説明

新規な芳香族スルホニウム塩化合物、これからなる光酸発生剤およびこれを含む光重合性組成物、光学的立体造形用樹脂組成物並びに光学的立体造形法

下記一般式(I)


で表される新規な芳香族スルホニウム塩化合物、これからなる光酸発生剤およびこれを含有する光重合性組成物を用いることにより、酸素による硬化阻害が起こらず、硬化精度が良く、しかも照射エネルギーに対して高感度で、硬化深度が十分であり、また、ベンゼンの発生を抑制できるため、ホトレジストや食品包装材用インキ等の広範な途に使用できる光学的立体造形用樹脂組成物、ならびに光学的立体造形方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、新規な芳香族スルホニウム塩化合物、これからなる光酸発生剤およびこの光酸発生剤を含む光重合性組成物、光学的立体造形用樹脂組成物並びに光学的立体造形法に関する。また、これらのうち特に、食品包装材用紫外線硬化性インキとして有用な光重合性組成物に関する。
【背景技術】
光重合性組成物は溶剤を使用せずに用いることができることから、作業環境・地球環境に対する負荷の極めて少ない材料として、塗料、コーテイング、インキ、造形材料等に好ましく用いられているが、光重合性組成物の硬化には光重合開始剤が必須である。この光重合開始剤にはラジカル系光重合開始剤とカチオン系光重合開始剤がある。
ラジカル重合開始剤は、硬化速度が速いという特長があるものの、空気中の酸素による硬化阻害を受ける、硬化収縮が起こる、等の欠点があり、このためカチオン系の光重合開始剤が多く用いられている。
光酸発生剤は、光照射を受けると酸を発生する物質で、カチオン重合用光開始剤などとして有用であり、光造形用樹脂組成物や塗料、コーティング、接着剤等の光重合性組成物などに使用されている。このような光酸発生剤を開示した先行技術の例として特許文献1がある。
特許文献1には、光酸発生剤として有用な芳香族スルホニウム塩化合物が記載され、この光酸発生剤を使用したエポキシ樹脂のカチオン重合用光開始剤、これを使用した光重合性組成物が記載され、更にこれらの組成物を使用した光造形用樹脂組成物と光学的立体造形法について記載されている。
特許文献1:特開2000−186071号公報(特許請求の範囲等)
特許文献1に記載の光酸発生剤は、それまでのものと比べれば確かに高感度であって、迅速硬化できる光重合性組成物を提供したり、酸素による硬化阻害がおこらず精度のよい立体造形物を得ることができるが、実用的見地から、より感度の高いものがなお望まれていた。
カチオン系の光重合開始剤としては、当初、アリールジアゾニウム塩が用いられていたが、気泡の発生や熱安定性が低いことなどから用途が限られるものであった。このため、特許文献2などに記載されているようなスルホニウム塩が広く用いられるようになったが、非特許文献1に記載されているように、近年、スルホニウム塩タイプの光重合開始剤から微量ではあるがベンゼンが発生することから、特に食品包装材用に用いられる紫外線硬化インキには、ベンゼンを発生しないヨードニウム塩が光重合開始剤に用いられるようになった。
特許文献2:特開2001−288205
非特許文献1:MATERIAL STAGE Vol.2 No.2.2002
しかし、このようなヨードニウム塩は熱安定性が悪く、夏場では非常に保存可能期間が短いといった欠点を有していた。また硬化性(感度)も良くないものであった。
そこで本発明の目的は、光源からの光を効率的に吸収し、迅速で良質な硬化物を与える良好な光重合開始剤として有用な新規化合物、これからなる光酸発生剤およびこれを含有する光重合性組成物を提供することにある。
また、本発明の目的は、上述の従来技術の欠点を解消し、酸素による硬化阻害が起こらず、硬化時の精度が良く、容易に所望の寸法の造形物を得ることができ、しかも照射エネルギーに対して高感度で、硬化深度が十分である、光学的立体造形用樹脂組成物およびこれを用いた光学的立体造形方法を提供することにある。
更に、本発明の他の目的は、食品包装材用のインキにも用いることができ、広範な用途に使用することができるとともに熱安定性及び硬化性(感度)がよい、光重合性組成物、そのための光重合開始剤として有用な光酸発生剤、そのための新規な芳香族スルホニウム塩化合物およびこれを用いた紫外線硬化性インキを提供することにある。
【発明の開示】
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、下記一般式(I)で表される新規な芳香族スルホニウム塩化合物を合成するにいたり、またこの化合物が効率良く長波長部の光を吸収し活性化されることを見出し、さらにこれを含有する光重合性組成物は迅速に硬化し良質な硬化物物性を与え、ベンゼンを発生しないことを見出し、またこれを含有するホトレジストが高感度、高解像度を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
また、カチオン重合性有機物質と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤として下記一般式(I)の芳香族スルホニウム塩化合物を含有する光学的立体造形用樹脂組成物を使用し、照射エネルギーとして特定条件の光を使用して光造形を行ったところ、酸素による硬化阻害が起こらず、硬化時の精度が良く容易に所望の寸法の造形物を得ることができ、しかも照射エネルギーに対して高感度であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の芳香族スルホニウム塩化合物は、下記一般式(I)、

(式中、R〜R17は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、フェノキシ基、エステル基、アリール基、チオエーテル基、チオカルボニル基、スルフィニル基、スルホニル基、アミノ基、アミド基、イミド基、ニトリル基、ホスフィノ基、ホスホニオ基、ホスホリル基、炭素数1〜8のフルオロアルキル基からなる群から選ばれる基であって、同一でも異なっていてもよく、これらの基の官能基以外の部分は、炭素数1〜12の、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、炭素環式芳香族炭化水素基、複素環式芳香族炭化水素基であってもよく、またR及びRは互いに縮合して共有結合となっていてもよい。Xは1価のアニオンになりうる原子団である。)で表されることを特徴とするものである。
また本発明の芳香族スルホニウム塩は、前記一般式(I)において、アシル基が、R−CO−、又はAr−CO−、
(但し、Rは直鎖又は分岐鎖のアルキル基、若しくは脂環式炭化水素基であり、

18〜R63は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基またはアルコキシ基であり同一であっても異なっていてもよい)で表されることを特徴とするものである。
また本発明は、前記一般式(I)において、Xが1価のアニオンになりうる原子団である。これらの中でもXが、SbF、PF、AsF、BF、SbCl、ClO、CFSO、CHSO、FSO、FPO、p−トルエンスルホネート、カンファースルホネート、ノナフロロブタンスルホネート、ヘキサデカフロロオクタンスルホネート、テトラアリールボレートからなる群から選ばれるいずれかの基である、前記芳香族スルホニウム塩化合物である。
テトラアリールボレートの具体例としては、例えば、テトラフェニルボレート、及びこれのフェニル基上の少なくとも1つの水素原子がアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシル基、フェニル基、アルコキシカルボニル基で置換された化合物等を挙げることができ、好ましいものとしてはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(4−フルオロフェニル)ボレート、テトラフェニルボレート等を挙げることができる。
また本発明は、前記芳香族スルホニウム塩化合物からなることを特徴とする光酸発生剤である。
また本発明は、(1)カチオン重合性有機物質と(2)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤として前記光酸発生剤を含有する光重合性組成物である。
また本発明は、必須の構成成分として更に(3)ラジカル重合性有機物質と、(4)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤とを含有する、前記の光重合性組成物である。
また本発明は、(1)カチオン重合性有機物質のうち少なくとも1種が、1分子中に1個以上のエポキシ基を有する有機化合物である前記の光重合性組成物である。
また本発明は、(1)カチオン重合性有機物質のうち30重量%以上が分子中にシクロヘキセンオキシド構造を有する化合物である前記の光重合性組成物である。
また本発明は、(3)ラジカル重合性有機物質のうち50重量%以上が分子中に(メタ)アクリル基を有する化合物である前記の光重合性組成物である。
この光重合性組成物においては、任意の成分として、(5)1分子中に2個以上の水酸基を有する有機化合物、(6)熱可塑性高分子化合物などを含めることができる。
また、本発明は、特に硬化性に優れ、更に得られた硬化物の物性が優れているものとして、前記一般式(I)において、R〜R17のうち、少なくとも1つがアシル基であることを特徴とする芳香族スルホニウム塩化合物である。
更に本発明は、前記芳香族スルホニウム塩化合物からなる光酸発生剤であり、該光酸発生剤を含有することを特徴とする光重合性組成物であり、更にまた本発明は、該光重合性組成物からなることを特徴とする光学的立体造形用樹脂組成物である。
更にまた、本発明は、上記光学的立体造形用樹脂組成物の任意の表面に、250〜400nmの波長間の光の総合計エネルギー量に対して345〜360nmの波長間の光の合計エネルギー量が70%以上である光を照射し、該樹脂組成物の光照射表面を硬化させて所望の厚さの硬化層を形成し、該硬化層上に前述の光学的立体造形用樹脂組成物をさらに供給して、これを同様に硬化させ前述の硬化層と連続した硬化物を得る積層操作を行ない、この操作を繰り返すことによって三次元の立体物を得ることを特徴とする光化学的立体造形法である。
別にまた、本発明は、光照射によってベンゼンを遊離することのないものとして、下記一般式(I)、

(式中、R〜R17は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、フェノキシ基、エステル基、アリール基、チオエーテル基、チオカルボニル基、スルフィニル基、スルホニル基、アミノ基、アミド基、イミド基、ニトリル基、ホスフィノ基、ホスホニオ基、ホスホリル基、炭素数1〜8のフルオロアルキル基からなる群から選ばれる基であって、同一でも異なっていてもよく、これらの基の官能基以外の部分は、炭素数1〜12の、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、炭素環式芳香族炭化水素基、複素環式芳香族炭化水素基であってもよく、またR及びRは互いに縮合して共有結合となっていてもよい。但し、R〜Rの全てが同時に水素原子であることは無く、また、R〜R10の全てが同時に水素原子であることも無い。Xは上記と同義である。)で表されることを特徴とする芳香族スルホニウム塩化合物であり、またかかる芳香族スルホニウム塩化合物からなることを特徴とする光酸発生剤であり、かかる光酸発生剤からなる光重合開始剤を含むことを特徴とする光重合性組成物である。
また本発明は、前記の光重合性組成物からなる、紫外線硬化性インキであるとともに、前記の光重合性組成物からなる、食品包装材用紫外線硬化性インキであり、このことによって本発明は、食品包装材用紫外線硬化性インキを用いた印刷が施されていることを特徴とする食品包装材を構成する。
【図面の簡単な説明】
第1図は光学的立体造形システムにおいて、未硬化樹脂層を形成する工程を示す説明図である。
第2図は光学的立体造形システムにおいて、第1硬化層を得る工程を示す説明図である。
第3図は光学的立体造形システムにおいて、第1硬化層上にさらに未硬化樹脂を形成する工程を示す説明図である。
第4図は光学的立体造形システムにおいて、第2硬化層を得る工程を示す説明図である。
第5図は実施例における実験3(造形精度試験)に用いた試験片の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態につき具体的に説明する。
前記一般式(I)で表される化合物において、R〜R10として特に好ましいものは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アシル基または炭素原子数1〜8のフルオロアルキル基であり、同一であっても異なっていてもよい。またR及びRが互いに縮合して共有結合となっている場合も好ましい。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、エネルギー線感受性の点で、好ましくはフッ素原子がよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ターシャリペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等を挙げることができ、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基がよく、特にメチル基、エチル基がよい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、ミリスチルオキシ基、パルミチルオキシ基、ステアリルオキシ基等を挙げることができ、好ましくは炭素原子数1〜4のアルコキシ基がよく、特にメトキシ基、エトキシ基がよい。フルオロアルキル基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロエチル基、パーフルオロエチル基等を挙げることができ、特にトリフルオロメチル基がよい。
アシル基としては、R−CO−、又はAr−CO−で表される基を挙げることができる。このRとしては、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、若しくは脂環式炭化水素基を挙げることができ、

(R18〜R63は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基またはアルコキシ基であり同一であっても異なっていてもよい。)を挙げることができる。
前記Rの具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ターシャリペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
ArにおけるR18〜R63の具体例としては、ハロゲン原子としては例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ターシャリペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等を挙げることができ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、ミリスチルオキシ基、パルミチルオキシ基、ステアリルオキシ基等を挙げることができる。
これらの基は同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは、R〜R10の全てが水素原子であるか、或いはR〜Rのうちいずれか1又は2個(好ましくは1個)が水素原子以外であり他は全て水素原子であって、R〜R10のうちいずれか1又は2個(好ましくは1個)が水素原子以外であり他は全て水素原子であることがよく、より好ましくはR〜R10の全てが水素原子であるか、或いはR〜Rのうちいずれか1個がメチル基、フッ素、ニトロ基、アシル基から選ばれる基であり他は全て水素原子であって、R〜R10のうちいずれか1個がメチル基、フッ素、ニトロ基、アシル基から選ばれる基であり他は全て水素原子であることがよい。また、R及びRが互いに縮合して共有結合となっている場合も好ましい。
11〜R17は、前記R〜R10と同様である(R及びRが互いに縮合して共有結合となっている場合を除く)が、中でも1個がAr−CO−基であり、他は水素原子であることが好ましくかかる芳香族スルホニウム化合物の代表的な一例として、次の一般式(II)、

(式中、R〜R10及びArは前記の通りである)で表される化合物を例示することができる。Ar基として最も好ましいのはフェニル基、トルイル基である。
前記本発明の芳香族スルホニウム塩化合物のカチオン部の好ましい具体例の一部の例を示すと、以下のとおりである。


前基本発明の芳香族スルホニウム塩化合物のアニオン部として特に好ましい具体例としては、SbF、PFを挙げることができる。
上記の化合物は、例えば、式(II)においてR〜R10が水素原子であり、Arがフェニル基である化合物であれば、ジベンゾチオフェンと塩化ベンゾイルの反応によってベンゾイルジベンゾチオフェンを得、例えば、硫酸中でこれに置換又は非置換のジフェニルスルホキシドを反応させた後、塩交換することにより得られる。
本発明の光酸発生剤は、紫外線、電子線、X線、放射線、高周波などの活性エネルギー線の照射によりルイス酸を放出する特性を有し、カチオン重合性有機物質に作用して重合を開始することができる。従って、本発明の光酸発生剤は、カチオン性光重合開始剤として有用である。
また、本発明の光酸発生剤は、従来の芳香族スルホニウム塩と比較して、吸収波長領域が長波長部にシフトし、一般に使用される光源のなかでも、高圧水銀灯の最も強い発光波長である365nmの光を効率よく吸収する。その結果、本発明の芳香族スルホニウム塩化合物を配合したカチオン重合性組成物やホトレジストは従来の芳香族スルホニウム塩化合物を配合したカチオン重合組成物やホトレジストに比較してその感度が大幅に向上する。
また、光酸発生の場において、ベンゼンを遊離することのないものとして、前記一般式(I)で表される化合物において、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子(好ましくはF又はCl)、水酸基、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜6のアルコキシ基)アシル基などから選ばれる基である。なかでも好ましいのは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基であり、より好ましくは、R〜Rの炭素原子数の合計が1〜8である。これらの基は、全てが同時に水素原子とならなければ、その組み合わせは任意であり、同一でも異なっていてもよい。
〜R10は、水素原子、ハロゲン原子(好ましくはF又はCl)、水酸基、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜6のアルコキシ基)、アシル基などから選ばれる基である。なかでも好ましいのは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基であり、より好ましくは、R〜R10の炭素原子数の合計が1〜8である。これらの基は、全てが同時に水素原子とならなければ、その組み合わせは任意であり、同一でも異なっていてもよい。また、R及びRが互いに縮合して共有結合となっている場合も好ましい。
前記本発明の芳香族スルホニウム塩化合物の好ましい具体例の一例を示すと、以下のとおりである。

上記の化合物は、例えば硫酸中でジベンゾチオフェン類と置換されたジフェニルスルホキシドの脱水縮合によってスルホニウム塩を調製し、その後塩交換することによって得られる。
さらに、11頁〜12頁に示したもののうち、R〜R10が全て水素原子であるものを除いた芳香族スルホニウムの塩も好ましいものとしてあげることができる。
本発明の光酸発生剤は、食品包装材用インキに従来用いられているヨードニウム塩と同様に、光照射によって分解し酸を発生してもベンゼンを遊離することがなく、更に、このようなヨードニウム塩と比較して熱安定性、硬化性(感度)に優れている。
本発明の光重合性組成物の成分である(1)カチオン重合性有機物質とは、光照射により活性化したカチオン性重合開始剤により高分子化または、架橋反応を起こす化合物をいう。
例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物、ビニル化合物などであり、これらの1種または2種以上使用することができる。中でも入手するのが容易であり、取り扱いに便利なエポキシ化合物が適している。該エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などが適している。
前記脂環族エポキシ樹脂の具体例としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテルまたはシクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。たとえば、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
前記脂環族エポキシ樹脂として好適に使用できる市販品としてはUVR−6100、UVR−6105、UVR−6110、UVR−6128、UVR−6200(以上、ユニオンカーバイド社製)、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、セロキサイド2000、セロキサイド3000、サイクロマーA200、サイクロマーM100、サイクロマーM101、エポリードGT−301、エポリードGT−302、エポリード401、エポリード403、ETHB、エポリードHD300(以上、ダイセル化学工業(株)製)、KRM−2110、KRM−2199(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。
前記脂環族エポキシ樹脂の中でも、シクロヘキセンオキシド構造を有するエポキシ樹脂は硬化性(硬化速度)の点で好ましい。
前記芳香族エポキシ樹脂の具体例としては、少なくとも1個の芳香族環を有する多価フェノールまたは、そのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、またはこれらに更にアルキレンオキサイドを付加した化合物のグリシジルエーテルやエポキシノボラック樹脂などが挙げられる。
また前記脂肪族エポキシ樹脂の具体例としては、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマー等が挙げられる。代表的な化合物として、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテルなどの多価アルコールのグリシジルエーテル、またプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。さらに、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、また、これらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化大豆油、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
前記芳香族及び脂肪族エポキシ樹脂として好適に使用できる市販品としてはエピコート801、エピコート828(以上、油化シェルエポキシ社製)、PY−306、0163、DY−022(以上、チバガイギー社製)、KRM−2720、EP−4100、EP−4000、EP−4080、EP−4900、ED−505、ED−506(以上、旭電化工業(株)製)、エポライトM−1230、エポライトEHDG−L、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト1600、エポライト80MF、エポライト100MF、エポライト4000、エポライト3002、エポライトFR−1500(以上、共栄社化学(株)製)、サントートST0000、YD−716、YH−300、PG−202、PG−207、YD−172、YDPN638(以上、東都化成(株)製)などを挙げることができる。
前記オキセタン化合物の具体例としては、例えば以下の化合物を挙げることができる。3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4−メトキシ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルなどを例示することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これら、オキセタン化合物は特に可撓性を必要とする場合に使用すると効果的であり好ましい。
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物に使用する(1)カチオン重合性有機物質としては、上記の光重合性組成物の成分としてのカチオン重合性有機物質を同様に使用することができる。
また、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物としては、上記のエポキシ化合物の中では分子中にシクロヘキセンオキシド構造を有するエポキシ化合物を、カチオン重合性有機物質全量に対して30重量%以上用いるのが硬化性(硬化速度)、造形精度の点で特に好ましい。残りの70重量%未満のカチオン重合性有機物質成分は、その他のエポキシ樹脂や、以下に例示するエポキシ化合物以外のカチオン重合性有機物質であってよい。なお、エポキシ化合物以外のカチオン重合性有機物質と上記シクロヘキセンオキシド化合物の混合物も好ましい。
本発明で用いることができる(1)カチオン重合性有機物質のエポキシ化合物以外の具体例としては、上記オキセタン化合物、テトラヒドロフラン、2,3−ジメチルテトラヒドロフランなどのオキソラン化合物、トリオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,6−トリオキサンシクロオクタンなどの環状アセタール化合物、β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトンなどの環状ラクトン化合物、エチレンスルフィド、チオエピクロルヒドリンなどのチイラン化合物、1,3−プロピンスルフィド、3,3−ジメチルチエタンなどのチエタン化合物、テトラヒドロチオフェン誘導体などの環状チオエーテル化合物、エチレングリコールジビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、プロピレングリコールのプロペニルエーテルなどのビニルエーテル化合物、エポキシ化合物とラクトンの反応によって得られるスピロオルトエステル化合物、スチレン、ビニルシクロヘキセン、イソブチレン、ポリブタジエンなどのエチレン性不飽和化合物および上記誘導体などが挙げられる。
また、光造形用樹脂組成物として、特に可撓性を必要とする場合は、(1)カチオン重合性有機物質として上記オキセタン化合物を、カチオン重合性有機物質全量に対して30重量%以上用いるのが好ましい。その他の70重量%未満のカチオン重合性有機物質の成分は、エポキシ樹脂等、オキセタン化合物以外の上記カチオン重合性有機物質であってよい。
なお本発明においては、(1)カチオン重合性有機物質として、上述したカチオン性有機化合物のうち1種または2種以上を配合して使用することができる。
本発明の光酸発生剤を光重合開始剤として使用する場合の量は、通常用いられている範囲で制限なく使用できるが、カチオン重合性有機物質100重量部に対して0.05〜10重量部の割合で用いることが好ましい。但し、カチオン重合性有機物質の性質、光の照射強度、硬化に要する時間、硬化物の物性、コストなどの要因により、配合量を上述の範囲より増減させて用いることも可能である。
本発明の光重合性組成物には必要に応じてアクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などラジカル重合性の光重合組成物を混合して用いることもできる。
本発明の光重合性組成物には必要に応じて、あるいは所望により、アントラセン誘導体、ピレン誘導体などの光増感剤、熱感応カチオン重合開始剤、充填剤、希釈剤、溶剤、顔料、可撓性付与剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、安定剤、難燃剤、酸化防止剤などの添加剤を加えることができる。
本発明の光重合性組成物は広範囲の応用分野に有用であり、例えば平版、凸版用印刷板の作成、プリント基板やIC、LSI作成のためのホトレジスト、レリーフ像や画像複製等の画像形成、光硬化性のインキ、塗料、接着剤などに用いることができる。
また本発明の、光学的立体造形用樹脂組成物の場合、以上のような(2)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤は、(1)カチオン重合性有機物質に対して、好ましくは0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜10重量%配合されるのがよい。この範囲を上回ると十分な強度を有する硬化物が得られず、下回ると樹脂が十分硬化しない場合がある。
本発明の光重合性組成物に使用する(3)ラジカル重合性有機物質とは、エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤の存在下、エネルギー線照射により高分子化または架橋反応するラジカル重合性有機物質で、好ましくは1分子中に少なくとも1個以上の不飽和二重結合を有する化合物である。
かかる化合物としては、例えばアクリレート化合物、メタクリレート化合物、アリルウレタン化合物、不飽和ポリエステル化合物、スチレン系化合物等が挙げられる。
かかるラジカル重合性有機物質の中でも(メタ)アクリル基を有する化合物は、合成、入手が容易であり、取り扱いが容易であり好ましい。例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アルコール類の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
ここで、エポキシ(メタ)アクリレートとは、例えば、従来公知の芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などと、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるアクリレートである。これらのエポキシ(メタ)アクリレートのうち、特に好ましいものは、芳香族エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートであり、少なくとも1個の芳香核を有する多価フェノールまたはそのアルキレンオキサイド付加体のポリグリシジルエーテルを、(メタ)アクリル酸と反応させて得られる(メタ)アクリレートである。例えば、ビスフェノールA、またはそのアルキレンオキサイド付加体をエピクロロヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテルを、(メタ)アクリル酸と反応させて得られる(メタ)アクリレート、エポキシノボラック樹脂と(メタ)アクリル酸を反応して得られる(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートとして好ましいものは、1種または2種以上の水酸基含有ポリエステルや水酸基含有ポリエーテルに水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとイソシアネート類を反応させて得られる(メタ)アクリレートや、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとイソシアネート類を反応させて得られる(メタ)アクリレート等である。
ここで使用する水酸基含有ポリエステルとして好ましいものは、1種または2種以上の脂肪族多価アルコールと、1種または2種以上の多塩基酸との反応によって得られる水酸基含有ポリエステルであって、脂肪族多価アルコールとしては、例えば1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、テレフタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸などが挙げられる。
水酸基含有ポリエーテルとして好ましいものは、脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られる水酸基含有ポリエーテルであって、脂肪族多価アルコールとしては、前述した化合物と同様のものが例示できる。アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとして好ましいものは、脂肪族多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルであって、脂肪族多価アルコールとしては、前述した化合物と同様のものが例示できる。
かかる水酸基含有(メタ)アクリル酸のうち、脂肪族二価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルは特に好ましく、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
イソシアネート類としては、分子中に1個以上のイソシアネート基を持つ化合物が好ましく、トリレンジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの2価のイソシアネート化合物が特に好ましい。
ポリエステル(メタ)アクリレートとして好ましいものは、水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレートである。ここで使用する水酸基含有ポリエステルとして好ましいものは、1種または2種以上の脂肪族多価アルコールと、1種または2種以上の1塩基酸、多塩基酸、及びフェノール類とのエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルであって、脂肪族多価アルコールとしては、前述した化合物と同様のものが例示できる。1塩基酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、ブチルカルボン酸、安息香酸等が挙げられる。多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、テレフタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸等が挙げられる。フェノール類としては、例えば、フェノール、p−ノニルフェノール、ビスフェノールA等が挙げられる。ポリエーテル(メタ)アクリレートとして好ましいものは、水酸基含有ポリエーテルと、メタ(アクリル)酸とを反応させて得られるポリエーテル(メタ)アクリレートである。ここで使用する水酸基含有ポリエーテルとして好ましいものは、脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られる水酸基含有ポリエーテルであって、脂肪族多価アルコールとしては、前述した化合物と同様のものが例示できる。アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
アルコール類の(メタ)アクリル酸エステルとして好ましいものは、分子中に少なくとも1個の水酸基を持つ芳香族または脂肪族アルコール、及びそのアルキレンオキサイド付加体と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートであり、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの(メタ)アクリレートのうち、多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類が特に好ましい。
これらラジカル重合性有機物質の市販品としては、単官能の例として、アロニックスM−101、M−102、M−111、M−113、M−117、M−152、TO−1210(以上、東亜合成(株)製)、KAYARAD TC−110S、R−564、R−128H(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート192、ビスコート220、ビスコート2311HP、ビスコート2000、ビスコート2100、ビスコート2150、ビスコート8F、ビスコート17F(以上、大阪有機化学工業(株)製)などを挙げることができる。
また、多官能の例として、SA1002(以上、三菱化学(株)製)、ビスコート195、ビスコート230、ビスコート260、ビスコート215、ビスコート310、ビスコート214HP、ビスコート295、ビスコート300、ビスコート360、ビスコートGPT、ビスコート400、ビスコート700、ビスコート540、ビスコート3000、ビスコート3700(以上、大阪有機化学工業(株)製)、カヤラッドR−526、HDDA、NPGDA、TPGDA、MANDA、R−551、R−712、R−604、R−684、PET−30、GPO−303、TMPTA、THE−330、DPHA、DPHA−2H、DPHA−2C、DPHA−2I、D−310、D−330、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、T−1420、T−2020、T−2040、TPA−320、TPA−330、RP−1040、RP−2040、R−011、R−300、R−205(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−210、M−220、M−233、M−240、M−215、M−305、M−309、M−310、M−315、M−325、M−400、M−6200、M−6400(以上、東亜合成(株)製)、ライトアクリレートBP−4EA、BP−4PA、BP−2EA、BP−2PA、DCP−A(以上、共栄社化学(株)製)、ニューフロンティアBPE−4、TEICA、BR−42M、GX−8345(以上、第一工業製薬(株)製)、ASF−400(以上、新日鉄化学(株)製)、リポキシSP−1506、SP−1507、SP−1509、VR−77、SP−4010、SP−4060(以上、昭和高分子(株)製)、NKエステルA−BPE−4(以上、新中村化学工業(株)製)などを挙げることができる。
これらのラジカル重合性有機物質は1種あるいは2種以上のものを所望の性能に応じて、配合して使用することができる。
ラジカル重合性有機物質のうち50重量%以上が、分子中に(メタ)アクリル基を有する化合物であることが好ましい。
本発明におけるラジカル重合性有機物質の配合は、カチオン重合性有機物質100重量部に対して200重量部以下であることが好ましく、10〜100重量部であることが特に好ましい。
本発明に使用する(4)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤は、エネルギー線照射を受けることによってラジカル重合を開始させることが可能となる化合物であればよく、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンジル系化合物、チオキサントン系化合物などのケトン系化合物を好ましいものとして例示することができる。
アセトフェノン系化合物としては例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ターシャリブチルジクロロアセトフェノン、p−ターシャリブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等が挙げられる。
ベンジル系化合物としては、ベンジル、アニシル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラーケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィドなどが挙げられる。
チオキサントン系化合物としては、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
その他のエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフェインオキサイド、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)]チタニウムなどが挙げられる。
これらのエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤は1種あるいは2種以上のものを所望の性能に応じて配合して使用することができる。
以上のような(4)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤は、(3)ラジカル重合性有機物質に対して化学量論的必要量を使用すればよいが、好ましくは(3)ラジカル重合性有機物質に対して0.05〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%配合するのがよい。この範囲を上回ると十分な強度を有する硬化物が得られず、下回ると樹脂が十分硬化しない場合がある。
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物に使用する(3)ラジカル重合性有機物質と(4)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤としては、上記の光重合性組成物の成分としてのものを同様に使用することができる。
上記の(4)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤と(3)ラジカル重合性有機物質とを配合した本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、これらを配合しない場合に比べて、光学的立体造形を行った際の硬化速度が更に上昇し、光学的立体造形用樹脂組成物として好ましいものとなる。
本発明の光重合性組成物には任意の成分として(5)1分子中に2個以上の水酸基を有する有機化合物、(6)熱可塑性高分子化合物などを配合することができる。
上記(5)1分子中に2個以上の水酸基を含有する有機化合物としては、多価アルコール、水酸基含有ポリエーテル、水酸基含有ポリエステル、多価フェノールなどが好ましい。
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5,2,1,02.6]デカン等が挙げられる。
水酸基含有ポリエーテルとは、1種または2種以上の多価アルコールまたは多価フェノールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加して得られる化合物である。これに用いられる多価アルコール、多価フェノールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。またアルキレンオキサイドの例としては、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドなどが挙げられる。
水酸基含有ポリエステルとしては、1種または2種以上の多価アルコール及び/又は多価フェノールと1種または2種以上の1塩基酸、多塩基酸などとのエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステル、および1種または2種以上のラクトン類と、1種または2種以上の多価アルコールとのエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルが挙げられる。多価アルコール、多価フェノールの例としては、前述のものと同様のものが挙げられる。1塩基酸としては、例えばギ酸、酢酸、ブチルカルボン酸、安息香酸などが挙げられる。多塩基酸としては、例えばアジピン酸、テレフタル酸、トリメリット酸などが挙げられる。ラクトン類としては、β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙がられる。多価フェノールとは、芳香環に直接結合した水酸基を1分子中に2個以上含有する化合物である。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などが挙げられる。
これらの(5)1分子中に2個以上の水酸基を含有する有機化合物は、単独あるいは2種以上の物を所望の性能に応じて使用することができる。
この(5)1分子中に2個以上の水酸基を含有する有機化合物の好ましい配合量は、樹脂組成物中の(1)カチオン重合性有機物質100重量部に対して1〜50重量部である。
上記(6)熱可塑性高分子化合物としては、室温において液体または固体であり、室温において樹脂組成物と均一に混和する高分子化合物である。
この(6)熱可塑性高分子化合物の代表的なものとしては、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリカーボナート、ポリスチレン、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブテン、スチレンブタジエンブロックコポリマー水添物などが挙げられる。
また、これらの(6)熱可塑性高分子化合物に水酸基、カルボキシル基、ビニル基、エポキシ基などの官能基が導入されたものを用いることもできる。
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物に使用する(5)1分子中に2個以上の水酸基を有する有機化合物と(6)熱可塑性高分子化合物としては、上記の光重合性組成物の成分としてのものを同様に使用することができる。
(6)熱可塑性高分子化合物について本発明に対して望ましい数平均分子量は1000〜500000であり、さらに好ましい数平均分子量は5000〜100000である。この範囲外であっても使用できないわけではないが、あまり低分子量であると強度を改善するという効果が十分得られず、あまり高分子量であっては樹脂組成物の粘度が高くなり、光学的立体造形用樹脂組成物として好ましいものとは言えなくなる。
また、(6)熱可塑性高分子化合物の配合量は、組成物全体を基準にして5〜50重量%、好ましくは5〜30重量%がよい。これより少ないと、熱可塑性高分子化合物を添加しない場合と有意な差がなく、逆にこれより多いと樹脂組成物の粘度が高くなり、光学的立体造形用樹脂組成物として好ましいものとは言えなくなる。
(6)熱可塑性高分子化合物を配合した本発明の樹脂組成物は、これらを配合しない場合に比べて、光学的立体造形を行った際の硬化物の機械物性が更に上昇し、光学的立体造形用樹脂組成物として好ましいものとなる。
本発明の光重合性組成物、更には光学的立体造形用樹脂組成物には、必須ではないが必要に応じて光増感剤などを配合することができる。例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体等の光増感剤を併用することにより、これらを配合しない場合に比べて光造形を行った際の硬化速度がさらに向上し、樹脂組成物として好ましいものになる。
また、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて熱感応性カチオン重合開始剤、無機フィラー、有機フィラー、顔料、染料などの着色剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤等の各種樹脂添加物等を添加することができる。上記熱感応性カチオン重合開始剤としては、例えば特開昭57−49613号、特開昭58−37004号公報記載の脂肪族オニウム塩類が挙げられる。
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲で所望により、上記のような熱感応性カチオン重合開始剤、無機フィラー、有機フィラー、顔料、染料などの着色剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤等の各種樹脂添加物等を通常の使用の範囲で併用することができるが、造形物の歪みの点で、本発明の光造形用樹脂組成物の総量に対して150重量%以下とするのが好ましい。
本発明において上記光学的立体造形用樹脂組成物に照射する光は、紫外のレーザー光であることが好ましく、具体的にはHe−Cdレーザー、Arイオンレーザー、Nd発振の固体レーザーに非線形結晶を組み合わせて1/3の波長にしたもの等が挙げられる。また、250〜400nmの波長間の光の総合計エネルギー量に対して345〜360nmの波長間の光の合計エネルギー量が70%以上であることがさらに好ましい。
この場合、250nm未満、或いは400nmを超える波長の光は上記光学的立体造形用樹脂組成物の硬化、即ち(2)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の活性化に関与しないので不要であるが、所望により併用しても差し支えない。
従って、上記光学的立体造形用樹脂組成物の硬化、即ち(2)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の活性化には250〜400nmの波長間の光の総合計エネルギー量が、その必要量以上あればよい。
250〜400nmの波長間の光の総合計エネルギー量に対して345〜360nmの波長間の光の合計エネルギー量が70%以上でないと、光が十分に吸収されず、所望とする硬化深度が大きくなり、非設計部位を硬化させる、所謂余剰硬化部が大きくなってしまう。
250〜400nmの波長間の光の総合計エネルギー量に対して345〜360nmの波長間の光の合計エネルギー量が70%以上である光は、具体的には例えば、Nd発振固体レーザー(例えばNd−YVOレーザー、Nd−YAGレーザー等)に非線形結晶を組み合わせて1/3の波長(355nm)に変換した光(レーザー光)や、アルゴンイオンレーザ(333nm、351nm、364nmの波長の光からなる)光をフィルター処理などして351nmリッチにした光等として得ることができる。
本発明の光学的立体造形方法を行なうには、まず上記光学的立体造形用樹脂組成物の必須構成成分、必要に応じて任意の成分、その他の材料から上記光学的立体造形用樹脂組成物を得る。
この工程は周知の工程によるのがよいが、例えば、これらの材料を十分混合する。具体的な混合方法としては、例えば、プロペラの回転に伴う撹拌力を利用する撹拌法やロール練り混込み法などが挙げられる。上記(1)〜(4)の好ましい配合比、また必要に応じて配合される添加剤の種類及びその配合比は、上述した本発明の光学的立体造形用樹脂組成物と同じ範囲または種類を使用することができる。このようにして得られた光学的立体造形用樹脂組成物は概ね常温で液状である。
次に、上記樹脂組成物の任意の表面に、エネルギー線を照射し、該樹脂組成物のエネルギー線照射表面を硬化させて所望の厚さの硬化層を形成し、該硬化層上に前述のエネルギー線硬化性樹脂組成物をさらに供給して、これを同様に硬化させて前述の硬化層と連続した硬化層を得る積層操作を行い、この操作を繰り返すとによって三次元の立体物を得る。
さらに図を参照して具体的に説明すると、第1図に示すように、NCテーブル2を樹脂5中に位置させ、テーブル2上に所望ピッチに相当する深度の未硬化樹脂層を形成する。次にCADデータを元に制御部1からの信号に従って光学系3を制御してレーザー4からのレーザー光線6を未硬化樹脂表面に走査照射して第1硬化層7を得る(第2図参照)。次に制御部1からの信号に従ってNCテーブル2を降下させ、第1硬化層7上にさらに所望ピッチに相当する深度の未硬化樹脂層を形成する(第3図参照)。同様にレーザー光線6を走査照射して第2硬化層8を得る(第4図参照)。以下同様にして積層する。
以下に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
〔合成例−1〕 2−(8−ベンゾイル−ジベンゾチオフェニル)−ジ−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(化合物1)の合成
500mlの三口フラスコに塩化アルミニウム93.3g、ジベンゾチオフェン107.5g、1,2−ジクロロエタン650gを仕込んだ。ここへ塩化ベンゾイル82.0gを加え、25℃で2時間反応を行った。次いで、5000mlのビーカー中へ氷1000gを入れておき、この中に反応物を注ぎ入れた。1,2−ジクロロエタン層を1000gの水で3回洗浄した。1,2−ジクロロエタン層を減圧濃縮することにより、8−ベンゾイル−ジベンゾチオフェンが160.4g(収率9596)得られた。
500mlの三口フラスコに95%硫酸295gを加え撹拌しながら、ジ−p−トリルスルホキシド46.0gを仕込んだ。添加と同時に反応液は暗褐色となった。次いで、上記で得られた8−ベンゾイル−ジベンゾチオフェンを57.6g仕込んだ。そのまま室温で10時間撹拌を続けた。次いで3000mlのビーカーに氷500gとメタノール500gを混合しておき、ここに反応液を投入し、更にトルエン300gを加えた。下層を取り出し、塩化メチレン500gで抽出し、これに水1000gを加え撹拌した。ここにKSbFを36.8g添加し、2時間撹拌した。塩化メチレン層を水1000gで2回洗浄後、減圧濃縮することによって90.53gの白色粉末(収率70%)を得た。
以下の分析結果から、この生成物は2−(8−ベンゾイル−ジベンゾチオフェニル)−ジ−p−トリルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート(化合物1:下記構造)であると同定した。
・赤外吸収スペクトル(ケトン) ν(C=O) 1654cm−1
・元素分析 計算値 分析値
C 61.29% 61.96%
H 3.90% 4.18%
S 9.92% 10.23%
P 4.79% 4.45%
・その他、H−NMR、13C−NMRにより構造を同定した。
(化合物1)

〔合成例−2〕 2−(8−ベンゾイル−ジベンゾチオフェニル)−ジ−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(化合物2:下記構造)の合成
合成例−1でKSbFに代えてKPFを使用することにより白色粉末として得られた。
同定は、赤外吸収スペクトル、元素分析、H−NMR、13C−NMRによって行った。
(化合物2)

〔合成例−3〕 2−(8−ベンゾイル−ジベンゾチオフェニル)−ジ−p−フルオロフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(化合物3:下記構造)の合成
合成例−1でジ−p−トリルスルホキシドに代えてジ−p−フルオロフェニルスルホキシドを使用することにより白色粉末として得られた。
同定は、赤外吸収スペクトル、元素分析、H−NMR、13C−NMRによって行った。
(化合物3)

〔合成例−4〕 2−(8−ベンゾイル−ジベンゾチオフェニル)−ジ−p−フルオロフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(化合物4:下記構造)の合成
合成例−2でジ−p−トリルスルホキシドに代えてジ−p−フルオロフェニルスルホキシドを使用することにより白色粉末として得られた。
同定は、赤外吸収スペクトル、元素分析、H−NMR、13C−NMRによって行った。
(化合物4)

〔合成例−5〕 2−(8−ベンゾイル−ジベンゾチオフェニル)−ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(化合物5:下記構造)の合成
合成例−1でジ−p−トリルスルホキシドに代えてジフェニルスルホキシドを使用することにより白色粉末として得られた。
同定は、赤外吸収スペクトル、元素分析、H−NMR、13C−NMRによって行った。
(化合物5)

〔合成例−6〕 2−(8−ベンゾイル−ジベンゾチオフェニル)−ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(化合物6:下記構造)の合成
合成例−2でジ−p−トリルスルホキシドに代えてジフェニルスルホキシドを使用することにより白色粉末として得られた。
同定は、赤外吸収スペクトル、元素分析、H−NMR、13C−NMRによって行った。
(化合物6)

〔合成例−7〕 2−(8−ベンゾイル−ジベンゾチオフェニル)−ジ−p−ニトロフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(化合物7:下記構造)の合成
合成例−1でジ−p−トリルスルホキシドに代えてジ−p−ニトロフェニルスルホキシドを使用することにより白色粉末として得られた。
同定は、赤外吸収スペクトル、元素分析、H−NMR、13C−NMRによって行った。
(化合物7)

〔合成例−8〕 2−(8−ベンゾイル−ジベンゾチオフェニル)−ジ−p−ニトロフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(化合物8:下記構造)の合成
合成例−2でジ−p−トリルスルホキシドに代えてジ−p−ニトロフェニルスルホキシドを使用することにより白色粉末として得られた。
同定は、赤外吸収スペクトル、元素分析、H−NMR、13C−NMRによって行った。
(化合物8)

〔合成例8.1〕 2−(8−ベンゾイル−ジベンゾチオフェニル)−ジ−p−ベンゾイルフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(化合物8.1:下記構造)の合成
合成例1でジ−p−トリルスルホキシドに代えて−ジ−p−ベンゾイルフェニルスルホキシドを使用することにより白色粉末として得られた。
同定は、赤外吸収スペクトル、元素分析、H−NMR、13C−NMRによって行った。
(化合物8.1)

〔合成例8.2〕 2−(8−ベンゾイル−ジベンゾチオフェニル)−ジ−p−ベンゾイルフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(化合物8.2:下記構造)の合成
合成例8.1でKSbFに代えてKPFを使用することにより白色粉末として得られた。
同定は、赤外吸収スペクトル、元素分析、H−NMR、13C−NMRによって行った。(化合物8.2)

〔合成例8.3〕 2−(8−ベンゾイル−ジベンゾチオフェニル)−ジ−p−アセチルフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(化合物8.3:下記構造)の合成
合成例2でジ−p−トリルスルホキシドに代えてジ−p−アセチルフェニルスルホキシドを使用することにより白色粉末として得られた。
同定は、赤外吸収スペクトル、元素分析、H−NMR、13C−NMRによって行った。
(化合物8.3)

〔合成例8.4〕 2−(8−ベンゾイル−ジベンゾチオフェニル)−ジベンゾチオフェニウムヘキサフルオロホスフェート(化合物8.4:下記構造)の合成
合成例2でジ−p−トリルスルホキシドに代えてジベンゾチオフェニルスルホキシドを使用することにより白色粉末として得られた。
同定は、赤外吸収スペクトル、元素分析、H−NMR、13C−NMRによって行った。
(化合物8.4)

〔合成例8.5〕 2−(8−ベンゾイル−ジベンゾチオフェニル)−2−ベンゾイル−ジベンゾチオフェニウムヘキサフルオロアンチモネート(化合物8.5:下記構造)の合成
合成例1でジ−p−トリルスルホキシドに代えてベンゾイル−ジベンゾチオフェニルスルホキシドを使用することにより白色粉末として得られた。
同定は、赤外吸収スペクトル、元素分析、H−NMR、13C−NMRによって行った。
(化合物8.5)

〔合成例8.6〕 2−(8−ベンゾイル−ジベンゾチオフェニル)−2−ベンゾイル−ジベンゾチオフェニウムヘキサフルオロホスフェート(化合物8.6:下記構造)の合成
合成例8.5でKSbFに代えてKPFを使用することにより白色粉末として得られた。
同定は、赤外吸収スペクトル、元素分析、H−NMR、13C−NMRによって行った。
(化合物8.6)

〔合成例8.7〕 2−(8−ベンゾイル−ジベンゾチオフェニル)−2−トルオイル−ジベンゾチオフェニウムヘキサフルオロホスフェート(化合物8.7:下記構造)の合成
合成例2で8−ベンゾイル−ジベンゾチオフェンに代えて8−トルオイル−ジベンゾチオフェンを使用し、ジ−p−トリルスルホキシドに代えてトルオイル−ジベンゾチオフェニルスルホキシドを使用することにより白色粉末として得られた。
同定は、赤外吸収スペクトル、元素分析、H−NMR、13C−NMRによって行った。
(化合物8.7)

尚、以下の実施例では、比較のため以下の化合物についても評価を行った。
(化合物9)

(化合物10)

〔合成例11〕 2−ジベンゾチオフェニル−ビス−(2,4,5−トリメチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート(化合物11)の合成
1リットルの三ツ口フラスコに95%硫酸を300g仕込み、攪拌しながらビス−(2,4,5−トリメチル)スルホキシド57.3g(0.2モル)を仕込んだ。ビス−(2,4,5−トリメチル)スルホキシドが完全に溶解するのを確認した後、ジベンゾチオフェン36.7g(0.2モル)を5回に分けて添加した。添加と同時に反応液は暗褐色となった。そのまま室温で24時間攪拌を続けた。
次いで、3リットルのビーカーに氷水500gとメタノール500gを混合しておき、ここに反応液を投入し、さらにトルエン300gを加えた。下相を取り出し、40%の水酸化ナトリウム水溶液で中和した後に、1,2−ジクロロエタン1500gを加え攪拌した。ここにKPF66gを添加し、2時間攪拌した。
ジクロロエタン相を水1000gで2回洗浄後、減圧濃縮すると茶褐色の固体が得られた。これを酢酸エチル300gで再結晶精製し、減圧乾燥して白色粉末である生成物60.0gを得た。
生成物の分析結果は以下の通りであった。
(元素分析)
計算値 分析値
C 60.2% 60.1%
H 4.9% 5.0%
S 10.7% 10.4%
P 5.2% 5.2%
H−NMR,DIMSO−d
ピーク強度 ケミカルシフト
S,3H−CH 2.50
S,3H−CH 2.47
S,3H−CH 2.43
m,11H−Arom 6.97〜9.05
以上の結果及び赤外線吸収スペクトルの結果から、生成物は以下の構造の化合物であると同定された。
(化合物11)

収率は50%、純度(液体クロマトグラフィーによる)は99.0%であった。
〔合成例12〕 2−ジベンゾチオフェニル−ビス−(3−メチル−4−ブトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート(化合物12)の合成
合成例11で使用したビス−(2,4,5−トリメチル)スルホキシド57.3gを、ビス−(3−メチル−4−ブトキシ)スルホキシド74.8g(0.2モル)に換えた他は合成例11と同様にして生成物66.1gを得た。
生成物の分析結果は以下の通りであった。
(元素分析)
計算値 分析値
C 63.6% 64.0%
H 4.7% 4.5%
S 4.9% 4.9%
P 4.7% 4.8%
以上の結果及びH−NMR、赤外線吸収スペクトルの結果から、生成物は以下の構造の化合物であると同定された。
(化合物12)

収率は50%、純度(液体クロマトグラフィーによる)は98.5%であった。
〔合成例13〕 2−ジベンゾチオフェニル−ビス−(2,4,5−トリメチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(化合物13)の合成
合成例11で使用したKPF66gを、KSbF98.7gに換えた他は合成例11と同様にして生成物67.1gを得た。
生成物の分析結果は以下の通りであった。
(元素分析)
計算値 分析値
C 55.5% 54.9%
H 4.7% 4.6%
S 4.8% 5.0%
Sb 18.1% 18.7%
H−NMR,DIMSO−d
ピーク強度 ケミカルシフト
S,3H−CH 2.50
S,3H−CH 2.47
S,3H−CH 2.43
m,11H−Arom 6.95〜9.10
以上の結果及び赤外線吸収スペクトルの結果から、生成物は以下の構造の化合物であると同定された。
(化合物13)

収率は50%、純度(液体クロマトグラフィーによる)は98.8%であった。
〔合成例14〕 2−ジベンゾチオフェニル−ビス−(3−メチル−4−ブトキシフェニル)スルホニウムヘキフルオロアンチモネート(化合物14)の合成
合成例12で使用したKPF66gを、KSbF98.7gに換えた他は合成例12と同様にして生成物75.9gを得た。
生成物の分析結果は以下の通りであった。
(元素分析)
計算値 分析値
C 55.4% 56.2%
H 5.2% 5.0%
S 4.2% 4.3%
Sb 16.0% 16.3%
以上の結果及びH−NMR、赤外線吸収スペクトルの結果から、生成物は以下の構造の化合物であると同定された。
(化合物14)

収率は50%、純度(液体クロマトグラフィーによる)は97.5%であった。
実施例−1 分光照射試験
上記芳香族スルホニウム塩構造を有する化合物からなる光酸発生剤を3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート100gに対して、下記表1に示す量で添加して光重合性組成物を得た。これをバーコーター(No.6)を用いてガラス板上に約10ミクロンの厚さに塗布して、日本分光株式会社製の分光照射装置CT−25CPを用いて上記光重合性組成物の365nmにおける分光感度を測定した。
この分光照射装置は500W超高圧水銀ランプと回折格子を内蔵し、365nmの単色光を取り出すことができ、またその単色光を設定された時間露光できるシャッターで照射エネルギーを調節できる。シャッター出射口の直下には前記光重合性組成物を塗布したガラス板をセットできる移動ステージが設置され、シャッターと連動して移動し、13段階の異なるエネルギーを光重合性組成物に照射することができる。
照射された光重合性組成物を塗布したガラス板はメタノールで現像した。365nmの光において硬化に必要な最小の硬化エネルギーをガラス板上に残った硬化膜段数と射出光量・シャッター開放時間より、求めた。得られた結果を表1に示す。

表1の結果から明らかな如く、従来公知であったスルホニウム塩(9)、(10)に比較して、本発明による新規なスルホニウム塩(1)〜(8.7)はいずれも、長波長である365nmの光に対して、感度が優れていることが分かる。
【実施例−2】
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート80g、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル20gを混合した物に、上記表1に記載の化合物(1)〜(8.7)を光開始剤として同表1の添加量で添加し、良く撹拌して均一にした。これをアルミコート紙上に#3のバーコーターで塗布した。これに、ベルトコンベア付の光照射装置を使用して80W/cmの高圧水銀灯の光を照射した。ランプからベルトコンベアまでの距離は10cm、ベルトコンベアのラインスピードは8cm/分とした。
硬化後24時間室温に放置後、MEK(メチルエチルケトン)を付けた綿棒で塗膜を擦った。何れの樹脂でも200往復しても塗膜は侵されず、硬化が十分進行し、耐溶剤性が良好であることが分かった。
【実施例−3】
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート80g、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル20gを混合した物に、上記表1に記載の化合物(1)〜(8.7)を光開始剤として同表1の添加量で添加し、良く撹拌して均一にした。これを厚さ50マイクロメートルのポリエチレンテレフタレートフィルムに#3のバーコーターで塗布した。これに、ベルトコンベア付の光照射装置を使用して80W/cmの高圧水銀灯の光を照射した。ランプからベルトコンベアまでの距離は10cm、ベルトコンベアのラインスピードは8cm/分とした。
硬化後24時間室温に放置後、鉛筆硬度試験機を用い、荷重1kgで鉛筆硬度を測定した。その結果、何れも2Hの硬度であった。
次に、光学的立体造形用樹脂組成物および光学的立体造形法に関し、本発明の実施例と比較例を記載する。なお、本実施例、比較例では部は重量部を意味する。本実施例、比較例で行った実験を説明する。
実験1:造形精度(縦横方向)および造形性試験
樹脂組成物を可動NCテーブル、光学系(レーザーを含む)、制御用コンピュータからなる光造形用実験システムに入れ、この樹脂組成物からCADデータを元に、0.1mmピッチで縦100mm、横100mm、高さ10mmの中実の箱を作成し、縦横の長さのCADデータからのずれを測定した。また、このときの造形性や得られたモデルの外観も観察した。
実験2:感度測定実験
実験1と同様の実験システムを用い、文献(高速3次元成型の基礎、PaulF.Jacobs編、著、日経BP出版センター(1993年)、258ページ)に記されている方法を用いて樹脂の感度測定を行った。
実験3:造形精度試験(深さ方向の余剰硬化部の厚さ)
試験片の形状を変えた以外は実験1と同様の造形性試験を行った。即ち、第5図に示す形状の試験片を作成した(図中、a=b=c=10mm、d=50mm、e=5mm)。この試験片は、図示するように中央部に支えがない。よって、中央部の硬化時には光が十分吸収されないと下層へ達して余剰硬化部を形成する。余剰硬化部は硬化性が悪く他の部分と比較して硬度が低いので、造形後中央部の凹部の厚さをノギスで測定し、次いでナイフで軽く削り余剰硬化部を取り除き、再び厚さを測定し、この差から余剰部の厚さを求めた。
実験4:機械強度測定
実験1と同様に、曲げ試験並びに衝撃試験用試験片を得た。得られた試験片を用い、JIS−6911に従って曲げ強さ及びアイゾット衝撃強さ(ノッチ付)、引っ張伸びを測定した。なお、実験に使用した材料は以下の通りである。
(1)カチオン重合性有機物質(「カチオン樹脂」と略記する)としては下記のカチオン樹脂1〜5を用いた。
カチオン樹脂1:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
カチオン樹脂2:1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル
カチオン樹脂3:ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート
カチオン樹脂4:ビスフェノールAジグリシジルエーテル
カチオン樹脂5:1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン
(2)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(「カチオン開始剤」と略記する)としては下記のカチオン開始剤1〜3を用いた。
カチオン開始剤1:化合物1
カチオン開始剤2:化合物3
カチオン開始剤3:化合物9
(3)ラジカル重合性有機物質(「ラジカル樹脂」と略記する)としては下記のラジカル樹脂1〜3を用いた。
ラジカル樹脂1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
ラジカル樹脂2:ビスフェノールAエポキシ樹脂のアクリル化物
ラジカル樹脂3:トリメチロールプロパントリアクリレート
(4)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(「ラジカル開始剤」と略記する)としては下記のラジカル開始剤1〜2を用いた。
ラジカル開始剤1:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン
ラジカル開始剤2:1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン
実験に使用したレーザーは以下の3種類である。
Nd−YVO:Nd−YVOレーザーに非線形結晶を組み合わせて1/3の波長に変換したレーザー。波長355nm、パルス発振(スペクトラフィジックス社製、商品名:BLIO−355Q)
Ar−1:紫外線発振のArイオンレーザー。333、351、364nmの混合波(コヒーレント社製、商品名:INNOVA325。351nm波のエネルギー量割合は44%)
Ar−2:紫外線発振のArイオンレーザー。351nmを主とし、333nmを少量含む混合波(コヒーレント社製、商品名:INNOVA325/0165−148−00。351nm波のエネルギー量割合は76%)
実施例−4〜11、比較例1
表2に示した配合比で樹脂を充分混合して光学的立体造形用樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物は淡黄色透明の液体である。得られた樹脂組成物を用い、表2に示すレーザーを用いて実験1〜4を行った。得られた結果を下記の表2に示す。同様に実施例5〜11、比較例1について行なった。得られた結果を下記の表2〜4に示す。



〔実施例12〜15、比較例2〕
合成例11〜14で得られた芳香族スルホニウム塩である光酸発生剤を含有する光重合開始剤を使用して、下記の表5に示す組成の光重合性組成物を調製した。

(a):3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
(b):1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル
(c):ビックケミー社製レベリング剤
(d):(4−イソブチル−フェニル)−トリル−ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート
得られた各光重合性組成物について、ベンゼン発生量、硬化性、熱安定性を以下のようにして調べた。結果を下記の表2に示す。
(ベンゼン発生量)
各光重合性組成物を、アルミニウム基板に15.4g/mの割合で塗布し、水銀ランプにより400mJ/cmの紫外線を照射して硬化させた。硬化塗膜0.5gをセル内に封入し、50mlのエタノールで抽出を行い、ガスクロマトグラフィーにてエタノール中のベンゼン含量を測定した。尚、ベンゼンを検出できなかったときはNDとして表示した。
(硬化性:MEKラブテスト)
各光重合性組成物を、アルミコート紙上にNo.3のバーコーターで塗布し、これにベルトコンベア付きの光照射装置を使用して80W/cmの高圧水銀灯の光を照射した。
ランプからベルトコンベアまでの距離は10cm、ベルトコンベアのラインスピードは5cm/分とした。硬化後24時間室温に放置した後、MEK(メチルエチルケトン)を付けた綿棒で塗膜をこすり、塗膜が除去されるまでの回数(1往復を1回とカウント)を測定した。
(熱安定性)
各光重合性組成物を40℃の恒温槽内に放置し、一定期間毎に粘度(Pa・s)を測定した。

【実施例16】
実施例12の光重合性組成物を用いて、以下の組成で紫外線硬化性インキを製造した。この紫外線硬化性インキはベンゼンを発生させないので食品包装材に好ましく用いることができた。
インキ組成
光重合性組成物: 100 重量部
フタロシアニンブルー: 20 重量部
メチルエチルケトン :100 重量部
アントラセン: 1 重量部
〔実施例17〜20、比較例3〕
合成例11〜14で得られた芳香族スルホニウム塩である光酸発生剤を含有する光重合開始剤を使用して、下記の表7に示す組成の光重合性組成物を調製した。

(e):ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリレート
(f):ジエトキシアセトフェノン
得られた各光重合性組成物について、実施例12等と同様に試験した。結果を下記の表8に示す。

【実施例21】
実施例17の光重合性組成物を用いて、以下の組成で紫外線硬化性インキを製造した。この紫外線硬化性インキはベンゼンを発生させないので食品包装材に好ましく用いることができた。
インキ組成
光重合性組成物: 100 重量部
フタロシアニンブルー: 20 重量部
メチルエチルケトン :100 重量部
アントラセン: 1 重量部
【産業上の利用可能性】
以上説明してきたように、本発明の芳香族スルホニウム塩化合物は効率のよい長波長部の光を吸収して活性化され、優れた光酸発生剤として作用する。また、これを含有する光重合性組成物は迅速に硬化し、良質な硬化物物性を与え、よって、これを含有する光重合性組成物のホトレジストは高感度、高解像度を有する。また、食品包装材用のインキにも用いることができ、広範な用途に使用することができるとともに本発明の芳香族スルホニウム塩化合物を含有する光学的立体造形用樹脂組成物を用いることにより、従来技術の欠点を解消し、酸素による硬化阻害が起こらず、硬化時の精度がよく、余剰硬化部も小さく、容易に所望の寸法の造形物を得ることができ、しかも照射エネルギーに対して高感度で、硬化深度が十分であり層剥離のない、光学的立体造形方法を提供することができた。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)、

(式中、R〜R17は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、フェノキシ基、エステル基、アリール基、チオエーテル基、チオカルボニル基、スルフィニル基、スルホニル基、アミノ基、アミド基、イミド基、ニトリル基、ホスフィノ基、ホスホニオ基、ホスホリル基、炭素数1〜8のフルオロアルキル基からなる群から選ばれる基であって、同一でも異なっていてもよく、これらの基の官能基以外の部分は、炭素数1〜12の、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、炭素環式芳香族炭化水素基、複素環式芳香族炭化水素基であってもよく、またR及びRは互いに縮合して共有結合となっていてもよい。)で表されることを特徴とする芳香族スルホニウム塩化合物。
【請求項2】
アシル基が、R−CO−、又はAr−CO−
(但し、Rは直鎖又は分岐鎖のアルキル基、若しくは脂環式炭化水素基であり、

18〜R63は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基またはアルコキシ基であり同一であっても異なっていてもよい。)で表されるものである請求の範囲第1項に記載の芳香族スルホニウム塩化合物。
【請求項3】
化合物のXで表されるアニオン部がSbF、PF、AsF、BF、SbCl、ClO、CFSO、CHSO、FSO、FPO、p−トルエンスルホネート、カンファースルホネート、ノナフロロブタンスルホネート、ヘキサデカフロロオクタンスルホネート、テトラアリールボレートからなる群から選ばれるいずれかの基である請求の範囲第1項又は第2項に記載の芳香族スルホニウム塩化合物。
【請求項4】
請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の芳香族スルホニウム塩化合物からなることを特徴とする光酸発生剤。
【請求項5】
必須の構成成分として、(1)カチオン重合性有機物質と(2)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤として請求の範囲第4項に記載の光酸発生剤を含有することを特徴とする光重合性組成物。
【請求項6】
必須の構成成分として、更に(3)ラジカル重合性有機物質と(4)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤を含有することを特徴とする請求の範囲第5項に記載の光重合性組成物。
【請求項7】
前記(1)カチオン重合性有機物質の少なくとも1種が、1分子中に1個以上のエポキシ基を有する有機化合物である請求の範囲第5項又は第6項に記載の光重合性組成物。
【請求項8】
前記(1)カチオン重合性有機物質のうち30重量%以上が分子中にシクロヘキセンオキシド構造を有する化合物である請求の範囲第5項〜第7項の何れかに記載の光重合性組成物。
【請求項9】
前記(3)ラジカル重合性有機物質のうち50重量%以上が分子中に(メタ)アクリル基を有する化合物である請求の範囲第6項〜第8項のうちいずれか一項に記載の光重合性組成物。
【請求項10】
一般式(I)において、R〜R17のうちの少なくとも1つはアシル基であることを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項に記載の芳香族スルホニウム塩化合物。
【請求項11】
芳香族スルホニウム化合物が請求の範囲第10項に記載の芳香族スルホニウム塩化合物である、請求の範囲第4項に記載の光酸発生剤。
【請求項12】
光酸発生剤が請求の範囲第11項に記載の光酸発生剤である、請求の範囲第5項〜第9項のいずれか一項に記載の光重合性組成物。
【請求項13】
請求の範囲第12項に記載の光重合性組成物からなることを特徴とする光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項14】
エネルギー線硬化性樹脂組成物の任意の表面にエネルギー線を照射し、該樹脂組成物のエネルギー線照射表面を硬化させて所望の厚さの硬化層を形成し、該硬化層上に前述のエネルギー線硬化性樹脂組成物をさらに供給して、これを同様に硬化させ前述の硬化層と連続した硬化物を得る積層操作を行い、この操作を繰り返すことによって三次元の立体物を得る光学的立体造形法において、上記エネルギー線硬化性樹脂組成物が請求の範囲第13項に記載の光学的立体造形用樹脂組成物であることを特徴とする光学的立体造形法。
【請求項15】
照射するエネルギー線が、紫外光であることを特徴とする請求の範囲第14項記載の立体造形法。
【請求項16】
250〜400nmの波長間の光の総合計エネルギー量に対して、345〜360nmの波長間の合計エネルギー量が70%以上である光を照射することを特徴とする請求の範囲第15項記載の光学的立体造形法。
【請求項17】
照射するエネルギー線がレーザー光であることを特徴とする請求の範囲第14項〜第16項のいずれか一項に記載の光学的立体造形法。
【請求項18】
下記一般式(I)、

(式中、R〜R17は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、フェノキシ基、エステル基、アリール基、チオエーテル基、チオカルボニル基、スルフィニル基、スルホニル基、アミノ基、アミド基、イミド基、ニトリル基、ホスフィノ基、ホスホニオ基、ホスホリル基、炭素数1〜8のフルオロアルキル基からなる群から選ばれる基であって、同一でも異なっていてもよく、これらの基の官能基以外の部分は、炭素数1〜12の、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、炭素環式芳香族炭化水素基、複素環式芳香族炭化水素基であってもよく、またR及びRは互いに縮合して共有結合となっていてもよい。但し、R〜Rの全てが同時に水素原子であることは無く、また、R〜R10の全てが同時に水素原子であることも無い。Xは上記と同じである)で表されることを特徴とする芳香族スルホニウム塩化合物。
【請求項19】
芳香族スルホニウム化合物が請求の範囲第18項に記載の芳香族スルホニウム塩化合物である、請求の範囲第4項に記載の光酸発生剤。
【請求項20】
光酸発生剤が請求の範囲第19項に記載の光酸発生剤である、請求の範囲第5項〜第9項のいずれか一項に記載の光重合性組成物。
【請求項21】
請求の範囲第20項に記載の光重合性組成物からなることを特徴とする紫外線硬化性インキ。
【請求項22】
請求の範囲第20項に記載の光重合性組成物からなることを特徴とする、食品包装材用紫外線硬化性インキ。
【請求項23】
請求の範囲第21項に記載の紫外線硬化性インキ、又は、請求の範囲第22項に記載の食品包装材用紫外線硬化性インキを用いた印刷が施されていることを特徴とする食品包装材。

【国際公開番号】WO2004/029037
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【発行日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539524(P2004−539524)
【国際出願番号】PCT/JP2003/012226
【国際出願日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【出願人】(000000387)旭電化工業株式会社 (987)
【Fターム(参考)】