説明

放射線検出器

【課題】重金属からなるセプターは不要であり、2次元収集と3次元収集が同時に行なえる。測定時間の短縮化ができ、被検体、放射線技師双方、さらに(RI)コスト的な負担を軽減できる。
【解決手段】シンチレータは深さ方向に複数の段数に分けられており、被検体側に近い最上段のシンチレータ58は、次段のシンチレータ51のつなぎ目の上部に配置して検出器及びセプター71の役割を果たす。その場合前記シンチレータは、2種類以上の異なる減衰時間を有して、減衰時間の違いによる弁別、反射材構造による光のシェアリングの何れか片方もしくは双方によってシンチレータに入射するγフォトンの捕獲場所を特定するため、2次元収集と3次元収集を同時に行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体に投与されて関心部位に蓄積された放射性同位元素(RI)から放出された放射線(ガンマ線)を検出し、関心部位のRI分布の断層像を得るための装置、例えばPET(Positron Emission Tomography)装置やSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置などの医用診断装置に用いられる放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の放射線検出器は、被検体から放出されたガンマ線を入射して発光するシンチレータと、前記シンチレータの発光をパルス状の電気信号に変換する光電子増倍管とから構成されている。このような放射線検出器については、従来ではシンチレータと光電子増倍管とが一対一に対応するものがあったが、近年では複数のシンチレータに対して、その個数よりも少ない個数の光電子増倍管を結合し、これらの光電子増倍管の出力比からガンマ線の入射位置を決定するという方式を採用し、分解能を高めるようにしている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図8は従来の放射線検出器10をY方向からみたX方向の断面図(正面図)である。等方ボクセル検出器の場合、放射線検出器10をX方向からみたY方向の断面図(側面図)も図8と同じ形状となる。放射線検出器10は、光反射材13が適宜挟み込まれることによって区画され、X方向に6個、Y方向に6個の合計36個のシンチレータ11を2次元的に密着配置したシンチレータ群12と、このシンチレータ群12に光学的に結合されかつ光反射材15が組み合わされた格子枠体が埋設され多数の小区画が画定されているライトガイド14とこのライトガイド14に光学的に結合される4個の光電子増倍管101、102、103、104とから構成されている。尚本図8では光電子増倍管101と光電子増倍管102のみが図示されている。ここでシンチレータ11としては、例えばBiGe12(BGO)、GdSiO:Ce(GSO)、LuSiO:Ce(LSO)、LuYSiO:Ce(LYSO)、NaI、BaF、CsF、PbWOなどの無機結晶が用いられる。
【0004】
X方向に配列された6個のシンチレータ11の何れか一個にガンマ線が入射すると可視光に変換される。この光は光学的に結合されるライトガイド14を通して光電子増倍管101〜104へ導かれるが、その際、X方向に配列された光電子増倍管101(103)と光電子増倍管102(104)の出力比が一定の割合で変化するように、ライトガイド14における各々の光反射材15の位置と長さおよび角度が調整されている。
【0005】
より具体的には光電子増倍管101の出力をP1、光電子増倍管102の出力をP2、光電子増倍管103の出力をP3、光電子増倍管104の出力をP4とすると、X方向の位置を表す計算値{(P1+P3)−(P2+P4)}/(P1+P2+P3+P4)が各シンチレータ11の位置に応じて一定の割合で変化するよう光反射材14の位置と長さが設定されている。
【0006】
一方、Y方向に配列された6個のシンチレータの場合も同様に、光学的に結合されるライトガイド14を通して光電子増倍管101〜104へ光が導かれる。すなわちY方向に配列された光電子増倍管101(102)と光電子増倍管103(104)の出力比が一定の割合で変化するように、ライトガイド14における各々の光反射材15の位置と長さが設定され、また傾斜の場合は角度が調整されている。
【0007】
すなわち、Y方向の位置を表す計算値{(P1+P2)−(P3+P4)}/(P1+P2+P3+P4)が各シンチレータの位置に応じて一定の割合で変化するよう光反射材15の位置と長さが設定されている。
【0008】
ここで各シンチレータ11間における光反射材13及びライトガイド14の光反射材15は、主としてポリエステルフィルムを基材とした酸化ケイ素と酸化チタニウムの多層膜フィルムが良く用いられ、その反射効率が非常に高いため光の反射素子として用いられているが厳密には光の入射角度によっては透過成分が発生しており、それをも計算に入れて光反射材13及び光反射材15の形状及び配置が決定されている。
【0009】
なお、シンチレータ群12はライトガイド14とカップリング接着剤にて接着されカップリング接着剤層16を形成し、ライトガイド14も光電子増倍管101〜104とカップリング接着剤にて接着されカップリング接着剤層17を形成している。また各シンチレータ11が対向していない外周表面は、光電子増倍管101〜104側との光学結合面を除き光反射材で覆われている。この場合の光反射材としては主にPTFEテープが用いられる。
【0010】
図9は、放射線検出器の位置演算回路の構成を示すブロック図である。位置演算回路は、加算器21、22、23、24と位置弁別回路25、26とから構成されている。図9に示すように、ガンマ線のX方向の入射位置を検出するために、光電子増倍管101の出力P1と光電子増倍管103の出力P3とが加算器21に入力されるとともに、光電子増倍管102の出力P2と光電子増倍管104の出力P4とが加算器22に入力される。両加算器21、22の各加算出力(P1+P3)と(P2+P4)とが位置弁別回路25へ入力され、両加算出力に基づきガンマ線のX方向の入射位置が求められる。
【0011】
同様に、ガンマ線のY方向の入射位置を検出するために、光電子増倍管101の出力P1と光電子増倍管102の出力P2とが加算器23に入力されるとともに、光電子増倍管103の出力P3と光電子増倍管104の出力P4とが加算器24に入力される。両加算器23、24の各加算出力(P1+P2)と(P3+P4)とが位置弁別回路26へ入力され、両加算出力に基づきガンマ線のY方向の入射位置が求められる。
【0012】
さらに計算値(P1+P2+P3+P4)はそのイベントに対するエネルギーを示しており、図10に示すようなエネルギースペクトルとして表示される。
【0013】
以上のように計算された結果はシンチレータに入射したガンマ線の位置に従って図11に示すような位置コーディングマップとして表され、各々の位置弁別情報が示される。
【0014】
さらに画像収集方法には図12に示す2次元収集と、図13に示す3次元収集とがある。2次元収集ではセプター31が検出器リング32間に配置されており、散乱線や偶発同時係数などを除去できる構造になっている。同一検出器リング内で同時係数をとるダイレクトスライス33と隣り合うリング間で同時係数をとるクロススライス34のデータ収集ができ、n層の検出器リングを持つ装置では2n−1スライスのPET像が撮像できる。このセプター31の材質としてはガンマ線遮蔽のため、タングステンや鉛などの重金属が用いられている。一方、3次元収集では検出器リング42の同時係数を全検出器リング間にわたって行なうため、ダイレクトスライス43及び全スライス44でのPET像が撮像できる。この場合、セプターは取り外した状態で収集される。つまりセプターは収集条件によって配置したり取り外したりしなければならないため、ガントリに対して出し入れ可能な機構となっている。
【0015】
一方、それぞれ発光減衰時間が異なった材質で構成したシンチレータアレイを多段に積層したもの(例えば非特許文献1参照)や、さらに各シンチレータアレイを半ピッチずらせて配置したもの(例えば非特許文献2参照)など、DOI(depth of interaction)情報を持ったブロック検出器を実現することにより空間分解能を向上させる方法が種々提案されている。
【0016】
【特許文献1】特開2004−354343号公報
【0017】
【非特許文献1】S. Yamamoto and H. Ishibashi, A GSO depth of interaction detectorfor PET, IEEE Trans. Nucl. Sci., 45:1078-1082, 1998.
【0018】
【非特許文献2】H. Liu, T. Omura. M. Watanabe, et al., Development of a depth of interactiondetector for g-rays, Nucl. Instr. Meth., Physics Research A 459:182-190, 2001.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上述した従来例の放射線検出器では次のような問題点を有している。
【0020】
図12に示した2次元収集ではセプターによる散乱線除去効果のためノイズが少ない、定量性が高い、体軸方向感度分布が均一であるなどの長所があるが、感度が3次元収集の場合の1/5〜1/6程度と著しく低い。一方、図13に示した3次元収集では感度が2次元収集の場合の5〜6倍程度高いという長所があるが、セプターがないため散乱線が多く、画質を劣化させてしまう。被検体から2次元収集及び3次元収集の2つのデータ取得のためには2回測定を行う必要があるが、測定時間が長く、被検体、放射線技師双方の負担が大きいという問題がある。さらに放射性同位元素(RI)からの放出されるガンマ線は時間的に減衰するため、あらかじめそれに見合った多量のRIを注射しなければならず、コスト的にも負担が大きくなる。
【0021】
かかる課題は、従来技術で述べたような、単にシンチレータアレイを多段に積層した構造や、各シンチレータアレイを半ピッチずらせて配置する構造のみによっては解決されない。すなわち、シンチレータアレイを積層した構造であっても、最上段のシンチレータアレイを透過した一部放射線が次段以降のシンチレータアレイに入射すると、別途セプターを有しない限り、散乱線や偶発同時計数による画質劣化が生じる。一方、セプターを設けた場合は3次元収集ができない。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明が提供する放射線検出器は、複数のシンチレータが2次元的に配置されたシンチレータアレイが複数段積層されたシンチレータ群と、被検体側を上として最下段の前記シンチレータアレイに光学的に結合されたライトガイドと、該ライトガイドに対して光学的に結合される光電子増倍管を備えるとともに、最上段の前記シンチレータアレイを構成する各シンチレータは、次段の前記シンチレータアレイを構成する各シンチレータのつなぎ目の上部に配置されることにより、セプターの役割を果たす。その場合前記シンチレータは、2種類以上の異なる減衰時間を有して、減衰時間の違いによる弁別、反射材構造による光のシェアリングの何れか片方もしくは双方によってシンチレータに入射するγフォトンの捕獲場所を特定するため、2次元収集と3次元収集を同時に行なうことが可能となる。
【0023】
上記課題を解決するために、次のような構成をとる。すなわち請求項1に記載の放射線検出器は、複数のシンチレータが2次元的に結合配置されたシンチレータアレイが複数段積層されたシンチレータ群と、被検体側を上として最下段の前記シンチレータアレイに光学的に結合されたライトガイドと、該ライトガイドに対して光学的に結合される光電子増倍管を備えるとともに、最上段の前記シンチレータアレイを構成する各シンチレータは、次段の前記シンチレータアレイを構成する各シンチレータのつなぎ目の上部に配置され、セプターとして機能するものであることを特徴とする。
【0024】
かかる特徴に基づいて、請求項1に記載の発明は次のように作用する。すなわち、最上段の前記シンチレータアレイを構成する各シンチレータに入射した放射線は、そのシンチレータにより光に変換され、その光を光電子倍増管で増幅してカウントすることにより、位置弁別情報を得る。一方、最上段の前記シンチレータアレイを構成する各シンチレータに入射しない放射線は、次段のシンチレータアレイを構成する各シンチレータにより光に変換され、その光を光電子倍増管で増幅してカウントすることにより、位置弁別情報を得る。このとき、最上段の前記シンチレータアレイは、入射放射線を透過しない材質で構成されており、セプターの役目を果たす。
【0025】
かかる作用により請求項1に記載の発明は、最上段のシンチレータアレイにより3次元収集を行いつつ、次段のシンチレータアレイにより散乱線や偶発同時計数による画質低下の少ない2次元収集を行うことができるという効果を奏する。
【0026】
また、請求項2に記載の放射線検出器は、請求項1に係る放射線検出器であって、最上段の前記シンチレータアレイを構成する各シンチレータは、次段以降の前記シンチレータアレイを構成する各シンチレータの幅よりも小さいことを特徴とする。
【0027】
かかる特徴に基づいて、請求項2に記載の発明は次のように作用する。すなわち、最上段のシンチレータアレイを構成する各シンチレータは、次段以降の前記シンチレータアレイを構成する各シンチレータの幅よりも小さく、かつ、次段の前記シンチレータアレイを構成する各シンチレータのつなぎ目の上部に配置されるので、最上段のシンチレータアレイを構成する各シンチレータ間に必ず放射線を透過する空間が存在する。放射線は、この空間を通じて、次段以降のシンチレータアレイに到達する。
【0028】
かかる作用により、請求項2に記載の発明は、次段以降のシンチレータアレイを、各シンチレータが密接して配列するように構成したとしても、最上段のシンチレータアレイを構成する各シンチレータ間に形成された空間を通って、次段以降のシンチレータアレイに放射線を到達させることができるという効果を奏する。
【0029】
また、請求項3に記載の放射線検出器は、請求項1に係る放射線検出器であって、反射材構造による光のシェアリングによって前記シンチレータ群に入射するγフォトンの捕獲場所を特定することを特徴とする。
【0030】
かかる特徴に基づいて、請求項3に記載の発明は次のように作用する。すなわち、シンチレータにおいて放射線入射により発生する光が、反射材構造により光電子増倍管へ導かれる。各光電子増倍管の出力から、光のシェアリングによってγフォトンの捕獲場所が特定される。
【0031】
さらに、請求項4に記載の放射線検出器は、請求項1に係る放射線検出器であって、前記シンチレータ群は、少なくとも2種類以上の異なる減衰時間を有するシンチレータから構成されており、減衰時間の違い及び反射材構造による光のシェアリングによってシンチレータに入射するγフォトンの捕獲場所を特定することを特徴とする。
【0032】
かかる特徴に基づいて、請求項4に記載の発明は、次のように作用する。すなわち、ある減衰時間を有するシンチレータと、その減衰時間とは異なるシンチレータとに放射線が入射した場合に、それぞれのシンチレータで発生した光が混在した信号が得られる。
【0033】
かかる作用に基づいて、請求項4に記載の発明は、異なるシンチレータによって発生した光を包含した信号を、減衰時間の相違を利用して、波形選別によって分離して、前述の反射材構造による光のシェアリングによる方法により、シンチレータに入射するγフォトンの捕獲場所を特定することができるという効果を奏する。さらに、各シンチレータアレイを、それぞれ異なる減衰時間を有する材料で構成することにより、減衰時間の相違に基づいて深さ方向の情報を得ることが可能となり、空間分解能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(第1の実施例)
以下、本発明の放射線検出器の第1の実施例の構成を図面に示し、実施例に従って詳細に説明する。図1は本発明の放射線検出器50をY方向からみたX方向の断面図(正面図)である。また、図2は本発明の放射線検出器50をX方向からみたY方向の断面図(側面図)である。さらに図3は本発明の放射線検出器50を上面からみた上段シンチレータアレイ61の断面図(上面図)である。放射線検出器50のシンチレータ群52は上段シンチレータアレイ61と下段シンチレータアレイ62の2つの部分で構成されている。図1のX方向の断面図では、上段シンチレータアレイ61にてシンチレータ58がX方向に6個、下段シンチレータアレイ62にてシンチレータ51がX方向に6個並んでいる。ここで、X方向のシンチレータ58の中心ピッチはシンチレータ51の中心ピッチに一致している。一方、図2のY方向の断面図では、上段シンチレータアレイ61にてシンチレータ58がY方向に7個、光透過材59がY方向に6個、下段シンチレータアレイ62にてシンチレータ51がY方向に6個並んでいる。ここでY方向のシンチレータ58の中心ピッチはシンチレータ51の中心ピッチに対して1/2ずれて配置されている。また両端のシンチレータ58はその他のシンチレータ58に対して幅wは半分となっている。光透過材59はY方向のシンチレータ58の間に配置されており、光の透過性が良くかつガンマ線のエネルギーに対しても透過性の良いもの、例えば透明アクリルが選ばれる。
【0035】
図3の上面からみた断面図では上段シンチレータアレイ61を上から見た部分を示しており、シンチレータ58は放射線検出器50をPETガントリへ組み込んだ場合のリングに当たる部分を1リング毎に区切るように配置されている。放射線検出器50は、光反射材53が適宜挟み込まれることによって区画され、上段シンチレータアレイ61においてシンチレータ58がX方向に6個、Y方向に7個、光透過材59がY方向のみに6個、下段シンチレータアレイ62においてシンチレータ51がX方向に6個、Y方向に6個2次元的に密着配置したシンチレータ群52と、このシンチレータ群52に光学的に結合されかつ光反射材55が組み合わされた格子枠体が埋設され多数の小区画が画定されているライトガイド54と、このライトガイド54に光学的に結合される4個の光電子増倍管201、202、203、204とから構成されている。ここでシンチレータとしては、例えばBiGe12(BGO)、GdSiO:Ce(GSO)、LuSiO:Ce(LSO)、LuYSiO:Ce(LYSO)、NaI、BaF、CsF、PbWOなどの無機結晶が用いられる。特に上段シンチレータアレイ61のシンチレータ58はガンマ線を遮蔽する能力が特に高い実効原子番号の大きい、BiGe12(BGO)、LuSiO:Ce(LSO)、LuYSiO:Ce(LYSO)、PbWOが望ましい。
【0036】
さらに画像収集方法には前述した2次元収集と3次元収集とがあるが本発明の放射線検出器の場合にはその区別なくPET像を撮像することができる。本発明の放射線検出器をガントリに組み込んだ場合の体軸方向の断面図を図4に示す。ここで、セプター71が検出器リング72間に配置されており、散乱線や偶発同時係数などを除去できる構造になっているが、セプター71は上段シンチレータアレイ61のシンチレータ58そのものであり、検出器リング72は下段シンチレータアレイ62のシンチレータ51にあたる。図4ではさらにガンマ線による軌跡の一部を示しているが、同一検出器リング内で同時係数をとるダイレクトスライス73と隣り合うリング間で同時係数をとるクロススライス74のデータ収集ができている。ここで、光透過材59はガンマ線のエネルギーに対しても透過性が良いため、ガンマ線はエネルギーを失うことなく透過させることができている。このセプター71すなわちシンチレータ58の材質としてはガンマ線遮蔽のため、実効原子番号の大きいシンチレータが選ばれているのは前述したとおりである。つまり、下段シンチレータアレイ62のシンチレータ51のみでの検出情報を使用すれば2次元収集データによるPET像が撮像できる。一方、上段シンチレータアレイ61のシンチレータ58はガンマ線検出も行っているため、スライス75のデータ収集を行っている。つまり下段シンチレータアレイ62のシンチレータ51及び上段シンチレータアレイ61のシンチレータ58検出情報を用いれば3次元収集データによるPET像が撮像できる。
【0037】
ここで、図1および図2に示すように、本発明の放射線検出器はシンチレータ群52の何れか一個にガンマ線が入射すると可視光に変換され、光学的に結合されるライトガイド54を通して光電子増倍管201〜204へ光が導かれるが、その際、X方向に配列された光電子増倍管201(203)と光電子増倍管202(204)の出力比が一定の割合で変化するように、ライトガイド54における各々の光反射材55の位置と長さおよび角度が調整されている。出力が計算された結果はシンチレータ群52に入射したガンマ線の位置に従って図5に示すような位置コーディングマップとして表され、各々の位置弁別情報が示される。
【0038】
(第2の実施例)
前述の第1の実施例ではガンマ線の入射位置を反射材構造による光のシェアリングによってのみ弁別しているため、位置コーディングマップは、上段シンチレータアレイ61のマップと下段シンチレータアレイ62のマップがともにプロットされており、両者の重なり(クロストーク)が大きくなり、その結果PET像の空間分解能が劣化する恐れがある。そこで第2の実施例では上段シンチレータアレイ61と、下段シンチレータアレイ62は異なる減衰時間を有しており、減衰時間の違い及び反射材構造による光のシェアリングによってシンチレータに入射するγフォトンの捕獲場所を特定する構造となっている。例えば、以下のような組み合わせが考えられる。
(例1)

(例2)

(例3)

出力による位置計算と減衰時間により弁別された結果はシンチレータ群52に入射したガンマ線の位置に従って、上段シンチレータアレイ61は図7に示すような位置コーディングマップとして表され、下段シンチレータアレイ62は図6に示すような位置コーディングマップとして表される。上段シンチレータアレイ61と下段シンチレータアレイ62は位置コーディングマップ上で完全に分離されているため、両者の重なり(クロストーク)はなく、その結果PET像の空間分解能が劣化するということはない。
【0039】
更に変形例として上段シンチレータアレイ61もしくは下段シンチレータアレイ62の中でも深さ方向に複数の段数に分けその段数毎に異なる減衰時間を有しており、減衰時間の違い及び反射材構造による光のシェアリングによってシンチレータに入射するγフォトンの捕獲場所を特定する構造となっている。この場合更に高密度な空間分解能が得られる。
【0040】
(第3実施例)
第3の実施例では前述の第1、第2実施例に対して、光透過材89が存在しない構造で、その他の部分については全く同じ構造となる。光透過材89が存在しないことにより、ガンマ線の透過時の減衰は皆無となり、検出感度が有利になる。
【0041】
なお、以上説明した実施例においては、望ましい形態として、上段シンチレータ58のY方向の幅を、下段シンチレータ51のY方向の幅より小さくしているが、これらは同一の幅であっても良いし、上段シンチレータ58の幅の方が広くてもよい。その場合は各上段シンチレータ58が間隔をあけて配置され、かつその間隔以上の間隔で下段シンチレータ51を配置すればよい。すなわち、各上段シンチレータ58の隙間から、ガンマ線が下段シンチレータ51へ到達できる限りにおいて、各シンチレータの幅を種々選択可能である。
【0042】
以上のように本発明の放射線検出器では、従来のように重金属からなるセプターは不要であり、2次元収集と3次元収集が同時に行なえる。そのため従来のように被検体から2次元収集及び3次元収集の2つのデータ取得のためには2回測定を行う必要はなく、測定時間の短縮化ができ、被検体、放射線技師双方の負担を軽減できる。さらに放射性同位元素(RI)からの放出されるガンマ線は時間的に減衰するが、測定時間の短縮化できる分RIの節約ができ、コスト的な負担を軽減できる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、この発明は、医療用や産業用の放射線撮影装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の放射線検出器のX方向の断面図を示す。
【図2】本発明の放射線検出器のY方向の断面図を示す。
【図3】本発明の放射線検出器の上面から見た断面図を示す。
【図4】本発明の放射線検出器の体軸方向断面図を示す。
【図5】本発明の放射線検出器の第1実施例の位置コーディングマップを示す。
【図6】本発明の放射線検出器の第2実施例の位置コーディングマップを示す。
【図7】本発明の放射線検出器の第3実施例の位置コーディングマップを示す。
【図8】従来の放射線検出器の断面図を示す。
【図9】本発明の放射線検出器及び従来の放射線検出器の位置演算回路の一例を示す。
【図10】本発明の放射線検出器及び従来の放射線検出器のエネルギースペクトルを示す。
【図11】従来の放射線検出器の位置コーディングマップを示す。
【図12】従来の放射線検出器の2次元収集における体軸方向断面図を示す。
【図13】従来の放射線検出器の3次元収集における体軸方向断面図を示す。
【符号の説明】
【0045】
10 …従来の放射線検出器
11 …シンチレータ
12 …シンチレータ群
13 …光反射材
14 …ライトガイド
15 …光反射材
16 …カップリング接着剤層
17 …カップリング接着剤層
21,22,23,24…加算器
25,26 …位置弁別回路
31 …セプター
32 …検出器リング
33 …ダイレクトスライス
34 …クロススライス
43 …ダイレクトスライス
44 …全スライス
50 …本発明の第1の実施例の放射線検出器
51 …シンチレータ
52 …シンチレータ群
53 …光反射材
54 …ライトガイド
55 …光反射材
56 …カップリング接着剤層
57 …カップリング接着剤層
58 …シンチレータ
59 …光透過材
61 …上段シンチレータアレイ
62 …下段シンチレータアレイ
71 …セプター
72 …検出器リング
73 …ダイレクトスライス
74 …クロススライス
75 …スライス
101,102,103,104 …光電子増倍管
201,202,203,204 …光電子増倍管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシンチレータが2次元的に配置されたシンチレータアレイが複数段積層されたシンチレータ群と、被検体側を上として最下段の前記シンチレータアレイに光学的に結合されたライトガイドと、該ライトガイドに対して光学的に結合される光電子増倍管を備えるとともに、最上段の前記シンチレータアレイを構成する各シンチレータは、次段の前記シンチレータアレイを構成する各シンチレータのつなぎ目の上部に配置されて、セプターとして機能するものであることを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
最上段の前記シンチレータアレイを構成する各シンチレータは、次段以降の前記シンチレータアレイを構成する各シンチレータの幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
反射材構造による光のシェアリングによって前記シンチレータ群に入射するγフォトンの捕獲場所を特定することを特徴とする請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記シンチレータ群は、少なくとも2種類以上の異なる減衰時間を有するシンチレータから構成されており、減衰時間の違い及び反射材構造による光のシェアリングによってシンチレータに入射するγフォトンの捕獲場所を特定することを特徴とする請求項1に記載の放射線検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−101191(P2007−101191A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287336(P2005−287336)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】