説明

撮像装置および撮像装置の制御プログラム

【課題】現在の手振れ量が設定された撮影条件に対して許容されない範囲である場合に、ユーザは、カメラに設定し得る他の撮影条件に変更すれば現在の手振れ量が許容されるのか、判断に迷うことがあった。
【解決手段】撮像装置は、撮像装置に加えられる振れの振れ量を検出する振れ量検出部と、振れ量を許容する許容撮像条件を算出する算出部と、許容撮像条件が撮像装置において設定可能であるか否かを判断する判断部と、判断部により許容撮像条件が設定可能であると判断された場合に、振れ量と許容撮像条件により許容される許容振れ量とを視覚的に表示する表示制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置および撮像装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラを把持するユーザの現在の手振れ量が、設定された撮影条件に対して許容される範囲であるかを視覚的に表示する技術が知られている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開平06−202217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、現在の手振れ量が設定された撮影条件に対して許容されない範囲である場合に、ユーザは、カメラに設定し得る他の撮影条件に変更すれば現在の手振れ量が許容されるのか、判断に迷うことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様における撮像装置は、撮像装置に加えられる振れの振れ量を検出する振れ量検出部と、振れ量を許容する許容撮像条件を算出する算出部と、許容撮像条件が撮像装置において設定可能であるか否かを判断する判断部と、判断部により許容撮像条件が設定可能であると判断された場合に、振れ量と許容撮像条件により許容される許容振れ量とを視覚的に表示する表示制御部とを備える。
【0005】
本発明の第2の態様における撮像装置の制御プログラムは、撮像装置に加えられる振れの振れ量を検出する振れ量検出ステップと、振れ量を許容する許容撮像条件を算出する算出ステップと、許容撮像条件が撮像装置において設定可能であるか否かを判断する判断ステップと、判断ステップにより許容撮像条件が設定可能であると判断された場合に、振れ量と許容撮像条件により許容される許容振れ量とを視覚的に表示する表示制御ステップとをコンピュータに実行させる。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係るカメラのシステム構成図である。
【図2】許容振れ量と許容撮影条件を表示するカメラの背面図である。
【図3】他の表示例を示す図である。
【図4】複数の許容撮影条件を提示する場合の表示例である。
【図5】許容撮影条件の算出処理の概念を示す図である。
【図6】許容振れ量の表示に係る一連の処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、本実施形態に係る撮像装置としてのカメラ10のシステム構成図である。カメラ10は光学系20を備える。光学系20は、主にズームレンズ21、フォーカスレンズ22、補正レンズユニット23、レンズシャッタ24等により構成される。被写体像は光軸11に沿って光学系20に入射し、撮像素子31の結像面に結像する。
【0010】
撮像素子31は、光学系20を透過して入射する被写体像である光学像を光電変換する素子であり、例えば、CCD、CMOSセンサが用いられる。撮像素子31で光電変換された被写体像は、A/D変換器32でアナログ信号からデジタル信号に変換される。撮像素子31の電荷読み出し制御およびA/D変換器32の変換制御は、メモリ制御部33の同期制御を受けたタイミング発生部34が供給するクロック信号により同期が計られる。
【0011】
デジタル信号に変換された被写体像は、画像データとして順次処理される。A/D変換器によりデジタル信号に変換された画像データは、メモリ制御部33の制御に従い、一旦内部メモリ35に記憶される。内部メモリ35は、高速で読み書きのできるランダムアクセスメモリであり、例えばDRAM、SRAMなどが用いられる。内部メモリ35は、連写撮影、動画撮影において高速に連続して画像データが生成される場合に、画像処理の順番を待つバッファメモリとしての役割を担う。また、画像処理部36が行う画像処理、圧縮処理において、ワークメモリとしての役割も担う。したがって、内部メモリ35は、これらの役割を担うに相当する十分なメモリ容量を備える。メモリ制御部33は、いかなる作業にどれくらいのメモリ容量を割り当てるかを制御する。
【0012】
画像処理部36は、設定されている撮影モード、ユーザからの指示に則して、画像データを所定の画像フォーマットに従った画像データに変換する。例えば、静止画像としてJPEGファイルを生成する場合、色変換処理、ガンマ処理、ホワイトバランス処理等の画像処理を行った後に適応離散コサイン変換等を施して圧縮処理を行う。また、動画像としてMPEGファイルを生成する場合、所定の画素数に縮小されて生成された連続する静止画としてのフレーム画像に対して、フレーム内符号化、フレーム間符号化を施して圧縮処理を行う。そして、変換された画像データは再び内部メモリ35に保管される。
【0013】
画像処理部36によって処理された静止画像データ、動画像データは、メモリ制御部33の制御により、内部メモリ35から記録媒体IF37を介して、記録媒体80に記録される。記録媒体80は、フラッシュメモリ等により構成される、カメラ10に対して着脱可能な不揮発性メモリである。
【0014】
画像処理部36で処理された画像データは、記録用に処理される画像データに並行して、表示用の画像データを生成する。表示用の画像データは、記録用に処理される画像データをコピーして間引き処理された、画素数の少ない画像データである。生成された表示用の画像データは、表示制御部38の制御に従って、タイミング発生部34からのクロック信号に同期するD/A変換器39でアナログ信号に変換されて、例えば液晶パネルである表示部40に表示される。記録の有無に関わらず、逐次表示用の画像データを生成して表示部40に表示すれば、電子ファインダ機能を実現することができる。また、画像の表示と共に、もしくは画像を表示することなく、カメラ10の各種設定に関する様々なメニュー項目も、表示部40に表示することができる。
【0015】
カメラ10は、上記の画像処理における各々の要素も含めて、システム制御部41により直接的または間接的に制御される。システム制御部41は、システムメモリ42を備える。システムメモリ42は、電気的に消去・記録可能な不揮発性メモリであり、例えばEEPROM(登録商標)等により構成される。システムメモリ42は、カメラ10の動作時に必要な定数、変数、プログラム等を、カメラ10の非動作時にも失われないように記録している。システム制御部41は、定数、変数、プログラム等を適宜内部メモリ35に展開して、カメラ10の制御に利用する。
【0016】
光学系20を構成するズームレンズ21、フォーカスレンズ22、補正レンズユニット23、レンズシャッタ24は、システム制御部41の統括制御のもとそれぞれ、ズーム制御部43、フォーカス制御部44、防振駆動制御部45、露光制御部46によって制御される。ズーム制御部43は、ユーザの指示に応じてズームレンズ21を駆動して、被写体像の画角を変更する。フォーカス制御部44は、連続して取得される画像データを用いたコントラストAFの情報に応じて、特定の領域の被写体像が撮像素子31の受光面上で合焦するように、フォーカスレンズ22を駆動する。
【0017】
防振駆動制御部45は、補正レンズユニット23の補正レンズの位置を検出する位置検出センサと、カメラ10に加えられる振れを検出する振れ検出センサを備える。防振駆動制御部45は、振れ検出センサから検出されたカメラ10の振れを打ち消すように、位置検出センサの出力を加味して、補正レンズを駆動する。これにより、ユーザによる手振れ量が一定の範囲内であれば、被写体像は、撮像素子31の受光面上で安定した結像状態を維持する。露光制御部46は、画像処理部36が処理した画像データをシステム制御部41が解析して得た撮影条件としての露出値に従って、レンズシャッタ24を駆動し、入射する被写体像の絞りおよびシャッタ速度を調整する。なお、動画撮影等の場合に、各フレームの画像データ取得においては、シャッタ速度の調整を、撮像素子31の電荷読み出しのタイミングを制御することにより行うこともできる。
【0018】
カメラ10は、ユーザからの操作を受け付ける操作部材47を複数備えている。システム制御部41は、これら操作部材47が操作されたことを検知し、操作に応じた動作を実行する。また、カメラ10は操作部材47の類としてレリーズスイッチ48を備える。レリーズスイッチ48は、押下げ方向に2段階に検知できる押しボタンで構成されており、システム制御部41は、1段階目の押下げであるSW1の検知により撮影準備動作であるAF、AE等を実行し、2段階目の押下げであるSW2の検知により撮像素子31による被写体像の取得動作を実行する。
【0019】
カメラ10は、電源90から電力供給を受ける。電源制御部49は、電源90と通信して残電力の検出、電力供給の監視を行う。電源90は、2次電池、家庭用AC電源等により構成される。
【0020】
図2は、許容振れ量と許容撮影条件を表示するカメラ10の背面図である。カメラ10の背面には、操作部材47の一部である十字ボタン53および確定ボタン54が配設されている。
【0021】
表示部40には、スルー画像としての被写体像が表示されると共に、現在設定されている設定撮影条件を示す現設定ウィンドウ111が表示されている。ここで、撮影条件は、シャッタ速度、絞り値およびISO感度のそれぞれの値の組み合わせから成る露出値を含む。システム制御部41は、スルー画像として取得した画像データを画像処理部36で解析して、最適な露出値を決定する。例えば、絞り値がユーザによって指定されている場合には、シャッタ速度およびISO感度の値を調整する。これらの値の組み合わせは、スルー画像を解析して得られる被写体の明るさ(EV値)を、予めシステムメモリ42に記録されているプログラム線図に当てはめて決定される。したがって、設定撮影条件における露出値は、ユーザが設定する値と共に、現在のEV値を基準としてプログラム線図に則って決定される値により定められる。
【0022】
プログラム線図は、カメラ10の特性に合わせて構築されている。例えば、絞り値は、光学系20の開放絞り値よりも小さな値はとり得ないので、プログラム線図の最小値側の端は、光学系20の開放絞り値となる。また、シャッタ速度も、露光制御部46がレンズシャッタ24を駆動し得る最高速度が限界値となる。また、ISO感度も、撮像素子31が光電変換された画像信号を増幅するときに許容される増幅率に対応する値が限度となる。例えば、ISO感度をあまりに大きくすると、画像信号のSN比が小さくなり、鑑賞に耐えない画像となる。したがって、撮像素子31と画像処理部36の特性に合わせて、設定が許されるISO感度が予め決められており、プログラム線図も、これに合わせて構築されている。
【0023】
図2で示すような夕暮れの屋外のシーンなどでは光量が十分でなく、設定されているISO感度(例えばISO200)によっては、絞り値を開放(例えばF4.0)にしても、比較的遅いシャッタ速度(例えば1/15秒)が、プログラム線図から導かれる。これらの値は、表示制御部38により表示部40の現設定ウィンドウ111に表示されて、ユーザに視認される。このような遅いシャッタ速度で撮影してもブレの小さいシャープな画像が得られるのか否かを、ユーザは、振れウィンドウ101を見て確認することができる。
【0024】
振れウィンドウ101は、カメラ10を把持するユーザの手がカメラ10にどれくらいの振れを加えているかを、振れ量として視覚的に認識される態様で表示している。具体的には、表示制御部38は、振れ検出センサの出力をシステム制御部41が解析した結果として振れの方向と大きさを振れ矢印102で表し、これを逐次更新して表示する。
【0025】
また、振れウィンドウ101は、設定撮影条件と防振駆動制御部45の防振能力に対して、振れが許容される範囲を現許容円103として表示する。防振能力は、補正レンズユニット23が光軸11に対して直交方向に移動し得る範囲、補正レンズユニット23の移動後の位置においても被写体像が予め定められた収差に収まる範囲などによって規定される。振れが許容される範囲の具体的な算出手順については後述する。
【0026】
図2に示すような、振れ矢印102が現許容円103を突き抜けている状態は、現在設定されている設定撮影条件で撮影するとブレの大きい画像が取得されることを意味する。そこで、システム制御部41は、検出した振れ量であってもブレの小さなシャープな画像が得られる、カメラ10に設定し得る露出値を許容撮影条件として算出する。具体的には後述するが、ISO感度の値を大きくする、および絞り値を小さくする、の少なくとも何れかを行えばシャッタ速度を高速にすることができるので、同じ振れ量であっても撮像素子31の受光面上における被写体像の移動量を小さくすることができる。すなわち、よりシャープな画像を取得できる。表示制御部38は、システム制御部41により算出された許容撮影条件を、許容設定ウィンドウ121に表示する。
【0027】
許容設定ウィンドウ121で表示される許容撮影条件は、カメラ10には未だ適用されていない撮影条件であり、ユーザに提示されている段階の撮影条件である。システム制御部41は、もしこの撮影条件が適用された場合にどれくらいの振れ量が許容されるかを算出し、表示制御部38は、その振れ量を半径の大きさにより表す提示許容円104を、振れウィンドウ101に表示する。この場合、振れ矢印102は、提示許容円104に内包される。ユーザは、提示許容円104と振れ矢印102の関係を見て、あとどれくらいの振れ量が許容されるかの余裕量を認識する。
【0028】
ユーザは、許容設定ウィンドウ121で表示された許容撮影条件をカメラ10に適用したい場合は、確定ボタン54を押し下げる。システム制御部41は、確定ボタン54の押下げを検出して、現在の設定撮影条件から指示された許容撮影条件へ撮影条件を変更する。また、ユーザは、余裕量を変更したい場合には、十字ボタン53の上下方向を押し下げることにより、許容撮影条件を変更することができる。システム制御部41は、十字ボタン53の上方向が押し下げられたら、余裕量を大きくするように許容撮影条件を算出し直す。逆に下方向が押し下げられたら、余裕量を小さくするように算出し直す。
【0029】
振れ矢印102が現許容円103に内包される関係になったら、表示制御部38は、許容設定ウィンドウ121と提示許容円104を消去する。
【0030】
図3は、他の表示例を示す図である。図2においては、現在の振れ量を振れ矢印102の長さで表現したが、振れ量の表現はバー状にも表現し得る。図3において、振れバー202は、左端を基準として右方向へ伸びるバーの長さにより現在の振れ量を表現する。現在設定されている設定撮影条件を示す現設定ウィンドウ211は、振れが許容される範囲を示す現許容矢印212と共に表示される。現許容矢印212は、振れバー202のある長さに相当する位置を指すように表示される。図3に示すような、振れバー202が現許容矢印212よりも右側に位置する状態は、現在設定されている設定撮影条件で撮影するとブレの大きい画像が取得されることを意味する。
【0031】
提示する許容撮影条件を示す許容設定ウィンドウ221は、許容撮影条件が適用された場合に許容される提示許容矢印222と共に表示される。提示許容矢印222は、算出された余裕量に応じて、現許容矢印212より右側の位置を指すように表示される。ユーザは、提示許容矢印222と振れバー202の関係を見て、あとどれくらいの振れ量が許容されるかの余裕量を認識する。なお、図2で示す各表示と同様に、それぞれの表示は、表示制御部38によって実行される。
【0032】
図2および図3の表示例においては、一つの許容撮影条件を提示した。しかし、表示制御部38は、同時に複数の許容撮影条件を提示することもできる。図4は、複数の許容撮影条件を提示する場合の表示例である。
【0033】
システム制御部41は、余裕量の異なる複数の許容撮影条件を算出する。そして、表示制御部38は、振れ矢印302、現許容円303、現設定ウィンドウ311と共に、算出した複数の許容撮影条件を表す許容設定ウィンドウ321、331、341と、それぞれに対応する提示許容円304、305、306を表示する。表示制御部38は、どの円とどのウィンドウが対応するかを、線で結ぶ、色を違える等により、ユーザに認識させることができる。なお、図4では許容撮影条件を3つ表示するが、表示数はもちろんこれに限らない。
【0034】
ユーザは、十字ボタン53を操作することによりいずれかの許容設定ウィンドウをアクティブにして確定ボタン54を押し下げれば、当該許容設定ウィンドウが提示する許容撮影条件をカメラ10に適用することができる。システム制御部41は、確定ボタン54の押下げを検出して、現在の設定撮影条件から指示された許容撮影条件へ撮影条件を変更する。
【0035】
図5は、許容撮影条件の算出処理の概念を示す図である。システム制御部41は、被写界に対して合焦領域を設定する。システム制御部41は、例えば図5(a)に示すように、取得したスルー画像から顔領域151を抽出して合焦領域に設定する。ユーザがレリーズスイッチ48を押し下げて撮影準備指示を行った場合には、フォーカス制御部44は、設定された合焦領域においてコントラストが最大となるようにフォーカスレンズ22を駆動する。
【0036】
上述のように、システム制御部41は、取得したスルー画像から被写体の明るさを解析して、露出値を決定する。そして、決定した露出値を現設定ウィンドウ111で表示する。ここで、露出値としてシャッタ速度が定まるので、システム制御部41は、このシャッタ速度に相当する時間間隔を置いて取得される、2枚の合焦領域画像を比較する。例えば図5(b)に示すように、シャッタ速度が1/15秒である場合、ある時点とその時点から1/15秒後の時点のそれぞれの画像を比較する。このとき、図5(c)に示すように、2つの画像は、カメラ10に加えられる振れに起因して、移動量m分だけずれた関係となる。1/15秒の間レンズシャッタ24を開いて露光した場合、被写体像は、撮像素子31の受光面上をこの移動量m分だけ掃引されることになる。したがって、シャッタ速度に応じた振れが画像に現れる。
【0037】
システム制御部41は、撮像素子31の受光面上の移動量mが、予め定められた許容移動量mよりも小さくなるか否かで許容できる振れ量であるか否かを判断する。すなわち、たとえ被写体像が撮像素子31の受光面上で掃引されたとしても、その量がわずかであれば、鑑賞に与える影響は小さく、十分にシャープな画像であるとの印象を与えることができるので、そのような移動量をmとして予め定めておき、これを基準として判断する。
【0038】
システム制御部41は、許容撮影条件として、移動量がm未満となるシャッタ速度を算出する。具体的には、現在の設定撮影条件によるシャッタ速度に相当する時間間隔を置いて、上述のように実際に2枚の画像を取得して移動量mを算出し、許容移動量mとの比により許容撮影条件としてのシャッタ速度を決定する。なお、2枚の画像を取得する場合のそれぞれのシャッタ速度は、例えば10倍程度速い値を採用する。設定撮影条件におけるシャッタ速度が1/15秒であるなら、1/150秒程度のシャッタ速度を採用し、光量の不足分は画像信号の増幅により補う。ここで取得される画像は観賞用の画像ではなく、比較用の画像であるので、ノイズ成分が若干多くても問題にはならない。なお、この場合のシャッタ速度に対応する露光制御は、撮像素子31のリセット信号のタイミングを調整する電子シャッタを採用しても良い。
【0039】
また、実際に画像を取得しなくても、システム制御部41は、ズームレンズ21の位置、フォーカスレンズ22の位置を取得して算出される焦点距離および被写体距離に、現在の振れの大きさ、設定されたシャッタ速度、防振能力を加味して、演算により移動量mを得ることもできる。このように演算により得られた移動量mを用いて、許容撮影条件としてのシャッタ速度を決定しても良い。なお、防振能力の範囲内では振れを相殺できるので、システム制御部41は、相殺され得る振れに対応する移動量分を減じて移動量mを演算する。
【0040】
シャッタ速度が決定されれば、被写体の明るさを基準として絞り値とISO感度が決定される。ここで決定されたISO感度がカメラ10に設定し得る値であるか否かを判断し、設定し得る値であれば、ユーザに提示する許容撮影条件の候補とする。
【0041】
図6は、許容振れ量の表示に係る一連の処理を示すフロー図である。一連の処理は、カメラ10の電源がオンにされ、電子ファインダ機能としてのスルー画像の表示が開始された時点で開始される。なお、以下の処理においては、図2で示した表示態様を想定して説明する。
【0042】
システム制御部41は、ステップS101で、上述のようにスルー画像を解析して設定撮影条件を取得する。特に、露出値として、絞り値がユーザによって指定されているときにはシャッタ速度とISO感度の値を算出し、シャッタ速度が指定されているときには絞り値とISO感度の値を算出し、ISO感度の値が指定されているときには絞り値とシャッタ速度を算出する。
【0043】
ステップS102へ進み、システム制御部41は、防振駆動制御部45から振れ検出センサの出力から、現在の振れ量を算出して得る。また、ステップS103において、システム制御部41は、合焦領域を確定する。システム制御部41は、合焦領域を、上述のようにスルー画像から顔領域を抽出して確定しても良いし、複数の被写体に対する近点優先のアルゴリズムを適用して確定しても良い。
【0044】
次に、システム制御部41は、ステップS104で、現在の設定撮影条件と現在の振れ量を用いて、確定した合焦領域に対応する被写体像の、撮像素子31の受光面上における移動量mを算出する。そして、ステップS105において、算出した移動量mが許容移動量m未満であるか否かを判断する。m未満であれば、ステップS106へ進み、システム制御部41は、表示制御部38を介して、設定撮影条件を示す現設定ウィンドウ111と、現許容円103に包含された振れ矢印102を含む振れウィンドウ101とを表示部40に表示する。m以上であれば、ステップS107へ進む。
【0045】
ステップS107では、システム制御部41は、上述のように許容撮影条件を算出する。そして、ステップS108で、表示制御部38を介して、設定撮影条件および許容撮影条件の両撮影条件を、現設定ウィンドウ111および許容設定ウィンドウ121により表示部40に表示する。また、同時に、現許容円103、振れ矢印102および提示許容円104を含む振れウィンドウ101を表示部40に表示する。
【0046】
ステップS109へ進み、システム制御部41は、ユーザの指示を受け付けて許容撮影条件を現在の撮影条件とすべく、設定撮影条件を更新する。ユーザからの指示が無い場合には、ステップS109をスキップする。また、予め自動更新する旨の設定がなされている場合には、システム制御部41は、ユーザからの指示を待つことなく設定撮影条件を更新する。
【0047】
ステップS106の表示処理およびステップS109の更新処理が完了したら、システム制御部41は、ステップS110へ進み、電子ファインダ機能としてのスルー画像の表示を終了させる指示、再生モードへ移行する指示、電源をオフにする指示などの終了指示があるか否かを判断する。指示が無いと判断した場合はステップS102へ戻り、指示が有ると判断した場合には、一連の処理を終了する。
【0048】
以上説明した本実施形態において、振れウィンドウ101などの各種ウィンドウは、常時表示させなくても良く、例えば、レリーズスイッチ48のSW1オンに連動して一時的に表示しても良い。
【0049】
また、表示態様は上述の態様に限らず、さまざまなバリエーションを採用し得る。例えば、提示許容円104の大きさを一定にして、振れ矢印102の長さを相対的に変化させても良い。
【0050】
また、上述においては、撮影条件を、シャッタ速度、絞り値およびISO感度のそれぞれの値の組み合わせから成る露出値として説明した。しかし、撮影条件は露出値に限らない。振れを緩和するパラメータであれば、いずれも更新され得る撮影条件として採用できる。例えば、焦点距離を更新され得る撮影条件として採用することができる。焦点距離は、広角側よりも望遠側の方が、撮像素子31の受光面上における被写体像の移動に与える影響が大きい。したがって、システム制御部41は、許容撮影条件として、広角側へ変更する焦点距離を提示することができる。
【0051】
また、システム制御部41は、振れ量が予め定められた値よりも大きい場合には、カメラをしっかり構えるように促す警告を表示しても良い。その場合、表示部40への表示に限らず、音を使って警告を行っても良い。なお、上記の実施形態においては、コンパクトデジタルカメラを例に説明したが、これに限らず一眼レフカメラ、ビデオカメラ、ミラーレス一眼、カメラ機能つき携帯電話、携帯ゲームなどの撮像装置であっても同様に本実施携帯に係る概念を適用することができる。
【0052】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0053】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現し得ることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0054】
10 カメラ、11 光軸、20 光学系、21 ズームレンズ、22 フォーカスレンズ、23 補正レンズユニット、24 レンズシャッタ、31 撮像素子、32 A/D変換器、33 メモリ制御部、34 タイミング発生部、35 内部メモリ、36 画像処理部、37 記録媒体IF、38 表示制御部、39 D/A変換器、40 表示部、41 システム制御部、42 システムメモリ、43 ズーム制御部、44 フォーカス制御部、45 防振駆動制御部、46 露光制御部、47 操作部材、48 レリーズスイッチ、49 電源制御部、53 十字ボタン、54 確定ボタン、80 記録媒体、90 電源、101 振れウィンドウ、102 振れ矢印、103 現許容円、104 提示許容円、111 現設定ウィンドウ、121 許容設定ウィンドウ、151 顔領域、202 振れバー、211 現設定ウィンドウ、212 現許容矢印、221 許容設定ウィンドウ、222 提示許容矢印、302 振れ矢印、303 現許容円、304、305、306 提示許容円、311 現設定ウィンドウ、321、331、341 許容設定ウィンドウ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置に加えられる振れの振れ量を検出する振れ量検出部と、
前記振れ量を許容する許容撮像条件を算出する算出部と、
前記許容撮像条件が前記撮像装置において設定可能であるか否かを判断する判断部と、
前記判断部により前記許容撮像条件が設定可能であると判断された場合に、前記振れ量と前記許容撮像条件により許容される許容振れ量とを視覚的に表示する表示制御部と
を備える撮像装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、現在設定されている設定撮像条件により許容される許容振れ量を視覚的に表示する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記許容撮像条件を表示する請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
現在設定されている設定撮影条件を前記許容撮像条件に自動的に切り替える撮像条件設定部を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記算出部は複数の前記許容撮像条件を算出し、
前記表示制御部は、複数の前記許容振れ量を視覚的に表示する請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
現在設定されている設定撮影条件をユーザにより選択された1つの前記許容撮像条件に切り替える撮像条件設定部を備える請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記振れ量を前記振れ量に対応する長さを有する矢印で表示し、前記許容振れ量を前記許容振れ量に対応する半径を有する円で表示する請求項1から6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記算出部は、前記振れ量に対応する、出力される画像データにおける被写体像の移動量が、予め定められた許容移動量よりも小さくなるように前記許容撮像条件を算出する請求項1から7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記算出部は、設定された絞り値と、前記移動量が前記許容移動量よりも小さくなるシャッタ速度とからISO感度を算出し、
前記判断部は、算出された前記ISO感度が、前記撮像装置において設定可能なISO感度であるか否かを判断する請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
撮像装置に加えられる振れの振れ量を検出する振れ量検出ステップと、
前記振れ量を許容する許容撮像条件を算出する算出ステップと、
前記許容撮像条件が前記撮像装置において設定可能であるか否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップにより前記許容撮像条件が設定可能であると判断された場合に、前記振れ量と前記許容撮像条件により許容される許容振れ量とを視覚的に表示する表示制御ステップと
をコンピュータに実行させる撮像装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−227658(P2012−227658A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92303(P2011−92303)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】