説明

操作装置

【課題】より多くの自由度について同時に操作することができるとともに、使用者の疲労感を低減することが可能な操作装置を提供すること。
【解決手段】互いに直交する方向xおよび方向yのそれぞれに沿って独立して並進可能なスティック2と、スティック2の方向x並進量および方向y並進量を独立して検出可能な検出手段3と、を備える操作装置A1であって、スティック2は、方向xおよび方向yに直交する方向zに沿って独立して並進可能とされており、検出手段3は、スティック2の方向z並進量をさらに独立して検出可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば産業用の6軸ロボットのティーチング作業などに用いられる操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図13は、従来の操作装置の一例を示している。同図に示された操作装置Xは、グリップ部91に埋め込まれたトラックボール92を備えている。トラックボール92は、グリップ部91に対して回転可能に支持されている。操作装置Xを用いた操作においては、トラックボール92の回転を、x軸まわりの回転方向αの回転と、y軸まわりの回転方向βの回転とに分解し、それぞれの回転の向きと量を検出する。たとえば、産業用の6軸ロボットのティーチングを行う場合には、回転方向αおよび回転方向βを、上記ロボットの動作を定義する任意の2自由度に対応させる。これにより、トラックボール92を回転させるという操作により、上記ロボットに対して上記2自由度についてのティーチング作業をすることができる。
【0003】
しかしながら、上記ロボットは6つの自由度を有していることにより、自動車の溶接工程などをはじめとする3次元空間における複雑な作業が可能とされている。これに対し、トラックボール92により操作可能な自由度は、回転方向αおよび回転方向βの2自由度のみである。このため、上記ロボットの6つの自由度に対して同時に操作を行うことは不可能である。たとえば、追加のトラックボールや、他のボタンなどを用いてさらに操作することが強いられる。使用者にとって、2自由度のみの指示手段であるトラックボールは、甚だ不便である。
【0004】
また、上記ロボットをティーチングするには、たとえば上記ロボットのアームに取り付けられた作業用のツールを基準として、並進3方向、回転3方向の計6自由度について操作することが、効率良くティーチングするのに好ましい。しかし、トラックボール92による操作は、回転操作のみである。この回転操作を上記ロボットの並進動作に当てはめると、実際のロボットを並進させるのにトラックボール92を回転させることを強いられる。これは、使用者が操作しようとする上記ロボットの動きにそぐわない操作であるため、使用者の疲労感を増大させる場合があった。
【0005】
【特許文献1】特開平10−240332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、より多くの自由度について同時に操作することができるとともに、使用者の疲労感を低減することが可能な操作装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面によって提供される操作装置は、互いに直交する第1方向および第2方向のそれぞれに沿って独立して並進可能な指示手段と、上記指示手段の上記第1方向並進量および上記第2方向並進量を独立して検出可能な検出手段と、を備える操作装置であって、上記指示手段は、上記第1方向および上記第2方向に直交する第3方向に沿って独立して並進可能とされており、上記検出手段は、上記指示手段の上記第3方向並進量をさらに独立して検出可能であることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、上記指示手段により互いに異なる3つの方向について並進量を指示することが可能である。したがって、3次元空間における様々な並進移動の操作を適切に行うことができる。
【0010】
本発明の第2の側面によって提供される操作装置は、互いに直交する第1方向および第2方向に沿って延びる第1軸および第2軸のそれぞれまわりに独立して回転可能な指示手段と、上記指示手段の上記第1軸まわり回転量および上記第2軸まわり回転量を独立して検出可能な検出手段と、を備える操作装置であって、上記指示手段は、上記第1方向および上記第2方向に直交する第3方向に沿って延びる第3軸まわりにさらに独立して回転可能とされており、上記検出手段は、上記指示手段の上記第3軸まわり回転量をさらに独立して検出可能であることを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、上記指示手段により互いに異なる3つの回転方向について回転量を指示することが可能である。したがって、3次元空間におけるロボットの姿勢変更など様々な回転移動の操作を適切に行うことができる。
【0012】
本発明の第3の側面によって提供される操作装置は、並進または回転可能な指示手段と、上記指示手段の並進量または回転量を検出可能な検出手段と、を備える操作装置であって、上記指示手段は、互いに直交する第1方向、第2方向、および第3方向に沿って独立に並進可能であるとともに、上記第1方向、上記第2方向、および上記第3方向に沿って延びる第1軸、第2軸、および第3軸のそれぞれまわりに独立して回転可能であり、上記検出手段は、上記指示手段の上記第1方向並進量、上記第2方向並進量、および上記第3方向並進量と、上記指示手段の上記第1軸まわり回転量、上記第2軸まわり回転量、および上記第3軸まわり回転量と、を独立して検出可能であることを特徴としている。
【0013】
このような構成によれば、3方向の並進および3回転方向の回転の計6自由度について、上記指示手段によって指示することが可能である。したがって、たとえば産業用の6軸ロボットの操作を多数のスイッチなどによらず、1つの上記指示手段を用いて指示することにより操作することができる。これは、上記操作装置の構成を簡便化するとともに、使用者の疲労感を軽減するのに適している。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記検出手段に対して、上記指示手段の並進量のみを検出する並進量検出モードと、上記指示手段の回転量のみを検出する回転量検出モードと、の検出モード切替を行う検出モード切替手段をさらに備える。このような構成によれば、上記指示手段を用いた指示において、並進と回転とが誤って検出されることを防止することができる。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記指示手段に対して、並進のみを許容し回転を阻止する並進モードと、回転のみを許容し並進を阻止する回転モードと、の動作モード切替を行う動作モード切替手段をさらに備える。このような構成によれば、たとえば上記ロボットに並進動作をさせるときには上記指示手段を並進モードとし、上記ロボットに回転動作をさせるときには上記指示手段を回転モードとするといった使用方法が可能となる。これにより、上記ロボットの実際の動きと上記操作装置における指示動作とが同じ性質の動きとなる。したがって、使用者の感覚に沿った操作を実現できる。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記検出手段は、上記第1方向において、上記指示手段を挟んで対向配置された1対の第1弾性部材と、上記1対の第1弾性部材に生じた弾性力を検出する1対の第1検出器と、上記第2方向において、上記指示手段を挟んで対向配置された1対の第2弾性部材と、上記1対の第2弾性部材に生じた弾性力を検出する1対の第2検出器と、を含んでいる。このような構成によれば、上記指示手段をその中立位置へと自然復帰させることができる。これにより、上記操作装置を用いた作業の煩わしさを低減することが可能である。また、たとえば上記ロボットの動作速度を上記指示手段の並進量に比例させれば、速い速度で動かすときほど大きな操作力が必要となる。これは、高速で上記ロボットなどを動作させていることを使用者に意識させるのに好適である。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記検出手段は、上記第1弾性部材の少なくとも一部が上記第2方向に変位したことを検知する第1変位検出器と、上記第2弾性部材の少なくとも一部が上記第1方向に変位したことを検知する第2変位検出器と、をさらに含んでいる。このような構成によれば、上記指示手段について上記第3軸まわりの回転の向きを適切に検出することができる。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記検出手段は、上記第1弾性部材および上記第2弾性部材の少なくとも一部ずつが上記第3方向に変位したことを検知する第3変位検出器をさらに含んでいる。このような構成によれば、上記第3方向における並進移動の向きを適切に検出することができる。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
図1〜図3は、本発明に係る操作装置の第1実施形態を示している。本実施形態の操作装置A1は、図1に示すケース1、図2に示すスティック2、検出手段3を備えており、方向x,y,zにおける並進および回転方向α,β,γにおける回転の計6自由度の操作が可能に構成されている。操作装置A1は、たとえば産業用の6軸ロボットのティーチングに用いられる装置であり、上記ロボットの固定箇所を基準とした、いわゆるグローバル座標系、あるいは上記ロボットのアーム先端に取り付けられたツールの作業点を基準とした、いわゆるツール座標系などにおいて計6自由度の操作を行うためのものである。
【0022】
ケース1は、図1に示すように全体として扁平な直方体形状となっているのが一般的であり、たとえば樹脂製である。ケース1は、スティック2および検出手段3などを支持および保護するためのものである。ケース1には、スティック2のほかに、上記ロボットの駆動電源スイッチ、上記グローバル座標系および上記ツール座標系などの座標系切替ボタンなどが適宜配置されている。また、ケース1には、ケーブル6が接続されている。ケーブル6は、たとえば上記ロボットの制御盤(図示略)に繋がっており、スティック2、上記スイッチ、上記ボタンなどによる使用者の指示入力を上記制御盤を介して上記ロボットへと伝達するためのものである。
【0023】
スティック2は、使用者が操作装置A1に対して指示入力するためのものであり、一端側が略球形状とされた棒状部材である。スティック2には、ボタン21aおよび突起21bが設けられている。図3に示すようにボタン21aが図中上方に突出しているときには、突起21bは、スティック2内に格納されている。一方、ボタン21aが図中下方に押し下げられると、突起21bは、スティック2から図中下方に突出する。突起21bが突出状態とされると、突起21bの先端は、ケース1に固定された支持部21cの凹部に進入する。ボタン21a,突起21bおよび支持部21cは、並進モードと回転モードとを切り替えるモード切替手段21の構成要素の一部である。
【0024】
スティック2は、ガイド22x、22yに対して摺動可能に支持されている。ガイド22x、22yは、スティック2を方向xおよび方向yのそれぞれにおいて独立に並進可能とするためのものである。ガイド22xは、ケース1に対して方向yにおいて並進可能に支持されている。ガイド22yは、ケース1に対して方向xにおいて並進可能に支持されている。
【0025】
検出手段3は、制御部30、1対ずつの圧力センサ31x,31y、2対ずつの近接センサ32x,32y、4対のタッチセンサ33、1対ずつのバネ35x,35yを含んでいる。1対ずつのバネ35x,35yは、それぞれの一端がスティック2に連結されている。1対のバネ35xは、スティック2を挟んで方向xにおいて対向配置されており、ガイド22x内に格納されている。1対のバネ35yは、スティック2を挟んで方向yにおいて対向配置されており、ガイド22y内に格納されている。
【0026】
1対ずつの圧力センサ31x,31yは、それぞれガイド22x,22yの両端寄りに配置されている。1対ずつの圧力センサ31x,31yには、1対ずつのバネ35x,35yの他端がそれぞれ連結されている。これにより、1対の圧力センサ31xは、スティック2の方向xにおける並進により1対のバネ35xに生じた弾性力の方向および大きさを検知可能とされている。また、1対の圧力センサ31yは、スティック2の方向yにおける並進により1対のバネ35yに生じた弾性力の方向および大きさを検知可能とされている。
【0027】
2対ずつの近接センサ32x,32yは、それぞれガイド22x,22yの内面においてバネ35x,35yを挟んで対向配置されている。近接センサ32x、32yは、バネ35x,35yが一定距離以上に近づいたことを検知するためのものである。
【0028】
4対のタッチセンサ33は、図2に示すように、ガイド22x,22yの両端寄りに配置されている。図3に示すように、各対のタッチセンサ33は、バネ35xまたはバネ35yを挟んで方向zにおいて対向配置されている。各タッチセンサ33は、バネ35x,35yが接触したことを検知可能とされている。
【0029】
図2に示すように、制御部30には、1対ずつの圧力センサ31x,31y、2対ずつの近接センサ32x,32y、4対のタッチセンサ33、1対ずつのバネ35x,35yが接続されている。制御部30は、後述するアルゴリズムによりスティック2の並進量および回転量を算出するためのものである。また、制御部30の機能の一部は、上述したモード切替手段21の構成要素となっている。
【0030】
次に、操作装置A1を用いた操作方法について、以下に説明する。
【0031】
まず、スティック2を方向x、方向y、方向zに並進させる並進モードにおける操作方法について説明する。並進モードで操作する場合、図4に示すように、ボタン21aを図中上方へと突出させ、突起21bがスティック2内に格納された状態としておく。ボタン21aが上方位置にあることをセンサ(図示略)により検出し、この信号により制御部30の処理を並進モードに切替える。
【0032】
図4は、スティック2を方向xに並進させる場合を示している。スティック2を方向x図中左方に並進させる。この動作により、1対のバネ35xに弾性力が生じる。方向x図中左方を正とすると、各圧力センサ31xには、同じ方向を向く(+Fx)の力が作用する。ここで、Fxは、バネ35xに生じる弾性力の絶対値である。バネ35xのバネ定数をkx、スティック2の方向xにおける並進量をΔxとすると、Fx=kx×Δxである。したがって、1対の圧力センサ31xからの出力を制御部30に取り込むことにより、スティック2の方向xにおける並進運動の方向および並進量Δxを検出することができる。たとえば、スティック2の方向xにおける並進を、上記ロボットのツール座標系における1自由度の並進移動に対応させた場合、上記ロボットの上記作業用ツールが上記1自由度について並進する。このときの並進速度は、スティック2の並進量Δxに比例させる。
【0033】
スティック2を方向yに移動させた場合は、上述した方向xにおける並進と同様に、1対の圧力センサ31yに1対のバネ35yの弾性力が作用する。各圧力センサ31yによって、この弾性力の絶対値Fy=ky×Δy(kyは、バネ35yのバネ定数、Δyは、スティック2の方向yにおける並進量)とその方向を検知する。そして、1対の圧力センサ31yからの出力を制御部30に取り込むことにより、スティック2の方向yにおける並進運動の方向および並進量Δyを検出することができる。スティック2の方向yにける並進は、上記ツール座標系における他の自由度の並進移動に対応させる。
【0034】
以上の説明から理解されるようにスティック2の方向xおよび方向yにおける並進量は、1対ずつの圧力センサ31x,31yを用いて各別に検出可能である。したがって、スティック2を方向xおよび方向yにおいて同時に並進させても、方向xおよび方向yそれぞれの並進量が検出される。
【0035】
図5は、スティック2を方向z図中上方へと並進させた状態を示している。この場合、1対ずつのバネ35x,35yは、ともに伸ばされることとなる。図示されたように、1対のバネ35xを例にすると、各バネ35xの伸びは、スティック2の方向zにおける並進量Δzに比例する。このときに各バネ35xの伸びの絶対値をΔxzとすると、1対の圧力センサ31xには、互いの方向が反対であり、絶対値がFxz=kx×Δxzである弾性力(+Fxz)と(−Fxz)とが作用する。
【0036】
ここで、1対の圧力センサ31xに弾性力が作用するケースとして、上述したようにスティック2が方向xにおいて並進した場合がある。この場合、各圧力センサ31xに作用する弾性力は、同じ方向を向く弾性力(+Fx)である。したがって、スティック2を方向xおよび方向zにおいて同時に並進させた場合には、一方の圧力センサ31xには(+Fx)+(+Fxz)の弾性力が作用し、他方の圧力センサ31xには、(+Fx)+(−Fxz)の弾性力が作用する。したがって、1対の圧力センサ31xに作用した弾性力の和を制御部30により演算すると、(+2Fx)のみが残る。これは、スティック2の方向xにおける並進量の検出に利用できる。一方、1対の圧力センサ31xに作用した弾性力の差を制御部30により演算すると、(+2Fxz)のみが残る。これは、スティック2の方向zにおける並進量Δzの絶対値の検出に利用できる。これにあわせて、スティック2の方向zにおける並進方向を各対のタッチセンサ33により検出する。すなわち、図5に示すように、スティック2が図中上方に並進させられると、図中上側のタッチセンサ33がon状態となる。これにより、スティック2の方向zにおける並進の方向を検出することができる。スティック2の方向zにおける並進は、たとえば上記ツール座標系において上記ツールを対象物に対して進退させる方向における並進に対応させるとよい。すなわち、上述したスティック2の方向xおよび方向yにおける並進は、上記進退方向とそれぞれ直交する方向における並進に対応させることとなる。なお、方向xに代えて方向yにおける並進が方向zにおける並進と同時になされた場合も同様である。
【0037】
以上より、操作装置A1は、スティック2の方向x,方向y,方向zのそれぞれにおける並進量を独立して検出可能とされている。
【0038】
次に、スティック2を回転方向α、回転方向β、回転方向γに回転させる回転モードにおける操作方法について説明する。回転モードで操作する場合、図6に示すように、ボタン21aを図中下方へと押し込み、突起21bをスティック2から突出させる。突出させられた突起21bは、支持部21cによって支持される。好ましくは、突起21cの先端形状を球状とし、支持部21cにこの球状部分に嵌合する弾性変形可能な凹部を形成しておく。ボタン21aを図中下方へと押し込むと、突起21cの上記球状部が支持部21cの上記凹部を押し広げるようにして進入し嵌合する。この状態においては、スティック2は方向x、方向y、方向zにおける並進が阻止され、回転方向α、回転方向β、回転方向γにおける回転のみが許容される。また、ボタン21aが下方位置にあることを上記センサ(図示略)により検出し、この信号により制御部30における処理を回転モードに切替える。
【0039】
図6は、スティック2を方向y軸まわりの回転方向である回転方向βについて回転させた状態を示している。このとき、1対のバネ35xにおいては、図中左方のバネ35xが伸ばされ、図中右方のバネ35xが縮められる。これにより、1対の圧力センサ31xには、互いの方向が同じである弾性力(+Fyβ)が作用する。1対の圧力センサ31xからの出力を制御部30に取り込むことにより、スティック2の回転方向βにおける回転方向および回転量を検出することができる。なお、スティック2の方向x軸まわりの回転方向である回転方向αにおける回転量の検出も、これと同様に行うことができる。また、スティック2を回転方向αおよび回転方向βにおいて同時に回転させても、回転方向αおよび回転方向βにおける回転量を各別に検出することが可能である。
【0040】
図7は、スティック2を方向z軸まわりの回転方向である回転方向γに回転させた状態を示している。この場合、1対ずつのバネ35x,35yは、ともに伸ばされることとなる。1対のバネ35xを例にとると、1対のバネ35xの伸びにより、1対の圧力センサ31xには、互いの方向が異なる弾性力(+Fxγ)と(−Fxγ)とが作用する。さらに、スティック2が回転方向βおよび回転方向γにおいて同時に回転させられると、一方の圧力センサ31xには、(+Fxβ)+(+Fxγ)の弾性力が作用し、他方の圧力センサ31xには、(+Fxβ)+(−Fxγ)の弾性力が作用する。したがって、1対の圧力センサ31xに作用した弾性力の和を制御部30により演算すると、(+2Fxβ)のみが残る。これは、スティック2の回転方向βにおける回転量の検出に利用できる。一方、1対の圧力センサ31xに作用した弾性力の差を制御部30により演算すると、(+2Fxγ)のみが残る。これは、スティック2の回転方向γにおける回転量の絶対値の検出に利用できる。また、1対のバネ35xを挟む2対の近接センサ32xのうち、本図においては、図中左上と図中右下とに位置する近接センサ32xがon状態となる。この出力を制御部30に取り込むことにより、スティック2の回転方向γにおける回転の方向を検出することができる。なお、回転方向βに代えて回転方向αにおける回転が回転方向γにおける回転と同時になされた場合も同様である。これに加えて、スティック2が回転方向αおよび回転方向βにおいて同時に回転させられた状態で、さらに回転方向γにおいて回転させられた場合であっても、1対ずつの圧力センサ31x,31yに作用した弾性力を制御部30において演算することより、回転方向α,β,γそれぞれにおける回転量を独立して検出することができる。
【0041】
以上より、操作装置A1は、スティック2の回転方向α、回転方向β、回転方向γのそれぞれにおける回転量を独立して検出可能である。回転方向α、回転方向β、回転方向γにおける回転は、方向x、方向y、方向zに対応するツール座標系の並進方向軸まわりの回転に対応させる。また、スティック2の回転方向α、回転方向β、回転方向γにおける回転量と、それぞれの回転方向に対応する上記ツールの回転速度とを比例させる。
【0042】
次に、操作装置A1の作用について説明する。
【0043】
本実施形態によれば、6自由度の操作を1つのスティック2によって指示入力可能である。使用者は、6自由度の操作のために複数のスイッチを使い分けるといった煩わしい作業を強いられることが無い。したがって、使用者の疲労感を低減させることができる。また、並進モードと回転モードとを使い分けることにより、並進操作と回転操作とを誤って混同するおそれがない。これは、たとえば上記ロボットに誤った動作をさせて上記ロボットやその周辺の機械などを破損することを未然に防止するのに有利である。さらに、上記ツールを並進させるときには並進操作を行い、上記ツールを回転させるときには回転操作を行うといった操作方法は、使用者の感覚に比較的近い操作である。したがって、誤操作を抑制可能であるとともに、使用者の疲労感を軽減させるのに好適である。
【0044】
上記ツールの並進速度および回転速度をスティック2の並進量および回転量に比例させることにより、速い速度で操作するときほど使用者は指先により大きな力を込めることとなる。これは、速い速度で動作させていることを自然に意識させるのに有効であり、上記ロボットの操作を安全に行うのに好ましい。また、スティック2は、中立位置に自然復帰可能であるため、中立位置に戻す作業が不要であり、使用者の作業負担を軽減するのに適している。また、作業者が指を離せば、スティック2が中立位置に戻りロボットも停止するという、安全性をも備えている。
【0045】
1対ずつのバネ35x,35yの伸縮を利用することにより、並進量および回転量の双方を検出可能である。したがって、操作装置A1を簡便な構成とすることが可能であり、操作装置A1の軽量化、操作の容易さを向上させるのに適している。モード切替手段21に突起21bおよび支持部21cを備えることにより、モード切替手段21は、本発明でいう検出モード切替手段としての機能に加えて、本発明でいう動作モード切替手段としての機能も備えている。これにより、たとえばスティック2を並進させる動作によってスティック2が不当に回転してしまうことを防止可能である。これは、使用者の感覚に合った操作を提供するのに好適である。
【0046】
なお、上記実施形態の変形例として、モード切替手段21を構成するスイッチをスティック2とは別に設けてもよい。このスイッチのon/offにより制御部30の処理を切替えることのみによっても、スティック2の並進および回転を検出可能である。
【0047】
図8〜図12は、本発明に係る操作装置の第2実施形態を示している。図8に示すように、本実施形態の操作装置A2は、2つのスティック2A,2Bを備えている点が上述した第1実施形態と異なっている。なお、図8以降においては、上記第1実施形態と類似の要素については、同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
【0048】
スティック2Aは、方向x、方向y、方向zにおける並進を指示入力するためのものであり、スティック2Bは、回転方向α、回転方向β、回転方向γにおける回転を指示入力するためのものである。また、操作装置A2には、上述した操作装置A1と類似の制御部(図示略)が備えられている。
【0049】
図9に示すように、スティック2Aは、3つのスライダ4x,4y,4zにより支持されている。スライダ4x,4y,4zは、スティック2を方向x、方向y、方向zに並進させ、かつその並進量を検出するためのものである。スライダ4zは、ケース1に対して固定されている。
【0050】
図10は、スライダ4xの断面を表している。本図に示されたように、スライダ4xは、ハウジング41、1対のバネ42、複数の電極43、および接点44を備えている。上記制御部は、スティック2の先端と各電極43とが接触することにより互いに導通したことを検出可能とされている。スティック2は、方向xに並進可能であるとともに、1対のバネ42により中立位置に自然復帰させられる。スティック2を方向xに並進させると、その並進量に応じて各電極43とスティック2とが導通する。この導通状態に基づいて、上記制御部によりスティック2の方向xにおける並進方向および並進量を検出することができる。スライダ4y,4zは、スライダ4xと同様の構成であり、並進方向が互いに直角とされているものである。このように、3つのスライダ4x,4y,4zを組み合わせた構成とすることにより、スティック2の方向x、方向y、方向zにおける並進移動をそれぞれ独立に検出することができる。
【0051】
図11は、スティック2Bとこれを支持する検出手段5とを示す全体斜視図である。検出手段5は、フレーム51α,51β、バネ52α,52β、複数ずつの電極53α,53β、および接点54α,54βを具備している。
【0052】
スティック2Bは、帯状部27を有している。帯状部27は、フレーム51αに対して貫通ピンにより支持されている。これにより、スティック2Bは、フレーム51αに対して回転方向αに回転可能に支持されている。1対のバネ52αは、スティック2Bを中立位置に自然復帰させるためのものである。帯状部27の先端には、接点54αが設けられている。フレーム51αの円弧部内側には複数の電極53αが配列されている。スティック2Bが回転方向αに回転させられると、その回転量に応じて接点54αと各電極53αとが接触する。この接触により接点54αと複数の電極53αのいずれかとが導通したことを上記制御部により検出可能としておく。これにより、上記制御部においてスティック2Bの回転方向αの回転量を検出することができる。
【0053】
フレーム51αは、フレーム51βに対して回転方向βに回転可能に支持されている。1対のバネ52βは、フレーム51αを中立位置に自然復帰させるためのものである。フレーム51αの図中下端には、接点54βが設けられている。フレーム51βの円弧部内側には、複数の電極53βが配列されている。スティック2Bを回転方向βに回転させると、これに応じてフレーム51αがフレーム51βに対して回転方向βに回転させられる。このとき、接点54βは、回転量に応じて各電極53βと接触する。上記制御部によって接点54βと各電極53βとの導通を検出することにより、スティック2Bの回転方向βにおける回転量を検出することができる。
【0054】
さらに、スティック2Bは、図11および図12に示すように、円筒部25と軸部26とが組み合わされた構成とされている。円筒部25は軸部26に対して回転方向γに回転可能に支持されている。図12に示すように、軸部26には、接点54γが設けられている。円筒部25の内面には、複数の電極53γが円周方向に配列されている。1対のバネ52γは、円筒部25を回転方向γにおける中立位置に自然復帰させるためのものである。円筒部25を回転方向γに回転させると、その回転量に応じて、接点54γと各電極53γとが順次接触する。上記制御部によって接点54γと各電極53γとの導通を検出することにより、円筒部25の回転方向γにおける回転量を検出することができる。
【0055】
このような構成によっても、3つの並進動作と3つの回転動作とを適切に指示入力することができる。2つのスティック2A,2Bを備えることにより、並進動作と回転動作とを同時に指示入力するのに適している。たとえば、左右の指をスティック2A,2Bに別々に添えると、多彩な操作を容易に行うことができる。
【0056】
本発明に係る操作装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る操作装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0057】
図示した指示手段および検出手段などの大きさは、説明の便宜上その構造が理解しやすい比率としている。上述した機能を適切に発揮可能な構造であればよく、上記操作装置に組み込むのに適したサイズおよび比率に変更可能であることはもちろんである。本発明でいう弾性部材は、バネに限定されず、弾性力を適切に発生可能な弾性部材であればよい。
【0058】
本発明に係る操作装置は、上述した6軸ロボットのティーチング作業に用いるのに適しているが、6軸ロボットに限らず6軸ロボットの補助軸(スライダ、ポジショナ等)のティーチング作業にも適している。また、その用途はこれらの産業用ロボットに限定されず、たとえばゲーム用のジョイスティックなど多自由度の指示入力に広く用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る操作装置の第1実施形態を示す全体平面図である。
【図2】本発明に係る操作装置の第1実施形態の要部平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う要部断面図である。
【図4】図1に示す操作装置の並進モードにおける使用状態を示す要部断面図である。
【図5】図1に示す操作装置の並進モードにおける使用状態を示す要部断面図である。
【図6】図1に示す操作装置の回転モードにおける使用状態を示す要部断面図である。
【図7】図1に示す操作装置の回転モードにおける使用状態を示す要部平面図である。
【図8】本発明に係る操作装置の第2実施形態を示す全体平面図である。
【図9】図8に示す操作装置の並進用指示手段を示す要部斜視図である。
【図10】図9のX−X線に沿う要部断面図である。
【図11】図8に示す操作装置の回転用指示手段を示す要部斜視図である。
【図12】図11のXII−XII線に沿う要部断面図である。
【図13】従来の指示手段の一例を示す要部斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
A1,A2 操作装置
x (第1)方向
y (第2)方向
z (第3)方向
α x(第1)軸まわりの回転方向
β y(第2)軸まわりの回転方向
γ z(第3)軸まわりの回転方向
1 ケース
2,2A,2B スティック(指示手段)
3 検出手段
4x,4y,4z スライダ
5 検出手段
6 ケーブル
21 (検出および動作)モード切替手段
21a ボタン
21b 突起
21c 支持部
22x,22y ガイド
25 円筒部
26 軸部
27 帯状部
30 制御部
31x 圧力センサ(第1検出器)
31y 圧力センサ(第2検出器)
32x 近接センサ(第1変位検出器)
32y 近接センサ(第2変位検出器)
33 タッチセンサ(第3変位検出器)
35x バネ(第1弾性部材)
35y バネ(第2弾性部材)
41 ハウジング
42 バネ
43 電極
44 接点
51α,51β フレーム
52α,52β,52γ バネ
53α,53β,53γ 電極
54α,54β,54γ 接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する第1方向および第2方向のそれぞれに沿って独立して並進可能な指示手段と、
上記指示手段の上記第1方向並進量および上記第2方向並進量を独立して検出可能な検出手段と、
を備える操作装置であって、
上記指示手段は、上記第1方向および上記第2方向に直交する第3方向に沿って独立して並進可能とされており、
上記検出手段は、上記指示手段の上記第3方向並進量をさらに独立して検出可能であることを特徴とする、操作装置。
【請求項2】
互いに直交する第1方向および第2方向に沿って延びる第1軸および第2軸のそれぞれまわりに独立して回転可能な指示手段と、
上記指示手段の上記第1軸まわり回転量および上記第2軸まわり回転量を独立して検出可能な検出手段と、
を備える操作装置であって、
上記指示手段は、上記第1方向および上記第2方向に直交する第3方向に沿って延びる第3軸まわりにさらに独立して回転可能とされており、
上記検出手段は、上記指示手段の上記第3軸まわり回転量をさらに独立して検出可能であることを特徴とする、操作装置。
【請求項3】
並進または回転可能な指示手段と、
上記指示手段の並進量または回転量を検出可能な検出手段と、
を備える操作装置であって、
上記指示手段は、互いに直交する第1方向、第2方向、および第3方向に沿って独立に並進可能であるとともに、上記第1方向、上記第2方向、および上記第3方向に沿って延びる第1軸、第2軸、および第3軸のそれぞれまわりに独立して回転可能であり、
上記検出手段は、上記指示手段の上記第1方向並進量、上記第2方向並進量、および上記第3方向並進量と、上記指示手段の上記第1軸まわり回転量、上記第2軸まわり回転量、および上記第3軸まわり回転量と、を独立して検出可能であることを特徴とする、操作装置。
【請求項4】
上記検出手段に対して、上記指示手段の並進量のみを検出する並進量検出モードと、上記指示手段の回転量のみを検出する回転量検出モードと、の検出モード切替を行う検出モード切替手段をさらに備える、請求項3に記載の操作装置。
【請求項5】
上記指示手段に対して、並進のみを許容し回転を阻止する並進モードと、回転のみを許容し並進を阻止する回転モードと、の動作モード切替を行う動作モード切替手段をさらに備える、請求項3または4に記載の操作装置。
【請求項6】
上記検出手段は、上記第1方向において、上記指示手段を挟んで対向配置された1対の第1弾性部材と、上記1対の第1弾性部材に生じた弾性力を検出する1対の第1検出器と、上記第2方向において、上記指示手段を挟んで対向配置された1対の第2弾性部材と、上記1対の第2弾性部材に生じた弾性力を検出する1対の第2検出器と、を含んでいる、請求項3ないし5のいずれかに記載の操作装置。
【請求項7】
上記検出手段は、上記第1弾性部材の少なくとも一部が上記第2方向に変位したことを検知する第1変位検出器と、上記第2弾性部材の少なくとも一部が上記第1方向に変位したことを検知する第2変位検出器と、をさらに含んでいる、請求項6に記載の操作装置。
【請求項8】
上記検出手段は、上記第1弾性部材および上記第2弾性部材の少なくとも一部ずつが上記第3方向に変位したことを検知する第3変位検出器をさらに含んでいる、請求項6に記載の操作装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2007−94930(P2007−94930A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285944(P2005−285944)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】