説明

放射性ヨウ素の固定化材料、放射性ヨウ素を固定化するポーラスコンクリート及び放射性ヨウ素の固定化処理方法

【課題】放射性ヨウ素の固定化能力に優れる固定化材料、及び放射性ヨウ素の固定化効果を持つポーラスコンクリート、並びに汚染水の処理が容易である放射性ヨウ素の処理方法を提供する。
【解決手段】セメント70〜95質量部と、CaO/Alモル比が0.3〜0.7であり、Feを10質量%以下含むカルシウムアルミネート化合物5〜30質量部とを含有する放射性ヨウ素の固定化材料である。カルシウムアルミネート化合物の粉末度がブレーン比表面積値で2,000〜6,000cm/g、セメントが早強ポルトランドセメントであることが好ましい。前記放射性ヨウ素の固定化材料と粗骨材と水とを練り混ぜ、成形固化させる放射性ヨウ素を固定化するポーラスコンクリートであり、前記放射性ヨウ素を固定するポーラスコンクリートを用いてなる放射性ヨウ素の固定化処理方法を構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、放射性ヨウ素の固定化材料に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年3月11日、東北地方を大地震と津波がおそい、甚大な被害が出た。殊に、福島の原子力発電所の被害では、放射性物質の拡散が大きな問題となっている。
【0003】
中でも、放射性ヨウ素は拡散能力が高く、その封じ込めに苦慮している。また、福島の原発では、原子炉の冷却に海水を用いたこともあり、海水に放射性ヨウ素が溶け込んでいる状況にあった。そのため、塩化物イオンが多量に混在する中で、放射性ヨウ素を効果的に固定化できる材料が求められている。
【0004】
従来、放射性ヨウ素の固定化材料としては、ポルトランドセメントを主体とする材料を、放射性ヨウ素の固定化材料として利用する提案もなされている(特許文献1参照)。しかしながら、この材料は、充分な放射性ヨウ素の固定化能力を有するものではなかった。また、その固定化のスピードも遅く、水処理などには有効ではなかった。
【0005】
放射性ヨウ素の固定化能力を高めた発明として、アルミナセメント20〜90部と、残部がカルシウム化合物からなるセメント固定化材料が知られている(特許文献2参照)。しかしながら、この固定化材料は、反応が早すぎで作業時間が確保できないという課題があった。また、放射性ヨウ素の固定化能力が充分に発揮されないものでもあった。
【0006】
放射性ヨウ素の固定化処理において、固定化処理後は固相にヨウ素が濃縮し、水は浄化されることになる。この場合、固液分離が必要になるが、固相が微細な粒子では、ろ過作業を行うことになる。汚染水の処理をもっと簡便に行うために、ハニカム構造のような成形物を汚染水に浸漬し、放射性ヨウ素をその成形物に固定化させた後はそれを引き上げることで、処理作業を簡素化することができる。
また、放射性ヨウ素の固定化能力を持つ水硬性材料を用いて、ポーラスコンクリートのような多孔体を作製することが考えられる。
【0007】
しかしながら、特許文献2の放射性ヨウ素の固定化材料は、水和反応が極めて速く、可使時間が確保できないばかりか、硬化体の強度そのものが弱い特性を持っている。つまり、強度発現性が乏しい。これらの理由により、ポーラスコンクリートを作製することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平07−256091号公報
【特許文献2】特開平08−201585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、前記の課題に鑑み、放射性ヨウ素の固定化能力に富み、特に、海水中に塩化物イオンとともに混在する系でも放射性ヨウ素の固定化に有効であり、粉末で水処理用途に用いることもでき、さらには、放射性ヨウ素の固定化効果を持つポーラスコンクリートも作製できるため、汚染水の処理とその後の固液分離操作が容易であるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、放射性ヨウ素の固定化能力に富み、特に、海水中に塩化物イオンとともに混在する系でも放射性ヨウ素の固定化に有効であり、粉末で水処理用途に用いることもでき、さらには、放射性ヨウ素の固定化効果を持つポーラスコンクリートも作製できるため、汚染水の処理とその後の固液分離操作が容易である放射性ヨウ素の処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(1)セメント70〜95部と、CaO/Alモル比が0.3〜0.7であり、Feを10%以下含むカルシウムアルミネート化合物5〜30部とを含有する放射性ヨウ素の固定化材料、(2)カルシウムアルミネート化合物の粉末度が、ブレーン比表面積値で2,000〜6,000cm/gである(1)の放射性ヨウ素の固定化材料、(3)セメントが、早強ポルトランドセメントである(1)又は(2)の放射性ヨウ素の固定化材料、(4)(1)〜(3)のいずれかの放射性ヨウ素の固定化材料と粗骨材と水とを練り混ぜ、成形固化させる放射性ヨウ素を固定化するポーラスコンクリート、(5)粗骨材が軽量骨材であることを特徴とする、(4)の放射性ヨウ素を固定化するポーラスコンクリート、(6)(4)又は(5)の放射性ヨウ素を固定するポーラスコンクリートを用いてなる放射性ヨウ素の固定化処理方法、である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の放射性ヨウ素の固定化材料を使用することにより、放射性ヨウ素の固定化能力に富み、特に、海水中に塩化物イオンとともに混在する系でも放射性ヨウ素の固定化に有効であり、粉末で水処理用途に用いても、あるいは粗骨材とともに練り混ぜ、ポーラスコンクリートなどの成形物に仕立てても使用可能であるなどの効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明における部や%は、特に規定しない限り質量基準で示す。
【0014】
本発明で使用するカルシウムアルミネート化合物(以下、CA化合物という)とは、カルシアを含む原料、アルミナを含む原料を含む原料などを混合して、キルンでの焼成や電気炉での溶融などの熱処理をして得られる、CaO、Alを主成分とする化合物を総称するものである。
CA化合物の組成は、CaO/Alモル比が0.3〜0.7である。CaO/Alモル比が0.4〜0.6がより好ましい。0.3未満では、放射性ヨウ素の固定化効果が充分に得られない場合があり、特に、海水中において塩化物イオンが共存する系での放射性ヨウ素の固定化能力でその差が顕著である。逆に、0.7を超えると急硬性が現れるようになり、可使時間が確保できない場合がある。その結果の副作用として、やはり放射性ヨウ素の固定化効果が改悪傾向になる。また、ポーラスコンクリートを成形できなくなる。
【0015】
CA化合物の粉末度は、ブレーン比表面積値(以下、ブレーン値という)で2,000〜6,000cm/gが好ましく、3,000〜5,000cm/gがより好ましく、4,000〜5,000cm/gが最も好ましい。CA化合物が2,000cm/gを下回る粗粒では充分な放射性ヨウ素の固定化効果が得られない場合があり、6,000cm/gを超える微粉では急硬性が現れるようになり、可使時間を確保できない場合がある。その結果の副作用として、やはり放射性ヨウ素の固定化効果が改悪傾向になる。また、ポーラスコンクリートの成形が難しくなるため不益である。
【0016】
CA化合物の製造に使用する原料について説明する。
カルシアを含む原料は、特に限定されないが、工業原料として市販されている例えば、生石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH))、石灰石(CaCO)などの使用が挙げられる。
アルミナを含む原料は、特に限定されないが、工業原料として市販されている例えばAlや水酸化アルミニウム、ボーキサイトの使用が挙げられる。特にボーキサイトはAlと共にFeを含んでいるため、融点降下作用が得られ、焼成反応を促進する望ましい面もある。Fe量は、10%以下であることが好ましい。
さらに、例えば、SiOやRO(Rはアルカリ金属)を併用しても、本発明の目的を損なわない限り使用可能である。
【0017】
CA化合物は、カルシアを含む原料、アルミナを含む原料を含む原料などを混合して、キルンでの焼成や電気炉での溶融などの熱処理をして得られる。焼成温度は原料の配合にもよるが1400℃以上が好ましく、1500℃以上がより好ましい。1400℃未満では効率良く反応が進まず未反応のAlが残る可能性がある。
【0018】
本発明で使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱などの各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、又はシリカを混合した各種混合セメント、石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末などを混合したフィラーセメント、並びに、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)などのポルトランドセメントが挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。中でも、早強ポルトランドセメントを選定することが、放射性ヨウ素の固定化能力の面から、また、ポーラスコンクリートを成形する面から好ましい。
【0019】
CA化合物の使用量は特に限定されるものではないが、通常、セメントとCA化合物からなる放射性ヨウ素の固定化材料100部中、5〜30部が好ましく、7〜20部がより好ましい。CA化合物の使用量が少ないと充分な放射性ヨウ素の固定化性能が得られない場合があり、過剰に使用するとやはり放射性ヨウ素の固定化能力が改悪傾向となるばかりか、急硬性が現れるようになり、充分な可使時間が確保できない場合がある。
【0020】
本発明では、セメントとCA化合物を配合して放射性ヨウ素の固定化材料とする。
本発明で云う放射性ヨウ素とは、ウランの核分裂によって生成するヨウ素の放射性同位体を指す。具体的には、ヨウ素129(半減期=1.7×10年)、ヨウ素131(半減期=8.07日)、ヨウ素132(半減期=2.3時間)、ヨウ素133(半減期=20.8時間)、ヨウ素134(半減期=53分)、ヨウ素135(半減期=6.7時間)、ヨウ素136(半減期=86秒)が該当する。これら放射性ヨウ素をはじめヨウ化物イオンは、一般にヨウ素滴定法、比色分析法、Volhard法、イオン電極法、ICP発光分光分析法、ICP質量法などの分析方法によって定量される。
【0021】
放射性ヨウ素の固定化材料を用いる場合の、汚染水と材料の使用割合であるが、汚染物質である放射性ヨウ素の濃度や、その他のイオンの濃度により異なるため、一義的に決定されるものではないが、通常、汚染水1mあたり、1kg〜50kgが好ましく、3kg〜30kgがより好ましい。放射性ヨウ素の固定化材料の使用量が1kg未満であると、充分な放射性ヨウ素の低減効果が得られない場合があり、逆に、50kgを越えて使用しても、さらなる効果の増進が期待できない。そして、処理後の固液分離に労力を要するため有益でない。
【0022】
本発明では、放射性ヨウ素の固定化材料を用いてポーラスコンクリートを作製することができる。そして、得られたポーラスコンクリートは、やはり放射性ヨウ素の固定化性能を発揮する。
【0023】
本発明の放射性ヨウ素を固定化するポーラスコンクリートは、放射性ヨウ素の固定化材料と、粗骨材と、水とを練り混ぜ、成形して得られる。
ポーラスコンクリートは、単位細骨材量を極端に減らした多孔質なコンクリートで、空隙に植物の生育や、微生物の棲息ができ、緑化コンクリートの利用されている。また、空隙が多いことを利用して、透水性舗装や低騒音舗装にも利用されている。しかしながら、ポーラスコンクリートを放射性ヨウ素の固定化に利用した例はない。
【0024】
ポーラスコンクリートの配合は、特に限定されるものではないが、通常、単位結合材料が、300kg/m〜500kg/m程度である。本発明では、ポーラスコンクリートの結合材をそのまま放射性ヨウ素の固定化材料で置き換えることができる。
【0025】
ポーラスコンクリートの単位水量は特に限定されないが、通常、80kg/m〜160kg/m程度である。
【0026】
ポーラスコンクリートの単位粗骨材量は特に限定されるものではないが、通常、単位粗骨材容積で、500リットル/m〜700リットル/m程度である。
【0027】
ポーラスコンクリートの使用する骨材は特に限定されるものではなく、天然に産出するケイ酸質系骨材や石灰石系骨材、再生骨材、軽量骨材などが利用できる。中でも、軽量骨材を使用することが、放射性ヨウ素の固定化能力が高まるために好ましい。
【0028】
ポーラスコンクリートの空隙は連続空隙と独立空隙からなり、その両者を合わせて全空隙率という。ポーラスコンクリートの全空隙率は、一般に10〜30(容積)%と言われており、例えば容積法を用いる場合には次式によって計算される。
(容積%)=1−((W−W)/ρ)/V×100
ここに、A:コンクリートの全空隙率、W:供試体を24時間以上水中で飽和させた後の重量(g)、W:20℃、相対湿度60%の環境下で24時間自然放置後の気中質量(g)、V:供試体の容積(cm)、ρ:水の密度(g/cm)、である。
【0029】
ポーラスコンクリートを放射性ヨウ素の固定化に使う場合、放射性ヨウ素を含む汚染水1mに対して、ポーラスコンクリートの硬化ブロックを50リットル〜300リットル程度、浸漬するとよい。
【0030】
本発明の放射性ヨウ素の固定化材料は、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、あらかじめ一部あるいは全部を混合しておいても差し支えない。
【0031】
本発明では、CA化合物、セメント、及び粗骨材の他に、従来から知られる、ヨウ素の固定化材料、吸着材料のうちの一種又は二種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することが可能である。
【0032】
混合装置としては、既存の如何なる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、及びナウタミキサなどの使用が可能である。
【0033】
以下、実施例、比較例を挙げてさらに詳細に内容を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
「実験例1」
試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを酸化物換算で表1に示すモル比となるように配合し、電気炉で焼成した。CaO/Alモル比0.7のものは1500℃、CaO/Alモル比0.5と0.6のものは1550℃、CaO/Alモル比0.4のものは1600℃、CaO/Alモル比0.2と0.3のものは1650℃でそれぞれ3時間焼成後,徐冷して合成した。すべてブレーン値は4,000cm/gに調整した。
なお、比較のため、純合成した3CaO・Al(CA)、CaO・Al(CA)についても同様に合成した。X線回折を用いて未反応物の有無を評価した。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
「実験例2」
表1に示すCA化合物を、セメントとCA化合物からなる放射性ヨウ素の固定化材料100部中、10部配合して放射性ヨウ素の固定化材料を調製した。この放射性ヨウ素の固定化材料を用いて、ヨウ素の固定化実験を行った。結果を表2に併記する。
【0037】
<使用材料>
CA化合物A:実験No.1-1、CaO/Alモル比0.2、Fe:3%、ブレーン値4,000cm/g
CA化合物B:実験No.1-2、CaO/Alモル比0.3、Fe:3%、ブレーン値4,000cm/g
CA化合物C:実験No.1-3、CaO/Alモル比0.4、Fe:3%、ブレーン値4,000cm/g
CA化合物D:実験No.1-4、CaO/Alモル比0.5、Fe:3%、ブレーン値4,000cm/g
CA化合物E:実験No.1-5、CaO/Alモル比0.6、Fe:3%、ブレーン値4,000cm/g
CA化合物F:実験No.1-6、CaO/Alモル比0.7、Fe:3%、ブレーン値4,000cm/g
CA化合物G:実験No.1-7、CaO/Alモル比0.8、Fe:3%、ブレーン値4,000cm/g
CA化合物H:実験No.1-8、CaO/Alモル比1.0、CAを主成分とする。Fe:3%、ブレーン値4,000cm/g
CA化合物I:実験No.1-9、CaO/Alモル比3.0、CAを主成分とする。Fe:3%、ブレーン値4,000cm/g
セメント-イ:早強ポルトランドセメント、市販品
水:水道水、海水
【0038】
(評価方法)
ヨウ素の固定化性能:試薬1級のヨウ化ナトリウムを用いて、0.1モル/リットルのヨウ化ナトリウム溶液を調製した。このヨウ化ナトリウム溶液1mに対して、放射性ヨウ素の固定化材料が10kgとなるように添加し、撹拌拌した。24時間反応させた後、固液分離し、液相中のヨウ化物イオン濃度をICPにより測定した。
(NaI:モル質量が149.89g/mol、密度3.67、溶解度184g/100ml)
【0039】
【表2】

【0040】
表2より、CaO/Alモル比が0.2〜0.7の範囲にあるCA化合物が、ヨウ素の固定化能力に優れ、特に、海水中で塩化物イオンとともに共存するヨウ化物イオンの固定化に優れる。
【0041】
「実験例3」
CA化合物Dを用いて、セメントとの配合比率を表3に示すように変化したこと以外は実験例2と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0042】
【表3】

【0043】
表3より、放射性ヨウ素の固定化材料中のCA化合物の配合割合が5〜30部の場合に、放射性ヨウ素の固定化能力が顕著であることがわかる。また、殊に、海水中で塩化物イオンとともに共存するヨウ化物イオンの固定化に優れる。
【0044】
「実験例4」
CA化合物Dを使用し、表4に示すようにCA化合物Dのブレーン値を変化したこと以外は実験例2と同様に行った。結果を表4に併記する。
【0045】
【表4】

【0046】
表4より、CA化合物のブレーン値が2,000〜6,000cm/gの場合に、放射性ヨウ素の固定化能力が顕著であることがわかる。また、殊に、海水中で塩化物イオンとともに共存するヨウ化物イオンの固定化に優れる。
【0047】
「実験例5」
セメントの種類を表5に示すように変化したこと以外は実験例2と同様に行った。結果を表5に併記する。
【0048】
【表5】

【0049】
表5より、セメントとして早強セメントを選定すると、放射性ヨウ素の固定化能力がより顕著であることがわかる。また、殊に、海水中で塩化物イオンとともに共存するヨウ化物イオンの固定化に優れる。
【0050】
<使用材料>
セメント-ロ:普通ポルトランドセメント、市販品
セメント-ハ:低熱ポルトランドセメント、市販品
セメント-ニ:中庸熱ポルトランドセメント、市販品
セメント-ホ:エコセメント、市販品
セメント−ヘ:高炉セメントB種、市販品
【0051】
「実験例6」
ポーラスコンクリートを調製してヨウ素の固定化性能を評価した。CA化合物D10部とセメント-イ90部からなる放射性ヨウ素の固定化材料を結合材として用いて、表6に示すような配合のポーラスコンクリートを調製した。この際、粗骨材は、様々なものを使用した。そして、水道水又は海水にヨウ化ナトリウムを0.1モル/リットル濃度(ヨウ化物イオン濃度が127kg/m)となるように添加し、この汚染水1mに対して硬化したポーラスコンクリートのブロックの100リットルをワイヤーで吊るして浸漬した。汚染水のピットには撹拌拌モータを投げ込んだ。24時間後にポーラスコンクリートを引き上げ、汚染水の分析を行った。結果を表6に併記する。
【0052】
<使用材料>
粗骨材(1):砕石、粗骨材の最大寸法20mm、表乾密度2.71g/m
粗骨材(2):石灰石骨材、粗骨材の最大寸法20mm、表乾密度2.71g/m
粗骨材(3):再生骨材、粗骨材の最大寸法20mm、表乾密度2.35g/m
粗骨材(4):軽量骨材、粗骨材の最大寸法20mm、表乾密度1.30g/m
【0053】
(評価方法)
ヨウ素の固定化性能:液相中のヨウ化物イオン濃度をICPにより測定。
空隙率:容積法で測定。
【0054】
【表6】

【0055】
表6より、本発明のポーラスコンクリートを用いると、放射性ヨウ素を固定化し、液相中のヨウ化物イオン濃度を低減でき、処理後は、ポーラスコンクリートを引き上げるだけで簡便に固液分離ができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の放射性ヨウ素の固定化材料を使用することにより、放射性ヨウ素の固定化能力に富み、特に、海水中に塩化物イオンとともに混在する系でも放射性ヨウ素の固定化に有効であり、粉末で水処理用途に用いても、あるいは粗骨材とともに練り混ぜ、ポーラスコンクリートなどの成形物でも使用可能であり、広範囲に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント70〜95質量部と、CaO/Alモル比が0.3〜0.7であり、Feを10質量%以下含むカルシウムアルミネート化合物5〜30質量部とを含有する放射性ヨウ素の固定化材料。
【請求項2】
カルシウムアルミネート化合物の粉末度が、ブレーン比表面積値で2,000〜6,000cm/gである請求項1に記載の放射性ヨウ素の固定化材料。
【請求項3】
セメントが、早強ポルトランドセメントである請求項1又は2記載の放射性ヨウ素の固定化材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射性ヨウ素の固定化材料と粗骨材と水とを練り混ぜ、成形固化させることを特徴とする放射性ヨウ素を固定化するポーラスコンクリート。
【請求項5】
粗骨材が軽量骨材であることを特徴とする、請求項4に記載の放射性ヨウ素を固定化するポーラスコンクリート。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の放射性ヨウ素を固定するポーラスコンクリートを用いてなる放射性ヨウ素の固定化処理方法。

【公開番号】特開2013−24695(P2013−24695A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159026(P2011−159026)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】