説明

放電灯制御装置

【課題】耐熱性の高い部品を使用することなく、熱環境に対する信頼性を確保する。
【解決手段】放電灯の周辺の日射量を検出する日射センサ50からの信号に基づいて日射量を特定し(S106)、日射量が大きい場合、日射量が小さい場合よりも放電灯の光量を小さくするように放電灯の点灯制御を行う(S200、S108、S110、S112)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯の点灯制御を行う放電灯制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される放電灯を制御する放電灯装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−59688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されたような放電灯装置では、放電灯と放電灯制御装置とが別々に配置され、互いに発熱の影響を受けにくい構成となっている。しかし、近年、自動車部品の小型化、低コスト化に伴い、放電灯と放電灯制御装置を一体化するというニーズが高まっている。このように、放電灯と放電灯制御装置を一体化しようとした場合、放電灯制御装置と放電灯の熱環境が大きく悪化するため、放電灯の寿命が短くなり信頼性が低下してしまうという問題が生じる。また、熱環境の悪化に対処するため耐熱性の高い部品を使用すると、かえってコストが高くなってしまうといった問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みたもので、耐熱性の高い部品を使用することなく、熱環境に対する信頼性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、放電灯の点灯制御を行う放電灯制御装置であって、放電灯の周辺の日射量を検出する日射量検出手段からの信号に基づいて日射量を特定する日射量特定手段と、日射量特定手段により特定された日射量が大きい場合、日射量が小さい場合よりも放電灯の光量を小さくするように放電灯の点灯制御を行う放電灯制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
このような構成によれば、放電灯の周辺の日射量を検出する日射量検出手段からの信号に基づいて日射量を特定し、日射量が大きい場合、日射量が小さい場合よりも放電灯の光量を小さくするように放電灯の点灯制御が行われるので、耐熱性の高い部品を使用することなく、熱環境に対する信頼性を確保することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、放電灯制御手段は、日射量特定手段により特定された日射量が予め定められた閾値未満の場合には、放電灯の光量が第1の光量となるように放電灯を点灯制御し、日射量特定手段により特定された日射量が予め定められた閾値以上の場合には、放電灯の光量が第1の光量よりも小さい第2の光量となるように放電灯を点灯制御することを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、日射量が予め定められた閾値未満の場合には、放電灯の光量が第1の光量となるように放電灯が点灯制御されるので、第1の光量を確保することができ、日射量が予め定められた閾値以上の場合には、放電灯の光量が第1の光量よりも小さい第2の光量となるように放電灯が点灯制御されるので、放電灯の点灯による発熱が抑制され、耐熱性の高い部品を使用することなく、熱環境に対する信頼性を確保することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、放電灯制御手段は、日射量特定手段により特定された日射量が第1の日射量未満の場合には、放電灯の光量が第1の光量となるように放電灯を点灯制御し、日射量特定手段により特定された日射量が第1の日射量よりも大きな第2の日射量以上の場合には、放電灯の光量が第1の光量よりも小さい第2の光量となるように放電灯を点灯制御し、日射量特定手段により特定された日射量が第1の日射量以上で、かつ、第2の日射量未満の場合には、日射量特定手段により特定された日射量が大きくなるにつれて放電灯の光量が第1の光量から第2の光量に徐々に変化するように放電灯を点灯制御することを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、日射量が第1の日射量未満の場合には、放電灯の光量が第1の光量となるように放電灯が点灯制御されるので、第1の光量を確保することができ、日射量が第1の日射量よりも大きな第2の日射量以上の場合には、放電灯の光量が第1の光量よりも小さい第2の光量となるように放電灯が点灯制御されるので、放電灯の点灯による発熱が抑制され、耐熱性の高い部品を使用することなく、熱環境に対する信頼性を確保することができる。また、日射量が第1の日射量以上で、かつ、第2の日射量未満の場合には、日射量特定手段により特定された日射量が大きくなるにつれて放電灯の光量が第1の光量から第2の光量に徐々に変化するように放電灯が点灯制御されるので、放電灯の光量が急激に変化するようなことを防止することができる。
【0012】
ところで、車両の前照灯は、特に、日射のある昼間は、熱環境の厳しい状況におかれる。また、車両の前照灯の光量は法令、法規により定められており、日射のある昼間は、夜間ほどの光量は必要とされない。
【0013】
したがって、請求項4に記載の発明のように、放電灯を、車両の前照灯として用いることで、車両の前照灯についての法令、法規に定められた光量を遵守しつつ、熱環境に対する信頼性を確保することが可能である。
【0014】
また、日射量検出手段としては、請求項5に記載の発明のように、日射量に応じた信号を出力する日射センサを用いてもよく、また、請求項6に記載の発明のように、放電灯を含む画像を撮影する画像センサを用いて、画像センサにより撮影された画像から放電灯が受ける日射量を特定するようにしてもよい。
【0015】
また、請求項7に記載の発明のように、放電灯と一体化した構造とすることにより、小型化を図りつつ、熱環境に対する信頼性を確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る放電灯制御装置の回路構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る放電灯制御装置の制御回路の制御部のフローチャートである。
【図3】第1実施形態に係る放電灯制御装置の制御回路の制御部のフローチャートである。
【図4】日射量と光出力の関係について説明するための図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る放電灯制御装置の回路構成を示す図である。
【図6】第1実施形態に係る放電灯制御装置の制御回路の制御部のフローチャートである。
【図7】日射量と光出力の関係について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る放電灯制御装置の回路構成を図1に示す。本放電灯制御装置1は、車両に搭載され、車両の前照灯に用いられた放電灯25の点灯制御を行う。なお、放電灯25は、キセノンガス、水銀、ヨウ化金属などを封入したバルブ内の電極間の放電で発光するものである。
【0018】
本放電灯制御装置1は、DC/DCコンバータ10、放電灯駆動回路20および制御回路30を備えている。本放電灯制御装置1は、放電灯25を格納した樹脂製またはガラス製のケース(図示せず)の裏側に配置され、当該ケースおよび放電灯25と一体化した構造となっている。
【0019】
DC/DCコンバータ10は、入力端子10a、10bを有しており、入力端子10aには、ケーブルを介して車両バッテリ(図示せず)の正極端子が接続され、入力端子10bには、ケーブルを介して車両バッテリの負極端子が接続されている。入力端子10a、10bには、車両バッテリより直流の定電圧(例えば、12ボルト)が印加されるようになっている。
【0020】
DC/DCコンバータ10は、入力端子10a、10b間に印加される電圧を昇圧した高電圧(例えば、40ボルト)を放電灯駆動回路20へ供給する。DC/DCコンバータ10は、入力端子10a、10b間に設けられた平滑用のコンデンサ11と、入力端子10aに接続された一次巻線13aとダイオード14のアノードに接続された二次巻線13bを有するフライバックトランス13と、一次巻線13aと二次巻線13bとの接続点と入力端子10b間に設けられたNPN形MOSトランジスタ15と、ダイオード14のカソードと入力端子10b間に設けられたコンデンサ12を備えている。
【0021】
制御回路30から入力されるスイッチング信号によりトランジスタ15をスイッチング制御することにより、車両バッテリからの直流電圧を昇圧した高電圧が出力される。すなわち、制御回路30から入力されるスイッチング信号によりトランジスタ15がオンすると、一次巻線13aに一次電流が流れて一次巻線13aにエネルギーが蓄えられ、トランジスタ15がオフすると、一次巻線13aに蓄えられていたエネルギーが二次巻線13bに供給され、コンデンサ12が充電される。このような動作を繰り返すことにより、ダイオード14とコンデンサ12の接続点Mから昇圧された高電圧が出力されるようになっている。なお、スイッチング信号のデューティー比を高くすると、ダイオード14とコンデンサ12の接続点Mから出力される電圧は上昇し、スイッチング信号のデューティー比を低くすると、ダイオード14とコンデンサ12の接続点Mから出力される電圧は低下する。なお、図1に示すように、フライバックトランス13は、一次巻線13aと二次巻線13bとが電気的に導通するように構成されている。
【0022】
本実施形態におけるDC/DCコンバータ10は、放電灯駆動回路20に一定電力(例えば、25ボルト)を供給するように用いられる。具体的には、放電灯駆動回路20の消費電力が制御回路30で算出された目標電力に近づくように、トランジスタ15がスイッチング制御され、放電灯駆動回路20に一定電力が供給されるようになっている。この制御については後で詳細に説明する。
【0023】
放電灯駆動回路20は、Hブリッジ状に配置されたIGBT21a〜21d(以下、トランジスタ21a〜21dと記す)と、トランジスタ21a〜21dを駆動する駆動IC22a、22bと、始動時に放電灯25内の電極間に高電圧を発生させる始動回路23と、一次巻線24aと二次巻線24bを有するフライバックトランス24と、放電灯25および抵抗26を備えている。
【0024】
駆動IC22a、22bは、制御回路30から入力される信号に応じてトランジスタ21aとトランジスタ21dの組と、トランジスタ21cとトランジスタ21bの組を交互にオンまたはオフさせる。トランジスタ21aとトランジスタ21dがともにオンして、トランジスタ21cとトランジスタ21bとがともにオフすると、トランジスタ21aからフライバックトランス24の一次巻線24a、放電灯25を介してトランジスタ21dへ電流が流れ、反対に、トランジスタ21cとトランジスタ21bとがともにオンして、トランジスタ21aとトランジスタ21dがともにオフすると、トランジスタ21cから放電灯25、フライバックトランス24の一次巻線24aを介してトランジスタ21bへと電流が流れる。このように、放電灯25内でアーク放電させる方向を周期的に交互に切り替えるようにして、片側の電極だけが摩耗してしまうことを防止している。
【0025】
始動回路23は、始動時に制御回路30から入力される信号に応じて放電灯25内の電極間に高電圧(例えば、10〜20キロボルト)を発生させる回路である。なお、この始動回路26の回路構成および作動については、例えば、特開2003−59688号公報に記載されているように周知技術であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0026】
抵抗26は、放電灯25に流れる電流を検出するために設けられている。すなわち、抵抗26には放電灯25に流れる電流と同じ電流Iが流れるように構成されており、抵抗26の両端間の電圧は、放電灯25に流れる電流Iに比例した値となる。
【0027】
制御回路30は、ランプ電圧検出部31、ランプ電流検出部32、ブリッジ制御部33および制御部34を備えている。
【0028】
ランプ電圧検出部31は、DC/DCコンバータ10の出力電圧に応じた電圧を出力するオペアンプを有し、DC/DCコンバータ10の出力電圧に応じた電圧を制御部34へ出力する。
【0029】
ランプ電流検出部32は、放電灯駆動回路20の抵抗26の端子間電圧に応じた電圧を出力するオペアンプを有し、抵抗26の端子間電圧に応じた電圧、すなわち、放電灯25に流れる電流に応じた電圧を制御部34へ出力する。
【0030】
ブリッジ制御部33は、制御部34より出力される制御信号に基づく信号を駆動IC22a、22bへ出力する。
【0031】
制御部34は、CPU、メモリ、I/O灯を備えたコンピュータとして構成されており、CPUはメモリに記憶されたプログラムに従って各種処理を実施する。
【0032】
制御部34には、車両が受ける日射量を検出する日射センサ50の出力信号が入力されるボデーECU60が接続されている。本実施形態では、この日射センサ50を用いて放電灯25の周辺の日射量を検出するようにしている。
【0033】
ボデーECU60は、日射センサ50の出力信号に基づいて車両が受ける日射量が予め定められた閾値以上か否かを判定する日射検出回路を有しており、この日射検出回路から車両が受ける日射量が予め定められた閾値以上か否かを表す信号を出力する。
【0034】
上記した構成において、運転者による前照灯の点灯スイッチ(図示せず)がオンすると、制御部34からのスイッチング信号によりDC/DCコンバータ10のトランジスタ15がPWM制御され、フライバックトランス13の作動によって、バッテリ電圧を昇圧した高電圧がDC/DCコンバータ10から出力される。このDC/DCコンバータ10から出力された高電圧は放電灯駆動回路20に印加される。
【0035】
一方、運転者による前照灯の点灯スイッチ(図示せず)に対する操作に応じて、制御部34から始動回路23へ始動を指示する信号が入力されると、始動回路23は、この信号に応じて放電灯25内の電極間に高電圧(例えば、10〜20kV)を発生させる。これにより、放電灯25内の電極間で絶縁破壊が生じ、グロー放電が行われ、放電灯25が点灯を開始する。
【0036】
なお、放電灯25が点灯を開始した後、駆動IC22a、22bにより、トランジスタ21aとトランジスタ21dの組と、トランジスタ21cとトランジスタ21bの組とが交互にオンまたはオフするように切り替えられ、放電灯25に印加される電圧の極性が交互に反転し、放電灯25は点灯を継続する。
【0037】
本実施形態において、制御部34は、ボデーECU60を介して入力される信号に基づいて放電灯25が受ける日射量を特定し、放電灯25が受ける日射量が大きい場合、放電灯25が受ける日射量が小さい場合よりも放電灯25の光量を小さくするように放電灯25の点灯制御を行う。
【0038】
図2に、この制御部34による放電灯25の点灯制御のフローチャートを示す。運転者による前照灯の点灯スイッチ(図示せず)がオンすると、始動回路23の作動により放電灯25が点灯を開始し、制御部34は、図2に示す処理を開始する。
【0039】
まず、ランプ電圧を検出する(S100)。具体的には、ランプ電圧検出部31より出力される電圧から放電灯25に印加されているランプ電圧を特定する。なお、ランプ電圧検出部31より出力される電圧には、フライバックトランス24の一次巻線24aおよびトランジスタ21a〜2dによる電圧低下分が含まれるため、ランプ電圧検出部31より出力される電圧からフライバックトランス24の一次巻線24aおよびトランジスタ21a〜2dによる電圧低下分を引いた値をランプ電圧として特定する。
【0040】
次に、ランプ電流を検出する(S102)。具体的には、ランプ電流検出部32より出力される電圧から放電灯25に流れるランプ電流を特定する。
【0041】
次に、ランプ電力を算出する(S104)。放電灯25で消費されているランプ電力は、S100にて特定されたランプ電流とS102にて特定されたランプ電流を乗算することで求めることができる。
【0042】
次に、放電灯25が受ける日射量を特定する(S106)。本実施形態では、
車両が受ける日射量を放電灯25が受ける日射量として放電灯25が受ける日射量を特定する。具体的には、ボデーECU60より入力される車両が受ける日射量が予め定められた閾値以上か否かを表す信号に基づいて放電灯25が受けている日射量が予め定められた閾値以上か否かを判定する。
【0043】
次に、目標電力算出処理を行う(S200)。図3に、本実施形態に係る目標電力算出処理のフローチャートを示す。この目標電力算出処理では、まず、日射量が予め定められた閾値S0以上であるか否かを判定する。
【0044】
ここで、日射量が予め定められた閾値S0未満である場合、目標電力を25ワット(W)として特定する(S212)。本実施形態では、目標電力が25ワット(W)の状態を100パーセント(%)とする。例えば、夜間やトンネル内のように日射量が少ない状況では、放電灯25の光量を絞ることなく、目標電力が100パーセント(%)となるように目標電力を特定する。
【0045】
また、日射量が予め定められた閾値S0以上である場合、目標電力を20ワット(W)として特定する(S214)。この場合、目標電力が20ワット(W)であるので、目標電力は80パーセント(%)となる。このように、日射があり、熱環境が厳しい状況では、放電灯25の光量を絞るため、目標電力を100パーセント(%)よりも小さな80パーセント(%)に設定する。
【0046】
図2の説明に戻り、次に、ランプ電力が目標電力よりも大きいか否かを判定する(S108)。
【0047】
ここで、目標電力が100パーセント(%)となっており、ランプ電力が目標電力よりも大きくなると、S108の判定はYESとなり、DC/DCコンバータ10のトランジスタ15を制御するスイッチング信号のデューティー比を小さくする(S112)。これにより、ダイオード14とコンデンサ12の接続点Mから出力される電圧は低下し、放電灯25の電極間に印加される電圧も低下し、放電灯25の光量は減少する。
【0048】
また、目標電力が100パーセント(%)となっており、ランプ電力が目標電力よりも小さくなると、S108の判定はNOとなり、DC/DCコンバータ10のトランジスタ15を制御するスイッチング信号のデューティー比を大きくする(S110)。これにより、ダイオード14とコンデンサ12の接続点Mから出力される電圧は上昇し、放電灯25の電極間に印加される電圧も上昇し、放電灯25の光量は増加する。
【0049】
このようにして、放電灯25で消費されるランプ電力が目標電力と一致するように、DC/DCコンバータ10のトランジスタ15がPWM制御され、放電灯25に一定の電力が与えられ、放電灯25の光量が一定となる。
【0050】
また、夜間やトンネル内のように日射量が少ない状況になり、目標電力が80パーセント(%)として特定され、ランプ電力が目標電力よりも大きくなると、S108の判定はYESとなり、DC/DCコンバータ10のトランジスタ15を制御するスイッチング信号のデューティー比を小さくする(S112)。これにより、ダイオード14とコンデンサ12の接続点Mから出力される電圧は低下し、放電灯25の電極間に印加される電圧も低下し、放電灯25の光量は減少する。
【0051】
また、夜間やトンネル内のように日射量が少ない状況で、目標電力が80パーセント(%)として特定されており、ランプ電力が目標電力よりも小さくなると、S108の判定はNOとなり、DC/DCコンバータ10のトランジスタ15を制御するスイッチング信号のデューティー比を大きくする(S110)。これにより、ダイオード14とコンデンサ12の接続点Mから出力される電圧は上昇し、放電灯25の電極間に印加される電圧も上昇し、放電灯25の光量は増加する。
【0052】
このようにして、放電灯25で消費されるランプ電力が目標電力と一致するように、DC/DCコンバータ10のトランジスタ15がPWM制御され、放電灯25に一定電力が与えられ、放電灯25の光量が一定となる。
【0053】
図4に、日射量に対する日射検出回路の出力レベルと目標電力の関係を示す。(a)は、日射量に対する目標電力を示しており、(b)は、日射量に対する日射検出回路の出力レベルを示している。
【0054】
図4(b)に示すように、日射量が閾値S0未満では、日射検出回路の出力レベルはロー(LO)レベル、日射量が閾値S0以上では、日射検出回路の出力レベルはハイ(HI)レベルとなる。
【0055】
また、図4(a)に示すように、日射量が閾値S0未満では、目標電力は100パーセント(%)となり、日射量が閾値S0以上では、光出力レベルは80パーセント(%)となる。このように放電灯25の光量を絞っても、日射量が閾値S0以上であるため、視認性が低下するといった問題は生じない。
【0056】
上記した構成によれば、放電灯の周辺の日射量を検出する日射量検出手段からの信号に基づいて日射量を特定し、日射量が大きい場合、日射量が小さい場合よりも放電灯の光量を小さくするように放電灯の点灯制御が行われるので、耐熱性の高い部品を使用することなく、熱環境に対する信頼性を確保することができる。
【0057】
また、日射量が予め定められた閾値未満の場合には、放電灯の光量が第1の光量となるように放電灯が点灯制御されるので、第1の光量を確保することができ、日射量が予め定められた閾値以上の場合には、放電灯の光量が第1の光量よりも小さい第2の光量となるように放電灯が点灯制御されるので、放電灯の点灯による発熱が抑制され、耐熱性の高い部品を使用することなく、熱環境に対する信頼性を確保することができる。
【0058】
ところで、車両の前照灯は、特に、日射のある昼間は、熱環境の厳しい状況におかれる。また、車両の前照灯の光量は、道路運送車両法、保安基準等の法令、法規により定められており、日射のある昼間は、夜間ほどの光量は必要とされない。
【0059】
したがって、本実施形態のように、放電灯25を、車両の前照灯として用いることで、車両の前照灯についての法令、法規に定められた光量を遵守しつつ、熱環境に対する信頼性を確保することが可能である。
【0060】
また、本放電灯制御装置1は、放電灯25と一体化した構造となっているので、小型化を図りつつ、熱環境に対する信頼性を確保することが可能である。
【0061】
また、車両に搭載されている日射センサ50を利用して放電灯25の周辺の日射量を検出する構成となっているため、放電灯の周辺の日射量を検出するために新たな日射センサを備える必要がなく経済的である。
【0062】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る放電灯制御装置の回路構成を図5に示す。なお、上記第1実施形態と同一部分については、同一符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分を中心に説明する。図1に示した放電灯制御装置は、制御回路30の外部に日射センサ50および日射検出回路を有するボデーECU60を備えていたが、本実施形態に係る放電灯制御装置では、制御回路30の内部に日射センサ50および日射検出回路70を備えている。
【0063】
また、第1実施形態における日射検出回路は、日射量が閾値S0未満では、日射検出回路の出力レベルはロー(LO)レベル、日射量が閾値S0以上では、日射検出回路の出力レベルはハイ(HI)レベルを出力するように構成されているが、本実施形態における日射検出回路70は、日射量に応じて一定の割合で出力電圧が増加するように構成されている。
【0064】
また、本実施形態における制御部34は、図2に示した放電灯25の点灯制御のフローチャートにおける目標電力算出処理(S200)を、図3に示したフローチャートに従って実施したが、本実施形態における制御部34は、図3に示したフローチャートに代えて、図6に示すフローチャートに従って実施する。
【0065】
運転者による前照灯の点灯スイッチ(図示せず)がオンして、始動回路23の作動により放電灯25が点灯を開始すると、制御部34は、図2に示す処理を開始する。
【0066】
まず、図2に示した放電灯25の点灯制御のフローチャートに従って、ランプ電圧を検出し(S100)、ランプ電流を検出し(S102)、ランプ電力を算出すると(S104)、日射量を特定する(S106)。本実施形態では、日射検出回路70から出力される、日射量に比例する電圧に基づいて日射量を特定する。
【0067】
次に、図6に示す目標電力算出処理(S200)を実施する。この目標電力算出処理(S200)では、まず、S220にて、日射検出値が閾値S2よりも大きいか否かを判定し、S222にて、日射検出値が閾値S1未満か否かを判定する。
【0068】
なお、日射検出回路70における日射検出値と出力電圧の関係は、図7(b)に示すようになっている。また、閾値S1は、閾値S2よりも小さな値となっている。
【0069】
したがって、S220では、日射検出回路70の出力電圧が電圧V2よりも大きいか否かに基づいて日射検出値が閾値S2よりも大きいか否かを判定する。また、S222では、日射検出回路70の出力電圧が電圧V1未満か否かに基づいて日射検出値が閾値S1未満か否かを判定する。
【0070】
ここで、日射検出値が閾値S1未満である場合、S220の判定はNO、S222の判定はYESとなり、目標電力を25ワット(W)として特定する(S230)。本実施形態では、目標電力が25ワット(W)の状態を100パーセント(%)とする。例えば、夜間やトンネル内のように日射量が少ない状況では、放電灯25の光量を絞ることなく、目標電力が100パーセント(%)となるように目標電力を特定する。
【0071】
また、日射検出値が閾値S2よりも大きい場合、S220の判定はYESとなり、目標電力を20ワット(W)として特定する(S232)。この場合、目標電力が20ワット(W)であるので、目標電力は80パーセント(%)となる。このように、日射があり、熱環境の厳しい状況では、放電灯25の光量を絞るため、目標電力を100パーセント(%)よりも小さな80パーセント(%)に設定する。
【0072】
また、日射検出値が閾値S1以上で、かつ、日射検出値が閾値S2未満の場合、日射量が大きくなるにつれて放電灯25の光量が徐々に低下するように、目標電力を100パーセント(%)から80パーセント(%)へと徐々に変化させる。
【0073】
具体的には、日射検出回路70の出力電圧と日射検出値が閾値S1の場合に対応する電圧V1の差分Aを算出する(S224)。
【0074】
次に、この日射検出回路70の出力電圧と日射検出値が閾値S1の場合に対応する電圧V1の差分Aに係数αを乗算した算出値Bを算出する(S226)。図7(a)に、日射検出回路70における日射検出値と目標電力の関係を示す。ここで、係数αは、図7(a)に示される日射量が閾値S1から閾値S2へと大きくなるにつれて目標電力が100パーセント(%)から80パーセント(%)へと一定の割合で低下するような値に設定される。
【0075】
次に、目標電力が100パーセント(%)である25ワット(W)から減算値Bを減算した電力値を目標電力として特定し(S116)、図2のS108へ進む。
【0076】
したがって、日射量が少なく、日射検出値が閾値S1未満の場合、目標電力は100パーセント(%)である25ワット(W)に維持され、放電灯25の光量は100パーセント(%)となる。また、日射量が多く、日射検出値が閾値S2よりも大きい場合、目標電力は80パーセント(%)である20ワット(W)に維持され、放電灯25の光量は80パーセント(%)に絞られる。また、日射検出値が閾値S1以上で、かつ、日射検出値が閾値S2未満の場合、日射量が大きくなるにつれて放電灯25の光量が徐々に低下するように、目標電力は100パーセント(%)から80パーセント(%)へと徐々に変化するため、放電灯25の光量についても100パーセント(%)から80パーセント(%)へと徐々に変化する。
【0077】
上記した構成によれば、日射量が第1の日射量未満の場合には、放電灯の光量が第1の光量となるように放電灯が点灯制御されるので、第1の光量を確保することができ、日射量が第1の日射量よりも大きな第2の日射量以上の場合には、放電灯の光量が第1の光量よりも小さい第2の光量となるように放電灯が点灯制御されるので、放電灯の点灯による発熱が抑制され、耐熱性の高い部品を使用することなく、熱環境に対する信頼性を確保することができる。また、日射量が第1の日射量以上で、かつ、第2の日射量未満の場合には、日射量特定手段により特定された日射量が大きくなるにつれて放電灯の光量が第1の光量から第2の光量に徐々に変化するように放電灯が点灯制御されるので、放電灯の光量が急激に変化するようなことを防止することができる。
【0078】
(その他の実施形態)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。
【0079】
例えば、上記第1、第2実施形態では、日射センサを用いて放電灯25の周辺の日射量を特定したが、このような構成に限定される物ではなく、例えば、放電灯25を含む画像を撮影する画像センサを用いて放電灯25を含む画像を撮影し、画像センサにより撮影された画像から放電灯が受ける日射量を特定するようにしてもよい。
【0080】
また、上記第1実施形態では、1つの閾値で日射量を判定し、日射量のレベルに応じて放電灯の光量を変化させるように放電灯の点灯制御を行い、上記第2実施形態では、異なる2つの閾値で日射量を判定し、日射量のレベルに応じて放電灯の光量を変化させるように放電灯の点灯制御を行ったが、これらの点灯制御に限定されるものではなく、例えば、3つ以上の閾値を設けて日射量を判定し、日射量レベルに応じて放電灯の光量を変化させるように放電灯の点灯制御を行うように構成してもよい。
【0081】
また、上記第1、第2実施形態では、車両の前照灯として用いられる放電灯25の点灯制御を行う例について説明したが、車両の前照灯に用いられる放電灯25の点灯制御を行うものに限定されるものではない。
【0082】
また、上記第1、第2実施形態では、制御部34の処理により、日射量に応じて放電灯25の光量を変化させるような放電灯の点灯制御を実施したが、ハードウェアにより同様の制御を行うようにしてもよい。
【0083】
なお、上記実施形態における構成と特許請求の範囲の構成との対応関係について説明すると、日射センサ50が日射量検出手段に相当し、S106が日射量特定手段に相当し、S200、S108、S110、S112が放電灯制御手段に相当する。
【符号の説明】
【0084】
1 放電灯制御装置
10 DC/DCコンバータ
20 放電灯駆動回路
25 放電灯
30 制御回路
50 日射センサ
60 ボデーECU
70 日射検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電灯の点灯制御を行う放電灯制御装置であって、
前記放電灯の周辺の日射量を検出する日射量検出手段からの信号に基づいて前記日射量を特定する日射量特定手段と、
前記日射量特定手段により特定された前記日射量が大きい場合、前記日射量が小さい場合よりも前記放電灯の光量を小さくするように前記放電灯の点灯制御を行う放電灯制御手段と、を備えたことを特徴とする放電灯制御装置。
【請求項2】
前記放電灯制御手段は、前記日射量特定手段により特定された前記日射量が予め定められた閾値未満の場合には、前記放電灯の光量が第1の光量となるように前記放電灯を点灯制御し、前記日射量特定手段により特定された前記日射量が予め定められた閾値以上の場合には、前記放電灯の光量が第1の光量よりも小さい第2の光量となるように前記放電灯を点灯制御することを特徴とする請求項1に記載の放電灯制御装置。
【請求項3】
前記放電灯制御手段は、前記日射量特定手段により特定された日射量が第1の日射量未満の場合には、前記放電灯の光量が第1の光量となるように前記放電灯を点灯制御し、前記日射量特定手段により特定された日射量が前記第1の日射量よりも大きな第2の日射量以上の場合には、前記放電灯の光量が前記第1の光量よりも小さい第2の光量となるように前記放電灯を点灯制御し、前記日射量特定手段により特定された日射量が前記第1の日射量以上で、かつ、前記第2の日射量未満の場合には、前記日射量特定手段により特定された日射量が大きくなるにつれて前記放電灯の光量が前記第1の光量から前記第2の光量に徐々に変化するように前記放電灯を点灯制御することを特徴とする請求項1に記載の放電灯制御装置。
【請求項4】
前記放電灯は、車両の前照灯として用いられるものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の放電灯制御装置。
【請求項5】
前記日射量検出手段は、日射量に応じた信号を出力する日射センサであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の放電灯制御装置。
【請求項6】
前記日射量検出手段は、前記放電灯を含む画像を撮影する画像センサであり、
前記日射量特定手段は、前記画像センサにより撮影された前記画像から前記放電灯が受ける日射量を特定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の放電灯制御装置。
【請求項7】
前記放電灯と一体化した構造となっていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の放電灯制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−89357(P2013−89357A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226900(P2011−226900)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】