説明

放射冷却対応型温室

【課題】太陽熱を吸収し、温室内を暖めることのできる温室でありながら、放射冷却による温室内の温度低下を低減もしくは防止することのできる放射冷却対応型温室を提供する。
【解決手段】温室を覆うシートの内部に、折り畳み式の放射冷却防止シート4が設けられているので、太陽が照射しているときは、放射冷却防止シート4を閉じて、太陽の熱を温室内に取り込むとともに、太陽が照射しない夜間など放射冷却がおきるときには、開閉自在の放射冷却防止シート4を開けて地盤面を覆うことで、地盤面からの放射冷却を防止し、温室内の温度低下を低減もしくは防止する。さらに、放射冷却対応型温室1内に蓄熱材8が設置されている。また、畝の地中及び/又はのり面に断熱材6が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射冷却による温室内の温度低下を防ぐことのできる温室に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、農作物の栽培促進のため、温室での栽培が行われているが、温室内の温度を保つため、灯油などの燃料や電気を利用した暖房が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−112009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、灯油などの燃料や電気を利用した暖房では、暖房コストが高くつくという問題があった。そこで、温室内を、太陽熱を利用して暖めることが試みられている。
【0005】
しかし、太陽熱を利用した温室内の暖房も、太陽が出ているときには、温室内は暖まるが、夜間には、放射冷却による放熱で、地盤面から熱が奪われ、温室内の温度が低下するといった問題があった。
【0006】
放射冷却を防止するシートで、温室を覆った場合、放射冷却に対しては効果があっても、放射冷却を防止するシートの特性上、太陽の熱は通しにくく、昼間の太陽熱の吸収に問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑み、太陽熱を吸収し、温室内を暖めることのできる温室でありながら、放射冷却による温室内の温度低下を低減もしくは防止することのできる放射冷却対応型温室を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、太陽熱を利用した温室であって、温室を覆うシートの内部に、開閉自在の放射冷却防止シートが設けられたことを特徴とする放射冷却対応型温室により解決される。
【0009】
この放射冷却対応型温室では、温室を覆うシートの内部に、開閉自在の放射冷却防止シートが設けられているので、太陽が照射しているときは、開閉自在の放射冷却膜を閉じ、太陽の熱を温室内に取り込むとともに、太陽が照射しない夜間など放射冷却がおきるときには、開閉自在の放射冷却シートを開けて地盤面を覆うことで、地盤面からの放射冷却を防止し、温室内の温度低下を低減もしくは防止することができる。
【0010】
また、放射冷却防止シートが開閉自在であるので、放射冷却シートを開けて地盤面を覆うことも、閉じることも容易に行うことができる。
【0011】
また、上記の放射冷却対応型温室において、温室内の畝の地中及び/又はのり面に断熱材が設けられているとよい。
【0012】
温室内の畝の地中及び/又はのり面に断熱材が設けられているので、畝の側面からの熱の流出や、冷たい熱の侵入を防ぎ、畝の冷却を効果的に防止することができる。
【0013】
また上記の課題は、太陽熱を利用した温室であって、温室内の畝の地中及び/又はのり面に断熱材が設けられ、該断熱材の上部に、畝を覆う折り畳み式の放射冷却防止シートが設けられたことを特徴とする放射冷却対応型温室によっても解決される。
【0014】
この放射冷却対応型温室では、温室内の畝の地中及び/又はのり面に断熱材が設けられ、該断熱材の上部に、畝を覆う折り畳み式の放射冷却防止シートが設けられているので、太陽が照射しているときは、開閉自在の放射冷却膜を閉じ、太陽の熱を温室内に取り込むとともに、太陽が照射しない夜間など放射冷却がおきるときには、開閉自在の放射冷却シートを開けて地盤面を覆うことで、地盤面からの放射冷却を防止し、温室内の温度低下を低減もしくは防止することができる。
【0015】
さらに上記の放射冷却対応型温室において、放射冷却対応型温室内に蓄熱材が設置されているとよい。
【0016】
放射冷却対応型温室内に蓄熱材が設置されていることで、太陽の照射により温室内が温められるとともに、蓄熱材も蓄熱されるため、太陽が照射しない夜間などにおいて、蓄熱材に蓄えられた熱が放熱されることで、温室内の温度低下を低減もしくは防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以上のとおりであるから、太陽熱を吸収し、温室内を暖めることのできる温室でありながら、放射冷却による温室内の温度低下を低減もしくは防止することのできる放射冷却対応型温室を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図(イ)は、放射冷却対応型温室を示す正面図、図(ロ)は、放射冷却防止装置を示す側面図、図(ハ)は、放射冷却防止装置を示す斜視図である。
【図2】放射冷却防止装置を使用状況を説明する図であって、図(イ)は、太陽が照射しているときの状況を示す側面図、図(ロ)は、夜間の状況を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1に示す本発明の実施形態である放射冷却対応型温室1において、2は放射冷却防止シートを開閉する放射冷却防止装置、5は農作物を植える畝、6は断熱材、7は断熱材を覆う放射冷却防止装置、8は蓄熱材、9は温室を覆うシートである。
【0021】
本実施例では、2条の畝5,5からなる農地に設置される放射冷却対応型温室であって、図示しない構造体の周囲に温室を覆うシート9が張り巡らされている。放射冷却対応型温室1の内部には、開閉自在の放射冷却防止装置2が設けられている。
【0022】
図1(ロ)に示すように、放射冷却防止装置2は、放射冷却防止シート4を支持する放射冷却防止シート支持体3と、放射冷却防止シート支持体3に支持される放射冷却防止シート4からなる。放射冷却防止シート支持体3は、図示しない温室の構造体の天井部から吊り下げられる懸下部3aと、懸下部3aの下方側端部に取り付けられた放射冷却防止シート支持部3bとからなり、放射冷却防止シート支持部3bが、懸下部3aの下方側端部から対抗する水平方向にそれぞれ伸びる開き状態と、放射冷却防止シート支持部3bが、懸下部3aの下方側端部へ折り畳まれる閉じ状態とに切替可能となっている。本実施例では、懸下部3aと放射冷却防止シート支持部3bとが、ヒンジにより接続され、放射冷却防止シート支持部3bがヒンジにより回動可能に懸下部3aに接続されている。
【0023】
放射冷却防止シート支持部3b上には、放射冷却防止シート4が取り付けられており、放射冷却防止シート支持部3bの懸下部3aと接続する側と反対側の端部には、放射冷却防止シート4が張り伸ばされている。図1(イ)に示すように、開放状態では、放射冷却防止シート支持部3bより張り伸ばされた放射冷却防止シート4が、放射冷却防止シート支持部3bの端部より、下方に垂れ下がっている。以上の構成により、放射冷却防止シートが開閉自在となっている。なお、放射冷却防止シート支持部3bの長さは、図1(イ)に示すように、開放状態において、畝の上部をシート支持部3b、3bが覆えるように設定されている。また、ここで放射冷却防止シートの材質は、放射冷却を防止できる材質であれば特に限定はないが、例えば、アルミ蒸着シートなどが用いられる。
【0024】
二条の畝5,5の側面には、それぞれ断熱材6,6が配置されており、畝5,5の熱が地中に拡散するのを防止するとともに、地中の冷えた熱が畝に達することを防止する。また、断熱材の上部には、放射冷却防止シートで断熱材を覆う、巻き取り式の放射冷却防止装置7が設置される。ここでは。畝5の両側面に配置される断熱材6,6のうち、一方の断熱材の上端部に巻き取り式の折り畳み放射冷却装置が配置され、放射冷却防止シートが断熱材及び畝を覆う開き状態と、放射冷却防止シートが放射冷却防止装置内7に巻き取られる閉じ状態に切替可能となっている。
【0025】
また、畝5,5の中間部には、熱の蓄熱及び放出を行う蓄熱材8が設置される。
【0026】
放射冷却対応型温室1は次のように利用される。
【0027】
図2(イ)に示すように、太陽が照射しているときは、放射冷却防止装置2及び断熱材6,6の上端に設置された放射冷却防止装置7閉じられている。閉じた状態では、放射冷却防止装置2,7は、太陽からの日光の照射を遮らず、日光は放射冷却対応型温室1の太陽の日光を透過するシート9を通して、温室内を暖める。放射冷却対応型温室1内の温度が上がると、畝5,5の地中温度の上昇するとともに、蓄熱材8にも熱が蓄積される。
【0028】
図2(ロ)に示すように、夜間においては、放射冷却防止装置2及び断熱材6,6の上端に設置された放射冷却防止装置7を開き状態とし、畝5,5上を放射冷却防止装置2,7の放射冷却シートで覆う。畝5,5の上方を放射冷却防止シートで覆うことで、夜間における地表面からの放射冷却を防止し、放射冷却対応型温室1の温度低下を防止することができる。
【0029】
また、蓄熱材8に蓄熱された熱が、放射冷却対応型温室1内の温度低下に従い放出されるので、放射冷却対応型温室1の温度が、急激に低下するのを防止するとともに、放射冷却対応型温室1内の温度を安定的に保つことができる。
【0030】
また、畝5,5の側面には断熱材が設けられているため、地中への放熱を抑制することができる。
【0031】
特に本発明では、昼と夜が毎日繰り返される農作業においても、一日2回、放射冷却防止装置を操作し、放射冷却防止シートの開閉をするだけでよく、またその作業も開閉自在であるため、容易に実施することができる。
【0032】
以上のように、この放射冷却対応型温室では、温室を覆うシートの内部に、開閉自在の放射冷却防止装置が設けられているので、太陽が照射しているときは、放射冷却シートを閉じ、太陽の熱を温室内に取り込むとともに、太陽が照射しない夜間など放射冷却がおきるときには、開閉自在の放射冷却措置を開けて地盤面を覆うことで、地盤面からの放射冷却を防止し、温室内の温度低下を低減もしくは防止することができる。
【0033】
また、放射冷却防止シートが開閉自在であるので、放射冷却装置を開けて地盤面を覆うことも、閉じることも容易に行うことができる。
【0034】
さらに、温室内の畝の地中及び/又はのり面に断熱材が設けられているので、畝の側面からの熱の流出や、冷たい熱の侵入を防ぎ、畝の冷却を効果的に防止することができる。
【0035】
また、断熱材の上部を放射冷却シートで覆うことができるので、より効果的に放射冷却を防止し、温室内の温度低下を低減もしくは防止することができる。
【0036】
放射冷却対応型温室内に蓄熱材が設置されていることで、太陽の照射により温室内が温められるとともに、蓄熱材も蓄熱されるため、太陽が照射しない夜間などにおいて、蓄熱材に蓄えられた熱が放熱されることで、温室内の温度低下を低減もしくは防止することができる。
【0037】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、放射冷却防止装置として折り畳み式及び巻き取り式の放射冷却防止装置について説明したが、放射冷却防止装置の機構に限定はない。
【0038】
また、上記実施形態では、畝の両側面に断熱材を設けた場合について示したが、断熱材を地中に埋め込み、畝を断熱材で囲い込んでもよいのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0039】
1・・・放射冷却対応型温室
2・・・放射冷却防止装置
3・・・放射冷却防止シート支持体
4・・・放射冷却防止シート
5・・・畝
6・・・断熱材
7・・・放射冷却防止装置
8・・・蓄熱材
9・・・シート
10・・・シート(温室)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽熱を利用した温室であって、温室を覆うシートの内部に、開閉自在の放射冷却防止シートが設けられたことを特徴とする放射冷却対応型温室。
【請求項2】
前記温室内の畝の地中及び/又はのり面に断熱材が設けられた請求項1に記載の放射冷却対応型温室。
【請求項3】
太陽熱を利用した温室であって、温室内の畝の地中及び/又はのり面に断熱材が設けられ、該断熱材の上部に、畝を覆う折り畳み式の放射冷却防止シートが設けられたことを特徴とする放射冷却対応型温室。
【請求項4】
前記温室内に蓄熱材が設置された請求項1乃至3に記載の放射冷却対応型温室。

【図1】
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【図2】
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