説明

撮像装置

【課題】傾斜センサや手ぶれ補正機構などを使用せずにカメラの姿勢を検出する。
【解決手段】ズームレンズ4を基準位置センサの位置まで移動させ、基準位置センサから出力される信号の出力レベルが切り替わったタイミングでパルスカウント値P1、トルク値T2をメモリ12に格納する。基準位置センサから出力される信号の出力レベルが切り替わるとズームレンズ4の移動方向を反転させる。反転後、基準位置センサから出力される信号の出力レベルが切り替わったタイミングでパルスP2、トルク値P2をメモリ12に格納する。メモリ12に格納したパルスカウント値P1,P2の差分PBK(ガタパルス)から撮像装置の姿勢が正姿勢であるか否かを判断し、正姿勢でないと判断した場合はトルク値T1、T2から撮像装置の姿勢が上姿勢であるか下姿勢であるかを判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体の光学像を撮影する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ(以下、単にカメラとも記載する。)が広く普及し、様々な撮影シーンや用途で使用されている。撮影シーンの一例として、水中撮影や花火撮影等がある。このような場合、カメラを上方向や下方向に傾けて撮影を行うことが一般的である。
【0003】
一方、この種のカメラには、ズームレンズが備えられている。このズームレンズを駆動させることで焦点距離を変更させることができる。
【0004】
ズームレンズの駆動方法としてDC(Direct Current)モータ等の駆動パルスに同期して回転するモータを備えるアクチュエータを用いる場合がある。このようなアクチュエータの場合、モータに接続された回転するギヤとそれに噛み合うカム枠等によって構成されたレンズ駆動機構によってレンズを光軸方向に沿って駆動させる方法が多く用いられている。
【0005】
このようなレンズ駆動機構において、アクチュエータを構成する部品間に生じる圧力や摩擦力が変化する事などに起因してズームガタが発生する。ズームガタとは、ネジや歯車等の噛み合わせ部分に生じる隙間のことをいう。ズームガタの影響でズームレンズが本来配置されるべき合焦位置からずれた位置に配置されてしまう現象が発生し問題となっている。
【0006】
このズームガタは、カメラの姿勢によってガタ量、即ち、ガタの大きさが変化するため、カメラの姿勢に応じてズームレンズの位置ずれ量が異なる。
【0007】
このズームガタによるズームレンズの位置ずれを解消するために、カメラ内に傾斜センサを設置し、この傾斜センサの検知結果に基づきカメラの姿勢を判断し、この判断結果に基づいてレンズの位置補正を行う方法がある。しかし、カメラの姿勢を判断するためにカメラ内に傾斜センサを設置することは、カメラ製造のコストアップに繋がる。
【0008】
そこで、傾斜センサを使用せずにカメラの姿勢を検出する発明が提案されている。例えば、特許文献1では、光学式手ぶれ補正機構を利用して、カメラの姿勢を検出する内容が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007-150996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示されている発明は、光学式手ぶれ補正機構を備えていることが前提となる。そのため、例えば、電子式手ぶれ補正が採用されているカメラ等、光学式手ぶれ補正機構を備えていないカメラでは、傾斜センサを使用せずにカメラの姿勢を検出することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本願の発明にかかる撮像装置は、ズームレンズ、ズームレンズを光軸に沿って移動させるモータ、ズームレンズの位置を検出する位置検出センサ、モータの回転に関連する情報を取得する第1取得手段、自装置の姿勢を検出する姿勢検出手段、を備える。
【0012】
モータは、ズームレンズを第1方向に移動させる第1駆動を実行し、位置検出センサが、第1駆動中のズームレンズが所定の位置に到達したことを検出したときに、ズームレンズを第1方向とは反対の第2方向に移動させる第2駆動を実行し、第1取得手段は、第1駆動中のズームレンズが所定位置に到達したときのモータの回転に関連する情報を第1回転情報として取得し、第2駆動中のズームレンズが所定位置に到達したときのモータの回転に関連する情報を第2回転情報として取得し、記姿勢検出手段は、第1回転情報及び第2回転情報に基づいて自装置の撮影方向を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、傾斜センサや光学式手ぶれ補正機構等を備えていなくてもカメラの姿勢を検出することができ、カメラ製造にかかるコストアップを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る撮像装置1の構成の概略を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る撮像装置1の撮影時の処理動作の概略を示すフローチャートである。
【図3】アクチュエータ10及びレンズ位置検出部の構成の概略を示す図解図である。
【図4】レンズ位置検出部の構成の概略を示す図解図である。
【図5】ズームレンズの移動とパルスカウント値の関係を示す図解図である。
【図6】姿勢検出処理の処理動作を示すフローチャートである。
【図7】姿勢検出処理の処理動作を示す他のフローチャートである。
【0015】
<第1の実施の形態>
本発明をデジタルムービーカメラやデジタルスチルカメラ等の撮像装置に実施した第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(撮像装置の構成)
図1は、本実施の形態にかかる撮像装置1の構成の概略を示すブロック図である。図1の撮像装置1は、撮像素子(イメージセンサ)2、被写体の光学像を撮像素子2に結像させるズームレンズ4、被写体にピントを合わせる為のフォーカスレンズ6、露光量を調整するための絞り8、ズームレンズ4、及びフォーカスレンズ6をそれぞれ駆動させるためのアクチュエータ10を備える。
【0016】
また、図1の撮像装置1は、撮像素子2からから出力されるフレーム画像等を一時記録するメモリ12、メモリ12に一時記録されたフレーム画像に色補間処理、ホワイトバランス調整、ノイズリダクション処理等の各種信号処理を施す信号処理部14、信号処理部14で処理されたフレーム画像が静止画を撮影したものである場合はJPEG(Joint Photographic Experts Group)方式、動画を撮影したものである場合はMPEG(Moving Picture Experts Group)方式などにより該フレーム画像に圧縮符号化処理を施し圧縮画像信号を生成する画像コーデック部16、フレーム画像を表示する表示部18、撮影されたフレーム画像を記録する記録媒体20、撮像装置1の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)24、撮像装置1に対するユーザからの操作を受け付け、当該操作に応じた指示をCPU24に与える操作部22、を備えている。
【0017】
また、図1の撮像装置1は、ズームレンズ4の位置を検出するレンズ位置検出部26をさらに備える。
【0018】
尚、記録媒体20は、DVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクやHDD(Hard Disk Drive)等の磁気記録媒体でも良い。
【0019】
撮像素子2は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の固体撮像素子を備える。
【0020】
アクチュエータ10は、例えば、DC(Direct Current)モータやステッピングモータ等で駆動される。
【0021】
メモリ12は、例えば、VRAM(Video Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、或いはSDRAM(Synchronous DRAM)などの一般的に用いられているメモリが使用される。
【0022】
記録媒体20は、例えばフラッシュメモリや内蔵型HDD(Hard Disk Drive)などの撮像装置1に内蔵される内部記録媒体、或いはSDメモリカードやメモリスティック(登録商標)外付けHDDなどの撮像装置1への着脱が自在な外部記録媒体が使用される。
表示部18は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)モニタや有機EL(Electro-Luminescence)モニタが使用される。
(撮像装置1の基本撮影動作)
次に、図2を参照して、この撮像装置1の静止画撮影時の基本動作についてフローチャートを用いて説明する。ユーザによって撮像装置1の電源がオンにされると、撮像装置1の駆動モードつまり撮像素子2の駆動モードがプレビューモードに設定される(S201)。
プレビューモードとは、撮影対象となる画像を記録することなく表示部18に表示するモードであり、撮影対象を定め、構図を決定するために用いることができる。続いて撮影モードの入力待ち状態となり、人物撮影に適したモード、移動物体の撮影に適したモード、逆光での撮影に適したモード等、撮像装置1の機能や撮影シーンに応じたモードが選択される。
このとき、スルー画像処理と並行して、後述する姿勢検出処理を実行し、撮像装置1の姿勢を検出する(S203)。撮影モードが入力されない場合は通常撮影モードが選択されたものとする。
【0023】
プレビューモードでは、撮像素子2の光電変換動作によって得られたアナログの画像信号が、AFE(Analog Front End:図示せず。)においてデジタル画像信号に変換されて、信号処理部14で色分離、ホワイトバランス調整、YUV変換などの画像処理が施され、メモリ12に書き込まれる。メモリ12に書き込まれた画像信号は、逐次、表示部18に表示される。
この結果、所定期間毎(例えば、1/30秒毎や1/60秒毎)に撮影領域を表すリアルタイム動画像(プレビュー画像)が表示部18に逐次表示される。
続いてユーザが、撮影の対象とする被写体に対して所望の画角となるように、光学ズームでのズーム倍率を設定する(S205)。この時、姿勢検出処理による検出結果に基づき、ズームレンズ4の位置補正が行われる。
その際、信号処理部14に入力された画像信号に基づきCPU24によってフォーカスレンズ6及び絞り8を制御して、最適な露光制御(Automatic Exposure;AE)・焦点合わせ制御(Automatic Focus;AF)が行われる(S207)。
焦点合わせ制御は、例えば、山登りAF制御で行われる。山登りAF制御とは、撮像素子2で受光した被写体像の画像信号に含まれる輝度信号の高域周波数成分を検出し、この輝度信号の高域周波数成分の積算値(以下、AF評価値と記載する。)を取得し、このAF評価値が最大となるフォーカスレンズ位置、即ちピーク位置を探索し、この位置にフォーカスレンズ6を配置するように制御する方法である。
AF評価値の取得は、通常、撮像装置1が捉えている撮影領域の画像信号全体に対して行われることは無く、画像信号内にフォーカスエリアを設定し、該フォーカスエリア内でAF評価値を取得する場合が多い。
ユーザが撮影画角、構図を決定し、操作部22のシャッタボタンを半押しすると(S209でYes)、AEの調整を行い(S211)、AFの最適化処理を行う(S213)。
【0024】
その後、シャッタボタンが全押しされると(S215でYes)、TG(Timing Generator:図示せず。)より、撮像素子2、AFE、信号処理部14、及び画像コーデック部16のそれぞれに対してタイミング制御信号が与えられ、各部の動作タイミングを同期させ、撮像素子2の駆動モードを静止画撮影モードに設定し(S217)、撮像素子2から出力されるアナログ画像信号をAFEでデジタル画像信号に変換して信号処理部14内のフレームメモリに書き込む(S219)。
このデジタル画像信号がこのフレームメモリから読み込まれ、信号処理部14において輝度信号及び色差信号の生成を行う信号変換処理、などの各種画像処理が施される。
画像処理が施されたデジタル信号は、画像コーデック部16においてJPEG(Joint Photographic Experts Group)形式に圧縮された(S221)後、記録媒体20に書き込まれて(S223)、撮影が完了する。その後、プレビューモードに戻る。
(姿勢検出処理)
ここで、この撮像装置1の姿勢検出処理について説明する。図3は、ズームレンズ4の動作を示す模式図である。
【0025】
アクチュエータ10は、モータM、ギヤG、カム枠C、及びカムリングRを備える。モータMはトルク値を測定するトルクセンサー、及びモータMの回転数をパルスに変換するパルスエンコーダ(いずれも図示せず。)を備える。
【0026】
トルクセンサーは、モータMのトルク値を測定でき、パルスエンコーダは、モーターの回転数を矩形波(パルス)に変換し、出力できる。
【0027】
モータMを回転させると、モータMの回転がギヤGを介してカム枠Cに伝わりカム枠Cが回転する。ズームレンズ4は、カム枠Cの回転がカムリングRに伝わることで移動する。このギヤGとカム枠Cとの間やカム枠CとカムリングRとの間にズームガタが発生する。
【0028】
レンズ位置検出部26は、基準位置センサ262、及び遮光板261を備える。基準位置センサ262は、例えば、レンズ鏡筒等に固定されている。遮光板261は、ズームレンズ4に固定されており、ズームレンズ4が光軸と平行方向に移動すると、それと一体に移動するようになっている。
【0029】
図4は基準位置センサ262を図3の矢印Xの方向から見た場合の形状を示す図解図である。基準位置センサは略U字状の形状をしており、発光部262a及び受光部262bは略対向する位置関係で配置されている。また、発光部262a及び262bの間には遮光板261が介挿可能な隙間が設けられている。
【0030】
そして、遮光板261が基準位置センサ262の発光部と受光部との間の光路を遮ったとき、受光部の出力信号はハイ(High)レベルになり、遮らないときはロー(Low)レベルになる。従って、受光部の出力信号が変化する位置を基準位置として、ズームレンズ4が基準位置に存在するか否かを検出することができる。
【0031】
CPU24は、この基準位置と、レンズ移動速度、レンズ移動方向などにより、ズームレンズ4の位置を認識することができる。尚、説明の便宜上、本実施例では、姿勢検出処理開始時に、ズームレンズ4は基準位置にないものとして説明する。
【0032】
撮像装置1が撮影モードに設定されると、CPU24及びアクチュエータ10はサーボ制御を実行する。サーボ制御とは、パルスエンコーダから出力されるパルスの周期が所定の周期となるようにモータMへの通電電圧を調節する制御である。ズームレンズ4はパルスが発生する毎に所定量ずつ(例えば、1パルスで4μmなど。)移動する。
【0033】
サーボ制御が完了すると、CPU24はズームレンズ4を基準位置に移動させる命令をアクチュエータ10に与えると共にパルスエンコーダから出力されるパルス発生回数のカウントを開始する。パルス発生回数のカウント基準は、例えば、1周期で1回とカウントする。
【0034】
アクチュエータ10は、CPU24から出力される命令を受けてズームレンズ4を基準位置に移動させる。ズームレンズ4が基準位置に移動したか否かは基準位置センサ262から出力される信号がハイレベルであるかローレベルであるかで判断できる。
【0035】
CPU24は、基準位置センサ262から出力される信号が切り替わったこと、即ち、基準位置センサ262から出力される信号がローレベルからハイレベルに切り替わったことを検出すると、信号レベルが切り替わったときのトルク値T1及びパルスカウント値P2を、それぞれメモリ12に格納する。
【0036】
この時、レンズの移動方向が望遠側から広角側への移動であった場合はT1=WT、レンズの移動方向が広角側から望遠側への移動であった場合はT1=TTとしてメモリ12に格納される。
【0037】
次にCPU24は、ズームレンズ4の移動方向を反転させる命令をアクチュエータ10に与える。即ち、上述の移動方向が望遠側から広角側への移動であった場合は広角側から望遠側へ移動させる命令を与え、上述の移動方向が広角側から望遠側への移動であった場合は望遠側から広角側へ移動させる命令を与える。
【0038】
そしてCPU24及びアクチュエータ10はズームレンズを反転移動させる。この時、パルスの発生周期を変化させず、パルス数のカウントを継続する。そして、再度基準位置センサ262から出力される信号が切り替わったこと、即ち、基準位置センサ262から出力される信号がハイレベルからローレベルに切り替わったことを検出すると、信号が切り替わったときのトルク値T2及びパルスカウント値P2を、それぞれメモリ12に格納する。レンズの移動方向が広角側への移動であった場合はT2=WT、レンズの移動方向が望遠側への移動であった場合はT2=TTとしてメモリ12に格納される。
【0039】
尚、ズームレンズ4が基準位置を通り過ぎてしまうことで、ズームレンズ4の移動方向を反転させる前に、基準位置センサ262から出力される信号がハイレベルからローレベルに切り替わってしまう場合がある。
【0040】
このような場合、ズームレンズ4の方向が反転した後、最初に基準位置センサから出力される信号がハイレベルからローレベルに切り替わったときのパルスカウント値及びトルク値をそれぞれP2、T2としてメモリ12に格納する。
【0041】
次にCPU24は、メモリ12に格納されたトルク値及びパルスカウント値の比較を行う。尚、以下では説明の便宜上、レンズの移動方向が反転する前のレンズ移動を望遠側から広角側への移動、即ち、T1=WTとし、レンズの移動方向が反転した後のレンズ移動を広角側から望遠側への移動、即ち、T2=TTであるものとする。
【0042】
CPU24は、測定したパルスカウント値P1、P2からガタパルスPBKを導出する。ガタパルスとはズームガタの影響により発生する余計なパルスの事である。ここで、ズームガタとパルスカウント値の関係について説明する。図5はズームレンズの移動とパルスカウント値の関係を示す図解図である。
【0043】
図4の矢印はズームレンズ4の移動方向、矢印内の数字はパルスカウント値を示している。上述の通り、ズームレンズ4はパルスが発生する毎に所定量ずつ移動する。図4では、6回目のパルスが発生した時に、遮光板261が基準位置センサ262が配置されている位置に到達し、基準位置センサ262から出力される信号がローレベルからハイレベルに切り換わる。即ち、パルスカウント値P1=6である。
【0044】
次に、アクチュエータ10はCPU24から出力される命令を受けて、ズームレンズ4の移動方向を反転させる。この時、アクチュエータ10は、ギヤGとカム枠Cの噛み合わせ部分やカム枠CとカムリングRの噛み合わせ部分にズームガタが発生しており、パルスが発生、即ち、モータMが回転しても、その回転がギヤGからカム枠C、或いは、カム枠CからカムリングLに伝わらず、ズームレンズ4が移動しない期間(パルスカウント値=7〜9の間。)が発生する。
【0045】
そして、このズームガタが解消されるとズームレンズ4は移動を開始し、パルスが発生する毎に所定量ずつ移動する。図4では、10回目のパルスが発生した時に、遮光板261が基準位置センサ262が配置されている位置から移動し、基準位置センサ262から出力される信号がハイレベルからローレベルに切り換わる。即ち、パルスカウント値P2=10である。このP1とP2の差分、即ち、P2−P1=4がガタパルスPBKである。
【0046】
CPU24は、ガタパルスPBKを算出すると、PBKが所定の閾値TH1、TH2(TH1<TH2)の範囲内である否かを判別する。このTH1、TH2は撮像装置の姿勢が正姿勢(換言すると、レンズ鏡筒の光軸方向が重力の生じる方向に対して略垂直である状態。)である場合に生じ得るガタパルスの範囲を示しており、予めメモリ12に格納されている。
【0047】
撮像装置1が正姿勢であれば、ズームレンズ4の移動方向を反転させる前もズームレンズ4の移動方向を反転させた後もアクチュエータ10の各部品間に生じる摩擦や圧力、負荷等は略同一であり、また、ズームレンズ4が自重で自走することもない。そのため、撮像装置が正姿勢である場合は常に略一定値のガタパルスしか発生しない。
【0048】
従って、ガタパルスPBKがTH1<PBK<TH2を満たす場合は、撮像装置1の姿勢は正姿勢であると判断する。CPU24は、この判断結果に基づきズームレンズ4の位置補量を決定する。一方、ガタパルスPBKがTH1<PBK<TH2を満たさない場合は、撮像装置1の姿勢は正姿勢ではないと判断する。
【0049】
しかしながら、ガタパルスPBKの値を比較しただけでは、撮像装置1の姿勢が正姿勢であるか否かは判別できるが、撮像装置1の姿勢が上姿勢(換言すると、レンズ鏡筒の光軸方向が重力の生じる方向と略反対方向である場合。)下姿勢(換言すると、レンズ鏡筒の光軸方向が重力の生じる方向と略同方向である場合。)であるかまでは判断できない。そこで、トルク値T1、T2を用いて撮像装置1が上姿勢であるか下姿勢であるかの判断を行う。
【0050】
撮像装置1の姿勢が正姿勢ではないと判断された場合、CPU24は、メモリ12に格納されたトルク値T1、T2をメモリ12から読み出し、大小関係を比較する。
【0051】
例えば、カメラの姿勢が上姿勢であった場合、望遠側から広角側へズームレンズ4を移動させたときは、ズームレンズ4の自重がズームレンズ4の移動方向と略同一方向に加わり、ズームレンズ4が自重により自走するため、アクチュエータ10を構成する部品間に生じる圧力や摩擦力は小さくなる。
【0052】
一方、ズームレンズ4を広角側から望遠側へ移動させたときは、ズームレンズ4の自重がズームレンズ4の移動方向と略反対方向に加わり、ズームレンズ4の自重分だけ負荷が大きくなるため、アクチュエータ10を構成する部品間に生じる圧力や摩擦力は大きくなる。
【0053】
そのため撮像装置1が上姿勢である場合は、ズームレンズを望遠側から広角側へ移動させる場合のトルク値よりも、ズームレンズ4を広角側から望遠側に移動させる場合のトルク値の方が大きくなる。
【0054】
従って、T1>T2である場合は、WT>TTとなり、撮像装置1は下姿勢であると判断する。一方、T1<T2である場合は、WT<TTとなり、撮像装置1は上姿勢であると判断する。CPU24は、この判断結果に基づきズームレンズ4の位置補正量を決定する。
【0055】
図6及び図7を参照して姿勢検出処理を行う場合のCPU24の処理動作を説明する。ステップS401では、ズームレンズを基準位置に移動させると共にパルス発生回数のカウントを開始する。
【0056】
ステップS403では、基準位置センサ262から出力される信号の出力レベルが切り替わったか否かを検出する。基準位置センサ262から出力される信号の出力レベルが切り替わった場合はステップS405に進み、そうでない場合はステップS403を繰り返す。
【0057】
ステップS405では、パルスカウント値P1およびトルク値T1をメモリ12に格納する。パルスカウント値P1及びトルク値T1をメモリ12に格納したらステップS407に進む。
【0058】
ステップS407では、ズームレンズの移動方向を反転させる。ステップS409では、基準位置センサ262から出力される信号の出力レベルが切り替わったか否かを検出する。基準位置センサ262から出力される信号の出力レベルが切り替わった場合はステップS411に進み、そうでない場合はステップS409を繰り返す。
【0059】
ステップS411では、パルスカウント値P2およびトルク値T2をメモリ12に格納する。パルスカウント値P2及びトルク値T2をメモリ12に格納したらステップS413に進む。
【0060】
ステップS413では、パルスカウント値P1、P2をメモリ12からそれぞれ読み出し、ガタパルスPBKを導出する。ステップS415では、ステップS413で導出したガタパルスPBKがTH1<PBK<TH2を満たすか否かを判別する。PBKがTH1<PBK<TH2を満たす場合はステップS417に進み、そうでない場合はステップS419に進む。
【0061】
ステップS417では、撮像装置1の姿勢は正姿勢であると判断し、ステップS427に進む。ステップS419では、トルク値T1、T2をメモリ12からそれぞれ読み出し、T1、T2の大小関係を比較する。
【0062】
ステップS421では、ステップS419の大小関係の比較を行った結果、WTがTTを下回るか否かを判別する。WTがTTを下回る場合はステップS423に進み、そうでない場合はステップS425に進む。
【0063】
ステップS423では、撮像装置1の姿勢は上姿勢であると判断し、ステップS427に進む。ステップS425では、撮像装置1の姿勢は下姿勢であると判断し、ステップS427に進む。
【0064】
ステップS427では、姿勢判断結果に基づいてズームレンズ4の位置補正量を決定する。ズームレンズ4の位置補正量を決定したら姿勢検出処理を終了する。
【0065】
上記実施の形態では、トルク値を2度取得し、取得された2つのトルク値を比較することで、撮像装置1が上姿勢であるか下姿勢であるか判断しているが、例えば、予め正姿勢時のトルク値Tをメモリ12又は記録媒体20に格納しておき、このトルク値Tを使用して、撮像装置1が上姿勢であるか下姿勢であるかを判断するようにしても良い。
【0066】
この場合、ズームレンズを広角側に移動させる時か、望遠側に移動させる時のどちらか一方のトルク値を取得し、正姿勢時のトルク値との比較を行えば良い。
【0067】
例えば、ズームレンズを広角側に移動させる時のトルク値を取得した場合は、WT<Tであれば、撮像装置1は上姿勢であり、WT>Tであれば撮像装置1は下姿勢であると判断できる。
【0068】
また、上記実施の形態では、説明の便宜上、姿勢検出処理開始時にズームレンズが基準位置にないものとして説明してきたが、姿勢検出処理開始時にズームレンズが基準位置にある場合は、基準位置センサ262から出力される信号の出力レベルがハイレベルからローレベルに切り替わった時と、基準位置センサ262から出力される信号の出力レベルがローレベルからハイレベルに切り替わった時のパルスカウント値及びトルク値をメモリ12に格納するようにすれば良い。
【0069】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
2 撮像素子
4 ズームレンズ
6 フォーカスレンズ
8 絞り
10 アクチュエータ
12 メモリ
14 信号処理部
16 画像コーデック部
18 表示部
20 記録媒体
22 操作部
24 CPU
26 レンズ位置検出部
261 遮光板
262 基準位置センサ
262a 発光部
262b 受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズームレンズ、
前記ズームレンズを光軸に沿って移動させるモータ、
前記ズームレンズの位置を検出する位置検出センサ、
前記モータの回転に関連する回転情報を取得する第1取得手段、
自装置の姿勢を検出する姿勢検出手段、
を備え、
前記モータは、前記ズームレンズを第1方向に移動させる第1駆動を実行する一方、
前記位置検出センサが、前記第1駆動中の前記ズームレンズが所定位置に到達したことを検出したときに、前記ズームレンズを前記第1方向と正反対の第2方向に移動させる第2駆動を実行し、
前記第1取得手段は、前記第1駆動中の前記ズームレンズが前記所定位置に到達したときの前記回転情報を第1回転情報として取得し、前記第2駆動中の前記ズームレンズが前記所定位置に到達したときの前記回転情報を第2回転情報として取得し、
前記姿勢検出手段は、前記第1回転情報及び前記第2回転情報に基づいて自装置の撮影方向を検出する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記姿勢検出手段は、前記第1回転情報及び前記第2回転情報から、前記第1駆動中に前記ズームレンズが所定位置に到達したことが検出された後、前記第2駆動中に前記ズームレンズが前記所定位置に到達したことが検出されるまでの期間における回転情報を第3回転情報として導出し、該第3回転情報に基づいて前記自装置の撮影方向が略水平方向であるか否かを検出する
ことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記モータのトルク値を取得する第2取得手段を備え、
前記第2取得手段は、前記第1駆動中の前記ズームレンズが前記所定位置に到達したときの前記モータのトルク値を第1トルク値として取得し、前記第2駆動中の前記ズームレンズが前記所定位置に到達したときの前記モータのトルク値を第2トルク値として取得し、
前記姿勢検出手段は、前記第1トルク値及び前記第2トルク値に基づいて自装置の撮影方向が水平方向に対して上方向であるか下方向であるかを検出する
ことを特徴とする請求項1乃至2記載の撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−215661(P2012−215661A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79767(P2011−79767)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】