、画像復元処理部130aに対して撮像動作の開始信号を出力する。開始信号を受信した画像復元処理部130aは、ステップS32以降の処理を実行する。
【0088】
[ステップS32]撮像素子121によって撮像された画像(中間画像)の信号が、A/Dコンバータ122によってデジタルデータ化される。撮像制御部154aからの開始信号を受信した画像復元処理部130aにおいて、画像メモリ131は、A/Dコンバータ122から出力された中間画像データを取り込む。
【0089】
[ステップS33]コンボリューション制御部133aは、不揮発性記憶部140からカーネルデータ142を読み出す。なお、ステップS32,S33の処理順は、逆であってもよい。あるいは、ステップS32,S33の各処理が並列に実行されてもよい。
【0090】
[ステップS34]コンボリューション演算部134は、コンボリューション制御部133aによって不揮発性記憶部140から読み出されたカーネルデータ142を用いて、ステップS32で画像メモリ131に記憶された中間画像データに対して、式(5)に従って畳み込み演算を行う。これにより、被写体像の復元処理が実行される。
【0091】
コンボリューション演算部134によって演算処理された画像データは、DSP151によって所定の画質補正処理および圧縮符号化処理が施された後、メモリカード153に記録される。
【0092】
以上の第3の実施の形態では、コンボリューション演算部134は、実際の撮像によって得られた中間画像から求められたカーネルデータ142を用いて被写体像の復元処理を行う。このため、光学系の設計値から求めたカーネルデータを用いて復元処理を行う場合と比較して、被写体像をより高精度に復元できるようになる。また、カーネルデータ142の算出処理をPSF検出モードにおいて行い、本撮像モードでは、不揮発性記憶部140に記憶されたカーネルデータ142を用いて被写体像の復元処理が実行されるので、本撮像モードにおける処理負荷を軽減し、復元処理を高速化することができる。
【0093】
〔第4の実施の形態〕
上記の第3の実施の形態では、PSF検出モードにおいて、単色の領域に配置された点画像を撮像した。これに対して、撮像対象の点画像を特定の色にしておくことにより、点画像がどのような被写体の上に存在する場合であっても、点画像とそれが分散された画像成分とを中間画像から分離してPSFを算出することができるようになる。
【0094】
以下、第4の実施の形態として、特定の色の点画像を含む被写体を撮像することでPSFを算出することが可能な撮像装置について説明する。なお、第4の実施の形態に係る撮像装置は、コンボリューション制御部133aが部分画像から特定の色領域の色を有する画素を分離する機能をさらに有すること以外、第3の実施の形態に係る撮像装置100aと同様の構成を有する。このため、以下の第4の実施の形態の説明では、第3の実施の形態と同じ符号を使用する。
【0095】
図16は、PSF検出モードにおいて撮像の対象とする被写体の例を示す図である。
図16に示す被写体は、任意の画像231と、画像231の内部に配置された特定の色の点画像232とを含む。点画像232の色は、少なくとも、点画像232の周辺領域のうち、この点画像232が位相板114の作用によって分散された画像成分を含む領域とは異なる色とされればよい。また、点画像232は、画像231の内部にあらかじめ配置されたものでよい。この場合、点画像232を含む画像231は、例えば、収差補正用のテスト画像などと兼用されてもよい。あるいは、点画像232は、図12に示したように、外部の光源212から画像231に対して光を照射することで生成されてもよい。
【0096】
図17は、第4の実施の形態に係る撮像装置のPSF検出モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
[ステップS41]撮像制御部154aは、入力部155のシャッタボタンが押下されたかを監視する。撮像制御部154aは、シャッタボタンが押下されたことを検知すると、画像復元処理部130aに対して撮像動作の開始信号を出力する。開始信号を受信した画像復元処理部130aは、ステップS42以降の処理を実行する。
【0097】
[ステップS42]撮像素子121によって撮像された画像(中間画像)の信号が、A/Dコンバータ122によってデジタルデータ化される。撮像制御部154aからの開始信号を受信した画像復元処理部130aにおいて、画像メモリ131は、A/Dコンバータ122から出力された中間画像データを取り込む。
【0098】
[ステップS43]画像抽出部132aは、画像メモリ131に記憶された中間画像データに基づく中間画像から、あらかじめ決められた領域を部分画像として抽出する。なお、第3の実施の形態と同様に、ユーザは、ステップS41でシャッタボタンを押下する際に、点画像232が画角の中心に配置されるようにする。これにより、画像抽出部132aは、中間画像の中央部の所定領域を抽出することで、点画像232とその点画像232が分散した成分とを含む領域を、部分画像として抽出することができる。
【0099】
なお、このステップS43では、第2の実施の形態の画像抽出部132と同様に、中間画像と設計PSF141とをパターンマッチングすることにより、部分画像が抽出されてもよい。
【0100】
[ステップS44]コンボリューション制御部133aは、画像抽出部132aによって抽出された部分画像のデータから、R(Red)成分およびG(Green)成分を分離する。コンボリューション制御部133aは、部分画像の各画素についてR成分の値からG成分の値を減算し、その減算結果が所定のしきい値th1以上であるかを判定する。コンボリューション制御部133aは、減算結果がしきい値th1以上である場合には、その減算結果を画素の値とし、減算結果がしきい値th1未満である場合には、画素の値を0にすることにより、(R−G)成分の画像を生成する。コンボリューション制御部133aは、生成した画像のデータを画像メモリ131に一時的に格納する。
【0101】
[ステップS45]コンボリューション制御部133aは、画像抽出部132aによって抽出された部分画像のデータから、R成分およびB(Blue)成分を分離する。コンボリューション制御部133aは、部分画像の各画素についてR成分の値からB成分の値を減算し、その減算結果が所定のしきい値th2以上であるかを判定する。コンボリューション制御部133aは、減算結果がしきい値th2以上である場合には、その減算結果を画素の値とし、減算結果がしきい値th2未満である場合には、画素の値を0にすることにより、(R−B)成分の画像を生成する。コンボリューション制御部133aは、生成した画像のデータを画像メモリ131に一時的に格納する。
【0102】
なお、ステップS44,S45の処理順は、逆であってもよい。あるいは、ステップS44,S45の処理が並列に実行されてもよい。
[ステップS46]コンボリューション制御部133aは、ステップS44,S45でそれぞれ生成した画像について、各画素の値の平均を演算することで、PSFを算出する。
【0103】
[ステップS47]コンボリューション制御部133aは、算出したPSFを基に逆カーネル「hinv」を算出し、算出した逆カーネル「hinv」を、カーネルデータ142として不揮発性記憶部140に記憶する。
【0104】
なお、本撮像モードにおける撮像処理手順は、図15に示した処理手順と同じであるので、ここでは説明を省略する。
また、上記の図17の処理では、特定の色として赤色の点画像232を検出する場合の例を示したが、点画像232の色としては赤色に限らない。例えば、図17のステップS44において、R成分の値からG成分の値を減算する代わりにB成分の値からR成分の値を減算し、ステップS45において、R成分の値からB成分の値を減算する代わりにB成分の値からG成分の値を減算することにより、青色の点画像232を検出することができる。
【0105】
以上の第4の実施の形態では、第3の実施の形態と同様に、光学系の設計値から求めたカーネルデータを用いて復元処理を行う場合と比較して、被写体像をより高精度に復元できるという効果が得られる。また、本撮像モードにおける処理負荷を軽減し、復元処理を高速化できるという効果も得られる。さらに、第4の実施の形態では、第3の実施の形態と比較して、PSF検出モードで撮像の対象とする被写体の汎用性を高めることができる。
【0106】
〔第5の実施の形態〕
以下の第5の実施の形態に係る撮像装置は、PSF検出用の撮像時に被写体に点画像を生成する光源を搭載する。そして、光源を用いて撮像を行うことでPSFを取得した直後に、光源から光を照射しない状態で本撮像を行うようにする。このような動作により、光学系の製造誤差によるPSFの誤差だけでなく、被写体との距離の違いによるPSF誤差も低減できるようにする。
【0107】
図18は、第5の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。なお、この図18では、図2に対応する構成要素については同じ符号を付して示す。
図18に示す撮像装置100bにおいて、画像復元処理部130bは、図2に示した画像メモリ131、コンボリューション制御部133およびコンボリューション演算部134を備える。さらに、画像復元処理部130bは、画像抽出部132bを備える。画像抽出部132bは、図2の画像抽出部132と同様に、パターンマッチングにより中間画像から部分画像を抽出する処理を行う。ただし、画像抽出部132bは、中間画像から特定の色領域の色を有する画素を分離して特定色画像を生成し、この特定色画像から部分画像を抽出する。
【0108】
さらに、撮像装置100bは、被写体上に特定の色の点画像を生成する光源161を備える。光源161は、例えばレーザ発光素子である。図16の点画像232と同様に、光源161が被写体上に生成する点画像の色は、少なくとも、被写体における点画像の周辺領域のうち、この点画像が位相板114の作用によって分散された画像成分を含む領域とは異なる色とされる。従って、光源161は、例えば、被写体の色と異なる色の点画像を生成できるように、複数の色の光を切り替えて照射することが可能とされてもよい。
【0109】
図19は、第5の実施の形態に係る撮像装置の撮像処理手順を示すフローチャートである。
[ステップS51]撮像制御部154bは、入力部155のシャッタボタンが押下されたかを監視する。撮像制御部154bがシャッタボタンが押下されたことを検知すると、ステップS52以降の処理が実行される。
【0110】
[ステップS52]撮像制御部154bは、光源161をオンにして、光源161から被写体に対して光を照射させる。撮像制御部154bは、光源161からの光が照射された被写体を、撮像素子121に撮像させる。
【0111】
[ステップS53]撮像素子121によって撮像された画像(中間画像)の信号は、A/Dコンバータ122によってデジタルデータ化され、中間画像データとして画像メモリ131に取り込まれる。
【0112】
[ステップS54]画像抽出部132bは、ステップS53で画像メモリ131に取り込まれた中間画像データから、R成分およびG成分を分離する。画像抽出部132bは、中間画像の各画素についてR成分の値からG成分の値を減算し、その減算結果が所定のしきい値th1以上であるかを判定する。画像抽出部132bは、減算結果がしきい値th1以上である場合には、その減算結果を画素の値とし、減算結果がしきい値th1未満である場合には、画素の値を0にすることにより、(R−G)成分の画像を生成する。画像抽出部132bは、生成した画像のデータを画像メモリ131に一時的に格納する。
【0113】
[ステップS55]画像抽出部132bは、ステップS53で画像メモリ131に取り込まれた中間画像データから、R成分およびB成分を分離する。画像抽出部132bは、中間画像の各画素についてR成分の値からB成分の値を減算し、その減算結果が所定のしきい値th2以上であるかを判定する。画像抽出部132bは、減算結果がしきい値th2以上である場合には、その減算結果を画素の値とし、減算結果がしきい値th2未満である場合には、画素の値を0にすることにより、(R−B)成分の画像を生成する。画像抽出部132bは、生成した画像のデータを画像メモリ131に一時的に格納する。
【0114】
なお、ステップS54,S55の処理順は、逆であってもよい。あるいは、ステップS54,S55の処理が並列に実行されてもよい。
[ステップS56]画像抽出部132bは、ステップS54,S55でそれぞれ生成した画像について、各画素の値の平均を演算することで、特定色画像を生成する。画像抽出部132bは、生成した特定色画像のデータを画像メモリ131に一時的に格納する。
【0115】
[ステップS57]画像抽出部132bは、不揮発性記憶部140から設計PSF141を読み込む。画像抽出部132bは、読み込んだ設計PSF141を用いてパターンマッチングを行うことにより、ステップS57で生成した特定色画像から部分画像を抽出する。
【0116】
なお、部分画像の抽出にパターンマッチングを使用することで、例えば、被写体の表面が曲面の場合など、光源161からの光による点画像の画角内の位置が不安定になる場合でも、部分画像を精度よく抽出できる。ただし、第4の実施の形態のように、パターンマッチングを用いず、部分画像をあらかじめ決められた領域から抽出するようにしてもよい。この場合、ステップS54〜S57の処理は、図17のステップS43〜S46の処理手順のように、先に部分画像を抽出し、抽出した部分画像から(R−G)成分および(R−B)成分の各画像を生成し、各画像の平均をとることによってPSFを求めるように変更してもよい。部分画像をあらかじめ決められた領域から抽出した場合でも、例えば、被写体が平板状の場合などでは、部分画像を精度よく抽出できる。
【0117】
[ステップS58]コンボリューション制御部133は、ステップS57で画像抽出部132bによって抽出された部分画像のデータをPSFとし、このPSFを基に逆カーネル「hinv」を算出する。コンボリューション制御部133は、例えば、算出された逆カーネル「hinv」を画像メモリ131に一時的に格納する。
【0118】
[ステップS59]撮像制御部154bは、光源161をオフにし、光源161によって生成された点画像が消滅した被写体を、撮像素子121に撮像させる。
[ステップS60]撮像素子121によって撮像された画像(中間画像)の信号は、A/Dコンバータ122によってデジタルデータ化され、中間画像データとして画像メモリ131に取り込まれる。
【0119】
[ステップS61]コンボリューション演算部134は、ステップS58でコンボリューション制御部133によって算出された逆カーネル「hinv」を用いて、ステップS60で画像メモリ131に記憶された中間画像データに対して、式(5)に従って畳み込み演算を行う。これにより、被写体像の復元処理が実行される。
【0120】
コンボリューション演算部134によって演算処理された画像データは、DSP151によって所定の画質補正処理および圧縮符号化処理が施された後、メモリカード153に記録される。
【0121】
なお、上記の図19の処理では、特定の色として赤色の点画像を検出する場合の例を示したが、点画像の色としては赤色に限らない。
以上の第5の実施の形態では、第2の実施の形態と同様に、撮像を行うたびに、その撮像によって得られた中間画像からPSFが求められ、求められたPSFを用いて中間画像に対する復元処理が行われる。このような処理により、被写体との距離の違いによるPSFの誤差が理論上生じなくなるので、被写体との距離によらず、被写体像を高精度に復元できるようになる。また、第5の本実施の形態では、被写体との距離の違いによるPSF誤差だけでなく、第1,第3,第4の各実施の形態と同様に、位相板114を含む光学系の製造誤差によるPSFの誤差も低減できる。
【0122】
〔第6の実施の形態〕
上記の第1〜第5の実施の形態では、中間画像内の一箇所から抽出した部分画像をPSFとし、この1つのPSFを用いて被写体像の復元処理を行った。これに対して、PSFを複数求め、被写体像の復元処理時に複数のPSFの中から適切なPSFを選択するという方法もある。以下の第6の実施の形態では、複数のPSFを求める例として、中間画像内の複数箇所からそれぞれPSFを求め、これらのPSFを復元処理時に選択的に使用する撮像装置について説明する。
【0123】
図20は、第6の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。なお、この図20では、図2および図10に対応する構成要素については同じ符号を付して示す。
図20に示す撮像装置100cにおいて、画像復元処理部130cは、図10に示した画像メモリ131を備える。さらに、画像復元処理部130cは、画像抽出部132c、コンボリューション制御部133cおよびコンボリューション演算部134cを備える。
【0124】
画像抽出部132cは、図10の画像抽出部132aと同様に、中間画像の所定領域から部分画像を抽出する。ただし、画像抽出部132cは、中間画像内の複数領域から部分画像を抽出する。
【0125】
コンボリューション制御部133cは、図10のコンボリューション制御部133aと同様に、PSF検出モードにおいて、画像抽出部132cによって抽出された部分画像をPSFとし、このPSFを基に逆カーネル「hinv」を算出して、算出した逆カーネル「hinv」をカーネルデータ142として不揮発性記憶部140に保存する。ただし、コンボリューション制御部133cは、画像抽出部132cによって抽出された複数の部分画像のそれぞれを基にカーネルデータ142を算出し、算出した複数のカーネルデータ142を不揮発性記憶部140に保存する。
【0126】
コンボリューション演算部134cは、図10のコンボリューション演算部134と同様に、本撮像モードにおいて、画像メモリ131に記憶された中間画像データに対して、カーネルデータ142を用いて被写体像の復元処理を行う。ただし、コンボリューション演算部134cは、中間画像を複数の領域に分割し、不揮発性記憶部140に記憶された複数のカーネルデータ142のうち、各分割領域に対応する適切なカーネルデータ142を用いて、被写体像の復元処理を行う。これにより、画角内の位置の違いに応じて発生し得るPSFの誤差を低減することができる。画角内の位置の違いに応じてPSFの誤差が発生する要因としては、例えば、光学ブロック110内のレンズの収差などがある。
【0127】
図21は、PSF検出モードにおいて撮像の対象とする被写体の例を示す図である。
本実施の形態の撮像装置100cは、PSF検出モードにおいて、図21に示すような複数の点画像241〜245を撮像する。点画像241〜245は、各点画像241〜245が位相板114の作用によって分散された成分が互いに重複しないように、互いに離間して配置される。また、本実施の形態では、例として、各点画像241〜245は同じ色とされる。この場合、各点画像241〜245の色を背景画像246の色とは異なるものとすることで、撮像装置100cは、各点画像241〜245を背景画像246から分離して検出することができる。
【0128】
点画像241〜245は、例えば、図12に示したように、外部の光源から被写体に光を照射することで生成されたものであってよい。あるいは、点画像241〜245は、被写体状にあらかじめ配置されたものであってもよい。
【0129】
図22は、部分画像を抽出する領域の設定例を示す図である。
図22に示す中間画像250は、PSF検出モードにおいて撮像された画像である。画像抽出部132cは、中間画像250の領域内にあらかじめ決められた部分画像領域251〜255のそれぞれから、部分画像を抽出する。部分画像領域251〜255は、それぞれ図21に示した点画像241〜245に対応付けられている。
【0130】
PSF検出モードにおいて、ユーザは、点画像241〜245が、それぞれ部分画像領域251〜255の略中心部に配置されるように、画角を調整して撮像を行う。ここで、部分画像領域251〜255のそれぞれの大きさは、点画像241〜245のそれぞれが位相板114によって分散された成分の領域を含むように決定される。
【0131】
なお、例えば、PSF検出モードでは、モニタ画像を表示する表示部152の領域内に、部分画像領域251〜255をそれぞれ示す枠を表示することで、ユーザは、点画像241〜245がそれぞれ部分画像領域251〜255の略中心部に配置されるように画角を調整することができる。このように、点画像241〜245がそれぞれ部分画像領域251〜255の略中心部に配置された状態で撮像が行われることで、画像抽出部132cは、パターンマッチングを用いずに、あらかじめ設定された領域から画像を抽出するという簡単な処理で複数の部分画像を抽出できるようになる。
【0132】
図23は、中間画像を分割した分割領域の例を示す図である。
図23の中間画像260は、コンボリューション演算部134cが演算の対象とする撮像画像である。コンボリューション演算部134cは、本撮像モードにおいて、演算対象とする中間画像260を複数の領域に分割し、各分割領域に対応するカーネルデータ142を用いて、被写体の復元処理を行う。
【0133】
図23の例では、コンボリューション演算部134cは、演算対象とする中間画像260を5つの分割領域261〜265に分割する。分割領域261〜265は、それぞれ図22に示した部分画像領域251〜255を包含するように設定される。コンボリューション演算部134cは、分割領域261についての復元処理を実行する際には、部分画像領域251を基に算出されたカーネルデータ142を使用する。同様に、コンボリューション演算部134cは、分割領域262〜265についての復元処理を実行する際には、それぞれ部分画像領域252〜255を基に算出されたカーネルデータ142を使用する。これにより、画角内の位置の違いに応じたPSFの誤差が低減され、各分割領域における被写体像をより高精度に復元することができる。
【0134】
図24は、第6の実施の形態に係る撮像装置のPSF検出モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
[ステップS71]撮像制御部154aは、入力部155のシャッタボタンが押下されたかを監視する。撮像制御部154aは、シャッタボタンが押下されたことを検知すると、画像復元処理部130cに対して撮像動作の開始信号を出力する。開始信号を受信した画像復元処理部130cは、ステップS72以降の処理を実行する。
【0135】
[ステップS72]撮像素子121によって撮像された画像(中間画像)の信号が、A/Dコンバータ122によってデジタルデータ化される。撮像制御部154aからの開始信号を受信した画像復元処理部130cにおいて、画像メモリ131は、A/Dコンバータ122から出力された中間画像データを取り込む。
【0136】
[ステップS73]画像抽出部132cは、あらかじめ決められた複数の部分画像領域251〜255のうち1つを選択し、画像メモリ131に記憶された中間画像データに基づく中間画像から、選択した部分画像領域を部分画像として抽出する。
【0137】
なお、このステップS73では、第2の実施の形態の画像抽出部132と同様に、中間画像と設計PSF141とをパターンマッチングすることにより、部分画像が抽出されてもよい。パターンマッチングを行う場合、画像抽出部132cは例えば、ステップS73において、図23に示した分割領域261〜265のうちの1つを選択し、中間画像上の選択した分割領域に対して、設計PSF141とのパターンマッチングを行う。
【0138】
[ステップS74]コンボリューション制御部133cは、ステップS73で画像抽出部132cによって抽出された部分画像のデータから、R成分およびG成分を分離する。コンボリューション制御部133cは、部分画像の各画素についてR成分の値からG成分の値を減算し、その減算結果が所定のしきい値th1以上であるかを判定する。コンボリューション制御部133cは、減算結果がしきい値th1以上である場合には、その減算結果を画素の値とし、減算結果がしきい値th1未満である場合には、画素の値を0にすることにより、(R−G)成分の画像を生成する。コンボリューション制御部133cは、生成した画像のデータを画像メモリ131に一時的に格納する。
【0139】
[ステップS75]コンボリューション制御部133cは、ステップS73で画像抽出部132aによって抽出された部分画像のデータから、R成分およびB成分を分離する。コンボリューション制御部133cは、部分画像の各画素についてR成分の値からB成分の値を減算し、その減算結果が所定のしきい値th2以上であるかを判定する。コンボリューション制御部133cは、減算結果がしきい値th2以上である場合には、その減算結果を画素の値とし、減算結果がしきい値th2未満である場合には、画素の値を0にすることにより、(R−B)成分の画像を生成する。コンボリューション制御部133cは、生成した画像のデータを画像メモリ131に一時的に格納する。
【0140】
なお、ステップS74,S75の処理順は、逆であってもよい。あるいは、ステップS74,S75の処理が並列に実行されてもよい。
[ステップS76]コンボリューション制御部133cは、ステップS74,S75でそれぞれ生成した画像について、各画素の値の平均を演算することで、PSFを算出する。
【0141】
[ステップS77]コンボリューション制御部133cは、ステップS76で算出したPSFを基に逆カーネル「hinv」を算出し、算出した逆カーネル「hinv」を、カーネルデータ142として不揮発性記憶部140に記憶する。
【0142】
[ステップS78]画像抽出部132cは、あらかじめ決められた複数の部分画像の領域のすべてについてステップS73〜S77の処理を実行したかを判定する。画像抽出部132cは、上記処理が済んでいない領域が存在すると判定した場合、ステップS73の処理を実行する。この場合、画像抽出部132cは、ステップS73において、処理済みでない新たな領域を選択し、中間画像から選択した領域を部分画像として抽出する。一方、画像抽出部132cは、すべての領域について上記処理が実行されたと判定した場合には、PSF検出モードでの処理を終了する。
【0143】
図25は、第6の実施の形態に係る撮像装置の本撮像モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
[ステップS81]撮像制御部154aは、入力部155のシャッタボタンが押下されたかを監視する。撮像制御部154aは、シャッタボタンが押下されたことを検知すると、画像復元処理部130cに対して撮像動作の開始信号を出力する。開始信号を受信した画像復元処理部130cは、ステップS82以降の処理を実行する。
【0144】
[ステップS82]撮像素子121によって撮像された画像(中間画像)の信号が、A/Dコンバータ122によってデジタルデータ化される。撮像制御部154aからの開始信号を受信した画像復元処理部130cにおいて、画像メモリ131は、A/Dコンバータ122から出力された中間画像データを取り込む。
【0145】
[ステップS83]コンボリューション制御部133cは、中間画像の領域のうち、コンボリューション演算部134cにおいて演算対象とする分割領域を選択する。
[ステップS84]コンボリューション制御部133cは、ステップS83で選択した分割領域に対応するカーネルデータ142を、不揮発性記憶部140から読み出す。
【0146】
[ステップS85]コンボリューション演算部134cは、コンボリューション制御部133cによって不揮発性記憶部140から読み出されたカーネルデータ142を用いて、ステップS82で画像メモリ131に記憶された中間画像データのうち、ステップS83で選択した分割領域のデータに対して、式(5)に従って畳み込み演算を行う。コンボリューション演算部134cは、演算済みの画像データを、例えば、画像メモリ131に一時的に格納する。
【0147】
[ステップS86]コンボリューション制御部133cは、コンボリューション演算部134cによって演算対象とするすべての分割領域について、ステップS83〜S85の処理を実行したかを判定する。コンボリューション制御部133cは、上記処理が済んでいない分割領域が存在すると判定した場合には、ステップS83の処理を実行する。この場合、コンボリューション制御部133cは、処理済みでない新たな分割領域を選択し、選択した分割領域に対応するカーネルデータ142を、不揮発性記憶部140から読み出す。一方、コンボリューション制御部133cは、すべての分割領域について上記処理が実行されたと判定した場合には、コンボリューション演算部134cにステップS87の処理を実行させる。
【0148】
[ステップS87]コンボリューション演算部134cは、ステップS85で演算が施された各画像を統合し、被写体像が復元された画像としてDSP151に出力する。
コンボリューション演算部134cから出力された画像データは、DSP151によって所定の画質補正処理および圧縮符号化処理が施された後、メモリカード153に記録される。
【0149】
以上の第6の実施の形態では、中間画像上の複数の領域からPSFが求められ、復元対象とする中間画像上の領域ごとに、各領域に対応するPSFを用いて被写体像の復元処理が実行される。このような処理により、画角内の位置の違いに応じたPSFの誤差が低減され、各分割領域における被写体像をより高精度に復元することができる。
【0150】
なお、上記の第6の実施の形態で説明した、複数の領域からそれぞれ求めたPSFのいずれかを用いて被写体像を復元するという処理は、前述の第3,第5の実施の形態にも適用することが可能である。
【0151】
また、中間画像に基づくPSFを複数求め、被写体像の復元処理時にPSFを選択的に使用する他の例としては、PSF検出モードにおいて、撮像装置との距離が異なる複数の被写体を撮像し、これらの撮像によって得られた複数の中間画像のそれぞれからPSFを求める方法が考えられる。この場合、撮像装置は、被写体との距離を計測する距離計を備え、本撮像モードにおいて、距離計によって被写体との距離を計測し、計測した距離に対応するPSFを用いて被写体像の復元処理を行う。これにより、第2の実施の形態と同様に、被写体との距離の違いによるPSFの誤差が低減されるので、被写体との距離によらず、被写体像を高精度に復元できるようになる。
【0152】
また、上記の第2〜第6の実施の形態では、位相変調素子として厚さが変化する位相板を用いたが、位相変調素子としてはこのような位相板に限定されない。他の位相変調素子としては、例えば、屈折率分布型波面変調レンズのように、屈折率が場所によって変化する光学素子、あるいは、波面変調ハイブリッドレンズのように、レンズ表面へのコーディングなどにより厚みや屈折率が変化する光学素子、液晶空間位相変調素子のように、位相分布を変調可能な液晶素子などを使用できる。
【0153】
また、上記の第2〜第6の実施の形態では、入射光を2方向に分散させる位相変調素子が用いられたが、位相変調素子としてはこのようなものに限らず、入射光を規則的に分散させる種々の位相変調素子を使用できる。
【0154】
以上の各実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) 被写体からの光を位相変調素子を通じて受光する撮像素子と、
前記撮像素子によって得られた撮像画像から、点画像が分散された領域を含む部分画像を抽出する画像抽出部と、
前記画像抽出部によって抽出された前記部分画像を点像分布関数として用い、前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して被写体像を復元する処理を施す復元処理部と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【0155】
(付記2) 前記復元処理部は、前記画像抽出部によって前記部分画像の抽出対象とされた撮像画像と同じ撮像画像に対して、被写体像を復元する処理を施すことを特徴とする付記1記載の撮像装置。
【0156】
(付記3) 前記画像抽出部は、前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して、前記位相変調素子を含む光学系の設計値から算出された他の点像分布関数とのパターンマッチングを行うことで、前記部分画像を抽出することを特徴とする付記1または2記載の撮像装置。
【0157】
(付記4) 前記復元処理部は、前記画像抽出部による前記部分画像の抽出後に前記撮像素子によって新たに得られた撮像画像に対して、前記画像抽出部によって抽出された前記部分画像を点像分布関数として用い、前記被写体像を復元する処理を施すことを特徴とする付記1記載の撮像装置。
【0158】
(付記5) 前記被写体に対して光を照射することで前記被写体上に前記点画像を生成する発光部をさらに有し、
前記画像抽出部は、前記発光部からの光が照射された前記被写体を前記撮像素子が撮像することで得られた撮像画像から、前記部分画像を抽出し、
前記復元処理部は、前記発光部からの光の照射が中止された後の前記被写体を前記撮像素子が撮像することで得られた撮像画像に対して、前記被写体像を復元する処理を施す、
ことを特徴とする付記4記載の撮像装置。
【0159】
(付記6) 前記復元処理部は、前記画像抽出部によって抽出された前記部分画像から、前記点画像の色を含む特定の色領域の成分を抽出することで得た画像を、点像分布関数として用いることを特徴とする付記1,4,5のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0160】
(付記7) 前記画像抽出部は、前記撮像素子によって得られた撮像画像からあらかじめ決められた領域を前記部分画像として抽出することを特徴とする付記1,4,5,6のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0161】
(付記8) 前記あらかじめ決められた領域は、前記撮像素子によって得られた撮像画像の中央部を中心とした領域であることを特徴とする付記7記載の撮像装置。
(付記9) 前記画像抽出部は、前記撮像素子によって得られた撮像画像から、前記点画像の色を含む特定の色領域の成分を抽出した画像を生成し、前記特定の色領域の成分を抽出した画像に対して、前記位相変調素子を含む光学系の設計値から算出された他の点像分布関数とのパターンマッチングを行うことで、前記部分画像を抽出することを特徴とする付記1,4,5のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0162】
(付記10) 前記画像抽出部は、前記撮像素子によって得られた撮像画像から、それぞれ個別の点画像が分散された領域を含む複数の部分画像を抽出し、
前記復元処理部は、前記撮像素子によって得られた撮像画像上の分割領域ごとに、前記複数の部分画像のうち各分割領域に対応する部分画像を選択して点像分布関数として用いて、前記被写体像を復元する処理を施す、
ことを特徴とする付記1〜7のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0163】
(付記11) 被写体からの光を位相変調素子を通じて受光する撮像素子によって得られた撮像画像から、点画像が分散された領域を含む部分画像を抽出する画像抽出部と、
前記画像抽出部によって抽出された前記部分画像を点像分布関数として用い、前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して被写体像を復元する処理を施す復元処理部と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【0164】
(付記12) 被写体からの光を位相変調素子を通じて受光する撮像素子を備えた撮像装置における撮像方法であって、
前記撮像素子によって得られた撮像画像から、点画像が分散された領域を含む部分画像を抽出し、
抽出された前記部分画像を点像分布関数として用い、前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して被写体像を復元する、
ことを特徴とする撮像方法。
【0165】
(付記13) 前記撮像装置は、前記部分画像の抽出対象とした撮像画像と同じ撮像画像に対して、前記被写体像を復元する処理を施すことを特徴とする付記12記載の撮像方法。
【0166】
(付記14) 前記撮像装置は、前記部分画像の抽出後に前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して、当該部分画像を点像分布関数として用い、前記被写体像を復元する処理を施すことを特徴とする付記12記載の撮像方法。
【0167】
(付記15) 前記撮像装置は、
前記被写体に対して光を照射することで当該被写体上に点画像を生成し、
光が照射された前記被写体を前記撮像素子が撮像することで得られた撮像画像から、前記部分画像を抽出し、
前記被写体に対する光の照射を中止し、
前記光の照射が中止された後の前記被写体を前記撮像素子が撮像することで得られた撮像画像に対して、前記被写体像を復元する処理を施す、
ことを特徴とする付記14記載の撮像方法。
【符号の説明】
【0168】
1 撮像装置
11 撮像素子
12 位相変調素子
13 画像抽出部
14 復元処理部
P1 撮像画像
P2 部分画像
P3 画像
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、画像処理装置および撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル方式の撮像装置は、一般に、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの固体撮像素子に被写体を結像させることで、撮像動作を行う。近年、このような撮像装置に適用される技術として、WFC(Wavefront Coding)と呼ばれる技術が注目されている。
【0003】
WFC技術が採用された撮像装置では、固体撮像素子に対する被写体からの光路上に、位相変調素子が配置される。位相変調素子は、被写体から発せられる光束を規則的に分散させ、固体撮像素子の受光面に結ぶ像を変形させる。これにより、固体撮像素子からは、ピントがずれた状態の画像が得られ、このときに得られる画像は「中間画像」と呼ばれる。撮像装置は、固体撮像素子から得られた中間画像に対して、点像分布関数(PSF:Point Spread Function)を用いたデジタル処理を施すことにより、被写体の画像を復元する。
【0004】
位相変調素子を用いて得られた中間画像に生じるボケの度合いは、撮像装置と被写体との距離が変動した場合であっても、大きく変動しない。このことから、ボケ度合いの変動量が小さい中間画像に対してデジタル処理を施して被写体の画像を復元することにより、被写界深度を拡大することができる。
【0005】
このようなWFC技術は、デジタルカメラなどの一般的なカメラ製品の他、電子内視鏡システムに搭載された撮像機構に採用することも考えられている。
なお、PSFを用いた画像処理を行う他の撮像装置としては、撮影画像内の小領域ごとに点像分布関数(PSF:Point Spread Function)を算出し、算出した点像分布関数を基に、色収差によるボケを解消するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−235794号公報
【特許文献2】特開2010−147926号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Edward R. Dowski, Jr. and W. Thomas Cathey, "Extended depth of field through wave-front coding", Applied Optics, vol.34, no.11, April, 1995, pp. 1859-1866
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のWFC技術において、被写体からの距離によらずボケ度合いの変動量が小さいということは、被写体からの距離によらずPSFの変動量が小さいことを意味する。このため、画像の復元時には、被写体からの距離に関係なく、位相変調素子を含む光学系の設計値から求めた同一のPSFを用いて画像処理が行われる。しかしながら、光学系の製造誤差などの原因により、画像復元時に用いるPSFと、実際の光学系におけるPSFとは、微妙に異なる場合がある。
【0009】
WFC技術では、画像の処理時に用いるPSFの精度が、画像の復元精度に直結する。画像復元時に用いるPSFと、実際の光学系の設計値に基づくPSFとの誤差がある場合、復元された画像にゴーストが発生するなど、画像の復元精度が劣化するという問題があった。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、被写界深度が拡大された画像を高精度に生成することが可能な撮像装置、画像処理装置および撮像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、被写体からの光を位相変調素子を通じて受光する撮像素子と、前記撮像素子によって得られた撮像画像から、点画像が分散された領域を含む部分画像を抽出する画像抽出部と、前記画像抽出部によって抽出された前記部分画像を点像分布関数として用い、前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して被写体像を復元する処理を施す復元処理部と、を有する撮像装置が提供される。
【0012】
また、上記課題を解決するために、上記の撮像装置と同様の処理が実行される画像処理装置および撮像方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
上記の撮像装置、画像処理装置および撮像方法によれば、被写界深度が拡大された画像を高精度に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【図2】第2の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【図3】位相板の形状例を示す図である。
【図4】PSFの例を示す図である。
【図5】位相板を用いないで撮像された画像におけるMTFの分布例を示すグラフである。
【図6】位相板を用いて撮像された画像におけるMTFの分布例を示すグラフである。
【図7】画像の復元に使用する逆フィルタの特性例を示すグラフである。
【図8】図7の逆フィルタを用いて被写体像が復元された画像におけるMTFの分布例を示すグラフである。
【図9】第2の実施の形態に係る撮像装置の撮像処理手順を示すフローチャートである。
【図10】第3の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【図11】PSF検出モードにおける撮像動作例を示す第1の図である。
【図12】PSF検出モードにおける撮像動作例を示す第2の図である。
【図13】PSF検出モードにおける撮像動作例を示す第3の図である。
【図14】第3の実施の形態に係る撮像装置のPSF検出モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
【図15】第3の実施の形態に係る撮像装置の本撮像モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
【図16】PSF検出モードにおいて撮像の対象とする被写体の例を示す図である。
【図17】第4の実施の形態に係る撮像装置のPSF検出モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
【図18】第5の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【図19】第5の実施の形態に係る撮像装置の撮像処理手順を示すフローチャートである。
【図20】第6の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【図21】PSF検出モードにおいて撮像の対象とする被写体の例を示す図である。
【図22】部分画像を抽出する領域の設定例を示す図である。
【図23】中間画像を分割した分割領域の例を示す図である。
【図24】第6の実施の形態に係る撮像装置のPSF検出モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
【図25】第6の実施の形態に係る撮像装置の本撮像モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【0016】
図1に示す撮像装置1は、撮像素子11によって被写体像を撮像するデジタル方式の撮像装置である。また、この撮像装置1は、WFC技術によって被写界深度が拡大された画像を撮像可能になっている。すなわち、撮像素子11は、被写体からの光を位相変調素子12を通じて受光する。位相変調素子12は、入射した被写体像を一定の方向に分散させる。撮像装置1では、撮像素子11によって得られた撮像画像に対して、点像分布関数(PSF)を用いて画像処理を施すことで、被写界深度が拡大された被写体像を復元できるようになっている。
【0017】
なお、図示しないが、撮像素子11の被写体側には、位相変調素子12の他、レンズなどの光学部材が配置される。レンズは、例えば、位相変調素子12の被写体側、または位相変調素子12の撮像素子11側、またはそれら両方に配置される。
【0018】
ここで、被写体像を復元する際の演算処理の例について説明し、その後に、図1の構成についてあらためて説明する。
位相変調素子12を用いて撮像された画像、すなわち、図1の撮像素子11から得られる撮像画像は、中間画像と呼ばれる。ここで、中間画像を「h」、PSFを「g」、位相変調素子12を通過せずに撮像素子11に入射したときに撮像される被写体画像を「f」とすると、「h」「g」「f」の間には次の式(1)の関係が成り立つ。
【0019】
【数1】
【0020】
上記の式(1)をフーリエ変換すると、次の式(2)のようになる。
F・G=H ・・・(2)
上記の式(2)のうち、PSF「g」をフーリエ変換した結果である「G」は、光学伝達関数(OTF:Optical Transfer Function)であり、結像光学系における空間周波数の伝達特性を表す。なお、OTFの絶対値は、MTF(Modulation Transfer Function)と呼ばれる。
【0021】
フーリエ変換後の被写体画像「F」は、下記の式(3)を用いて求めることができる。この式(3)では、中間画像「h」をフーリエ変換した結果である「H」に対して、OTF「G」の逆フィルタ「Hinv」を乗算することで、フーリエ変換後の被写体画像「F」が求められる。従って、被写体画像「f」は、式(3)の「F」を逆フーリエ変換することによって求めることができる。
F=Hinv・H ・・・(3)
なお、式(3)に示した逆フィルタ「Hinv」は、次の式(4)のように表される。
【0022】
【数2】
【0023】
また、他の演算方法として、上記の逆フィルタ「Hinv」を逆フーリエ変換することで逆カーネル「hinv」を求め、次の式(5)に示すように、中間画像「h」と逆カーネル「hinv」との畳み込み演算を行うことで、被写体画像「f」を求めることもできる。
【0024】
【数3】
【0025】
以上の式(1)〜(5)に示したように、WFC技術では、PSFを用いて被写体像の復元演算が行われる。また、位相変調素子を用いて撮像された中間画像に生じるボケの度合いは、撮像装置と被写体との距離によらずほぼ一定となる。このことから、WFC技術では、位相変調素子を含む光学系の設計値から求められる同一のPSFを用いて復元演算を行うことで、被写界深度が拡大された画像を得ることが可能であった。
【0026】
しかしながら、光学系の製造誤差などの要因により、画像復元時に用いられるPSFと、実際の光学系におけるPSFとは、微妙に異なる場合がある。このようなPSFの誤差が発生すると、復元された画像にゴーストが発生するなど、画像の復元精度が劣化する可能性がある。
【0027】
このような問題点に対して、本実施の形態の撮像装置1では、撮像素子11によって実際に撮像された画像からPSFを求め、求めたPSFを用いて被写体像の復元演算を行う。これにより、光学系の製造誤差などによるPSF誤差の発生量を低減し、被写体像をより高精度に復元できるようにする。
【0028】
図1に示すように、撮像装置1は、撮像素子11、位相変調素子12の他、画像抽出部13および復元処理部14を備えている。画像抽出部13は、撮像素子11によって得られた撮像画像から、点状の画像(点画像)が分散された領域を含む部分画像を抽出する。復元処理部14は、撮像素子11によって得られた撮像画像に対して、被写体像を復元する処理を施す。この復元処理部14は、被写体像の復元処理の際に、画像抽出部13によって抽出された部分画像をPSFとして使用する。
【0029】
図1の下側には、撮像装置1において撮像される画像の例を示す。撮像画像P1は、撮像素子11によって撮像され、撮像素子11から画像抽出部13に入力される画像である。この撮像画像P1は、「中間画像」とも呼ばれ、主として位相変調素子12の作用により、被写体像にボケが生じた状態になっている。前述のように、位相変調素子12は、入射した被写体像を一定の方向に分散させる。
【0030】
部分画像P2は、画像抽出部13によって、例えば、撮像画像P1の右下側の領域から抽出された画像である。この部分画像P2は、被写体像に含まれる点状の像(点画像)が撮像された領域を含む。部分画像P2内の点画像は、主として位相変調素子12の作用によって分散された状態になっている。従って、部分画像P2における信号分布は、実際に撮像された光学系のPSFを示すことになる。
【0031】
部分画像P2は、例えば、パターンマッチングによって抽出することができる。この場合、例えば、撮像装置1の光学系の設計値から求めたPSFをとる比較画像を、撮像装置1内のメモリ(図示せず)に記憶しておく。画像抽出部13は、撮像素子11から得られた撮像画像P1に対して、メモリに記憶された比較画像とのパターンマッチングを行い、比較画像と類似する画像領域を部分画像P2として抽出する。
【0032】
復元処理部14は、抽出された部分画像P2をPSFとして用いて、撮像素子11によって得られた撮像画像に対して、上記の式(3)や式(5)などに従って被写体像を復元する処理を施す。図1の下側に示した画像P3は、画像抽出部13による部分画像P2の抽出対象とされた撮像画像P1と同一の画像から、復元処理部14によって復元されたものである。この場合、復元処理部14によって、撮像画像P1において生じていたボケが解消した画像P3が復元される。
【0033】
この画像P3の例のように、復元処理部14が処理対象とする撮像画像は、画像抽出部13によって部分画像の抽出対象とされた撮像画像と同一であってもよい。あるいは、復元処理部14が処理対象とする撮像画像は、画像抽出部13によって部分画像が抽出された後に、あらためて撮像素子11によって得られた撮像画像であってもよい。これらのいずれの場合でも、復元処理部14は、撮像素子11によって実際に撮像された画像から求められたPSFを用いて被写体像の復元処理を行うので、光学系の設計値から求めたPSFを用いて復元処理を行う場合と比較して、被写体像をより高精度に復元できるようになる。
【0034】
なお、上記の画像P3の例のように、復元処理部14が処理対象とする撮像画像が、画像抽出部13によって部分画像の抽出対象とされた撮像画像と同一とされる場合には、撮像装置1と被写体との距離に応じたPSFの誤差も低減し、被写体像をより高精度に復元することもできる。被写体との距離に応じたPSFの誤差が低減される点については、次の第2の実施の形態において詳しく説明する。
【0035】
〔第2の実施の形態〕
図2は、第2の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
撮像装置100は、光学ブロック110、撮像素子121、A/D(Analog/Digital)コンバータ122、画像復元処理部130、不揮発性記憶部140、DSP(Digital Signal Processor)151、表示部152、メモリカード153、撮像制御部154および入力部155を備える。
【0036】
光学ブロック110は、被写体からの光束を撮像素子121に対して集光する光学系を搭載するブロックであり、レンズ111,112、アイリス113、位相板114などを備える。位相板114は、位相変調素子の一例であり、被写体からの光束を規則的に分散させる。なお、図2の例では、位相板114はアイリス113の直後に配置されているが、位相板114の位置はこのような位置に限らない。
【0037】
撮像素子121は、例えば、CCD、CMOSセンサなどとして実現され、光学ブロック110を通じて入射した光をアナログ画像信号に変換する。A/Dコンバータ122は、撮像素子121から出力されたアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換する。
【0038】
画像復元処理部130は、A/Dコンバータ122から出力された画像信号に対してWFC技術に基づくデジタル画像処理を施すことにより、被写界深度が拡大された画像を復元する。不揮発性記憶部140は、画像復元処理部130での処理時に使用される各種データを記憶する。
【0039】
DSP151は、画像復元処理部130から出力された画像信号に対して、所定のデジタル画像処理を施す。DSP151は、例えば、各種の画質補正処理、画質補正のための検波処理、表示用画像信号の生成処理、記録用画像信号を生成するための圧縮符号化処理などを実行する。なお、画像復元処理部130の処理機能は、DSP151の一機能として実現されてもよい。
【0040】
表示部152は、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスなどによって実現され、DSP151から出力された表示用画像信号に基づいて画像を表示する。メモリカード153は、可搬型の半導体記憶装置であり、DSP151から出力された記録用画像信号を記憶する。なお、メモリカード153は、記録用画像信号を記憶する記憶媒体の一例であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、光ディスクなどの他の種類の記憶媒体に対して画像信号が記憶されてもよい。
【0041】
入力部155は、シャッタボタンなどの各種の入力スイッチを備える。撮像制御部154は、入力部155のシャッタボタンの押下などをトリガとして、撮像装置100における撮像動作を制御する。撮像制御部154は、例えば、シャッタボタンが押下されたとき、画像復元処理部130に対して、A/Dコンバータ122から取り込んだ撮像画像信号に対するデジタル画像処理を実行させる。
【0042】
次に、画像復元処理部130の構成例について説明する。画像復元処理部130は、画像メモリ131、画像抽出部132、コンボリューション制御部133およびコンボリューション演算部134を備える。
【0043】
画像メモリ131は、画像復元処理部130での処理の際の作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)であり、画像データをはじめとする各種のデータを一時的に記憶する。画像メモリ131は、例えば、撮像素子121によって撮像され、A/Dコンバータ122によってデジタル化された撮像画像のRAWデータを、一時的に記憶する。以下、画像メモリ131に記憶される撮像画像のRAWデータを「中間画像データ」と呼び、この中間画像データに基づく画像を「中間画像」と呼ぶ。
【0044】
画像抽出部132は、画像メモリ131に記憶された中間画像データを用いて、中間画像から、点画像が分散された部分領域を抽出する。本実施の形態では、画像抽出部132は、不揮発性記憶部140に記憶された設計PSF141を用いて部分領域を抽出する。設計PSF141は、光学ブロック110内の光学系の設計値を基にシミュレーションなどによって算出されたPSFである。画像抽出部132は、中間画像に対して設計PSF141を用いたパターンマッチングを行うことにより、部分領域を抽出する。
【0045】
コンボリューション制御部133およびコンボリューション演算部134は、画像抽出部132によって抽出された部分画像をPSFとして利用して、画像メモリ131に記憶された中間画像データに対して画像処理を行うことにより、被写体像を復元する処理を行う処理部である。本実施の形態では、コンボリューション演算部134は、前述した式(5)に従って、画像復元の演算を行うものとする。
【0046】
コンボリューション制御部133は、画像抽出部132によって抽出された部分画像をPSFとし、このPSFを基に式(5)に示した逆カーネル「hinv」を求めて、コンボリューション演算部134に投入する。なお、逆カーネル「hinv」は、部分画像に基づくPSFをフーリエ変換することで式(4)の「G」を求め、この「G」を用いて式(4)の逆フィルタ「Hinv」を求めた後、逆フィルタ「Hinv」を逆フーリエ変換することによって求めることができる。
【0047】
図3は、位相板の形状例を示す図である。
本実施の形態で使用される位相板114は、通過する光の位相に対して、例えばexp{iψ(x,y)}のズレを与える。ここで、例としてψ(x,y)=α(x3+y3)/2とすると、位相板114は、一方の面が平面で、他方の面が、図3に示すようなz=iα(x3+y3)/2で表される3次曲面の形状をなす。なお、図3は、xおよびyがともに−1から1までの範囲をとるときの3次曲面の形状を示す。
【0048】
図4は、PSFの例を示す図である。なお、この図4では、わかりやすくするために、信号レベルが高いほど黒く、低いほど白く示している。
図3に示すような位相板114を用いた場合のPSFは、図4のようになる。この図4によれば、図3の位相板114は、通過した光束を左方向および下方向の2方向に分散させる特性を持つことがわかる。
【0049】
本実施の形態の撮像装置100は、図4に示すようなPSFのデータを設計PSF141として不揮発性記憶部140にあらかじめ記憶しておく。そして、画像抽出部132は、パターンマッチングにより、撮像素子121によって得られた撮像画像から、設計PSF141に類似する信号分布特性を持つ領域を部分領域として抽出する。
【0050】
なお、設計PSF141が図4のようなものとなる場合、画像抽出部132は、パターンマッチングの代わりに、撮像画像から、点状の画像を中心として左および下の2方向に画像の分散が生じた画像を探索することで、部分画像を抽出してもよい。
【0051】
ここで、撮像画像の特性について説明する。まず、図5は、位相板を用いないで撮像された画像におけるMTFの分布例を示すグラフである。
図5の直線L1は、位相板114を使用せずに、被写体からの光束が撮像素子121に合焦した状態で得られる撮像画像におけるMTFの分布例を示す。この直線L1のように、焦点が合った状態で撮像された画像では、MTFは直線状に分布する。
【0052】
一方、図5の曲線L2,L3は、位相板114を使用せずに、光学ブロック110内のレンズを焦点が合う位置からずらして撮像したときに得られる撮像画像におけるMTFの分布例を示す。すなわち、直線L1および曲線L2,L3は、撮像装置100からの距離がそれぞれ異なる被写体を撮像したときに得られる画像の特性を示す。
【0053】
曲線L2,L3に示すように、焦点がずれた状態で撮像された画像では、MTFの分布は直線L1から離間する。図5において、曲線L3は、曲線L2と比較してレンズを合焦位置からより大きくずらしたときのMTFであり、焦点のずれが大きいほどMTFの劣化度が大きくなることがわかる。
【0054】
図6は、位相板を用いて撮像された画像におけるMTFの分布例を示すグラフである。
図6の曲線L11は、図5の直線L1の特性が得られる場合と同様のレンズ位置状態で、位相板114を挿入して撮像を行った場合に得られる撮像画像(以下、中間画像Aと呼ぶ)におけるMTFの分布例を示す。また、図6の曲線L12,L13は、それぞれ図5の曲線L2,L3の特性が得られる場合と同様のレンズ位置状態で、位相板114を挿入して撮像を行った場合に得られる撮像画像(以下、それぞれ中間画像B,Cと呼ぶ)におけるMTFの分布例を示す。
【0055】
これらの曲線L11〜L13でわかるように、光学系に位相板114を挿入した場合には、撮像装置100から被写体までの距離の変化に対するMTFの変化量は、位相板114を挿入しない場合と比較して極めて小さい。換言すると、光学系に位相板114を挿入した場合には、撮像装置100から被写体までの距離が変化しても、中間画像に現れるボケの度合いは大きく変化しない。
【0056】
図7は、画像の復元に使用する逆フィルタの特性例を示すグラフである。この図7のグラフに示した曲線は、図4に示したPSFを用いて式(4)によって得られる逆フィルタ「Hinv」の特性を示す。
【0057】
図8は、図7の逆フィルタを用いて被写体像が復元された画像におけるMTFの分布例を示すグラフである。
図8の曲線L21〜L23は、それぞれ前述の中間画像A〜Cに対して図7に示した逆フィルタを用いて演算を行うことで被写体像を復元した画像におけるMTFの分布例を示す。逆フィルタを用いた演算後の画像は、図6に示したようにMTFの違いが小さい中間画像A〜Cに対して同じ逆フィルタを用いて演算されたものであるので、図8に示すように、これらの画像におけるMTFの分布も比較的同じような状態となる。WFC技術では、このような特性を利用して、位相板を用いて得られた中間画像を同じMTFを用いて演算することで、被写界深度が拡大された画像を得る。
【0058】
しかしながら、撮像装置100からの距離が異なる被写体を撮像した場合には、図8に示すように、実際にはMTFの分布が全く同じになる訳ではない。これは、位相板114を用いて撮像された中間画像におけるMTFが、被写体との距離に応じてわずかに変動することに起因する。このようなMTFの違いは、PSFを用いた復元処理後の画像においてゴーストなどとして現れ、画質劣化の原因となる。
【0059】
これに対して、本実施の形態の撮像装置100では、撮像を行うたびに、その撮像によって得られた中間画像からPSFを求め、求めたPSFを用いて中間画像に対する復元処理を行うようにする。このような処理により、被写体との距離の違いによるPSFの誤差が理論上生じなくなるので、被写体像を高精度に復元できるようになる。
【0060】
なお、本実施の形態の撮像装置100では、被写体との距離の違いによるPSF誤差だけでなく、第1の実施の形態と同様に、位相板114を含む光学系の製造誤差によるPSFの誤差も低減できることは言うまでもない。
【0061】
図9は、第2の実施の形態に係る撮像装置の撮像処理手順を示すフローチャートである。
[ステップS11]撮像制御部154は、入力部155のシャッタボタンが押下されたかを監視する。撮像制御部154は、シャッタボタンが押下されたことを検知すると、画像復元処理部130に対して撮像動作の開始信号を出力する。開始信号を受信した画像復元処理部130は、ステップS12以降の処理を実行する。
【0062】
[ステップS12]撮像素子121によって撮像された画像(中間画像)の信号が、A/Dコンバータ122によってデジタルデータ化される。撮像制御部154からの開始信号を受信した画像復元処理部130において、画像メモリ131は、A/Dコンバータ122から出力された中間画像データを取り込む。
【0063】
[ステップS13]画像抽出部132は、不揮発性記憶部140から設計PSF141を読み込む。画像抽出部132は、読み込んだ設計PSF141を用いてパターンマッチングを行うことにより、画像メモリ131に記憶された中間画像データに基づく中間画像から部分画像を抽出する。
【0064】
[ステップS14]コンボリューション制御部133は、画像抽出部132によって抽出された部分画像のデータをPSFとし、このPSFを基に逆カーネル「hinv」を算出する。コンボリューション制御部133は、例えば、算出された逆カーネル「hinv」を画像メモリ131に一時的に格納する。
【0065】
[ステップS15]コンボリューション演算部134は、ステップS14でコンボリューション制御部133によって算出された逆カーネル「hinv」を用いて、ステップS12で画像メモリ131に記憶された中間画像データに対して、式(5)に従って畳み込み演算を行う。これにより、被写体像の復元処理が実行される。
【0066】
コンボリューション演算部134によって演算処理された画像データは、DSP151によって所定の画質補正処理および圧縮符号化処理が施された後、メモリカード153に記録される。
【0067】
なお、上記の図9では静止画像の撮像動作について説明したが、例えば、表示部152に対してモニタ画像を表示する場合や、動画像を撮像して記録する場合には、上記のステップS12〜S15の処理が繰り返されればよい。また、モニタ画像の表示時や動画像の記録時には、部分画像の抽出および逆カーネル「hinv」の算出を一定時間ごとに実行するようにしてもよい。この場合、新たな逆カーネル「hinv」が算出されるまでの間、コンボリューション演算部134は同一の逆カーネル「hinv」を用いて演算処理を行う。このように、部分画像の抽出および逆カーネル「hinv」の算出を一定時間ごとに実行することにより、画像復元処理部130における処理負荷や消費電力を低減することができる。
【0068】
また、図9の処理では、部分画像の抽出と被写体像の復元処理とを、画像メモリ131に記憶された同一の中間画像データを基に実行した。しかし、他の処理例として、被写体像の復元処理は、部分画像の抽出後に新たに画像メモリ131に記憶された中間画像データを基に実行されてもよい。
【0069】
例えば、被写体像の復元処理の対象とする中間画像データは、部分画像の抽出対象とする中間画像データが画像メモリ131に取り込まれてから、画像抽出部132およびコンボリューション制御部133での処理に要する時間分だけ後に、画像メモリ131に取り込まれたものとされてもよい。このような処理により、画像の撮像タイミングと撮像画像のデータが画像復元処理部130から出力されるタイミングとの間に遅延が発生しないようになり、特にモニタ画像の表示時において、表示の遅延によってユーザに与える違和感をなくすことができる。
【0070】
また、例えば、静止画像を撮像する際には、次のような処理が行われてもよい。まず、シャッタボタンが半押し状態にされたときに、部分画像の抽出および逆カーネル「hinv」の算出が行われる。そして、その後にシャッタボタンが全押しされたとき、その時点で画像メモリ131に取り込まれた中間画像データに対して、半押し状態の際に算出された逆カーネル「hinv」を用いて被写体像の復元処理が実行される。
【0071】
〔第3の実施の形態〕
図10は、第3の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。なお、この図10では、図2に対応する構成要素については同じ符号を付して示す。
【0072】
第3の実施の形態に係る撮像装置100aは、撮像モードとして、部分画像の抽出および逆カーネル「hinv」の算出を行うPSF検出モードと、PSF検出モードで算出された逆カーネル「hinv」を用いて撮像画像に対する被写体像の復元処理を行う本撮像モードの2種類を備える。これらの撮像モードは、例えば、入力部155が備えるモード選択ボタンをユーザが操作することにより選択される。撮像制御部154aは、選択された撮像モードに従って、画像復元処理部130aの動作を制御する。
【0073】
画像復元処理部130aは、図2に示した画像メモリ131およびコンボリューション演算部134を備える。ただし、コンボリューション演算部134は、上記2つの撮像モードのうち本撮像モードにおいてのみ動作する。また、画像復元処理部130aは、画像抽出部132aおよびコンボリューション制御部133aを備える。画像抽出部132aは、上記2つの撮像モードのうちPSF検出モードにおいてのみ動作する。
【0074】
画像抽出部132aは、画像メモリ131に記憶された中間画像データに基づく中間画像から、あらかじめ決められた領域を部分画像として抽出する。本実施の形態では例として、画像抽出部132aは、中間画像の中心部を中心とした一定領域を部分画像として抽出する。
【0075】
コンボリューション制御部133aは、PSF検出モードにおいては、図2に示したコンボリューション制御部133と同様、画像抽出部132によって抽出された部分画像を基に、逆カーネル「hinv」を算出する。ただし、コンボリューション制御部133aは、算出した逆カーネル「hinv」を、カーネルデータ142として不揮発性記憶部140に記憶する。そして、本撮像モードに切り替えられた後、コンボリューション制御部133aは、不揮発性記憶部140からカーネルデータ142を読み出し、コンボリューション演算部134に供給する。
【0076】
ここで、PSF検出モードにおける撮像動作について説明する。PSF検出モードは、例えば、撮像装置100aの製品出荷前の段階、製品出荷後における撮像装置100aの初回電源投入時などに選択される。あるいは、撮像装置100aの電源が投入されるごとに、自動的にPSF検出モードになるようにしてもよい。
【0077】
PSF検出モードでは、撮像装置100aは、点画像を含む被写体を撮像することによって中間画像を取得し、得られた中間画像からPSFを検出する。点画像を含む被写体を撮像する方法としては、次のような方法がある。
【0078】
図11は、PSF検出モードにおける撮像動作例を示す第1の図である。
PSF検出モードでは、撮像装置100aは、図11に示すようなPSF検出モード専用の検出用被写体200を撮像する。検出用被写体200は、例えば、ピンホール201と光源202とを備え、ピンホール201の背面側から光源202によって光が発せられる。検出用被写体200の撮像面は単色とされることが望ましく、ピンホール201から撮像装置100a側に出射される光は、検出用被写体200の撮像面とは輝度が異なるか、あるいは色が異なるものとされる。撮像装置100aは、検出用被写体200を撮像することで、ピンホール201を点画像として認識することができる。
【0079】
図12は、PSF検出モードにおける撮像動作例を示す第2の図である。
図12に示すように、任意の撮像面211に対して、レーザポインタなどの光源212からの光を照射することにより、撮像面211に点画像213を生成することもできる。この場合、撮像面211は単色であることが望ましく、撮像面211に生成された点画像213は、撮像面211とは異なる明るさか、あるいは撮像面211とは異なる色とされる。PSF検出モードにおいて、撮像装置100aは、撮像面211に生成された点画像213を撮像することで、PSFを検出する。
【0080】
なお、光源212は、撮像装置100aに搭載されてもよい。ただし、この場合、撮像面211と撮像装置100aとの距離を所定の距離としたときに、光源212によって生成された点画像213が撮像装置100aからの画角の中心に配置されるように、光源212の照射角度が調整される。
【0081】
図13は、PSF検出モードにおける撮像動作例を示す第3の図である。
図13に示すように、撮像装置100aは、PSF検出モードにおいて、点画像221があらかじめ配置された画像を撮像してもよい。ただし、点画像221は、他の画像222と離間して配置され、なおかつ、点画像221と、この点画像221が位相板114の作用によって分散された画像成分とが、単色の領域に配置されることが望ましい。
【0082】
図14は、第3の実施の形態に係る撮像装置のPSF検出モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
[ステップS21]撮像制御部154aは、入力部155のシャッタボタンが押下されたかを監視する。撮像制御部154aは、シャッタボタンが押下されたことを検知すると、画像復元処理部130aに対して撮像動作の開始信号を出力する。開始信号を受信した画像復元処理部130aは、ステップS22以降の処理を実行する。
【0083】
[ステップS22]撮像素子121によって撮像された画像(中間画像)の信号が、A/Dコンバータ122によってデジタルデータ化される。撮像制御部154aからの開始信号を受信した画像復元処理部130aにおいて、画像メモリ131は、A/Dコンバータ122から出力された中間画像データを取り込む。
【0084】
[ステップS23]画像抽出部132aは、画像メモリ131に記憶された中間画像データに基づく中間画像から、あらかじめ決められた領域を部分画像として抽出する。ここで、ユーザは、ステップS21でシャッタボタンを押下する際に、点画像が画角の中心に配置されるようにする。これにより、画像抽出部132aは、中間画像の中央部を中心とした所定の大きさの領域を抽出することで、点画像とその点画像が分散した成分とを含む領域を、部分画像として抽出することができる。
【0085】
なお、このステップS23では、第2の実施の形態の画像抽出部132と同様に、中間画像と設計PSF141とをパターンマッチングすることにより、部分画像が抽出されてもよい。
【0086】
[ステップS24]コンボリューション制御部133aは、画像抽出部132aによって抽出された部分画像のデータをPSFとし、このPSFを基に逆カーネル「hinv」を算出する。コンボリューション制御部133aは、算出した逆カーネル「hinv」を、カーネルデータ142として不揮発性記憶部140に記憶する。
【0087】
図15は、第3の実施の形態に係る撮像装置の本撮像モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
[ステップS31]撮像制御部154aは、入力部155のシャッタボタンが押下されたかを監視する。撮像制御部154aは、シャッタボタンが押下されたことを検知すると、画像復元処理部130aに対して撮像動作の開始信号を出力する。開始信号を受信した画像復元処理部130aは、ステップS32以降の処理を実行する。
【0088】
[ステップS32]撮像素子121によって撮像された画像(中間画像)の信号が、A/Dコンバータ122によってデジタルデータ化される。撮像制御部154aからの開始信号を受信した画像復元処理部130aにおいて、画像メモリ131は、A/Dコンバータ122から出力された中間画像データを取り込む。
【0089】
[ステップS33]コンボリューション制御部133aは、不揮発性記憶部140からカーネルデータ142を読み出す。なお、ステップS32,S33の処理順は、逆であってもよい。あるいは、ステップS32,S33の各処理が並列に実行されてもよい。
【0090】
[ステップS34]コンボリューション演算部134は、コンボリューション制御部133aによって不揮発性記憶部140から読み出されたカーネルデータ142を用いて、ステップS32で画像メモリ131に記憶された中間画像データに対して、式(5)に従って畳み込み演算を行う。これにより、被写体像の復元処理が実行される。
【0091】
コンボリューション演算部134によって演算処理された画像データは、DSP151によって所定の画質補正処理および圧縮符号化処理が施された後、メモリカード153に記録される。
【0092】
以上の第3の実施の形態では、コンボリューション演算部134は、実際の撮像によって得られた中間画像から求められたカーネルデータ142を用いて被写体像の復元処理を行う。このため、光学系の設計値から求めたカーネルデータを用いて復元処理を行う場合と比較して、被写体像をより高精度に復元できるようになる。また、カーネルデータ142の算出処理をPSF検出モードにおいて行い、本撮像モードでは、不揮発性記憶部140に記憶されたカーネルデータ142を用いて被写体像の復元処理が実行されるので、本撮像モードにおける処理負荷を軽減し、復元処理を高速化することができる。
【0093】
〔第4の実施の形態〕
上記の第3の実施の形態では、PSF検出モードにおいて、単色の領域に配置された点画像を撮像した。これに対して、撮像対象の点画像を特定の色にしておくことにより、点画像がどのような被写体の上に存在する場合であっても、点画像とそれが分散された画像成分とを中間画像から分離してPSFを算出することができるようになる。
【0094】
以下、第4の実施の形態として、特定の色の点画像を含む被写体を撮像することでPSFを算出することが可能な撮像装置について説明する。なお、第4の実施の形態に係る撮像装置は、コンボリューション制御部133aが部分画像から特定の色領域の色を有する画素を分離する機能をさらに有すること以外、第3の実施の形態に係る撮像装置100aと同様の構成を有する。このため、以下の第4の実施の形態の説明では、第3の実施の形態と同じ符号を使用する。
【0095】
図16は、PSF検出モードにおいて撮像の対象とする被写体の例を示す図である。
図16に示す被写体は、任意の画像231と、画像231の内部に配置された特定の色の点画像232とを含む。点画像232の色は、少なくとも、点画像232の周辺領域のうち、この点画像232が位相板114の作用によって分散された画像成分を含む領域とは異なる色とされればよい。また、点画像232は、画像231の内部にあらかじめ配置されたものでよい。この場合、点画像232を含む画像231は、例えば、収差補正用のテスト画像などと兼用されてもよい。あるいは、点画像232は、図12に示したように、外部の光源212から画像231に対して光を照射することで生成されてもよい。
【0096】
図17は、第4の実施の形態に係る撮像装置のPSF検出モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
[ステップS41]撮像制御部154aは、入力部155のシャッタボタンが押下されたかを監視する。撮像制御部154aは、シャッタボタンが押下されたことを検知すると、画像復元処理部130aに対して撮像動作の開始信号を出力する。開始信号を受信した画像復元処理部130aは、ステップS42以降の処理を実行する。
【0097】
[ステップS42]撮像素子121によって撮像された画像(中間画像)の信号が、A/Dコンバータ122によってデジタルデータ化される。撮像制御部154aからの開始信号を受信した画像復元処理部130aにおいて、画像メモリ131は、A/Dコンバータ122から出力された中間画像データを取り込む。
【0098】
[ステップS43]画像抽出部132aは、画像メモリ131に記憶された中間画像データに基づく中間画像から、あらかじめ決められた領域を部分画像として抽出する。なお、第3の実施の形態と同様に、ユーザは、ステップS41でシャッタボタンを押下する際に、点画像232が画角の中心に配置されるようにする。これにより、画像抽出部132aは、中間画像の中央部の所定領域を抽出することで、点画像232とその点画像232が分散した成分とを含む領域を、部分画像として抽出することができる。
【0099】
なお、このステップS43では、第2の実施の形態の画像抽出部132と同様に、中間画像と設計PSF141とをパターンマッチングすることにより、部分画像が抽出されてもよい。
【0100】
[ステップS44]コンボリューション制御部133aは、画像抽出部132aによって抽出された部分画像のデータから、R(Red)成分およびG(Green)成分を分離する。コンボリューション制御部133aは、部分画像の各画素についてR成分の値からG成分の値を減算し、その減算結果が所定のしきい値th1以上であるかを判定する。コンボリューション制御部133aは、減算結果がしきい値th1以上である場合には、その減算結果を画素の値とし、減算結果がしきい値th1未満である場合には、画素の値を0にすることにより、(R−G)成分の画像を生成する。コンボリューション制御部133aは、生成した画像のデータを画像メモリ131に一時的に格納する。
【0101】
[ステップS45]コンボリューション制御部133aは、画像抽出部132aによって抽出された部分画像のデータから、R成分およびB(Blue)成分を分離する。コンボリューション制御部133aは、部分画像の各画素についてR成分の値からB成分の値を減算し、その減算結果が所定のしきい値th2以上であるかを判定する。コンボリューション制御部133aは、減算結果がしきい値th2以上である場合には、その減算結果を画素の値とし、減算結果がしきい値th2未満である場合には、画素の値を0にすることにより、(R−B)成分の画像を生成する。コンボリューション制御部133aは、生成した画像のデータを画像メモリ131に一時的に格納する。
【0102】
なお、ステップS44,S45の処理順は、逆であってもよい。あるいは、ステップS44,S45の処理が並列に実行されてもよい。
[ステップS46]コンボリューション制御部133aは、ステップS44,S45でそれぞれ生成した画像について、各画素の値の平均を演算することで、PSFを算出する。
【0103】
[ステップS47]コンボリューション制御部133aは、算出したPSFを基に逆カーネル「hinv」を算出し、算出した逆カーネル「hinv」を、カーネルデータ142として不揮発性記憶部140に記憶する。
【0104】
なお、本撮像モードにおける撮像処理手順は、図15に示した処理手順と同じであるので、ここでは説明を省略する。
また、上記の図17の処理では、特定の色として赤色の点画像232を検出する場合の例を示したが、点画像232の色としては赤色に限らない。例えば、図17のステップS44において、R成分の値からG成分の値を減算する代わりにB成分の値からR成分の値を減算し、ステップS45において、R成分の値からB成分の値を減算する代わりにB成分の値からG成分の値を減算することにより、青色の点画像232を検出することができる。
【0105】
以上の第4の実施の形態では、第3の実施の形態と同様に、光学系の設計値から求めたカーネルデータを用いて復元処理を行う場合と比較して、被写体像をより高精度に復元できるという効果が得られる。また、本撮像モードにおける処理負荷を軽減し、復元処理を高速化できるという効果も得られる。さらに、第4の実施の形態では、第3の実施の形態と比較して、PSF検出モードで撮像の対象とする被写体の汎用性を高めることができる。
【0106】
〔第5の実施の形態〕
以下の第5の実施の形態に係る撮像装置は、PSF検出用の撮像時に被写体に点画像を生成する光源を搭載する。そして、光源を用いて撮像を行うことでPSFを取得した直後に、光源から光を照射しない状態で本撮像を行うようにする。このような動作により、光学系の製造誤差によるPSFの誤差だけでなく、被写体との距離の違いによるPSF誤差も低減できるようにする。
【0107】
図18は、第5の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。なお、この図18では、図2に対応する構成要素については同じ符号を付して示す。
図18に示す撮像装置100bにおいて、画像復元処理部130bは、図2に示した画像メモリ131、コンボリューション制御部133およびコンボリューション演算部134を備える。さらに、画像復元処理部130bは、画像抽出部132bを備える。画像抽出部132bは、図2の画像抽出部132と同様に、パターンマッチングにより中間画像から部分画像を抽出する処理を行う。ただし、画像抽出部132bは、中間画像から特定の色領域の色を有する画素を分離して特定色画像を生成し、この特定色画像から部分画像を抽出する。
【0108】
さらに、撮像装置100bは、被写体上に特定の色の点画像を生成する光源161を備える。光源161は、例えばレーザ発光素子である。図16の点画像232と同様に、光源161が被写体上に生成する点画像の色は、少なくとも、被写体における点画像の周辺領域のうち、この点画像が位相板114の作用によって分散された画像成分を含む領域とは異なる色とされる。従って、光源161は、例えば、被写体の色と異なる色の点画像を生成できるように、複数の色の光を切り替えて照射することが可能とされてもよい。
【0109】
図19は、第5の実施の形態に係る撮像装置の撮像処理手順を示すフローチャートである。
[ステップS51]撮像制御部154bは、入力部155のシャッタボタンが押下されたかを監視する。撮像制御部154bがシャッタボタンが押下されたことを検知すると、ステップS52以降の処理が実行される。
【0110】
[ステップS52]撮像制御部154bは、光源161をオンにして、光源161から被写体に対して光を照射させる。撮像制御部154bは、光源161からの光が照射された被写体を、撮像素子121に撮像させる。
【0111】
[ステップS53]撮像素子121によって撮像された画像(中間画像)の信号は、A/Dコンバータ122によってデジタルデータ化され、中間画像データとして画像メモリ131に取り込まれる。
【0112】
[ステップS54]画像抽出部132bは、ステップS53で画像メモリ131に取り込まれた中間画像データから、R成分およびG成分を分離する。画像抽出部132bは、中間画像の各画素についてR成分の値からG成分の値を減算し、その減算結果が所定のしきい値th1以上であるかを判定する。画像抽出部132bは、減算結果がしきい値th1以上である場合には、その減算結果を画素の値とし、減算結果がしきい値th1未満である場合には、画素の値を0にすることにより、(R−G)成分の画像を生成する。画像抽出部132bは、生成した画像のデータを画像メモリ131に一時的に格納する。
【0113】
[ステップS55]画像抽出部132bは、ステップS53で画像メモリ131に取り込まれた中間画像データから、R成分およびB成分を分離する。画像抽出部132bは、中間画像の各画素についてR成分の値からB成分の値を減算し、その減算結果が所定のしきい値th2以上であるかを判定する。画像抽出部132bは、減算結果がしきい値th2以上である場合には、その減算結果を画素の値とし、減算結果がしきい値th2未満である場合には、画素の値を0にすることにより、(R−B)成分の画像を生成する。画像抽出部132bは、生成した画像のデータを画像メモリ131に一時的に格納する。
【0114】
なお、ステップS54,S55の処理順は、逆であってもよい。あるいは、ステップS54,S55の処理が並列に実行されてもよい。
[ステップS56]画像抽出部132bは、ステップS54,S55でそれぞれ生成した画像について、各画素の値の平均を演算することで、特定色画像を生成する。画像抽出部132bは、生成した特定色画像のデータを画像メモリ131に一時的に格納する。
【0115】
[ステップS57]画像抽出部132bは、不揮発性記憶部140から設計PSF141を読み込む。画像抽出部132bは、読み込んだ設計PSF141を用いてパターンマッチングを行うことにより、ステップS57で生成した特定色画像から部分画像を抽出する。
【0116】
なお、部分画像の抽出にパターンマッチングを使用することで、例えば、被写体の表面が曲面の場合など、光源161からの光による点画像の画角内の位置が不安定になる場合でも、部分画像を精度よく抽出できる。ただし、第4の実施の形態のように、パターンマッチングを用いず、部分画像をあらかじめ決められた領域から抽出するようにしてもよい。この場合、ステップS54〜S57の処理は、図17のステップS43〜S46の処理手順のように、先に部分画像を抽出し、抽出した部分画像から(R−G)成分および(R−B)成分の各画像を生成し、各画像の平均をとることによってPSFを求めるように変更してもよい。部分画像をあらかじめ決められた領域から抽出した場合でも、例えば、被写体が平板状の場合などでは、部分画像を精度よく抽出できる。
【0117】
[ステップS58]コンボリューション制御部133は、ステップS57で画像抽出部132bによって抽出された部分画像のデータをPSFとし、このPSFを基に逆カーネル「hinv」を算出する。コンボリューション制御部133は、例えば、算出された逆カーネル「hinv」を画像メモリ131に一時的に格納する。
【0118】
[ステップS59]撮像制御部154bは、光源161をオフにし、光源161によって生成された点画像が消滅した被写体を、撮像素子121に撮像させる。
[ステップS60]撮像素子121によって撮像された画像(中間画像)の信号は、A/Dコンバータ122によってデジタルデータ化され、中間画像データとして画像メモリ131に取り込まれる。
【0119】
[ステップS61]コンボリューション演算部134は、ステップS58でコンボリューション制御部133によって算出された逆カーネル「hinv」を用いて、ステップS60で画像メモリ131に記憶された中間画像データに対して、式(5)に従って畳み込み演算を行う。これにより、被写体像の復元処理が実行される。
【0120】
コンボリューション演算部134によって演算処理された画像データは、DSP151によって所定の画質補正処理および圧縮符号化処理が施された後、メモリカード153に記録される。
【0121】
なお、上記の図19の処理では、特定の色として赤色の点画像を検出する場合の例を示したが、点画像の色としては赤色に限らない。
以上の第5の実施の形態では、第2の実施の形態と同様に、撮像を行うたびに、その撮像によって得られた中間画像からPSFが求められ、求められたPSFを用いて中間画像に対する復元処理が行われる。このような処理により、被写体との距離の違いによるPSFの誤差が理論上生じなくなるので、被写体との距離によらず、被写体像を高精度に復元できるようになる。また、第5の本実施の形態では、被写体との距離の違いによるPSF誤差だけでなく、第1,第3,第4の各実施の形態と同様に、位相板114を含む光学系の製造誤差によるPSFの誤差も低減できる。
【0122】
〔第6の実施の形態〕
上記の第1〜第5の実施の形態では、中間画像内の一箇所から抽出した部分画像をPSFとし、この1つのPSFを用いて被写体像の復元処理を行った。これに対して、PSFを複数求め、被写体像の復元処理時に複数のPSFの中から適切なPSFを選択するという方法もある。以下の第6の実施の形態では、複数のPSFを求める例として、中間画像内の複数箇所からそれぞれPSFを求め、これらのPSFを復元処理時に選択的に使用する撮像装置について説明する。
【0123】
図20は、第6の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。なお、この図20では、図2および図10に対応する構成要素については同じ符号を付して示す。
図20に示す撮像装置100cにおいて、画像復元処理部130cは、図10に示した画像メモリ131を備える。さらに、画像復元処理部130cは、画像抽出部132c、コンボリューション制御部133cおよびコンボリューション演算部134cを備える。
【0124】
画像抽出部132cは、図10の画像抽出部132aと同様に、中間画像の所定領域から部分画像を抽出する。ただし、画像抽出部132cは、中間画像内の複数領域から部分画像を抽出する。
【0125】
コンボリューション制御部133cは、図10のコンボリューション制御部133aと同様に、PSF検出モードにおいて、画像抽出部132cによって抽出された部分画像をPSFとし、このPSFを基に逆カーネル「hinv」を算出して、算出した逆カーネル「hinv」をカーネルデータ142として不揮発性記憶部140に保存する。ただし、コンボリューション制御部133cは、画像抽出部132cによって抽出された複数の部分画像のそれぞれを基にカーネルデータ142を算出し、算出した複数のカーネルデータ142を不揮発性記憶部140に保存する。
【0126】
コンボリューション演算部134cは、図10のコンボリューション演算部134と同様に、本撮像モードにおいて、画像メモリ131に記憶された中間画像データに対して、カーネルデータ142を用いて被写体像の復元処理を行う。ただし、コンボリューション演算部134cは、中間画像を複数の領域に分割し、不揮発性記憶部140に記憶された複数のカーネルデータ142のうち、各分割領域に対応する適切なカーネルデータ142を用いて、被写体像の復元処理を行う。これにより、画角内の位置の違いに応じて発生し得るPSFの誤差を低減することができる。画角内の位置の違いに応じてPSFの誤差が発生する要因としては、例えば、光学ブロック110内のレンズの収差などがある。
【0127】
図21は、PSF検出モードにおいて撮像の対象とする被写体の例を示す図である。
本実施の形態の撮像装置100cは、PSF検出モードにおいて、図21に示すような複数の点画像241〜245を撮像する。点画像241〜245は、各点画像241〜245が位相板114の作用によって分散された成分が互いに重複しないように、互いに離間して配置される。また、本実施の形態では、例として、各点画像241〜245は同じ色とされる。この場合、各点画像241〜245の色を背景画像246の色とは異なるものとすることで、撮像装置100cは、各点画像241〜245を背景画像246から分離して検出することができる。
【0128】
点画像241〜245は、例えば、図12に示したように、外部の光源から被写体に光を照射することで生成されたものであってよい。あるいは、点画像241〜245は、被写体状にあらかじめ配置されたものであってもよい。
【0129】
図22は、部分画像を抽出する領域の設定例を示す図である。
図22に示す中間画像250は、PSF検出モードにおいて撮像された画像である。画像抽出部132cは、中間画像250の領域内にあらかじめ決められた部分画像領域251〜255のそれぞれから、部分画像を抽出する。部分画像領域251〜255は、それぞれ図21に示した点画像241〜245に対応付けられている。
【0130】
PSF検出モードにおいて、ユーザは、点画像241〜245が、それぞれ部分画像領域251〜255の略中心部に配置されるように、画角を調整して撮像を行う。ここで、部分画像領域251〜255のそれぞれの大きさは、点画像241〜245のそれぞれが位相板114によって分散された成分の領域を含むように決定される。
【0131】
なお、例えば、PSF検出モードでは、モニタ画像を表示する表示部152の領域内に、部分画像領域251〜255をそれぞれ示す枠を表示することで、ユーザは、点画像241〜245がそれぞれ部分画像領域251〜255の略中心部に配置されるように画角を調整することができる。このように、点画像241〜245がそれぞれ部分画像領域251〜255の略中心部に配置された状態で撮像が行われることで、画像抽出部132cは、パターンマッチングを用いずに、あらかじめ設定された領域から画像を抽出するという簡単な処理で複数の部分画像を抽出できるようになる。
【0132】
図23は、中間画像を分割した分割領域の例を示す図である。
図23の中間画像260は、コンボリューション演算部134cが演算の対象とする撮像画像である。コンボリューション演算部134cは、本撮像モードにおいて、演算対象とする中間画像260を複数の領域に分割し、各分割領域に対応するカーネルデータ142を用いて、被写体の復元処理を行う。
【0133】
図23の例では、コンボリューション演算部134cは、演算対象とする中間画像260を5つの分割領域261〜265に分割する。分割領域261〜265は、それぞれ図22に示した部分画像領域251〜255を包含するように設定される。コンボリューション演算部134cは、分割領域261についての復元処理を実行する際には、部分画像領域251を基に算出されたカーネルデータ142を使用する。同様に、コンボリューション演算部134cは、分割領域262〜265についての復元処理を実行する際には、それぞれ部分画像領域252〜255を基に算出されたカーネルデータ142を使用する。これにより、画角内の位置の違いに応じたPSFの誤差が低減され、各分割領域における被写体像をより高精度に復元することができる。
【0134】
図24は、第6の実施の形態に係る撮像装置のPSF検出モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
[ステップS71]撮像制御部154aは、入力部155のシャッタボタンが押下されたかを監視する。撮像制御部154aは、シャッタボタンが押下されたことを検知すると、画像復元処理部130cに対して撮像動作の開始信号を出力する。開始信号を受信した画像復元処理部130cは、ステップS72以降の処理を実行する。
【0135】
[ステップS72]撮像素子121によって撮像された画像(中間画像)の信号が、A/Dコンバータ122によってデジタルデータ化される。撮像制御部154aからの開始信号を受信した画像復元処理部130cにおいて、画像メモリ131は、A/Dコンバータ122から出力された中間画像データを取り込む。
【0136】
[ステップS73]画像抽出部132cは、あらかじめ決められた複数の部分画像領域251〜255のうち1つを選択し、画像メモリ131に記憶された中間画像データに基づく中間画像から、選択した部分画像領域を部分画像として抽出する。
【0137】
なお、このステップS73では、第2の実施の形態の画像抽出部132と同様に、中間画像と設計PSF141とをパターンマッチングすることにより、部分画像が抽出されてもよい。パターンマッチングを行う場合、画像抽出部132cは例えば、ステップS73において、図23に示した分割領域261〜265のうちの1つを選択し、中間画像上の選択した分割領域に対して、設計PSF141とのパターンマッチングを行う。
【0138】
[ステップS74]コンボリューション制御部133cは、ステップS73で画像抽出部132cによって抽出された部分画像のデータから、R成分およびG成分を分離する。コンボリューション制御部133cは、部分画像の各画素についてR成分の値からG成分の値を減算し、その減算結果が所定のしきい値th1以上であるかを判定する。コンボリューション制御部133cは、減算結果がしきい値th1以上である場合には、その減算結果を画素の値とし、減算結果がしきい値th1未満である場合には、画素の値を0にすることにより、(R−G)成分の画像を生成する。コンボリューション制御部133cは、生成した画像のデータを画像メモリ131に一時的に格納する。
【0139】
[ステップS75]コンボリューション制御部133cは、ステップS73で画像抽出部132aによって抽出された部分画像のデータから、R成分およびB成分を分離する。コンボリューション制御部133cは、部分画像の各画素についてR成分の値からB成分の値を減算し、その減算結果が所定のしきい値th2以上であるかを判定する。コンボリューション制御部133cは、減算結果がしきい値th2以上である場合には、その減算結果を画素の値とし、減算結果がしきい値th2未満である場合には、画素の値を0にすることにより、(R−B)成分の画像を生成する。コンボリューション制御部133cは、生成した画像のデータを画像メモリ131に一時的に格納する。
【0140】
なお、ステップS74,S75の処理順は、逆であってもよい。あるいは、ステップS74,S75の処理が並列に実行されてもよい。
[ステップS76]コンボリューション制御部133cは、ステップS74,S75でそれぞれ生成した画像について、各画素の値の平均を演算することで、PSFを算出する。
【0141】
[ステップS77]コンボリューション制御部133cは、ステップS76で算出したPSFを基に逆カーネル「hinv」を算出し、算出した逆カーネル「hinv」を、カーネルデータ142として不揮発性記憶部140に記憶する。
【0142】
[ステップS78]画像抽出部132cは、あらかじめ決められた複数の部分画像の領域のすべてについてステップS73〜S77の処理を実行したかを判定する。画像抽出部132cは、上記処理が済んでいない領域が存在すると判定した場合、ステップS73の処理を実行する。この場合、画像抽出部132cは、ステップS73において、処理済みでない新たな領域を選択し、中間画像から選択した領域を部分画像として抽出する。一方、画像抽出部132cは、すべての領域について上記処理が実行されたと判定した場合には、PSF検出モードでの処理を終了する。
【0143】
図25は、第6の実施の形態に係る撮像装置の本撮像モードにおける撮像処理手順を示すフローチャートである。
[ステップS81]撮像制御部154aは、入力部155のシャッタボタンが押下されたかを監視する。撮像制御部154aは、シャッタボタンが押下されたことを検知すると、画像復元処理部130cに対して撮像動作の開始信号を出力する。開始信号を受信した画像復元処理部130cは、ステップS82以降の処理を実行する。
【0144】
[ステップS82]撮像素子121によって撮像された画像(中間画像)の信号が、A/Dコンバータ122によってデジタルデータ化される。撮像制御部154aからの開始信号を受信した画像復元処理部130cにおいて、画像メモリ131は、A/Dコンバータ122から出力された中間画像データを取り込む。
【0145】
[ステップS83]コンボリューション制御部133cは、中間画像の領域のうち、コンボリューション演算部134cにおいて演算対象とする分割領域を選択する。
[ステップS84]コンボリューション制御部133cは、ステップS83で選択した分割領域に対応するカーネルデータ142を、不揮発性記憶部140から読み出す。
【0146】
[ステップS85]コンボリューション演算部134cは、コンボリューション制御部133cによって不揮発性記憶部140から読み出されたカーネルデータ142を用いて、ステップS82で画像メモリ131に記憶された中間画像データのうち、ステップS83で選択した分割領域のデータに対して、式(5)に従って畳み込み演算を行う。コンボリューション演算部134cは、演算済みの画像データを、例えば、画像メモリ131に一時的に格納する。
【0147】
[ステップS86]コンボリューション制御部133cは、コンボリューション演算部134cによって演算対象とするすべての分割領域について、ステップS83〜S85の処理を実行したかを判定する。コンボリューション制御部133cは、上記処理が済んでいない分割領域が存在すると判定した場合には、ステップS83の処理を実行する。この場合、コンボリューション制御部133cは、処理済みでない新たな分割領域を選択し、選択した分割領域に対応するカーネルデータ142を、不揮発性記憶部140から読み出す。一方、コンボリューション制御部133cは、すべての分割領域について上記処理が実行されたと判定した場合には、コンボリューション演算部134cにステップS87の処理を実行させる。
【0148】
[ステップS87]コンボリューション演算部134cは、ステップS85で演算が施された各画像を統合し、被写体像が復元された画像としてDSP151に出力する。
コンボリューション演算部134cから出力された画像データは、DSP151によって所定の画質補正処理および圧縮符号化処理が施された後、メモリカード153に記録される。
【0149】
以上の第6の実施の形態では、中間画像上の複数の領域からPSFが求められ、復元対象とする中間画像上の領域ごとに、各領域に対応するPSFを用いて被写体像の復元処理が実行される。このような処理により、画角内の位置の違いに応じたPSFの誤差が低減され、各分割領域における被写体像をより高精度に復元することができる。
【0150】
なお、上記の第6の実施の形態で説明した、複数の領域からそれぞれ求めたPSFのいずれかを用いて被写体像を復元するという処理は、前述の第3,第5の実施の形態にも適用することが可能である。
【0151】
また、中間画像に基づくPSFを複数求め、被写体像の復元処理時にPSFを選択的に使用する他の例としては、PSF検出モードにおいて、撮像装置との距離が異なる複数の被写体を撮像し、これらの撮像によって得られた複数の中間画像のそれぞれからPSFを求める方法が考えられる。この場合、撮像装置は、被写体との距離を計測する距離計を備え、本撮像モードにおいて、距離計によって被写体との距離を計測し、計測した距離に対応するPSFを用いて被写体像の復元処理を行う。これにより、第2の実施の形態と同様に、被写体との距離の違いによるPSFの誤差が低減されるので、被写体との距離によらず、被写体像を高精度に復元できるようになる。
【0152】
また、上記の第2〜第6の実施の形態では、位相変調素子として厚さが変化する位相板を用いたが、位相変調素子としてはこのような位相板に限定されない。他の位相変調素子としては、例えば、屈折率分布型波面変調レンズのように、屈折率が場所によって変化する光学素子、あるいは、波面変調ハイブリッドレンズのように、レンズ表面へのコーディングなどにより厚みや屈折率が変化する光学素子、液晶空間位相変調素子のように、位相分布を変調可能な液晶素子などを使用できる。
【0153】
また、上記の第2〜第6の実施の形態では、入射光を2方向に分散させる位相変調素子が用いられたが、位相変調素子としてはこのようなものに限らず、入射光を規則的に分散させる種々の位相変調素子を使用できる。
【0154】
以上の各実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) 被写体からの光を位相変調素子を通じて受光する撮像素子と、
前記撮像素子によって得られた撮像画像から、点画像が分散された領域を含む部分画像を抽出する画像抽出部と、
前記画像抽出部によって抽出された前記部分画像を点像分布関数として用い、前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して被写体像を復元する処理を施す復元処理部と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【0155】
(付記2) 前記復元処理部は、前記画像抽出部によって前記部分画像の抽出対象とされた撮像画像と同じ撮像画像に対して、被写体像を復元する処理を施すことを特徴とする付記1記載の撮像装置。
【0156】
(付記3) 前記画像抽出部は、前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して、前記位相変調素子を含む光学系の設計値から算出された他の点像分布関数とのパターンマッチングを行うことで、前記部分画像を抽出することを特徴とする付記1または2記載の撮像装置。
【0157】
(付記4) 前記復元処理部は、前記画像抽出部による前記部分画像の抽出後に前記撮像素子によって新たに得られた撮像画像に対して、前記画像抽出部によって抽出された前記部分画像を点像分布関数として用い、前記被写体像を復元する処理を施すことを特徴とする付記1記載の撮像装置。
【0158】
(付記5) 前記被写体に対して光を照射することで前記被写体上に前記点画像を生成する発光部をさらに有し、
前記画像抽出部は、前記発光部からの光が照射された前記被写体を前記撮像素子が撮像することで得られた撮像画像から、前記部分画像を抽出し、
前記復元処理部は、前記発光部からの光の照射が中止された後の前記被写体を前記撮像素子が撮像することで得られた撮像画像に対して、前記被写体像を復元する処理を施す、
ことを特徴とする付記4記載の撮像装置。
【0159】
(付記6) 前記復元処理部は、前記画像抽出部によって抽出された前記部分画像から、前記点画像の色を含む特定の色領域の成分を抽出することで得た画像を、点像分布関数として用いることを特徴とする付記1,4,5のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0160】
(付記7) 前記画像抽出部は、前記撮像素子によって得られた撮像画像からあらかじめ決められた領域を前記部分画像として抽出することを特徴とする付記1,4,5,6のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0161】
(付記8) 前記あらかじめ決められた領域は、前記撮像素子によって得られた撮像画像の中央部を中心とした領域であることを特徴とする付記7記載の撮像装置。
(付記9) 前記画像抽出部は、前記撮像素子によって得られた撮像画像から、前記点画像の色を含む特定の色領域の成分を抽出した画像を生成し、前記特定の色領域の成分を抽出した画像に対して、前記位相変調素子を含む光学系の設計値から算出された他の点像分布関数とのパターンマッチングを行うことで、前記部分画像を抽出することを特徴とする付記1,4,5のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0162】
(付記10) 前記画像抽出部は、前記撮像素子によって得られた撮像画像から、それぞれ個別の点画像が分散された領域を含む複数の部分画像を抽出し、
前記復元処理部は、前記撮像素子によって得られた撮像画像上の分割領域ごとに、前記複数の部分画像のうち各分割領域に対応する部分画像を選択して点像分布関数として用いて、前記被写体像を復元する処理を施す、
ことを特徴とする付記1〜7のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0163】
(付記11) 被写体からの光を位相変調素子を通じて受光する撮像素子によって得られた撮像画像から、点画像が分散された領域を含む部分画像を抽出する画像抽出部と、
前記画像抽出部によって抽出された前記部分画像を点像分布関数として用い、前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して被写体像を復元する処理を施す復元処理部と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【0164】
(付記12) 被写体からの光を位相変調素子を通じて受光する撮像素子を備えた撮像装置における撮像方法であって、
前記撮像素子によって得られた撮像画像から、点画像が分散された領域を含む部分画像を抽出し、
抽出された前記部分画像を点像分布関数として用い、前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して被写体像を復元する、
ことを特徴とする撮像方法。
【0165】
(付記13) 前記撮像装置は、前記部分画像の抽出対象とした撮像画像と同じ撮像画像に対して、前記被写体像を復元する処理を施すことを特徴とする付記12記載の撮像方法。
【0166】
(付記14) 前記撮像装置は、前記部分画像の抽出後に前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して、当該部分画像を点像分布関数として用い、前記被写体像を復元する処理を施すことを特徴とする付記12記載の撮像方法。
【0167】
(付記15) 前記撮像装置は、
前記被写体に対して光を照射することで当該被写体上に点画像を生成し、
光が照射された前記被写体を前記撮像素子が撮像することで得られた撮像画像から、前記部分画像を抽出し、
前記被写体に対する光の照射を中止し、
前記光の照射が中止された後の前記被写体を前記撮像素子が撮像することで得られた撮像画像に対して、前記被写体像を復元する処理を施す、
ことを特徴とする付記14記載の撮像方法。
【符号の説明】
【0168】
1 撮像装置
11 撮像素子
12 位相変調素子
13 画像抽出部
14 復元処理部
P1 撮像画像
P2 部分画像
P3 画像
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光を位相変調素子を通じて受光する撮像素子と、
前記撮像素子によって得られた撮像画像から、点画像が分散された領域を含む部分画像を抽出する画像抽出部と、
前記画像抽出部によって抽出された前記部分画像を点像分布関数として用い、前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して被写体像を復元する処理を施す復元処理部と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記復元処理部は、前記画像抽出部によって前記部分画像の抽出対象とされた撮像画像と同じ撮像画像に対して、被写体像を復元する処理を施すことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記画像抽出部は、前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して、前記位相変調素子を含む光学系の設計値から算出された他の点像分布関数とのパターンマッチングを行うことで、前記部分画像を抽出することを特徴とする請求項1または2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記復元処理部は、前記画像抽出部による前記部分画像の抽出後に前記撮像素子によって新たに得られた撮像画像に対して、前記画像抽出部によって抽出された前記部分画像を点像分布関数として用い、前記被写体像を復元する処理を施すことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項5】
前記被写体に対して光を照射することで前記被写体上に前記点画像を生成する発光部をさらに有し、
前記画像抽出部は、前記発光部からの光が照射された前記被写体を前記撮像素子が撮像することで得られた撮像画像から、前記部分画像を抽出し、
前記復元処理部は、前記発光部からの光の照射が中止された後の前記被写体を前記撮像素子が撮像することで得られた撮像画像に対して、前記被写体像を復元する処理を施す、
ことを特徴とする請求項4記載の撮像装置。
【請求項6】
前記復元処理部は、前記画像抽出部によって抽出された前記部分画像から、前記点画像の色を含む特定の色領域の成分を抽出することで得た画像を、点像分布関数として用いることを特徴とする請求項1,4,5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記画像抽出部は、前記撮像素子によって得られた撮像画像から、前記点画像の色を含む特定の色領域の成分を抽出した画像を生成し、前記特定の色領域の成分を抽出した画像に対して、前記位相変調素子を含む光学系の設計値から算出された他の点像分布関数とのパターンマッチングを行うことで、前記部分画像を抽出することを特徴とする請求項1,4,5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記画像抽出部は、前記撮像素子によって得られた撮像画像から、それぞれ個別の点画像が分散された領域を含む複数の部分画像を抽出し、
前記復元処理部は、前記撮像素子によって得られた撮像画像上の分割領域ごとに、前記複数の部分画像のうち各分割領域に対応する部分画像を選択して点像分布関数として用いて、前記被写体像を復元する処理を施す、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
被写体からの光を位相変調素子を通じて受光する撮像素子によって得られた撮像画像から、点画像が分散された領域を含む部分画像を抽出する画像抽出部と、
前記画像抽出部によって抽出された前記部分画像を点像分布関数として用い、前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して被写体像を復元する処理を施す復元処理部と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
被写体からの光を位相変調素子を通じて受光する撮像素子を備えた撮像装置における撮像方法であって、
前記撮像素子によって得られた撮像画像から、点画像が分散された領域を含む部分画像を抽出し、
抽出された前記部分画像を点像分布関数として用い、前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して被写体像を復元する、
ことを特徴とする撮像方法。
【請求項1】
被写体からの光を位相変調素子を通じて受光する撮像素子と、
前記撮像素子によって得られた撮像画像から、点画像が分散された領域を含む部分画像を抽出する画像抽出部と、
前記画像抽出部によって抽出された前記部分画像を点像分布関数として用い、前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して被写体像を復元する処理を施す復元処理部と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記復元処理部は、前記画像抽出部によって前記部分画像の抽出対象とされた撮像画像と同じ撮像画像に対して、被写体像を復元する処理を施すことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記画像抽出部は、前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して、前記位相変調素子を含む光学系の設計値から算出された他の点像分布関数とのパターンマッチングを行うことで、前記部分画像を抽出することを特徴とする請求項1または2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記復元処理部は、前記画像抽出部による前記部分画像の抽出後に前記撮像素子によって新たに得られた撮像画像に対して、前記画像抽出部によって抽出された前記部分画像を点像分布関数として用い、前記被写体像を復元する処理を施すことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項5】
前記被写体に対して光を照射することで前記被写体上に前記点画像を生成する発光部をさらに有し、
前記画像抽出部は、前記発光部からの光が照射された前記被写体を前記撮像素子が撮像することで得られた撮像画像から、前記部分画像を抽出し、
前記復元処理部は、前記発光部からの光の照射が中止された後の前記被写体を前記撮像素子が撮像することで得られた撮像画像に対して、前記被写体像を復元する処理を施す、
ことを特徴とする請求項4記載の撮像装置。
【請求項6】
前記復元処理部は、前記画像抽出部によって抽出された前記部分画像から、前記点画像の色を含む特定の色領域の成分を抽出することで得た画像を、点像分布関数として用いることを特徴とする請求項1,4,5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記画像抽出部は、前記撮像素子によって得られた撮像画像から、前記点画像の色を含む特定の色領域の成分を抽出した画像を生成し、前記特定の色領域の成分を抽出した画像に対して、前記位相変調素子を含む光学系の設計値から算出された他の点像分布関数とのパターンマッチングを行うことで、前記部分画像を抽出することを特徴とする請求項1,4,5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記画像抽出部は、前記撮像素子によって得られた撮像画像から、それぞれ個別の点画像が分散された領域を含む複数の部分画像を抽出し、
前記復元処理部は、前記撮像素子によって得られた撮像画像上の分割領域ごとに、前記複数の部分画像のうち各分割領域に対応する部分画像を選択して点像分布関数として用いて、前記被写体像を復元する処理を施す、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
被写体からの光を位相変調素子を通じて受光する撮像素子によって得られた撮像画像から、点画像が分散された領域を含む部分画像を抽出する画像抽出部と、
前記画像抽出部によって抽出された前記部分画像を点像分布関数として用い、前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して被写体像を復元する処理を施す復元処理部と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
被写体からの光を位相変調素子を通じて受光する撮像素子を備えた撮像装置における撮像方法であって、
前記撮像素子によって得られた撮像画像から、点画像が分散された領域を含む部分画像を抽出し、
抽出された前記部分画像を点像分布関数として用い、前記撮像素子によって得られた撮像画像に対して被写体像を復元する、
ことを特徴とする撮像方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−109826(P2012−109826A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257542(P2010−257542)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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