説明

撮影装置、撮影プログラム、及び撮影方法

【課題】化学発光試料が劣化した場合等においても、濃度不良が発生するのを防ぐことができる。
【解決手段】撮影装置10は、撮像素子により化学発光する被写体を複数回プレ露出し、複数のプレ露出画像に基づいて、化学発光する被写体の発光特性を算出し、算出した発光特性に基づいて、被写体の目標濃度に対応する本露出の露出時間を算出し、算出した露出時間で被写体を本露出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影装置、撮影プログラム、及び撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば生化学の分野において、励起光が照射されることにより蛍光を射出する、蛍光色素で標識された蛍光試料を被写体として撮像したり、化学発光基質と接触して発光している化学発光試料を被写体として、励起光を照射せずに長時間露出により撮像したりする撮影装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、撮影手法の種類と本撮影における適正露出時間を求めるための仮撮影用の露出時間(仮露出時間)とが対応づけられたルックアップテーブルを記憶し、入力された撮影手法の種類に応じた仮露出時間を、ルックアップテーブルを参照して求め、求められた仮露出時間で仮撮影した仮撮影画像信号に基づいて、本露出時間を設定する装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、予め露光完了予定時間と露光途中の1回以上の露光チェック時間とを設定しておき、露光チェック時間ごとに、撮影画像を画像記憶手段に記憶しモニタ手段に表示することにより、化学発光を露光撮影する際の最適な露光時間を効率よく探ることが可能な装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、観察する細胞を担体上に配置し、励起光の照射によって細胞から発せられた蛍光の画像を、所定の時間間隔をおいて、時系列的に撮像系で取得するにあたり、蛍光強度の飽和を防ぐために、先に取得した蛍光画像を用いて、後に取得する蛍光画像の撮影の露出光量を決定する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3678397号公報
【特許文献2】特開2000−111478号公報
【特許文献3】特開2005−214924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば特許文献1に記載された技術では、予め設定されたルックアップテーブルを用いて本露出時間を設定するため、化学発光試料を被写体とした場合に、化学発光試料が劣化した場合や、ルックアップテーブルに適合しない化学発光試料を用いた場合には、本露出時間が適正に設定されず、濃度不良となる場合がある、という問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、化学発光試料が劣化した場合等においても、濃度不良が発生するのを防ぐことができる撮影装置、撮影プログラム、及び撮影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明の撮影装置は、化学発光する被写体を撮像する撮像素子と、前記撮像素子により前記被写体を複数回プレ露出して、複数のプレ露出画像を取得するプレ露出手段と、前記複数のプレ露出画像に基づいて、前記化学発光する被写体の発光特性を算出する発光特性算出手段と、前記発光特性に基づいて、前記被写体の目標濃度に対応する本露出の露出時間を算出する露出時間算出手段と、算出した前記露出時間で前記被写体を本露出して本露出画像を取得する本露出手段と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
この発明によれば、被写体を複数回プレ露出し、複数のプレ露出画像に基づいて、化学発光する被写体の発光特性を算出し、算出した発光特性に基づいて、被写体の目標濃度に対応する本露出の露出時間を算出して本露出する。このため、化学発光試料が劣化した場合等においても、濃度不良が発生するのを防ぐことができる。
【0011】
なお、請求項2に記載したように、前記プレ露出画像の画素サイズを、前記本露出画像の画素サイズよりも大きくすることが好ましい。
【0012】
また、請求項3に記載したように、前記撮像素子が画素加算機能を備え、当該画素加算機能により、前記プレ露出画像の画素サイズを、前記本露出画像の画素サイズよりも大きくすることが好ましい。
【0013】
また、請求項4に記載したように、前記複数のプレ露出画像に変化がない場合、前記プレ露出の画素加算数を多くして再度プレ露出するようにしてもよい。
【0014】
また、請求項5に記載したように、前記複数のプレ露出画像に変化がない場合、前記プレ露出の露出時間を長くして再度プレ露出するようにしてもよい。
【0015】
請求項6記載の発明の撮影プログラムは、コンピュータを、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の撮影装置を構成する各手段として機能させることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明の撮影方法は、撮像素子により化学発光する被写体を複数回プレ露出して、複数のプレ露出画像を取得するステップと、前記複数のプレ露出画像に基づいて、前記化学発光する被写体の発光特性を算出するステップと、前記発光特性に基づいて、前記被写体の目標濃度に対応する本露出の露出時間を算出するステップと、算出した前記露出時間で前記被写体を本露出して本露出画像を取得するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、化学発光試料が劣化した場合等においても、濃度不良が発生するのを防ぐことができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】撮影システムの斜視図である。
【図2】撮影装置の正面図である。
【図3】画像処理装置100の概略ブロック図である。
【図4】撮影部30の概略ブロック図である。
【図5】画像処理装置100のCPU70Aで実行される制御ルーチンのフローチャートである。
【図6】画像処理装置100のCPU70Aで実行される制御ルーチンのフローチャートである。
【図7】化学発光試料の減衰特性を示す線図である。
【図8】本露出の露出値の算出について説明するための線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る撮影装置を用いた撮影システムの一例を示す斜視図である。撮影システム1は、被写体に応じて励起光を照射せずに又は励起光を照射して被写体を撮影し、被写体の撮影画像を取得する撮影システムであり、撮影装置10及び画像処理装置100を含んで構成されている。
【0021】
撮影装置10は、被写体を撮影して取得した被写体の画像データを画像処理装置100に出力する。画像処理装置100は、受信した画像データに対して、必要に応じて所定の画像処理を施して表示部202に表示させる。なお、本実施形態では、前述した化学発光試料が被写体の場合について説明する。
【0022】
図2には、撮影装置10の蓋22(図1参照)を開けた状態の正面図を示した。同図に示すように、撮影装置10は、被写体PSが配置される被写体配置部40と、被写体配置部40を内部に収容した筐体20と、被写体配置部40に配置された被写体PSを撮影する撮影部30と、被写体PSに励起光を照射する、筐体20内に配置された落射光源50と、透過光源60と、を備えている。
【0023】
筐体20は、略直方体に形成された中空部21を有するものであって、内部に被写体PSが配置される被写体配置部40を有している。また、筐体20には図1に示す蓋22が開閉可能に取り付けられており、ユーザーが蓋22を開けて筐体20内に被写体PSを収容することができるようになっている。このように、筐体20は中空部21内に外光が入らないような暗箱を構成している。
【0024】
撮影装置10は、筐体20の上面20aに固定されており、詳細は後述するが、例えばCCD等の撮像素子を含んで構成されている。撮像素子には、冷却素子が取り付けられており、撮像素子を冷却することにより、撮影された画像情報に暗電流によるノイズ成分が含まれるのを防止している。
【0025】
撮影装置10にはレンズ部31が取り付けられており、このレンズ部31は、被写体P Sにフォーカスを合わせるために、矢印Z方向に移動可能に設けられている。
【0026】
落射光源50は、被写体配置部40の上に配置された被写体PSに向けて励起光を射出する。透過光源60は、被写体PSの下から励起光を照射する。蛍光試料を撮影する場合には、被写体に応じて落射光源50及び透過光源60の少なくとも一方から励起光を被写体に照射させる。
【0027】
図3には、画像処理装置100の概略構成を示した。同図に示すように、画像処理装置100は、メインコントローラ70を含んで構成されている。
【0028】
メインコントローラ70は、CPU(Central Processing Unit)70A、ROM(Read Only Memory)70B、RAM(Random Access Memory)70C、不揮発性メモリ70D、及び入出力インターフェース(I/O)70Eがバス70Fを介して各々接続された構成となっている。
【0029】
I/O70Eには、表示部202、操作部72、ハードディスク74、及び通信I/F76が接続されている。メインコントローラ70は、これらの各機能部を統括制御する。
【0030】
表示部202は、例えばCRTや液晶表示装置等で構成され、撮影装置10で撮影された画像を表示したり、撮影装置10に対して各種の設定や指示を行うための画面等を表示したりする。
【0031】
操作部72は、マウスやキーボード等を含んで構成され、ユーザーが操作部72を操作することによって撮影装置10に各種の指示を行うためのものである。
【0032】
ハードディスク74は、撮影装置10で撮影された撮影画像の画像データ、制御プログラム、制御に必要な各種データ等が記憶される。
【0033】
通信インターフェース(I/F)76は、撮影装置10の撮影部30、落射光源50、及び透過光源60と接続される。CPU70Aは、通信I/F76を介して、被写体の種類に応じた撮影条件での撮影を撮影部30に指示したり、被写体に励起光を照射する場合には、落射光源50及び透過光源60の少なくとも一方に励起光の照射を指示したりすると共に、撮影部30で撮影された撮影画像の画像データを受信して画像処理等を施したりする。
【0034】
図4には、撮影部30の概略構成を示した。同図に示すように、撮影部30は、制御部80を備えており、制御部80はバス82を介して通信インターフェース(I/F)84と接続されている。通信I/F84は、画像処理装置100の通信I/F76と接続される。
【0035】
制御部80は、通信I/F84を介して画像処理装置100から撮影が指示されると、指示内容に応じて各部を制御して被写体配置部40に配置された被写体PSを撮影し、その撮影画像の画像データを通信I/F84を介して画像処理装置100へ送信する。
【0036】
制御部80には、レンズ部31、タイミング発生器86、撮像素子88を冷却する冷却素子90、及び撮像素子88の温度を検出する温度センサ91が接続されている。
【0037】
制御部80は、例えば図示しないCPU、ROM、RAM、不揮発性ROM等を含むコンピュータで構成され、不揮発性ROMには、後述する制御プログラムが記憶されている。これをCPUが読み込んで実行することにより、制御部80に接続された各部を制御する。
【0038】
レンズ部31は、図示は省略するが、例えば複数の光学レンズから成るレンズ群、絞り調整機構、ズーム機構、及び自動焦点調節機構等を含んで構成されている。レンズ群は、図2において被写体PSにフォーカスを合わせるために、矢印Z方向に移動可能に設けられている。絞り調節機構は、開口部の径を変化させて撮像素子88への入射光量を調整するものであり、ズーム機構は、レンズの配置する位置を調節してズームを行うものであり、自動焦点調節機構は、被写体PSと撮影装置10との距離に応じてピント調節するものである。
【0039】
被写体PSからの光は、レンズ部31を透過して被写体像として撮像素子88に結像される。
【0040】
撮像素子88は、図示は省略するが、複数の各画素に対応する受光部、水平転送路、及び垂直転送路等を含んで構成されている。撮像素子88は、その撮像面に結像される被写体像を電気信号に光電変換する機能を有し、例えば電荷結合素子(Charge Coupled Device:CCD)や金属酸化膜型半導体(Metal OxideSemiconductor:MOS)等のイメージセンサが用いられる。本実施形態においては、撮像素子88としてCCDを用いる。
【0041】
撮像素子88は、タイミング発生器86からのタイミング信号により制御され、被写体PSからの入射光を各受光部で光電変換する。
【0042】
撮像素子88で光電変換された信号電荷は、電荷電圧変換アンプ92によって電圧変換されたアナログ信号となり、信号処理部94に出力される。
【0043】
タイミング発生器86は、撮影部30を動作させる基本クロック(システムクロック)を発生する発振器を有しており、例えば、この基本クロックを各部に供給すると共に、この基本クロックを分周して様々なタイミング信号を生成する。例えば、垂直同期信号、水平同期信号及び電子シャッタパルスなどを示すタイミング信号を生成して撮像素子88に供給する。また、相関二重サンプリング用のサンプリングパルスやアナログ・デジタル変換用の変換クロックなどのタイミング信号を生成して信号処理部94に供給する。
【0044】
信号処理部94は、タイミング発生器86からのタイミング信号により制御され、入力されたアナログ信号に対して相関二重サンプリング処理を施す相関二重サンプリング回路(Correlated Double Sampling:CDS)及び相関二重サンプリング処理が施されたアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル(Analog/Digital:A/D)変換器等を含んで構成される。または、フィードスルー部と信号部をA/Dサンプルし、フィードスルー部及び信号部の各デジタル値の差分データを算出する処理を行う処理部を含んで構成される。
【0045】
相関二重サンプリング処理は、撮像素子88の出力信号に含まれるノイズ等を軽減することを目的として、撮像素子88の1受光素子(画素)毎の出力信号に含まれるフィードスルー部のレベルと画像部分に相当する信号部のレベルとの差をとることにより画素データを得る処理である。
【0046】
相関二重サンプリング処理されたデジタル信号はメモリ96に出力され、一次記憶される。メモリ96に一次記憶された画像データは、通信I/F84を介して画像処理装置100に送信される。
【0047】
冷却素子90は、例えばペルチエ素子等により構成され、制御部80によって冷却温度が制御される。被写体PSが化学発光試料の場合、励起光を照射せずに比較的長時間露光して撮影を行うため、撮像素子88の温度が上昇して暗電流の増加等により画質に悪影響を及ぼす場合がある。このため、制御部80では、画像処理装置100から指示された冷却温度に撮像素子88の温度が維持されるように、温度センサ91により検出された撮像素子88の温度をモニタしながら冷却素子90をPWM(パルス幅変調)制御し、撮像素子88を冷却する。
【0048】
次に、本実施形態の作用として、画像処理装置100のCPU70Aで実行される処理について、図5、6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0049】
なお、図5に示すフローチャートは、ユーザーが被写体配置部40に被写体PSを配置して、操作部72を操作して撮影を指示すると実行される。なお、本実施形態では、被写体PSが化学発光試料の場合について説明する。
【0050】
化学発光試料である被写体PSの露出値(発光強度)f(t)は、図7に示すように時間が経過すると共に徐々に減衰する特性を示し、次式で表される。
【0051】
【数1】

【0052】
ここで、kは減衰の程度を表す減衰係数であり、q0は被写体PSの露出値、すなわち発光強度の初期値である(t=0の場合にf(t)=q0となる)。従って、q0、kを求めることにより、被写体PSの発光特性、すなわち減衰特性を求めることができる。そこで、本実施形態では、詳細は後述するが、複数回プレ露出を行い、その結果に基づいてq0、kを求め、その後、被写体PSの目標濃度に応じた本露出時間を算出する。
【0053】
まず、ステップ100では、プレ露出回数Nを設定する。プレ露出回数Nは、2以上に設定され、ユーザーの選択により設定してもよいし、予め定めた数に自動で設定してもよい。なお、本実施形態では、プレ露出回数Nが2に設定された場合について説明する。
【0054】
ステップ102では、カウンタCNTを0にセットする。
【0055】
ステップ104では、予め定めたプレ露出時間Tpで被写体PSをビニング数(画素加算数)Bpでプレ露出してプレ露出画像を取得する。例えばBp=8であれば、8×8画素を画素加算してプレ露出画像を得る。本実施形態では、撮像素子88がビニング機能、すなわち画素加算機能を有し、この画素加算機能により画素加算する。なお、撮像素子88でビニングせずに、各画素の画素値を取得した後、8×8画素毎に画素加算処理するようにしてもよい。なお、本実施形態では、被写体PSは化学発光試料であるので、励起光は照射しない。
【0056】
ステップ106では、プレ露出画像の予め定めた関心領域ROIのプレ露出値Qpを算出する。具体的には、例えばウェスタンブロッティングのメンブレンのような場合、関心領域ROIをプレ露出画像の最も信号レベルが高いバンドの中央付近のx×y画素に設定し、その関心領域ROIの各画素の平均値をプレ露出値Qpとする。なお、関心領域ROIの設定はこれに限られるものではない。また、プレ露出値Qpは、関心領域ROIの平均値とする場合に限らず、中央値等としてもよい。
【0057】
ステップ108では、カウンタCNTを1インクリメントする。
【0058】
ステップ110では、カウンタCNTがプレ露出回数Nと一致するか否かを判断し、一致していない場合はステップ112へ移行し、一致した場合には、ステップ114へ移行する。
【0059】
ステップ112では、予め定めたプレ露出間隔Tgが経過するまで待機する。そして、Tg時間経過後、ステップ104へ戻って、2回目のプレ露出を行う。このように、カウンタCNTがプレ露出回数Nに達するまでプレ露出を実行する。本実施形態では、プレ露出回数Nは2であるので、2回プレ露出を実行した後、ステップ114へ移行する。
【0060】
ステップ114では、プレ露出値に対応した単位時間当たりの本露出値を算出する。
【0061】
例えば、1回目のプレ露出値をQp1、2回目のプレ露出値をQp2、本露出のビニング数をBmとすると、1回目のプレ露出値Qp1に対応した単位時間当たりの本露出値qm1、2回目のプレ露出値Qp2に対応した単位時間当たりの本露出値qm2は、次式で算出することができる。
【0062】
【数2】

【0063】
なお、プレ露出のビニング数Bpは、本露出のビニング数Bmよりも大きいことが好ましい。すなわち、プレ露出の画素サイズを本露出の画素サイズよりも大きくする。これにより、プレ露出の感度を向上させることができ、プレ露出時間を短縮することができる。
【0064】
ステップ116では、減衰係数k、すなわちプレ露出時間に対応した単位時間当たりの本露出値の傾きを算出する。
【0065】
図8に示すように、減衰係数kは次式で算出することができる。
【0066】
【数3】

【0067】
なお、lnは自然対数である。
【0068】
ステップ118では、被写体PSの発光強度の初期値q0を設定する。本実施形態では、プレ露出は2回しか実行しないため、2回目のプレ露出値Qp2に対応した単位時間当たりの本露出値qm2をq0として設定する。
【0069】
以上より、減衰係数k及び初期値q0が設定される。なお、本実施形態では、プレ露出を2回実行する場合について説明したが、3回以上プレ露出を行うようにしてもよい。この場合、各回のプレ露出のプレ露出値に対応した単位時間当たりの本露出値を求め、これらの本露出値から、最小自乗法等により減衰係数k及び初期値q0を求めるようにしてもよい。
【0070】
ステップ120では、図6に示すような処理により、被写体PSの目標濃度に対応した本露出時間を算出する。
【0071】
図6に示すステップ200では、被写体PSの目標濃度(目標露出量)Qfを設定する。目標濃度Qfは、ユーザーに設定させてもよいし、予め定めた濃度を設定してもよい。
【0072】
ステップ202では、本露出の露出時間Tfを設定する。この露出時間Tfは、ユーザーに設定させてもよいし、予め定めた時間を設定してもよい。
【0073】
被写体の露出値は上記(1)式で表されるため、本露出で必要な目標露出量は、次式で示すように、上記(1)式を積分することで得られる。
【0074】
【数4】

【0075】
そして、上記(5)式をTfの式に書き換えると、次式となる。
【0076】
【数5】

【0077】
ここで、本露出の露出時間Tfを設定する際、第1の条件として、上記(6)式の括弧内は正でなければならない。また、第2の条件として、本露出の露出時間の上限値が予め定められている場合には、露出時間Tfは上限値以下に設定されなければならない。
【0078】
そこで、ステップ204では、第1の条件を満たすか否かを判断する。すなわち、次式を満たすか否かを判断する。
【0079】
【数6】

【0080】
そして、第1の条件を満たす場合には、ステップ206へ移行し、第1の条件を満たさない場合には、ステップ210へ移行する。
【0081】
ステップ206では、第2の条件を満たすか否か、すなわち、露出時間Tfが予め定めた本露出の露出時間の上限値以下であるか否かを判断する。そして、第2の条件を満たす場合には、ステップ208へ移行し、第2の条件を満たさない場合には、ステップ210へ移行する。
【0082】
ステップ208では、現在の露出時間Tfを本露出の露出時間として設定する。一方、ステップ204又はステップ206で否定判断された場合、すなわち、第1の条件及び第2の条件の何れかを満たさない場合には、ステップ210へ移行し、目標濃度Qfの値を下げる。なお、下げ方としては、1段階下げてもよいし、複数段階下げるようにしてもよい。
【0083】
このようにして本露出の露出時間を設定した後は、図5に戻って、ステップ122において、露出時間Tf、ビニング数Bmで本露出する。これにより、目標濃度Qfで被写体PSが撮影される。
【0084】
このように、本実施形態では、複数回プレ露出を実行し、その結果に基づいて化学発光の被写体PSの発光特性(減衰特性)を求め、求めた減衰特性に基づいて本露出の露出時間を決定する。このため、微弱に発光する化学発光の被写体でも、本露出時間が適正に設定され、濃度不良となるのを防ぐことができ、良好な撮影を行うことができる。
【0085】
なお、本実施形態では、プレ露出を2回行って本露出の露出時間を算出する場合について説明したが、2回のプレ露出画像に変化がない場合、すなわち、1回目のプレ露出値Qp1と2回目のプレ露出値Qp2との差がない場合、プレ露出の露出時間及びプレ露出のビニング数の少なくとも一方の条件を変えて再度プレ露出するようにしてもよい。例えば、プレ露出時間を長くしたり、プレ露出のビニング数を多くしたりして再度プレ露出する。これにより、感度が向上し、減衰特性を精度よく求めることができる。
【0086】
また、本実施形態で説明した撮影システム1の構成(図1〜4参照)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したりしてもよいことは言うまでもない。
【0087】
また、本記実施形態で説明した制御プログラムの処理の流れ(図5、6参照)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0088】
1 撮影システム
10 撮影装置
30 撮影部
31 レンズ部
40 被写体配置部
50 落射光源
60 透過光源
70 メインコントローラ
70A CPU
72 操作部
74 ハードディスク
80 制御部
86 タイミング発生器
88 撮像素子
90 冷却素子
91 温度センサ
92 電荷電圧変換アンプ
94 信号処理部
96 メモリ
100 画像処理装置
202 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学発光する被写体を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子により前記被写体を複数回プレ露出して、複数のプレ露出画像を取得するプレ露出手段と、
前記複数のプレ露出画像に基づいて、前記化学発光する被写体の発光特性を算出する発光特性算出手段と、
前記発光特性に基づいて、前記被写体の目標濃度に対応する本露出の露出時間を算出する露出時間算出手段と、
算出した前記露出時間で前記被写体を本露出して本露出画像を取得する本露出手段と、
を備えた撮影装置。
【請求項2】
前記プレ露出画像の画素サイズを、前記本露出画像の画素サイズよりも大きくした
請求項1記載の撮影装置。
【請求項3】
前記撮像素子が画素加算機能を備え、当該画素加算機能により、前記プレ露出画像の画素サイズを、前記本露出画像の画素サイズよりも大きくした
請求項1又は請求項2記載の撮影装置。
【請求項4】
前記複数のプレ露出画像に変化がない場合、前記プレ露出の画素加算数を多くして再度プレ露出する
請求項1〜3の何れか1項に記載の撮影装置。
【請求項5】
前記複数のプレ露出画像に変化がない場合、前記プレ露出の露出時間を長くして再度プレ露出する
請求項1〜4の何れか1項に記載の撮影装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の撮影装置を構成する各手段として機能させるための撮影プログラム。
【請求項7】
撮像素子により化学発光する被写体を複数回プレ露出して、複数のプレ露出画像を取得するステップと、
前記複数のプレ露出画像に基づいて、前記化学発光する被写体の発光特性を算出するステップと、
前記発光特性に基づいて、前記被写体の目標濃度に対応する本露出の露出時間を算出するステップと、
算出した前記露出時間で前記被写体を本露出して本露出画像を取得するステップと、
を含む撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−68725(P2013−68725A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206131(P2011−206131)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】