説明

撮像装置

【課題】調光素子を含む鏡筒装置を用いた場合において小型化を図ることが可能な撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置1は、入射した撮像光をその光路を屈曲させて出射する鏡筒装置2と、鏡筒装置2から出射された撮像光を検出して撮像信号を取得する撮像素子3とを備えている。鏡筒装置2は、撮像光の光路の屈曲領域に、調光素子(液晶調光素子26)を有している。鏡筒装置内の撮像素子3側の領域(屈曲領域と撮像素子3との間の光路上)に調光素子が配置されている従来の撮像装置と比べ、調光素子の配置スペースの分、撮像素子3へ至るまでの撮像光の光路長(レンズ長)が短くて済むようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲型(折り曲げ型)の鏡筒装置を備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ(デジタルスチルカメラ)等の撮像装置では、小型化(薄型化)を図るため、一般に屈曲型(折り曲げ型)の鏡筒装置(レンズ鏡筒装置)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。この屈曲型の鏡筒装置では、対物レンズの後方(光出射側)にプリズムが配設されており、このプリズムを用いて撮像光の光路を90°屈曲させる(折り曲げる)ようになっている。
【0003】
このような屈曲型の鏡筒装置内には、通常、撮像素子において検出される撮像光の光量を調整する調光素子として、機械的に調光動作(光量調整)を行うアイリス絞りが設けられている。ところが、このアイリス絞りを調光素子として用いた場合、アイリス羽根(絞り羽根)とその駆動機構との設置スペースがそれぞれ大きくなることから、鏡筒装置の小型化(薄型化)を図る上で不利となってしまう。また、この他にもアイリス絞りでは、小絞りの際の回折劣化による解像度の低下が問題視されている。
【0004】
そこで、このような機械式のアイリス絞りの代替手段として、二色性色素を含有するゲスト−ホスト(GH)型の液晶を用いた電気式の調光素子(液晶調光素子)が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−26007号公報
【特許文献2】特開2002−82358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の屈曲型の鏡筒装置では、鏡筒装置内の撮像素子側の領域(プリズムと撮像素子との間の光路上)に、上記した液晶調光素子が配置されている。すなわち、従来のアイリス絞りの設置領域に、そのまま液晶調光素子が配置されている。
【0007】
このため、機械式のアイリス絞りと比べれば鏡筒装置の小型化(薄型化)が図られるものの、更なる小型化を実現するには不十分であり、改善の余地があった。具体的には、従来の構成では、液晶調光素子自身をその構成部材等の最適化によってどんなに薄型化を実現したとしても、この液晶調光素子の配置スペースの分、撮像素子へ至るまでの撮像光の光路長(レンズ長)が長くなってしまう。このことから、従来の屈曲型の鏡筒装置を用いた撮像装置では、鏡筒装置内に調光素子を配置した場合、小型化を図るには限界があった。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、調光素子を含む鏡筒装置を用いた場合において小型化を図ることが可能な撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の撮像装置は、入射した撮像光をその光路を屈曲させて出射する鏡筒装置と、この鏡筒装置から出射された撮像光を検出して撮像信号を取得する撮像素子とを備えたものである。鏡筒装置は、上記光路の屈曲領域に調光素子を有している。
【0010】
本発明の撮像装置では、鏡筒装置へ入射した撮像光の光路を屈曲させる屈曲領域に、調光素子が設けられている。これにより、鏡筒装置内の撮像素子側の領域(上記屈曲領域と撮像素子との間の光路上)に調光素子が配置されている従来の撮像装置と比べ、調光素子の配置スペースの分、撮像素子へ至るまでの撮像光の光路長(レンズ長)が短くて済むようになる。
【0011】
本発明の撮像装置では、上記鏡筒装置が、筒状部材とこの筒状部材内の上記屈曲領域に配設されたプリズムとを有すると共に、上記調光素子が、筒状部材の内壁面とプリズムとの間隙に配置されているようにすることが可能である。このように構成した場合、上記した従来の撮像装置とは異なり、調光素子を配置するための専用スペース(専用の空間)が不要となる。すなわち、デッドスペースである筒状部材の内壁面とプリズムとの間隙に光調光素子が配置されているため、そのような専用スペースが不要となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の撮像装置によれば、鏡筒装置へ入射した撮像光の光路を屈曲させる屈曲領域に調光素子を設けるようにしたので、従来と比べて撮像光の光路長(レンズ長)を短く設定することができ、鏡筒装置の構造を小さくする(薄型化を図る)ことができる。よって、調光素子を含む鏡筒装置を用いた撮像装置において、小型化(薄型化)を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る撮像装置の外観構成例を表す斜視図である。
【図2】図1に示した鏡筒装置の外観構成例を表す斜視図である。
【図3】図1に示した鏡筒装置等における光学系の構成例を表す図である。
【図4】図3に示した鏡筒装置の一部を拡大して表す断面図である。
【図5】図4に示した液晶調光素子の詳細構成例を表す模式断面図である。
【図6】図1に示した撮像装置における制御処理部等の構成例を表すブロック図である。
【図7】図5に示した液晶調光素子の作用について説明するための模式断面図である。
【図8】図5に示した液晶調光素子における電圧印加率と透過率との関係の一例を表す特性図である。
【図9】比較例に係る鏡筒装置を備えた撮像装置における光学系の構成例を表す図である。
【図10】図9に示した鏡筒装置の一部を拡大して表す断面図である。
【図11】撮像装置起動後の経過時間と温度との関係の一例を表す特性図である。
【図12】変形例1に係る液晶調光素子の構成例を表す模式断面図である。
【図13】図12に示した液晶調光素子における電圧印加率と透過率との関係の一例を表す特性図である。
【図14】変形例2に係る鏡筒装置を備えた撮像装置における光学系の構成例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態(複数のレンズ群を有する鏡筒装置を備えた撮像装置の例)
2.変形例
変形例1(複数の液晶層が積層されてなる液晶調光素子の例)
変形例2(1つのレンズ群のみを有する鏡筒装置を備えた撮像装置の例)
【0015】
<実施の形態>
[撮像装置1の全体構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る撮像装置(撮像装置1)の全体構成(外観構成)を斜視図で表したものである。この撮像装置1は、被写体からの光学的な画像を撮像素子(後述する撮像素子3)によって電気的な信号に変換するデジタルカメラ(デジタルスチルカメラ)である。なお、このようにして得られた撮像信号(デジタル信号)は、半導体記録メディア(図示せず)に記録したり、液晶ディスプレイ等の表示装置(図示せず)に表示したりすることが可能となっている。
【0016】
撮像装置1では、本体部10(筐体)上に、レンズ部11、レンズカバー12、フラッシュ13および操作ボタン14が設けられている。具体的には、本体部10の前面(Z−X平面)に、レンズ部11、レンズカバー12およびフラッシュ13がそれぞれ配設され、本体部10の上面(X−Y平面)に操作ボタン14が配設されている。この撮像装置1はまた、本体部10内に、上記したレンズ部11を含む鏡筒装置2(レンズ鏡筒装置)と、撮像素子3と、図示しない制御処理部(後述する制御処理部4)とを備えている。なお、本体部10内には、これらの他にも、例えばバッテリーやマイクロフォン、スピーカー等(いずれも図示せず)が内蔵されている。
【0017】
鏡筒装置2は、後述するように入射した撮像光をその光路を屈曲させて出射する、いわゆる屈曲型(折り曲げ型)の鏡筒装置であり、これにより鏡筒装置2の薄型化(Y軸方向の薄型化)を図ることが可能となっている。この鏡筒装置2は、例えば図2に示したような外観構成からなる。すなわち、鏡筒装置2では、筒状部材20の上部(Z軸上の正方向の端部)に、上記したレンズ部11が配設されている。このレンズ部11は、後述する対物レンズとしてのレンズ21aと、本体部10の一部を構成するフロントフレーム110とからなる。なお、この鏡筒装置2の詳細構成については後述する(図3〜図5)。
【0018】
撮像素子3は、鏡筒装置2から出射された撮像光を検出して撮像信号を取得する素子である。この撮像素子3は、例えば、CCD(Charge-Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等のイメージングセンサーを用いて構成されている。
【0019】
レンズカバー12は、レンズ部11を外部から保護するための部材であり、図中の破線の矢印で示したように、Z軸方向に沿って移動することが可能となっている。具体的には、被写体の撮像時には、レンズ部11が外部に露出されるように、レンズカバー12がレンズ部11の下方に配置される。一方、撮像時以外のときには、レンズ部11が外部に露出されないように、レンズ部11の上方に配置されるようになっている。
【0020】
操作ボタン14は、ここでは、撮像装置1の電源をオン・オフさせるための電源ボタン14aと、被写体の撮像を実行するための記録ボタン14b(シャッターボタン)と、撮像信号に対して所定の像ぶれ補正を実行するための手ぶれ設定ボタン14cとからなる。なお、本体部10上に、これらに加えて(これらの代わりに)他の操作を行うためのボタンが設けられているようにしてもよい。
【0021】
[鏡筒装置2の詳細構成]
次に、図3〜図5を参照して、鏡筒装置2の詳細構成について説明する。図3は、鏡筒装置2における光学系の構成例を、撮像装置3等とともに表したものである。図4は、図3に示した鏡筒装置2の一部を拡大して表した断面図(Y−Z断面図)である。
【0022】
図3に示したように、鏡筒装置2は、5つのレンズ群(第1レンズ群21、第2レンズ群22、第3レンズ群23、第4レンズ群24および第5レンズ群)と、液晶調光素子26(調光素子)とを備えている。これら5つのレンズ群(群レンズ)のうち、第1レンズ群21は、Y軸に沿った光軸L1上およびZ軸に沿った光軸L2上に沿って配置され、第2〜第5レンズ群22〜25はそれぞれ、光軸L2上に沿って配置されている。また、第2〜第5レンズ群22〜25は、第1レンズ群21(液晶調光素子26)と撮像素子3との間の光路上において、第1レンズ群21側からこの順に配置されている。なお、ここでは、鏡筒装置2と撮像素子3との間(第5レンズ群25(後述するレンズ25b)と撮像素子3との間)には、所定の光学フィルム15が配置されている。
【0023】
第1レンズ群21は、光軸L上に配置されたレンズ21aと、プリズム21bと、光軸L2上に配置されたレンズ21cとからなる。レンズ21aは、前述したように対物レンズとして機能するレンズであり、被写体の撮像光が入射されるようになっている。プリズム21bは、鏡筒装置2内の屈曲領域(撮像光の光路の屈曲領域)に配置されており、撮像光の入射面(Z−X面)および出射面(X−Y面)と、傾斜面(後述する液晶調光素子26の載置面,形成面,反射面)とを有する三角柱状となっている。すなわち、このプリズム21bは、光軸L1に沿って入射する撮像光を、その光路を屈曲させた後に(折り曲げた後に)光軸L2に沿って出射させる直角プリズムである。これにより、鏡筒装置2が前述した屈曲型(折り曲げ型)の鏡筒装置として機能するようになっている。レンズ21cは、プリズム21bの出射面側に配置されたレンズである。なお、これに対してレンズ21aは、プリズム21bの入射面側に配置されている。
【0024】
第2レンズ群22は、光軸L2上に配置された2つのレンズ22a,22bからなる。これらのレンズ22a,22bはそれぞれ、例えば、光軸L2上をワイド方向(広角方向)およびテレ方向(望遠方向)に移動することが可能となっている。
【0025】
第3レンズ群23は、ここでは1つのレンズからなり、鏡筒装置2内で固定配置されている。
【0026】
第4レンズ群24は、ここでは1つのレンズからなり、光軸L2上を移動することが可能となっている。この第4レンズ群24を構成するレンズは、焦点距離を調整するため(合焦のため)に用いられるレンズ(フォーカスレンズ)である。
【0027】
第5レンズ群25は、光軸L2上に配置された2つのレンズ25a,25bからなる。レンズ25aは鏡筒装置2内で固定配置される一方、レンズ25b(補正レンズ)は、図中の矢印および破線で示したように、Y軸方向に移動可能に構成されている。
【0028】
ここで、第2レンズ群22および第4レンズ群24は、互いに独立して光軸L2に沿ってテレ方向およびワイド方向に移動することが可能となっている。第2レンズ群22および第4レンズ群24がテレ方向またはワイド方向に移動することにより、ズーム調整およびフォーカス調整がなされるようになっている。すなわち、ズーム時には、第2レンズ群22および第4レンズ群24がワイド(広角)方向からテレ(望遠)方向まで移動することによって、ズーム調整が行われる。また、フォーカス時には、第4レンズ群24がワイド方向からテレ方向まで移動することによって、フォーカス調整が行われる。
【0029】
(液晶調光素子26)
液晶調光素子26は、撮像光の光量を調整する素子(調光素子)であり、液晶を利用して電気的に光量調整(調光)を行うようになっている。この液晶調光素子26は、図3に示したように、前述した撮像光の光路の屈曲領域に配置されている。
【0030】
具体的には、図4に示したように、液晶調光素子26は、前述した入射面Sin、出射面Soutおよび傾斜面Ssを有するプリズム21bにおける傾斜面Ss上に配置(形成)されている。詳細には、液晶調光素子26は、筒状部材20の内壁面とプリズム21b(傾斜面Ss)との間隙部(間隙領域)20G(隙間,これらの間の空間領域)に配置されている。なお、図中に示したように、筒状部材20におけるプリズム21bの背面側(傾斜面Ss側)には、鏡筒装置2と撮像装置1の本体部10とを取り付ける際に用いられる位置決め孔20H(ボス穴)が、Y軸方向に沿って形成されている。
【0031】
図5は、液晶調光素子26の詳細な断面構成例(Y−Z断面構成例)を、プリズム21b等とともに模式的に表したものである。液晶調光素子26は、プリズム21b側から、透明電極261a、配向膜262a、液晶層260、配向膜262b、透明電極261bおよび透明基板263がこの順に積層された積層構造を有している。液晶調光素子26にはまた、シール剤265、スペーサー266および封止部267が設けられている。また、この液晶調光素子26のプリズム21と反対側(筒状部材20の内壁面側)には、反射膜27(反射部)が設けられている。換言すると、鏡筒装置2では、液晶調光素子26が、プリズム21と反射膜27との間に配置されている。
【0032】
液晶層260は液晶分子を含有する層であり、ここでは液晶分子に加えて所定の色素分子(二色性染料分子)を含有するようになっている(図5では図示の簡略化のため、液晶分子および色素分子をまとめて「分子M」として示している)。すなわち、液晶調光素子26は、色素(二色性色素)を含有するゲスト−ホスト(GH)型の液晶を用いて構成されている。
【0033】
このようなGH型の液晶(GH型液晶)は、電圧印加時における液晶分子の長軸方向の相違により、ネガ型のものとポジ型のものとに大別される。ポジ型のGH型液晶は、電圧無印加時には液晶分子の長軸方向が光軸に対して垂直となり、電圧印加時には液晶分子の長軸方向が光軸に対して平行となるものである。一方、ネガ型のGH型液晶は、逆に、電圧無印加時には液晶分子の長軸方向が光軸に対して平行となり、電圧印加時には液晶分子の長軸方向が光軸に対して垂直となるものである。ここで、色素分子は液晶分子と同じ方向(向き)に配向するため、ポジ型の液晶をホストとして用いた場合には、電圧無印加時には光透過率が相対的に低くなり(光出射側が相対的に暗くなり)、電圧印加時には光透過率が相対的に高くなる(光出射側が相対的に明るくなる)。一方、ネガ型の液晶をホストとして用いた場合には、逆に、電圧無印加時には光透過率が相対的に高くなり(光出射側が相対的に明るくなり)、電圧印加時には光透過率が相対的に低くなる(光出射側が相対的に暗くなる)。なお、本実施の形態では、液晶層260がポジ型およびネガ型のいずれの液晶によって構成されていてもよいが、以下では、液晶層260がネガ型の液晶からなる場合について代表して説明する。
【0034】
ここで、このような液晶層260では、プリズム21bと略同等(好ましくは同一)の光屈折率を有する液晶を用いて構成されているのが望ましい。換言すると、プリズム21bにおける光屈折率と液晶層260における光屈折率とが、略同等(好ましくは同一)の値となっているのが望ましい。これにより、プリズム21bと液晶調光素子26(液晶層260)との界面において撮像光が屈折(反射)され、撮像光の光路が光軸L1,L2からずれてしまうのが回避されるからである。なお、液晶調光素子26内の他の部材(透明電極261a,261bや配向膜262a,262b等)の光屈折率による影響については、以下の理由から実質的に考慮しなくてもよい。まず、これらの部材の厚みは、非常に小さい(数十nm〜数百nm程度)ためである。また、配向膜262a,262bの光屈折率は、液晶層260の光屈折率と同程度となるように設定されるのが一般的であり、透明電極261a,261bについては、それらの膜厚の調整によって容易に光屈折率の合わせ込みを行うことができるからである。
【0035】
透明電極261a,261bはそれぞれ、液晶層260に対して電圧(駆動電圧)を印加するための電極であり、例えば酸化インジウムスズ(ITO;Indium Tin Oxide)からなる。なお、これらの透明電極261a,261bと電気的に接続するための配線(図示せず)は、適宜配置すればよい。
【0036】
配向膜262a,262bはそれぞれ、液晶層260内の各液晶分子を所望の方向(配向方向)に配向させるための膜である。これらの配向膜262a,262bはそれぞれ、例えばポリイミド等の高分子材料からなり、予め所定の方向にラビング処理が施されることによって液晶分子の配向方向が設定されるようになっている。
【0037】
透明基板263は、透明電極261b、配向膜262bおよび反射膜27を支持すると共に液晶層260を封止するための一方側の基板であり、例えばガラス基板からなる。なお、ここでは、透明電極261aおよび配向膜262aを支持すると共に液晶層260を封止するための他方側の基板が、プリズム21bにより構成されているが、このプリズム21bの代わりに、プリズム21bと透明電極261aとの間に透明基板を更に設けるようにしてもよい。ただし、プリズム21bがこのような他方側の基板を兼ねている場合のほうが、液晶調光素子26の構成部材が少なくて済むため望ましいと言える。
【0038】
反射膜27は、透明基板263の筒状部材20(内壁面)側(液晶層260の反対側)に配置されており、詳細は後述するが、撮像光を反射(全反射)する機能を有する膜である。このような反射膜27は、例えばアルミニウム(Al)もしくは銀(Ag)、またはそれらの合金等の金属材料からなる。
【0039】
シール剤265は、液晶層260内の分子M(液晶分子および色素分子)を側面側から封止するための部材であり、例えばエポキシ接着剤やアクリル接着剤等の接着剤からなる。スペーサー266は、液晶層260におけるセルギャップ(厚み)を一定に保持するための部材であり、例えば所定の樹脂材料またはガラス材料からなる。封止部267は、液晶層260内に分子Mを封入する際の封入口であると共に、その後液晶層260内の分子Mを外部から封止する部分である。
【0040】
[制御処理部4のブロック構成]
続いて、前述した制御処理部4の構成について説明する。図6は、この制御処理部4のブロック構成を、鏡筒装置2および撮像素子3とともに表わしたものである。なお、鏡筒装置2の内部およびその周辺については、図示の簡略化のため、一部の構成のみ代表して示している。
【0041】
制御処理部4は、以下説明するように、撮像素子3において得られた撮像信号に対して所定の信号処理を行うと共に、鏡筒装置2内の液晶調光素子26に対して所定のフィードバック制御を行うものである。この制御処理部4は、S/H・AGC回路41、A/D変換部42、撮像信号処理部43、検波部44、マイコン(マイクロコンピュータ)45、温度センサー46および駆動部47を有している。
【0042】
S/H・AGC回路41は、撮像素子3から出力される撮像信号に対してS/H(サンプル・ホールド)処理を行うと共に、AGC(Automatic Gain Control)機能を用いた所定の信号増幅処理を行う回路である。
【0043】
A/D変換部42は、S/H・AGC回路41から出力される撮像信号に撮像信号に対してA/D変換(アナログ/デジタル変換)処理を行うことにより、デジタル信号からなる撮像信号を生成するものである。
【0044】
撮像信号処理部43は、A/D変換部42から出力される撮像信号(デジタル信号)に対して、所定の信号処理(画質改善処理等)を行うものである。このようにして信号処理がなされた後の撮像信号は、制御処理部43の外部(図示しない半導体記録メディア等)へ出力されるようになっている。
【0045】
検波部44は、A/D変換部42から出力される撮像信号(デジタル信号)について所定のAE検波を行い、そのときの検波値を出力するものである。
【0046】
温度センサー46は、液晶調光素子26の近傍(周辺領域)に配置されており、この液晶調光素子26の温度を検出するためのセンサーである。なお、このようにして検出された液晶調光素子26の温度情報は、マイコン46へ出力されるようになっている。
【0047】
マイコン45は、駆動部47に対して液晶調光素子26の制御信号(具体的には、電圧印加量)を供給することにより、液晶調光素子26の調光動作(光量調整動作)を制御するものである。具体的には、検波部44から供給される検波値に基づき、液晶調光素子26に対する電圧印加量を設定するようになっている。また、マイコン45は、図示しない記憶部(メモリ)上に予め保持された「温度と透過光量との対応関係」を示すデータを用いて、温度センサー46から出力される液晶調光素子26の温度情報を利用した所定の温度補正(電圧印加量の温度補正)を行う機能も有している。
【0048】
駆動部47は、マイコン46から供給される制御信号(電圧印加量)に基づいて、液晶調光素子26の駆動動作を行うものである。具体的には、図示しない配線を介して、液晶調光素子26内の透明電極261a,261b間に設定された電圧を印加するようになっている。
【0049】
[撮像装置1の作用・効果]
(1.撮像動作)
この撮像装置1では、図1に示した操作ボタン14がユーザ(使用者)によって操作されることにより被写体の撮像動作が行われ、撮像画像(撮像データ)が得られる。具体的には、図1〜図3に示したように、撮像光がレンズ部11を介して鏡筒装置2へ入射し、その撮像光の光路が鏡筒装置2内で屈曲された(折り曲げられた)後、撮像素子3へ出射されて検出される。鏡筒装置2内では、詳細には図3に示したように、まず、光軸L1に沿ってレンズ21a(対物レンズ)を介してプリズム21bへ入射した撮像光は、このプリズム21bの傾斜面Ss上の反射膜27において反射される。この反射光は、レンズ21cを介して光軸L2に沿って出射される。そして、反射光としての撮像光は、第2〜第5レンズ群22〜25をこの順に通過し、鏡筒装置2から出射される。この鏡筒装置2から出射された撮像光は、光学フィルム15を介して撮像素子3へ入射し検出される。このようにして撮像素子3において取得された撮像信号に対して、図6に示した制御処理部4は、前述した所定の信号処理を行う。また、この制御処理部4は、取得された撮像信号に基づいて、鏡筒装置2内の液晶調光素子26に対して、前述した所定のフィードバック制御を行う。
【0050】
このとき、液晶調光素子26では、詳細には図7に示したように、プリズム21bの入射面Sinから入射した撮像光(入射光Lin)が、このプリズム21bを介して液晶層260等を通過し、反射膜27において反射(全反射)される。そして、反射された撮像光は、再び液晶層260等を通過し、出射光Loutとしてプリズム21bの出射面Soutから出射される。この際に、液晶層260に対して所定の電圧(駆動電圧)が印加されると、分子M(液晶分子および色素分子)の配向方向(長軸方向)が変化し、それに応じて液晶層260を通過する撮像光の光量も変化する。したがって、このときの駆動電圧を調整することにより、液晶調光素子26全体を通過する撮像光の光量が、(機械的ではなく)電気的に調整可能となる(任意の調光動作が可能となる)。このようにして、鏡筒装置2内で撮像光に対する光量調整(調光)が行われる。
【0051】
ここで、図8は、液晶調光素子26における、電圧印加率(0%:電圧無印加状態、100%:最大電圧印加状態)と透過率(光透過率)との関係を示す一実施例を表したものである。この実施例では、液晶層260においてネガ型のGH型液晶を用い、電圧無印加状態(0V状態)における撮像光の透過光量を基準(100%)として示している。この図8により、電圧印加率が大きくなるのに応じて液晶層260での遮光量が急激に大きくなっていき(透過率が急激に低くなっていき)、電圧印加率=20%程度で透過率=50%程度(略一定値)に収束していることが分かる。すなわち、この実施例では、液晶調光素子26における調光範囲(調光レンジ,ダイナミックレンジ)は、約50%(透過率=100%〜50%の範囲)となっている。このような液晶調光素子26における透過率変化の際の値や傾き、調光範囲はそれぞれ、液晶層260(液晶および色素)の材料や濃度、液晶層260のセルギャップ(厚み)、配向膜262a,262bの種類(材料)等に応じて変化するようになっている。なお、液晶層260においてポジ型のGH型液晶を用いた場合には、図8の特性とは逆に、電圧無印加状態(電圧印加率=0%)で透過率が低く、電圧印加率が大きくなるのに応じて透過率が上昇していく傾向となる。
【0052】
(2.特徴的部分の作用)
次に、撮像装置1の特徴的部分の作用について、比較例と比較しつつ詳細に説明する。
【0053】
(比較例)
図9は、比較例に係る従来の鏡筒装置(鏡筒装置102)を備えた撮像装置(撮像装置101)における光学系の構成例を表したものである。また、図10は、この鏡筒装置102の一部を拡大して表した断面図(Y−Z断面図)である。この比較例に係る撮像装置101は、鏡筒装置102、光学フィルム15および撮像素子3を備えている。すなわち、図3に示した本実施の形態の撮像装置1において、鏡筒装置2の代わりに鏡筒装置102を設けたものとなっている。
【0054】
鏡筒装置102は、図3に示した本実施の形態の鏡筒装置2において、前述した液晶調光素子26の代わりに、機械式の調光素子(アイリス絞り)106を設けたものに対応している。したがって、図10に示したように、この鏡筒装置102では鏡筒装置2とは異なり、筒状部材20の内壁面とプリズム21b(傾斜面Ss)との間隙部20Gに、液晶調光素子26が配設されていない。一方、調光素子106は、ここでは第3レンズ群23と第4レンズ群24との間の光路(光軸L2)上に配置されている。
【0055】
このように、比較例の鏡筒装置102では、鏡筒装置102内の撮像素子3側の領域(屈曲領域と撮像素子3との間の光路上)に、調光素子106が配置されている。ところが、この機械式の調光素子106では、アイリス羽根(絞り羽根)とその駆動機構との設置スペースがそれぞれ大きくなることから、鏡筒装置102の小型化(薄型化)を図る上で不利となってしまう。
【0056】
そこで、機械式の調光素子106の代わりに、本実施の形態の液晶調光素子106のように、GH型の液晶を用いた電気式の調光素子(液晶調光素子)を配置することが考えられる。しかしながら、上記した調光素子106の設置領域にそのまま液晶調光素子を配置した場合、機械式の調光素子106と比べれば鏡筒装置102の小型化(薄型化)が図られるものの、更なる小型化を実現するには不十分である。具体的には、その構成では、液晶調光素子自身をその構成部材等の最適化によってどんなに薄型化を実現したとしても、この液晶調光素子の配置スペースの分、撮像素子へ至るまでの撮像光の光路長(レンズ長)が長くなってしまう。このため、比較例に係る屈曲型の鏡筒装置102を用いた撮像装置101では、鏡筒装置102内に調光素子を配置した場合に、小型化を図るには限界がある。
【0057】
また、上記のように、比較例の鏡筒装置102において、調光素子106の設置領域にGH型の液晶を用いた液晶調光素子を配置させた場合、撮像素子3における温度上昇の影響が大きくなってしまうという問題もある。具体的には、まず、GH型の液晶では、ホストとなる液晶が温度依存性を有するため、周囲の温度(環境温度)の変化に応じて、液晶の応答性や倒れ量(電圧印加の際の傾き角)が変化してしまうことが知られている。したがって、このようなGH型の液晶を用いた液晶調光素子では、光量調整(調光)動作の際に、様々な補正処理(温度補正処理)を行う必要が生じる。また、撮像素子3は、撮像装置101が起動している際には、非常に熱を発し易い(素子の温度が上昇し易い)。これらのことから、比較例の鏡筒装置102では、上記のように撮像素子3と調光素子106(液晶調光素子)との距離が近いため、撮像素子3からの熱の影響を受け易くなる(熱の影響を大きく受けてしまう)。したがって、上記した温度補正処理が複雑なものとなり、補正後の値と理想値との間に大きなずれが生じてしまう場合がある。
【0058】
(本実施の形態の作用)
これに対して本実施の形態の撮像装置1では、図4に示したように、鏡筒装置2において、鏡筒装置2へ入射した撮像光の光路を屈曲させる屈曲領域に、液晶調光素子26が設けられている。これにより、上記比較例の撮像装置101(鏡筒装置102)と比べ、調光素子の配置スペース(光軸L2上の設置スペース)の分、撮像素子3へ至るまでの撮像光の光路長(レンズ長)が短くて済むようになる。具体的には、上記比較例の撮像装置101とは異なり、調光素子を配置するための専用スペース(専用の空間)が不要となる。これは、屈曲型の鏡筒装置では一般に、本実施の形態の鏡筒装置2のように、筒状部材20におけるプリズム21bの背面側(傾斜面Ss側)には位置決め孔20Hが設けられているくらいであり、デッドスペースとなっているためである。すなわち、筒状部材20の内壁面とプリズム21bとの間隙部20G(プリズム21bの背面側)に液晶光調光素子26が配置されているため、そのような専用スペースが不要となる。また、鏡筒装置2では、機械式の調光素子ではなく電気式の調光素子(液晶調光素子26)を用いていることから、機械式の絞り機構(の設置スペース)も不要となる。
【0059】
更に、図3に示したように、本実施の形態の鏡筒装置2では、液晶調光素子26が撮像素子3から離れた位置(光軸L2上の最も遠い位置)に配置されているため、上記比較例の鏡筒装置102と比べ、前述した撮像素子3における温度上昇の影響が軽減される。具体的には、必要となる温度補正量が小さくて済むようになり、処理負担が大きくなりがちな温度補正処理が平易なものとなることから、補正後の値と理想値との間のずれが小さくなる(補正ずれが抑えられ、より適切な光量調整(調光)がなされるようになる)。
【0060】
ここで、図11は、撮像装置の起動後の経過時間と温度(調光素子または撮像素子3における温度)との関係を、本実施の形態の上記実施例および上記比較例と、参考例としての撮像素子3とについて表したものである。この図11により、参考例としての撮像素子3では、上記したように、起動後の時間経過に従って温度上昇が大きくなっていることが分かる(約25℃(室温)から約40℃まで上昇)。そして比較例では、そのような撮像素子3の温度上昇に伴って、調光素子106においても大きく温度が上昇していることが分かる(約25℃から約35℃まで上昇)。これに対して実施例では、液晶調光素子26が撮像素子3から離れた位置に配置されているため、ほとんど温度上昇が生じていないことが分かる(約25℃から約27℃への上昇)。
【0061】
以上のように本実施の形態では、鏡筒装置2へ入射した撮像光の光路を屈曲させる屈曲領域に調光素子(液晶調光素子26)を設けるようにしたので、従来と比べて撮像光の光路長(レンズ長)を短く設定することができ、鏡筒装置2の構造を小さくする(薄型化を図る)ことができる。よって、調光素子を含む鏡筒装置を用いた撮像装置において、小型化(薄型化)を図ることが可能となる。
【0062】
また、プリズム21bにおける光屈折率と液晶層260における光屈折率とが略同等の値となっているようにした場合には、液晶調光素子26内のガラス間多重反射が回避されるため、ゴーストやフレアの発生を回避することができ、素子に含まれるゴミや配向膜262a,262b内の傷、スペーサー266による撮像画像への悪影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0063】
更に、従来(比較例)の構成では、鏡筒装置の薄型化を図るには調光素子(液晶調光素子)自体を極力薄くすることが求められていたため、透明基板を構成するガラス部材も薄いものに限定されていた。これに対して、本実施の形態では、上記のようにプリズム21bの背面側(傾斜面Ss側)に液晶調光素子26を設けるようにしたので、厚みの大きい種類のガラス部材を透明基板として使用することができるようになる。また、位置決め孔20Hへの影響が生じなければ、ガラス部材の厚みは全く気にしなくてよいことになる。更に、従来のように薄いガラス部材を用いた場合には、歪みやニュートンリングの発生が問題となるが、厚みの大きいガラス部材を用いることができるため、歪み対策を行うことも可能となる。
【0064】
<変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1,2)について説明する。なお、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0065】
[変形例1]
図12は、変形例1に係る液晶調光素子(液晶調光素子26A)の断面構成例(Y−Z断面構成例)を、プリズム21bとともに模式的に表したものである。本変形例の液晶調光素子26Aでは、液晶層が1層(単層)構造(液晶層260)であった上記実施の形態の液晶調光素子26とは異なり、液晶層が2層(複数層)構造となっている。すなわち、液晶調光素子26Aでは、以下詳述するように、2層の液晶層260a,260bが積層されてなる。
【0066】
具体的には、液晶調光素子26Aは、プリズム21b側から、透明電極261a、配向膜262a、液晶層260a、配向膜262b、透明電極261b、透明基板263、透明電極261a、配向膜262a、液晶層260b、配向膜262b、透明電極261bおよび透明基板263がこの順に積層された積層構造を有している。この液晶調光素子26Aではまた、液晶調光素子26と同様に、液晶層260a,260bの側面側にそれぞれ、シール剤265、スペーサー266および封止部267が設けられている。更に、この液晶調光素子26Aのプリズム21と反対側(筒状部材20の内壁面側)にも、反射膜27が設けられている。換言すると、液晶調光素子26Aが、プリズム21と反射膜27との間に配置されている。
【0067】
液晶層260a,260bはそれぞれ、液晶層260と同様に、色素(二色性色素)を含有するGH型液晶を用いて構成されている。具体的には、液晶層260aは、分子Ma(液晶分子および色素分子)を含有し、液晶層260bは、分子Mb(液晶分子および色素分子)を含有している。なお、ここでは、液晶層260a内の分子Maと液晶層260b内の分子Mbとの間で、それらの配向方向(長軸方向)が互いに異なっているが、この場合には限られず、配向方向は任意に設定することが可能である。
【0068】
本変形例の液晶調光素子26Aにおいても、液晶調光素子26と同様の調光動作を行うことが可能である。すなわち、プリズム21bの入射面Sinから入射した撮像光(入射光Lin)は、このプリズム21bを介して液晶層260a,260b等をこの順に通過し、反射膜27において反射(全反射)される。そして、反射された撮像光は、再び液晶層260b,260a等をこの順に通過し、出射光Loutとしてプリズム21bの出射面Soutから出射される。そして、この際に液晶層260a,260bに対してそれぞれ所定の電圧(駆動電圧)が印加されると、分子Ma,Mb(液晶分子および色素分子)の配向方向(長軸方向)が変化し、それに応じて液晶層260a,260bを通過する撮像光の光量も変化する。したがって、液晶調光素子26Aにおいても、このときの液晶層260a,260bに対する駆動電圧をそれぞれ調整することにより、液晶調光素子26A全体を通過する撮像光の光量を電気的に調整可能となる。なお、液晶層260A,260bに対する駆動電圧(印加電圧)が互いに異なるようにした場合には、例えば、撮像光における特定方向の偏光(偏光成分)を意図的に弱めつつ、一定の光量を保持するといったことも可能となる。
【0069】
ただし、この液晶調光素子26Aは、上記したように、2層の液晶層260a,260bが積層されてなることにより、以下の効果も得られる。すなわち、まず、一般にGH型液晶では、ホストとしての液晶に溶ける色素の種類や溶解量には限界があるため、液晶調光素子における調光範囲(調光レンジ)もある程度限られたものとなることが知られている。ここで、ある一定濃度のGH型液晶を用いた場合、液晶層のセルギャップを増加させる(厚みを大きくする)ことによって調光範囲を増加させることが可能であるものの、セルギャップの増大は、液晶の応答速度に悪影響を及ぼしてしまう(液晶の応答速度が低下してしまう)。そこで、調光範囲を増加させるために偏光板を併用することが考えられるが、偏光板が固定(偏光軸が固定)されてしまうと、撮像装置におけるレンズのF値が低下してしまう。そのため、偏光板を光路に対して出し入れ可能(挿脱自体)に構成して用いることが現実的であるが、そのような構成の偏光板を併用した場合、鏡筒装置(ひいては撮像装置)の省スペース化(薄型化)を図ることが困難となってしまう。
【0070】
これに対して本変形例の液晶調光素子26Aでは、上記した2層構造の液晶層260a,260bからなることにより、液晶層自体のセルギャップ(厚み)はそのままで(変化させることなく)、液晶の応答速度も保持しつつ(低下させることなく)、調光範囲を増加させることが可能となる。
【0071】
図13は、実施の形態における図8と同様に、液晶調光素子26Aにおける電圧印加率と透過率との関係を示す一実施例を表したものである。この実施例においても、液晶層260a,260bにおいてそれぞれネガ型のGH型液晶を用い、電圧無印加状態(0V状態)における撮像光の透過光量を基準(100%)として示している。この図13により、電圧印加率=20%程度で透過率=25%程度(略一定値)に収束していることが分かる。すなわち、この実施例では、液晶調光素子26Aにおける調光範囲が約75%(透過率=100%〜25%の範囲)となっており、図8に示した液晶調光素子26の実施例と比べ、調光範囲が増加(約50%が約75%に増加、図中の矢印参照)していることが分かる。
【0072】
なお、本変形例では液晶層が2層構造となっている場合について説明したが、この場合には限られず、液晶調光素子内において液晶層が3層以上の積層構造となっているようにしてもよい。
【0073】
[変形例2]
図14は、変形例2に係る撮像装置(撮像装置1A)の概略構成を表したものである。本変形例の撮像装置1Aは、上記実施の形態の撮像装置1において、鏡筒装置2の代わりに、以下説明する本変形例に係る鏡筒装置(鏡筒装置2A)を設けたものとなっている。
【0074】
本変形例の鏡筒装置2Aは、鏡筒装置2において、第2レンズ群22、第3レンズ群23、第4レンズ群24および第5レンズ群25を省いた(設けないようにした)ものに対応している。すなわち、この鏡筒装置2Aは、1つのレンズ群(第1レンズ群21)のみを含んで構成されており、この第1のレンズ群21と、液晶調光素子26(または液晶調光素子26A)とを有している。
【0075】
したがって、本変形例の撮像装置1Aでは、鏡筒装置2A内のレンズ21cから出射した撮像光(反射光)は、そのまま直接、撮像素子3において検出されるか、または、光学フィルム15を介して撮像素子3において検出される。このように鏡筒装置では、液晶調光素子と撮像素子との間の光路上に、1または複数のレンズ群が設けられているようにすればよい。
【0076】
[その他の変形例]
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0077】
例えば、上記実施の形態等では、GH型の液晶を用いた液晶調光素子を例に挙げて説明したが、この場合には限られず、GH型の液晶以外の液晶を用いた液晶調光素子を用いるようにしてもよく、更には液晶調光素子以外の調光素子であってもよい。
【0078】
具体的には、液晶調光素子以外の調光素子としては、以下の方式の調光素子が挙げられる。すなわち、例えば、サーモクロミズム(実用例:マグカップ、ポリマーシート等)やサーモトロピックに使用されるゲル物質を用いた調光素子、フォトクロミック(実用例:紫外線によって変化するサングラス等)における材料を用いた調光素子、ガスクロミック(実用例:窓ガラス等)における水素ガス等を用いた調光素子、エレクトロクロミック(実用例:窓ガラス等)におけるWO3(酸化タングステン),Nb25(酸化ニオブ),NiO(酸化ニッケル),Cr23(酸化クロム)等を用いた調光素子などが挙げられる。これらの調光素子のうち、上記実施の形態等の構成と最も相関性(親和性)が高いものは、エクレトロクロミックを利用した調光素子である。この方式の調光素子の基本構成は、例えば、「透明ガラス」−「透明電極」−「エレクトロ区のミック材料(上記した物質が代表的)」−「固体電解質」−「イオンストレージ材料」−「透明電極」の順に積層された積層構造である。
【0079】
更に、上記実施の形態等では、鏡筒装置内の屈曲領域にプリズムが配置されている場合について説明したが、場合によっては、プリズム以外の光学部材(例えば、ミラーなど)が鏡筒装置内の屈曲領域に配設されているようにしてもよい。
【0080】
加えて、上記実施の形態等では、鏡筒装置や撮像装置等の各構成要素(光学系)を具体的に挙げて説明したが、全ての構成要素を備える必要はなく、また、他の構成要素を更に備えていてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1,1A…撮像装置、10…本体部、11…レンズ部、2,2A…鏡筒装置、20…筒状部材、20G…間隙部、20H…位置決め孔(ボス穴)、21…第1レンズ群、21b…プリズム、22…第2レンズ群、23…第3レンズ群、24…第4レンズ群、25…第5レンズ群、26,26A…液晶調光素子、260,260a,260b…液晶層、261a,261b…透明電極、262a,262b…配向膜、263…透明基板、265…シール材、266…スペーサー、267…封止部、27…反射膜(反射部)、3…撮像素子、4…制御処理部、L1,L2…光軸、Lin…入射光、Lout…出射光(反射光)、Sin…入射面、Sout…出射面、Ss…傾斜面、M,Ma,Mb…分子(液晶分子・色素分子)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した撮像光をその光路を屈曲させて出射する鏡筒装置と、
前記鏡筒装置から出射された撮像光を検出して撮像信号を取得する撮像素子と
を備え、
前記鏡筒装置は、前記光路の屈曲領域に調光素子を有する
撮像装置。
【請求項2】
前記鏡筒装置は、筒状部材と、この筒状部材内の前記屈曲領域に配設されたプリズムとを有し、
前記調光素子は、前記筒状部材の内壁面と前記プリズムとの間隙に配置されている
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記プリズムが、前記撮像光の入射面および出射面と傾斜面とを有する三角柱状である
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記調光素子は、前記内壁面と前記傾斜面との間隙に配置されている
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記鏡筒装置は、前記撮像光を反射させる反射部を有し、
前記調光素子が、前記プリズムと前記反射部との間に配置されている
請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記調光素子は、複数の液晶層が積層されてなる液晶調光素子である
請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記調光素子は、前記プリズムと略同等の光屈折率を有する液晶を用いて構成された液晶調光素子である
請求項5に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記調光素子は、二色性色素を含有するゲスト−ホスト(GH)型の液晶を用いて構成された液晶調光素子である
請求項5に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記鏡筒装置は、前記調光素子と前記撮像素子との間の光路上に、1または複数のレンズ群を有する
請求項1に記載の撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−98322(P2012−98322A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243259(P2010−243259)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】