説明

改質硫黄コンクリート構造物の施工方法及び予熱装置

【課題】施工期間が短く、鉄筋や鉄骨の錆の心配も少なく、強度的にも優れた、鉄筋や鉄骨鉄筋の改質硫黄コンクリート構造物を効率良く施工することが可能な改質硫黄コンクリート構造物の施工方法及び該方法において、型枠への溶融改質硫黄コンクリート原料の導入と連関させて、鉄筋や鉄骨を効率良く予熱させることが可能な予熱装置を提供すること。
【解決手段】本発明の施工方法は、改質硫黄コンクリート用の溶融改質硫黄コンクリート原料(S)を準備する工程(A)と、垂直方向に配した主筋を有する鉄筋組立体の外側に、耐熱性型枠を設置し、原料(S)の打設空間を設ける工程(B)と、垂直方向に移動可能な予熱手段を下方から上方に移動させ、工程(B)で設けた打設空間内の鉄筋組立体を、下方から予熱する工程(C)と、工程(C)の予熱手段の移動に合わせて、該予熱手段の下方の打設空間に原料(S)を供給する工程(D)と、供給した原料(S)を冷却固化する工程(E)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直方向に主筋を有する鉄筋や鉄骨鉄筋コンクリート構造物を、改質硫黄を用いて施工するための施工方法及び該方法に用いる鉄筋や鉄骨の予熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋や鉄骨鉄筋コンクリート構造物には、従来からセメントコンクリートが使用されている。このようなセメントコンクリートを用いたコンクリート構造物は、通常、鉄筋組立体や鉄骨鉄筋組立体を囲う型枠を設置し、該型枠内にセメントコンクリートを流し込んで打設した後、脱型、養生することにより施工されている。
セメントコンクリートは、その強度等を発現させるために長期間の養生が必要であり、また、これを用いた鉄筋や鉄骨鉄筋コンクリート構造物は、セメントを用いるために鉄筋や鉄骨の錆等が発生し易く、防食手段を施す必要がある。
【0003】
ところで、近年、コンクリートに代わる土木、建設資材として、耐酸性、機械的強度、遮水性等に優れる硫黄含有資材が、例えば、特許文献1や2等を含め、多数提案され、利用されはじめている。
このような硫黄含有資材を、例えば、溶融改質硫黄を所定の型枠に流し込み成型固化させて製造する場合には、該資材中の改質硫黄の溶融温度が通常120℃以上であるため、溶融改質硫黄を120〜160℃程度に保持して型枠に導入する必要がある。また、鉄筋や鉄骨を有する型枠内に溶融改質硫黄を導入する場合には、該溶融改質硫黄と鉄筋等との接着力や得られる改質硫黄コンクリートの強度を保持するために、改質硫黄が部分的に急冷されないよう、鉄筋や鉄骨をある程度予熱しておく必要がある。しかし、このような鉄筋等の予熱方法と、溶融改質硫黄コンクリートの型枠への導入方法とを連関した検討はなされていない。
このため、硫黄含有資材については多数提案されているが、鉄筋や鉄骨鉄筋コンクリート構造物を、改質硫黄を利用した改質硫黄コンクリートを用いて施工する方法については従来提案がなされていない。
【特許文献1】特開2001−163649号公報
【特許文献2】特開2005−82475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、施工期間が短く、鉄筋や鉄骨の錆の心配も少なく、強度的にもセメントコンクリートと遜色無い、改質硫黄コンクリートを用いた鉄筋や鉄骨鉄筋コンクリート構造物を効率良く施工することが可能な改質硫黄コンクリート構造物の施工方法を提供することにある。
本発明の別の課題は、上記施工方法において、型枠への溶融改質硫黄コンクリート原料の導入と連関させて、鉄筋や鉄骨を効率良く予熱させることが可能な予熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、改質硫黄及び骨材とを含む改質硫黄コンクリート用の溶融改質硫黄コンクリート原料(S)を準備する工程(A)と、垂直方向に配した主筋を有する鉄筋組立体の外側に、耐熱性型枠を設置し、原料(S)の打設空間を設ける工程(B)と、垂直方向に移動可能な予熱手段を下方側から上方側に移動させ、工程(B)において設けた打設空間内の鉄筋組立体を、下方側から予熱する工程(C)と、工程(C)における予熱手段の移動に合わせて、該予熱手段の下方の打設空間に原料(S)を供給する工程(D)と、工程(D)により供給した原料(S)を冷却固化する工程(E)とを含む改質硫黄コンクリート構造物の施工方法が提供される。
【0006】
工程(A)において準備する原料(S)は、従来提案されている、例えば、天然産又は、石油や天然ガスの脱硫によって生成した硫黄等を硫黄改質剤により重合した改質硫黄と、細骨剤を含む骨材とを溶融混合することにより製造することができる。
硫黄改質剤としては、例えば、炭素数4〜20のオレフィン系炭化水素又はジオレフィン系炭化水素、具体的には、リモネン、ピネン等の環状オレフィン系炭化水素、スチレン、ビニルトルエン、メチルスチレン等の芳香族炭化水素、ジシクロペンタジエン及びそのオリゴマー、シクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロオクタジエン等のジエン系炭化水素等の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
また、骨材は、コンクリート構造物の種類等に応じて従来提案されている骨材から適宜選択して用いることができる。好ましくは、粒径1mm以下の細骨材であって、例えば、天然石、砂、れき、珪砂、鉄鋼スラグ、フェロニッケルスラグ、銅スラグ、石炭灰、燃料焼却灰、電気集塵灰、シリカヒューム、アルミナ、石英粉、粘土鉱物、活性炭及びガラス粉末等からなる群より選択される1種又は2種以上の細骨材を、骨材と共に混合することによって、得られる構造物の耐酸性や強度、更には硫黄の耐着火性等を改善することができる。
【0007】
工程(B)に用いる垂直方向に配した主筋を有する鉄筋組立体は、通常、構造物の柱、壁、橋脚等に用いる鉄筋組立体を用いることができる。また、鉄筋組立体は、通常、帯筋やスパイラル筋等の副筋を備える。
更に、工程(B)においては、鉄筋組立体に加えて、鉄骨鉄筋コンクリート構造物とするための垂直方向に配した鉄骨を用いることもできる。
工程(B)に用いる耐熱製型枠は、該型枠内に導入する原料(S)の溶融温度に耐えられる材質であれば良く、通常、金属型枠を用いることができる。また、型枠の形態は特に限定されず、施工する改質硫黄コンクリート構造物の形態に合わせて適宜選択することができる。
型枠は、施工後に脱型する場合には、改質硫黄コンクリートの離型剤等を予め内面に適用しておいても良い。
【0008】
工程(C)において、予熱手段は、工程(B)において設けた打設空間内の鉄筋組立体等と接触することの無いように、垂直方向に移動可能であり、かつ打設空間内の鉄筋組立体又は鉄骨鉄筋組立体を下方側から上方側へ予熱しうるものであれば特に限定されず、好適には、後述する本発明の予熱装置等を挙げることができる。
該予熱は、後述する工程(D)において供給される原料(S)が、鉄筋や鉄骨に接触する際に急冷され、最終的に得られる構造物の内部に亀裂等が生じて強度低下の発生を抑制するために、更には、鉄筋や鉄骨への原料(S)の接着性を向上させるために、通常、鉄筋や鉄骨の表面温度が50〜150℃程度に予熱できれば良い。
【0009】
工程(D)においては、工程(C)における予熱手段の移動に合わせて、該予熱手段の下方の打設空間に原料(S)を供給するのであるが、該原料(S)の供給手段は、例えば、予熱手段の上方側への移動に合わせて、該予熱手段に原料(S)が接触しない量を制御しながら、型枠上方から該原料(S)を連続的又は断続的に導入する方法や、予熱手段より低い位置に原料(S)の供給口を設け、該予熱手段の上方側への移動に合わせて、該供給口も上方側へ移動させ、原料(S)を、該予熱手段及び供給口に接触しない量を制御しながら連続的又は断続的に導入する方法等が挙げられる。
【0010】
後者の方法には、例えば、原料(S)を供給する供給手段として、原料(S)を溶融状態で貯留するタンクと、該タンクから原料(S)を所定箇所に溶融状態で移送可能な可撓性の管と、該管を垂直方向に移動可能な移動装置とを備える装置を用いることができる。
該タンクは、原料(S)の溶融状態を維持しうる熱制御手段と原料(S)を混合可能な撹拌手段と、原料(S)の圧送手段とを備えていれば良い。また、前記可撓性の管は、前記移動装置、例えば、管巻取り装置等により巻き取ることが可能な可撓性等を有するか、管を昇降手段により昇降しうる程度の可撓性を有し、かつ管内を移送される原料(S)の溶融状態を維持しうるように、管内を加熱するか保温しうる手段を備えたものであれば良い。
【0011】
工程(D)においては、工程(C)で予熱された鉄筋や鉄骨を含む所定領域に、該予熱による鉄筋や鉄骨の温度低下が少ないうちに原料(S)を供給する必要があるが、溶融状態で導入された原料(S)自体が100℃以上の温度を有するので、該導入された原料(S)表面の上方の鉄筋や鉄骨は、該原料(S)の熱によっても予熱される。このため、工程(C)における予熱手段の移動は、該予熱手段と、導入された原料(S)の表面との間が、通常10〜100cm、好ましくは20〜50cm程度を維持して移動させ、また、この間隔を維持しうるように工程(D)における原料(S)の供給量を制御することが好ましい。
【0012】
工程(E)において、原料(S)の冷却固化は、通常、自然冷却により行なうことができ、該自然冷却の場合でも、構造物の大きさや形態により異なるが、通常、原料(S)は3〜24時間程度で固化し、強度を発現することができる。
工程(E)の後、型枠をそのまま構造物に利用することができる他、脱型して目的の構造物を得ることができる。
また、工程(E)後、脱型し、改質硫黄コンクリート表面に塗料を塗布する工程(F)を行なうことで、硫黄臭気を防止することもできる。
更に、少なくとも前記工程(D)及び工程(E)の所望時期に、鉄筋組立体や鉄骨を振動させることにより、原料(S)の充填をより蜜にすることができ、得られる構造物の強度を更に向上させることが可能である。所望時期は、上記目的を勘案して適宜選択でき、好ましくは工程(D)の間、断続的若しくは連続的に行い、工程(E)の初期段階に行なうことができる。
該振動は、通常、セメントコンクリートの施工時に使用される装置等を用いて行なうことが可能である。
【0013】
本発明によれば、上記本発明の施工方法に用いる予熱装置であって、熱風供給手段と、該熱風供給手段に接続された管状の熱風移送手段と、熱風移送手段の先端に接続した、熱風を放射状に噴射するための熱風噴射手段と、前記熱風移送手段を垂直方向に移動するための移動手段とを備えることを特徴とする予熱装置(以下、予熱装置(1)という)が提供される。
また本発明によれば、上記本発明の施工方法に用いる予熱装置であって、管状のガス供給手段と、該ガス供給手段の先端に接続したバーナーヘッドと、該バーナーヘッドの下方に、該ガス供給管に固定して設けた炎偏向板と、ガス供給手段を垂直方向に移動するための移動手段とを備えることを特徴とする予熱装置(以下、予熱装置(2)という)が提供される。
該予熱装置(2)においては、内曲面に炎反射機能を有する中空の半球体を、前記バーナーヘッドの上方に位置するように、前記ガス供給管に固定することもできる。このような半球体を設けることにより、原料(S)を予熱装置の上方から供給する場合に、バーナーヘッドに原料(S)が接触付着することを抑制することができると共に、バーナーによる炎の熱を周囲に拡散することができる。
更に本発明によれば、上記本発明の施工方法に用いる、鉄筋組立体と型枠との間で垂直方向に移動させる予熱装置であって、型枠の垂直方向の一部分において鉄筋組立体を周方向に囲う、内面が熱反射機能を有する支持体と、該支持体の内側周方向に、内面から離隔して設けた加熱手段と、該支持体を垂直方向に移動させる移動手段とを備えたことを特徴とする予熱装置(以下、予熱装置(3)という)が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の施工方法は、上記工程(A)〜(E)を含むので、柱、壁、橋脚等の垂直方向に配した主筋を有する鉄筋又は鉄骨鉄筋コンクリート構造物を、施工期間が短く、鉄筋や鉄骨の錆の心配も少なく、強度的にもセメントコンクリートと遜色無い、改質硫黄コンクリート構造物を、改質硫黄コンクリートを用いて効率良く施工することができる。
本発明の予熱装置(1)〜(3)は、特に、それぞれ垂直方向に移動するための移動手段を備え、かつ予熱装置(1)では熱風を放射状に噴射するための熱風噴射手段を備え、予備装置(2)ではバーナーヘッドからの炎を放射状等に偏向しうる炎偏向板を備え、予備装置(3)では、型枠の垂直方向の一部分において鉄筋組立体を周方向に囲う、内面が熱反射機能を有する支持体と、該支持体の内側周方向に、内面から離隔して設けた加熱手段とを備えるので、本発明の工程(C)において、工程(D)の型枠への溶融改質硫黄コンクリート原料の供給と連関させて、鉄筋や鉄骨を効率良く予熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されない。
図1は本発明の予熱装置(1)の一例を用いた、柱構造物を例にした本発明の施工方法を説明するための概略説明図である。
図1において、10は金属製型枠であって、実際には一点斜線で示すように上方に延びているが説明のため透視させている。(S)は先に供給した改質硫黄コンクリート原料である。型枠10の内側には、垂直方向に配した複数の主筋11aと副筋11bとからなる鉄筋組立体11が形成されており、図1では説明のために鉄筋の数を減らしてまた省略して表している。
【0016】
鉄筋組立体11の略中央部には、熱風供給手段(図示せず)に接続された耐熱性の熱風移送ホース12a及び該ホース12aの先端に接続した、熱風噴射口を両サイドに有する回転可能な熱風噴射ノズル12bを備え、かつ該ホース12aを垂直方向に移動するためのホース昇降部(図示せず)を備える予熱装置(1)が配置されている。
該予熱装置(1)の熱風噴射ノズル12bは、熱風噴射口を両サイドに設けているものであるが、例えば、放射状に熱風を噴射しうるように周囲に多数の熱風噴射孔を有するノズル等とすることもでき、この場合には、必ずしもノズル12bは回転しなくても良い。
【0017】
鉄筋組立体11内の端部側には、溶融改質硫黄コンクリート原料(S)を供給するための、耐熱性及び保温性を有する原料(S)の供給管13が配置されている。該供給管13は、原料(S)を溶融状態で貯留するタンク(図示せず)に接続されており、昇降装置により上方に移動可能なような可撓性を有している。供給管13には、その内部に、管内を加熱しうる熱線等の加熱手段を配することも可能である。
【0018】
次に、図1に示す態様における本発明の施工方法を説明する。
まず、熱風移送ホース12a内を通して、熱風をノズル12bに供給し、回転するノズル12bを放射状に噴出させ、予熱装置(1)の周囲の鉄筋(11a,11b)及び型枠10の所定箇所を50〜150℃程度に予熱する。そして、予熱装置(1)を上方に徐々に移動させながら、上方の鉄筋(11a,11b)及び型枠10の所定箇所を50〜150℃程度に順次予熱する。
一方、上記予熱処理された鉄筋(11a,11b)及び型枠10の領域に供給管13から原料(S)を供給し、予熱装置(1)の上方への移動に連動させて、供給管13も上方へ移動させ、原料(S)を型枠内に供給する。
【0019】
型枠10の上方まで上記操作を繰返し、最終的に型枠内からホース12a、ノズル12b及び供給管13を完全に昇降し、型枠内全体に原料(s)が充填されたところで、原料(S)を自然冷却することによって、改質硫黄コンクリートが硬化し、脱型することにより所望の柱コンクリート構造物を得ることができる。
上記説明においては、原料(S)を連続的に供給する方法を説明したが、断続的に継続的に行なうこともできる。
【0020】
図2は、図1の熱風移送ホース12a及びノズル12bを備える予熱装置(1)の代わりに同様な方法により用いることが可能な予熱装置(2)の一例を示す一部透視概略図である。
予熱装置(2)は、ガス供給手段(図示せず)に接続された可撓性のガス供給ホース22a及び該ホース22aの先端に接続した、バーナーヘッド12bと、該バーナーヘッド22bの下方に、該ガス供給ホース22aに固定具23を用いて固定した炎偏向板24と、ガス供給ホース22aの下方に図示するように設けた中空の半球体25と、ガス供給ホース22aを垂直方向に移動するためのホース22aの巻取り装置(図示せず)とを備える。
半球体25の内曲面は、炎反射機能を有する鏡面仕上げがなされている。
【0021】
予熱装置(2)では、ガス供給ホース22aから供給されるガス、例えばLPGガスが、バーナーヘッド22bにおいて炎26に変換され、該炎26は、炎偏向板24に噴射され、矢印で示すとおり、放射状に放散し、また、半球体25の内曲面により炎の熱が反射され、結果としてこの周囲の鉄筋を予熱装置(1)と同様に加熱して予熱することができる。
半球体25は、例えば、原料(S)を図1における型枠10の上方から供給する場合等において、原料(S)が、バーナーヘッド22b等に付着することを防止する機能も有する。このように、原料(S)をバーナーヘッド22bより上方から供給する場合には、予熱と原料(S)の供給とを連続的に同時に行うと、原料(S)が、放射状に偏向された炎26と接触し、危険を伴う恐れがある。従って、このような態様をとる場合には、予熱した後、該予熱を一旦中止し、予熱した箇所に原料(S)を供給し、再度予熱を再開する操作を繰返す断続的な方法を採用することが好ましい。
【0022】
図3は、図1の熱風移送ホース12a及びノズル12bを備える予熱装置(1)の代わりに予熱装置(3)の一例を用いた、図1と同様な柱構造物を例にした本発明の施工方法を説明するための概略説明図である。しかし、予熱装置(1)を除いて予熱装置(3)を用いた以外の構成は図1と同様であるので、図1と同一番号を付してその説明を省略する。
また、図4は、図3において、型枠と鉄筋と予熱装置(3)の一例との位置関係を示すための概略断面図であり、その構成については図3と同一番号を付す。更に図5は、図4に示す予熱装置(3)のA-A断面図である。
以下に図3〜図5を参照して本発明の予熱装置(3)の一例を説明する。
【0023】
予熱装置(3)は、型枠10の垂直方向の一部分において鉄筋組立体11を周方向に囲う、支持体30と、鉄筋組立体11と型枠10との間で該支持体30を垂直方向に移動させるためのワイヤー31が図3及び図4に示されるように支持体30に4本接続されている。
該ワイヤー31は、支持体30を上方に移動させる巻取り装置(図示せず)に接続されており、図1において説明したように、ホース12aと同様に該ワイヤー31の巻取り装置により支持体30を上方に移動させることができる。
【0024】
図5に示すように、支持体30の内面51は、熱反射面が形成されており、該反射面51と離隔して、円筒形の電気ヒーター50が支持体30の各内側面に3本づつ配置されている。これら電気ヒーター50によって、鉄筋組立体11を含む支持体30の内側領域が効率良く予熱され、ワイヤー31により徐々に上方に昇降することにより、鉄筋組立体11の上方側も順次予熱することができる。
加熱手段としての電気ヒーター50は、これに限定されるものではなく、複数のハロゲンランプ等であっても良い。また、反射面51に、少なくとも1つ以上の熱を送風することができる送風装置を設置することもできる。
【0025】
支持体30の形状は、型枠10の形状に合わせて環状等にすることも可能であり、環状の場合には、支持体30が必ずしも同一形状で連続していなくても良く、電気ヒーター50等の加熱手段を有する支持体部を2〜3程度に分割したものであっても良い。この場合、各分割された支持体は、例えば、曲状の接続ワイヤー等で連結されていることが、垂直方向への移動時の安定性の面で好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の予熱装置(1)の一例を用いた、柱構造物を例にした本発明の施工方法を説明するための概略説明図である。
【図2】本発明の予熱装置(2)の一例を説明するための一部透視概略図である。
【図3】本発明の予熱装置(3)の一例を用いた、柱構造物を例にした本発明の施工方法を説明するための概略説明図である。
【図4】図3において、型枠と鉄筋と予熱装置(3)の一例との位置関係を示すための概略断面図である。
【図5】図4に示す予熱装置(3)のA-A断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10:金属型枠
11:鉄筋組立体
11a:主筋
11b:副筋
12a:熱風移送ホース
12b:熱風噴射ノズル
13:原料(S)の供給管
(S):先に供給した改質硫黄コンクリート原料
22a:ガス供給ホース
22b:バーナーヘッド
24:炎偏向板
30:支持体
50:電気ヒーター
51:熱反射面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質硫黄及び骨材とを含む改質硫黄コンクリート用の溶融改質硫黄コンクリート原料(S)を準備する工程(A)と、
垂直方向に配した主筋を有する鉄筋組立体の外側に、耐熱性型枠を設置し、原料(S)の打設空間を設ける工程(B)と、
垂直方向に移動可能な予熱手段を下方側から上方側に移動させ、工程(B)において設けた打設空間内の鉄筋組立体を、下方側から予熱する工程(C)と、
工程(C)における予熱手段の移動に合わせて、該予熱手段の下方の打設空間に原料(S)を供給する工程(D)と、
工程(D)により供給した原料(S)を冷却固化する工程(E)とを含む改質硫黄コンクリート構造物の施工方法。
【請求項2】
工程(B)において設ける打設空間内に、鉄筋組立体に加えて、垂直方向に配した鉄骨を含み、工程(C)における予熱手段の移動により、鉄筋組立体に加えて前記鉄骨も下方側から予熱することを特徴とする請求項1記載の施工方法。
【請求項3】
少なくとも工程(D)及び工程(E)の所望時期に、鉄筋組立体を振動させることを特徴とする請求項1又は2記載の施工方法。
【請求項4】
工程(D)において、原料(S)を供給する供給手段が、原料(S)を溶融状態で貯留するタンクと、該タンクから原料(S)を所定箇所に溶融状態で移送可能な可撓性の管と、該管を垂直方向に移動可能な移動装置とを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の施工方法。
【請求項5】
工程(E)の後、脱型し、改質硫黄コンクリート表面に塗料を塗布する工程(F)を含む請求項1〜4のいずれか1項記載の施工方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の施工方法に用いる予熱装置であって、
熱風供給手段と、該熱風供給手段に接続された管状の熱風移送手段と、熱風移送手段の先端に接続した、熱風を放射状に噴射するための熱風噴射手段と、前記熱風移送手段を垂直方向に移動するための移動手段とを備えることを特徴とする予熱装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項記載の施工方法に用いる予熱装置であって、
管状のガス供給手段と、該ガス供給手段の先端に接続したバーナーヘッドと、該バーナーヘッドの下方に、該ガス供給管に固定して設けた炎偏向板と、ガス供給手段を垂直方向に移動するための移動手段とを備えることを特徴とする予熱装置。
【請求項8】
内曲面に炎反射機能を有する中空の半球体を、前記バーナーヘッドの上方に位置するように、前記ガス供給管に固定したことを特徴とする請求項7記載の予熱装置。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項記載の施工方法に用いる、鉄筋組立体と型枠との間で垂直方向に移動させる予熱装置であって、
型枠の垂直方向の一部分において鉄筋組立体を周方向に囲う、内面が熱反射機能を有する支持体と、該支持体の内側周方向に、内面から離隔して設けた加熱手段と、該支持体を垂直方向に移動させる移動手段とを備えたことを特徴とする予熱装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−270553(P2007−270553A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98889(P2006−98889)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】