説明

放射線撮影システム及びその処理方法

【課題】
撮影された放射線画像の送信の成功を保証できる場合にのみ放射線画像の撮影を許可するようにした技術を提供する。
【解決手段】
放射線撮影システムは、放射線の照射が行なわれる前に、無線通信経路を介して放射線画像の撮影に関わる同期通信を行なう同期通信手段と、前記同期通信が正常に行なわれた場合に前記放射線の照射を行なうと決定し、前記同期通信が正常に行なわれなかった場合に前記放射線の照射を行なわないと決定する決定手段と、前記放射線の照射の後に、前記無線通信経路を介して放射線画像の送信に関わる放射線画像通信を行なう放射線画像通信手段とを具備する。ここで、放射線画像通信時の通信パラメータの設定値は、前記無線通信経路上でのノイズに対する耐性が、前記同期通信時の通信パラメータの設定値と同じ又はそれよりも高く設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影システム及びその処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物に放射線(例えば、X線)を照射し、当該対象物を透過した放射線の強度分布を検出して対象物の放射線画像を撮影する放射線撮影システム(以下、X線撮影システムとして説明する)が知られている。
【0003】
このようなX線撮影システムにおいては、例えば、X線発生装置とX線撮影装置とが同期通信を行なうことにより所望のタイミングで当該X線発生装置から被写体に向けてX線が照射される。そして、X線撮影装置においては、被写体を透過したX線の強度分布であるX線画像をデジタル化し、当該デジタル化したX線画像に対して必要な画像処理を施すことにより最終的なX線画像を生成する。
【0004】
ここで、上述したようなX線撮影システムでは、撮影により得られたX線画像を、画像処理や保存を目的として、画像処理装置(例えば、パーソナルコンピュータ)に転送している。この転送を受けた画像処理装置においては、画像処理済みのX線画像を表示装置(例えば、ディスプレイ)に表示する。
【0005】
近年、省スペース化や設置の容易性等を図るため、X線撮影装置とX線発生装置との間の通信には、UTP(Unshielded Twist Pair)ケーブルを利用した有線LAN(Local Area Network)や、無線LANなどが利用されている(特許文献1)。特に、X線撮影装置との間を無線通信にした場合、X線撮影装置の設置の自由度が格段に向上するため、撮影の自由度向上や撮影時の被検者への身体的負担を減らすことができる利点がある。
【0006】
その一方で、無線通信を利用した場合、X線画像撮影システムの周囲に、他の無線LAN機器が存在する場合、その通信状況によっては、使用する無線周波数帯域が重なってしまう場合がある。また、無線LANとは異なる無線通信規格の一つであるBluetooth(登録商標)においても、無線LANと一部の無線周波数帯域を共用しているため、この場合にも、無線周波数帯域が重なってしまう場合がある。その他、電子レンジなどの一般的な電子機器が放射する不要な電波が、無線通信が利用する無線周波数帯域に干渉する場合もある。
【0007】
このような無線通信に影響を与える電波は、無線周波数帯域に定常的に存在したり、パルス的であったり、また、周期的に発生したりする場合もあり、その形態は様々であるが、無線通信にとって外乱となる存在である(以下、これらをノイズと呼ぶ)。そのため、このような電波の発生は、通信を妨げる要因となる。
【0008】
例えば、X線撮影装置から画像処理装置にX線画像を送信する際にこのようなノイズが発生した場合、データの誤りや消失の発生頻度が通常時よりも高くなり、再送処理が高頻度で発生してしまう。そのため、画像転送に想定以上の時間がかかったり、場合によっては通信そのものが途切れ、画像転送が失敗に終わる可能性がある。これは、被検者にX線を照射して生成されたX線画像が消失することになり、被検者に不要な被曝を生じさせることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−041866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような問題を解決するための一つの手法として、X線撮影装置とX線発生装置との間でX線の照射前に行なわれる同期通信を利用する方法が考えられる。具体的には、無線周波数帯域に発生したノイズによって同期通信が失敗する場合、画像転送においても同様に通信に失敗する可能性があるとして、同期通信が失敗した場合には、X線照射を許可しないようにする。言い換えれば、同期通信が成功した場合には、画像転送も同様に成功するものとして、X線照射を許可する。
【0011】
しかし、一般的に、同期通信や画像転送は、それぞれの目的に対して最適な条件で行なわれる。同期通信は、確実な通信が求められており、また、その情報量はごくわずかである。そのため、同期通信には、例えば、通信プロトコルとしてTCP(Transmission Control Protocol)が使用され、そのパケット長は数十バイトとなる。
【0012】
これに対し、画像転送は、大量のデータを短時間で送信することが要求される。そのため、画像転送には、例えば、通信プロトコルとしてUDP(User Datagram Protocol)が使用され、そのパケット長はオーバーヘッドを少なくするためにできるだけ大きく設定される(例えば、数千バイト)。
【0013】
このように同じ無線通信であるが、その用途に応じて、通信パラメータの設定が異なってくるため、ノイズに対する耐性もそれぞれの通信で異なってくる。上述した例では、画像転送よりも、同期通信の方がノイズに対する耐性が高いので、このような状態では、同期通信の成功・失敗をもって、画像転送も同じように成功・失敗するか否かを判定することはできない。
【0014】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、撮影された放射線画像の送信の成功を保証できる場合にのみ放射線画像の撮影を許可するようにした技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の一態様による放射線撮影システムは、放射線の照射が行なわれる前に、無線通信経路を介して放射線画像の撮影に関わる同期通信を行なう同期通信手段と、前記同期通信が正常に行なわれた場合に前記放射線の照射を行なうと決定し、前記同期通信が正常に行なわれなかった場合に前記放射線の照射を行なわないと決定する決定手段と、前記放射線の照射の後に、前記無線通信経路を介して放射線画像の送信に関わる放射線画像通信を行なう放射線画像通信手段とを具備し、前記放射線画像通信時の通信パラメータの設定値は、前記無線通信経路上でのノイズに対する耐性が、前記同期通信時の通信パラメータの設定値と同じ又はそれよりも高く設定される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、撮影された放射線画像の送信の成功を保証できる場合にのみ放射線画像の撮影を許可する。そのため、放射線画像の送信に要する時間の増大や当該画像の消失を防ぐことができるので、被検者に不要な被曝を生じさせないで済む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係わるX線撮影システム10の構成の一例を示す図。
【図2】同期通信及び画像データ通信に関わる通信パラメータの一例を示す図。
【図3】同期通信及び画像データ通信のパケット構成の一例を示す図。
【図4】X線撮影システム10の処理の流れの一例を示すシーケンスチャート。
【図5】X線撮影システム10の処理の流れの一例を示すシーケンスチャート。
【図6】同期通信及び画像データ通信に関わる通信パラメータの一例を示す図。
【図7】X線撮影システム10において実現される機能的な構成の一例を示す図。
【図8】X線撮影システム10の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【図9】実施形態2に係わるX線撮影システム10の処理の概要を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態においては、放射線としてX線を適用した場合を例に挙げて説明するが、放射線は、X線に限られず、電磁波や、α線、β線、γ線などであっても良い。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態に係わる放射線撮影システム(本実施形態においては、X線撮影システム)の構成の一例を示す図である。
【0020】
X線撮影システム10は、対象物(被写体)にX線(放射線)を照射し、当該対象物を透過したX線の強度分布を検出して対象物のX線画像を撮影する。X線撮影システム10には、X線撮影装置11と、X線管球12と、X線発生装置13と、ネットワークIF(Interface)装置14と、ネットワーク機器15と、画像処理装置16と、アクセスポイント17とが具備される。
【0021】
ここで、X線撮影装置11、X線発生装置13及び画像処理装置16は、少なくともその一部が無線通信経路を介して接続されている。X線撮影システム10における各装置間における接続状態について具体的に説明すると、X線発生装置13とネットワークIF装置14との間は専用の有線ケーブルで接続されている。また、ネットワーク機器15、ネットワークIF装置14、画像処理装置16及びアクセスポイント17の間は、例えば、UTPケーブルで接続されている。アクセスポイント17とX線撮影装置11とは、無線通信(本実施形態においては、無線LAN)により通信可能に接続されている。勿論、この無線通信は、Bluetooth(登録商標)等、他の通信方式で実現されても良く、その場合は適切な装置構成に変更する。
【0022】
X線撮影装置(放射線撮影装置)11は、フラットパネル型のX線検出器(X線検出部)を備えている。このX線検出器は、X線照射前に準備動作を行なった後、蓄積モードに移行して被写体を透過したX線の強度分布に依存する電荷をセンサ内に蓄積し、その後に蓄積された電荷を読み出してX線画像データを生成するように構成されている。準備動作は、暗電流によってセンサ内部に蓄積された電荷を予め排出するために行なわれるもので、画質向上とダイナミックレンジの確保のために必要となる動作である。また、X線撮影装置11には、無線通信を行なうための無線通信部が設けられており、当該無線通信部を介して同期通信や画像データ通信を行なう。
【0023】
X線管球12は、X線を発生する。X線発生装置(放射線発生装置)13は、X線管球12を制御し、被写体(すなわち、被検者)に向けてX線を照射させる。X線発生装置13には、照射スイッチが設けられており。オペレータは、所望のタイミングで照射スイッチを押下する。これにより、X線画像の撮影が開始される。
【0024】
ネットワークIF装置14は、X線発生装置13及びネットワーク機器15との間の通信を制御する。ネットワーク機器15は、ネットワークIF装置14と、画像処理装置16と、アクセスポイント17との間の通信を制御する。アクセスポイント17は、ネットワーク機器15と、X線撮影装置11との間の通信を制御する。上述した通り、アクセスポイント17は、ネットワーク機器15との間の通信は、UTPケーブルを用いて通信し、X線撮影装置11との間の通信は、無線LANを用いた無線通信を行なう。
【0025】
画像処理装置16は、アクセスポイント17及びネットワーク機器15を介してX線撮影装置11により生成されたX線画像データを受信し、当該画像データに対して画像処理等を行なった後、それを保持する。画像処理装置16においては、例えば、画像処理済みのX線画像を表示装置(例えば、ディスプレイ)に表示する。
【0026】
ここで、X線撮影システム10においては、X線の撮影に際して、同期通信及び画像データ通信(画像データの送信)が行なわれる。
【0027】
同期通信とは、X線が被写体に向けて照射される前に、X線発生装置13とX線撮影装置11との間で行なわれるX線画像の撮影に関わる通信であり、この通信では、例えば、照射許可要求信号や照射許可信号等の送受信が行なわれる。
【0028】
照射許可要求信号は、X線発生装置13においてX線画像の撮影が指示されたときに、X線発生装置13から各装置を経由してX線撮影装置11に向けて送られる信号である。この信号の受信により、X線撮影装置11においては、X線検出器の準備動作や電荷の蓄積動作を開始する。また、照射許可信号は、X線検出器の準備動作等が終了すると、X線撮影装置11から各装置を経由してX線発生装置13に向けて送られる信号である。
【0029】
これに対して、画像データ通信とは、X線撮影装置11と画像処理装置16との間で行なわれるX線画像の送信に関わる通信であり、この通信では、X線を照射した後、X線撮影装置11から画像処理装置16に向けてX線画像データが送られる。
【0030】
以上が、本実施形態に係わるX線撮影システム10の構成の一例についての説明であるが、上記構成は、あくまで一例であり、適宜変更しても良い。例えば、ネットワークIF装置14やネットワーク機器15は、X線発生装置13の一部の機能として実現されても良いし、また、それ以外の装置の一部の機能として実現されても良い。
【0031】
また、上述した、X線発生装置13、ネットワークIF装置14、ネットワーク機器15、画像処理装置16等には、コンピュータが内蔵されている。コンピュータには、CPU等の主制御手段、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶手段が具備される。また、コンピュータにはその他、ディスプレイ、ボタン又はタッチパネル等の入出力手段、等も具備される。これら各構成手段は、バス等により接続され、主制御手段が記憶手段に記憶されたプログラムを実行することで制御される。
【0032】
ここで、図2を用いて、照射許可要求信号及び照射許可信号の通信に関わる通信パラメータ(同期通信用の通信パラメータと呼ぶ)と、X線画像データの送信に関わる通信パラメータ(画像データ通信用の通信パラメータと呼ぶ)との関係の一例について説明する。
【0033】
ここでは、同期通信と画像データの送信とに関わる通信パラメータとして、通信プロトコル、パケット長、出力信号強度、転送レートが示されている。このうち、通信プロトコルTx及びTdは、同期通信及び画像データ通信において同じプロトコルが使用される(Tx=Td)。例えば、OSI参照モデルのトランスポート層の通信プロトコルとして、TCPやUDPなどがあるが、同期通信時の通信プロトコルTx及び画像データ通信時の通信プロトコルTdには、同じプロトコル(例えば、TCP同士、又はUDP同士)を設定すれば良い。
【0034】
その他の通信パラメータ、例えば、パケット長、出力信号強度、転送レートなどについての同期通信用の通信パラメータは、X線撮影装置11とアクセスポイント17との間の無線通信経路上で生じ得るノイズを考慮して設定する。より具体的には、同期通信時には、無線通信経路上で生じ得るノイズに対する耐性が、画像データ通信時の耐性と同じ又はそれよりも低くなるように通信パラメータを設定する。
【0035】
例えば、パケット長の場合、同期通信時のパケット長Px[Byte]と画像データ通信時のパケット長Pd[Byte]との関係は、「Px≧Pd」となる。つまり、同期通信時のパケット長Pxを、画像データ通信時のパケット長Pdと同じ又はそれよりも長くなるように設定する。従って、このパケット長に関する通信パラメータ設定によれば、同期通信時には、無線通信経路上で生じ得るノイズに対する耐性が、画像データ通信時の耐性と同じ又はそれよりも低くなる。
【0036】
また、例えば、出力信号強度の場合、同期通信時の出力信号強度Sx[dBm]と画像データ通信時の出力信号強度Sd[dBm]との関係は、「Sx≦Sd」となる。つまり、画像データ通信時の出力信号強度Sdを、同期通信時の出力信号強度Sxと同じ又はそれよりも強くなるように設定する。従って、この出力信号強度に関する通信パラメータ設定によれば、同期通信時には、無線通信経路上で生じ得るノイズに対する耐性が、画像データ通信時の耐性と同じ又はそれよりも低くなる。
【0037】
また、例えば、無線転送レートの場合、同期通信時の転送レートRx[Mbps]と画像データ通信時の転送レートRd[Mbps]との関係は、「Rx≧Rd」となる。つまり、同期通信時の転送レートRxを、画像データ通信時の転送レートRdと同じ又はそれよりも高くなるように設定する。従って、この無線転送レートに関する通信パラメータ設定によれば、同期通信時には、無線通信経路上で生じ得るノイズに対する耐性が、画像データ通信時の耐性と同じ又はそれよりも低くなる。
【0038】
ここでは、通信パラメータの一例として、通信プロトコル、パケット長、出力信号強度、転送レートを例に挙げて説明したが、これに限られず、無線通信経路を用いた通信で使用される通信パラメータであれば何でも良い。また、上述したような関係(ノイズ耐性が高い/低い等の関係)を満たす通信パラメータは、必ずしも一対一である必要はなく、一対多等の組み合わせであっても良い。
【0039】
また、図2に示すような通信パラメータの設定値は、同期通信時のパケット内にユーザデータとして含めることでX線発生装置13からX線撮影装置11に通知すれば良い。勿論、この通知は、これ以外の方法で行なわれても良く、例えば、それらの情報を伝える通信を別途行なうようにしても良いし、また、アクセスポイント17が出力するビーコン信号に含めて通知する等の形態であっても良い。
【0040】
ここで、照射許可要求信号及び照射許可信号は、本来の通信に必要な情報量を考えれば、通信コマンド、ID、各種ヘッダ及び誤り検出符号などを含んで構成される数十バイトのパケットで事足りる。しかし、本実施形態の構成においては、画像データ通信のパケット長と同程度の数千バイトまでパケット長を大きくする。
【0041】
これは、図3に示すように、例えば、パケット構成要素以外を0(例えば、1であっても良い)でパディングしたり(符号41)、IDを必要なサイズだけ時間情報の繰り返しで構成したり(符号42)することで実現できる。その他、どのような方法でも良く、例えば、乱数などの値で必要なサイズを埋める(符号43)ようにしても良い。
【0042】
次に、図4を用いて、図1に示すX線撮影システム10の処理の流れの一例について説明する。ここでは、X線画像を撮影する際の処理の流れについて説明する。
【0043】
なお、同期通信用の通信パラメータは、ここでは一例として、通信プロトコルをUDPとし、パケット長をPx[Byte]とし、出力信号強度をSx[dBm]とし、転送レートをRx[Mbps]とした場合について説明する。Px、Sx及びRxは、適用対象となるシステム構成やシステムに要求される仕様により異なるが、無線通信を行なうに当たり適切な値を選択すれば良い。
【0044】
オペレータが、X線発生装置13に設けられた照射スイッチを押下すると、この処理は開始する。照射スイッチが押下されると、X線管球12からのX線の照射に先立って、X線発生装置13(ネットワークIF装置14)は、照射許可要求信号を生成し、X線撮影装置11に向けて送信する(S101)。このとき、X線発生装置13(ネットワークIF装置14)は、タイマ計時も開始する(S102)。ここで、照射許可要求信号には、ユニークな要求信号IDや、同期通信用の通信パラメータの設定値が含まれる。要求信号IDは、例えば、X線発生装置13(ネットワークIF装置14)に内蔵された時計(不図示)の現在時刻を用いたり、その都度乱数を発生させて生成すれば良い。照射許可要求信号は、ネットワーク機器15及びアクセスポイント17を経由した後、無線通信を介してX線撮影装置11に到達する。
【0045】
照射許可要求信号を受信したX線撮影装置11は、X線検出器の準備動作を行なう(S103)。また、X線撮影装置11は、照射許可要求信号に含まれた同期通信用の通信パラメータの設定値を取得し、当該設定値に基づいて画像データ通信用の通信パラメータの設定値を設定する。
【0046】
X線検出器の準備動作が完了すると、X線撮影装置11は、X線発生装置13に向けて照射許可信号を送信するとともに(S104)、電荷の蓄積動作を開始する(S105)。照射許可信号には、上述した要求信号IDが含まれる。照射許可信号は、アクセスポイント17及びネットワーク機器15を経由した後、ネットワークIF装置14を介してX線発生装置13へ送られる。
【0047】
照射許可信号を受信したX線発生装置13(ネットワークIF装置14)は、S102の処理で計時を開始したタイマに基づいて、所定のタイムアウト時間内に照射許可信号を受信できたか否かを判定する。また、当該受信した照射許可信号に含まれるIDが、S101の処理で送信した要求信号IDと一致しているか否かの判定も行なう。ここで、両判定結果の条件を満たせば、X線発生装置13は、X線の照射を行なう(S106)。
【0048】
ここで、各種無線通信は、ノイズの影響を受ける可能性がある。しかし、この場合、同期通信が、X線発生装置13で計時されたタイマのタイムアウト時間内に成功しているので、X線の照射が実行される。つまり、画像データ通信よりもノイズ耐性の低い同期通信が成功しているため、その後に行なわれる画像データ通信も、そのデータ通信に成功するといった前提の下、X線の照射が行なわれる。
【0049】
なお、タイムアウト時間内に照射許可信号を受信できなかった場合には、X線発生装置13は、X線の照射は行なわない。その後に照射許可信号を受信したとしても、同様に照射は開始されない。また、受信した照射許可信号に含まれる要求信号IDが一致していない場合にも、照射許可信号として有効ではないため、X線発生装置13は、X線の照射を行なわない。
【0050】
このX線の照射において、X線発生装置13は、X線の照射を開始した後、照射スイッチの押下状態がリリースされるか、又は予め定められた最大照射時間を越えるかするまで、X線の照射を継続して行なう。なお、X線撮影装置11は、タイムアウト時間と最大照射時間とを予め把握しており、「タイムアウト時間+最大照射時間−準備動作時間」を越えるまでは、少なくとも電荷の蓄積状態を持続する。
【0051】
ここで、X線撮影装置11は、この時間を越えたことを検出すると、蓄積電荷を読み出し、それにより、X線画像データを生成する(S107)。そして、当該生成したX線画像データを画像処理装置16へ送信する(S108)。このとき、画像データ通信用の通信パラメータにおいては、通信プロトコルは同期通信時と同じUDPが設定され、パケット長はPd=Px−p[Byte]が設定され、出力信号強度はSd=Sx+s[dBm]が設定され、転送レートはRd=Rx−r[Mbps]が設定されている。なお、p、s、rは、0又は正の値である。また、Pd、Sd、Rdが無線通信を行なうに当たり適切な値になるように、p、s、rの値を適宜設定すれば良い。
【0052】
このような設定により、画像データ通信においては、同期通信時と同じ通信プロトコルが使用される。また、同期通信時のパケット長以下のパケット長、同期通信の出力信号強度以上の出力信号強度、同期通信の転送レート以下の転送レートで通信が行なわれる。上述した通り、同期通信がタイムアウト時間内に正常に行なわれていることから、画像データ通信が正常に行なわれることも保証される。
【0053】
その後、画像処理装置16は、当該送られてきたX線画像データを受信した後(S109)、所定の画像処理を行なう(S110)。その後、X線画像データは、例えば、表示装置等に送られ、表示装置上に表示される。
【0054】
なお、無線通信経路上のノイズの影響によって、照射許可要求信号がX線撮影装置11に届かず消失した場合や届いても正常に受信できない場合には、X線は照射されない。また、同様に、照射許可信号がX線発生装置13に届かず消失した場合や届いても正常に受信できない場合にも、X線は照射されない。更に、タイムアウトした場合にもX線は照射されない。
【0055】
その場合、オペレータは、照射スイッチを一度リリースし、再度押し下げる必要がある。その際、オペレータに同期通信が失敗した旨を伝える表示や、再度、照射スイッチの押し下げを促す表示を出力するようにしても良い。
【0056】
また、X線撮影装置11は、照射許可要求信号を受信して準備動作を開始した場合、X線の照射が行なわれたかどうかに関わらず、続けて蓄積動作、読み出し動作、画像データの送信を行なう。これらの動作は、被検者の安全を損なうものではなく、装置に対する悪影響もない。また、これらの動作が終了する前に、新しい照射許可要求信号が受信された場合には、それらの動作を中止し、新しい照射許可要求信号に対応した準備動作から開始するようにしても良い。
【0057】
次に、図5を用いて、図1に示すX線撮影システム10の処理の流れの一例について説明する。ここでは、無線通信経路上のノイズの影響により同期通信が失敗する場合の動作について説明する。
【0058】
上述した図4同様に、この処理が開始されると、X線発生装置13(ネットワークIF装置14)は、照射許可要求信号1を生成し、X線撮影装置11に向けて送信するとともに(S201)、タイマ計時を開始する(S202)。照射許可要求信号を受信したX線撮影装置11は、X線検出器の準備動作を行なうとともに(S203)、照射許可信号1をX線発生装置13に向けて送信する(S204)。
【0059】
なお、照射許可要求信号1及び照射許可信号1(以下、同期通信1と呼ぶ)の通信プロトコルはUDPとし、パケット長はPx1[Byte]とし、出力信号強度はSx1[dBm]とし、転送レートをRx1[Mbps]とする。
【0060】
ここで、同期通信1は、ノイズの影響により通信の遅延が生じ、それにより、タイムアウトとなったとする。この場合、オペレータは、照射スイッチを一度リリースしてから再度押下する。
【0061】
照射スイッチの再押下に伴って、X線発生装置13は、照射許可要求信号1とは異なるIDを含んだ照射許可要求信号2を生成し、それをX線撮影装置11に向けて送信する(S206)。
【0062】
このとき、同期通信1時の通信パラメータと、照射許可要求信号2及び照射許可信号2(以下、同期通信2と呼ぶ)時の通信パラメータとは、図4等で説明した同期通信用の通信パラメータと、画像データ通信用の通信パラメータと同様の関係となる。つまり、同期通信2の通信プロトコルは、同期通信1と同じくUDP、パケット長はPx2=Px1−p1[Byte]、出力信号強度はSx2=Sx1+s1[dBm]、転送レートはRx2=Rx1−r1[Mbps]となる。ここで、p1、s1、r1は0又は正の値であり、また、Px2、Sx2、Rx2が無線通信を行なうに当たり適切な値になるようにp1、s1、r1の値を選択する。つまり、同期通信2は、同期通信1のときと比べて、ノイズに対する耐性が同じ又はそれよりも高くなるように設定される。
【0063】
このような通信パラメータ設定の下、同期通信2がタイムアウト時間内に正常に行なわれれば(S207〜S209)、X線発生装置13においてX線の照射が開始される(S211)。X線撮影装置11においては、蓄積動作(S210)、読み出し動作が行なわれ(S212)、それにより得られたX線画像データが画像処理装置16へ送信される(S213〜S215)。
【0064】
このとき、同期通信2時の通信パラメータと画像データ通信時の通信パラメータとは、図4等で説明した同期通信用の通信パラメータと、画像データ通信用の通信パラメータと同様の関係となる。つまり、画像データ通信時の通信プロトコルは、同期通信2と同じくUDP、パケット長はPd=Px2−p2[Byte]、出力信号強度はSd=Sx2+s2[dBm]、転送レートはRd=Rx2−r2[Mbps]となる。ここで、p2、s2、r2は、0又は正の値であり、また、Pd、Sd、Rdが無線通信を行なうに当たり適切な値になるように、p2、s2、r2の値を選択する。なお、p1とp2、s1とs2、r1とr2の大小関係は問わない。このように画像データ通信は、同期通信2のときと比べて、ノイズに対する耐性が同じ又はそれよりも高くなるように設定される。
【0065】
このような画像データ通信時の通信パラメータ設定を行なえば、同期通信2の成功から、画像データの送信も正常に行なわれることが保証される。
【0066】
なお、図5では、2回目の照射許可要求で成功する例を示したが、当然、2回に限られない。図6に示すように、所定の回数、若しくは成功するまで上述した関係(ノイズ耐性が高い/低い等の関係)を満たすように、pn、sn、rn(nは自然数)を用いて通信パラメータPxn、Sxn、Rxn及びPd、Sd、Rdを更新して繰り返し処理を行なえば良い。
【0067】
実際には、画像転送(画像データ通信)の仕様から許容することのできない通信パラメータ設定や、システム構成上不可能な設定が存在することが一般的である。例えば、画像転送の時間として許容できる最大時間はシステムの要求仕様で定められるので、それを満たせないような転送レートは設定することができない。また、設定可能な最大出力強度信号は夫々の機器の仕様で決まってしまう。これらの条件を踏まえたうえで、画像転送で設定することのできる最小のパケット長Pdmin、最大の出力信号強度Sdmax、最小の転送レートRdminが決まり、そこからpn、sn、rnの各値や繰り返し回数を決定することもできる。
【0068】
ここで、図7を用いて、図1に示すX線撮影システム10において実現される機能的な構成の一例について説明する。ここでは、X線発生装置13、X線撮影装置11、画像処理装置16において実現される機能的な構成について説明する。
【0069】
X線発生装置13には、その機能的な構成として、同期通信パラメータ決定部21と、要求信号ID生成部22と、同期通信部23と、タイマ計時部26と、照射許可決定部27と、X線照射制御部28とが具備される。
【0070】
同期通信パラメータ決定部21は、同期通信時の通信パラメータ(の設定値)を決定する。要求信号ID生成部22は、照射許可要求信号の送信に際して当該信号に含める要求信号IDを生成する。このIDは、ユニークな値で生成される。
【0071】
同期通信部23は、同期通信を行なう機能を果たし、要求信号送信部24と、許可信号受信部25とを具備して構成される。要求信号送信部24は、オペレータによる照射スイッチの押下に伴って、照射許可要求信号をX線撮影装置11に向けて送信する。上述した通り、照射許可要求信号には、要求信号IDや同期通信用の通信パラメータが含まれる。許可信号受信部25は、照射許可要求信号の送信に応答して、X線撮影装置11から送られてくる照射許可信号を受信する。
【0072】
タイマ計時部26は、照射許可要求信号を送信した時点から当該要求信号に伴った応答信号(照射許可信号)を受信するまでの時間を計時する。すなわち、同期通信が開始された時点から当該同期通信が終了するまでの時間を計時する。
【0073】
照射許可決定部27は、照射許可信号が有効であるか否かに基づいてX線の照射を許可するか否かを決定する。X線照射制御部28は、照射許可決定部27の決定結果に基づいて、X線管球12からのX線の照射を制御する。
【0074】
X線撮影装置11には、その機能的な構成として、同期通信部31と、画像データ通信パラメータ決定部34と、X線検出部35と、X線画像データ生成部36と、X線画像データ送信部37とが具備される。
【0075】
同期通信部31は、同期通信を行なう機能を果たし、要求信号受信部32と、許可信号送信部33とを具備して構成される。要求信号受信部32は、X線発生装置13から送られてくる照射許可要求信号を受信する。許可信号送信部33は、照射許可要求信号に含まれた同期通信用の通信パラメータに従って、X線発生装置13に向けて照射許可信号を送信する。
【0076】
画像データ通信パラメータ決定部34は、照射許可要求信号に含まれた同期通信用の通信パラメータの設定値に基づいて、画像データ通信時(放射線画像通信時)の通信パラメータ(の設定値)を決定する。
【0077】
X線検出部35は、対象物(被写体)を透過したX線の強度分布を検出する。上述した通り、X線検出部35は、例えば、フラットパネル型のX線検出器等で実現される。
【0078】
X線画像データ生成部36は、X線検出部35の検出結果に基づいて、X線画像データを生成する。X線画像データ送信部(放射線画像通信部)37は、画像データ通信パラメータ決定部34により設定された画像データ通信用の通信パラメータに従って、画像処理装置16に向けてX線画像データを送信する。
【0079】
以上が、X線発生装置13、X線撮影装置11、画像処理装置16において実現される機能的な構成の一例についての説明である。なお、図7に示す各構成は、必ずしも図示した通りに設けられる必要はなく、X線撮影システム10におけるいずれかの装置に実現されていれば良い。例えば、X線発生装置13における一部の機能が、ネットワークIF装置14上に実現されても良い。すなわち、要求信号IDの生成等がネットワークIF装置14で行なわれても良い。
【0080】
次に、図8を用いて、図1に示すX線撮影システム10の処理の流れの一例を示すフローチャートについて説明する。
【0081】
この処理は、オペレータが、X線発生装置13に設けられた照射スイッチを押下すると開始する(S301)。この処理が開始すると、X線発生装置13は、要求信号ID生成部22において、要求信号IDを生成するとともに(S302)、同期通信パラメータ決定部21において、同期通信用の通信パラメータを決定する(S303)。そして、要求信号送信部24において、要求信号ID及び同期通信用の通信パラメータを含む照射許可要求信号をX線撮影装置11に向けて送信する。また、このとき、X線発生装置13は、タイマ計時部26において、タイマ計時も開始する(S304)。
【0082】
ここで、X線撮影装置11は、要求信号受信部32において、照射許可要求信号を受信すると(S305でYES)、X線検出部35(X線検出器)の準備動作を行なう(S306)。また、X線撮影装置11は、画像データ通信パラメータ決定部34において、照射許可要求信号に含まれた同期通信用の通信パラメータに基づいて、画像データ通信用の通信パラメータを決定する(S307)。そして、許可信号送信部33において、照射許可要求信号に含まれた要求信号IDを含めた照射許可信号をX線発生装置13に向けて送信する。また、このとき、X線撮影装置11は、X線検出部35において、電荷の蓄積動作も開始する(S308)。なお、この照射許可要求信号の送信(すなわち、同期通信)は、S305の処理で受信した照射許可要求信号に含まれた同期通信用の通信パラメータに従って行なわれる。
【0083】
一方、X線発生装置13は、許可信号受信部25において、照射許可信号を受信すると(S309でYES)、照射許可決定部27において、X線の照射を許可するか否かを決定する。より具体的には、S304で計時を開始したタイマのタイムアウト時間内に当該照射許可信号を受信したか否かを判定するとともに、当該照射許可信号に含まれた要求信号IDがS303の処理で照射許可要求信号に含めた要求信号IDと一致するか否かを判定する。
【0084】
この判定の結果、照射許可信号をタイムアウト時間内に受信できていない場合(S310でNO)、又は要求信号IDが一致しない場合には(S311でNO)、X線発生装置13は、X線を照射せず、再度、S301の処理に戻る。なお、S301の処理から順に上記処理を再度行なう場合、S302の処理においては、前回と異なるユニークな要求信号IDを生成する。また、S303の処理においては、ノイズに対する耐性が、前回の通信パラメータと同じ又はそれよりも高くなるように、同期通信用の通信パラメータの設定値を再設定する。
【0085】
一方、照射許可信号をタイムアウト時間内に受信できており(S310でYES)、且つ要求信号IDが一致する場合には(S311でYES)、X線発生装置13は、X線の照射を行なう(S312)。
【0086】
ここで、X線撮影装置11は、X線検出部35において、被写体を透過したX線を検出し、X線画像データ生成部36において、当該検出結果に基づいてX線画像データを生成する。そして、X線画像データ送信部37において、当該生成したX線画像データを画像処理装置16に向けて送信する(S314)。このX線画像データの送信は、S307の処理で設定された画像データ通信用の通信パラメータに従って行なわれる。
【0087】
以上説明したように実施形態1によれば、撮影されたX線画像データの送信の成功を保証できる場合にのみX線撮影を許可する。そのため、X線画像データの送信に要する時間の増大や当該画像データの消失を防ぐことができるので、被検者に不要な被曝を生じさせないで済む。
【0088】
(実施形態2)
次に、実施形態2について説明する。実施形態2においては、連続して複数のX線撮影を行なう場合の通信パラメータの設定処理について説明する。ここで、複数の撮影とは、1人の被検者に対して撮影部位や撮影条件を変えて撮影を行う場合や、また、被検者を変えて同様の撮影を行なう場合を指す。
【0089】
無線通信経路上のノイズによる影響がある程度長い時間続くことを想定した場合、撮影の度に最初の通信パラメータ設定に戻して、同期通信を行なうと、オペレータは、撮影の度に複数回照射スイッチを押下する必要性が生じる可能性が高い。
【0090】
そこで、通信パラメータ設定を複数の撮影間においても適用する。この場合、X線発生装置13(ネットワークIF装置14)において、通信パラメータの設定値を所定期間の間、保持しておく。その一例として、図9を用いて、所定期間を10分とした場合について説明する。なお、ここでは、説明を分かり易くするため、通信パラメータとして、パケット長のみを例に挙げて説明するが、その他の通信パラメータについても同様である。
【0091】
ここで、時刻00:00を基準として、被検者Aに対し、撮影部位a及び撮影条件αで撮影を開始する。同期通信は、最初の通信では、Px1[Byte]で行なわれるが、タイムアウト時間内に成功しなかったため、オペレータの指示により、Px2[Byte]で2回目の通信が行なわれ、当該通信に成功したとする。その後の画像データ通信では、Pd2[Byte]で通信が行なわれる。上述した通り、Px1、Px2、Pd2は、「Px1≧Px2≧Pd2」の関係を有する。
【0092】
次に、撮影条件をβに変えて2枚目の撮影が行なわれる(1分後)。その際、同期通信においては、前回の撮影で成功しているPx2[Byte]で通信が行なわれる。ここでは、Px2[Byte]で失敗したとし、Px3[Byte]で再度通信が行なわれる。そして、この通信に成功したので、画像データ通信はPd3[Byte]で行なわれる。
【0093】
更に、撮影部位をb、撮影条件をαに変えて3枚目の撮影が行なわれる(2分後)。同期通信は、Px3[Byte]で行なわれ、それに成功したため、画像データ通信は2枚目の画像データと同様に、Pd3[Byte]で行なわれる。
【0094】
被検者Aの撮影が終了すると、被検者Bに対して、撮影部位、撮影条件を設定して撮影が開始される(5分後)。上記同様に、同期通信は、前回の撮影(被検者Aの3枚目)で成功しているPx3[Byte]で通信が行なわれる。その後の同期通信及び画像データ通信の通信パラメータの設定等も上記同様に行なわれる。
【0095】
被検者Bの撮影が終了すると、被検者Cに対して上記同様の撮影が開始される(9分後)。ここでも、同期通信は、前回の撮影(被検者Bの2枚目)で成功しているPx4[Byte]で通信が行なわれる。被検者Cの2枚目(10分後)も、前回の撮影で成功している通信パラメータ設定を用いる。
【0096】
ここで、被検者Cに対する3枚目の撮影では、基準時刻から所定期間(この場合、10分)を越えてしまっている。この場合、それまでに設定した通信パラメータの設定値をリセットする(すなわち、初期値に戻す)。そのため、所定期間が経過した後に行なわれる同期通信においては、Px1[Byte]が用いられる。その後の通信パラメータ設定は上記同様である。
【0097】
なお、実施形態2においては、所定期間を10分として説明したが、勿論、このような時間に限定されず、所定期間は適宜変更して設定すれば良い。また、通信パラメータの設定値を保持する期間(所定期間)を一つの撮影条件内、一つの撮影部位内、又は被検者単位としても良いし、それを所定期間と組み合わせて実施しても良い。更に、通信パラメータの設定値を保持する期間(所定期間)の基準とする時刻を、最後に通信パラメータ設定の更新があった時刻として上述した処理を行なうようにしても良い。
【0098】
以上説明したように実施形態2によれば、所定期間を設け、その間、通信パラメータの設定値を保持しておくため、連続して複数のX線撮影を行なう際に通信パラメータの設定値が想定外の値になることを抑制できる。
【0099】
以上が本発明の代表的な実施形態の一例であるが、本発明は、上記及び図面に示す実施形態に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【0100】
また、例えば、上述した実施形態においては、同期通信時と画像データ通信時とにおける関係(ノイズ耐性が高い/低い等の関係)を満たすために、通信パラメータの値を減算や加算することにより、通信パラメータ設定値を変更していたが、これに限られない。例えば、設定値を乗算や除算したり、又はオン/オフする等によって通信パラメータ設定値を変更しても良い。
【0101】
また、例えば、上述した実施形態においては、アクセスポイントを介して無線通信を行なうインフラストラクチャモードで無線通信を行なう場合を例に挙げて説明したが、これに限られない。例えば、アクセスポイントを介さず機器同士で無線通信を行なうアドホックモードで無線通信を行なう構成に対しても上記同様に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の照射が行なわれる前に、無線通信経路を介して放射線画像の撮影に関わる同期通信を行なう同期通信手段と、
前記同期通信が正常に行なわれた場合に前記放射線の照射を行なうと決定し、前記同期通信が正常に行なわれなかった場合に前記放射線の照射を行なわないと決定する決定手段と、
前記放射線の照射の後に、前記無線通信経路を介して放射線画像の送信に関わる放射線画像通信を行なう放射線画像通信手段と
を具備し、
前記放射線画像通信時の通信パラメータの設定値は、
前記無線通信経路上でのノイズに対する耐性が、前記同期通信時の通信パラメータの設定値と同じ又はそれよりも高く設定される
ことを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項2】
前記決定手段により前記放射線の照射を行なわないと決定された場合、前記無線通信経路上でのノイズに対する耐性が前回に設定した同期通信時の通信パラメータの設定値と同じ又はそれよりも高くなるように、同期通信時の通信パラメータの設定値を再設定するパラメータ決定手段
を更に具備することを特徴とする請求項1記載の放射線撮影システム。
【請求項3】
前記パラメータ決定手段は、
所定期間の間、前記決定手段により前記放射線の照射を行なわないと決定される度に前記再設定を繰り返し行ない、該所定期間が経過した場合、前記同期通信時の通信パラメータの設定値を初期値に戻した後、再度、前記再設定を行なう
ことを特徴とする請求項2記載の放射線撮影システム。
【請求項4】
前記同期通信が開始された時点から該同期通信が終了するまでの時間を計時するタイマ計時手段
を更に具備し、
前記決定手段は、
前記タイマ計時手段により計時されたタイムアウト時間内に前記同期通信が正常に行なわれた場合に、前記放射線の照射を行なうと決定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
【請求項5】
前記通信パラメータは、
パケット長、出力信号強度、転送レートの少なくともいずれかを含む
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
【請求項6】
放射線撮影システムの処理方法であって、
同期通信手段が、放射線の照射が行なわれる前に、無線通信経路を介して放射線画像の撮影に関わる同期通信を行なう工程と、
決定手段が、前記同期通信が正常に行なわれた場合に前記放射線の照射を行なうと決定し、前記同期通信が正常に行なわれなかった場合に前記放射線の照射を行なわないと決定する工程と、
放射線画像通信手段が、前記放射線の照射の後に、前記無線通信経路を介して放射線画像の送信に関わる放射線画像通信を行なう工程と
を含み、
前記放射線画像通信時の通信パラメータの設定値は、
前記無線通信経路上でのノイズに対する耐性が、前記同期通信時の通信パラメータの設定値と同じ又はそれよりも高く設定される
ことを特徴とする処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−85840(P2013−85840A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231099(P2011−231099)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】