説明

改良された特性を有するインターフェロンアルファムテインの融合タンパク質

本発明は、ヒトインターフェロンアルファ、特に改良された特性を有する修飾型インターフェロンアルファ2に関する。改良タンパク質は、生物学的アッセイにおいて増大した相対活性を与える特定位置にアミノ酸置換を含む。本発明はまた、修飾インターフェロンアルファを提供し、タンパク質は低減された免疫原性能と共に改良された生物活性を有する。改良タンパク質はヒトの疾患の治療における治療的使用を意図したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(分野)
本発明は、ヒトインターフェロンアルファ、特に、改良された特性を有する修飾型インターフェロンアルファ2に関する。改良タンパク質は、生物学的アッセイにおいて増大した相対活性を与える特定位置のアミノ酸置換を含む。本発明はまた、修飾インターフェロンアルファを提供し、タンパク質においては、低減された免疫原性能と共に改良された生物活性を有する。改良タンパク質はヒトの疾患の治療における治療的使用を意図したものである。
【0002】
(背景)
インターフェロンアルファ2(IFNα2)は、活性化されたマクロファージによって発現される重要な糖タンパク質サイトカインである。タンパク質は、広域抗ウイルス剤、抗増殖剤および免疫調節剤としてかなりの臨床的重要性を有している。IFNα2の組換えおよび他の製剤が、ヒトにおける種々の癌および抗ウイルス性の適応で治療的に用いられてきた[Sen, G.G.およびLengyel P(1992年)J.Biol.Chem.267:5017〜5020頁において論評]。現在、臨床的に使用されている多くのIFNα製剤があり、これらは、E.coliで産生された天然組換えIFNα2(IFNα2a、RoferonA(登録商標)、Hoffman-La Roche社;IFNα2b、IntronA(登録商標)、Schering-Plough社;IFNα2c、Berofor(登録商標)、Basotherm社)、さらに最近では、全サブタイプの共通配列に基づいたE.coliで産生された合成IFNα(Infergen(登録商標)、InterMune社)を含む。
【0003】
IFNα2の主要な用途は、C型慢性肝炎ウイルス(HCV)感染の治療である。IFNα単独での治療は、約10%の患者において持続されたウイルス除去をもたらす。なお、最近では、40%の持続されたウイルス応答が、IFNα2にリバビリンを組み合わせることによって達成されている[Davis GLら(1998年)N.Engl.J.Med.339:1493〜1499頁;McHutchison JGら(1998年)N.Engl.J.Med.339:1485〜1492頁;Reichard Oら(1998年)Lancet.351:83〜87頁]。IFNα治療は、集中的であり、重症な副作用を伴い、治療を中止する例が20%に及ぶ。集中的治療の理論的根拠は、IFNα2bが比較的短い血清半減期を有する[Glue Pら(2000年)Clin.Pharmacol.Ther.68:556〜567頁]ことであり、抗ウイルス効果を考慮すると1日1回または週3回の皮下注射による投与が必要になる。
【0004】
この短い半減期と頻繁な投薬は、長期の治療では問題があると認識されてきた。これに取り組むために、RoferonA(登録商標)とIntronA(登録商標))のPEG化バージョン(Pegasys(登録商標)とPeg-Intron(登録商標))が導入されており、Infergen(登録商標)の同様のバージョンが第II相臨床試験中である。これらの修飾されたインターフェロンはポリエチレングリコール部分に結合されており、血清半減期が10から20倍に増大し(6、7)、これによって、臨床的な効力に悪影響を及ぼすことなく、投薬頻度を週1回(Peg-Intron(商標)とPegasys(商標)についてそれぞれ180μgまたは1.4μg/Kg)に減らす[Glue P.ら(2000年)前掲書;Perry CMら(2001年)Drugs 61:2263〜2288頁;Glue Pら(2000年)Hepatology 32:647〜653頁]。これらの試験において、副作用プロフィールは、無修飾のインターフェロンと類似している。
【0005】
血清半減期を増大させるためのもう1つの戦略は、IFNαをヒト血清アルブミンに連結することである[Osborn BLら(2002年)J.Pharmacol.Exp.Ther.303:540〜548頁]。Albuferon(登録商標)は、ヒト血清アルブミンのC末端に連結されたIFNαからなり、カニクイザルにおいては、PEG化IFNαの3倍、無修飾IFNαの18倍の半減期を有する。この分子については、ヒトにおける試験によるデータは、未だ入手可能ではない。しかしながら、PEG化IFNαおよびアルブミン連結されたIFNαの両方について、修飾タンパク質のin vitroの比活性は、天然タンパク質と比べて、Peg−Intron(登録商標)で28%に低減し[Grace Mら(2001年)Cytokine Res.21:1103〜1115頁]、およびPegasys(登録商標)とAlbuferon(登録商標)では10%以下に低減される[Osborn BLら(2002年)前掲書;Bailon Pら(2001年).Bioconjug Chem.12:195から202頁]。
【0006】
IFNαの利用において見られる重要な治療的利点にもかかわらず、或る患者における治療に対する抵抗性が記録されており、抵抗の重要な仕組みの1つが、治療中の患者の血清において検出可能な中和抗体の発生であることが示された[Quesada, J.R.ら(1985年)J.Clin.Oncology 3:1522〜1528頁;Stein R.G.ら(1988年)前掲書;Russo, D.ら(1996年)Br.J.Haematol.94:300〜305頁;Brooks M.G.ら(1989年)Gut 30:1116〜1122頁]。少なくとも同一の一次構造の分子がヒトにおいて内因的に産生されるという事実にもかかわらず、これらの患者において治療的インターフェロンに対して免疫応答が生じる。数カ月にわたって投薬が繰り返されると、適応症に依存して80%までの患者において抗IFNα中和抗体が誘起され[Schellekens Hら(1997年)J Interferon Cytokine Res.17、補足1:S5〜8頁]、慢性C型肝炎ウイルス感染についての報告された頻度は、7%から60%の範囲である[Schellekens Hら(1997年)前掲書]。入手可能な証拠は、中和抗体を生じる患者は、抗体を生じない患者に比べて、治療に反応せず、再発しやすいことを示唆している[Ross Cら(2002年)J Interferon Cytokine Res.22:421〜426頁;McKenna R.Mら(1997年)J.Interferon Cytokine Res.17:141〜143頁;Russo Dら(1996年)前掲書;Milella Mら(1993年)Liver、13:146〜150頁;Primmer O.(1993年)Cancer、71:1828〜1834頁]。しかし、ある場合には、精製された白血球インターフェロンをその後に使用することによって治療を続行することができる[Russo Dら(1996年)前掲書;Oberg K.とAlm G.(1997年)Biotherapy、10:1〜5頁;Tefferi A.とGrendahl D.C.(1996年)、Am.J.Hermatol.52:231〜233頁;Milella Mら(1995年)Hepatogastroenterology 42:201〜204頁]。
【0007】
組換えIFNαに対する抗体の発生の理由は明らかではない。なぜなら、タンパク質が天然に存在し、ウイルス感染のような事象に応答して発現が散発的に増大するからである。投薬の経路と頻度、IFNαの免疫調節効果、および医薬製剤におけるタンパク質凝集体の存在がすべて、免疫寛容の崩壊において或る役割を果たしているかもしれない。しかしながら、いかなる促進要因とも無関係に、免疫応答の誘起へとつながる中心的な特徴は、MHCクラスII分子上での提示を介してT細胞の活性を刺激することができるペプチドがタンパク質内に存在していることである。そのようなペプチド配列は、「T細胞エピトープ」であり、一般に、MHCクラスII分子に結合する能力を有するアミノ酸残基配列のすべてとして定義される。「T細胞エピトープ」は、MHC分子に結合すると、T細胞レセプター(TCR)によって認識されうるものであり、少なくとも原則的には、TCRをしてT細胞応答を促進させることによってT細胞の活性化を引き起こすことができるエピトープを暗に意味する。
【0008】
前述のことから、増強された特性を有するIFNα2に対する継続した必要性が明らかに存在する。望まれる強化点は、上記医薬品の発現と精製のための代替のスキームとモダリティを含み、また、特に、タンパク質の生物学的特性の改良も含む。ヒト対象に投与した場合のin vivoの特徴を増強することが特に必要である。この点において、免疫応答を誘起する能力が欠失または減退しておりかつヒト対象における生物学的力価が増強されているIFNα2を提供することが高く望まれている。
【0009】
本発明者らは、先に、自己タンパク質に対する免疫応答を推進するT細胞エピトープを含むIFNα2分子の重要な領域を開示し、そして、T細胞エピトープとして作用できなくなるようにこれらの配列をすべて消去しまたは有効性を低減した組成物を提供した[WO 02/085941]。そのような組成物は、IFNα2タンパク質のアミノ酸配列の改変、例えば置換、によって達成され、本発明はまた、アミノ酸置換およびまたは置換の組合せが行われたIFNα2分子に関する。しかし、本件では、なされた新規の置換および置換の組合せは、分子の生物活性を大きく増強するという驚くべき特性を与え、タンパク質について低減された免疫原性プロフィールを達成する置換と組み合わせたそのような増強は、改良されたIFNα2分子をもたらす。
【0010】
他のものたちは、修飾INFα2および使用方法を提供し、例えば、米国特許第4,496,537号、米国特許第5,972,331号、米国特許第5,480,640号、米国特許第5,190,751号、米国特許第4,959,210号、米国特許第5,609,868号、米国特許第5,028,422号、およびその他を含む。
【0011】
米国特許第5,723,125号は、ペプチドリンカーを介してヒト免疫グロブリンFcフラグメントに接続された野生型ヒトIFNαを含む融合タンパク質について記述している。IFNαドメインは、特許請求した融合タンパク質においてFcドメインに対してN末端配向されている。
【0012】
米国特許第6,204,022号は、特に19、20、22、24および27の位置でWTからの置換を有し、生物学的アッセイにおいて低減された細胞毒性を特徴とするIFNα類似体について記述している。
【0013】
「ヒトFc融合タンパク質」の一般的なカテゴリーおよびそれらの産生のための適当なベクターは、先に記述されている[米国特許第5,541,087号、米国特許第5,726,044号、Loら(1998年)Protein Engineering 11:495〜500頁]。
【0014】
(発明の概要)
本発明は、アミノ酸置換を含むヒトインターフェロンアルファ2分子を提供する。アミノ酸置換は改良された特性をタンパク質に与える。改良された特性は、タンパク質の特定の生物活性に関し、タンパク質の免疫原性の特性にも関する。
【0015】
本発明の分子はヒトIFNαムテインに連結されたヒト免疫グロブリン定常領域部分を含む融合タンパク質である。
【0016】
本発明の分子は新規かつ進歩性のある特性を有する。そのような分子は、疾患を有する患者、特にC型慢性肝炎ウイルス感染患者に恩恵をもたらすことができる。
【0017】
本発明の分子は本明細書に配列番号2〜22として定義されるタンパク質配列を特徴とする。
【0018】
本発明の分子はさらに、信号伝達アッセイにおける相対活性が1.3倍超と10倍との間であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、信号伝達アッセイにおける相対活性は、2倍または3倍または5倍または7倍または10倍または17倍である。
【0019】
本発明の分子はさらにまた、抗ウイルスアッセイにおける相対活性が2倍と36倍との間であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、抗ウイルスアッセイにおける相対活性は、2倍以上、または3倍以上、または4倍以上、または7倍以上、または約36倍である。
【0020】
本発明の非常に好ましい分子は、配列番号2のタンパク質配列を特徴とし、さらに、相対活性が信号伝達アッセイにおいて9倍超であり、抗ウイルスアッセイにおいて相対活性が約36倍であり、抗増殖アッセイにおいて約1であることを特徴とする。
【0021】
本発明の別の好ましい分子は、配列番号3のタンパク質配列を特徴とし、さらに、相対活性が信号伝達アッセイにおいて1.3倍超であり、抗ウイルスアッセイにおいて相対活性が約7.4倍であり、抗増殖アッセイにおいて約1であることを特徴とする。
【0022】
本発明の分子はさらにまた、抗増殖アッセイにおける活性がml(ミリリットル)あたりインターフェロンα13pg(ピコグラム)と16pgの間であることを特徴とする。本発明の最も好ましい分子はまたさらに、ヒト細胞において低減された免疫原性を示すために表された配列を含むことを特徴とする。
【0023】
まとめると本発明は下記の課題に関する;
・1つまたは複数のアミノ酸置換を含むヒトインターフェロンアルファ2の生物活性を有する修飾インターフェロンアルファ2分子、
・ヒトインターフェロンアルファ2の生物活性を有し、ヒト免疫グロブリン定常領域(Fc)ドメインを含み、上記または下記に特定されるようなインターフェロンアルファ2ドメイン内に1つまたは複数のアミノ酸置換を含む修飾インターフェロンアルファ2分子、
・ヒトインターフェロンアルファ2の生物活性を有し、ヒトFcドメインを含み、インターフェロンアルファドメイン内に1つまたは複数のアミノ酸置換を含み、そして、特に本発明のアミノ酸置換を含まないインターフェロンアルファ分子と比較して、ヒトに対する低減された免疫原性を示すことをさらに特徴とする修飾インターフェロンアルファ2分子、
・改良された特性を有するIFNαムテインを回収するための、下記を含む一般的な方法:
a)T細胞エピトープの同定、
b)T細胞エピトープ領域内において1つのアミノ酸置換を行い、機能的に活性のムテインを選択すること、
c)任意選択で、T細胞活性化に関与する重要な残基についての細密なマッピング研究を行い、二重または三重のより多くの置換体を免疫原性に関して検査すること、
d)多重置換ムテインとしての構成のために最も好都合な機能および免疫原性プロフィールを有するムテインを選択し、前記新たなタンパク質の機能検査をすること、
e)経時的免疫原性アッセイを用いて、機能的に活性な多重置換ムテイン配列を、低減された免疫原性について検査すること。
【0024】
・下記構造の修飾インターフェロンアルファ2分子。
【0025】
【化1】

【0026】
(式中、
0=FcまたはFcリンカー、
Fc=抗体のFcドメイン
リンカー=6から25個のアミノ酸からなるリンカーペプチド
1=I、Q
2=H、Y
3=I、T;
4=F、T、A
5=W、H;
6=Y、D;
7=I、N、T、P、R
8=L、T、H、D、S、Nおよび
9=N、S;
ただし、同時にX1=I、X2=H、X3=I、X4=F、X5=W、X6=Y、X7=I、X8=LおよびX9=NであるIFNα分子を除外する、換言すれば、野生型IFN融合タンパク質を除外する)。
【0027】
特に、本発明は下記に関する
・X5=HおよびX8=NであるIFNα2ムテイン
・X3=TおよびX4=AであるIFNα2ムテイン
・下記の化合物からなる群から選択したIFNα2ムテイン
(i)X1=Q、X2=H、X3=T、X4=A、X5=H、X6=Y、X7=R、X8=NおよびX9=N
(ii)X1=Q、X2=H、X3=I、X4=F、X5=H、X6=Y、X7=I、X8=LおよびX9=N
(iii)X1=I、X2=H、X3=T、X4=A、X5=H、X6=Y、X7=T、RまたはN、X8=NおよびX9=N
(iv)X1=I、X2=H、X3=T、X4=A、X5=H、X6=Y、X7=I、X8=LおよびX9=N
(v)X1=I、X2=Y、X3=I、X4=T、X5=H、X6=Y、X7=I、X8=LおよびX9=N
(vi)X1=I、X2=H、X3=I、X4=F、X5=H、X6=Y、X7=P、TまたはN、X8=LおよびX9=N
(vii)X1=I、X2=H、X3=I、X4=F、X5=H、X6=Y、X7=I、X8=TおよびX9=S
(viii)X1=I、X2=H、X3=T、X4=F、X5=H、X6=Y、X7=I、X8=TおよびX9=S
(ix)X1=I、X2=H、X3=T、X4=F、X5=W、X6=Y、X7=I、X8=TおよびX9=S
(x)X1=I、X2=H、X3=I、X4=F、X5=W、X6=Y、X7=I、X8=T、S、N、HまたはDおよびX9=N
(xi)X1=I、X2=H、X3=I、X4=F、X5=H、X6=Y、X7=I、X8=LおよびX9=N
(xii)X1=I、X2=H、X3=I、X4=F、X5=W、X6=D、X7=I、X8=LおよびX9=N
・Fcがヒト免疫グロブリン重鎖定常領域ドメインであるIFNα2ムテインであって、前記ドメインはそのC末端によって前記ムテインに連結されているムテイン
・Fcドメインが単量体であるIFNα2ムテイン
・リンカーペプチドが12から20個のアミノ酸からなるIFNα2ムテイン
・リンカーペプチドが(G)4S(G4)S(G4)SGであるIFNα2ムテイン。
【0028】
疑念回避のため、発明の実施形態であるところの、IFNα2の特に有利なムテインは、図1の詳細を特徴とする。
【0029】
本発明の突然変異タンパク質は、当技術分野においてよく知られる組換えDNA手法を用いて容易に作られ、本発明は、そのような分子の組換え産生のための方法を提供する。
【0030】
この発明が修飾IFNα2に関するものであるかぎり、そのような修飾INFα2タンパク質を含む組成物または修飾IFNα2タンパク質のフラグメントおよび関連組成物は、本発明の範囲内であると見なされるべきである。もう1つの態様では、本発明は修飾INFα2実体物をコードする核酸に関する。別の態様では、本発明は修飾IFNα2タンパク質を用いたヒトの治療処置のための方法に関する。
【0031】
(発明の詳細な説明)
自然界において、成熟したIFNα2タンパク質は、165個のアミノ酸の単一ポリペプチドである。数種の異なるサブタイプのヒトIFNα2が知られおり、それぞれ一次アミノ酸配列において若干の差異を示す。例えば、INFα2aとINFα2bは、成熟タンパク質鎖の位置23の1つの残基においてのみ異なり、INFα2aではリジン、INFα2bではアルギニンである。本発明の開示はINFα2bの配列に向けられるが、あらゆる実際的な目的において、IFNα2aの配列を本発明の対象のINFα2bサブタイプと交換可能に考えてよいことがわかるであろう。INFα2bのアミノ酸配列(一文字コードで示す)は以下の通りである:
【0032】
【化2】

【0033】
用語「IFNα」は、ここではヒトインターフェロンアルファ2を表すために用いられる。いくつかの場合では、この用語はより広く用いられて、インターフェロンアルファ部分およびまたは特にインターフェロンアルファムテインを含む融合タンパク質を含むこともある。
【0034】
用語「ムテイン」は、ここでは上記の天然配列とは異なる1つまたは複数のアミノ酸置換を含むように設計されたIFNαタンパク質を表すために用いられる。
【0035】
ここで用いられる用語「ペプチド」は、2個またはそれ以上のアミノ酸を含む化合物である。アミノ酸はペプチド結合によって互いに連結されている。
【0036】
ペプチド結合は、すべてのペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の直鎖骨格構造においてアミノ酸間の唯一の共有結合連結である。ペプチド結合は、共有結合であり、構造においては平面状であり、化学的には置換アミドを構成する。「アミド」は、基−CONH−を含む有機化合物の一群のすべてものである。
【0037】
20種の異なる天然存在アミノ酸がペプチドの生物学的産生に関与し、それらはどんな順番にいくつ連結しても、ペプチド鎖または環を形成しうる。ペプチドの生物学的産生に用いられる天然存在アミノ酸はすべてL立体配置を有する。合成ペプチドは、従来の合成方法を用い、Lアミノ酸、Dアミノ酸または2つの異なる立体配置のアミノ酸の多様な組合せを利用して作製することができる。いくつかのペプチドは、わずかに2、3個のアミノ酸単位のみを含む。短いペプチド、例えば10個未満のアミノ酸を有するものは、ときに「オリゴペプチド」と呼ばれる。他のペプチドは、多数のアミノ酸残基、例えば100個までまたはそれを超えるアミノ酸残基を含み、「ポリペプチド」と呼ばれる。慣例では、「ポリペプチド」は3個またはそれ以上のアミノ酸を含むいかなるペプチド鎖と考えてもよく、一方、「オリゴペプチド」は、通常は「短い」ポリペプチドの特定のタイプとして考えてもよい。このように用いられるので、「ポリペプチド」に対するあらゆる言及はオリゴペプチドをも含む。さらに、「ペプチド」に対するあらゆる言及は、ポリペプチド、オリゴペプチド、およびタンパク質を含む。アミノ酸の異なる配列はそれぞれ、異なるポリペプチドまたはタンパク質を形成する。ポリペプチドの数および形成できる異なるタンパク質の数は事実上無限である。
【0038】
ペプチド結合がアミノ酸間の唯一の連結構造であるので、すべてのペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、「N末端」または「N末端」残基および「C末端」または「C末端残基」と従来から呼ばれる定義された末端を有する。N末端残基は遊離アミノ基を有し、一方C末端残基は遊離カルボキシル基を有する。
【0039】
したがって、すべての連続したアミノ酸の配列はN末端からC末端への配向性を有する。融合タンパク質が構成される場合すなわち異なるドメインが1つのタンパク質種内で接続されている場合、それらの相対的配向を「N末端」または「C末端」として記述してもよい。
【0040】
用語「融合タンパク質」は、ここでは単一のポリペプチド鎖内に2個またはそれ以上の機能的に区別されるタンパク質ドメインを含むタンパク質分子を指すために用いられる。融合タンパク質のタンパク質部分は、直接に結合していてもよいし、リンカーペプチドを介して合体されていてもよい。
【0041】
「リンカー」または「リンカーペプチド」は、ここでは融合タンパク質の2つの部分を合体するペプチドセグメントを指す。この発明に適したリンカーペプチドは、5〜25個のアミノ酸、好ましくは10〜20個のアミノ酸、さらに好ましくは15〜20個のアミノ酸を有するペプチドを含む。リンカーペプチドの1つの例は、一般式((G)4S)xGであり、ここでxは1、2、3または4である。本発明において好ましいリンカーペプチドは、(G)4S(G)4S(G)4SGである。しかし、10個を超えるアミノ酸を有する先行技術の他のリンカーペプチドも好適である。
【0042】
米国特許第5,723,125号は、リンカー配列がGGSGGSGGGGSGGGGSであるIFN−L−Fc(ここで、L=リンカー)型のハイブリッドインターフェロン分子を特許請求している。前記のリンカーは16残基であり、「比較的長い」とみなされる。上記のリンカーは、Hustonら[Hustonら(1988年)Proc Natl.Acad.Sci.USA 85:5879頁]によって記述されたよく知られたペプチドリンカー(GGGGS)3の変異体である。このリンカーのさらに短い配列変異体が知られている。例えば、(GGGGS)nであり、ここで5個、10個または15個の残基を与えるようにn=1、2または3である[Holliger, P.ら(1993年)Proc Natl.Acad.Sci.USA 90:6444頁]。4個の残基(GGGG)を含むこのリンカーの特に短いバージョンは、米国特許第6,686,179号で用いられている。
【0043】
当技術分野で認識されるペプチドリンカーの他の例は次のすべてを含む:
(A)3、(A)4、(A)5、GG、GS、GGG、(G)7、GPG、GGPGG、EFGGGGGTA。
【0044】
融合タンパク質は、組換えDNA手法の手段によって広く生成されており、したがって、自然界に直接の対応物を有していない人工タンパク質であると考えることができる(天然融合タンパク質は、例えば、染色体転座によって発生しうるが、ここでは考慮しない)。融合タンパク質の1つの例は、免疫グロブリンFc領域がIFNαのような別のタンパク質のN末端に置かれた融合体である。そのような融合体は「Fc−X」融合体と呼ばれる。ここで、Xは(IFNαのような)リガンドである。Fc−Xタンパク質は多くの特有の有利な生物学的特性を有している。特に、そのような融合タンパク質でも細胞表面の関連Fcレセプターと結合することができるが、リガンドがそのレセプターに結合すると、Fc領域の配向が変わり、抗体依存細胞介在性細胞毒性および補体結合が、Fcドメインに存在する配列によって活性化されるようになる。Fc−X融合体は本発明では好ましい。
【0045】
用語「免疫グロブリン」は、ここでは免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされている1つまたは複数のポリペプチドからなるタンパク質を指すために用いられる。認識されている免疫グロブリン遺伝子は、κ、λ、α、γ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、σ、εおよびμ定常領域遺伝子および自然界では多くの免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。
【0046】
用語Fcは、ここでは免疫グロブリン重鎖定常領域ドメインを指すために用いられ、抗体のFc部分の単量体型だけでなく二量体型も含む。単鎖Fc融合体(単量体)型が好ましい。
【0047】
用語「T細胞エピトープ」は、この発明の理解に従えば、MHCクラスIIと結合することができ、T細胞を刺激することができ、かつ/またはMHCクラスIIと複合してT細胞に結合(必ずしも測定可能に活性化せずに)することができるアミノ酸配列を意味する。
【0048】
「実質的に非免疫原性」または「低減された免疫原性能」への言及は、検査部分の野生型または天然アミノ酸配列を含む融合タンパク質にまたは親タンパク質に比較して低減された免疫原性を含む。
【0049】
用語「免疫原性」は、宿主動物、特に「宿主動物」がヒトである場合において、体液性およびまたはT細胞介在性応答を誘発、誘起またはさもなくば促進する能力を含む。
【0050】
用語「T細胞アッセイ」および「免疫原性アッセイ」は、免疫反応性のex vivo測定手段に関する。したがって、これらは、検査免疫原、例えば、タンパク質またはペプチドを生体ヒト免疫細胞に接触させ、その反応性を測定することを含む。誘起された反応性の典型的なパラメータは増殖である。適する対照を決定することはアッセイにおいて重要であり暗黙の絶対的な条件である。
【0051】
「経時的アッセイ」は、ある時間にわたって連続的に測定を行う増殖アッセイのような生物学的アッセイを指す。本文脈においては、「経時的T細胞アッセイ」は、検査免疫原(ペプチド)への曝露に続いて多数回にわたる検査免疫原に応答したT細胞増殖の測定を指す。用語「経時的T細胞」および「経時的免疫原性アッセイ」は、ここでは交換可能に用いてもよい。
【0052】
T細胞アッセイを表現する1つの慣用法は、「刺激指数」すなわち「SI」を用いることによる。刺激指数(SI)は、従来から、ペプチドのような検査免疫原に対して測定した増殖スコア(例えば、3H−チミジン取り込みを用いる場合には、放射線の一分間あたりの計数)を、検査免疫原と接触さていない細胞において測定されたスコアによって除算することによって導出される。応答をまったく惹起しない免疫原(ペプチド)はSI=1.0となるが、実際には0.8〜1.2の範囲のSI値は一般的である。本発明者らは、そのような免疫原性アッセイの操作において、2.0以上の刺激指数が有意の誘起増殖の有用な目安であることを確立した。
【0053】
PBMCは、末梢血単核細胞、特にドナーの血液試料から得られたものを意味する。PBMCは、当分野でよく理解された濃度勾配遠心法を用いて全血液試料から容易に単離され、大量のリンパ球(BおよびT細胞)および単球を含む。他の細胞型も表される。
【0054】
「相対活性」は、本文脈においては、いかなるアッセイにおいても検査タンパク質について測定された活性が、同じアッセイにおいて、通常は平行して行われ、ポジティブコントロールタンパク質について測定された活性に相対的に表現されるものである。したがって、検査タンパク質およびコントロールタンパク質の測定活性が同じ場合、相対活性は1であるという。
【0055】
抗ウイルスアッセイは、対象とする検査タンパク質に関して、ウイルス物質が適当な宿主細胞に対して機能することを阻害する何らかの能力を測定する生物学的アッセイである。そのようなアッセイは、一般に、抗ウイルス活性が、細胞変性を引き起こす投与量のウイルスの存在下において、延長された細胞生存または増殖と同等となるように設定される。これを有用な尺度とするために適した対照検査を平行して行う。適した対照測定の存在はアッセイにおいて重要であり暗黙の絶対的な条件である。ある1つの特に適した抗ウイルスアッセイがRubinsteinらによって記述されており[Rubinstein Sら(1981年)J Virol.37:755から758頁]、ここに例示される。他のアッセイ方式を考えることが可能であり、それらもED50測定を可能にする検査分子の特定の活性の定量的な推定値を与える。
【0056】
本文脈による「信号伝達アッセイ」は、生きた細胞内における特定の測定可能な応答を惹起する検査タンパク質の能力の指標を与えることができる生物学的アッセイを意味する。特に、検査タンパク質を細胞の外表面に接触させ、測定される応答は、1つの非常に小さい特定のレセプタータンパク質と、転写因子のような細胞の内部にある多数の細胞性因子とが関与することによってのみ発生可能な現象とする。ひとまとめにしてレセプターおよび他の多数の細胞性因子は「信号伝達経路」を構成し、そのような経路は、機能的に活性なIFNタンパク質によって活性化されることが知られている[Williams, B.R.(1991年)Eur.J.Biochem.15:1〜11頁;David, M.(1995年)Pharmacol.Ther.65:149〜161頁]。特に適した信号伝達アッセイをここに例示し、他のアッセイ方式も、検査分子の特定の活性の定量的な推定値を与えることが考えられる。
【0057】
「抗増殖」アッセイは、対象とする検査タンパク質に関して、指標培養細胞の生育を阻害する何らかの能力を測定する生物学的アッセイである。これを有用な尺度とするために、適したコントロール検査を平行して行う。ある1つの特に適した抗増殖アッセイがMarkらによって記述されており[Mark, D.F.(1984年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:5662〜5666頁]、ここに修飾した型で例示する。他のアッセイ方式を考えることが可能であり、それらも、ED50測定を可能にする検査分子の特定の活性の定量的な推定値を与える。
【0058】
もう1つの態様では、本発明は修飾IFNα実体物をコードする核酸に関する。そのような核酸は好ましくは発現ベクターに内包される。原核生物に適したコントロール配列は、例えば、プロモーター、任意選択でオペレーター配列およびリボソーム結合部位を含む。真核生物細胞は、プロモーター、エンハンサーおよびポリアデニル化信号を利用することが知られている。そのような核酸は一般に、選択手段、典型的には、宿主細胞の生存を助けることができるタンパク質をコードする付加的な遺伝子を含む。そのような選択遺伝子の一例は、いくつかのE.coli宿主細胞に適したベータラクタマーゼであり、この遺伝子や他のものは当技術分野においてよく知られている[「Molecular Cioning:A Laboratory Manual」第2版(Sambrookら、1989年)「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(J.M.Miller & M.P.Calos編、1987年)「Current Protocols in Molecular Biology」(F.M.Ausubelら編、1987年)]。核酸は、別の核酸配列との機能的な関係におかれると、機能できる形で連結される。例えば、プレ配列すなわち分泌リーダー配列のDNAは、それがポリペプチドの分泌に参加するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドのDNAに機能できる形で連結されており、プロモーターやエンハンサーは、それがコード配列の転写に影響を与える場合、配列に機能できる形で連結されており、あるいは、リボソーム結合部位は、それが翻訳を容易化するように位置される場合、コード配列に機能できる形で連結されている。一般に、「機能できる形で連結」とは、連結されているDNA配列が隣接しており、分泌リーダー配列の場合では、隣接しておりかつ同一の読み枠内にあることを意味する。しかしエンハンサーは隣接している必要はない。連結は都合のよい制限部位でのライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合には合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを従来からの常法に従って使用する。
【0059】
いくつかの実施形態では、発現ベクターは、発現制御配列に機能できる形で連結されたIFNα変異体をコードする核酸配列を含む。多様な実施形態では、発現ベクターは、配列番号2から配列番号22までを包含的に含む群から選択されるタンパク質をコードする核酸配列を含む。そのような発現ベクターは、適した発現制御および選択配列に機能できる形で連結された前記複数のタンパク質のうちの1つのタンパク質のIFNαコードドメインを少なくとも含む。そのような発現ベクターは、核酸の縮重バージョンを含み、ここで、ポリヌクレオチドに関する縮重とは、遺伝暗号において多くのアミノ酸が複数のコドンにより特定されるというよく認識された事実を指している。暗号の縮重は、DNAを構成する4種の異なる塩基によって可能な64種のトリプレット配列を用いた20種の異なるアミノ酸がコードされていることを物語るものである。
【0060】
本発明のもう1つの態様は、上記ベクターの少なくとも1つを含む培養細胞である。
【0061】
本発明の別の態様は、修飾IFNαを調製するための方法であって、前記発現ベクターからのIFNαの発現を可能にする条件下で上記細胞を培養することと、細胞からIFNαを精製することとを含む方法である。
【0062】
別の態様では、本発明は、IFNα組成物を使用したヒトの治療処置のための方法に関する。個人への投与のために、いかなる修飾組成物も、好ましくは少なくとも80%の純度であり、発熱因子や他の混在物を含まないように製造される。また、IFNαタンパク質の治療用組成物は、医薬的に許容される賦形剤と共に使用してもよいことが理解される。本発明による医薬組成物は、従来法により調製され、賦形剤、担体、アジュバントおよび緩衝剤など、医薬品において通常に使われる物質、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(Alfonso R. Gennaro編、第18版、1990年)を含む。組成物は、例えば、ある効果を達成するために有用な非経口、経腸、筋肉内、皮下、静脈内または他の経路によって投与してもよい。従来の賦形剤は、作用剤と有害な反応をすることのない非経口、経腸および他の投与経路に適した医薬的に許容される有機または無機担体物質を含む。非経口的適用では、注射用滅菌液、好ましくは、油または水溶液、および懸濁液、乳化液や、座薬を含むインプラントが特に適している。アンプル剤は便利な単位用量投与法である。医薬調製物は、滅菌することが可能であり、所望により、活性な化合物と有害な反応をしない安定化剤や、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝剤、または他の物質と混合することができる。
【0063】
本発明の主要な実施形態は、配列番号2〜22のタンパク質配列によって達成される。タンパク質は、融合タンパク質「Fc−X」であり、本例におけるXはIFNαムテインである。そのような融合タンパク質は、野生型(WT)IFNα部分を含む融合タンパク質と比べて、増大した活性を示すことが見出されている。本発明者らによって構築された「WT」または「天然」融合タンパク質は、ここにIFN120(配列番号23)およびIFN5(配列番号1)と名付け、(G)4S(G)4S(G)4SG構造のリンカーペプチドの有無についてのみ異なる。明言するとIFN5はリンカーを含まない。
【0064】
信号伝達アッセイを用いて、天然融合タンパク質は、リンカーのあるものないものどちらも、4.5および5ng/mlという非常によく似たED50値を有することが見出されている。この知見は、天然IFNαに関しては、FcとIFNα分子の間のリンカーの存在は、活性に対して何ら効果を有していない。
【0065】
対照的に、幾分驚くべきことであるが、本発明の最も好ましい分子IFN311(配列番号3)およびIFN316(配列番号2)は、信号伝達アッセイにおいて3.4および0.5ng/mlというED50値を有し、したがって、コントロールの>1.3倍および>9倍の活性であることが見出された。これらの分子がIFNαムテインであるとすると、これらの結果は、配列に対する変更が活性に対して有益な効果をもたらしたことを示唆する。
【0066】
2つまたは3つまたは4つまたは5つのアミノ酸置換を含む他のIFNαムテインも、信号伝達アッセイについて改良された相対活性を有することが見出された。各2つの置換を含む例は、IFNαタンパク質IFN197(配列番号12)、IFN201(配列番号11)、IFN202(配列番号10)、IFN306(配列番号4)を含み、それぞれ2、7、5および4倍の改良を活性において示す。また、各3つの置換を有するタンパク質IFN173(配列番号15)、IFN176(配列番号13)、IFN219(配列番号9)は、それぞれ10、5および17倍の改良を活性において示す。4つの置換を有するINFαタンパク質IFN174(配列番号14)は、信号伝達活性において5倍の改良を示した。
【0067】
信号伝達アッセイにおける活性についてのそのような有益な効果は、複数の置換を含むムテインにとどまらない。すなわち、例えば、1つの突然変異体IFNαタンパク質IFN28(配列番号22)は、10倍増大した相対活性を示す。同様に、信号伝達活性について、タンパク質IFN64(配列番号21)は3倍超増大した活性を示し、IFN164(配列番号20)は3倍増大した活性を示し、タンパク質IFN167(配列番号19)とIFN168(配列番号18)は両方とも2倍の改良を示し、タンパク質IFN171(配列番号17)は4倍の改良を示し、タンパク質IFN172(配列番号16)は7倍の改良を示す。
【0068】
信号伝達活性は、IFNαタンパク質の機能性の有用な指標であり、IFNαムテインに対する迅速スクリーニングアッセイとして本発明者らによって使用されているが、一方で、抗ウイルス活性は、IFNαの力価を測定するための認知された国際標準であり、ある程度まで、可能な臨床活性のより現実的な代用法である。抗ウイルス活性は、したがって、異なるIFNα分子の活性を比較するために使うことが可能であり、本発明者らは本件においてそれを用いて、本発明の最も好ましい分子が、臨床的に有効とされたIFNα調製物の範囲内で活性を示すことを確認した。より具体的に言えば、融合タンパク質IFN316は13%標準活性を有し、一方、Peg−Intron(登録商標)、Pegasys(登録商標)およびAlbuferon(登録商標)は、それぞれ28%、10%および7%を有すると報告されている[Osborn BLら(2002年)J Pharmacol Exp Ther.303:540〜548頁;Grace Mら(2001年)J Interferon Cytokine Res.21:1103〜1115頁;Bailon Pら(2001年)Bioconjug Chem.12:195〜2029頁、10、11]
タンパク質の抗ウイルス活性は、インターフェロンレセプターから細胞の核内の新しい遺伝子発現までの細胞内信号伝達経路を惹起するタンパク質の能力の関数である。信号伝達活性および抗ウイルス活性における改良の間の一致は、予想された結果であり、本発明のIFNαムテインに当てはまることが示されている。したがって、IFNαタンパク質である、各5つの置換を有するIFN270(配列番号7)、IFN273(配列番号6)およびIFN276(配列番号5)は、相対信号伝達活性においてそれぞれ2倍、3倍、同じく3倍の改良を示し、一方で、相対抗ウイルス活性においてそれぞれ6倍、4倍超、同じく4倍超の改良を示した。1つのIFNαムテインは、信号伝達活性においてはコントロールと等しく、まったく改良を示さなかったが、抗ウイルス活性においては2倍超(約2.8倍)の改良を示した。このムテインは、タンパク質IFN248(配列番号8)であり、3つの置換を含んでいた。
【0069】
本件のIFNαムテインは、親分子よりも免疫原性を低くして構築された。個々のムテインの設計は、機能的活性のデータに加えて免疫学的考慮から方向付けを行った。分子内の免疫的に重要な3つの領域を、健康なドナーおよび治療的IFNα IntronA(登録商標)を過去に受けたことのある個人の両方からのPBMC調製物を使ったスクリーニングアッセイを用いて規定した。大まかに言えば、3つの同定された免疫原性遺伝子内に突然変異を含むIFNαムテインを構築した。残基は、HLA−DR分子の公知の結合特性、すなわち、それらの分子はポケット1内に疎水性アミノ酸に対するほぼ排他的な優先度を有しさらにこれがペプチド結合の最も重要な決定因子であるという特性に基づいて標的化した[Jardetzky, T.S.ら(1990年)EMBO J.9:1797〜1803頁;Hill、C.M.ら(1994年)J.Immunol.152:2890〜2898頁]。徹底的な突然変異解析によって、これらの領域内において融合タンパク質の活性に悪影響を及ぼすことなく改変されうる残基を同定した(表2)。代替残基の選定は、解明されたNMR構造における標的の位置[Klaus, Wら(1997年)J Mol.Biol.274:661から675頁]と、他のヒトIFNαタンパク質および他の種からの同タンパク質との比較とによって案内された。埋没残基を、アラニンまたは似た大きさの非疎水性残基のどちらかで置き換え、一方、露出残基をすべての可能な非疎水性代替物でスキャンした。
【0070】
T細胞アッセイを、ヒトT細胞の機能的活性化に関与する重要な残基の細密なマッピングを可能にするための方式で適用した。この研究は、問題とされる領域のスキャンのために変異合成ペプチド族のファミリーを使いかつ公知の応答性ドナー試料を用いて行った。突然変異スキャニングT細胞アッセイは、活性のデータが既に得られていて選定を案内できる場合を除いて、スキャニングアミノ酸としてアラニンを用いて実行した。そのようなアプローチは、その場所を含むT細胞エピトープの免疫原性に対する個々のアミノ酸残基の貢献を明らかにすることができる。免疫原性に関与する重要な残基を改変することは最も望ましいであろうが、一方で、これは、タンパク質の機能を保持することと常に両立するとは限らない。多くの置換を採用して、それらの置換は単独では免疫原性を消すことはできないにもかかわらず、それらの組合せが、本来免疫原性の領域の免疫原性能を低下させる効果を有するということが可能である。本件では、組合せ突然変異体のT細胞アッセイ(表5)に先立つエピトープ細密マッピング研究(表4)によって、機能を保持しかつ問題とされる領域において低減された免疫原性を示すことが最もよくできる置換の組合せを規定することができた。
【0071】
さらに補強のT細胞アッセイを、多数の突然変異セット(表3)のすべての組合せを含む合成ペプチドを用いて行い、最も望ましい置換セットにおいて低減された免疫原性を示した。これら後者のアッセイは、合成ペプチドを用いて行い、合成ペプチドは、その分子の3つの免疫原性領域のそれぞれに跨っており、さらに、健康なドナーおよび過去にIntronA(登録商標)で治療されたことのある患者の両方からのPBMCを用いて経時的T細胞アッセイとして実行した。T細胞アッセイにおいて精製タンパク質を検査することは、それらの抗増殖性特性のために不可能であると認識されるであろう。
【0072】
従って、改良された特性を有するIFNαムテインの回収のための一般的な方法は:
a)T細胞エピトープの同定、
b)T細胞エピトープ内で単一のアミノ酸置換を行い、機能的に活性なムテインを選択すること、
c)任意選択で、T細胞活性化に関与する重要な残基の細密マッピング研究を行い、(任意選択で)免疫原性のための二重または三重のより多くの置換を検査すること、
d)多重置換されたムテインとしての構成のために最も好都合な機能および免疫原性プロフィールを有する個々のムテインを選択し、前記新たなタンパク質の機能検査をすること、
e)経時的免疫原性アッセイを用いて、機能的に活性な多重置換ムテイン配列を、低減された免疫原性について検査すること。
【0073】
まとめると、本発明者らは、下記の構造で表すことができる改良されたIFNαタンパク質を規定することができた。
【0074】
【化3】

【0075】
ここで、
0=FcまたはFc−リンカーであり、
Fc=抗体のFcドメイン
リンカー=6から25個のアミノ酸からなるリンカーペプチド
1=I、Q
2=H,Y
3=I,T;
4=F,T,A
5=W,H;
6=Y,D;
7=I,N,T,P,R
8=L,T,H,D,S,Nおよび
9=N,S;
ただし、条件として同時にX1=I、X2=H、X3=I、X4=F、X5=W、X6=Y、X7=I、X8=LおよびX9=NであるIFNα分子を除外する。
【0076】
下記の図、配列リストおよび実施例は本発明の理解を助けるために設ける。本発明の精神から逸脱することなく示された手順に修飾を加えることが可能であることは理解されている。
【0077】
(配列の説明)
本発明の理解を助けるために、下記の表1は融合タンパク質IFNαムテインを説明するものである。これらのタンパク質の由来および特性は実施例の中でもさらに詳細に開示される。
【0078】
【表1】

【0079】
(図の説明)
図1は、本発明の好ましいIFNαムテインのそれぞれの相対生物学的活性を示す。クローンID番号および各クローン内で行われた置換は図示の通りである。図は、実施例に述べた生物学的アッセイを用いてIFNレセプター介在細胞活性(=信号伝達アッセイ)、抗ウイルス活性および抗増殖活性について求めた相対活性を示す。すべての活性は、Fc−IFNαタンパク質IFN5に相対的に表されており、IFN5は、N末端Fcドメインに直接融合されたWT IFNα部分を有する。
【0080】
図2は、細胞培養上清のレセプター信号伝達アッセイの結果を示す。HEK293細胞は、IFN5、IFN120、IFN316およびIFN311をコードするプラスミドで過渡的に形質移入した。上清中のタンパク質濃度は、Fc ELISAで定量し、200ng/mlに希釈した。活性は3倍段階希釈による滴定で測定した。
【0081】
図3は、Peprotech IFNα2aに対する精製IFN311およびIFN316の活性の比較を示す
(a)レセプター信号伝達アッセイ。滴定を200ng/mlから始め、続いて3倍段階希釈を行った。
【0082】
(b)Daudi細胞抗増殖アッセイ。滴定を200ng/mlから始め、続いて4倍段階希釈を行った。
【0083】
(c)抗ウイルスアッセイ。初濃度を、IFN311には250pg/ml、IFN316には62.5pg/ml、IFNα2aには6.25pg/mlとし、滴定を2倍段階希釈で行った。各グラフは、3回の実験から平均によって得たデータを示す。
【0084】
図4は、合成ペプチド(NB:ペプチド配列を表3に示す)を用いた経時的免疫原性アッセイの結果を示す。20人の健常人と20人のHCV患者(IntronA(登録商標)で治療)を用いて、野生型および修飾IFNαペプチドの免疫原性を評価した。PBMCの増殖を、刺激後の第6、7、8および9日目のトリチウムチミジン取り込みによって評価した
(a)領域1、2および3に跨がるペプチドによる刺激の後での健常人からの正の応答(SI>2)。
【0085】
(b)領域1、2および3に跨るペプチドによる刺激の後でのHCV患者からの正の応答(SI>2)。
【0086】
(c)領域1、2および3に跨るペプチドに対して、20人の健常人と20人のHCV患者の一群からいかなる時点でもSI>2の応答が観察された頻度。
【0087】
図5.1から5.12は、本発明の好ましい分子のタンパク質配列を示す。配列は一文字コードで示す。各融合タンパク質のFcおよびFc−リンカー部分に下線を付けた。IFNαドメインは下線なしである。クローンID番号を各配列に対して示す。
【0088】
(例示的実施例)
実施例1
IFNα2bのクローニングと突然変異誘発
本発明の修飾IFNαタンパク質は、従来の組換えDNA手法を用いて作った。成熟したIFNα2bのコード配列は、PCRを用いてヒト胎盤のDNA(Sigma社、英国プール)からクローニングした。野生型遺伝子を、コントロール試剤と、部位特異的突然変異誘発によって修飾IFNタンパク質を派生する鋳型との両方として用いた。WTおよび修飾遺伝子を、発現ベクターpdC−huFc[Lo K-Mら(1998年)Protein Eng 11:495〜500頁]に、IFNα2b配列がヒトIgG1のヒンジ/CH2/CH3 Fc領域に対する直接融合部となるように挿入した。このベクター内のWT IFNタンパク質をIFN5と名付けた。
【0089】
直接融合に加えて、CH3のC末端とIFNα2bのN末端との間に可撓性リンカーを含むというベクターの修飾を行った。このリンカーのアミノ酸配列は、(G)4S(G)4S(G)3SGであり、リンカーを有するWT IFNタンパク質をIFN120と名付けた。突然変異TNタンパク質のいくつかは、両方の型のベクターで発現され、したがって、例えば、変異体IFN311(配列番号3)およびIFN316(配列番号2)は、IFNドメイン内に同じ置換セットを含む一方で、(G)4S(G)4S(G)3SGリンカーについて異なっている。IFN311は直接融合体であり、IFN316は前記リンカーを含む。
【0090】
DNA配列決定をすべての構築物について行った。これは、所望の置換の導入を確認しかつ、例えば、PCRのエラーによって外来性の(望まれない)置換が導入されていないことを確立するために入念に行った。
【0091】
これらの手法の詳細と、WTおよび変異IFNタンパク質のためのクローニング戦略とは、他で詳細に説明されており[WO 02/085941]、当分野では一般に理解されている。
【0092】
(実施例2)
IFNαムテインの設計
ヒトIgG1のFc部分に連結されたIFNα2bの変異体は、タンパク質の前記3つの免疫原性領域内に突然変異を含んで構築された。構築および機能検査が関与する突然変異解析の複数のサイクルによって、Fc連結タンパク質の活性に影響を与えることなく改変できる、これらの領域内の残基を同定した。ここに説明するような信号伝達アッセイ(実施例5を参照)はこの態様における主要なスクリーニング手段であった。突然変異解析の結果を表2に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
代替残基の選定は、解明されたNMR構造における標的の位置[Klaus,Wら(1997年)J Mol.Biol.274:661から675頁]と、他のヒトIFNαタンパク質および他の種からの同タンパク質との比較とによって案内された。埋没残基を、アラニンまたは似た大きさの非疎水性残基のどちらかで置き換え、一方、露出残基をすべての可能な非疎水性代替物でスキャンした。
【0095】
領域1において、成功裏に、すなわち、活性に有意の改良をともなって、置き換えることができた唯一の疎水性残基はI24であった。L26、F27およびL30は、よく露出されていたが、おそらくは、分子間官能性を有するよく規定された疎水パッチを形成することが理由で、変更することができなかった。
【0096】
領域2において、よく露出された残基はF64のみであり、それを、活性に幾分の低下をともなってAに変更した。残基I60およびI63は、ほとんど埋没しているが、成功裏にTに変更することができた。Tは、これらの残基が存在するアルファへリックスに水素結合を加えることができる類似した大きさの残基である。残基W76は、分子の一方の先端にむかって存在しているが、これを、活性において有意の有益性をもってHに変更した。
【0097】
領域3において、成功裏に改変できた残基はすべてよく露出された残基であった。I116およびL128への変更は、活性において有意の有益性を与え、L117の改変は、若干低減した活性となった。
【0098】
免疫原性領域3について行われたスキャニングT細胞アッセイからのデータも含めることで、設計処理をさらに洗練させた(表4および5,実施例9参照)。免疫学的には最も好都合な単一置換はF123であったであろうが、これは、信号伝達活性のいかなる有用なレベルにも適合しなかった。対照的に、残基I116とL128での置換の組合せは、この領域に対するT細胞応答を変調することが確認された。良好な活性を示した側鎖の大きさの或る範囲を包含するために、各位置での別の置換も検査した。置換は、I116のT、NおよびRへの、L128のN、HおよびRへの置換であった。これらの残基の各組合せを、許容できる活性を与えた領域1および2の突然変異(I24Q、I60T、F64A、W76H)と共に含む9つの突然変異体を作った。
【0099】
I116RおよびL128NをI24Q、I60T、F64AおよびW76Hと共に含む組合せムテインを、FcおよびIFNα融合対の間に可撓性リンカーを含むまたは含まない方式で構築した(それぞれ、IFN316およびIFN311)。
【0100】
(実施例3)
融合タンパク質の形質移入と精製
HEK293(ATCC# CRL-1573)細胞とLipofectamine 2000(Invitrogen社、英国ペーズリー)を製造元による記述のように用いて過渡的な形質移入を行った。安定的な形質移入体は、先に記述された[Baum Cら(1994年)Biotechniques 17:1058〜106224頁]ように電気穿孔法を用いてNS0細胞(ECACC# 85110503)において作り、100nMメトトレキセートを含む培養液で選択した。すべての細胞系は、10%FBSを加えたDMEM内で抗生物質および抗真菌物質と共に維持した。融合タンパク質は、Prosep−Aクロマトグラフィー、次いでサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって精製した。簡単に説明すると、1mlのProsep(登録商標)−Aカラム(Millipore社、英国ワットフォード)をpH7.4のPBS中で平衡化した後で、1/20倍体積の1MのTris−HCl pH7.4でpH調節された0.2μMの濾過細胞培養液上清(500mlまで)を載せた。カラムを50mlのPBS pH7.4で洗い、融合タンパク質を0.1Mクエン酸緩衝液pH3.0で溶出させ、0.9ml分画を集めた。分画は、すぐに0.1mlの1M Tris−HCl pH8.0で中和した。SECは、0.1%のTween80を含むPBS pH7.4で平衡化および流下した3.2/30カラムのSuperdex200(Amersham Pharmacia社、英国アマシャム)で行った。主要ピークを跨ぐ分画を集めて、融合タンパク質を、Lasergene(商標)ソフトウェア(Dnastar社、米国ウィスコンシン州マジソン)を用いて計算した280nmでのモル吸光係数を用いて定量した。濃度は、BCAタンパク質アッセイ(Pierce社、英国チェスター)を用いて確認した。IFNα成分は融合タンパク質の分子量の42%を示しており、したがって濃度をこの因子によって調節した。
【0101】
(実施例4)
細胞培養液上清中の融合タンパク質の定量
融合タンパク質を、下記の方式のELISA中のヒトIgG1 Fcの量を検出することによって定量した。ELISAプレート(Dynex Immulon4)に、PBS pH7.4で1/1500に希釈したマウスモノクローナル抗ヒトIgG Fc特異的抗体を100μl/ウェルで、2時間、37℃でコーティングした。プレートを、100μl/ウェルのPBS/0.05%Tween20で4回洗った。ヒトIgG標準品(The Binding Site社、英国バーミンガム)をPBS/2%BSAで2μg/mlに希釈し、プレートの縦方向に二組2倍希釈液を作った。検査試料を、二組、PBS/2%BSAで1/100および1/500に希釈し、アッセイした。プレートを、室温で1時間インキュベートし、前回のように洗った。100μl/ウェルのヤギ抗ヒトIgG Fc特異的ペルオキシダーゼ複合物(The Binding Site社、英国バーミンガム)のPBSによる1/1000希釈液を用いて検出を行い、プレートを前回のように洗い、SigimaFast OPDを100μl/ウェル(Sigma社、英国プール)用いて発色させた。呈色反応を50μlの2M硫酸の添加によって止め、Anthos HTIIプレートリーダーで492nmでの吸光度を測定した。
【0102】
(実施例5)
Fc−IFNα2b活性のためのアッセイ(信号伝達アッセイ)
変異体およびWT IFN融合タンパク質をコードするプラスミドをHEK293細胞に過渡的に形質移入し、3日後に細胞培養液上清中の融合体のFc部分について定量した。上清の活性を信号伝達アッセイを用いてアッセイした。このアッセイにおける活性の測定は、細胞表面に発現されたI型インターフェロンレセプターの引き金を引くこと(活性化)を必要とする。活性化されたレセプターは、細胞内のJak/STAT1信号伝達経路の活性化へと繋がる。経路は、タンパク質STAT1のリン酸化へと達して、それがインターフェロン刺激応答要素(ISRE)に結合することを可能にする。ISREは、シス作動性のDNAセグメントであり、その下流に連結された遺伝子(例えば、レポーター遺伝子)の転写を促進することができる。
【0103】
I型インターフェロンレセプターからの信号伝達を誘起する本発明の融合タンパク質の能力を、市販の信号伝達レポーターベクターpISRE−TA−luc(Clonetech Europe社、ベルギー国ブリュッセル)を用いてアッセイした。ベクターは、インターフェロン刺激応答要素(ISRE)の制御下のホタルルシフェラーゼ遺伝子を含む。ISRE/ルシフェラーゼカセット(NotI/BamHI断片上)を、エピソームの哺乳動物発現ベクターpREP4(Invitrogen社、英国ペーズリー)へRSVプロモーター/MCS/SV40ポリA(SalI分解で除去)の代わりとして移して、pREP−ISREを作製した。このベクターをHEK293細胞に形質移入し、安定した形質移入体を100μg/mlのハイグロマイシンで選択してHEK−ISRE細胞を作製した。Fc−IFNα2b活性についてのアッセイは、HEK−ISRE細胞を4×105細胞/mlの密度で、黒い壁で透明な底の96ウェル照度計プレート(Greiner社、英国グロスター、ストーンハウス)のウェルにプレーティングし(100μl/ウェル)て、抗生物質の非存在下の通常の条件下で24時間インキュベートすることによって行った。
【0104】
プレート上で、標準IFNα2aの2×108IU/mg(Peprotech社、英国ロンドン)および融合タンパク質の二組段階希釈液を抗生物質なしの培養液で作り、一晩インキュベートした。ルシフェラーゼ活性を、製造者による指示に従って調製した100μlのSteady-Glo試剤(Promega社、英国サウサンプトン)の添加によって検出し、Wallac Microbeta Trilux照度計を用いて発光測定を行った。
【0105】
図1は、各IFNαムテインの相対活性を表にしたものである。図2は、融合タンパク質IFN5、IFN120、IFN311およびIFN316の信号伝達活性曲線を示す。これらの結果は、変異体融合タンパク質が、天然融合タンパク質(IFN120およびIFN5、それぞれリンカーを有するおよび有していないもの)と比べて活性を改良させたことを示す。天然融合タンパク質は、リンカーのあるものとないものどちらも、それぞれ4.5および5ng/mlという非常によく似たED50値を有し、天然IFNαに関しては、FcおよびIFNα分子の間のリンカーの存在は活性に対して何ら作用を有していないことを示している。IFN311およびIFN316は、3.4および0.5ng/mlのED50値を有し、したがって、コントロールの>1.3倍および>9倍の活性であり、配列に対する変更が活性に有益な効果をもたらしたことを示している。このアッセイにおける驚くべき結果が、天然IFNαの構成と対照的に、FcおよびIFNα分子の間のリンカーの存在が融合タンパク質の活性を改良した、ということに見られる。
【0106】
融合タンパク質IFN311およびIFN316の信号伝達活性も、天然IFNα調製物(Perotech、英国ロンドン)と比較したが、その活性曲線を図3aに示す。
【0107】
(実施例6)
修飾Fc−IFNα2b融合タンパク質の活性(抗増殖):
融合タンパク質の抗増殖特性を、Daudi細胞増殖の阻害によって評価し、次のように実行した。Daudi細胞(ATCC# CCL−213)を、抗体を加え10%FBSを加えたRPMI1640(Daudi培養液)中で生育した。中間対数期の細胞を、2×105細胞/mlに希釈し、75μl/ウェルで96ウェルマイクロタイタープレートにプレーティングした。標準IFNα2a(Peprotech)および融合タンパク質の希釈液を75μlのDaudi培養液で三組作り、細胞に添加した。段階1/4希釈液をプレートにわたって作った。したがって、プレート毎に1つの標準品と1つの検査試料をアッセイした。プレートを3日間インキュベートした。検出は、製造元による記述のように調製したAqueous One試剤(Promega社)を用いて行った。30μlの試剤を各ウェルに添加し、プレートを4時間インキュベートし、492nmでの吸光度をAnthos HTIIプレートリーダーを用いて調べた
図3bは、天然(非融合タンパク質)IFNα調製物(Peprotech社)に相対的に融合タンパク質IFN311およびIFN316に関してプロットされた抗増殖特性を示す。
【0108】
(実施例7)
修飾Fc−IFNα2b融合タンパク質の活性(抗ウイルス性):
融合タンパク質の抗ウイルス特性を、先に記述された[Rubinstein Sら(1981年)J Virol.37:755〜758頁]ように、ヒト肺癌腫A549細胞(ATCC# CCl-185)に対する脳心筋炎ウイルス(EMCV)の細胞変性効果の阻害アッセイによってアッセイした。
【0109】
図1は、このアッセイにおけるいくつかのIFNαムテインの相対活性を表にしたものである。最大相対活性は、融合タンパク質IFN316によって示され、コントロールに対する算出増大倍率は36であった。驚くべき結果は、IFN316におけるリンカーの存在が、リンカーなしの対応物質IFN311(相対活性=7.4)に比べて、その抗ウイルス活性に顕著な有益効果を有することである。この顕著な差異は、リンカーありおよびなしのWTおよびIFNα融合タンパク質の比較(IFN5対IFN120)では見られない。図3cは、天然(非融合タンパク質)IFNα調製物(Peprotech社)に相対的に融合タンパク質IFN311およびIFN316についてプロットした抗ウイルス活性特性を示す。
【0110】
(実施例8)
ヒトIFNαのT細胞エピトープマッピングおよび経時的T細胞アッセイによる免疫原性領域の解析
ヒトIFNαの初期T細胞エピトープマッピング研究を、合成ペプチドと健康なドナーからのPBMCとを用いて行ったが、このアッセイの結果と詳細は他で記述されている[WO 02/085941]。IFNα内で同定されR1、R2およびR3と名付けられた3つの免疫原性領域について別の解析を、経時的T細胞アッセイを用いて行った。このアッセイは、20人の健常人(通常HLA−DR対立遺伝子の>80%をカバーするように選ばれた)から供与された血液、およびNICEガイドラインに従って過去にIFNα2b(IntronA(登録商標))で治療を受けた20人の慢性HCV感染患者からの血液から単離されたPBMCを用いて行った(患者研究は、英国ケンブリッジのAddenbrooke's病院のG.Alexander医師と協力して行った)。免疫原性のエピトープR1、R2およびR3は、無処理のIFNαタンパク質の免疫活性特性がこのアッセイに適合しないので、合成ペプチドとして検査した。これらのアッセイでは、24ウェルプレートでの2〜4×106個のPBMC/ウェルのバルク培養を6から9日間、免疫原性領域にわたるペプチドと共にインキュベートした(表3参照)。増殖は多様な時点で下記のようにして評価した。すなわち、バルク培養を穏やかに再懸濁し、PBMCの試料を移して、U字形底の96ウェルプレートの三組ウェル内で1μCi/ウェルのトリチウムチミジンと共に18時間インキュベートした後、Tomtec Mach IIIプレートハーベスターを用いてガラス繊維フィルターマット上に収集し、cpm値をWallac microplate betaカウンターを用いたシンチレーション計数によって測定した。
【0111】
【表3】

【0112】
図4aは、免疫原性領域1、2および3に跨るペプチドによる刺激に対する健常人の正の応答(SI>2)のすべてを示す。修飾ペプチドは健常人において増殖を誘起することはできなかったが、一方で、野生型ペプチドに対する正の応答が6人のドナーにおいて観察された(図4a)。HCV患者は、3つの領域すべての野生型ペプチドに対して応答することが確認されたが、一方で、修飾ペプチドについては、領域3に対してのみ応答した(図4b)。ペプチドに対する応答の頻度の解析によれば、領域2と3が、最高頻度の増殖を、すなわち、検査された健康なドナーの15%において増殖を誘起することを示した(図4c)。一方で、HCV患者では、領域3が最高頻度の応答(25%)を誘起し、続いて領域1(10%)そして領域2(5%)であった(図4c)。
【0113】
本データおよび他のデータから、T細胞エピトープマッピングの結果が、領域3から派生したペプチドもまた健康なドナーにおいて最高頻度で増殖を誘起することを示すので、領域3は免疫優性T細胞エピトープを含むと考えられる[WO 02/085941]。健常人において領域1ペプチドに対する応答は第7日目に観察され(図4aで、ドナー11、ドナー13)、一方でHCV患者限定T細胞応答において6日目で増殖が検出された。領域2ペプチドは健康なドナーでは9日目において増殖を誘起する傾向があった(図4aで、ドナー6とドナー18)一方でHCV患者限定T細胞応答は8日目で観察された(図4cで、ドナー13)。領域1および2の応答とは異なり、領域3ペプチドは、7および8日目にそれぞれ観察された増殖についてHCV患者よりも健常人においてより急速な応答を誘起した。
【0114】
(実施例9)
IFNα免疫原性領域3のスキャニングT細胞アッセイ
免疫原性領域3のスキャニングT細胞アッセイからのデータも含めることでムテイン設計プロセスをさらに洗練させた。T細胞アッセイを13人のドナーの試料からのPBMCを用いて行った。試料の過半数は、少なくとも、問題とされていたWTペプチド配列に対して応答することが前もって決定されていた。IFNαの残基T108〜WI40に跨る8つの合成ペプチドのファミリーを作製した。ペプチドのファミリーは、WT配列と、表4に同定するような7つの異なる置換配列とを含んでいた。すべてのアッセイは三組行った。13人のドナーの試料の平均SIを算出した。
【0115】
【表4】

【0116】
アラニンをスキャニングアミノ酸として用いた。ただし選定を助ける活性データが利用可能である場合を除く(Y122は突然変異体が活性でなかったのでスキャンしなかった)。F123Hが、野生型と比べてSIが13人のドナー全体にわたって常に低く、全体的なT細胞応答を低減することにおいて最も効果的な突然変異であることが判明した。しかしF123を突然変異させて十分な活性を回復することはできなかった。変化のうちのいくつかは、WTに対する正の応答の頻度が等しかった(表4)が、それらが応答したのは、いくらか重なってはいたが、同じサブセットのドナーではなかった。突然変異体の平均SIは一般にWTペプチドよりも低く、増大した正の応答の頻度を与えたL128Aに関してさえも低くかった。V119Aは、ドナーのセットよりも常に高いSIを与えたが、正の応答の頻度はWTに似ていた。領域3ムテインの代替組合せを免疫原性アッセイを用いて検査した。領域3を跨ぎアミノ酸の各組合せを含む9つのペプチドを合成し、T細胞増殖アッセイで再検査した(表5)。
【0117】
【表5】

【0118】
15%のドナーが、WTペプチドにSI>1.95で応答した。すべてのドナー試料におけるWTペプチドに対する平均SIは1.43であった。変化の組合せはどれも、20人のドナーの一群に対する平均SIがWTペプチドよりも低かったが、I116N+L128Rを含むペプチドについては、一人のドナーで正の応答(SI>1.95)となった。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の好ましいIFNαムテインのそれぞれの相対生物学的活性を示す。
【図2】細胞培養上清のレセプター信号伝達アッセイの結果を示す。
【図3】Peprotech IFNα2aに対する精製IFN311およびIFN316の活性の比較を示す。
【図4a】合成ペプチドを用いた経時的免疫原性アッセイの結果を示す。
【図4b】合成ペプチドを用いた経時的免疫原性アッセイの結果を示す。
【図4c】合成ペプチドを用いた経時的免疫原性アッセイの結果を示す。
【図5.1】本発明の好ましい分子のタンパク質配列を示す。
【図5.2】本発明の好ましい分子のタンパク質配列を示す。
【図5.3】本発明の好ましい分子のタンパク質配列を示す。
【図5.4】本発明の好ましい分子のタンパク質配列を示す。
【図5.5】本発明の好ましい分子のタンパク質配列を示す。
【図5.6】本発明の好ましい分子のタンパク質配列を示す。
【図5.7】本発明の好ましい分子のタンパク質配列を示す。
【図5.8】本発明の好ましい分子のタンパク質配列を示す。
【図5.9】本発明の好ましい分子のタンパク質配列を示す。
【図5.10】本発明の好ましい分子のタンパク質配列を示す。
【図5.11】本発明の好ましい分子のタンパク質配列を示す。
【図5.12】本発明の好ましい分子のタンパク質配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良された生物学的および免疫原性特性を有し、下記アミノ酸配列を有する修飾ヒトインターフェロンアルファ2(IFNα2)分子
【化1】

(式中、
0=FcまたはFcリンカー、
Fc=抗体のFcドメイン
リンカー=6から25個のアミノ酸からなるリンカーペプチド
1=I、Q
2=H、Y
3=I、T;
4=F、T、A
5=W、H;
6=Y、D;
7=I、N、T、P、R
8=L、T、H、D、S、Nおよび
9=N、S;
ただし、同時にX1=I、X2=H、X3=I、X4=F、X5=W、X6=Y、X7=I、X8=LおよびX9=NであるIFNα分子を除外する)。
【請求項2】
5=HおよびX8=N
である請求項1に記載のIFNα2ムテイン。
【請求項3】
3=TおよびX4=A
である請求項2に記載のIFNα2ムテイン。
【請求項4】
下記の化合物からなる群から選択した請求項1から5のいずれかに記載のIFNα2ムテイン。
(i)X1=Q、X2=H、X3=T、X4=A、X5=H、X6=Y、X7=R、X8=NおよびX9=N
(ii)X1=Q、X2=H、X3=I、X4=F、X5=H、X6=Y、X7=I、X8=LおよびX9=N
(iii)X1=I、X2=H、X3=T、X4=A、X5=H、X6=Y、X7=T、RまたはN、X8=NおよびX9=N
(iv)X1=I、X2=H、X3=T、X4=A、X5=H、X6=Y、X7=I、X8=LおよびX9=N
(v)X1=I、X2=Y、X3=I、X4=T、X5=H、X6=Y、X7=I、X8=LおよびX9=N
(vi)X1=I、X2=H、X3=I、X4=F、X5=H、X6=Y、X7=P、TまたはN、X8=LおよびX9=N
(vii)X1=I、X2=H、X3=I、X4=F、X5=H、X6=Y、X7=I、X8=TおよびX9=S
(viii)X1=I、X2=H、X3=T、X4=F、X5=H、X6=Y、X7=I、X8=TおよびX9=S
(ix)X1=I、X2=H、X3=T、X4=F、X5=W、X6=Y、X7=I、X8=TおよびX9=S
(x)X1=I、X2=H、X3=I、X4=F、X5=W、X6=Y、X7=I、X8=T、S、N、HまたはDおよびX9=N
(xi)X1=I、X2=H、X3=I、X4=F、X5=H、X6=Y、X7=I、X8=LおよびX9=N
(xii)X1=I、X2=H、X3=I、X4=F、X5=W、X6=D、X7=I、X8=LおよびX9=N
【請求項5】
Fcが、ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域ドメインであり、そのC末端で前記ムテインに連結された請求項1から4のいずれかに記載のIFNα2ムテイン。
【請求項6】
Fcドメインが単量体である請求項5に記載のIFNα2ムテイン。
【請求項7】
リンカーペプチドが12から20個のアミノ酸からなる請求項1から6のいずれかに記載のIFNα2ムテイン。
【請求項8】
前記リンカーペプチドが(G)4S(G4)S(G4)SGである請求項7に記載のIFNα2ムテイン。
【請求項9】
増強された免疫原性特性が免疫原性の損失をもたらし、前記免疫原性の損失は、元々無修飾であった分子に提示されるMHCクラスII結合T細胞エピトープを欠失させることによって達成される請求項1から8のいずれかに記載のIFNα2ムテイン。
【請求項10】
生物学的T細胞増殖アッセイにおいてタンパク質全体として検査したときに、親の無修飾のIFN分子よりも小さくかつ2未満の刺激指数(SI)を示す請求項9に記載のIFNα2ムテイン。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のIFNα2ムテインをコードするDNA配列。
【請求項12】
前記請求項のいずれかに記載のIFNα2ムテインを、任意選択で、薬剤として許容される担体、希釈剤または賦形剤と共に含む医薬組成物。
【請求項13】
C型肝炎ウイルス感染患者を治療するための薬物の製造のための請求項1から11のいずれかに記載のIFNα2ムテインの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−524351(P2007−524351A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501874(P2006−501874)
【出願日】平成16年2月18日(2004.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001524
【国際公開番号】WO2004/074486
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】