説明

放射線検出器および放射線検査装置

【課題】放射線の検出効率を維持し、半導体検出部の視野全体に亘って良好な空間分解能を有すると共に、製造コストの増加を抑制した放射線検出器、およびこれを用いた放射線検査装置を提供する。
【解決手段】配線基板21上に奥行き方向(Y軸方向)に沿って第1および第2半導体検出素子アレイ22a,22bを配置する。第1および第2半導体検出素子アレイ22a,22bの各々は6個の半導体検出素子231〜236をその配列方向(X軸方向)に一列に配列してなり、その配列方向の両端部にガード部材28a,28bを設ける。第1および第2半導体検出素子アレイ22a,22bのそれぞれの半導体検出素子231〜23は、基準線Xaからk番目(kは1〜6のいずれか)の半導体検出素子23kが配列方向に半導体検出素子231〜23の間隔PTの1/2だけ互いに変位して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出器および放射線検査装置に関し、特に、被検体内にある放射性同位元素から放出されたガンマ線を検出する放射線検出器および放射線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体(被検体)の内部の情報を得るために断層撮影装置が広く用いられるようになってきた。断層撮影装置としては、X線コンピュータ断層撮影(X線CT)装置、磁気共鳴映像装置、SPECT(single photon emission CT)装置、ポジトロン断層撮影(PET)装置が挙げられる。X線CT装置は、生体のある断面に多方向から幅の狭いX線ビームを曝射し、透過したX線を検出してその断面内でのX線の吸収の度合いの空間分布をコンピュータで計算し画像化している。このようにして、生体内部の形態的な異常、例えば出血巣を把握できる。
【0003】
また、PET装置は被検体内の機能情報の精密情報が得られるため、近年、さかんに開発が進められている。PET装置を用いた診断方法は、まず、ポジトロン核種で標識された検査用薬剤を、注射や吸入等により被検体の内部に導入する。被検体内に導入された検査用薬剤は、検査用薬剤に応じた機能を有する特定の部位に蓄積される。例えば、糖類の検査用薬剤を用いた場合、ガン細胞等の新陳代謝の盛んな部位に選択的に蓄積される。このとき、検査用薬剤のポジトロン核種から陽電子が放出され、放出された陽電子と周囲の電子とが結合して消滅する際に2つのガンマ線(いわゆる消滅ガンマ線)が互いに約180度の方向に放出される。そこで、この2つのガンマ線を被検体の周りに配置した放射線検出器によりコインシデンス検出し、コンピュータ等で画像を再生成することにより被検体における放射性同位元素の分布画像データを取得する。このようにPET装置では被検体の体内の機能情報が得られるため、様々な難病の病理解明が可能である。
【0004】
図1はPET装置の放射線検出器の概略構成図である。図1を参照するに、PET装置100は、ガンマ線検出器101が被検体Sを360度囲むように配置されている。ガンマ線検出器101は、半導体検出素子(不図示)が配列された半導体検出素子アレイ(次の図2に示す。)を備えた検出素子部102と、各々の半導体検出素子に入射したガンマ線を検出するための検出回路103からなる。さらに、図示を省略するが検出回路103からのガンマ線が入射したことを示す出力信号およびガンマ線が入射した半導体検出素子の位置情報に基づいて、ガンマ線の発生位置を同定する。そして、ランダムな方向に放出された多数のガンマ線を検出することで、被検体S内の検査用薬剤分布の画像を再生成する。
【0005】
このように、X線やガンマ線等の放射線を検出して病理解析を行うX線CT装置やPET装置では、単位時間当たりに検出される放射線量あるいは放射線数、いわゆる検出効率を向上ために多数の半導体検出素子を備えている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−242253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、半導体検出部102の検出素子アレイは、被検体Sの体軸(図1に示すZ軸に平行である。)に対して垂直な面内に配置される。図2に、PET装置の一部の半導体検出部102を示している。図2(A)では、検出素子アレイ102の各々は、5個の半導体検出素子104から構成され、被検体Sに面して半導体検出素子104が配列されている。半導体検出素子104はその配列方向の長さを幅W、被検体Sと半導体検出素子アレイ102とを結ぶ方向に沿った長さを奥行きD1とする。
【0007】
図2(A)を参照するに、半導体検出素子104は幅Wが小さい程、ガンマ線の入射位置の分解能が一般的に向上する。そのため、ガンマ線が発生した位置、すなわち被検体S内の検査用薬剤の位置がより精度良く同定でき、いわゆる、空間分解能が向上する。例えば、図2(A)の左側に示すように、2つの半導体検出素子アレイ1021,1024の各々の半導体検出素子104a、104bにガンマ線が正面から入射して検出された場合、すなわち、半導体検出素子104a、104bの視野範囲の中央からガンマ線が入射した場合、ガンマ線が発生した位置は、X軸方向の範囲がX1となる。範囲X1は幅Wが小さいほど小さくなる。
【0008】
しかし、図2(A)の右側に示すように、ガンマ線が2つの半導体検出素子アレイ1022,1023の各々の半導体検出素子104c、104dに斜めに入射して検出された場合、すなわち半導体検出素子104c、104dの視野周辺部から入射した場合は、ガンマ線が発生した位置の範囲は、そのX軸方向がX2の範囲内となる。範囲X2は幅Wを狭くしてもそれほど低減されず、上記範囲X1よりも極めて大きい。すなわち、半導体検出素子104の視野周辺部からガンマ線が入射した場合の空間分解能は幅Wを狭くしても十分に向上することは困難である。
【0009】
半導体検出素子104の視野周辺部における空間分解能の低下を解決するため、半導体検出素子104の奥行きD1を短小化することで解決できる。例えば、図2(B)の半導体検出素子アレイ105aのように、半導体検出素子106の奥行きD2を、図2(A)の半導体検出素子104の奥行きD1の、例えば1/2にする。そうすると、図2(B)の右側に示すように、ガンマ線が2つの半導体検出素子アレイ105aの各々の半導体検出素子106c、106dに斜めに入射して検出された場合、すなわち半導体検出素子106c、106dの視野周辺部から入射した場合は、ガンマ線が発生した位置のX軸方向の範囲はX3となり、図2(A)の範囲X2よりも小さくなる。したがって、視野周辺部において空間分解能は向上する。なお、この場合でも視野中央部における空間分解能は図2(B)の左側に示すように範囲X1であり、図2(A)の左側の場合と同等である。
【0010】
ところで、入射したガンマ線が電子正孔対を生成する事象は確率的である。したがって、半導体検出素子105は半導体検出素子104よりも奥行きが短いため、半導体検出素子105内で電子正孔対を生成する頻度が減少し、半導体検出素子104よりもガンマ線の検出効率が低下してしまう。そこで、図2(B)に示すように、半導体検出素子アレイ105aおよび105bを奥行き方向に2列に配列することで検出効率を維持する。
【0011】
しかし、半導体検出素子アレイ105aおよび105bを有する半導体検出部102Aは、検出効率を維持すると共に空間分解能が視野全体に亘って良好なものの、半導体検出素子105の数が図2(A)の場合と比較して2倍になる。そうすると、半導体検出素子105の各々に接続される検出回路やその下流の回路数も2倍となるので、材料コストに加え組立コストが増加して製造コストが大幅に増加するという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、放射線の検出効率を維持し、半導体検出部の視野全体に亘って良好な空間分解能有すると共に、製造コストの増加を抑制した放射線検出器、およびこれを用いた放射線検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一観点によれば、放射線の入射により電子正孔対を生成する複数の半導体検出素子を有する半導体検出部を備える放射線検出器であって、前記半導体検出部は、基板上に、前記複数の半導体検出素子が第1の方向に所定の間隔で配列された半導体検出素子アレイをn個備え、前記n個の半導体検出素子アレイは、第1の方向に対して直交する第2の方向に第1列から第n列に配列され、前記第1列から第n列の半導体検出素子アレイは、各々、第1の方向の基準位置から前記所定の間隔の0、1/n、…、(n−1)/nのいずれかだけ変位して配置されてなることを特徴とする放射線検出器が提供される。但し、nは2以上の整数である。
【0014】
本発明によれば、半導体検出部は、第1の方向に所定の間隔で半導体検出素子が配列され、第1の方向に対して直交する第2の方向にn列の半導体検出素子アレイが配列されている。さらに、第1列から第n列の半導体検出素子アレイは、各々、第1の方向の基準位置から前記所定の間隔の0/n、1/n、…、(n−1)/nのいずれかだけ変位して配置されている。このように、第1列〜第n列の半導体検出素子アレイの第2の方向の長さの総和を、従来の1列の半導体検出素子アレイの第2の方向の長さと同等とすることで、検出効率を維持すると共に、視野周辺部の空間分解能を向上できる。さらに第1列から第n列の半導体検出素子が互いに所定の間隔の1/nだけ変位して配置されているので、特に視野中央の空間分解能を、第1列から第n列の半導体検出素子を互いに変位させない場合よりも向上できる。したがって、半導体検出素子の所定の間隔を従来の同等の空間分解能を有する半導体検出素子アレイよりも広くすることができる。これにより、半導体検出素子の幅を増加して、半導体素子数を削減できる。したがって、放射線の検出効率を維持し、半導体検出部の視野全体に亘って良好な空間分解能有すると共に、製造コストの増加を抑制できる。
【0015】
前記半導体検出素子アレイは、第1列から第n列まで順次、前記所定の間隔の1/nだけ変位して配置されてなる構成としてもよい。また、前記半導体検出素子アレイは各々m個の半導体検出素子からなり、前記第2の方向に沿って隣接する2つの半導体検出素子アレイは、それらの前記基準位置からk番目の各々の半導体検出素子が互いに前記所定の間隔の1/nだけ変位して配置されてなる構成としてもよい。但し、mは2以上の整数、kは、1〜mのいずれかの整数である。
【0016】
前記第1列〜第n列の半導体検出素子アレイは、その第1の方向の一端部が前記基準位置から同等の距離となるように、該一端部側に保護部材をさらに備える構成としてもよい。さらに、前記第1列〜第n列の半導体検出素子アレイは、その第1の方向の前記一端部とは反対側の他端部に、当該半導体検出素子アレイの第1の方向の長さが同等となるように、他の保護部材をさらに備えるこうせいとしてもよい。これにより、第1列〜第n列の半導体検出素子アレイの位置決めが容易となると共に、上記の半導体検出素子同士の位置関係が容易に実現できる。
【0017】
前記半導体検出素子アレイは、第2の方向に沿って互いに離隔してなる構成としてもよい。これにより、半導体検出部の組立工程において半導体検出素子アレイを保持する保持治具が入る空間を確保でき、作業性が良好となる。
【0018】
本発明の他の観点によれば、放射性同位元素を含む被検体から発生する放射線を検出する請求項1〜8のうちいずれか一項記載の放射線検出器と、前記放射線検出器から取得した放射線の入射時刻および入射位置を含む検出情報に基づいて前記放射性同位元素の被検体内における分布情報を取得する情報処理手段と、を備える放射線検査装置が提供される。
【0019】
本発明によれば、放射線検出器が検出効率を維持し、視野範囲全体に亘る空間分解能が良好であると共に、製造コストの増加が抑制されているので、検査時間の増加を伴わず、従来よりも精度の高い検査を行えると共に、製造コストの増加を抑制した放射線検査装置を提供できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、放射線の検出効率を維持し、半導体検出部の視野全体に亘って良好な空間分解能有すると共に、製造コストの増加を抑制した放射線検出器、およびこれを用いた放射線検査装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下図面を参照しつつ実施の形態を説明する。
【0022】
(第1の実施の形態)
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るPET装置の構成を示すブロック図である。
【0023】
図3を参照するに、PET装置10は、被検体Sの周囲に配置され、ガンマ線を検出する放射線検出器11と、放射線検出器11からの検出データを処理し、得られた被検体Sの体内のポジトロン核種RIの位置の画像データを再生成する情報処理部12と、画像データを表示等する表示部13と、被検体Sや放射線検出器11の移動等の制御を行う制御部14と、情報処理部12や制御部14に指示を送る端末や画像データを出力するプリンタ等からなる入出力部15等から構成される。
【0024】
放射線検出器11は半導体検出部20と検出回路30からなる。半導体検出部20は、ガンマ線γa,γbの入射面が被検体Sに面するように配置されている。なお、予め被検体Sにはポジトロン核種RIで標識化された検査用薬剤が導入されている。
【0025】
ポジトロン核種RIからの陽電子の消滅の際に、同時に発生する2つのガンマ線γa、γbを検出する。2つのガンマ線γa、γbは、互いに略180度をなして放出されるので、被検体Sを挟んで対向する放射線検出器11の半導体検出部20に入射する。ガンマ線γa、γbが入射した2つの半導体検出部20の各々は、ガンマ線γa、γbの入射により生じる電気信号(検出信号)を検出回路30に送出する。
【0026】
検出回路30は、検出信号から、ガンマ線γa、γbが検出素子に入射した時刻(入射時刻)と入射位置を決定し、これらの情報(検出データ)を情報処理部12に送出する。検出回路30は、例えば、アナログ信号である検出信号から入射時刻を算出するためのアナログASICと、入射時刻および入射位置をデジタルデータとして情報処理部に送出するデジタルASIC等から構成される。
【0027】
情報処理部12では、検出データに基づいてコインシデンス検出および画像再生成アルゴリズムによる画像データの再生成を行う。コインシデンス検出は、入射時刻が略一致する2つの検出データがある場合、それらの検出データを有効と判定し、コインシデンス情報とする。また、コインシデンス検出は、ガンマ線入射時刻が一致しない検出データを無効と判定し破棄する。そして、コインシデンス情報と、コインシデンス情報に含まれる検出素子番号等と、これに対応する検出素子の位置情報等から所定の画像再生成アルゴリズム(例えば、期待値最大化(Expectation Maximization)法)に基づいて画像データを再生成する。表示部13は、入出力部15の要求に応じて再生成された画像データを表示する。なお、コインシデンス検出および画像再生成アルゴリズムは上述した事項に限定されず、公知の事項を用いることができる。
【0028】
以上の構成および動作により、PET装置10は、被検体Sの体内に選択的に位置するポジトロン核種RIからのガンマ線を検出し、ポジトロン核種RIの分布状態の画像データを再生成する。なお、本実施の形態に係るPET装置10は、放射線検出器11に主な特徴がある。以下、放射線検出器11を詳しく説明する。
【0029】
PET装置10の放射線検出器111〜118は、被検体Sの周囲に360度に亘って配置される。各々の放射線検出器111〜118には、被検体S側に半導体検出部20が設けられている。ここで、被検体Sの体軸方向をZ軸方向(Zおよび−Z方向)とする。放射線検出器11は、被検体Sに対して相対的にZ軸方向に移動可能としてもよい。なお、図3において8個の放射線検出器111〜118が示されているがこれらの数は一例過ぎず、放射線検出器の数111〜118は適宜選択される。
【0030】
図4は、半導体検出部の構成を示す斜視図であり、ガンマ線の略入射側から半導体検出部を見た図である。図5は、半導体検出部の模式的平面図である。図6は、半導体検出素子の動作を説明するための図である。
【0031】
図4〜図6を参照するに、半導体検出部20は、配線基板21と、配線基板21上に配置された2つの半導体検出素子アレイ22a,22bと、半導体検出部20の出力を検出回路(図3に示す検出回路30)に送出するためのコネクタ29等からなる。半導体検出素子アレイ22a,22bは、各々、略平板状の半導体結晶体24のZ軸方向に垂直な2つの面に、第1電極25および第2電極26が設けられてなる。半導体検出素子アレイ22a,22bは、各々、第2電極26側の面にY軸方向に沿って形成された溝部24bによって半導体結晶体24がX軸方向に互いに区切られてなる半導体検出素子231〜236と、半導体検出素子231〜236の配列方向の両側(X軸方向外側)に設けられたガード部材28a,28b等からなる。半導体結晶体24とガード部材28a,28bとは同一材料からなり一体化されている。なお、図4および図5では、隣接する半導体検出素子231〜236間に、破線あるいは実線で区切り位置を示しているが、区切り位置は溝部のX軸方向の中央を通り、かつY軸方向に沿って延びている。半導体検出素子231〜236の間隔は、隣接する区切り位置間の距離に相当する。
【0032】
なお、図4では、半導体検出素子231〜236が配列されている方向を配列方向(X軸方向)、2つの半導体検出素子アレイ22a,22bが配列される方向を奥行き方向(Y軸方向)、配線基板21と半導体検出素子アレイ22a,22bとが積層される方向を積層方向(Z軸方向)と称する。また、ここでは、半導体検出素子アレイ22a,22bの各々の半導体検出素子231〜236の数を6個としているが、2個以上であればその数に特に制限はない。
【0033】
各々の半導体検出素子231〜236は、それぞれ、半導体結晶体24と、半導体結晶体24の上面に形成された第1電極部25と下面に形成された第2電極部26からなる。
【0034】
半導体結晶体24は、その材料としては、例えば、エネルギーが511keVのガンマ線に有感なテルル化カドミウム(CdTe)、Cd1-xZnxTe(CZT)、臭化タリウム(TlBr)、シリコンなどが挙げられる。また、これらの材料には導電性等を制御するためのドーパントが含まれていてもよい。シリコンはCdTeよりも機械的強度が高いので加工中に結晶欠陥が生じ難い点で好ましい。半導体結晶体24には、通常、その導電性を制御するためにドーパントが含まれている。例えば、半導体結晶体24がCdTeの場合はp型ドーパントが導入されている。
【0035】
また、半導体結晶体24は、半導体検出素子231〜236のいずれのものも、幅、奥行き、および幅がそれぞれ同等に設定されている。半導体結晶体24は、例えば、幅(X軸方向)が1.2mm、奥行き(Y軸方向)が5mm、厚さが約1mmの寸法を有する。なお、半導体結晶体24は、半導体の結晶成長法であるブリッジマン法や、移動加熱法を用いて半導体結晶を形成し、所定の結晶方位に切出される。
【0036】
第1電極25は、半導体結晶体24の上面を略覆う導電膜である。第1電極25には負のバイアス電圧Vbが印加され、カソードとなっている。半導体結晶体24がCdTeからなる場合は第1電極25には例えばPtが用いられる。バイアス電圧Vbは、直流電圧で例えば−60V〜−1000Vに設定される。なお、第1電極25は、6つの半導体結晶体24の上面全体に亘って連続して形成されている。但し、第1電極25は、ガード部材28a,28bの上面を覆っているが、これは必須ではない。なお、バイアス電圧は、配線基板21の外部から配線パターン36およびワイヤ配線35を介して供給される。
【0037】
第2電極26は、半導体結晶体24の溝部24bと溝部24bとの間の下面を略覆う導電膜からなる。第2電極26はアノードとして機能する。なお、第2電極26側の半導体結晶体24中にはIn(インジウム)が注入されている。半導体結晶体24がCdTeからなる場合は、第2電極26に例えばAuが用いられる。第2電極26は半導体検出素子231〜236のそれぞれに設けられており、互いに隣接する第2電極26同士は電気的に絶縁されている。第2電極26は、導電性接着層27およびパッド電極32を介して配線基板21に設けられた配線パターン(不図示)を介してコネクタ29と電気的に接続される。
【0038】
なお、第2電極25は、ガード部材28a,28bの下面にも形成されており、導電性接着層27およびパッド電極32を介して接地されている。このようにすることで、ガード部材28a,28bに入射したガンマ線により生じた電子正孔対を接地電位に流すことで、検出信号に雑音として混入することを回避できる。なお。このガード部材28a,28bの下面の構造は必須ではなく、ガード部材を半導体結晶体以外の材料を用いた場合は設けなくともよい。
【0039】
導電性接着層27は、Au、Ag、Cu、およびこれらの合金から選択される金属粉やカーボンフィラーと、樹脂からなる導電性接着剤からなり、例えば、導電性ペーストや異方性接着剤を用いることができる。
【0040】
図6に示すように、半導体検出素子23は、半導体結晶体24にガンマ線γが入射すると、ガンマ線のエネルギーに応じた数の電子正孔対が生成される。半導体結晶体24には、第2電極26から第1電極25の方向に電界が印加されているので正孔は第1電極25に引きつけられ、電子は第2電極26に引きつけられる。これにより検出信号が生じ検出回路に送出される。なお、ガンマ線γが半導体結晶体24に入射しても電子正孔対の生成は確率的であり、半導体結晶体24中で電子正孔対の生成が行われず、突き抜けてしまう場合もある。
【0041】
図4および図5に戻り、ガード部材28a,28bは、半導体検出素子アレイ22a,22bの配列方向の両端部に設けられ、半導体検出素子231および236の外側面を保護する。ガード部材28a,28bの材料は第1電極25と第2電極26とを電気的に導通させない材料であれば特に限定されないが、製造工程における加熱によって熱膨張係数差により生じる応力による悪影響を回避できる点で、半導体結晶体24と同一材料からなることが好ましい。さらに、ガード部材28a,28bは、半導体結晶体24と連続した同一結晶板から形成されてなることがとりわけ好ましい。これにより、ガード部材28a,28bを半導体結晶体24に接着する必要がなく、ガード部材28a,28bの形成工程を簡略化できる。但し、ガード部材28aと半導体検出素子231との間、およびガード部材28bと半導体検出素子236との間には、溝部24cを形成することが好ましい。これによりガード部材28a,28bに入射したガンマ線によって生じた電子正孔対が隣接する半導体検出素子231,236の第2電極26に流れ込むことを回避できる。なお、溝部24cは、溝部24bと同等の形状に形成すればよい。また、ガード部材28a,28bの幅は、後ほど詳述するが半導体検出素子231〜236の間隔に基づく所定の幅に設定される。
【0042】
2つの半導体検出素子アレイ22a,22bは、いずれも上述した構造を有しているが、図5に示すように配線基板21上の配置が異なっている。以下、ガンマ線γが入射する側に配置された半導体検出素子アレイを第1半導体検出素子アレイ22a、奥側に配置された半導体検出素子アレイを第2半導体検出素子アレイ22bと呼ぶ。但し両者の区別が不要な場合は単に半導体検出素子アレイ22a,22bと呼ぶ。
【0043】
第1半導体検出素子アレイ22aおよび第2半導体検出素子アレイ22bは、互いの半導体検出素子の位置関係に特徴がある。第1半導体検出素子アレイ22aおよび第2半導体検出素子アレイ22bのいずれも配列方向(X軸方向)にそれぞれ所定の間隔PTで配置されている。さらに、第1半導体検出素子アレイ22aの半導体検出素子231の紙面左側面231aは、基準線Xa−Xaから間隔PTだけ離隔した位置に配置されている。他方、第2半導体検出素子アレイ22aの半導体検出素子231の紙面左側面231bは、基準線Xa−Xaから間隔PT/2だけ離隔した位置に配置されている。このようにして、第1半導体検出素子アレイ22aの半導体検出素子231〜236の各々と、第2半導体検出素子アレイ22bの半導体検出素子231〜236の各々とは、互いに配列方向にPT/2だけ変位して配置される。
【0044】
また、第1半導体検出素子アレイ22aの紙面左端のガード部材28aは間隔PTと同等の幅に設定され、紙面右端のガード部材28bは間隔PTの1/2に設定される。他方、第2半導体検出素子アレイ22bの紙面左端のガード部材28bは間隔PTの1/2に設定され、紙面右端のガード部材28aは間隔PTに設定される。このようにガード部材28a,28bを設けることにより、半導体検出素子アレイ22aおよび22bの幅(配列方向の長さ)を互いに同等とする。そして、半導体検出素子アレイ22aおよび22bはその紙面左端が基準線Xa−Xaに一致するように配置される。このようにすることで、半導体検出部20の組立工程において、2つの半導体検出素子アレイ22aおよび22bを配置する際に、それぞれの半導体検出素子231〜236を上述した位置関係になるようにする位置決めが飛躍的に容易になる。なお、このようにガード部材28a、28bは設ける方が好ましいが、本発明に必須のものではない。
【0045】
なお、上記では、半導体検出素子アレイ22a、22bの紙面左端の端部で位置決めを行ったが、紙面右端の基準線Xb−Xbで位置決めを同様に行ってもよい。
【0046】
このように、第1半導体検出素子アレイ22aおよび第2半導体検出素子アレイ22bは、半導体検出素子231〜236の間隔PTの1/2だけ配列方向にずらして、かつ奥行き方向に配列されることにより、半導体検出部20は、その視野中央(すなわち、半導体検出部20の略正面から入射するガンマ線)の空間分解能が、半導体検出素子アレイを一つだけ設けた場合の視野中央の空間分解能よりも向上する。その向上の程度は、半導体検出部20の視野中央の空間分解能は、半導体検出素子の幅を1/2に設定したときの視野中央の空間分解能に略同等となる。
【0047】
さらに、第1半導体検出素子アレイ22aおよび第2半導体検出素子アレイ22bはそれぞれ奥行き方向(Y軸方向)に配列され、各々の半導体検出素子アレイ22a、22bは、半導体検出素子アレイを一個だけ設けてその半導体検出素子の奥行きを半導体検出素子アレイ22aおよび22bの奥行きの和と同等に設定した場合よりも短小化されている。これにより、先の図2(B)において説明したように、半導体検出部20の視野周辺部での空間分解能を向上できる。
【0048】
さらに、半導体検出部20の検出効率は、半導体検出素子アレイを一個だけ設けてその半導体検出素子の奥行きを半導体検出素子アレイ22aおよび22bの奥行きの和と同等に設定した場合と同様となるので、検出効率を維持できる。これらの点については後述するシミュレーションによって示すが、以下、その効果を簡単に説明する。
【0049】
図7は、半導体検出部の概略正面透視図である。なお、図7中、第1電極、第2電極、および導電性接着層の図示を省略している。
【0050】
図7を参照するに、半導体検出部20をその正面(ガンマ線の入射側)から透視すると、第1半導体検出素子アレイ22aの半導体検出素子231〜236と第2半導体検出素子アレイ22bの半導体検出素子231〜236とが互いに重なり、あたかも間隔PTの1/2の半導体検出素子が一列に配列して形成されているように見える。ガンマ線は、第1半導体検出素子アレイ22aで電子正孔対を生成するものと、第1半導体検出素子アレイ22aを透過して第2半導体検出素子アレイ22bで電子正孔対を生成するものとが確率的に存在する。そのため、ガンマ線にとって、半導体検出素子アレイ22a、22bは、図7の透視図のように、1/2の半導体検出素子が一列に配列して形成されているのと略同等となる。このことから、半導体検出部20は、その視野中央の空間分解能が、半導体検出素子の間隔PTの1/2に設定したときの空間分解能に近づくことが十分推察される。さらにこのことは、半導体検出部20の視野周辺部の空間分解能の向上にも寄与すると推察される。
【0051】
第1の実施の形態によれば、半導体検出部20は以下のような半導体検出部(「比較例の半導体検出部」と称する。)と略同等の検出効率と空間分解能を有することになる。すなわち、比較例の半導体検出部は、間隔PTの1/2の間隔の半導体検出素子を用いて、第1半導体検出素子アレイ22aと第2半導体検出素子アレイ22bの位置関係を変位せずに配置した半導体検出部である。この比較例の半導体検出部は、半導体検出素子の間隔がPT/2となっているので、半導体検出素子の数は24となり、第1の実施の形態の半導体検出部20の2倍となる。したがって、第1の実施の形態の半導体検出部20は同等の性能を有する比較例の半導体検出部よりも半導体検出素子数を削減できる。その結果、半導体検出素子に接続される検出回路やそれよりも下流の回路の数を削減できるので、空間分解能の向上に伴う材料コストおよび組立コスト等の製造コストの増加を抑制できる。さらに、第1の実施の形態の半導体検出部20は、上記比較例の半導体検出素子の間隔よりも広く、すなわち、半導体検出素子の幅が広いので、半導体検出素子の製造、例えば、ウェハからの切り出し工程や研磨工程が容易になる。このことも製造コストの低減に寄与する。また、半導体検出素子アレイの製造も容易になる。
【0052】
なお、先の図5に示すように、第1半導体検出素子アレイ22aおよび第2半導体検出素子アレイ22bは互いに距離DEだけ奥行き方向(Y軸方向)に離隔して配置されている。このように設定することで、組立工程において第1半導体検出素子アレイ22aを配線基板21に配置した後、第2半導体検出素子アレイ22bを配置する際に、それを保持する保持治具が距離DEで示す空間を利用できるので、第2半導体検出素子アレイ22bを配置し易くなる。これは先に第2半導体検出素子アレイ22bを配置してその後に第1半導体検出素子アレイ22aを配置する場合でも同様の効果がある。
【0053】
次に半導体検出部の組立工程を図8および、適宜、先の図5を参照しつつ説明する。
【0054】
図8は、第1および第2半導体検出素子アレイの製造工程の一部を示す平面図である。図8を参照するに、第1および第2半導体検出素子アレイの半導体結晶板として、半導体検出素子アレイの最終的な奥行きの2倍あるいはそれ以上の長さの材料を用いる(不図示)。
【0055】
最初に、半導体結晶体24およびガード部材28a,28bが形成される半導体結晶板の一方の面に、図4に示すように、第1電極25を全面に形成し、他方の面の全面に第2電極26を形成する。第1電極25および第2電極26の形成は、真空蒸着法あるいはスパッタ法を用いる。
【0056】
次いで、第1電極および第2電極が形成された半導体結晶板の第2電極側に所定の間隔で溝部24b、24cを形成する。これにより、半導体結晶体24およびガード部材28a,28bが形成される。
【0057】
次いで、所定の奥行きの位置(A−A線)で図8の構造体を切断する。このようにして得られた一方の半導体検出素子アレイを図5に示す第1半導体検出素子アレイ22a、他方を第2半導体検出素子アレイ22bとする。
【0058】
次いで、半導体検出素子アレイ22a、22bの各々を2次元あるいは3次元計測器付きの組立ロボット等により、図5に示す基準位置Xa−Xaに半導体検出素子アレイ22a、22bの端部を位置決めする。次いで、配線基板21に配置して固着する。
【0059】
第2半導体検出素子アレイ22bは、図8に示す構造体を単に左右を反転させて配置するだけでよく、第1半導体検出素子アレイ22aと第2半導体検出素子アレイ22bを別々に製造する必要がないため、簡便でかつ製造コストを低減できる。さらに第1半導体検出素子アレイ22aと第2半導体検出素子アレイ22bとは互いに切断するまでは同じ工程を経ているので、略同等の品質の半導体検出素子アレイとすることができる。ここで、半導体検出素子アレイ22a、22bのそれぞれの第1電極と配線基板21との接着は、例えば銀ペーストを用いて電気的に接続すると共に固着する。
【0060】
なお、第1半導体素子アレイ22aと第2半導体素子アレイと22bは奥行き方向に互いに離隔して配置することが好ましい。組立ロボットの第1および第2半導体素子アレイの保持治具が入り込むスペースが確保されるので、組立工程が容易となる。次いで、第2電極と配線基板21とをワイヤボンディング等で接続する。以上により、半導体検出部20が形成される。
【0061】
この製造方法では、半導体検出素子アレイ22a、22bを配線基板21に位置決めする場合、半導体検出素子アレイ22a、22bの端部の位置決めを行うだけで、互いの半導体検出素子の間隔PTを容易に1/2ピッチだけずらして配置できる。また、半導体検出素子アレイ22a、22bのそれぞれの配列方向の長さが同等なので、組立ロボットの半導体検出素子アレイ22a、22bを保持する保持治具が一つで済み、この点でも製造コストを低減できる。なお、半導体検出部20の組立工程は上記の方法に限定されず公知の方法を用いてもよい。
【0062】
(第2の実施の形態)
次に本発明の第2の実施の形態に係るPET装置を説明する。第2の実施の形態に係るPET装置は、第1の実施の形態に係るPET装置の変形例であり、図4および図5で示した半導体検出部20の半導体検出素子アレイの数をn個に拡張した例である。第2の実施の形態の半導体検出部は、半導体検出素子アレイの数および配列が図4および図5で示した半導体検出部と異なる以外は同様である。
【0063】
図9は、本発明の第2の実施の形態に係るPET装置を構成する半導体検出部の概略平面図である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号(添え字が異なるものも含む)を付し、説明を省略する。
【0064】
図9を参照するに、半導体検出部40は、配線基板21と、配線基板21上に配置されたn個の半導体検出素子アレイ221〜22nと、半導体検出部40の出力を検出回路(不図示)に送出するためのコネクタ29等からなる。ここでnは3以上の整数のいずれかから選択される。半導体検出素子アレイ221〜22nは、5個の四角柱状の半導体検出素子231〜235と、半導体検出素子231〜235の配列方向の両側に設けられたガード部材281〜28等からなる。
【0065】
半導体検出素子アレイ221〜22nは、奥行き方向(Y軸方向)に紙面手前側から奥に第1列〜第n列まで配置されている。各々のn個の半導体検出素子アレイ221〜22nは、下記のガード部材を設けることで基準線Xa−Xaに紙面左端を一致させて配列されている。ガード部材281、282、283、…、28n-1、28nは、配列方向の長さが、それぞれ半導体素子の間隔PTの、n/n、(n−1)/n、(n−2)/n、…、2/n、1/nに設定されている。したがって、基準線Xa−Xaの代わりに配列方向の他の基準線Xa’−Xa’を第1列の半導体検出素子アレイ221の半導体検出素子231の左端に設定すると、第1列、第2列、…、第n−1列、第n列の半導体検出素子アレイ221の半導体検出素子231の左端の位置は、基準線Xa’−Xa’から間隔PTの0/n、1/n、…、(n−1)/nに設定されている。このように、第1列〜第n列の半導体検出素子アレイ221〜22の半導体検出素子231の左端が、順次PT/nだけ左側に変位して配置されている。
【0066】
このように、半導体検出素子アレイ221〜22を構成、配置することで、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。すなわち、第2の実施の形態の半導体検出部40は、半導体検出素子アレイ221〜22の奥行きの総和と同等の奥行きを有する半導体検出素子アレイと同等の検出効率を維持し、このような半導体検出素子アレイよりも極めて良好な空間分解能を有し、さらに半導体検出素子数を抑制して、製造コストの増加を抑制できる。
【0067】
さらに、第2の実施の形態の半導体検出部40は、n列の半導体検出素子アレイ221〜22nからなるので、半導体検出素子の間隔、すなわち、半導体検出素子の配列方向の長さを、空間分解能を維持しつつ増加させることができる。この場合、半導体検出素子231〜235の間隔PTと前記nとの比PT/nが0.5mm以上1.0mm以下に設定されることが好ましい。これは、PT/nが0.5mmよりも短くしても、実質的な空間分解能の向上が期待できず、その一方、半導体検出素子数が増加するからである。すなわち、放射線元素から陽電子が生じる場合、陽電子が運動エネルギーを有するため、放射線元素の位置から0.数mm程度変位する。この変位量は必然的に生じるため、PT/nを0.5mmよりも小さくしても、実質的には空間分解能を向上には寄与しないためである。また、PT/nが1.0mmを超えると、半導体検出素子の間隔PTが増加する点では好ましいが、空間分解能が従来よりも十分に向上しない傾向にあるためである。
【0068】
次に本発明の効果を示すために、本発明に係る実施例のPET装置についてシミュレーションを行った。なお、実施例のPET装置は第1の実施の形態の実施例であるが、その効果は第2の実施の形態のPET装置でも得られる。
【0069】
図10は、PET装置の半導体検出部の配置を示す概略平面図である。
【0070】
図10を参照するに、シミュレーションに用いたPET装置は、16個の半導体検出部が中心50の回りに配置された構成を有する。半導体検出部50は直径RDが114.6mmの円周上に半導体検出部の入射面50aが一致するように配置されている。
【0071】
実施例の半導体検出部は、図5に示す半導体検出部20と同様に、第1および第2半導体検出素子アレイを有し、それぞれの半導体検出素子が間隔PTの1/2だけ変位して配置されている。第1および第2半導体検出素子アレイのそれぞれは、16個の半導体検出素子を有し、半導体検出素子は、幅を19.2mm、奥行きを5mm、厚さを1mm、半導体検出素子間の間隔を1.2mmに設定した。第1半導体検出素子アレイと第2半導体検出素子アレイとの間隙は5mmに設定した。実施例の半導体検出素子の合計は32個とした。
【0072】
一方、本発明によらない比較例1の半導体検出部は、1つの半導体検出素子アレイを有し、半導体検出素子は32個の半導体検出素子を有する。半導体検出素子は、幅を19.2mm、奥行きを10mm、厚さを1mm、半導体検出素子間の間隔を0.6mmに設定した。
【0073】
また、本発明によらない比較例2の半導体検出部は、1つの半導体検出素子アレイからなり、奥行きを5mmとした以外は比較例1と同様の構成とした。
【0074】
上記の実施例、比較例1および2について16個の半導体検出部50の中心にガンマ線源がある場合と、中心からY軸方向に10mmだけ変位した位置(Y=10mm)にガンマ線源がある場合の2通りについてシミュレーションを行った。なお、シミュレーションは、日本放射線機器工業会の評価ガイドラインに沿って行い、放射線元素を18Fとした。
【0075】
図11は、実施例および比較例のシミュレーション結果を示す図である。
【0076】
図11を参照するに、実施例は、比較例1よりも半導体検出素子の幅が2倍であるにも拘わらず、中心での空間分解能が略同等である。これは、第1および第2半導体検出素子アレイの各々の半導体素子を1/2ピッチずらした効果である。Y=10mmでは比較例1よりもY軸方向の空間分解能が飛躍的向上し、X軸方向およびY軸方向が共に1.0mm以下となっている。
【0077】
また、実施例は比較例2よりも検出効率が高いことが分かる。なお、検出効率はコインシデンス感度であり、放射線検出器に入射した全対消滅ガンマ線のうち、コインシデンス検出された対消滅ガンマ線の割合である。コインシデンス感度は、中心から見た各半導体素子の立体角と、各半導体素子の奥行きから決まるコインシデンス確率から算出した値である。
【0078】
したがって、実施例は、比較例1および2と半導体検出素子数が同じにも拘わらず、検出効率を維持しつつ、比較例1よりもY=10mmの場合のY軸方向の空間分解能が大幅に向上し、半導体検出部の視野全体に亘って空間分解能が均衡良く向上していることが分かる。
【0079】
これにより、実施例は、比較例1および比較例2に対して、半導体検出素子数の増加を伴わず、検出効率を維持すると共に空間分解能を向上させている。よって、実施例は、比較例1および比較例2に対して、半導体検出素子に接続される検出回路やそれよりも下流の回路の数の増加による製造コストの増加を伴わず、検出効率の維持および空間分解能の向上が可能である。
【0080】
以上本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0081】
例えば、上述した第1の実施の形態では、PET装置を例に説明したが、本発明は、SPECT(単一光子放射形コンピュータ断層撮影)装置に適用できる。また、上記では半導体検出部がガンマ線を検出する場合を例に説明したが、X線や他の放射線の半導体検出部にも適用できることはいうまでもない。
【0082】
また、第1および第2の実施の形態において、図5あるいは図9に示したように半導体検出部は1枚の配線基板上に配置された半導体検出素子アレイから構成さてもよく、2枚以上の配線基板のそれぞれに配置された半導体検出素子アレイから構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】PET装置の概略構成図である。
【図2】従来の半導体検出器の問題点を説明するための図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るPET装置の構成を示すブロック図である。
【図4】半導体検出部の構成を示す斜視図である。
【図5】半導体検出部の概略平面図である。
【図6】半導体検出素子の動作を説明するための図である。
【図7】半導体検出部の概略正面透視図である。
【図8】第1および第2半導体検出素子アレイの製造工程の一部を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るPET装置を構成する半導体検出部の概略平面図である。
【図10】実施例および比較例のPET装置の半導体検出部の配置を示す概略平面図である。
【図11】実施例および比較例のシミュレーション結果を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
10 PET装置
11,111〜118 放射線検出器
12 情報処理部
13 表示部
14 制御部
15 入出力部
20、40、50 半導体検出部
21 配線基板
22、221〜22n 半導体検出素子アレイ
22a 第1半導体検出素子アレイ
22b 第2半導体検出素子アレイ
23、231〜236 半導体検出素子
24 半導体結晶体
24a 入射面
24b,24c 溝部
25 第1電極
26 第2電極
27 導電性接着層
28a,28b,281〜28n ガード部材
29 コネクタ
30 検出回路
PT 半導体検出素子の配列方向の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の入射により電子正孔対を生成する複数の半導体検出素子を有する半導体検出部を備える放射線検出器であって、
前記半導体検出部は、基板上に、前記複数の半導体検出素子が第1の方向に所定の間隔で配列された半導体検出素子アレイをn個備え、
前記n個の半導体検出素子アレイは、第1の方向に対して直交する第2の方向に第1列から第n列に配列され、
前記第1列から第n列の半導体検出素子アレイは、各々、第1の方向の基準位置から前記所定の間隔の0、1/n、…、(n−1)/nのいずれかだけ変位して配置されてなることを特徴とする放射線検出器(但し、nは2以上の整数である)。
【請求項2】
前記半導体検出素子アレイは、第1列から第n列まで順次、前記所定の間隔の1/nだけ変位して配置されてなることを特徴とする請求項1記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記半導体検出素子アレイは、各々m個の半導体検出素子からなり、
前記第2の方向に沿って隣接する2つの半導体検出素子アレイは、前記基準位置からk番目の各々の半導体検出素子が互いに前記所定の間隔の1/nだけ変位して配置されてなることを特徴とする請求項1記載の放射線検出器(但し、mは2以上の整数、kは、1〜mのいずれかの整数)。
【請求項4】
前記第1列〜第n列の半導体検出素子アレイは、その第1の方向の一端部が前記基準位置から同等の距離となるように、該一端部側に保護部材をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のうち、いずれか一項記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記第1列〜第n列の半導体検出素子アレイは、その第1の方向の前記一端部とは反対側の他端部に、当該半導体検出素子アレイの第1の方向の長さが同等となるように、他の保護部材をさらに備えることを特徴とする請求項4記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記半導体検出素子アレイは、第2の方向に沿って互いに離隔してなることを特徴とする請求項1〜5のうち、いずれか一項記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記所定の間隔をPTとすると、該PTと前記nとの比PT/nが0.5mm以上1.0mm以下に設定されてなることを特徴とする請求項1〜6のうち、いずれか一項記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記nは2であり、
前記第1列の半導体検出素子アレイの半導体検出素子と、前記第1列の半導体検出素子アレイの半導体検出素子とが第1の方向に互いに前記所定の間隔の1/2だけずれて配置されてなることを特徴とする請求項1〜7のうち、いずれか一項記載の放射線検出器。
【請求項9】
放射性同位元素を含む被検体から発生する放射線を検出する請求項1〜8のうちいずれか一項記載の放射線検出器と、
前記放射線検出器から取得した放射線の入射時刻および入射位置を含む検出情報に基づいて前記放射性同位元素の被検体内における分布情報を取得する情報処理手段と、を備える放射線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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