説明

操作入力装置及びその制御方法

【課題】操作性を確保したまま小型化を可能にする、操作入力装置及びその制御方法の提供。
【解決手段】操作部11と、操作部11の押し込みを検出する検出部(センサ14A〜14D及び検出回路97)と、前記検出部によって検出された押し込みの位置に対応する方向に、画面上のオブジェクト3を移動させる制御部(制御回路98)とを備える操作入力装置であって、前記制御部は、操作部11の押し込み速度に応じて、オブジェクト3の移動速度を変化させることを特徴とする、操作入力装置。操作部11の押し込みを検出し、検出された押し込みの位置に対応する方向に、画面上のオブジェクト3を移動させる操作入力装置の制御方法であって、操作部11の押し込み速度に応じて、オブジェクト3の移動速度を変化させることを特徴とする、操作入力装置の制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部の押し込みの位置に対応する方向に、画面上のオブジェクトを移動させる操作入力装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画面上に表示された視標をユーザの押下操作により移動させるポインティング装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このポインティング装置は、ユーザの押下操作の「深さ」に基づいて、視標の移動速度を設定することを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−286858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術のように、操作部の押し込み量に応じて画面上のオブジェクトを移動させる操作入力装置では、押し込み可能なストローク長が短いと、操作者は押し込み量を調整し難いことがある。しかしながら、操作性向上のため押し込み可能なストローク長を長くすると、操作入力装置が大型化するため、設置スペースの制約が大きい携帯機器(例えば、携帯電話など)に搭載できないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、操作性を確保したまま小型化を可能にする、操作入力装置及びその制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る操作入力装置は、
操作部と、
前記操作部の押し込みを検出する検出部と、
前記検出部によって検出された押し込みの位置に対応する方向に、画面上のオブジェクトを移動させる制御部とを備える操作入力装置であって、
前記制御部は、前記操作部の押し込み速度に応じて、前記オブジェクトの移動速度を変化させることを特徴とするものである。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る操作装置の制御方法は、
操作部の押し込みを検出し、検出された押し込みの位置に対応する方向に、画面上のオブジェクトを移動させる操作入力装置の制御方法であって、
前記操作部の押し込み速度に応じて、前記オブジェクトの移動速度を変化させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、操作性を確保したまま小型化を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態である操作入力装置101が使用されるシステムのブロック図である。
【図2】操作部11が押し込まれたときの模式図である。
【図3】制御回路98の処理フローである。
【図4】図3のステップS10における詳細な処理フローである。
【図5】図3のステップS12における詳細な処理フローである。
【図6】押し込み速度Z(t)の算出説明図である。
【図7】加速度関数Fα(t)のテーブルの一例である。
【図8】時間関数Fβ(t)のテーブルの一例である。
【図9】入力関数Fγ(t)のテーブルの一例である。
【図10】押し込み速度Z(t)に対するオブジェクト3の移動速度の変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態の説明を行う。図1は、本発明の一実施形態である操作入力装置101が使用されるシステムのブロック図である。操作入力装置101は、X,Y,Z軸によって定まる直交座標系において、XY平面の法線方向側から入力される操作者の手指等による操作入力を操作部11で受ける操作インターフェイスである。操作入力装置101は、操作部11で受けた操作入力に応じて変化する出力信号を出力する。その出力信号に基づいて操作者による操作入力が検出される。操作入力の検出によって、その検出された操作入力に対応する操作内容をコンピュータに把握させることができる。
【0011】
操作入力装置101は、ホスト1に搭載又は接続されるポインティングデバイスである。ホスト1との接続形態は、有線接続でもよいし、無線接続でもよい。ホスト1の具体例として、携帯端末(携帯電話、携帯ゲーム機、音楽や映像の携帯プレーヤーなど)、パーソナルコンピュータ、車両用コンピュータ、電化製品などの電子機器が挙げられる。また、ポインティングデバイスの具体例として、ゲーム機やテレビなどを操作するための操作コントローラ、マウスなどが挙げられる。操作入力装置101は、そのようなホスト1に搭載又は接続されるディスプレイ2の画面上に表示されるオブジェクト3を、操作者が意図した操作内容に従って、移動させることができる。オブジェクト3は、例えば、カーソルやポインタなどの指示表示である。キャラクターなどの表示物でもよい。また、操作者が所定の操作入力を与えることにより、その操作入力に対応する電子機器の所望の機能を発揮させることができる。
【0012】
操作入力装置101は、操作部11と、センサ14(センサ14A〜14D)と、検出回路97と、制御回路98とを備える多方向入力装置である。本実施形態では、センサ14が4個の場合について例示するが、センサ14の個数は、要求仕様等に応じて、変更できる。
【0013】
図2に示されるように、操作部11は、操作部11の操作面に直接又は間接的に作用する操作入力により押し込まれることによって、XY平面に対して任意の方向に傾倒する方向キーである。操作部11は、操作部11に操作入力が作用していないときの初期位置に復帰するように付勢する支持部材15で支持されているとよい。支持部材15は、例えば、操作部11をその初期位置に復帰させる弾性力を操作部11に付与する部材であればよく、支持部材15の具体例として、バネ、ゴム、スポンジなどが挙げられる。
【0014】
図1において、センサ14及び検出回路97は、操作入力による操作部11の押し込みを検出する検出部として機能する。センサ14は、例えば、操作部11の押し込み量を測定対象とする素子であって、操作部11の押し込み量に応じて変化するアナログ信号波形を検出回路97に対して出力するものである。検出回路97は、センサ14から出力されたアナログ信号波形を検出するADコンバータ97aを有し、ADコンバータ97aによってアナログ信号波形から取得されたデータを、操作部11の押し込み量に対応する検出データとして、制御回路98に対して供給する。
【0015】
センサ14は、例えば、センサ14と操作部11との距離に応じて変化するアナログ信号波形を出力する素子であるとよい。センサ14がこのような素子であれば、センサ14と操作部11との距離が操作部11の押し込み量に応じて変化するようにセンサ14を配置することによって、操作部11の押し込み量を非接触で測定できる。
【0016】
センサ14は、操作部11の押し込み量を非接触で測定できるように、例えば、操作部11の押し込み量に応じて自己インダクタンスが変化するコイルを備えるとよい。この場合、センサ14は、コイルの自己インダクタンスの変化を操作部11の押し込み量の変化として感知する。例えば、操作部11に対向する位置にコイルを固定し、操作部11にヨーク材を取り付けることで、操作部11の押し込みによりコイル周囲の透磁率が変化するため、コイルの自己インダクタンスを容易に変化させることができる。操作部11自体をヨーク材にしてもよい。また、操作部11に対向する位置にヨーク材を固定し、操作部11にコイルを取り付けても、操作部11の押し込み量に応じてコイルの自己インダクタンスを容易に変化させることができる。
【0017】
検出回路97は、センサ14から出力されたアナログ信号波形から、センサ14のコイルの自己インダクタンスの変化に等価的に変化する物理量を検出することで、その物理量の検出値を操作部11の押し込み量に対応する検出データとして制御回路98に対して供給する。検出回路97は、例えば、センサ14のコイルにパルス信号を供給することによって、センサ14から出力されたアナログ信号波形に、コイルの自己インダクタンスの変化に等価的に変化する物理量を発生させる。
【0018】
例えば、コイルの軸方向においてコイルと操作部11との距離が近づくにつれて、コイル周辺の透磁率が増加し、コイルの自己インダクタンスが増加する場合を考える。コイルの自己インダクタンスが増加するにつれて、パルス信号の供給によりコイルの両端に発生するパルス電圧波形の振幅も大きくなる。検出回路97は、その振幅をコイルの自己インダクタンスの変化に等価的に変化する物理量として検出することで、その振幅の検出値を操作部11の押し込み量に対応する検出データとして制御回路98に対して供給できる。
【0019】
また、例えば、コイルの自己インダクタンスが増加するにつれて、パルス信号の供給によりコイルに流れるパルス電流波形の傾きが緩やかになる。検出回路97は、その傾きをコイルの自己インダクタンスの変化に等価的に変化する物理量として検出することで、その傾きの検出値を操作部11の押し込み量に対応する検出データとして制御回路98に対して供給できる。
【0020】
図1の場合、4個のセンサ14A〜14Dが、三次元の直交座標系の基準点である原点Oとの距離が等しい点を結んでできる仮想的な円の円周方向に等間隔に並べられている。このように、操作部11の押し込み量を互いに異なる位置に配置された複数のセンサ14で測定することで、操作入力による操作部11の押し込みの位置を検出できる。図1の場合、各センサは、X軸とY軸に挟まれるXY平面内の斜め45°の4方向に、円周方向に90°毎に配置されている。なお、各センサは、X,Y軸上に90°毎に配置されてもよい。
【0021】
また、操作部11の押し込みの位置は、XY平面上の押し込み方向として捉えることができるので、例えば、基準軸(例えば、X軸)に対するXY平面上の入力角度θによって表すことができる。
【0022】
制御回路98は、センサ14及び検出回路97によって検出された操作部11の押し込みの位置に対応する方向に、ディスプレイ2上のオブジェクト3を移動させるための制御信号をホスト1に送信する制御部である。制御回路98は、例えば、中央演算処理装置(CPU)を備えるマイクロコンピュータである。
【0023】
図3は、制御回路98の処理フローである。制御回路98は、操作部11の押し込み量に対応する検出データを、所定のサンプリング周期dt毎に、検出回路97から取得する。すなわち、時間間隔dt毎の検出データを取得する。ステップS10において、制御回路98は、検出回路97から供給された操作部11の押し込み量に対応する検出データに基づいて、時刻tにおける操作部11の入力角度θ(t)と、入力角度θ(t)における操作部11の押し込み量Z(t)とを算出する。ステップS12において、制御回路98は、算出された入力角度θ(t)及び押し込み量Z(t)に基づいて、オブジェクト3を移動させるための制御信号としてオブジェクト3の移動量を算出し、算出したオブジェクト3の移動量をホスト1に対して送信する。ステップS12の処理後、ステップS10の処理が再び繰り返される。
【0024】
図4は、入力角度θ(t)及び押し込み量Z(t)を算出する図3のステップS10における詳細な処理フローである。
【0025】
ステップS20では、制御回路98は、センサ14A〜14D毎に得られた操作部11の押し込み量に対応する検出データを組み合わせることで、時刻tにおける操作部11の押し込みの位置(操作入力のXY平面上の作用点)のX軸方向成分X(t)及びY軸方向成分Y(t)を算出する。各センサ14A〜14Dが図1のように配置されている場合、時刻tにおけるX軸方向成分X(t)及び時刻tにおけるY軸方向成分Y(t)は、
(t)=−Z(t)+Z(t)+Z(t)−Z(t)
(t)=−Z(t)−Z(t)+Z(t)+Z(t)
に従って算出可能である。なお、Z(t)は、時刻tにおいてセンサ14Aによって得られた操作部11の押し込み量に対応する検出データを表す。Z(t)は、時刻tにおいてセンサ14Bによって得られた操作部11の押し込み量に対応する検出データを表す。Z(t)は、時刻tにおいてセンサ14Cによって得られた操作部11の押し込み量に対応する検出データを表す。Z(t)は、時刻tにおいてセンサ14Dによって得られた操作部11の押し込み量に対応する検出データを表す。
【0026】
ステップS22では、制御回路98は、ステップS20で算出されたX軸方向成分X(t)及びY軸方向成分Y(t)を用いて、時刻tにおける入力角度θ(t)を算出する。入力角度θ(t)は、
θ(t)=tan−1(Y(t)/X(t))
に従って算出可能である。
【0027】
ステップS24では、制御回路98は、ステップS20で算出されたX軸方向成分X(t)及びY軸方向成分Y(t)を用いて、入力角度θ(t)における押し込み量Z(t)を算出する。押し込み量Z(t)は、
Z(t)=√(X(t)+Y(t)
に従って算出可能である。
【0028】
図5は、オブジェクト3の移動量を算出する図3のステップS12における詳細な処理フローである。オブジェクト3の移動量は、基本的には操作部11の押し込み量Z(t)に従って変化するが、操作部11の押し込み可能なストローク長が短いと、操作者が操作部11の押し込み量を指先で微調整しにくいことがある。そこで、操作部11の操作性を確保したまま操作入力装置の小型化を可能にするため、操作部11の押し込み速度(言い換えれば、操作部11の押し込み量の単位時間当たりの変化量)をオブジェクト3の移動速度の制御に利用する。
【0029】
制御回路98は、操作部11の押し込み速度が速いときには遅いときに比べて、オブジェクト3の移動速度が速くするように制御する。例えば、操作部11が弱く押し込まれると、操作部11の押し込み速度が遅くなるため、操作部11が強く押し込まれるときに比べて、オブジェクト3の移動速度は遅くなる。また、操作部11が強く押し込まれると、操作部11の押し込み速度は速くなるため、操作部11が弱く押し込まれるときに比べて、オブジェクト3の移動速度は速くなる。このように、制御回路98は、操作部11の押し込み速度の大小に応じて、オブジェクト3の操作解像度を変更させる。
【0030】
また、操作部11の押し込み可能なストローク長が短いと、操作部11の押し込み速度は、すぐに零まで減少して飽和してしまう。しかしながら、実使用を想定すると、操作部11が押し込まれている間は押し込み速度が零になったとしても、オブジェクト3を動かし続けることが望ましい。そこで、制御回路98は、例えば、操作部11が押し込まれている状態において操作部11の押し込み速度が零のとき、操作部11が押し込まれている状態において操作部11の押し込み速度が零に到達する前に設定されたオブジェクト3の移動速度が維持されるように、オブジェクト3の移動を制御する。
【0031】
図5の処理フローについて説明する。
【0032】
ステップS30では、制御回路98は、上述のように算出された押し込み量Z(t)に基づいて、操作部11に作用する操作入力があるか否かを判断する。操作入力が作用していない状態であっても、例えばノイズの影響によって、センサ14又は検出回路97のADコンバータ97aの出力が微小に変動している場合がある。そこで、制御回路98は、押し込み量Z(t)が所定の押し込み量閾値Zth(例えば、零又は零近傍の微小値)以下のとき、操作部11に作用する操作入力がないとみなして、オブジェクト3の移動量を零に設定する(ステップS32)。一方、制御回路98は、押し込み量Z(t)が押し込み量閾値Zthを超えるとき、その押し込み量Z(t)を用いて、操作部11の押し込み速度Z(t)を算出する(ステップS34)。
【0033】
ステップS34では、制御回路98は、操作部11の異なる複数のタイミングで検出された押し込み量Zを用いて、時刻tにおける操作部11の押し込み速度Z(t)を演算する。例えば図6に示されるように、制御回路98は、2つの連続するサンプリングタイミングでサンプリングされた操作部11の押し込み量Z(t−1)及びZ(t)を使用して、押し込み速度Z(t)を算出する。すなわち、押し込み速度Z(t)は、
(t)=dZ(t)/dt
=(Z(t)−Z(t−1))/dt
に従って算出可能である。押し込み速度Z(t)は、サンプリング周期dt毎に算出される。また、押し込み速度Z(t)は、正の値のとき、操作部11の押し込み量が増加している状態を表し、負の値のとき、操作部11の押し込み量が減少している状態を表す。なお、押し込み速度Z(t)は、3つ以上の連続するサンプリングタイミングでサンプリングされた操作部11の押し込み量を使用して算出されてもよい。
【0034】
制御回路98は、ステップS34で算出された押し込み速度Z(t)の大きさに応じて、オブジェクト3の移動量の算出方法を変更する。
【0035】
ステップS36では、制御回路98は、ステップS34で算出された押し込み速度Z(t)に基づいて、操作部11の押し込み量が変化しているか否かを判断する。例えば、制御回路98は、押し込み速度Z(t)の絶対値が所定の押し込み速度閾値ZVth1(例えば、零又は零近傍の微小値)以下のとき、操作部11が押し込まれたまま操作部11の押し込み量が変化していないと判断する。一方、制御回路98は、押し込み速度Z(t)の絶対値が押し込み速度閾値ZVth1を超えるとき、操作部11の押し込み量が変化していると判断する。
【0036】
制御回路98は、押し込み速度Z(t)の絶対値が押し込み速度閾値ZVth1を超えるとき(操作部11の押し込み量が変化しているとき)、押し込み速度Z(t)を用いて加速度関数Fα(t)を算出する(ステップS38)。加速度関数Fα(t)は、押し込み速度Z(t)の関数であって、オブジェクト3の移動量を算出するためのパラメータである。加速度関数Fα(t)の使用によって、押し込み速度Z(t)に応じてオブジェクト3の移動速度を増減させることができる。制御回路98は、例えば、押し込み速度Z(t)の増加に対して加速度関数Fα(t)が増加するテーブルに従って(図7参照)、現在の時刻tにおける押し込み速度Z(t)に対応する加速度関数Fα(t)を算出する。
【0037】
一方、制御回路98は、押し込み速度Z(t)の絶対値が押し込み速度閾値ZVth1以下のとき(操作部11が押し込まれたまま操作部11の押し込み量が変化していないとき)、加速度関数Fα(t)を更新せずに、更新前のタイミングで算出された加速度関数Fα(t)を、オブジェクト3の移動量の算出に用いる。すなわち、制御回路98は、加速度関数Fα(t)を新たに算出せずに、押し込み速度Z(t)の絶対値が押し込み速度閾値ZVth1を超えていたときに算出された直前の加速度関数Fα(t)を用いて、オブジェクト3の移動量を算出する。
【0038】
ステップS40では、制御回路98は、押し込み速度Z(t)が所定の押し込み速度閾値ZVth2以上か否かを判定する。押し込み速度閾値Vth2は、押し込み速度閾値ZVth1以上の値に設定される。制御回路98は、押し込み速度Z(t)が押し込み速度閾値ZVth2以上のとき、押し込み量Z(t)を用いて入力関数Fγ(t)を算出せずに、押し込み継続時間dtcを用いて時間関数Fβ(t)を算出する(ステップS42)。一方、制御回路98は、押し込み速度Z(t)が押し込み速度閾値ZVth2未満のとき、押し込み継続時間dtcを用いて時間関数Fβ(t)を算出せずに、押し込み量Z(t)を用いて入力関数Fγ(t)を算出する(ステップS44)。
【0039】
ステップS42の時間関数Fβ(t)の算出について説明する。操作者が意識的にオブジェクト3を速く動かすために操作部11を強く押すと、操作部11の押し込み速度が速くなるため、操作部11は操作部11のストローク限界まで一瞬に到達してしまう。そのため、加速度関数Fα(t)を用いるだけでは、操作部11がストローク限界まで押し切られた状態では、オブジェクト3の移動速度を大きくすることができない。そこで、制御回路98は、押し込み継続時間dtcに応じて変化する時間関数Fβ(t)を使用することによって、押し込み継続時間dtcが長くなるにつれて、オブジェクト3の移動速度が速くなるように制御する。これにより、操作性が向上する。
【0040】
時間関数Fβ(t)は、押し込み継続時間dtcの関数であって、オブジェクト3の移動量を算出するためのパラメータである。時間関数Fβ(t)の使用によって、押し込み継続時間dtcに応じてオブジェクト3の移動速度を増減させることができる。制御回路98は、例えば、押し込み継続時間dtcの増加に対して時間関数Fβ(t)が増加するテーブルに従って(図8参照)、現在の時刻tにおける押し込み継続時間dtcに対応する時間関数Fβ(t)を算出する。
【0041】
押し込み継続時間dtcは、操作部11が押し込まれていない状態からの押し込み状態の継続時間を表す。押し込み継続時間dtcは、例えば、サンプリング周期dtと操作部11の押し込み中のサンプリング回数との積で表すことができる。
【0042】
つまり、制御回路98は、押し込み速度Z(t)が押し込み速度閾値ZVth2以上のとき、オブジェクト3の高速移動を重視するため、押し込み継続時間dtcが長くなるにつれてオブジェクト3の移動速度を速くする(すなわち、オブジェクト3を加速させる)。一方、制御回路98は、押し込み速度Z(t)が押し込み速度閾値ZVth2未満のとき、オブジェクト3の位置制御の精度を重視するため、時間関数Fβ(t)を固定値(例えば、1)に固定する(すなわち、押し込み経過時間dtcに応じて、オブジェクト3の移動速度は変化しない)。
【0043】
次に、ステップS44の入力関数Fγ(t)の算出について説明する。操作部11の押し込みが弱ければ、指先の力を加減することで、操作部11の押し込み量を操作部11の押し込み可能なストローク範囲内で微調整できる。そこで、制御回路98は、押し込み量Z(t)に応じて変化する入力関数Fγ(t)を使用することで、押し込み量Z(t)が大きくなるにつれて、オブジェクト3の移動速度が速くなるように制御する。これにより、操作性が向上する。
【0044】
入力関数Fγ(t)は、押し込み量Z(t)の関数であって、オブジェクト3の移動量を算出するためのパラメータである。入力関数Fγ(t)の使用によって、押し込み量Z(t)に応じてオブジェクト3の移動速度を増減させることができる。制御回路98は、例えば、押し込み量Z(t)の増加に対して入力関数Fγ(t)が増加するテーブルに従って(図9参照)、現在の時刻tにおける押し込み量Z(t)に対応する入力関数Fγ(t)を算出する。
【0045】
つまり、制御回路98は、押し込み速度Z(t)が押し込み速度閾値ZVth2未満のとき、オブジェクト3の位置制御の精度を重視するため、押し込み量Z(t)が大きくなるにつれてオブジェクト3の移動速度を速くする(すなわち、オブジェクト3を加速させる)。一方、制御回路98は、押し込み速度Z(t)が押し込み速度閾値ZVth2以上のとき、オブジェクト3の高速移動を重視するため、入力関数Fγ(t)を固定値(例えば、1)に固定する(すなわち、押し込み量Z(t)に応じて、オブジェクト3の移動速度は変化しない)。
【0046】
ステップS46では、制御回路98は、オブジェクト3の移動量を算出する。オブジェクト3の移動量は、操作部11の押し込み量Z(t)及び入力角度θ(t)、並びに前述の各種関数を合成することで算出される。例えば、オブジェクト3の画面上のX方向の移動量Xo(t)及びオブジェクト3の画面上のY方向の移動量Yo(t)は、
Xo(t)=Fα(t)×Fβ(t)×Fγ(t)×Z(t)×cosθ(t)
Yo(t)=Fα(t)×Fβ(t)×Fγ(t)×Z(t)×sinθ(t)
に従って算出可能である。ただし、操作部11に操作入力が作用していないときは、Xo(t)及びYo(t)は共に零とする。
【0047】
ステップS48では、制御回路98は、ステップS46で算出されたXo(t)及びYo(t)をホスト1に出力する。
【0048】
図10に、最終的なオブジェクト3の移動量の遷移例を示す。図10は、操作部11の押し込み量Z(t)が0.5であるタイミングでの比較データを示す(Z(t)の最大値は1とする)。図10において、キー押下時間tは、操作部11の押し込み継続時間dtcを表し、ストロークZは、操作部11の押し込み量Z(t)を表す。図10に示されるように、本実施例によれば、押し込み速度Z(t)が所定の押し込み速度閾値Vth2未満のとき、押し込み継続時間dtcよりも押し込み量Z(t)の方がパラメータとしての重きが大きくなるため、オブジェクト3の移動速度を押し込み量Z(t)に応じて変化させることができる。また、押し込み速度Z(t)が所定の押し込み速度閾値Vth2以上のとき、押し込み量Z(t)よりも押し込み継続時間dtcの方がパラメータとしての重きが大きくなるため、オブジェクト3の移動速度を押し込み継続時間dtcに応じて変化させることができる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形、改良及び置換を加えることができる。上述の実施例それぞれの各部の構成を組み合わせてもよい。
【0050】
例えば、上述の実施例では、センサ14が、コイルの自己インダクタンスの変化を操作部11の押し込み量の変化として感知する素子である場合を例示した。しかしながら、センサ14は、静電容量の変化を操作部11の押し込み量の変化として感知する素子でもよいし、抵抗値の変化を操作部11の押し込み量の変化として感知する素子でもよいし、その他の物理量の変化を操作部11の押し込み量の変化として感知する素子でもよい。
【0051】
また、本発明の操作入力装置は、手指に限らず、手のひらで操作するものあってもよい。また、足指や足の裏で操作するものであってもよい。また、操作者が触れる面は、平面でも、凹面でも、凸面でもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 ホスト
2 ディスプレイ
3 オブジェクト
11 操作部
14A〜14D センサ
15 支持部材
97 検出回路
98 制御回路
101 操作入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部と、
前記操作部の押し込みを検出する検出部と、
前記検出部によって検出された押し込みの位置に対応する方向に、画面上のオブジェクトを移動させる制御部とを備える操作入力装置であって、
前記制御部は、前記操作部の押し込み速度に応じて、前記オブジェクトの移動速度を変化させることを特徴とする、操作入力装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記押し込み速度が速いとき遅いときに比べて、前記移動速度を速くする、請求項1に記載の操作入力装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記押し込み速度が所定の閾値以上のとき、前記操作部の押し込み時間に応じて前記移動速度を変化させる、請求項1又は2に記載の操作入力装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記押し込み速度が所定の閾値未満のとき、前記操作部の押し込み量に応じて前記移動速度を変化させる、請求項1から3のいずれか一項に記載の操作入力装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記操作部の押し込み状態で前記押し込み速度が零のとき、前記オブジェクトを移動させる、請求項1から4のいずれか一項に記載の操作入力装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記操作部の押し込み状態で前記押し込み速度が零のとき、前記操作部の押し込み状態で前記押し込み速度が零になる前の前記移動速度が維持されるように、前記オブジェクトを移動させる、請求項5に記載の操作入力装置。
【請求項7】
前記押し込み速度は、前記操作部の異なるタイミングで検出された押し込み量を用いて演算される、請求項1から6のいずれか一項に記載の操作入力装置。
【請求項8】
操作部の押し込みを検出し、検出された押し込みの位置に対応する方向に、画面上のオブジェクトを移動させる操作入力装置の制御方法であって、
前記操作部の押し込み速度に応じて、前記オブジェクトの移動速度を変化させることを特徴とする、操作入力装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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