説明

放射線画像検出装置およびその製造方法

【課題】消去光の大量照射による光疲労現象が生じるのを防止し、次に記録される放射線画像の読取感度の劣化を防止する。
【解決手段】読取用光導電層5に読取光L1が照射されたときに電荷蓄電部11に蓄積された放射線画像を信号電荷として読取る、ストライプ状に配列された複数の第1線状電極6が、読取光L1を透過し消去光L2を遮光する消去光遮光膜8上の領域にそれぞれ設けられている。また、消去光L2が照射されたとき電荷蓄電部11または読取用光導電層5に残存する残存電荷を放電する、複数の第1線状電極6の間にストライプ状に配列された複数の第2線状電極7が、消去光L2を透過し読取光L1を遮光する複数の読取光遮光膜9上の領域に設けられている。この複数の消去光遮光膜8と複数の読取光遮光膜9とが交互に隙間なく連続するように配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像を担持した放射線の照射を受けて放射線画像を記録し、読取光により走査されて放射線画像に応じた信号が読み出され、消去光の照射を受けて残留電荷が消去される放射線画像検出装置を備えた放射線画像検出装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野などにおいて、被写体を透過した放射線の照射を受けて電荷を発生し、その電荷を蓄積することにより被写体に関する放射線画像を記録する放射線画像検出装置が各種提案、実用化されている。たとえば、特許文献1には放射線を透過する第1の電極層、放射線の照射を受けることにより電荷を発生する記録用光導電層、潜像電荷に対しては絶縁体として作用し、かつ潜像電荷と逆極性の輸送電荷に対しては導電体として作用する電荷輸送層、読取光の照射を受けることにより電荷を発生する読取用光導電層、および読取光を透過する線状に延びる透明線状電極と読取光を遮光する線状に延びる遮光線状電極とが平行に交互に配列された第2の電極層をこの順に積層してなる放射線画像検出装置が提案されている。
【0003】
この放射線画像検出装置を用いて放射線画像の記録を行うには、まず、第1の電極層に負の高電圧、第2の電極層に正の高電圧が印加された状態で、被写体を透過した放射線が照射される。すると放射線は記録用光導電層に照射され、記録用光導電層の放射線の照射された部分において電荷対が発生する。この電荷対のうち正の電荷は負に帯電した第1の電極層に向かって移動し、第1の電極層における負の電荷と結合して消滅する。一方、電荷対のうち負の電荷は正に帯電した第2の電極層に向かって移動するが、上記のように電荷輸送層は負の電荷に対しては絶縁体として作用する。このため、上記負の電荷は記録用光導電層と電荷輸送層との界面である電荷蓄電部に蓄積され、この蓄電部への負電荷の蓄積により放射線画像の記録が行われる。
【0004】
また、記録された放射線画像を放射線画像検出装置から読取るとき、読取光が第2の電極層側から照射される。照射された読取光は読取用光導電層に照射され、読取用光導電層において電荷対が発生する。この電荷対のうち正の電荷が蓄電部に蓄積された負電荷と結合するとともに、負の電荷が透明線状電極に帯電した正の電荷と結合する。この電荷の結合により、透明線状電極に接続された電流検出アンプにおいて電流が検出され、その電流が電圧に変換されて画像信号として出力される。
【0005】
ここで、放射線画像検出装置においては、放射線画像の読取りが行われた後おいても完全に読み取られなかった電荷が残留する。特に、大線量の放射線が照射されていた場合には、その線量に応じた電荷の一部が電荷輸送層を通過し、遮光線状電極と読取用光導電層との界面に蓄積する。この残留電荷は、次に記録される放射線画像の画質を劣化させることになる。そこで、この残留電荷を消去する処理が行われる。具体的には、第2の電極層側から消去光が照射され、その消去光の照射によって読取用光導電層において電荷が発生し、その電荷が残留電荷と結合することによって消去処理が行われる。
【特許文献1】特開2000−284056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した残留電荷を十分に消去するためには消去光の光量を多くする必要がある。しかし、読取用光導電層に消去光が多く照射されたときに透明線状電極近傍の読取用光導電層において光疲労現象が生じてしまう。特に、信号電荷の読取りを行う第2の電極層近傍の読取用光導電層に光疲労現象が生じたとき、次に記録された放射線画像の読取感度の低下を招いてしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、光疲労現象による読取感度の低下を防止することができる放射線画像検出装置およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の放射線画像検出装置は、放射線画像情報を担持した電磁波の照射により発生した電荷を蓄積する電荷蓄電部と、読取光の照射により電荷対を発生する読取用光導電層と、読取用光導電層に読取光が照射されたときに電荷蓄電部に蓄積された放射線画像を信号電荷として読取る、ストライプ状に配列された複数の第1線状電極と、消去光が照射されたとき電荷蓄電部または読取用光導電層に残存する残存電荷を放電する、複数の第1線状電極の間にストライプ状に配列された複数の第2線状電極と、各第1線状電極上にそれぞれ設けられた、読取光を透過し消去光を遮光する複数の消去光遮光膜と、各第2線状電極上にそれぞれ設けられた、消去光を透過し読取光を遮光する複数の読取光遮光膜とを備え、複数の消去光遮光膜と複数の読取光遮光膜とが交互に隙間なく連続するように配列されていることを特徴とするものである。
【0009】
ここで、消去光遮光膜は第1線状電極上の領域に設けられていればよく、消去光遮光膜と第1線状電極とが直接積層されているものであってもよいし、消去光遮光膜と第1線状電極とが平坦化層等を介して積層されているものであってもよい。なお、第1線状電極上の領域とは第1線状電極が形成されている領域のすべてを含む領域をいい、消去光遮光膜の幅は第1線状電極の幅と略同一であってもよいし、第1線状電極の幅よりも広く形成されていてもよい。
【0010】
同様に、読取光遮光膜は第2線状電極上の領域に設けられていればよく、読取光遮光膜と第2線状電極とが直接積層されているものであってもよいし、読取光遮光膜と第2線状電極とが平坦化層等を介して積層されているものであってもよい。なお、第2線状電極上の領域とは第2線状電極が形成されている領域のすべてを含む領域をいい、読取光遮光膜の幅は第2線状電極の幅と略同一であってもよいし、第2線状電極の幅よりも広く形成されていてもよい。
【0011】
本発明の放射線画像検出装置の製造方法は、基板上に複数の線状の第1レジストをストライプ状に積層し、複数の第1レジストをマスクとして用いて該複数の第1レジストの間に複数の線状の第2レジストをストライプ状に積層することにより、複数の第1レジストと複数の第2レジストとを交互に隙間なく連続するように配列し、積層した第1レジストまたは第2レジストのうち読取光を透過し消去光を遮光する消去光遮光膜として機能するレジスト上に、読取光が照射されたときに電荷蓄電部に蓄積された放射線画像を信号電荷として読取る第1線状電極を積層するとともに、積層した第1レジストまたは第2レジストのうち消去光を透過し読取光を遮光する複数の読取光遮光膜として機能するレジスト上に第2線状電極を積層し、積層した複数の第1線状電極および複数の第2線状電極上に読取光の照射により電荷を発生する読取用光導電層を積層することを特徴とするものである。
【0012】
ここで、第1レジスト上もしくは第2レジスト上の領域に第1線状電極もしくは第2線状電極が積層されていればよく、第1レジスト上もしくは第2レジスト上に直接第1線状電極もしくは第2線状電極が直接積層されているものであってもよいし、平坦化層等を介して積層されているものであってもよい。また、各レジスト上の領域とは第2線状電極が形成されている領域のすべてを含む領域をいい、各レジストの幅は各線状電極の幅と略同一であってもよいし、各線状電極の幅よりも広く形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の放射線画像検出装置によれば、放射線画像情報を担持した電磁波の照射により発生した電荷を蓄積する電荷蓄電部と、読取光の照射により電荷対を発生する読取用光導電層と、読取用光導電層に読取光が照射されたときに電荷蓄電部に蓄積された放射線画像を信号電荷として読取る、ストライプ状に配列された複数の第1線状電極と、消去光が照射されたとき電荷蓄電部または光導電層に残存する残存電荷を放電する、複数の第1線状電極の間にストライプ状に配列された複数の第2線状電極と、各第1線状電極上にそれぞれ設けられた、読取光を透過し消去光を遮光する複数の消去光遮光膜と、各第2線状電極上にそれぞれ設けられた、消去光を透過し読取光を遮光する複数の読取光遮光膜とを備え、複数の消去光遮光膜と複数の読取光遮光膜とが交互に隙間なく連続するように配列されていることにより、消去光遮光膜上の領域にある読取用光導電層には消去光は照射されないため、消去光の大量照射による光疲労現象が生じるのを防止することができ、次に記録される放射線画像の読取感度の劣化を防止することができる。
【0014】
特に、消去光遮光膜と読取光遮光膜とが交互に隙間なく連続するように配列されていることにより、消去光遮光膜と読取光遮光膜との隙間から読取光と消去光との双方が読取用光導電層に入射されることがないため、暗電流の増加を防止し画質の劣化を防止することができる。
【0015】
なお、消去光遮光膜の幅が前記第1線状電極の幅よりも広く形成されており、読取光遮光膜の幅が前記第2線状電極の幅よりも広く形成されている構成であれば、第1線状電極もしくは第2線状電極を積層するときに、マスクずれによる位置ずれが生じた場合であっても、確実に第1線状電極を消去光遮光膜上に配置し、第2線状電極を読取光遮光膜上に配置することができる。
【0016】
本発明の放射線画像検出装置の製造方法によれば、基板上に複数の線状の第1レジストをストライプ状に積層し、複数の第1レジストをマスクとして用いて該複数の第1レジストの間に複数の線状の第2レジストをストライプ状に積層することにより、複数の第1レジストと複数の第2レジストとを交互に隙間なく連続するように配列し、積層した第1レジストまたは第2レジストのうち読取光を透過し消去光を遮光する消去光遮光膜として機能するレジスト上に、読取光が照射されたときに電荷蓄電部に蓄積された放射線画像を信号電荷として読取る第1線状電極を積層するとともに、積層した第1レジストまたは第2レジストのうち消去光を透過し読取光を遮光する複数の読取光遮光膜として機能するレジスト上に、消去光が照射されたとき電荷蓄電部または読取用光導電層に残存する残存電荷を除去する第2線状電極を積層し、積層した複数の第1線状電極および複数の第2線状電極上に読取光の照射により電荷を発生する読取用光導電層を積層することにより、交互に隙間なく連続するように消去光遮光膜と読取光遮光膜とを形成するときに第1レジスト上に第2レジストが積層されてしまうのを防止して消去光遮光膜と読取光遮光膜とにより形成される平面を平坦にすることができるため、その上に第1線状電極および第2線状電極を積層することができ、各線状電極の凹凸による画質の劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の放射線画像検出装置の一実施形態について説明する。図1は本発明の放射線画像検出装置の好ましい実施の形態を示す斜視図、図2は図1に示す放射線画像検出装置のII−II線断面図である。この放射線画像検出装置1は読取光を照射することにより記録された放射線画像を読取るいわゆる光読み出し方式の固体検出器であって、平板電極2、記録用光導電層3、電荷輸送層4、読取用光導電層5、第1線状電極6、第2線状電極7、消去光遮光膜8、読取光遮光膜9等を備えている。なお、放射線画像検出装置1は光透過性を有する基板(たとえばガラス基板)上に消去光遮光膜8、読取光遮光膜9を形成し、その上に平坦化層10を介して第1線状電極6および第2線状電極7を積層し、さらに読取用光導電層5、平板電極2、電荷輸送層4、記録用光導電層3を順に積層した構造を有している。なお、図1および図2において基板は図示せず省略している。
【0018】
平板電極2は、放射線画像情報を記録する際に負の電荷が帯電されるものであって、平板状に形成されている。平板電極2は放射線を透過する材料からなっており、たとえばネサ皮膜(SnO2)、ITO(Indium Tin Oxide)、アモルファス状光透過性酸化膜であるIDIXO(Idemitsu Indium X-metal Oxide ;出光興産(株))等の材料を用いて50〜200nmに成膜し、あるいはAlやAuなどを100nmに成膜することにより形成されている。
【0019】
記録用光導電層3は、放射線の照射を受けることにより電荷対を発生するものであって、たとえば放射線に対して比較的量子効率が高く、また暗抵抗が高いなどの点で優れているa−Seを主成分とするものを500μm程度に成膜することにより形成されている。
【0020】
電荷輸送層4は、記録用光導電層3において発生した電荷のうち一方の極性の電荷に対しては絶縁体として作用し、且つ他方の極性の電荷に対しては導電体として作用するようになっている。電荷輸送層4は、たとえば放射線画像の記録の際に平板電極2に帯電する電荷の移動度とその逆極性となる電荷の移動度との差が大きい(例えば10以上、望ましくは10以上)からなっており、たとえばポリN−ビニルカルバゾール(PVK)、N,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1'−ビフェニル〕−4,4'−ジアミン(TPD)やディスコティック液晶等の有機系化合物、或いはTPDのポリマー(ポリカーボネート、ポリスチレン、PVK)分散物,Clを10〜200ppmドープしたa−Se等の半導体物質により形成されている。
【0021】
読取用光導電層5は読取光L1または消去光L2の照射を受けることにより電荷対を発生するものであって、たとえばa−Se、Se−Te、Se−As−Te、無金属フタロシアニン、金属フタロシアニン、MgPc(Magnesium phtalocyanine),VoPc(phaseII of Vanadyl phthalocyanine)、CuPc(Cupper phtalocyanine)などのうち少なくとも1つを主成分とする光導電性物質を用いて0.1〜1μm程度に成膜されることにより形成されている。
【0022】
複数の第1線状電極6は放射線画像検出装置1に読取光L1が照射されたとき、放射線画像検出装置1に記録されている画像情報を信号電荷として読取るものであって、ストライプ状に配列されている。各第1線状電極6は読取光L1を透過する材料からなっており、たとえばネサ皮膜(SnO2)、ITO(Indium Tin Oxide)、アモルファス状光透過性酸化膜であるIDIXO(Idemitsu Indium X-metal Oxide ;出光興産(株))などを50〜200nm厚に形成したもの、もしくはAlやAuなどを10nm厚に形成したもののような、読取光L1および消去光L2を透過する材料からなっている。
【0023】
複数の第2線状電極7は、複数の第1線状電極6の間にストライプ状に配列されており、消去光L2を透過する材料からなっている。具体的には、複数の第2線状電極7は第1線状電極6と同様に読取光L1および消去光L2を透過するITOやIDIXO等からなっている。また、複数の第2線状電極7は、消去光L2が照射されたときには接地されているようになっており、電荷蓄電部11または読取用光導電層5に残存する残存電荷を放電するようになっている。なお、複数の第2線状電極7は放射線画像検出装置1に放射線画像情報を記録するときには正の電荷が帯電され、放射線画像検出装置1に読取光L1が照射されるときには接地されるようになっている。
【0024】
消去光遮光膜8は透明なアクリル樹脂等からなる平坦化層10を介して第1線状電極6上に設けられており、読取光L1を透過し消去光L2を遮光する機能を有している。また、読取光遮光膜9は平坦化層10を介して第2線状電極7上に設けられており、消去光L2を透過し読取光L1を遮光する機能を有している。具体的には、たとえば読取光L1が400nm〜480nmの青色光からなり、消去光L2が580nm〜700nmの赤色光からなっている場合、消去光遮光膜8は青色光(読取光)を透過し赤色光(消去光)を遮光する青レジストを用いて形成されており、読取光遮光膜9は青色光(読取光)を遮光し赤色光(消去光)を透過する赤レジストを用いて形成されている。よって、消去光遮光膜8上の領域にある読取用光導電層5には読取光L1のみが照射され、読取光遮光膜9上の領域にある読取用光導電層5には消去光L2のみが照射されることになる。
【0025】
また、消去光遮光膜8と読取光遮光膜9とは交互に隙間なく連続するように配列されている。したがって、第1線状電極6と第2線状電極7との間にある隙間領域のうち、消去光遮光膜8上の領域にある読取用光導電層5には読取光L1のみが照射され、読取光遮光膜9上の領域にある読取用光導電層5には消去光L2のみが照射される。
【0026】
さらに、消去光遮光膜8の幅Wxは第1線状電極6の幅Waよりも広く形成されているとともに、読取光遮光膜9の幅Wyは第2線状電極7の幅Wbよりも広く形成されている。よって、第1線状電極6の両端近傍の読取用光導電層5において消去光L2が遮光されるようになっている。同様に、第2線状電極7の両端部付近の読取用光導電層5において読取光L1が遮光されるようになっている。
【0027】
図3から図5は放射線画像検出装置に放射線画像を記録・再生する様子を示す模式図であり、図1から図5を参照して放射線画像検出装置の動作例について説明する。まず、図3(A)に示すように、高電圧源20により平板電極2と複数の第1線状電極6および複数の第2線状電極7との間に高電圧が印加される。この状態において放射線源から被写体に向けて放射線が照射される。
【0028】
すると、被写体を透過した放射線が平板電極2側から照射され、平板電極2を透過して記録用光導電層3に照射される。放射線の照射により記録用光導電層3において電荷対が発生し、図3(B)に示すように、そのうち正の電荷は平板電極2に帯電した負の電荷と結合して消滅し、負の電荷は潜像電荷として記録用光導電層3と電荷輸送層4との界面に形成される電荷蓄電部11に蓄積されて放射線画像が記録される。
【0029】
次に、図4を参照して記録された放射線画像の読取について説明する。まず平板電極2および第2線状電極7が接地され、第1線状電極6がチャージアンプ30に電気的に接続される。この状態において、読取光L1が第1線状電極6および第2線状電極7側から読取用光導電層5に照射される。ここで、読取光L1は消去光遮光膜では透過し読取光遮光膜では遮光されるため、消去光遮光膜8上の読取用光導電層5において電荷対が発生する。そして、読取用光導電層5において発生した電荷対のうち正の電荷は電荷蓄電部11における潜像電荷と結合し、負の電荷は第1線状電極6に帯電した正の電荷と結合する。この結合によりチャージアンプ30に電流が流れ、この電流が積分されて画像信号として検出される。
【0030】
このように、読取光遮光膜9を設けることにより第2線状電極7上の領域において電荷対が発生せず、電荷蓄電部11に蓄積された信号電荷が第2線状電極7から放電されるのを低減することができるため、画質の劣化を防止することができる。特に、読取光遮光膜9の幅Wbが第2線状電極7の幅Wyよりも広く形成されているため、第2線状電極7の両端部付近において読取光L1の照射による電荷対の発生を防止することができ、電荷蓄電部11に蓄積された信号電荷が第2線状電極7から放電されるのを確実に低減することができる。
【0031】
放射線画像の読取りが終わった後、放射線画像検出装置1の電荷蓄電部11や読取用光導電層5と第2線状電極7との界面に残留した残留電荷を消去するため、消去光L2が第1線状電極6および第2線状電極7側から読取用光導電層5に照射される。このとき、第2線状電極7は接地された状態になっている。すると、消去光L2は消去光遮光膜8において遮光され読取光遮光膜9を透過し、読取光遮光膜9上の読取用光導電層5において電荷対が発生する。電荷対のうち正の電荷は残留電荷と結合して消滅し、負の電荷は第2線状電極7に帯電した正の電荷と結合する。このように、消去光遮光膜8上の領域にある読取用光導電層5には消去光L2が照射されないため、第1線状電極6近傍の読取用光導電層5において、消去光L2の大量照射による光疲労現象が生じるのを防止することができ、次に記録される放射線画像の読取感度の劣化を防止することができる。
【0032】
特に、消去光遮光膜8と読取光遮光膜9とが交互に隙間なく連続して配列されているため、第1線状電極6と第2線状電極7との間の領域から読取用光導電層5に消去光L2が入射されるのを防止し、第1線状電極6近傍にある読取用光導電層5に読取光L1および消去光L2の双方が照射されることによる光劣化現象の発生を低減することができる。また、第1線状電極6と第2線状電極7との間の領域から読取用光導電層5に読取光L1が入射されるのを防止し、第2線状電極7近傍にある領域に読取光L1が照射されることによる第2線状電極7からの信号電荷の放電を抑え、画質の劣化を防止することができる。
【0033】
図6は本発明の放射線画像検出装置の製造方法の好ましい実施の形態を示す工程図であり、図1から図6を参照して放射線画像検出装置の製造方法について説明する。まず、図6(A)に示すように、ガラス等からなる基板10a上に青レジストからなる第1レジストが塗布される。その後、第1レジストがストライプ状のパターンになるように露光によるパターニングが行われ、図6(B)に示すように基板10a上にストライプ状の第1レジストパターンが形成される。
【0034】
次に、図6(C)に示すように、第1レジストパターンが形成された基板10a上に赤レジストからなる第2レジストが塗布されプリベーグされ、さらに基板裏面から一様露光が行われる。この背面露光が行われたときに、第1レジストパターンは第2レジストパターンを形成するためのマスクとなり、第1レジストパターンの間に隙間なく第2レジストパターンが形成されることになる。そして、第2レジストに対してポストベーグが行われる。その後、第1レジストおよび第2レジスト上に、たとえば透明なアクリル樹脂等からなる平坦化層10が積層される。
【0035】
その後、図6(D)に示すように、第1レジストおよび第2レジスト上に平坦化層10を介して第1線状電極6および第2線状電極7が積層される。具体的には、上述のように第1レジストが消去光遮光膜8として機能し、第2レジストが読取光遮光膜9として機能するとき、第1レジスト(消去光遮光膜8)上の領域に平坦化層10を介して第1線状電極6が形成され、第2レジスト(読取光遮光膜8)上の領域に平坦化層10を介して第2線状電極7が積層される。そして、この第1線状電極6および第2線状電極7上に読取用光導電層5、電荷輸送層4、記録用光導電層3、平板電極2を順に積層していくことにより放射線画像検出装置1が作製されることになる(図1、図2参照)。
【0036】
このように、第2レジストをパターニングするとき、すでに基板10a上に形成されている第1レジストをマスクとして背面露光することにより、第2レジストをパターニングするときにマスクずれによって生じていた各遮光膜8、9同士の重なりによる盛り上がりが発生するのを防止して消去光遮光膜8および読取光遮光膜9により形成される平面を平坦に形成しやすくなる。このため、消去光遮光膜8上および読取光遮光膜9上に形成される第1線状電極6および第2線状電極7も平坦性を維持しやすくなり、各線状電極5、6の凹凸による画像欠陥の発生を低減することができる。
【0037】
上記実施の形態によれば、複数の消去光遮光膜8と複数の読取光遮光膜9とが交互に隙間なく連続するように配列されていることにより、消去光遮光膜8上の領域にある読取用光導電層には消去光は照射されないため、消去光の大量照射による光疲労現象が生じるのを防止することができ、次に記録される放射線画像の読取感度の劣化を防止することができる。
【0038】
特に、図2に示すように、消去光遮光膜8と読取光遮光膜9とが交互に隙間なく連続するように配列されていることにより、消去光遮光膜8と読取光遮光膜9との隙間から読取光と消去光との双方が読取用光導電層5に入射されることがないため、暗電流の増加を防止し画質の劣化を防止することができる。
【0039】
また、消去光遮光膜8の幅Wxが第1線状電極6の幅Waよりも広く形成されており、読取光遮光膜9の幅Wyが第2線状電極7の幅Wbよりも広く形成されている構成であれば、第1線状電極6もしくは第2線状電極7を積層するときに、マスクずれによる位置ずれが生じた場合であっても、確実に第1線状電極6を消去光遮光膜8上に配置し、第2線状電極7を読取光遮光膜9上に配置することができる。
【0040】
さらに、図6に示すように、基板10a上に複数の線状の第1レジストをストライプ状に積層し、複数の第1レジストをマスクとして用いて複数の第1レジストの間に複数の線状の第2レジストをストライプ状に積層することにより、複数の第1レジストと複数の第2レジストとを交互に隙間なく連続するように配列し、積層した第1レジストまたは第2レジストのうち読取光L1を透過し消去光L2を遮光する消去光遮光膜8として機能するレジスト上に、読取光L1が照射されたときに電荷蓄電部11に蓄積された放射線画像を信号電荷として読取る第1線状電極を積層するとともに、積層した第1レジストまたは第2レジストのうち消去光L2を透過し読取光L1を遮光する複数の読取光遮光膜9として機能するレジスト上に、消去光L2が照射されたとき電荷蓄電部11または読取用光導電層5に残存する残存電荷を除去する第2線状電極7を積層し、積層した複数の第1線状電極6および複数の第2線状電極7上に読取光L1の照射により電荷を発生する読取用光導電層5を積層することにより、交互に隙間なく連続するように配列された消去光遮光膜8と読取光遮光膜9とを自己整合により形成し、第1レジスト上に第2レジストが積層されてしまうのを防止することができるため、消去光遮光膜8と読取光遮光膜9とを平坦にし、その上に第1線状電極および第2線状電極を積層することができ、画質の劣化を防止することができる。
【0041】
本発明の実施の形態は上記実施の形態に限定されない。たとえば、図6において、最初に基板10aに形成される第1レジストが読取光遮光膜8となり第2レジストパターンが消去光遮光膜9となる場合について例示しているが、第1レジストパターンが消去光遮光膜9となり第2レジストが読取光遮光膜8となってもよい。この場合、第1レジスト上には第2線状電極7が形成され、第2レジストパターン上には第1線状電極6が形成されることになる。
【0042】
また、たとえば、放射線の照射を受けてその放射線を直接電荷に変換することにより放射線画像の記録を行う、いわゆる直接変換方式の放射斜線画像検出器に本発明を適用したものであるが、これに限らず、たとえば、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷に変換することにより放射線画像の記録を行う、いわゆる間接変換方式の放射線画像検出装置に本発明を適用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の放射線画像検出装置の一実施形態を示す概略構成図
【図2】図1に示す放射線画像検出装置のII−II線断面図
【図3】図1に示す放射線画像検出装置へ放射線画像を記録する様子を示す模式図
【図4】図1に示す放射線画像検出装置から放射線画像の読取る様子を示す模式図
【図5】図1に示す放射線画像検出装置の残留電荷を消去する様子を示す模式図
【図6】本発明の放射線画像検出装置の製造方法の好ましい実施の形態を示す工程図
【符号の説明】
【0044】
1 放射線画像検出装置
2 平板電極
3 記録用光導電層
4 電荷輸送層
5 読取用光導電層
6 第1線状電極
7 第2線状電極
8 消去光遮光膜
9 読取光遮光膜
11 電荷蓄電部
L1 読取光
L2 消去光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線画像情報を担持した電磁波の照射により発生した電荷を蓄積する電荷蓄電部と、
読取光の照射により電荷対を発生する読取用光導電層と、
該読取用光導電層に前記読取光が照射されたときに前記電荷蓄電部に蓄積された前記放射線画像を信号電荷として読取る、ストライプ状に配列された複数の第1線状電極と、
消去光が照射されたとき前記電荷蓄電部または前記読取用光導電層に残存する残存電荷を放電する、前記複数の第1線状電極の間にストライプ状に配列された複数の第2線状電極と、
前記各第1線状電極上にそれぞれ設けられた、前記読取光を透過し前記消去光を遮光する複数の消去光遮光膜と、
前記各第2線状電極上にそれぞれ設けられた、前記消去光を透過し前記読取光を遮光する複数の読取光遮光膜と
を備え、
前記複数の消去光遮光膜と前記複数の読取光遮光膜とが交互に隙間なく連続するように配列されていることを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項2】
前記消去光遮光膜の幅が前記第1線状電極の幅よりも広く形成されており、前記読取光遮光膜の幅が前記第2線状電極の幅よりも広く形成されていることを特徴とする請求項1記載の放射線画像検出装置。
【請求項3】
放射線画像情報を担持した電磁波の照射により発生した電荷を蓄積する電荷蓄電部と、読取光の照射により電荷対を発生する読取用光導電層と、該読取用光導電層に前記読取光が照射されたときに前記電荷蓄電部に蓄積された前記放射線画像を信号電荷として読取る、ストライプ状に配列された複数の第1線状電極と、消去光が照射されたとき前記電荷蓄電部または前記読取用光導電層に残存する残存電荷を放電する、前記複数の第1線状電極の間にストライプ状に配列された複数の第2線状電極とを備えた放射線画像検出装置の製造方法において、
基板上に複数の線状の第1レジストをストライプ状に積層し、
該複数の第1レジストをマスクとして用いて該複数の第1レジストの間に複数の線状の第2レジストをストライプ状に積層することにより、前記複数の第1レジストと前記複数の第2レジストとを交互に隙間なく連続するように配列し、
積層した前記第1レジストまたは前記第2レジストのうち読取光を透過し消去光を遮光する消去光遮光膜として機能するレジスト上に前記第1線状電極をそれぞれ積層するとともに、積層した前記第1レジストまたは前記第2レジストのうち前記消去光を透過し前記読取光を遮光する複数の読取光遮光膜として機能するレジスト上に前記第2線状電極をそれぞれ積層し、
積層した複数の前記第1線状電極および複数の前記第2線状電極上に読取光の照射により電荷を発生する読取用光導電層を積層する
ことを特徴とする放射線画像検出装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−47751(P2008−47751A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223053(P2006−223053)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】