説明

撮影レンズ・ユニットおよびその動作制御方法

【課題】撮影レンズ・ユニットに瞬間的に大きな電流が流れてしまうことを防止する撮影レンズ・ユニットおよびその動作制御方法を提供する。
【解決手段】それぞれが独立しており,CPUが実装されているCPU基板10から21がネットワーク・ラインにより接続されている。撮影レンズ・ユニット1にカメラ本体41が装着されると,カメラ本体41から電源管理CPU基板10に電源が供給される。最初にアイリス制御CPU基板19に電源が供給され,次にフォーカス制御CPU基板18に電源が供給され,つづいてズーム制御CPU基板17に電源が供給される。同時にCPU基板17−19に電源が供給されてしまい,瞬間的に大きな電流が流れてしまうことが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,撮影レンズ・ユニットおよびその動作制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ交換式カメラにおいては,駆動電圧が,レンズマイコンが正常に動作しないような値となると,所定の演算処理が実行できないようにし,誤動作を防止するものがある(特許文献1)。また,電源投入時に機能ブロックにパルス状に通電することで瞬間的に大きな突入電流が発生してしまうことを防止するものもある(特許文献2)。さらに,2つのCPUが必要な機能を実行するときに他のCPUを休止させるもの(特許文献3),テレビレンズ装置の電力不足によるノイズの混入を防止するもの(特許文献4)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-72052号公報
【特許文献2】特開2005-65459号公報
【特許文献3】特開2006-148287号公報
【特許文献4】特開平7-99599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それぞれが独立している複数の基板のそれぞれに制御回路が実装されており,基板同士がネットワーク・ラインで接続されている,そのような複数の基板を利用して撮影レンズ・ユニットを構成しようとすると,それぞれの基板が異なる制御を実現できるので,同時に異なる制御が行われることが考えられる。そのような場合には,電源投入時に多数の基板に同時に電源が供給されてしまうと,瞬間的に大きな電流が流れてしまうことがある。すると,電源供給の停止,撮影レンズが起動できないなどの不具合が起きることがある。
【0005】
この発明は,それぞれが独立している複数の基板のそれぞれに制御回路が実装されており,基板同士がネットワーク・ラインで接続されている,そのような複数の基板を利用して撮影レンズ・ユニットを構成した場合であっても,瞬間的に大きな電流が流れてしまうことを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による撮影レンズ・ユニットは,それぞれが独立している複数の基板のそれぞれに制御回路が実装され,基板同士がネットワーク・ラインにより接続されており,電源が供給されることにより動作する複数の基板(複数の基板のうち,少なくとも二つ以上の基板の構成が共通である),および上記複数の基板に含まれている電源管理基板であって,撮影レンズ・ユニットに供給される電源を入力し,上記複数の基板のそれぞれに,順に電源を供給する電源管理基板を備えていることを特徴とする。
【0007】
この発明は,上記撮影レンズ・ユニットに適した動作制御方法も提供している。すなわち,この方法は,それぞれが独立している複数の基板のそれぞれに制御回路が実装され,基板同士がネットワーク・ラインにより接続されており,複数の基板のそれぞれは電源が供給されることにより動作し,電源管理基板が,上記複数の基板に含まれている電源管理基板であって,撮影レンズ・ユニットに供給される電源を入力し,上記複数の基板のそれぞれに,順に電源を供給するものである。
【0008】
この発明によると,それぞれが独立している複数の基板のそれぞれに制御回路が実装され,基板同士がネットワーク・ラインにより接続されており,それぞれは電源が供給されることにより動作する,そのような複数の基板が含まれている。複数の基板には,撮影レンズ・ユニットに供給される電源を入力し,複数の基板のそれぞれに順に電源を供給する電源管理基板が含まれている。この電源管理基板により,複数の基板のそれぞれに順に電源が供給されるから,複数の基板に同時に電源が供給されてしまうことが未然に防止される。
【0009】
上記複数の基板には,たとえば,絞りを制御するアイリス制御基板,フォーカス・レンズを制御するフォーカス・レンズ制御基板,ならびにズーム・レンズを制御するズーム・レンズ制御基板が含まれている。上記電源管理基板は,たとえば,上記アイリス制御基板,上記フォーカス・レンズ制御基板および上記ズーム・レンズ制御基板の順に電源を供給する。
【0010】
上記電源管理基板は,たとえば,撮影レンズ・ユニットに供給される電源の電圧が上記アイリス制御基板による制御に必要な基準電圧値以上であることに応じて上記アイリス制御基板に電源を供給し,上記アイリス制御基板に電源供給後に上記電源管理基板から供給できる電源の電流が基準電流値以下であることに応じて上記フォーカス・レンズ制御基板に電源を供給し,上記フォーカス・レンズ制御基板に電源供給後に上記電源管理基板から供給できる電源の電流が基準電流値以下であることに応じてズーム・レンズ制御基板に電源を供給するものである。
【0011】
上記電源管理基板から供給できる電源の電流が基準電流値以下となるまで上記フォーカス・レンズ制御基板または上記ズーム・レンズ制御基板に電源の供給を停止するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】撮影レンズ・ユニットの電気的構成を示すブロック図である。
【図2】電源管理CPU基板等の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】撮影レンズ・ユニットを通信するデータの構造を示している。
【図4】電源管理CPU基板の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】電源管理CPU基板の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】電源管理CPU基板の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】電源管理CPU基板の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】電源管理CPU基板の処理手順を示すフローチャートである。
【実施例】
【0013】
図1は,撮影レンズ・ユニット1の電気的構成を示すブロック図である。
【0014】
撮影レンズ・ユニット1には,それぞれが独立している(別々の基板)多数のCPU基板10−21(相互に着脱自在である)が含まれている。これらのCPU基板10−21のそれぞれにはCPUが実装されている。従来の撮影レンズ・ユニット1では,一つのCPUによって多数の処理が制御されているために,多数の処理を並行して行うことができないが,この実施例では,基板のそれぞれにCPUが実装されているので,それぞれの基板に実装されているCPUを同時に駆動することにより多数の処理を同時に行うことができる。
【0015】
撮影レンズ・ユニット1には電源管理CPU基板10が含まれている。撮影レンズ・ユニット1がカメラ本体41に装着されると,カメラ本体41から電源管理CPU基板10に電源が供給される。電源管理CPU基板10から各CPU基板11−21に電源が供給される。
【0016】
カメラ本体41からの画像データ等は,RS232Cケーブルなどによりカメラ通信CPU基板11に入力する。また,CG(コンピュータ・グラフィック)処理を行うバーチャル・システム42などからの各種信号は,RS232Cケーブルなどによりバーチャル・システムCPU基板12に入力する。
【0017】
撮影レンズ・ユニット1に与えられるズーム要求信号およびフォーカス要求信号は,ズーム要求CPU基板13およびフォーカス要求CPU基板14にそれぞれ与えられる。撮影レンズ・ユニット1には,各種スイッチ31,32などが設けられており,これらの各種スイッチ31,32などからのスイッチ信号はスイッチ制御CPU基板15に与えられる。また,撮影レンズ・ユニット1には,表示装置33,34などが設けられており,これらの表示装置33,34などは表示制御CPU基板16によって制御される。
【0018】
ズーム要求CPU基板13は,与えられるズーム要求信号を受信して他の基板に送信するものである。フォーカス要求CPU基板14は,与えられるフォーカス要求信号を受信して他の基板に送信するものである。スイッチ制御CPU基板15は,各種スイッチ31,32からの信号にもとづいてスイッチ制御を行うものである。表示制御CPU基板16は,表示装置(インジケータ)33,34の表示を制御するものである。
【0019】
ズーム制御CPU基板17には,ズーム・レンズ(図示略)を駆動するズーム・モータ22および位置センサ23が接続されている。ズーム制御CPU基板15により,ズーム・モータ22が駆動され,ズーム・レンズが制御される。ズーム・レンズの位置は,位置センサ23によって検出される。
【0020】
フォーカス制御CPU基板18には,フォーカス・レンズ(図示略)を駆動するフォーカス・モータ24が接続されている。マニアル・フォーカスであれば指定された位置に,オート・フォーカスであれば算出された合焦位置となるように,フォーカス制御CPU基板18により,フォーカス・モータ24が駆動され,フォーカス・レンズが制御される。フォーカス・レンズの位置は,位置センサ25によって検出される。
【0021】
アイリス制御CPU基板19には,アイリス(図示略)を駆動するアイリス・モータ26が接続されている。所望の絞り値となるように,アイリス制御CPU基板19により,アイリス・モータ26が駆動され,アイリスが制御される。アイリスの絞り値は,センサ27によって検出される。
【0022】
防振ユニットCPU基板20には,振れ方向に応じて振れ補正する防振レンズ(図示略)をシフトするためのモータ28および角速度センサ29が接続されている。角速度センサ29により,垂直方向および水平方向の振れが検出される。検出された垂直方向の振れおよび水平方向の振れを補正するように防振ユニットCPU基板20によってモータ28が制御される。
【0023】
PFユニットCPU基板21は,カメラ本体41に設けられている撮像用CCDの光学的距離から少し短い第1のAF用CCDと少し長い第2のAF用CCDと(いずれも図示略)から得られるAF評価値とフォーカス・レンズの位置との関係を表わす二つのグラフを生成し,その交点である合焦位置を算出するものである。
【0024】
電源管理CPU基板10とカメラ通信CPU基板11とズーム制御CPU基板17,カメラ通信CPU基板11とバーチャル・システムCPU基板12,バーチャル・システムCPU基板12とズーム要求CPU基板13,ズーム要求CPU基板13とフォーカス要求CPU基板14,フォーカス要求CPU基板14とスイッチ制御基板15,スイッチ制御CPU基板15と表示制御CPU基板16は,それぞれネットワーク・ラインにより着脱自在に接続(バス接続)されている。
【0025】
また,ズーム制御CPU基板17とフォーカス制御CPU基板18,フォーカス制御CPU基板18とアイリス制御CPU基板19,アイリス制御CPU基板19と防振ユニットCPU基板20,防振ユニットCPU基板20とPFユニットCPU基板21もそれぞれネットワーク・ラインにより着脱自在に接続されている。
【0026】
これらのCPU基板10−21のうち,電源管理CPU基板10を除くCPU基板11−21の構成は同じとされている。もつとも,CPU基板11−21のすべての構成を同じとせずに少なくとも2つ以上のCPU基板の構成を同じとすればよい。CPU基板の共通化を図ることができるので,コスト・ダウンとなる。
【0027】
図2は,電源管理CPU基板10等の電気的構成を示すブロック図である。
【0028】
カメラ本体41から供給される電源は,電圧/電流検出装置72に入力する。電圧/電流検出装置72において,電圧/電流検出装置72に印加される電圧の値および電圧/電流検出装置72に流れる電流の値が検出される。
【0029】
電源管理CPU基板10にはCPU70が含まれている。このCPU70に電圧/電流検出装置72を介して電源が供給される。電源管理CPU基板10には,CPU基板11−21に対応して切替スイッチ51−61が設けられている。これらの切替スイッチ51−61には,電圧/電流検出装置72から電圧が印加されている。それらの切替スイッチ51−61の出力端子は,CPU基板11−21と接続されている。切替スイッチ51−61は,CPU70によってオン,オフ制御される。切替スイッチ51−61がオンされることにより,CPU基板11−21のうちオンされたスイッチと接続されているCPU基板に電圧が印加される。
【0030】
また,CPU70にはタイマ73が接続されている。
【0031】
さらに,電源管理CPU基板10にはトランシーバ71が含まれている。ネットワーク・ライン(バス)から電源管理CPU基板10に与えられるデータはトランシーバ71を介してCPU70に与えられる。
【0032】
図2には,フォーカス制御CPU基板18およびアイリス制御CPU基板19の電気的構成も示されている。
【0033】
アイリス制御CPU基板19に入力するデータはトランシーバ81を介してCPU82に入力する。CPU82は,アイリス・モータ26を制御するもので,入力するアイリス位置データからアイリス・モータ26の駆動量を示すデータが生成される。生成された駆動量を示すデータがディジタル/アナログ変換回路84によってアナログ制御信号に変換される。変換されたアナログ制御信号はドライバ84を介してアイリス・モータ26に与えられる。
【0034】
センサ27において検出された絞り値を示す信号は,アナログ/ディジタル変換回路85においてディジタルの絞り値データに変換される。変換された絞り値データがCPU82に入力する。アイリスが所望の絞り値となるようにアイリス・モータ26が駆動させられる。
【0035】
上述のように,アイリス制御CPU基板19には,電源管理CPU基板10に含まれている切替スイッチ57を介して電圧が印加される。電源管理CPU基板10から電圧が印加されることにより,アイリス制御CPU基板19を構成する各回路81−85に電圧が印加し,アイリス制御CPU基板19が動作可能となる。
【0036】
フォーカス制御CPU基板18もアイリス制御CPU基板19と同じ構成である。
【0037】
フォーカス制御CPU基板18に入力するデータはトランシーバ91を介してCPU92に入力する。CPU92は,フォーカス・モータ24を制御するもので,入力するフォーカス位置データからフォーカス・モータ24の駆動量を示すデータが生成される。生成された駆動量を示すデータがディジタル/アナログ変換回路93によってアナログ制御信号に変換される。変換されたアナログ制御信号はドライバ95を介してフォーカス・モータ24に与えられる。
【0038】
位置センサ25において検出されたフォーカス・レンズの位置を示す信号はアナログ/ディジタル変換回路94においてディジタル位置データに変換される。ディジタル位置データがCPU92に入力し,所望の位置となるようにフォーカス・モータ24が駆動させられる。
【0039】
上述のように,フォーカス制御CPU基板18には,電源管理CPU基板10に含まれている切替スイッチ58を介して電圧が印加される。電源管理CPU基板10から電圧が印加されることにより,フォーカス制御CPU基板18を構成する各回路91−95に電圧が印加し,フォーカス制御CPU基板18が動作可能となる。
【0040】
図2には,電源管理CPU基板10,フォーカス制御CPU基板18およびアイリス制御CPU基板19の電気的構成が図示されているが,その他のCPU制御基板11−17および20,21もフォーカス制御CPU基板18またはアイリス制御CPU基板19の構成と同じである。
【0041】
上述した基板間のネットワーク通信は,CAN(Controller Area Network)通信を利用できる。
【0042】
図3は,CAN通信においてデータを送信する転送フォーマットであるデータ・フレームの構造を示している。
【0043】
データ・フレームは,リセッシブまたはドミナントのいずれかとなる。各部の数字はビット数を示している。また,通信が行われていない場合,バスはリセッシブとなっている(バス・アイドル)。
【0044】
データ・フレームには,スタート・オブ・フレーム,識別子フィールド,RTR,コントロール・フィールド,データ・フィールド,CRCシーケンス,CRCデリミタ,ACKスロット,ACKデリミタ,エンド・オブ・フレームが含まれ,その順で送信される。
【0045】
スタート・オブ・フレームは,データ・フレームの開始を表わすものであり,ドミナント状態とされる。スタート・オブ・フレームがバス・アイドルのリセッシブからドミナントへ変化することにより受信側のCPU基板(受信ノード)は同期を行うことができる。
【0046】
識別子フィールドは,データ内容や送信側のCPU基板(送信ノード)を識別するために使用される。受信側のCPU基板は,識別子フィールドに記述されている内容を検出することにより,自分が使用するデータ・フレームかどうかを判断できる。識別子フィールドは通信調停の優先順位を決定することもある。
【0047】
RTR(Remote Transmission Request )は,データを送信するデータ・フレームとデータの送信を要求するリモート・フレームとを識別するために使用される。データ・フレームの場合には,RTRはドミナントとなっている。RTRも識別子フィールドと同様に通信調停に使用される。
【0048】
コントロール・フィールドは,次のデータ・フィールド内で何バイト送信されるかを示すものである。
【0049】
データ・フィールドは,データ・フレームで送信されるデータの部分である。
【0050】
CRC(Cyclic Redundancy Check )シーケンスは,データ送信時のデータ破壊をチェックするものである。
【0051】
CRCデリミタは,CRCシーケンスの終了を表す区切り記号で,1ビット長のリセッシブ固定である。
【0052】
ACK(Acknowledgement)スロットは,正常受信確認のためのフィールドである。
【0053】
ACKデリミタは,ACKスロットの終了を表す区切り記号で、1ビット長のリセッシブ固定である。
【0054】
エンド・オブ・フレームは,送信または受信の終了を示すものであり,リセッシブ固定となっている。
【0055】
複数のCPU基板から同時にデータ・フレームが送信されてしまう場合,通信調停が行われる。たとえば,二つのデータ・フレームが送信された場合,それらの二つのデータ・フレームのそれぞれの識別子フィールドに記述されているデータ1ビットずつ比較され,最初に相違したデータがドミナントとなっていた方のデータ・フレームが優先して送信される。
【0056】
図4から図8は,電源管理CPU基板10の処理手順を示すフローチャートである。
【0057】
この処理手順は,動作電流の比較的大きいアイリス制御CPU基板19,フォーカス制御CPU基板18およびズーム制御CPU基板17の順に電源を供給するものである。これらのCPU基板19,18および17に同時に電源が供給されてしまうのを未然に防止できるので,撮影レンズ・ユニット1に大電流が流れてしまうのを未然に防止できる。
【0058】
まず,カメラ本体41が撮影レンズ・ユニット1に装着される(図4ステップ101)。すると,カメラ本体41から供給される電源が電源管理CPU基板10に供給される(図4ステップ102)。電源管理CPU基板10の初期設定が行われ(図4ステップ103),カメラ本体41から供給される電源の電圧が電圧/電流検出装置72によって読み取られる(図4ステップ104)。
【0059】
カメラ本体41からの供給電圧が基準値以上なければ(図4ステップ105でNO),カメラ制御を行うことができない。このために,表示制御CPU基板16に電源が供給されるように電源管理CPU基板10の切替スイッチ56が接続される(図4ステップ106)。表示制御CPU基板16によって表示装置33,34の表示が制御され,表示装置33,34によって電源警告表示が行われる(図4ステップ107)。
【0060】
カメラ本体41からの供給電圧が基準値以上であると(図4ステップ105でYES),まず,アイリス制御CPU基板108に電源が供給(電圧が印加)される(図4ステップ108)。アイリス制御CPU基板108によりアイリスの制御が可能となる。プリセットされている絞り値となるようにアイリスが制御されてもよいし,カメラ本体41から与えられる絞り値となるようにアイリスの制御が行われてもよい。カメラ本体41から与えられる絞り値となるようにするためには,アイリス制御CPU基板19だけでなく,カメラ通信CPU基板11にも電源が供給されるように電源/管理CPU基板10によってカメラ通信CPU基板11が制御される。
【0061】
アイリス制御CPU基板19に電源が供給されると,電源管理CPU制御基板10に流れる電流が電圧/電流検出装置72によって読み取られる(図5ステップ109)。電圧が所定の基準値以上であっても,アイリス制御CPU基板19などに瞬間的に過大な電流が流れ,他の基板に電流が流れないことがある。このために,過大な電流が流れていないかどうかの確認のために電圧/電流検出装置72によって電流が読み取られる。
【0062】
読み取られた電流が基準値以下であると(図5ステップ110でNO),タイマ73がオンでなければ(図5ステップ111でNO),タイマ73がスタートする(図5ステップ112)。タイマ73がオンとなっていると(図5ステップ111でYES),所定の時間を経過してタイム・アウトとなったかどうかが確認される。タイム・アウトとなっていなければ(図5ステップ113でNO),再びステップ109および110の処理が繰り返される。所定の時間を経過し,タイム・アウトとなると(図5ステップ113でYES),動作に比較的大きな電流が必要なアイリス制御CPU基板19,フォーカス制御CPU基板18およびズーム制御CPU基板17以外の基板に電源が供給されるようになる(図8ステップ126)。
【0063】
電圧/電流検出装置72によって読み取られた電流が基準位置以下であると(図5ステップ110でYES),電源管理CPU基板10によってフォーカス制御CPU基板18に電源が供給される(図5ステップ114)。フォーカス制御CPU基板18によってフォーカス・レンズが所望の位置に位置決めされる。外部装置から与えられるフォーカス要求信号にもとづいてフォーカス・レンズが位置決めされる場合には,フォーカス要求CPU基板14にも電源が供給され,フォーカス要求CPU基板14からフォーカス制御CPU基板18にフォーカス位置データが送信されることとなろう。また,PFユニットCPU基板21において算出される合焦位置にフォーカス・レンズが位置決めされる場合には,PFユニットCPU基板21にも電源が供給され,PFユニットCPU基板21からフォーカス制御CPU基板19に合焦位置を示すデータが送信されることとなろう。
【0064】
フォーカス制御CPU基板114に電源が供給されると,図5ステップ109の処理と同様に,電源管理CPU制御基板10に流れる電流が読み取られる(図6ステップ115)。
【0065】
電源管理CPU制御基板10に流れる電流が基準値以下でなければ(図6ステップ116でNO),上述のようにタイム・アウトとなるまでステップ115および116の処理が繰り返される(図6ステップ117−119)。タイム・アウトとなると(図6ステップ119でYES),ズーム制御CPU基板17を除く他のCPU制御基板11−16,18−21に電源が供給される(図8ステップ126)。
【0066】
電源管理CPU制御基板10に流れる電流が基準値以下であれば(図6ステップ116でYES),ズーム制御CPU基板17に電源が供給される(図6ステップ120)。ズーム制御CPU基板17によるズーム制御が行われる。外部装置からのズーム要求信号が撮影レンズ・ユニット1に与えられる場合には,ズーム要求CPU基板13にも電源が供給され,ズーム要求CPU基板13から送信されるズーム位置データにもとづく位置にズーム・レンズが位置決めされる。
【0067】
上述したのと同様に,電源管理CPU基板10に流れる電流が読み取られ(図7ステップ121),基準値以下でなければ(図7ステップ122でNO),タイム・アウトとなるまでステップ121および122の処理が繰り返される。電源管理CPU基板10に流れる電流が基準位置以下であると(図7ステップ122でYES),残りのCPU基板に電源が供給される(図8ステップ126)。スイッチ制御CPU基板15によってスイッチ31,32の状態が読み取られ(図8ステップ127),カメラ通信CPU基板11によってカメラ本体41との通信が行われ(図8ステップ128),表示制御CPU基板16により表示装置33,34が制御される(図8ステップ129)。撮影レンズ・ユニット1からカメラ本体41が外され,撮影レンズ・ユニット1がオフなるまで図8ステップ127から129の処理が繰り返される。また,撮影レンズ・ユニット1にズーム要求信号,フォーカス要求信号などが与えられると,それらの信号に応じてズーム制御,フォーカス制御が行われるのはいうまでもない。
【0068】
上述の実施例においては,アイリス制御に関するCPU基板,フォーカス制御に関するCPU基板およびズーム制御に関するCPU基板の順に電源が供給されるようにしているが,モータを駆動するCPU基板に同時に電流が流れないように,モータを駆動するCPU基板には順に電源が供給されるようにすることが好ましい。
【0069】
上述した実施例では,CAN通信が利用されているがCAN通信以外のネットワーク技術を利用してもよい。たとえば,PROFIBUS,CC-Link,Interbus,EC-NETなどを利用することもできる。
【符号の説明】
【0070】
1 撮影レンズ・ユニット
10 電源管理CPU基板
11−21 CPU基板
51−61 切替スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが独立している複数の基板のそれぞれに制御回路が実装され,基板同士がネットワーク・ラインにより接続されており,電源が供給されることにより動作する複数の基板,および
上記複数の基板に含まれている電源管理基板であって,撮影レンズ・ユニットに供給される電源を入力し,上記複数の基板のそれぞれに,順に電源を供給する電源管理基板,
を備えた撮影レンズ・ユニット。
【請求項2】
上記複数の基板には,
絞りを制御するアイリス制御基板,
フォーカス・レンズを制御するフォーカス・レンズ制御基板,ならびに
ズーム・レンズを制御するズーム・レンズ制御基板が含まれており,
上記電源管理基板は,
上記アイリス制御基板,上記フォーカス・レンズ制御基板および上記ズーム・レンズ制御基板の順に電源を供給するものである,
請求項1に記載の撮影レンズ・ユニット。
【請求項3】
上記電源管理基板は,
撮影レンズ・ユニットに供給される電源の電圧が上記アイリス制御基板による制御に必要な基準電圧値以上であることに応じて上記アイリス制御基板に電源を供給し,
上記アイリス制御基板に電源供給後に上記電源管理基板から供給できる電源の電流が基準電流値以下であることに応じて上記フォーカス・レンズ制御基板に電源を供給し,
上記フォーカス・レンズ制御基板に電源供給後に上記電源管理基板から供給できる電源の電流が基準電流値以下であることに応じてズーム・レンズ制御基板に電源を供給するものである,
請求項2に記載の撮影レンズ・ユニット。
【請求項4】
上記電源管理基板から供給できる電源の電流が基準電流値以下となるまで上記フォーカス・レンズ制御基板または上記ズーム・レンズ制御基板に電源の供給を停止する,
請求項3に記載の撮影レンズ・ユニット。
【請求項5】
それぞれが独立している複数の基板のそれぞれに制御回路が実装され,基板同士がネットワーク・ラインにより接続されており,複数の基板のそれぞれは電源が供給されることにより動作し,
電源管理基板が,上記複数の基板に含まれている電源管理基板であって,撮影レンズ・ユニットに供給される電源を入力し,上記複数の基板のそれぞれに,順に電源を供給する,
撮影レンズ・ユニットの動作制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−30982(P2013−30982A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165604(P2011−165604)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】