説明

放射線検出用カセッテ

【課題】筐体内部に放射線固体検出器や読取光光源等を収容した放射線検出用カセッテにおいて、放射線固体検出器に接続されたフレキシブル基板の振動対策を可能にするとともに、読取光の光学精度をも確保する。
【解決手段】筐体20内部に放射線固体検出器30や線状光源31を収容した放射線検出用カセッテ2において、放射線固体検出器30を保持する基台25の構造を、環状部を有し、環状部の上面において放射線固体検出器30を保持し、環状部の内側に線状光源31を収容し、環状部の外側面において放射線固体検出器30に接続されたフレキシブル基板50を保持する構造とし、光源駆動手段を基台25に固着保持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内部に放射線固体検出器や読取光光源等を収容した放射線検出用カセッテにおいて、特にその振動対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、医療診断等を目的とする放射線撮影において、被写体を透過した放射線を検出して被写体に関する放射線画像を表す画像信号を出力する放射線固体検出器が各種提案、実用化されている。本出願人は、読出しの高速応答性と効率的な信号電荷の取り出しの両立を図ることができる光読出方式の放射線固体検出器として、特許文献1、特許文献2等において、記録用の放射線あるいは該放射線の励起により発せられる光(以下記録光という)に対して透過性を有する第1導電層、記録光を受けることにより導電性を呈する記録用光導電層、第1導電層に帯電される電荷と同極性の電荷に対しては略絶縁体として作用し、かつ、該同極性の電荷と逆極性の電荷に対しては略導電体として作用する電荷輸送層、読取光の照射を受けることにより導電性を呈する読取用光導電層、読取光に対して透過性を有する第2導電層を、この順に積層して成り、記録用光導電層と電荷輸送層との界面に形成される蓄電部に、画像情報を担持する潜像電荷(静電潜像)を蓄積する放射線固体検出器を提案している。
【0003】
また、上記のような放射線固体検出器や、放射線固体検出器に読取光を走査露光させるための線状光源(読取光光源)や、放射線固体検出器から出力された画像信号の処理を行う信号処理基板等を筐体に収容した放射線検出用カセッテも各種提案、実用化されている(特許文献3等)。このような放射線検出用カセッテは比較的薄型で且つ搬送可能なサイズのものであるため、例えば、身動きがとれない患者等に対して、患者をベッドに寝かせたまま撮影したい部位の下に放射線検出用カセッテを置き、放射線検出用カセッテと患者を挟んで対向する位置に放射線画像情報記録装置が備える放射線源を移動させて撮影を行う等、非常に自由度の高い撮影を行うことができる。
【特許文献1】特開2000−105297号公報
【特許文献2】特開2000−284056号公報
【特許文献3】特開平07−140255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような放射線検出用カセッテにおいては、通常放射線固体検出器は板状の基台により保持され、この基台の裏側に配される信号処理基板と放射線固体検出器とはTCP(Tape Carrier Package)等のフレキシブル基板により接続されている。
【0005】
このフレキシブル基板は振動に対して敏感で、フレキシブル基板に振動が伝わるとノイズの発生の原因となってしまうが、従来の構造ではフレキシブル基板を基台で直接保持することは困難であり、フレキシブル基板の振動については有効な対策は取られていなかった。
【0006】
また、放射線固体検出器を保持する基台自体も外部からの振動の影響を受けないことが好ましいため、基台を軟性の防振部材を介して筐体に固定することが考えられるが、この場合には放射線固体検出器と線状光源との相対位置関係が僅かながらも変動してしまう虞があり、読取光の光学精度を確保するのが困難になるという問題がある。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、筐体内部に放射線固体検出器や読取光光源等を収容した放射線検出用カセッテにおいて、放射線固体検出器に接続されたフレキシブル基板の振動対策を可能にするとともに、読取光の光学精度をも確保した放射線検出用カセッテを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による放射線検出用カセッテは、画像情報を担持する放射線の照射を受けて画像情報を記録し、読取光で走査されることにより記録した画像情報を表す画像信号を出力する放射線固体検出器と、放射線固体検出器に読取光を照射する読取光光源と、放射線固体検出器から出力された画像信号の処理を行う信号処理基板と、放射線固体検出器と信号処理基板とを接続するフレキシブル基板と、環状部を有し、環状部の上面において放射線固体検出器を保持し、環状部の内側に読取光光源を収容し、環状部の外側面においてフレキシブル基板を保持する基台と、基台に保持され、読取光光源を走査移動させる駆動手段とを、筐体内に収容してなることを特徴とするものである。
【0009】
上記において「放射線固体検出器」とは、被写体の画像情報を担持する放射線を検出して被写体に関する放射線画像を表す画像信号を出力する検出器であって、入射した放射線を直接または一旦光に変換した後に電荷に変換し、この電荷を一旦蓄電部に蓄積し、その後、この電荷を外部に出力させることにより、被写体に関する放射線画像を表す画像信号を得ることができるものである。
【0010】
また、「駆動手段」は、読取光により放射線固体検出器の全面が走査されるように読取光光源を走査移動させるものであり、例えば、読取光光源を点状光源とした場合には、この点状光源を主走査方向および副走査方向の2次元状に走査移動させるものであり、読取光光源を線状光源とした場合には、この線状光源を副走査方向に1次元状に走査移動させるものである。
【0011】
本発明による放射線検出用カセッテにおいて、基台および/または基台に保持された部材は、導熱性部材により筐体内と接続されていることが好ましい。
【0012】
また、基台は、防振部材を介して筐体内に固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明による放射線検出用カセッテは、筐体内部に放射線固体検出器や読取光光源等を収容した放射線検出用カセッテにおいて、放射線固体検出器を保持する基台の構造を、環状部を有し、環状部の上面において放射線固体検出器を保持し、環状部の内側に読取光光源を収容し、環状部の外側面において放射線固体検出器に接続されたフレキシブル基板を保持するものとし、この基台に駆動手段を保持させるようにしたので、フレキシブル基板の振動対策を可能にするとともに、読取光の光学精度をも確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態による放射線検出用カセッテについて説明する。図1に、この放射線検出用カセッテを利用した乳房用X線撮影装置の概略構成図を示す。
【0015】
本乳房用X線撮影装置は、図1に示すように、撮影装置本体1と撮影装置本体1に装填される放射線検出用カセッテ2とを備えている。
【0016】
撮影装置本体1は、撮影台10、撮影台10に設置されたアーム部12およびアーム部12に設置されたカセッテ装填部14を備えている。
【0017】
アーム部12は、撮影台10との接合部分14aを軸として矢印A方向に回転するものである。そして、アーム部12は自ら回転するとともに、カセッテ装填部14をも矢印A方向に回転させるものである。また、アーム部12の一部である放射線射出部12aには放射線源が内蔵されている。放射線射出部12aから射出された放射線はカセッテ装填部14に照射され、カセッテ装填部14に装填されたカセッテ2内の放射線固体検出器30に照射される。なお、本乳房用X線撮影装置によるX線撮影は、被写体がアーム部12の放射線射出部12aとカセッテ装填部14との間に位置した状態で行われる。そして、X線撮影の撮影目的に応じてアーム部12が回転し、様々な角度にアーム部12が傾いた状態でX線撮影が行われるものである。
【0018】
図2に上記撮影装置本体1のカセッテ装填部14に装填されるカセッテ2の概略構成図、図3に図2に示す概略構成図において放射線固体検出器30を非表示にした図、図4に図2中のIV−IV線断面図、図5に放射線固体検出器30の概略構成図を示す。
【0019】
カセッテ2は、直方体の筐体20内に、放射線固体検出器30、この放射線固体検出器30を保持する基台25、ライン状の読取光を放射線固体検出器30に向かって射出する線状光源31、線状光源31を直動移動させる光源駆動手段、放射線固体検出器30から出力された画像信号を検出するチャージアンプIC51を実装したフレキシブル基板50、放射線固体検出器30から出力された画像信号の処理を行う信号処理基板52、および信号処理基板52とフレキシブル基板53を介して接続され、信号処理基板52から受信した画像信号を外部機器へ送信するための画像転送基板54等を収容してなるものである。
【0020】
筐体20は、主として光を遮断するアルミやマグネシウム等の材料から構成されているが、放射線入射部にはカーボン板21が配置されており、放射線固体検出器30への放射線の入射を妨げないように構成されている。
【0021】
放射線固体検出器30は、図5に示すように、放射線画像を担持した放射線L1を透過する第1の電極層33、第1の電極層33を透過した放射線L1の照射を受けることにより電荷を発生する記録用光導電層34、記録用光導電層34において発生した電荷に対しては絶縁体として作用し、且つその電荷と逆極性の輸送電荷に対しては導電体として作用する電荷輸送層35、読取光L2の照射を受けることにより電荷を発生する読取用光導電層36、および読取光L2を透過する線状に延びる線状電極37aが平行に配列された第2の電極層37をこの順に積層してなるものである。第2の電極層37の各線状電極37aは、フレキシブル基板50と接続されている。
【0022】
上記放射線固体検出器30においては、第1の電極層33側から放射線L1が照射され、照射された放射線L1の線量に応じた量の潜像電荷が記録用光導電層34と電荷輸送層35との界面に形成される蓄電部38に蓄積されることより、放射線画像が記録される。そして、第2の電極層37側から照射された読取光L2が線状電極37aを透過して読取用光導電層36に照射され、その読取光L2の照射により読取用光導電層36において発生した一方の極性の電荷が蓄電部38における潜像電荷と結合するとともに、他方の極性の電荷が線状電極37aに接続されたフレキシブル基板50(チャージアンプIC51)により検出されることにより放射線画像が電気信号として読み出される。
【0023】
なお、放射線固体検出器30および線状光源31は、上記線状光源31の長さ方向と放射線固体検出器30の線状電極37aの長さ方向とが略直交するように設置されている。
【0024】
光源駆動手段は、基台25に固着されたモーター40と、モーター40の回転軸に接続された駆動プーリー41と、基台25に固着された回転軸に軸支されたプーリー42と、駆動プーリー41とプーリー42との間に懸架され、線状光源31を保持するベルト43と、基台25に固着され、線状光源31の移動を規制するスキャンシャフト44とから構成されている。
【0025】
基台25は、長方形の環状部を有し、底面において環状部の内側が閉じた平板状の底板部を有する形状となっており、アルミダイキャスト等の剛性の高い材料で構成されている。
【0026】
基台25は環状部の上面において保持部材26により放射線固体検出器30を挟持している。
【0027】
また、基台25は環状部の外側面において、ヒートシンク62によりフレキシブル基板50を挟持しており、基台25の下面において、フレキシブル基板50と接続された信号処理基板52を保持している。なお、基台25の外側面とフレキシブル基板50との間には防振ゲル60が、フレキシブル基板50に実装されたチャージアンプIC51とヒートシンク62との間には防振ゲル61が各々配されており、フレキシブル基板50の振動を抑制するように構成されている。
【0028】
さらに、基台25は光源駆動手段を保持するとともに、環状部の内側に線状光源31を収容するように構成されている。
【0029】
上述の様な構成とすることにより、フレキシブル基板50を適切に保持できるためフレキシブル基板50の振動を抑制することが可能であり、また、放射線固体検出器30と、光源駆動手段(線状光源31)とを同一の基台25により保持しているため、読取光の光学精度をも確保することが可能である。
【0030】
また、この基台25は、防振ゲル27を介して筐体20に固着された支柱28に取り付けられている。これにより、筐体20外部からの振動が基台25に直接的に伝播するのを抑制できる。
【0031】
さらに、ヒートシンク62と筐体20とは導熱リボン64により張力が掛からない状体で接続されており、このような態様とすることにより、筐体20外部からの振動を基台25に直接的に伝播させることなく、チャージアンプIC51で発生した熱を筐体に逃がすことができるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による第1の実施の形態の直動移動体駆動装置を利用した乳房用X線撮影装置の概略構成図
【図2】上記乳房用X線撮影装置のカセッテ装填部に装填されるカセッテの概略構成図
【図3】図2に示すカセッテの概略構成図において放射線画像検出器を非表示にした概略構成図
【図4】上記カセッテの断面図(図2中のIV−IV線断面図)
【図5】上記カセッテ内に設置される放射線固体検出器の概略構成図
【符号の説明】
【0033】
1 撮影装置本体
2 カセッテ
10 撮影台
12 アーム部
12a 放射線射出部
14 カセッテ装填部
20 筐体
21 カーボン板
25 基台
26 保持部材
30 放射線固体検出器
31 線状光源
40 モーター
41 駆動プーリー
42 プーリー
43 ベルト
44 スキャンシャフト
50 フレキシブル基板
51 チャージアンプIC
52 信号処理基板
53 フレキシブル基板
54 画像転送基板
60 防振ゲル
61 防振ゲル
62 ヒートシンク
63 ネジ
64 導熱リボン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報を担持する放射線の照射を受けて前記画像情報を記録し、読取光で走査されることにより記録した前記画像情報を表す画像信号を出力する放射線固体検出器と、
該放射線固体検出器に読取光を照射する読取光光源と、
前記放射線固体検出器から出力された画像信号の処理を行う信号処理基板と、
前記放射線固体検出器と前記信号処理基板とを接続するフレキシブル基板と、
環状部を有し、該環状部の上面において前記放射線固体検出器を保持し、前記環状部の内側に前記読取光光源を収容し、前記環状部の外側面において前記フレキシブル基板を保持する基台と、
該基台に保持され、前記読取光光源を走査移動させる駆動手段とを、筐体内に収容してなることを特徴とする放射線検出用カセッテ。
【請求項2】
前記基台および/または前記基台に保持された部材が、導熱性部材により前記筐体内と接続されていることを特徴とする請求項1記載の放射線検出用カセッテ。
【請求項3】
前記基台が、防振部材を介して前記筐体内に固定されていることを特徴とする請求項1または2記載の放射線検出用カセッテ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−155433(P2007−155433A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349184(P2005−349184)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】