説明

撮像装置

【課題】レンズユニットが交換可能な撮像装置であって、ファインダ観察位置と撮影退避位置とを往復運動する可動ミラーを備えている場合に、金属材料でなく樹脂材料を使用しながらも、帯電を効果的に抑えて塵の進入、付着を防止する。
【解決手段】メインミラー保持部材41及びサブミラー保持部材63を、導電性を有するカーボンファイバーを配合した樹脂材料で成形することにより、静電気を漏洩させることができ、剥離帯電による静電気の発生を防止することができる。また、光学ガラスで形成されているメインミラー7及びサブミラー62の表面に界面活性剤をアルコール等の揮発性液体で希釈して塗布し、表面に界面活性剤皮膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズユニットが交換可能な一眼レフカメラ等の撮像装置に関し、特に塵付着防止のために帯電防止処理を施した撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
塵付着防止技術として、帯電防止処理を施すことが一般的に知られている。例えば特許文献1には、携帯端末に内蔵するのに好適な小型で薄型の撮像装置において塵付着防止のために帯電防止処理を施すこと提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−86746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された撮像装置では、組み立て時に撮像装置内へ部品に付着して塵が入ることを防止するために、撮像素子を取り囲む部材に帯電防止処理を施すという一般技術を提示しているに過ぎない。
【0005】
レンズユニットが交換可能な一眼レフカメラにおいて塵付着が問題視される点として、ファインダを構成するピント板近傍に付着した塵がファインダ像として見えてしまうことがある。さらに、デジタル一眼レフカメラにおいては、撮像素子近傍に付着した塵が撮影画像に写り込んでしまうことがある。
【0006】
レンズユニットが交換可能な一眼レフカメラでは、製造工程で厳重管理した上で製品を出荷しても、ユーザが使用する過程で塵が付着してしまうことがある。例えばレンズユニットを交換するためにカメラマウントから取り外したときに、カメラマウント開口部を介してミラーボックスが外界の空気にさらされ、塵が進入することがある。
【0007】
本願発明者らが実験検討を行った結果、撮影動作を行うと可動ミラーが帯電し、その帯電により、レンズユニットをカメラ本体から取り外したときに、カメラマウント開口部からミラーボックス内に塵が吸引されてしまうことが判明した。具体的には、可動ミラーがファインダ観察位置と撮影退避位置とを往復運動するためにストッパ部材から離れる際に、剥離帯電現象が発生して帯電することが確認された。
【0008】
この帯電現象は、可動ミラーやストッパ部材がプラスチック樹脂製とされている場合に顕著に現れる。可動ミラーやストッパ部材を金属製とすれば帯電現象を抑えることもできるが、それではコストアップや重量の増大の要因となってしまう。
【0009】
上記特許文献1には、上述したようなレンズユニットが交換可能な一眼レフカメラに固有の問題点、及び、その対策について一切開示されていない。
【0010】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、レンズユニットが交換可能な撮像装置であって、ファインダ観察位置と撮影退避位置とを往復運動する可動ミラーを備えている場合に、金属材料でなく樹脂材料を使用しながらも、帯電を効果的に抑えて塵の進入、付着を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による撮像装置は、レンズユニットが交換可能な撮像装置であって、ファインダ観察位置と撮影退避位置とを往復運動する可動ミラーを備え、前記可動ミラーがミラー部材及び保持部材により構成され、前記保持部材がカーボンを配合した樹脂材料で成形されている点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レンズユニットが交換可能な撮像装置であって、ファインダ観察位置と撮影退避位置とを往復運動する可動ミラーを備えている場合に、可動ミラーの保持部材を、カーボンを配合した樹脂材料で成形することにより、金属材料でなく樹脂材料を使用しながらも、帯電を効果的に抑えて塵の進入、付着を防止することができる。これにより、コストアップや重量の増大を避けるとともに、塵がファインダ像として見えてしまったり、デジタル一眼レフカメラにおいて塵が撮影画像に写り込んでしまったりすることを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は本発明を適用した実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの斜視図である。図1において、1はカメラ本体である。2は撮影を指示するレリーズボタンである。
【0014】
3は内蔵ストロボ、4はストロボ緊定フック、5はストロボ緊定部である。図示したのは、内蔵ストロボ3が発光位置に移動している状態(ポップアップ状態)である。内蔵ストロボ3は不図示のストロボアップバネで発光位置方向に付勢されており、収納位置においては、ストロボ緊定フック4がストロボ緊定部5に係止することで保持される。
【0015】
6はミラーボックスであり、メインミラー7が駆動する空間を撮影光軸方向に囲う形で構成する。通常は撮影光束が内面反射を起こさないように、その表面に遮光紙を設ける等の処理が施されている。7は撮影光束をファインダ光学系に反射して導くためのメインミラーである。
【0016】
図2は外装部品を取り除いたデジタル一眼レフカメラの内部機構を示す正面図であり、図3は斜視図である。また、図4は内部機構の主要ユニットの分解斜視図である。なお、図1と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明する。
【0017】
図2乃至図4において、8はメインミラー7で反射した撮影光束を更に接眼部に反射するペンタミラーであり、通常はプリズムやミラーの貼り合わせにより構成される。9はミラーボックス6等の構造体や外装部品を固定・支持するためのメインベースプレートであり、プレス加工等により成形される。
【0018】
10はメインミラー7を駆動し、内蔵ストロボ3をポップアップし、シャッタユニット12のシャッタ羽根をチャージさせるためのモータであり、その出力軸は後述するギアトレイン部に接続されている。11はモータ地板であり、モータ10はモータ地板11を介してミラーボックス6の側面に固定されている。12はシャッタユニットである。
【0019】
13は電池14を収納するための電池収納部であり、メインベースプレート9に固定されている。14はカメラ本体1に対して着脱可能とされた電池であり、図示例では電池収納部13に収納された状態にある。
【0020】
モータ10は、電池収納部13の上部であって、出力軸がミラーボックス6に直交するように、すなわち撮影光軸と直交する方向に配置されている。モータ10の外形は、電池収納部13の上面に倣う形に略小判型をした形状となっている。このようなモータ10を採用することで、モータ10の出力軸と電池収納部13の上面との間隔を狭くすることが可能となる。
【0021】
図5はミラーボックス6の周辺の構成を詳細に示す分解斜視図である。メインミラー保持部材41は、メインミラー7を保持し、メインミラー7と一体になって駆動される部材である。
【0022】
シャッタユニット12内のシャッタ羽根45は、露光時の走行方向に不図示のバネで付勢されており、後述のチャージ動作とバネ開放動作により開閉動作を行う。
【0023】
図5においては、図2乃至図4には図示しなかったストロボ緊定フック4を含むストロボギアユニット55を図示している。ストロボギアユニット55は、モータ10の駆動力を伝達し、ポップアップ方向に不図示のバネで付勢された内蔵ストロボ3を収納位置で保持するストロボ緊定フック4を開放して、内蔵ストロボ3をポップアップさせるものである。
【0024】
図6乃至図8はミラーボックス6の側面に配置されたギアの動作を説明するための図である。21はピニオンギアであり、モータ10の出力軸に固着されている。22はモータ減速ギアであり、太陽ギア23にモータ駆動力を伝達する。23は太陽ギアである。24は遊星ギアであり、太陽ギア23の周りを所定角の範囲で公転する。
【0025】
25はミラー減速ギア、26はミラー伝達ギア、27はミラーカムギアである。これらのギア25、26、27によってミラー駆動レバー30が駆動され、メインミラー7の上下往復運動を行う。なお、ミラーアップスプリング32とミラーダウンスプリング33の作用により、駆動状態に応じてそれぞれの方向に付勢される。
【0026】
28はシャッタ伝達ギア、29はシャッタカムギアである。これらのギア28、29を介したモータ10の駆動力と、シャッタ駆動レバー31とシャッタ駆動レバースプリング34との作用によって、シャッタ羽根45の開閉動作を行う。
【0027】
ピニオンギア21以外のギアとレバーは、遊星ギア24を除き、ミラーボックス6に一体的に形成されている軸にそれぞれ回転可能に軸支されており、ミラーボックス6にビス止めされているモータ地板11により挟み込まれている。
【0028】
次に、図6乃至図8を参照して、デジタル一眼レフカメラの一連の動作の流れについて説明する。図6はスタンバイ状態を、図7はミラーアップ状態を、図8はストロボアップ駆動状態をそれぞれ示している。
【0029】
図6に示すスタンバイ状態とは、ミラーダウン及びシャッタチャージが終了した状態である。ミラー駆動レバー30は、ミラーアップスプリング32によりミラーアップ方向、図中の時計周り方向に付勢されているが、ミラーカムギア27のカム部27aのカムトップ位相と当接しており、ミラーダウン状態を保持している。
【0030】
メインミラー7はメインミラー保持部材41に保持され、メインミラー保持部材41は、メインミラー保持部材回転軸42を中心にミラーボックス6に対して回転可能に軸支されている。メインミラー7は、メインミラー保持部材41のメインミラー保持部材駆動軸43が、ミラー駆動レバー30とミラーダウンスプリング33の間に挟み込まれて保持されているので、ミラー駆動レバー30の動作によりミラーアップ又はミラーダウンする。
【0031】
撮影者が撮影指示のためにレリーズボタン2を押下すると、モータ10は逆転方向に回転するように通電され、すなわちピニオンギア21は時計周りに回転する。これにより、モータ減速ギア22、太陽ギア23、遊星ギア24、ミラー減速ギア25、ミラー伝達ギア26、ミラーカムギア27の順に駆動力が伝達され、ミラーカムギア27は時計回り方向に回転する。さらに、シャッタ伝達ギア28、シャッタカムギア29と駆動力が伝達され、シャッタカムギア29も時計周り方向に回転する。
【0032】
ミラーカムギア27が時計回り方向に回転すると、ミラー駆動レバー30とミラーカムギア29のカム部27aとの当接位置はカムトップからカムボトムに移動する。この動作により、ミラー駆動レバー30はミラーアップスプリング32によって付勢されているため、時計回り方向に回転する。これにより、ミラー駆動レバー30とミラーダウンスプリング33の間で保持されているメインミラー保持部材駆動軸43が上方向に移動し、メインミラー7がミラーアップ状態になる。なお、ミラーアップ状態が完了すると、モータ10への通電を中止し、モータ10は停止する。
【0033】
シャッタ駆動レバー31も同様に、シャッタカム29の時計周り方向の回転駆動によって、時計周り方向に回転し、シャッタユニット12を駆動し、シャッタ羽根45を露光走行可能な状態とする。
【0034】
図7に示すミラーアップ状態とは、シャッタ羽根45の露光走行待ちの状態である。シャッタ羽根45が露光走行後、モータ10は逆転方向に回転するように通電される。その結果、ミラーカムギア27とシャッタカムギア29は、上述したのと同様に時計回り方向に回転する。
【0035】
ミラーカムギア27が時計回り方向に回転すると、ミラー駆動レバー30とミラーカムギア29のカム部27aとの当接位置はカムボトムからカムトップに移動する。この動作により、ミラー駆動レバー30はミラーアップスプリング32の付勢力に抗して、図中反時計回り方向に回転する。これにより、ミラー駆動レバー30とミラーダウンスプリング33の間で保持されているメインミラー保持部材駆動軸43が下方向に移動し、メインミラー7がミラーダウン状態になる。
【0036】
シャッタ駆動レバー31も同様に、シャッタカム29の時計周り方向の回転駆動によって、反時計周り方向に回転し、シャッタユニット12を駆動し、シャッタ羽根45の付勢バネ力に抗して、スタンバイ状態とする。なお、シャッタユニット12のスタンバイ状態への移行が完了すると、モータ10への通電を中止し、モータ10は停止する。すなわち、図6に示すスタンバイ状態に復帰する。
【0037】
図8に示す状態はストロボアップ駆動状態である。図6に示すスタンバイ状態において、レリーズボタン2が押下され、被写体の条件により内蔵ストロボ3の発光が必要であると不図示のCPUが判断した場合や、撮影者の意図により不図示の内蔵ストロボアップボタンが押下された場合に、モータ10は正転方向に回転するように通電される。すなわち、ピニオンギア21は図中反時計周りに回転し、モータ減速ギア22、太陽ギア23と駆動力が伝達され、太陽ギア23は反時計方向に回転する。これにより、遊星ギア24は、ミラー減速ギア25との噛合いから外れ、反時計方向に公転し、ストロボ減速ギア51と噛合い、駆動力を伝達する。ストロボ減速ギア51はストロボカムギア52に駆動力を伝達し、ストロボカムギア52は時計回り方向に回転する。
【0038】
ストロボカムギア52が時計周り方向に回転すると、不図示のカム部がストロボ緊定フック4の緊定フックカム当接部4aと当接して下方向に押し下げ、ストロボ緊定フック4は反時計方向に回転する。この動作により、ストロボ緊定フック4とストロボ緊定部5との係止が外れ、不図示の付勢バネによってアップ方向に付勢された内蔵ストロボ3は、発光位置まで押し上げられる。
【0039】
次に、以上述べたデジタル一眼レフカメラにおける可動ミラーの構成について説明する。図9は本実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの構成を示す中央断面図であり、図10はメインミラー7及びサブミラー62の動作範囲を示す図である。
【0040】
図9は不図示のレンズユニットを取り外した状態を示すが、レンズユニットの装着時はカメラマウント61で結合可能とされている。本実施形態のデジタル一眼レフカメラでは、可動ミラーは、メインミラー保持部材41に保持されたメインミラー7と、サブミラー保持部材63に保持されたサブミラー62とにより構成される。
【0041】
メインミラー保持部材41は、既述したように、ミラーボックス6に対してメインミラー保持部材回転軸42を中心に回転可能に軸支され、既述した駆動機構によりアップダウン動作を行う。
【0042】
また、サブミラー保持部材63は、メインミラー保持部材41に回転軸部を介して軸支され、メインミラー保持部材41の動きに連動して動作する。
【0043】
図9に示すミラーダウン状態はファインダ観察状態であり、不図示のレンズユニットを通過した撮影光束はハーフミラーであるメインミラー7で反射、透過光束に分離される。反射した光束はファインダへ導かれ、透過した光束はAF系へ導かれる。ファインダへ導かれた光束はピント板64で結像する。ピント板64の状態は、ペンタミラー8、接眼レンズ65〜67を介して撮影者が観察可能となる。AF系へ導かれた光束はサブミラー62で全反射し、フィールドレンズ68、全反射ミラー69、二次結像レンズ70を介してAFセンサ71へ導かれる。
【0044】
図10はメインミラー7及びサブミラー62の動作範囲を示す図である。Aが図9に示すファインダ観察位置、Bが撮影退避位置を示す。また、Cはメインミラー先端の回動軌跡を示す。
【0045】
ファインダ観察位置Aにおいては、メインミラー保持部材41がストッパ部材72に当接し、位置決めされている。ストッパ部材72は、ミラーボックス6と一体的に設けられているが、別部品で構成してもよい。このとき、サブミラー保持部材63も、不図示のストッパ保持部材で位置決めされている。
【0046】
撮影退避位置Bにおいては、メインミラー保持部材41がストッパ部材73に当接し、位置決めされている。ストッパ部材73は、ペンタホルダ6に設けられている。このとき、サブミラー保持部材63は、メインミラー保持部材41に当接することで位置決めされている。なお、サブミラー保持部材63は不図示のトグル反転スプリングの作用で、ファインダ観察位置Aと撮影退避位置Bにバネ付勢されている。
【0047】
撮影退避位置Bにおいては、不図示のレンズユニットを透過した光束は、可動ミラーが退避しているため直進し、シャッタ羽根45に到達する。シャッタ羽根45が動作し開口ができると、光学フィルタ75を透過して撮像素子76へ到達する。光学フィルタ75は光学ローパスフィルタ及び赤外線カットフィルタを貼り合わせて一体化したものである。
【0048】
以上述べたように、大きな撮像素子76を搭載するデジタル一眼レフカメラでは、ピント板64やメインミラー7を小型化することが難しい。そのため、光学フィルタ75と撮像素子76との間の間隔を広げるような構成にすることが困難である。そのため、光学フィルタ75上に付着した塵等の異物と撮像素子76との間の距離が近くなり、異物の影が大きくボケることなく撮像素子76上の被写体像に入ってしまう。このような状態で撮影した画像は、異物の黒い影が入ったのものとなり、画像の品位が大幅に低下するため、異物がカメラ内に進入しない工夫が必要となる。
【0049】
また、ピント板64に塵が付着しても、ファインダ画像に塵が見えてしまうためファインダ品位を大きく損なうことになり、なんらかの対策が必要となる。
【0050】
更に、AF系に関しても、フィールドレンズ68に塵が付着するとAF機能に障害が出るおそれがあり、なんらかの対策が必要となる。
【0051】
上述したようにミラーボックス6内に塵が進入すると、一眼レフカメラの著しい品質低下を招くおそれがある。そのため、製造工程においては、徹底した品質管理の下、ミラーボックス6内に塵を残さないよう防塵室を使った組み立て、更には最終工程における徹底した塵のチェック等が行われている。
【0052】
ところが、レンズユニットが交換可能な一眼レフカメラにおいては、既述したように、ユーザが使用する過程で、頻繁にレンズユニットを交換する機会がある。レンズユニットを取り外した状態では、カメラマウント61の開口部を介してミラーボックス6が外界の空気にさらされ、塵が進入する危険性が高い。
【0053】
以下、レンズユニットをカメラマウントから取り外した状態におけるミラーボックス6内への塵の進入防止策について説明する。結論から述べると、ミラーボックス6内における静電気の発生を防止し、外部の塵を吸引してしまうことを避けるようにしている。
【0054】
静電気の発生要因で注目すべき点は、可動ミラーを構成するメインミラー保持部材41及びサブミラー保持部材63である。一般に普及価格帯の一眼レフカメラの場合、メインミラー保持部材41やサブミラー保持部材63は、製造コスト低減、軽量化の目的でプラスチック樹脂で成形されている。そのため、ミラーダウン状態からアップ開始する時、及び、ミラーアップ状態からダウン開始する時に、ストッパ部材72、73との間で剥離帯電現象が発生し、可動ミラーに静電気が帯電することが確認された。このように剥離帯電現象が発生して帯電することが要因となって、カメラマウント61の開口部を介して、外部の塵を呼び込んでしまうことが判明した。
【0055】
この場合に、金属部品を多用して帯電を防止することも可能であるが、製造コストの著しい増大、カメラ重量の増大等を招いてしまう。
【0056】
そこで、プラスチック樹脂を使う基本構成のまま目的を達成するようにしている。まず、第1の対策は、メインミラー保持部材41及びサブミラー保持部材63を、導電性のカーボンファイバーを配合した樹脂材料で成形することである。導電性のカーボンファイバーを配合した樹脂材料では、静電気を漏洩させることができ、剥離帯電による静電気の発生を防止することができる。
【0057】
具体的には、ポリカーボネート樹脂にカーボンファイバーを20%、ガラス繊維を10%配合した樹脂材料が導電性も高く、機械的強度も強化され、望ましいものとなる。もちろん配合比率の採用可能な範囲は幅があり、例えばコスト指向で選択する場合は、カーボンファイバーを10%、ガラス繊維を20%程度配合するようにしても効果を発揮する。
【0058】
ただし、カーボンファイバーの配合比率を5%より下げてしまうと、射出成形時にカーボンファイバーが均一に分布しなくなり、導電性及び機械的強度共に安定した性能が得られなくなるおそれがある。
【0059】
また、導電性のカーボンという観点では、安価なカーボンブラックを配合することも考えられる。ただし、カーボンブラックを配合する場合、ファイバー状になっていないため、安定した導電性を確保するためには配合比率を高く設定する必要がある。その状態では、成形時の流動性が悪化し、射出成形が困難で押出し成形を行う必要があるため、量産部品に適用しにくくなることからも、カーボンファイバーを配合するのが好適である。
【0060】
上述の対策だけでも可動ミラーのメインミラー保持部材41及びサブミラー保持部材63が導電性を有することになり、帯電防止効果を発揮することになるが、更なる改善を求める場合、以下の対策を施すことが効果的である。まず、基本構造体であるミラーボックス6を、可動ミラーと同様にカーボンファイバーを配合した樹脂材料で成形する。
【0061】
更に、ミラーボックス6を不図示の接続部材で電気的にグランド接続(アース)する。この場合、メインミラー保持部材回転軸42やメインミラー保持部材駆動軸43、サブミラー保持部材63の回転軸部もカーボンファイバーを配合した樹脂材料で成形する。この状態においては、メインミラー保持部材41は軸42、43を介してミラーボックス6に接続され、電気的にグランドに落ちる。また、サブミラー保持部材63も回転軸部を介してメインミラー保持部材41に接続され、電気的にグランドに落ちる。したがって、可動ミラーの往復運動時でも電荷は速やかにアースへ流れ、静電気が蓄積されることは無く、剥離帯電現象は発生しない。
【0062】
以上述べた帯電防止効果を得るためには電気的導通性も考慮し、表面抵抗が1010Ω以下となるようカーボンファイバーの配合比率を調整する必要がある。
【0063】
更にストッパ部材72及びストッパ部材73にも帯電防止処理を施すのが望ましい。帯電防止処理に関して、ストッパ部材72はミラーボックス6と一体に形成されているのでカーボンファイバーの配合による効果である。ストッパ部材73は、界面活性剤を配合することにより帯電防止効果を持たせるようにしている。ストッパ部材は不図示の箇所も存在するが、帯電防止効果として、上述のカーボンファイバー配合、界面活性剤配合以外にも、金属等の導電性を有する材料を使用することでも達成することができる。
【0064】
第2の対策は、光学ガラスで形成されているメインミラー7及びサブミラー62の表面に界面活性剤をアルコール等の揮発性液体で希釈して塗布し、表面に界面活性剤皮膜を形成することである。このような界面活性剤の代表的商品としては、エレクトロストリッパー(花王株式会社)等が知られている。界面活性剤の希釈率は50倍〜200倍程度が好ましい。第2の対策において最も効果を発揮させるためには、表面抵抗を1012Ω以下とするように界面活性剤の配合比率を調整するのが望ましい。
【0065】
更に、本実施形態においては、ペンタホルダ74もカーボンファイバーを配合した樹脂材料で成形し、ミラーボックス6内の帯電防止効果を高めている。
【0066】
更にまた、本実施形態では、塵が付着すると直接問題を起こす箇所にも対策を施している。具体的には、光学フィルタ75、ピント板64、フィールドレンズ68の表面に界面活性剤をアルコール等の揮発性液体で希釈して塗布し、表面に界面活性剤皮膜を形成している。
【0067】
以上述べたように、構造材としての樹脂材料には、カーボンファイバーを配合した成形材料を使用し、帯電防止効果を発揮させ、また、レンズ等の光学部材には、表面に界面活性剤皮膜を形成して、帯電防止効果を発揮させることが有効な手段となる。
【0068】
なお、本実施形態ではデジタル一眼レフカメラに本発明を適用した例を説明したが、銀塩フィルムを使う一眼レフカメラに適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの斜視図である。
【図2】実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの外装部品を取り除いた内部機構を示す正面図である。
【図3】実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの外装部品を取り除いた内部機構を示す斜視図である。
【図4】内部機構の主要ユニットの分解斜視図である。
【図5】ミラーボックスの周辺の構成を示す分解斜視図である。
【図6】ミラーボックス側面図であって、スタンバイ状態を示す図である。
【図7】ミラーボックス側面図であって、ミラーアップ状態を示す図である。
【図8】ミラーボックス側面図であって、ストロボアップ駆動状態を示す図である。
【図9】本実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの構成を示す中央断面図である。
【図10】メインミラー及びサブミラーの動作範囲を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
6 ミラーボックス
7 メインミラー
8 ペンタミラー
10 モータ
41 メインミラー保持部材
42 メインミラー保持部材回転軸
45 シャッタ羽根
61 カメラマウント
62 サブミラー
63 サブミラー保持部材
64 ピント板
65〜67 接眼レンズ
68 フィードレンズ
71 AFセンサ
72 ストッパ部材
73 ストッパ部材
75 光学フィルタ
76 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズユニットが交換可能な撮像装置であって、
ファインダ観察位置と撮影退避位置とを往復運動する可動ミラーを備え、
前記可動ミラーがミラー部材及び保持部材により構成され、前記保持部材がカーボンを配合した樹脂材料で成形されていることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記カーボンとしてカーボンファイバーを配合することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記保持部材の表面抵抗を1010Ω以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記ミラー部材の表面に界面活性剤皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記可動ミラーが駆動する空間を囲うミラーボックスがカーボンを配合した樹脂材料で成形されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記保持部材が前記ミラーボックスを介してグランド接続することを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記ファインダ観察位置で前記可動ミラーが当接するストッパ部材及び前記撮影退避位置で前記可動ミラーが当接するストッパ部材のうち少なくともいずれか一方に帯電防止処理が施されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−183406(P2007−183406A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1427(P2006−1427)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】