説明

新規抗体並びに治療及び診断方法におけるその使用

KTPAF50タンパク質を特異的に認識するポリクローナル及びモノクローナル抗体並びにそれを含む組成物が提供される。癌、自己免疫疾患、移植片拒絶、神経変性疾患及び糖尿病等の状態の診断及び治療におけるKTPAF50特異抗体の使用も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規抗体並びに治療及び診断方法におけるその使用に関し、特に、自己免疫障害及び癌に関する。
【背景技術】
【0002】
本願を通じて言及されているあらゆる刊行物は、そこに引用されているあらゆる参考文献を含み、参照として本明細書に完全に組み込まれる。
【0003】
組織特異的タンパク質及びその発現レベルは、生物の健康状態の優れた指標及び疾患の場合は治療の標的候補となり得る。
【0004】
ヒトが罹患する疾患は、その原因の機序に従って分類することができる。例えば、免疫学的な成分又は病因を有する疾患として、感染症、急性及び慢性炎症性疾患、癌、移植並びに自己免疫疾患が挙げられる。
【0005】
炎症性腸疾患(IBD)という用語は、恐らく身体のそれ自身の腸組織に対する免疫反応の結果腸が炎症を起こし(発赤及び肥大化)、したがって自己免疫障害であると考えられる障害群を包含する。
【0006】
IBDの主要な2つの型、潰瘍性大腸炎(UC)及びクローン病(CD)が説明されてきた。その病名が示唆するように、潰瘍性大腸炎は結腸(大腸)に限定される。クローン病は口から肛門に及ぶ消化管のいずれの部分にも関与し得るが、これは小腸及び/又は結腸において最も多く発症する。
【0007】
重度の炎症がある場合、疾患は活性期にあると考えられ、患者の状態は再燃を起こす。炎症の程度がより低い(又はない)場合、患者は通常無症状であり、疾患は寛解期にあると考えられる。
【0008】
炎症性腸疾患の原因は完全には明らかになっていない。未知の因子/病原体(又は因子の組合せ)が、無制御に続く炎症反応を腸管において生じるよう身体の免疫系を誘発する。炎症反応の結果腸壁が傷害され、血性下痢及び腹痛をもたらす。
【0009】
遺伝的、感染性、免疫性及び心理的要因は全て、IBD発症への影響と関連付けられてきた。IBD発症に対する遺伝的素因(或いは感受性)が存在する。しかし依然として、身体の免疫系活性化の誘発因子は同定するべき課題である。身体の免疫系をオンにすることのできる因子として、感染病原体(未だ同定されていない)、抗原(例えば、牛乳由来のタンパク質)に対する免疫応答、或いは自己免疫過程が挙げられる。腸は免疫反応をもたらし得る物体に常に曝露されているため、より最近の仮説として、生物が正常な免疫応答をオフにする不全の存在が挙げられる。
【0010】
IBDは慢性疾患であり、罹患した対象は、疾患が再燃し症状が発生する期間を経て、続いて症状がなくなる、或いは低減して良好な健康状態を回復する寛解期となる。
【0011】
症状は軽度から重度の範囲に及び、通常、関与する腸管の部分に依存し得る。症状として、次のものが挙げられる。腹部疝痛及び腹痛、血性下痢、非常に切迫した便通、発熱、食欲不振、体重減少、貧血(失血による)。
【0012】
炎症性腸疾患の腸合併症として、次のものが挙げられる。潰瘍からの大量出血、腸の穿孔(破裂)、狭窄及び閉塞(クローン病患者において、狭窄は多くの場合炎症性であり、薬物治療で頻繁に軽快する)、固定又は線維症(瘢痕性)狭窄は、閉塞の軽減に内視鏡による処置又は外科的処置を必要とし得る。潰瘍性大腸炎において、結腸狭窄は悪性(癌性)であると推測される。瘻孔(異常な通り道)及び肛門周囲の疾患は、クローン病患者においてより一般的である。中毒性巨大結腸症(結腸の急性非閉塞性拡張)は潰瘍性大腸炎の生命に関わる合併症であり、緊急の外科的処置を必要とする。潰瘍性大腸炎における結腸癌のリスクは、診断約8〜10年後に一般集団のリスクを超えて有意に増加し始める。結腸全体が関与する場合、クローン病における癌のリスクは潰瘍性大腸炎のリスクと等しくなるであろう。クローン病において小腸悪性腫瘍のリスクが増加する。
【0013】
IBDの腸外併発は、腸以外の器官に関与する合併症を意味する。これらは、IBD患者のごく一部にしか影響を与えない。IBD患者は、関節炎、皮膚疾患、目の炎症、肝及び腎障害並びに骨量減少に罹っている可能性がある。
【0014】
IBDの診断は現在、主に検便、便潜血検査、全血球数、電解質パネル、LFT(アラニントランスアミナーゼ、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、アルカリホスファターゼ、アルブミン、総タンパク質及びビリルビンレベルの測定)を含む試験及び検査の組合せによって行われる。
【0015】
放射線医学(例えば、腹部X線又はバリウム注腸)及び内視鏡による手順(例えば、結腸内視鏡検査及びS字結腸鏡検査)もまた、IBDの診断に用いられる。
【0016】
明らかに、IBDの明確な診断方法は依然として存在せず、IBDの鑑別及び特異的診断に有用となり得る分子マーカーの必要がある。
【0017】
癌の種類の非限定的な例として、副腎皮質癌、悪性黒色腫、非黒色腫皮膚癌、皮膚T細胞性リンパ腫、カポジ肉腫、膀胱癌、結腸癌、結腸直腸癌、直腸癌、神経外胚葉性及び松果体癌、小児脳幹神経膠腫、小児小脳星状細胞腫、小児大脳星状細胞腫、小児髄芽腫、小児視覚路神経膠腫、髄膜腫、混合膠腫、乏突起神経膠腫、星状細胞腫、脳室上衣腫、下垂体腺腫、転移性腺癌、聴神経腫瘍、脊椎傍悪性奇形腫、乳癌、腺管癌、乳腺腫瘍症、卵巣癌、カルチノイド腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、子宮内膜癌、腟癌、外陰癌、妊娠性トロホブラスト癌、卵管癌、子宮肉腫、白血病、リンパ腫(ホジキン病及び非ホジキン病)、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、軟部肉腫、ウィルムス腫瘍、ファンコニー貧血、ランゲルハンス細胞組織球症、腎臓の悪性ラブドイド腫瘍、肝癌、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、絨毛癌、内分泌性癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング肉腫、眼癌、胃癌、胃腸癌、尿生殖器癌、神経膠腫、婦人科系の癌、頭頸部癌、肝細胞癌、下咽頭癌、膵島細胞癌、腎癌、喉頭癌、肺癌、リンパ腫、男性乳癌、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌、非黒色腫皮膚癌、食道癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、下垂体癌、前立腺癌、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、扁平上皮癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、移行細胞癌、絨毛性癌、子宮癌、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺嚢胞性癌、肛門癌、骨癌、腸癌、腺管癌、脂肪肉腫、神経芽細胞腫、腎芽腫並びに骨肉腫が挙げられる。
【0018】
炎症性疾患は、敗血症、内毒血症、膵炎、ぶどう膜炎、肝炎、腹膜炎、角膜炎、SIRS及び損傷によって誘発された炎症を含む。
【0019】
妊孕性に関連する疾患は、男性不妊症及び女性不妊症を含む。男性不妊症は様々な問題に起因し得る。より一般的な障害の一部を下に列挙する。
− 精子産生欠損:男性不妊症の90パーセントが、十分な精子を産生できないことに起因する。無精子症(Azzospermia)は精子が全く産生されないときに発生し、一方、精子が殆ど産生されない場合は精子減少症と診断される。
− 精索静脈瘤;
− 他の障害:男性不妊症の原因となり得る他の障害として、精巣の異常発達又は傷害(内分泌障害又は炎症に起因する)、付属腺の障害、性交障害、雄性生殖管に嚢胞を生じる1950年代及び1960年代に用いられた合成エストロゲン、ジエチルスチルベストロール(DES)への曝露、停留精巣及び稀な事例では染色体異常等の遺伝的障害が挙げられる。
【0020】
女性不妊症もまた、様々な問題に起因し得る。より一般的な障害の一部として、多嚢胞性卵巣疾患、骨盤内炎症性疾患、排卵性機能障害、子宮筋腫、子宮内膜症及び免疫学的不妊症が挙げられる。
【0021】
炭水化物代謝障害は様々な形で生じる。最もよく見られる障害は後天性である。糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧性昏睡及び低血糖等、炭水化物代謝における後天性又は続発性の撹乱はいずれも、中枢神経系に作用する。糖尿病において、末梢神経疾患の多くの形態及び変種も観察される。炭水化物代謝のその他の障害は、稀に起こる先天性代謝異常(即ち、遺伝的欠陥)である。
【0022】
炭水化物代謝の後天性障害は、米国内及び世界中の両方で非常によく見られる。低血糖は、アルコール依存症及びインスリン治療されている糖尿病患者の両方における、神経疾患、特に急性精神機能低下、記憶喪失、失見当識、鈍麻及び昏睡の一般的な原因である。他の原因による高インスリン血症は稀であるが、膵腫瘍が原因の可能性もある。その様々な神経合併症を伴う糖尿病は、成人患者で治療される最もよく見られる障害の1つである。
【0023】
炭水化物代謝の遺伝性障害は稀である。重度のピルビン酸脱水素酵素(PDH)複合体欠損及びペントース尿症と呼ばれる良性化学的異常は、非常に少数(2〜6名)の患者でしか報告されていない。
【0024】
低血糖、糖尿病性ケトアシドーシス及び高浸透圧性昏睡はいずれも致死の可能性があるが、治療の可能性がある状態である。
【0025】
国際公開第2009/083968号パンフレットにおいて、本発明者らは、KTPAF50と命名したタンパク質について記述し、このタンパク質は胎盤、腎臓(成体及び胎児)、膵臓及び精巣における特異的な発現を示したが、造血組織では休止及び活性型CD8細胞、休止及び活性型単核細胞並びに休止及び活性型CD19細胞において検出された。
【0026】
KTPAF50特異抗体を開発したところ、驚いたことに、本発明者らは、本発明においてKTPAF50の発現が特に癌及び自己免疫障害における特定の病状と相関し得ることを示す。
【0027】
さらに予期せぬことに、本発明者らは、KTPAF50特異抗体が細胞増殖及びサイトカイン発現の強力な制御因子であることを示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
そこで、本発明の目的は、KTPAF50を特異的に認識する抗体並びに癌、自己免疫障害、移植片拒絶、神経変性疾患及び糖尿病の診断及び治療におけるその使用を提供することである。
【0029】
本明細書及び続く実施例に示されている通り、本発明の診断方法は、特定の種類の癌及び自己免疫障害の検出及びモニタリングに特に適している。
【0030】
本発明の上述及び他の用途及び目的は、説明が進むにつれて明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0031】
第一の態様において、本発明は、KTPAF50タンパク質又はその任意の断片若しくは誘導体を特異的に認識する抗体と共に、それを含む組成物に関する。前記KTPAF50タンパク質は、配列番号1又は配列番号2で表される。
【0032】
本発明はまた、配列番号3、配列番号5、配列番号6及び配列番号7のいずれか一配列で表されるKTPAF50由来ペプチドを特異的に認識する抗体並びにそれを含む組成物に関する。
【0033】
本明細書に記載されている抗体又はそれを含む組成物は、診断及び/又は治療方法に用いるためのものである。
【0034】
特に、前記抗体又はそれを含む組成物は、癌及び自己免疫障害のいずれか一方の診断又は予後と共に、癌治療に用いるためのものである。
【0035】
別の一態様において、本発明は、KTPAF50タンパク質又はそれに由来するペプチドを特異的に認識する抗体を産生する抗体産生細胞系又はハイブリドーマ細胞系を提供する。これらの細胞系によって産生される抗体もまた、本発明により提供される。
【0036】
さらに別の一態様において、本発明は、診断又は治療組成物の調製における、KTPAF50タンパク質又はそれに由来するペプチドを特異的に認識する抗体の使用を提供する。
【0037】
一実施形態において、本明細書において提供される診断組成物は、癌及び自己免疫疾患のいずれか一方の診断のためのものである。
【0038】
本発明に提供される治療組成物は、癌、自己免疫疾患、神経変性疾患、糖尿病及び移植片拒絶からなる群から選択された状態の治療のためのものである。
【0039】
さらに別の一態様において、本発明は、対象における癌又は自己免疫疾患のいずれか一方の診断のための方法であって、
a)対象から試料を得る工程と、
b)前記試料をKTPAF50タンパク質又はそれに由来するペプチドを特異的に認識する少なくとも1種類の抗体又はそれを含む組成物と接触させる工程と、
c)前記少なくとも1種類の抗体とその特異抗原との複合体の形成を検出手段により検出する工程と、
を含み、それにより、複合体の検出が、前記対象が癌又は自己免疫障害に罹患していることを示す方法を提供する。
【0040】
前記方法の一実施形態において、前記試料は血液試料である。
【0041】
前記方法の別の特定の一実施形態において、前記癌は、肺癌、乳癌及び卵巣癌からなる群から選択される。
【0042】
さらに別の一実施形態において、本発明は、必要とする対象に治療上有効量の少なくとも1種類の抗KTPAF50抗体若しくはその組合せ又はそれを含む組成物を投与する工程を含む、癌の治療のための方法を提供する。
【0043】
本発明は、有効量の少なくとも1種類の抗KTPAF50抗体若しくはその組合せ又はそれを含む組成物を細胞と接触させる工程を含む、細胞増殖を抑制する或いはサイトカイン発現を抑制する方法をさらに提供する。特定の一実施形態において、前記細胞はサイトカインを発現する細胞である。
【0044】
本発明の抗体によってその発現が抑制される特定のサイトカインは、TNF−α、IFN−γ又はIL−10である。
【0045】
さらに別の一態様において、本発明は、癌又は自己免疫疾患の診断、治療有効性のモニタリング又は予後評価の内いずれか1つのためのキットであって、次の構成要素、
a)本発明に係る少なくとも1種類の抗体又はそれを含む組成物と、
b)本発明の前記抗体によって特異的に認識される抗原の、試料における存在の検出を行うための取扱説明書と、
を含む、キットを提供する。
【0046】
前記キットは、次の構成要素、
a)検査する試料を採取するための少なくとも1つの手段と、
b)前記抗体による前記抗原の前記認識の検出に必要な少なくとも1種類の試薬と、
c)少なくとも1種類の対照試料と、
の内少なくとも1つをさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】抗KTPAF50のKTPAF50抗原に対する特異性を示す検量線の図である。
【図2】健常者(H)と比較した、肺癌(LC)患者から得られたヒト血液血清中のKTPAF50濃度を示すヒストグラムである。
【図3A】雌Balb/C脾細胞生存率における抗KTPAF50モノクローナル抗体の効果を示す図であり、レサズリン(Resazurin)と4時間インキュベーションした後に測定した、抗KTPAF50抗体による24時間処理の効果を示すヒストグラムである。略語:抗PRT3 1=抗体3E3G7;抗PRT3 2=抗体5E11H3;Treat.=処理;rel.cont.=対照との相対値。
【図3B】雌Balb/C脾細胞生存率における抗KTPAF50モノクローナル抗体の効果を示す図であり、レサズリンと24時間インキュベーションした後に測定した、抗KTPAF50抗体による24時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図3C】雌Balb/C脾細胞生存率における抗KTPAF50モノクローナル抗体の効果を示す図であり、レサズリンと24時間インキュベーションした後に測定した、抗KTPAF50抗体による48時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図4A】雌又は雄C57/black脾細胞生存率における抗KTPAF50モノクローナル抗体の効果を示す図であり、雄C57/blackマウス由来の細胞における、レサズリンと24時間インキュベーションした後に測定した、抗KTPAF50抗体による24時間処理の効果を示すヒストグラムである。略語:抗PRT3 1=抗体5E11H3;抗PRT3 2=抗体3E3G7;Treat.=処理;rel.cont.=対照との相対値。
【図4B】雌又は雄C57/black脾細胞生存率における抗KTPAF50モノクローナル抗体の効果を示す図であり、雌C57/blackマウス由来細胞における、レサズリンと24時間インキュベーションした後に測定した、抗KTPAF50抗体による24時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図4C】雌又は雄C57/black脾細胞生存率における抗KTPAF50モノクローナル抗体の効果を示す図であり、雄C57/blackマウス由来の細胞における、レサズリンと24時間インキュベーションした後に測定した、抗KTPAF50抗体による48時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図4D】雌又は雄C57/black脾細胞生存率における抗KTPAF50モノクローナル抗体の効果を示す図であり、雌C57/blackマウス由来細胞における、レサズリンと24時間インキュベーションした後に測定した、抗KTPAF50抗体による48時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図4E】雌又は雄C57/black脾細胞生存率における抗KTPAF50モノクローナル抗体の効果を示す図であり、雄C57/blackマウス由来の細胞における、レサズリンと4.5時間インキュベーションした後に測定した、抗KTPAF50抗体による72時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図4F】雌又は雄C57/black脾細胞生存率における抗KTPAF50モノクローナル抗体の効果を示す図であり、雌C57/blackマウス由来細胞における、レサズリンと4.5時間インキュベーションした後に測定した、抗KTPAF50抗体による72時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図5】C57/black処理脾細胞由来の培地中のKTPAF50濃度を示す図である。略語:f.=雌;m.=雄
【図6A】24時間の抗KTPAF50抗体処理に続く、ヒト単球の生存率を示す図であり、レサズリンと2時間インキュベーションした後に測定した、抗KTPAF50抗体による24時間処理の効果を示すヒストグラムである。略語:抗PRT3 1=抗体5E11H3;抗PRT3 2=抗体3E3G7;rel.=相対;cont.=対照;treat.=処理。
【図6B】24時間の抗KTPAF50抗体処理に続く、ヒト単球の生存率を示す図であり、レサズリンと4時間インキュベーションした後に測定した、抗KTPAF50抗体による24時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図6C】24時間の抗KTPAF50抗体処理に続く、ヒト単球の生存率を示す図であり、レサズリンと24時間インキュベーションした後に測定した、抗KTPAF50抗体による24時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図7A】48時間の抗KTPAF50抗体処理に続く、ヒト単球の生存率を示す図であり、レサズリンと2時間インキュベーションした後に測定した、抗KTPAF50抗体による48時間処理の効果を示すヒストグラムである。略語:抗PRT3 1=抗体5E11H3;抗PRT3 2=抗体3E3G7;rel.=相対;cont.=対照;treat.=処理。
【図7B】48時間の抗KTPAF50抗体処理に続く、ヒト単球の生存率を示す図であり、レサズリンと4時間インキュベーションした後に測定した、抗KTPAF50抗体による48時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図8A】ヒト単球におけるTNF−α発現に対するKTPAF50抗体の効果を示す図であり、TNF−αキャリブレーションを示す図である。略語:抗PRT3 1=5E11H3;抗PRT3 2=3E3G7;cont.=対照。
【図8B】ヒト単球におけるTNF−α発現に対するKTPAF50抗体の効果を示す図であり、TNF−α発現におけるKTPAF50抗体による24時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図8C】ヒト単球におけるTNF−α発現に対するKTPAF50抗体の効果を示す図であり、TNF−α発現におけるKTPAF50抗体による48時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図8D】ヒト単球におけるTNF−α発現に対するKTPAF50抗体の効果を示す図であり、TNF−α発現におけるKTPAF50抗体による120時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図8E】ヒト単球におけるTNF−α発現に対するKTPAF50抗体の効果を示す図であり、TNF−α発現におけるKTPAF50抗体による144時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図9A】ヒト単球におけるINF−γ発現に対するKTPAF50抗体の効果を示す図であり、INF−γキャリブレーションを示す図である。略語:抗PRT3 1=5E11H3;抗PRT3 2=3E3G7;conc.=濃度。
【図9B】ヒト単球におけるINF−γ発現に対するKTPAF50抗体の効果を示す図であり、INF−γ発現におけるKTPAF50抗体による24時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図9C】ヒト単球におけるINF−γ発現に対するKTPAF50抗体の効果を示す図であり、INF−γ発現におけるKTPAF50抗体による48時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図9D】ヒト単球におけるINF−γ発現に対するKTPAF50抗体の効果を示す図であり、INF−γ発現におけるKTPAF50抗体による120時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図9E】ヒト単球におけるINF−γ発現に対するKTPAF50抗体の効果を示す図であり、INF−γ発現におけるKTPAF50抗体による144時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図10A】ヒト単球におけるIL−10発現に対するKTPAF50抗体の効果を示す図であり、IL−10キャリブレーションを示す図である。略語:抗PRT3 1=5E11H3;抗PRT3 2=3E3G7;conc.=濃度。
【図10B】ヒト単球におけるIL−10発現に対するKTPAF50抗体の効果を示す図であり、IL−10発現におけるKTPAF50抗体による24時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図10C】ヒト単球におけるIL−10発現に対するKTPAF50抗体の効果を示す図であり、IL−10発現におけるKTPAF50抗体による48時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図10D】ヒト単球におけるIL−10発現に対するKTPAF50抗体の効果を示す図であり、IL−10発現におけるKTPAF50抗体による120時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図10E】ヒト単球におけるIL−10発現に対するKTPAF50抗体の効果を示す図であり、IL−10発現におけるKTPAF50抗体による144時間処理の効果を示すヒストグラムである。
【図11】24時間及び144時間インキュベーション後の、ヒト単球の培地におけるKTPAF50タンパク質の存在を示す図である。略語:cont.=対照
【図12A】光学顕微鏡により可視化した抗KTPAF50処理後の細胞形態変化を示す図であり、対照を示す図である。
【図12B】光学顕微鏡により可視化した抗KTPAF50処理後の細胞形態変化を示す図であり、100μlの抗KTPAF50抗体(α−PRT3 1)で処理した細胞を示す図である。
【図12C】光学顕微鏡により可視化した抗KTPAF50処理後の細胞形態変化を示す図であり、100μlの抗KTPAF50抗体(α−PRT3 2)で処理した細胞を示す図である。
【図12D】光学顕微鏡により可視化した抗KTPAF50処理後の細胞形態変化を示す図であり、100ng/mlのKTPAF50タンパク質で処理した細胞を示す図である。
【図12E】光学顕微鏡により可視化した抗KTPAF50処理後の細胞形態変化を示す図であり、500ng/mlのKTPAF50タンパク質で処理した細胞を示す図である。
【図12F】光学顕微鏡により可視化した抗KTPAF50処理後の細胞形態変化を示す図であり、1000ng/mlのKTPAF50タンパク質で処理した細胞を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以前の報告において、本発明者らは、KTPAF50と命名されたタンパク質(本明細書においてPRT3とも称する)について、その発現パターン及び生物活性を示しつつ記述した[国際公開第2009/083968号パンフレット]。本発明のため、国際公開第2009/083968号パンフレットの内容は参照として本明細書に完全に組み込まれる。
【0049】
とりわけ、国際公開第2009/083968号パンフレットはKTPAF50発現パターンについて記述する。さらに、国際公開第2009/083968号パンフレットは、本明細書において配列番号1として示されるシグナルペプチドを含まないKTPAF50全長タンパク質の配列と、本明細書において配列番号2として示されるシグナルペプチドを含むKTPAF50全長タンパク質の配列を提供する。加えて、国際公開第2009/083968号パンフレットにおいて、本明細書において配列番号4として表されている36アミノ酸長のN末端ペプチドも記載されている。
【0050】
本発明において、本発明者らは、KTPAF50タンパク質及び/又はKTPAF50由来ペプチドを認識し結合する抗体の開発について記載する。
【0051】
驚いたことに、後述する例1に記載されている通り、前記抗体は、国際公開第2009/083968号明細書に記載されている通りKTPAF50の組織発現と直接的な相関のない特定の種類の癌、特に肺癌における前記タンパク質の同定において特異的であることが示された。
【0052】
本発明者らは、KTPAF50特異抗体が細胞生存の強力な制御因子であり、したがって細胞増殖の制御における重要なツールとして用いることができることも証明する。
【0053】
予期せぬことに、KTPAF50特異抗体は、本明細書において炎症性サイトカイン発現の効果的な制御因子として示されている。これらの結果は、免疫系の恒常性バランスにおけるKTPAF50の中心的役割を示唆し、その抗体を潜在的な免疫制御因子として提供する。
【0054】
したがって、本発明はその第一の態様において、KTPAF50タンパク質又はその任意の断片若しくは誘導体を特異的に認識する抗体を提供する。特に、前記KTPAF50タンパク質は、配列番号1又は配列番号2で表される。配列番号1は50aa長であり、シグナルペプチドを含まないKTPAF50タンパク質に関連する。配列番号2は74aa長であり、国際公開第2009/083968号パンフレットに以前に記載した通り、シグナルペプチドを含む全長KTPAF50タンパク質に関連する。
【0055】
本明細書において定義されているように、本発明の抗体は通常、天然に由来又は天然に産生されたものである。したがって、抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体である。或いは、本発明の抗体は、合成的に産生、例えば化学合成又は各抗体産生細胞若しくは細胞系から特異的mRNAを単離することにより組換えにより産生されてもよい。それに続き、組換えにより産生された抗体を作製するため、前記特異的mRNAは標準的な分子生物学的操作(cDNAを得て、前記cDNAを発現ベクターに導入する等)に付される。前記技法は当業者に良く知られている。
【0056】
タンパク質に対するポリクローナル抗体の作製は当業者に良く知られた技法であり、とりわけCurrent Protocols in Immunology、John E.Coliganら編、Wiley and Sons Inc.の第2章に記載されている。
【0057】
モノクローナル抗体は、免疫動物、特にラット又はマウスの脾臓又はリンパ節から採取されたB細胞から、雑種細胞の増殖に有利な条件下で不死化B細胞と融合することにより調製することができる。モノクローナル抗体を作製する技法は、上述のCurrent Protocols in Immunology第2章等、多くの論文及び教科書に記載されている。その第2章に記載された通りのモノクローナル抗体の作製のため、これらの動物の脾臓又はリンパ節細胞は、タンパク質免疫動物の脾臓又はリンパ節細胞と同じ方法で用いることができる。モノクローナル抗体の作製に用いられる技法は、Kohler及びMilstein[Kohler及びMilstein(1975年)Nature 256;495〜497]並びに米国特許第4,376,110号明細書によりさらに記載されている。
【0058】
後述の例2は、本発明者らによって作製された30種のKTPAF50特異的モノクローナル抗体について記載する。表2は各抗体の抗原特異性を表し、表3はその抗原親和性を示す。
【0059】
用語「抗体」はまた、例えば、抗原と結合できるscFv、Fv、Fab’、Fab、二重特異性抗体、直鎖抗体、抗体のF(ab’)抗原結合断片等、インタクトな分子とその断片の両方を含むように企図されている[Wahlら(1983年)J.Nucl.Med.24、316〜325]。
【0060】
Fab及びF(ab’)並びに他の抗体断片は、インタクトな抗体分子のため及び本明細書に開示されている抗体の他の用途のための、本明細書に開示されている方法に従った、本発明の抗体の作製のための抗原として用いたタンパク質の生物試料における検出に有用である。このような断片は、例えばパパイン(Fab断片作製のため)又はペプシン(F(ab’)断片作製のため)等の酵素を用いたタンパク質切断により産生することができる。このように、本発明において有用なFab及びF(ab’)並びに他の抗体断片は、使用目的に応じて様々なタグを付けることができる。これらのタグは、検出を促進するための検出可能なタグであっても、腫瘍細胞を殺傷する毒性タグであっても、或いは他の細胞又は物質が腫瘍細胞を殺傷するよう誘導できる「誘導」タグであってもよい。
【0061】
抗体は、分子(抗原)と特異的に反応し、その結果抗体が前記分子と結合できる場合、分子と「結合可能である」又は「認識する」と言われている。用語「エピトープ」は、該抗体又は該抗体を産生する細胞によって認識され得る、抗体が結合することのできる任意の分子の一部を意味するよう企図されている。エピトープ又は「抗原決定基」は、通常、アミノ酸又は糖側鎖等、分子の化学的活性表面分類からなり、特異的三次元構造特性及び特異的電荷特性を有する。
【0062】
「抗原」は、抗体によって認識及び結合され得る分子又は分子の一部である。抗原は、1個又は2個以上のエピトープを有する可能性がある。上述の特異的反応は、抗原がその対応する抗体と高度に選択的且つ特異的な仕方で反応するが、他の抗原によって生じ得る多数の他の抗体とは反応しないことを示すよう企図されている。
【0063】
本発明によって提供される抗体は、特にポリクローナル抗体の任意のアイソタイプ、IgG、IgM、IgE、IgA又はIgDのものとなることができる。
【0064】
モノクローナル抗体は、任意のアイソタイプのものであってもよい。
【0065】
本明細書において提供され表2に示されているモノクローナル抗体は通常、IgGアイソタイプであった。
【0066】
本発明において、本発明のKTAPF50特異抗体を作製するために用いた抗原は、全長タンパク質又はKTAPF50タンパク質に由来するペプチドに対応する。
【0067】
用語「ペプチド」は、本明細書において、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質を表すよう用いられている。ペプチドは、合成により、遺伝子工学的方法により、宿主細胞における発現、或いは他の適切な手段により得ることができる。他に断りのない限り、ペプチドは一般に、自然発生のL−アミノ酸で構成されている。
【0068】
ペプチド分子に関し、用語「生物学的特性」は、全長KTPAF50ペプチド又はKTPAF50ペプチドにより達成され得るin vitro又はin vivo効果の内少なくとも一方を行うペプチドの能力を意味し、これは本明細書に記載されている生物活性を含むが、これに限定されるものではない。例えば、生物学的特性は、癌、免疫系関連疾患、ウイルス性疾患及び炎症ベースの疾患を治療する能力を含む。
【0069】
抗体に関しては、「生物学的特性」又は「生物活性」は一般に、エピトープを特異的に認識し、その結果それと結合する抗体の能力を意味する。エピトープは、全長タンパク質の一部であってもよいし、或いはタンパク質断片又はペプチドに埋め込まれてもよい。実施例において証明され、図面において例証されている通り、図1は、抗KTPAF50抗体のKTPAF50タンパク質に対する特異性を示した。同様に、図3において、抗T101抗体のT101タンパク質に関する特異性が示される。
【0070】
用語「改変された分子の生物学的特性が未改変分子と比べて有意に影響することなく」とは、改変された分子が、未改変分子の生物活性と質的に類似の生物活性を保持することを表すことを意味する。
【0071】
本発明との関連において、改変されたペプチドに関し、これは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7のタンパク質の生物学的特性の内1又は複数を保持することを意味する。ペプチドが未改変の分子の生物活性と質的に類似の生物活性を保持するか決定するため、例えば、改変されたペプチドが、並行してアッセイされる対応する未改変ペプチド(即ち、全長KTPAF50ペプチド又はKTPAF50ペプチドの)と比較されるin vitro、in vivo又は臨床実験、或いは別個に行った実験から分かる通り、改変されたペプチドがアッセイされて未改変ペプチドの生物学的効果と同様の生物学的効果を有するか試験する実験等、1又は複数のアッセイを行うことができる。このような実験は、例えば、国際公開第2009/083968号明細書に記載されている仕方で行うことができる。
【0072】
改変されたペプチドは、KTPAF50ペプチドに含まれる少なくとも8、12、15、20、25、30、35、40又は少なくとも45アミノ酸残基の対応する配列に対してある程度の同一性を有する、少なくとも8、12、15、20、25、30、35、40又は少なくとも45アミノ酸残基の連続した配列を含むペプチドとなることができ、該ある程度の同一性は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、具体的には少なくとも95%である。
【0073】
本発明により、KTPAF50に由来する改変されたペプチド、例えば、保存的置換により1又は複数のアミノ酸が別のアミノ酸と交換された改変されたペプチドを認識することのできる抗体もまた提供される。本明細書において、「保存的置換」は、あるクラスにおけるアミノ酸の、同じクラスのアミノ酸による置換を意味し、このようなクラスは、天然に存在する相同タンパク質におけるアミノ酸側鎖の共通の物理化学的性質及び高い置換頻度によって定義される。アミノ酸側鎖の一般的な6クラスが分類されており、これはクラスI(Cys)、クラスII(Ser、Thr、Pro、Ala、Gly)、クラスIII(Asn、Asp、Gln、Glu)、クラスIV(His、Arg、Lys)、クラスV(Ile、Leu、Val、Met)及びクラスVI(Phe、Tyr、Trp)を含む。例えば、AspのAsn、Gln又はGlu等、クラスIIIの別の残基への置換は、保存的置換である。
【0074】
一実施形態において、アミノ酸配列において1個の置換のみが行われる。
【0075】
別の一実施形態において、2個の置換が行われる。さらに別の一実施形態において、3個の置換が行われる。置換の最大数は、未置換配列におけるアミノ酸の少なくとも70%、望ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%を元のままに残すだけのアミノ酸数を超えてはならない。特定の一実施形態により、他の残基に置換された最大3、場合により最大6個のアミノ酸残基を含む置換は保存的置換である。
【0076】
さらに別の一実施形態において、1又は複数のアミノ酸は、D−アミノ酸、好ましくは対応するD−アミノ酸に交換され得る。特定の一実施形態において、全アミノ酸がD−アミノ酸である。
【0077】
よって、本発明は、実質的に等しい又はより高い活性を有する、本明細書に開示されている配列(配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7)と構造的に類似の配列を含むタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを認識できる抗体に関することを理解するべきである。タンパク質、ポリペプチド又はペプチドの構造変化は、1又は複数の欠失、付加又は置換を含む。配列内の任意の点で生じ得る欠失又は付加の数は一般に、全アミノ酸数の25%未満、好ましくは10%未満となるであろう。
【0078】
好ましい置換は、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドの二次構造の変質が予想されない変化、即ち保存的変化である。次のリストは、元のアミノ酸(左側)に対し交換され得るアミノ酸(右側)を示す。
【表1】

【0079】
アミノ酸は、電荷、側鎖サイズ等、その本質的な特色に応じて分類することもできる。次のリストは、類似のアミノ酸グループを示す。好ましい置換は、次の通り、あるグループに属すアミノ酸を同一グループのアミノ酸と交換する。
1.小分子脂肪族・非極性:Ala、Ser、Thr、Pro、Gly
2.極性・負電荷残基及びそのアミド:Asp、Asn、Glu、Gln
3.極性・正電荷残基:His、Arg、Lys
4.大分子脂肪族・非極性残基:Met、Leu、Ile、Val、Cys
5.大分子芳香族残基:Phe、Tyr、Trp
【0080】
アミノ酸置換及びタンパク質構造に関するさらなる所見は、Schulzら、Principles of Protein Structure、Springer−Verlag、ニューヨーク州ニューヨーク、1979年及びCreighton、T.E.、Proteins:Structure and Molecular Properties、W.H.Freeman&Co.、カリフォルニア州サンフランシスコ、1983年に記載されている。
【0081】
上に詳述されている通りの好ましい保存的アミノ酸置換は、本明細書において下に詳述されている通り、本発明の抗体によって認識されるタンパク質の機能又は活性を実質的に維持する又は増強させることが予想される。当然ながら、その結果生じるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドが、本発明の抗体により認識される抗原、即ち、本発明の抗体により認識されるタンパク質と機能の点で実質的に等しい又はより優れている抗原であれば、いずれのアミノ酸置換、付加又は欠失も本発明の範囲内であると考えられる。
【0082】
本発明の抗体により認識されるタンパク質は、固相合成(例えば、FMOC及びBOC技法を用いた)並びに液相合成等、従来の化学的方法により産生することができる。これらのタンパク質、ポリペプチド又はペプチドは、後述のCurrent Protocols in Molecular Biology、第16章に詳述されている通り、細菌若しくは昆虫細胞又は他の真核生物転写in vivo系において産生してもよい。産生に続き、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドは、それらが産生された細胞から精製される。ペプチド精製方法は、当業者にとって公知のものであり、例えば、Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology、第16章、John Wiley and Sons、2006年及びColiganら編、Current Protocols in Protein Science、第5章及び第6章、John Wiley and Sons、2006年に詳述されている。有利には、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドは、グルタチオンS−転移酵素(GST)等の第二のタンパク質又はヒスチジンタグ(His−タグ)配列等の配列タグとの融合体として産生することができる。融合体又はタグ付きタンパク質の使用は、上述のCurrent Protocols in Molecular Biology、第16章並びにHis−タグタンパク質発現及び精製キットの取扱説明書[例えば、Qiagen GmbH、ドイツから入手可能]に詳述されているように、精製手順を簡略化する。
【0083】
本発明の抗体によって認識されるタンパク質は、例えば、細胞抽出物又はリボソームを用いた無細胞系において合成することもできる。
【0084】
本発明の抗原は、その機能、親和性又は安定性を改善するようさらに改変することができる。例えば、より優れた安定性及び/又は全体的な性能改善をペプチドに付与するよう、環化が用いられてよい。側鎖環化及び骨格環化等、多くの異なる環化方法が開発されてきた。これらの方法は、先行技術において十分に実証されている[例えば、Yuら、Bioorg.Med.Chem.7、161〜75、1999年、Patelら、J.Pept.Res.53、68〜74、1999年、Valeroら、J.Pept.Res.53、56〜67、1999年、Romanovskisら、J.Pept.Res.52、356〜74、1998年、Crozetら、Mol.Divers.3、261〜76、1998年、Rivierら、J.Med.Chem.41、5012〜9、1998年、Panzoneら、J.Antibiot.(東京)、51、872〜9、1998年、Giblinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95、12814〜8、1998年、Limalら、J.Pept.Res.52:121〜9、1998年及び米国特許第5,444,150号明細書]。
【0085】
特定の環化方法は、ベンゼン環のパラ置換されたアミノ酸誘導体を用いることによる、両親媒性αへリックスの安定化に関与する[Yuら、(1999年)、i同上]。別の特定の環化方法は、Reissmannら、Biomed.Pept.Proteins Nucleic Acids 1:51〜6、1994〜95年及びそこに参照されている文献に開示されているように骨格環化である。骨格−側鎖結合に関与する別の環化方法が用いられてもよい[Reissmannら(1994〜95年)、同上]。
【0086】
上述の通りではあるが、本発明において、本発明の抗体によって認識されるタンパク質は、自然発生的又は合成アミノ酸ではない様々な同一又は異なる有機成分によりそのN末端及び/又はC末端が延長されてよい。このような延長の一例として、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドはN−アセチル基によりそのN末端及び/又はC末端が延長されてよい。
【0087】
ペプチド構造を改善するため、本発明の抗体によって認識されるタンパク質は、そのN末端を通してラウリル−システイン(LC)残基と結合及び/又はそのC末端を通してシステイン(C)残基と結合、或いはペプチドと免疫化のためのアジュバント(単数又は複数)との結合に適した他の残基(単数又は複数)と結合することができる。
【0088】
さらに別の一態様において、本発明は、本発明に記載されている少なくとも1種類の抗体を有効成分として含む組成物を提供する。したがって、本発明の組成物の活性物質として含まれている前記抗体は、KTPAF50又はその任意の断片、アナログ若しくは誘導体を認識し結合する抗体又はその断片である。
【0089】
前記組成物は、異なるハイブリドーマ由来のモノクローナル抗体の組合せを含むことができる。例えば、前記組成物は、表2に記載のハイブリドーマに対応した2種類、3種類、4種類、5種類又はそれ以上のハイブリドーマ細胞系に由来する抗体を含むことができる。
【0090】
一実施形態において、前記組成物は診断方法に用いるためのものである。
【0091】
前記抗体又はそれを含む前記組成物は、癌及び自己免疫障害の診断に有用である。
【0092】
具体的には、前記抗体又はそれを含む前記組成物は、肺癌又はIBDの診断に用いることができる。
【0093】
別の一実施形態において、本発明に記載されている抗体の内少なくとも1つを含む前記組成物は、癌の治療に用いることができる。
【0094】
さらに別の一実施形態において、本発明に記載されている抗体の内少なくとも1つを含む組成物は、癌の予後に用いることができる。治療有効性の指標を持つことが重要な癌治療を受けている患者は、特に予後の必要がある。したがって、本発明に記載されている少なくとも1種類の抗体を含む組成物は、治療成績であるKTPAF50レベルの検出又は決定によって決定することができるべきである。
【0095】
組成物の調製は本技術分野においてよく知られており、多くの論文や教科書に説明されている。例えば、RemingtonのPharmaceutical Sciences、Gennaro A.R.編、Mack Publishing Co.、ペンシルベニア州イーストン、1990年の特に1521〜1712頁を参照のこと。
【0096】
本発明の組成物は、薬学的に許容されるアジュバント、担体、希釈剤又は賦形剤の内少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0097】
用語「薬学的に許容される担体」は、有効成分と反応しない不活性の非毒性材料のいずれか1種類を意味する。担体は、所望の製剤形態に基づき、場合により選択される。担体は、クリアランス速度を遅らせるため、持続放出特性を付与するため、望ましくない副作用を低減させるため等、薬剤の安定性を改善するための有効成分の標的組織への送達又は浸透の改善効果を場合により有することができる。担体は、製剤に食用香味料等を提供するための、製剤を安定化する物質(例えば、保存剤)であってよい。担体は、従来用いられてきた担体の内いずれかであってよく、溶解度及び本発明の抗体との反応性欠如等の物理化学的考察並びに投与経路によってのみ限定される。担体は、添加物、着色料、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、保存剤、香味料及び薬理学的適合性担体を含むことができる。加えて、担体は、定義によると予測可能な方法で有効成分の作用に影響を及ぼす物質であるところのアジュバントとなることができる。担体の典型例として、(a)有効量の活性物質が、水、生理食塩水、天然果汁、アルコール、シロップ等、希釈剤中に溶解した溶液、(b)それぞれが固体又は顆粒として所定量の活性物質を含む、カプセル(例えば界面活性剤、潤滑剤及び不活性充填剤を含む、例えば通常の硬い又は柔らかい殻のゼラチン型の)、錠剤、薬用キャンディー(活性物質がショ糖及びアカシア又はトラガント等、香料中にある、或いは活性物質がゼラチン及びグリセリン等、不活性塩基中にある)並びにトローチ剤、(c)散剤、(d)適切な液体中の懸濁剤、(e)適切なエマルジョン、(f)リポソーム製剤その他が挙げられる。
【0098】
別の一実施形態において、本発明の組成物は、抗生物質、サイトカイン、リンホカイン、増殖因子、ホルモン等、追加的な活性物質を必要に応じてさらに含むこともできるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
本発明において、本発明に係る抗体を産生する抗体産生細胞系もまた提供される。よって、本発明は、KTPAF50に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系を提供する。
【0100】
一実施形態において、同様に本発明の目的である抗体産生細胞系を作出するため、抗体産生細胞はクローンとして単離され、不死化される。細胞の不死化は、当業者にとって公知の方法により達成することができ、これは例えば、Lanzavecchiaら、2007年[Lanzavecchia A、Corti D、Sallusto F.(2007年)Human monoclonal antibodies by immortalization of B cells Curr Opin Biotechnology;18(6):523〜8]によって記載されている。
【0101】
後述の例2並びに表2及び3は、本発明者らによって作製された全ハイブリドーマ、その作製に用いた特定の抗原及びELISAによって測定したその抗原親和性を示す。
【0102】
したがって、本発明は、抗体産生細胞系又はハイブリドーマ細胞系も提供する。
【0103】
特に、本発明は、次のハイブリドーマ細胞系3E3G7、5E11H3、2B6A3、2B6A12、2B6G2、2B6H1、5E11B5、5E11B8、5E11H5、3E1F9、3E1F11、3E1G4、3E1G6、2A8B8、2A8B12、2A8H7、6E2B6、6E2C5、6E2C9、6E2D4、7D4D6、7D4E12、7D4F9、7D4H10、6F5A1、6F5C9、6F5C12、3E3B3及び3E3C8を提供する。
【0104】
ブダペスト条約の規定に従い、次の通り、2種類のハイブリドーマ細胞系(3E3G7及び5E11H3)を、寄託機関であるCollection Nationale de Culture de Microorganismes(CNCM)、Institut Pasteur(25、Rue du Docteur Roux、F−75724、Paris、Cedex 15、フランス)に寄託した。
【表2】

【0105】
対象出願に対応する出願又はその後継の出願がなされている国の外国特許法の定めるところにより寄託物を利用することができる。しかし、寄託物の利用は、行政措置により承認された特許権を逸脱した対象発明の実施の許諾には当たらないことを理解するべきである。
【0106】
さらに、対象ハイブリドーマ寄託物は、微生物の寄託に関するブダペスト条約の条項に従って保存及び一般公開されている、即ち、その生存維持及び汚染防止に必要なあらゆる注意を払って、寄託試料供給の最後の要求があってから少なくとも5年間の期間、そしていずれの場合においても寄託日から少なくとも30年間の期間、或いは培養物の開示をなし得る任意の特許の法的強制力のある期間保存された。寄託機関が寄託物の状態のために請求があっても試料を供給できなければ、寄託者は、寄託物(単数又は複数)を交換する義務に同意する。対象培養寄託物の一般公開におけるあらゆる制限は、それを開示する特許の付与によって取消不能に取り除かれるであろう。
【0107】
したがって、本発明は、前記細胞系によって産生される抗体も提供する。
【0108】
さらにまた別の一態様において、本発明は、本発明に記載されているKTPAF50を認識する抗体の診断組成物の調製における使用を提供する。特に、前記組成物は、癌及び自己免疫疾患のいずれか一方の診断のためのものである。
【0109】
よって、本発明は、癌診断のための診断組成物の調製における抗KTPAF50抗体の使用を提供する。
【0110】
本明細書において癌について言及する場合、慢性骨髄性白血病や成熟に伴う急性骨髄性白血病等の骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、好塩基球増加を伴う急性非リンパ球性白血病、急性単球白血病、好酸球増加症を伴う急性骨髄単球性白血病、バーキット病や非ホジキン病等の悪性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病や慢性リンパ球性白血病等のリンパ球性白血病、骨髄増殖性疾患、良性髄膜腫等の固体腫瘍、唾液腺の混合腫瘍、口唇及び口腔における腫瘍、咽頭、喉頭、副鼻腔、結腸腺腫、小細胞肺癌等の腺癌、腎臓、子宮、前立腺、膀胱、卵巣、結腸肉腫、脂肪肉腫、粘液性滑膜肉腫、横紋筋肉腫(肺胞)、骨外性粘液性軟骨肉腫、ユーイング腫瘍、精巣及び卵巣未分化胚細胞腫を含む他の腫瘍、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、悪性黒色腫、中皮腫、乳癌、皮膚癌、前立腺癌及び卵巣癌、眼瞼の癌腫、結膜の癌腫、結膜の悪性黒色腫、ぶどう膜の悪性黒色腫、網膜芽細胞腫、涙腺の癌腫、眼窩、脳、脊髄、脈管系の肉腫、血管肉腫並びにカポジ肉腫を含むが、これらに限定されるものではない。
【0111】
本明細書において後続の例1及び図2で証明されているように、KTPAF50血清レベルを肺癌において評価したところ、抗KTPAF50抗体は、肺癌の診断における有用性を示した。
【0112】
本発明の抗体又はそれを含む組成物もまた、乳癌及び卵巣癌の診断で用いるためのものである。
【0113】
加えて、本発明は、自己免疫疾患の診断のための診断組成物の調製における抗KTPAF50抗体の使用を提供する。
【0114】
本明細書の記述において、自己免疫疾患は、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、多発性硬化症(MS)、自己免疫性ぶどう膜炎、自己免疫性網膜ぶどう膜炎、自己免疫性甲状腺炎、橋本病、膵島炎、シェーグレン症候群、自然流産、実験的自己免疫性心筋炎、リウマチ様関節炎(RA)、ループス(SLE)、乾癬及び糖尿病、特にI型を含む。自己免疫疾患の追加的な例として、急性壊死性出血性白質脳炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、円形脱毛症、アミロイド症、強直性脊椎炎、抗GBM/抗TBM腎炎、抗リン脂質症候群(APS)、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性自律神経障害、自己免疫性肝炎、自己免疫性高脂血症、自己免疫性免疫不全症、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、軸索及び神経細胞性神経障害、Bal病、Behnet病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン病、セリアックスプルー(非熱帯性)、シャーガス病、慢性疲労症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡/良性粘膜類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、CREST病、本態性混合型クリオグロブリン血症、脱髄性神経障害、皮膚筋炎、デビック病、円板状ループス、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、実験的アレルギー性脳脊髄炎、エヴァンス症候群、線維筋痛症、線維性肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、低ガンマグロブリン血症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、免疫調節性リポタンパク質、封入体筋炎、インスリン依存性糖尿病(1型)、間質性膀胱炎、若年性関節炎、若年性糖尿病、川崎症候群、ランバート・イートン症候群、白血球破壊性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質性結膜炎、線状IgA疾患(LAD)、ライム病、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、混合性結合組織病(MCTD)、モーレン潰瘍、ムッハ・ハーベルマン病、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、好中球減少症、眼球瘢痕性類天疱瘡、骨関節炎、回帰性リウマチ、傍腫瘍性小脳変性症、発作性夜間血色素尿症(PNH)、パーソネージ・ターナー症候群、毛様体扁平部炎(末梢ぶどう膜炎)、天疱瘡、末梢神経障害、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、I、II及びIII型多腺性自己免疫性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋痛、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、プロゲステロン皮膚炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬性関節炎、特発性肺線維症、壊疽性膿皮症、赤芽球ろう、レイノー現象、反射性交感神経性ジストロフィー、ライター症候群、再発性多発性軟骨炎、下肢静止不能症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、精子及び精巣自己免疫、全身硬直症候群、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性甲状腺疾患、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎及び壊死性脊髄症、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織病(UCTD)、血管炎、小水疱性皮膚症、白斑並びにウェゲナー肉芽腫症が挙げられる。
【0115】
別の一態様において、本発明は、本発明に記載されているKTPAF50特異的な抗体の、癌、自己免疫疾患、移植片拒絶、神経変性疾患及び糖尿病を治療するための治療組成物の調製における使用を提供する。
【0116】
特に、前記組成物は、癌を治療するためのものである。
【0117】
例3に示す通り、KTPAF50特異抗体による治療は細胞生存率の低下をもたらし、これらの抗体を細胞死の誘導又はアポトーシスの誘導に用いてよいことを示唆する。癌性細胞における細胞死の誘導は、その除去のための効果的な手段となることができる。
【0118】
したがって、本発明は、必要とする対象に治療上有効量の少なくとも1種類の本発明の抗体又はその組合せを投与する工程を含む、癌の治療方法を提供する。
【0119】
さらに、本発明において提供される抗体又はその断片は、本発明の抗体作製のための抗原として用いたタンパク質の試料における量的又は質的な検出に用いることができる。これは、蛍光(免疫蛍光)、酵素反応の発色産物、沈殿の生成、化学発光又は生物発光の内いずれか1種類となり得る、視覚的に検出可能なシグナルを与える技法によって達成することができる。後述の通り、蛍光又は発色性標識抗体の利用は、光学顕微鏡、フローサイトメトリー又は蛍光定量的検出と組み合わせる。抗体の検出に用いることのできる他の技法及び標識は、コロイド金、放射性タグ、GFP(緑色蛍光タンパク質)その他、アビジン/ストレプトアビジン−ビオチン、磁性ビーズ及び物理的システム、例えば実際の結合に対して高感度のナノテクノロジーによるシステムを含むが、これらに限定されるものではない。
【0120】
本発明において提供される抗体又はその断片は、例えば免疫組織化学、免疫蛍光又は免疫電子顕微鏡等において、またタンパク質のin situ検出のため組織学的染色に用いることができる。in situ検出は、対象から組織学的検体を取り出し、本発明の標識抗体をこのような検体と接触させることによって達成することができる。標識抗体(又は断片)を生物試料(前記検体)に塗布又は覆うことにより、抗体(又は断片)の接触を行う。このような手順の使用により、試験した組織における抗原の存在だけでなく、その分布を決定することも可能となる。このようなin situ検出を達成するため、当業者であれば、本発明を用いて染色手順等、多種多様な組織学的方法を改変できることを容易に認知できるであろう。
【0121】
本発明に係る抗体を標識して直接検出できる方法の1つは、同を酵素に結合し、酵素免疫測定法(EIA)に用いることによるものである。同様に、この酵素は、後に適切な基質に曝露されるときに、例えば分光光度的、蛍光定量的又は視覚的手段によって検出され得る化学成分を生成するような仕方で基質と反応するであろう。抗体の検出可能な標識に用いることのできる酵素は、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコール脱水素酵素、アルファ−グリセロリン酸脱水素酵素、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコース酸化酵素、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素、グルコアミラーゼ及びアセチルコリンエステラーゼを含むが、これらに限定されるものではない。検出は、酵素のための発色性基質を用いる比色法によって達成することができる。検出は、同様に調製された標準と基質との酵素反応の程度を視覚的に比較することによって達成することもできる(この手順は、可溶性発色産物及び不溶性発色産物、例えばニトロセルロース又はプラスチック支持体の両方に適している)。
【0122】
本発明において、抗原と抗体との反応の検出は、適切な事例においては、異なるエピトープと特異的、或いは非特異的な二次抗体又はリガンド若しくは反応抗体と反応性の他のリガンドの使用によってさらに支援することができる。
【0123】
免疫蛍光アッセイ(IFA)、測光アッセイ、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ELISPOTアッセイ及びイムノブロッティング等、酵素免疫測定法は、特異抗体の検出を達成するために容易に適用することができる。
【0124】
同様に用いることのできる他の検出システムは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Cowan株I由来のプロテインA、グループCストレプトコッカス属(Streptococcus)の菌種(26RP66株)由来のプロテインGの使用に基づくシステム又はビオチン−アビジン結合反応を用いるシステムを含む。
【0125】
本発明の抗体を用いることのできる免疫酵素的検出の他の方法は、ウエスタンブロット及びドットブロットである。試料は、電気泳動により分離され、ニトロセルロースメンブレン又は他の適切な支持体に転写される。次に、検査される試料(例えば、培養物上清)がメンブレンと接触され、形成された免疫複合体の存在が既述の方法により検出される。この方法の変法において、精製抗体がメンブレン上に線状又は点状に塗布され、結合される。その後、メンブレンは、検査される培養前後の試料と接触され、形成された免疫複合体を本明細書に記載されている技法を用いて検出する。
【0126】
抗体−抗原複合体の存在は凝集によって検出することもできる。本発明に係る抗体は、例えば均一な懸濁液を生成するラテックス粒子のコーティングに用いることもできる。試料、例えば抗体によって認識される特異抗原を含む血清と混合すると、ラテックス粒子は凝集を生じ、大きな凝集物の存在は視覚的に検出することができる。
【0127】
免疫測定技法による抗体の測定に適用できる免疫学的手順及び免疫測定法手順の総説として、Basic and Clinical Immunology[D.Stitesら編(1994年)Basic and Clinical Immunology、第8版]を参照されたい。
【0128】
抗原と抗体との反応の検出は、本技術分野で公知の方法により検出可能な成分で標識された抗体又はリガンドの使用によって容易とすることができる。このような検出可能な成分は、沈殿若しくは変色の視覚的検出、顕微鏡による視覚的検出又は分光測定若しくは放射測定による自動検出等を可能にする。検出可能な成分の例として、フルオレセイン及びローダミン(蛍光顕微鏡用)、西洋ワサビペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼ(光学顕微鏡用又は電子顕微鏡用のいずれか及び生化学的検出並びに変色による生化学的検出用)並びにビオチン−ストレプトアビジン(光学又は電子顕微鏡用)が挙げられる。用いられる検出方法及び成分は、例えば、上のリスト又はこのような選択に適用される標準的な判断基準による他の適切な例から選択することができる[Harlow及びLane(1988年)Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY]。
【0129】
検出は、他の様々な免疫測定法のいずれかを用いて達成することができる。例えば、抗体又は抗体断片を放射性標識することにより、放射免疫測定法(RIA)の使用による抗原の検出が可能となる。RIAの優れた記述は、参照として本明細書に組み込まれるLaboratory Techniques and Biochemistry in Molecular Biology、Work、T.S.ら著、North Holland Publishing Company、NY(1978年)に記載されており、特に表題「An Introduction to Radioimmune Assay and Related Techniques」の章、Chard,T.著を参照のこと。放射性同位元素は、ガンマ/ベータカウンター若しくはシンチレーションカウンターの使用又はオートラジオグラフィーによる手段によって検出することができる。
【0130】
本発明に係る抗体の蛍光化合物による標識も可能である。蛍光標識抗体が適切な波長の光に露光されると、次にその存在は蛍光により検出することができる。最も一般に利用されている蛍光標識用化合物は、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド及びフルオレサミンである。
【0131】
抗体は、152E又はその他ランタニド系列等、蛍光放射性金属を用いて検出可能に標識することができる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(ETPA)等の金属キレート基を用いて抗体に結合することができる。
【0132】
抗体は、それと化学発光化合物とを結合することによって検出可能に標識することができる。続いて、化学発光タグ付き抗体の存在は、化学的反応過程の際に生じる発光の存在を検出することによって決定される。特に有用な化学発光標識用化合物の例として、ルミノール、イソルミノール、セロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩及びシュウ酸エステルが挙げられる。
【0133】
同様に、生物発光化合物は、本発明の抗体を標識するために用いることができる。生物発光は、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を高める、生物系に存在する化学発光の一種である。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することによって決定される。標識に重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及びエクオリンである。
【0134】
本発明の抗体分子は、「2部位(two−site)」又は「サンドイッチ」アッセイとしても知られている免疫測定法における利用に適応することができる。一般的な免疫測定法において、大量の非標識抗体(又は抗体断片)が固体の支持体又は担体に結合し、大量の検出可能に標識された可溶性抗体が添加されて、固相抗体、抗原及び標識抗体の間に形成された三元複合体の検出及び/又は定量化を可能にする。
【0135】
本発明の抗体は、多くの異なる癌のイメージングに用いるために放射標識してもよい。In111及びTc99等、放射性同位元素は、抗体標識及びイメージング技法による可視化に用いられる。放射免疫シンチグラフィ(RIS)は、腫瘍のin vivoイメージングを可能にする機能試験である。これは、放射標識抗体及び標準的なガンマシンチレーションカメラを用いて達成される。
【0136】
このように、本発明は、対象における腫瘍又は癌の存在の検出又は徴候のスクリーニングアッセイとして有用である。抗体又はその断片は、本明細書に記載されている検出可能なマーカーと直接コンジュゲートした場合、抗原(又はその断片)のin vivoにおける検出に用いて癌性細胞の存在を示し、診断される対象に注射してイメージングにより検出することによってイメージング技法を活用した可視化を行うことができる。
【0137】
さらに、本発明によって提供される抗体は、癌の治療においてそれ自体を、或いは組成物の一部として用いるために、細胞毒性薬物とコンジュゲートすることができる。
【0138】
したがって、上述の通り、本発明によって提供される抗体は、癌性又は前癌性細胞を殺傷するための毒性薬物の送達系として適している。
【0139】
細胞毒性薬物の一例は、抗体と直接的に、或いはリンカーを介して共有結合できる抗増殖性薬物分子であるが、前記抗体は、癌細胞に豊富な、或いは癌細胞によって分泌されるプロテアーゼにより必要に応じて特異的に切断され、その結果プロテアーゼの作用により癌細胞の内部、近隣又は癌細胞に抗増殖性薬物を優先的に放出することができる。
【0140】
抗増殖性薬物の例として、シクロホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、チオテパ、イホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メトトレキサート、5−フルオロウラシルシトシンアラビノシド、6−チオグアニン、6−メルカプトプリン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン(idorubicin)、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、プリカマイシン、エピポドフィロトキシンビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン(vinclestin)、エトポシド、テニポシド、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、アドレノコルチコイド、エストロゲン、抗エストロゲン、プロゲスチン、アロマターゼ阻害剤、アンドロゲン、抗アンドロゲン、ダカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシウレア、ミトタン、プロカルバジド、シスプラスチン(cisplastin)、カルボプラチン、メルファラン、メトトレキサート及びクロラムブシルが挙げられる。
【0141】
或いは、抗体は、金属イオン(鉄又は亜鉛その他)等の特定の物質を腫瘍へと運ぶことができ、したがって毒性物質(前述の通り、放射性又は細胞毒性化学物質、即ち、リシン等の毒素、細胞毒性アルキル化剤又は細胞毒性プロドラッグ)を腫瘍へと送達するための手段又は担体として機能する。抗体と毒素又は放射性同位元素との結合は、化学的となることができる。直接結合した毒素の例として、ドキソルビシン、クロラムブシル、リシン、シュードモナス(pseudomonas)外毒素等が挙げられる。ハイブリッド毒素は、抗原及び毒素に対して二重特異性を備えるよう作成することができる。このような二価分子は、腫瘍と結合して細胞毒性薬物を腫瘍へと送達するよう、或いはT〜T受容体複合体との結合等、細胞毒性リンパ球と結合しこれを活性化するよう機能することができる。
【0142】
例3、4及び6並びにそれらの各図に示す通り、本発明の抗体は、細胞増殖を抑制することができる。
【0143】
したがって、別の一態様において、本発明は、有効量の少なくとも1種類の抗KTPAF50抗体若しくはその組合せ又はそれを含む組成物を細胞と接触させる工程を含む、細胞増殖を抑制する方法を提供する。前記方法は、in vitro法であってもex vivo法であってもよい。
【0144】
例6にも示す通り、本発明の抗体は、サイトカイン、特にTNF−α、IFN−γ又はIL−10の発現を抑制することができる。
【0145】
よって、さらにまた別の一態様において、本発明は、有効量の少なくとも1種類の抗KTPAF50抗体若しくはその組合せ又はそれを含む組成物を、前記サイトカインを発現する細胞と接触させる工程を含む、サイトカイン発現を抑制するための方法を提供する。前記方法は、in vitro法であってもex vivo法であってもよい。
【0146】
特に、本発明は、炎症性サイトカインを抑制するための方法を提供する。
【0147】
炎症性サイトカインは、炎症を誘導することによって作用する。これらのサイトカインは、内因性発熱物質(IL1、IL6、TNF−アルファ)として作用するか、マクロファージと間葉系細胞(線維芽細胞、上皮及び内皮細胞等)の両方により二次メディエーター及び炎症性サイトカインの合成を上方制御するか、急性期タンパク質の産生を刺激するか、或いは炎症性細胞を誘引する。
【0148】
炎症性サイトカインとして、IL−1、TNF−α(腫瘍壊死因子α)、INF−γ(インターフェロンγ)、TNF−β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10及びIL−13が挙げられる。これらのサイトカインは、Th1及びTh2リンパ球の制御に関与する。
【0149】
TNF−αの下方制御は特に、リウマチ様関節炎、IBD及び乾癬等、自己免疫疾患の治療に重要であることが示されてきた。
【0150】
したがって、本発明の抗KTPAF50抗体又はそれを含む組成物は、これらのヒト自己免疫疾患を治療するための非常に強力なツールである。
【0151】
これに関連し、本発明の抗体は、移植片拒絶並びに自己免疫疾患、神経変性疾患及び糖尿病の治療に用いることもできる。
【0152】
したがって、本発明は、治療上有効量のKTPAF50特異抗体又はそれを含む組成物を、必要とする対象に投与する工程を含む、癌、自己免疫障害、移植片拒絶、神経変性障害及び糖尿病からなる群から選択された状態の治療方法を提供する。
【0153】
前記抗体で治療することのできる特定の自己免疫疾患は、IBD、リウマチ様関節炎及び乾癬である。
【0154】
神経変性障害は、運動系、感覚系又は認知系における選択的且つ対称的な神経細胞消失によって特徴付けられる慢性且つ進行性の障害である。神経変性障害の限定的なリストとして、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、家族性アミロイド多発ニューロパチー及びタウオパチーが挙げられる。
【0155】
糖尿病は、生物が十分なインスリンを産生しないことによる、或いは細胞が産生されたインスリンに応答しないことによる高血糖によって特徴付けられる。この高血糖は、多尿症(頻尿症)、多飲症(口渇増大)及び過食症(空腹感増大)の古典的な症状を呈す。3種の主要な糖尿病の型は、身体がインスリンを産生できないことによる、インスリン投与によって治療できる1型糖尿病、インスリン抵抗性による2型糖尿病及びそれ以前には糖尿病に罹ったことのない妊婦が妊娠中に高血中グルコースレベルを有する妊娠糖尿病である。真性糖尿病の他の形態に、インスリン分泌の遺伝的欠陥による先天性糖尿病、嚢胞性線維症関連糖尿病、高用量の糖質コルチコイドによって誘導されるステロイド糖尿病及び数種類の形態の一遺伝子性糖尿病がある。
【0156】
本発明は、既に診断された癌の予後評価に用いることのできる方法も提供する。特に、治療の前、最中及び後の経過観察に重要である。或いは、特に検査される試料が、患者から得ることのできる最も「患者に優しい」タイプの試料の1つである血液試料である場合、前記方法は、癌のスクリーニングにも適切である。
【0157】
したがって、さらにまた別の一態様において、本発明は、
a.対象から試料を得る工程と、
b.前記試料を本発明に係る少なくとも1種類の抗体、抗KTPAF50抗体又はそれを含む組成物と接触させる工程と、
c.前記少なくとも1種類の抗体とその特異抗原との複合体の形成を検出手段により検出する工程と、
を含む、対象における癌の診断のための方法であって、複合体の検出が、前記対象が癌に罹患していることを示す方法を提供する。
【0158】
本明細書において対象について言及する場合、前記対象は、哺乳類、ヒト又は非ヒトとなることができる。非ヒト哺乳類は、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット等を含むが、これらに限定されるものではない。通常、対象は、ヒト、特に患者又は健常者である。
【0159】
本発明の診断方法の一実施形態において、前記試料は血液試料である。
【0160】
抗KTPAF50抗体又はそれを含む組成物を利用する、本発明の前記診断方法のさらに別の一実施形態において、前記癌は、肺癌、乳癌及び卵巣癌からなる群から選択される。
【0161】
したがって、本発明は、癌治療の有効性のモニタリング方法も提供する。治療の有効性のモニタリングは、癌治療の予後評価に必要である。したがって、本明細書に示されている診断方法は、癌治療の前、最中及び後の対象において有効となることができ、各時点で得られた結果の解析(少なくとも2種の抗原−抗体複合体の間の関係性のパターン)は正常集団における同一複合体のパターンと比較される。対象のパターンが正常集団のパターンと最も近似であることは、治療の成功を示す。
【0162】
本明細書に言及されている癌治療は、放射線療法、化学療法等を含む、疾患を根絶するためのあらゆる治療に関する。
【0163】
本発明の抗体は、本発明の抗体を互いに組み合わせて又は他の抗体と組み合わせて用いることのできる、ヒト及びマウス免疫系において免疫応答を誘導する化合物のハイスループットスクリーニング並びに特に消化器系において、或いは同様に他の系において炎症及び癌を誘導する化合物のスクリーニングのための多重免疫測定法に用いることもできる。多重免疫測定法は、当業者に知られており、とりわけAnderson及びDavison[Anderson及びDavison(1999年)Am.J.Pathol.154:1017〜1022]によって記載されている。
【0164】
本発明を説明するための本明細書において、「腫瘍」、「癌」、「悪性増殖性障害」及び「悪性腫瘍」は、全て等しく組織又は器官の肥厚化に関する。組織がリンパ性又は免疫系悪性細胞の一部である場合、循環細胞の非固体腫瘍を含み得る。他の組織又は器官の悪性腫瘍は、固体腫瘍を生じ得る。一般に、非固体及び固体腫瘍は、例えば、癌腫、黒色腫、白血病及びリンパ腫である。
【0165】
癌及び腫瘍は、慢性骨髄性白血病や成熟に伴う急性骨髄性白血病等の骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、好塩基球増加を伴う急性非リンパ球性白血病、急性単球白血病、好酸球増加症を伴う急性骨髄単球性白血病、バーキット病や非ホジキン病等の悪性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病や慢性リンパ球性白血病等のリンパ球性白血病、骨髄増殖性疾患、良性髄膜腫等の固体腫瘍、唾液腺の混合腫瘍、口唇及び口腔における腫瘍、咽頭、喉頭、副鼻腔、結腸腺腫、小細胞肺癌等の腺癌、腎臓、子宮、前立腺、膀胱、卵巣、結腸肉腫、脂肪肉腫、粘液性滑膜肉腫、横紋筋肉腫(肺胞)、骨外性粘液性軟骨肉腫、ユーイング腫瘍、精巣及び卵巣未分化胚細胞腫を含む他の腫瘍、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、悪性黒色腫、中皮腫、乳癌、皮膚癌、前立腺癌及び卵巣癌、眼瞼の癌腫、結膜の癌腫、結膜の悪性黒色腫、ぶどう膜の悪性黒色腫、網膜芽細胞腫、涙腺の癌腫、眼窩、脳、脊髄、脈管系の肉腫、血管肉腫並びにカポジ肉腫を含むが、これらに限定されるものではない。
【0166】
癌の検出、診断、予後評価、スクリーニング及び治療のための本明細書に記載されている方法は、癌におけるいずれのステージにも適している。
【0167】
別の一実施形態において、本方法は、癌の任意のステージで実施され、他の現在利用されている特に癌診断のための技法と比べて最も有利である。例えば、技術的に患者に不快感をもたらし、その上比較的高度な偽陽性結果を生じる(これは、言い換えると、さらに生検にかけられる多くの患者が必要のない不安にかられる)マンモグラフィーと比較した場合、本発明に記載されている診断方法は血液検査に基づき、より低い偽陽性結果の発生率の可能性がある。あらゆる現在のマクロレベルの診断ツール、マンモグラム、デジタル直腸試験(DRE)及び超音波(それぞれ乳癌、前立腺癌及び卵巣癌のため)は、疑わしい腫瘍体積が既に視覚的に検出可能なサイズに発達した後にようやく癌を診断する能力を有し、これは患者の生存率の低下及び生活の質の低下をもたらす。例えば、米国単独では、乳癌のために年間約3千万件のマンモグラフィー手順が行われ、疑わしい乳房の病変を有する女性に百万件を超える外科的乳房生検が行われる。
【0168】
この点について、癌のステージ分類体系に精通していることが重要である。ステージ分類は、癌がどのように発生するかについての知見に基づく。癌細胞は、無秩序に、或いは腫瘍を形成するよう分裂、増殖する。腫瘍が増殖するにつれ、近傍器官及び組織に浸潤できるようになる。癌細胞は腫瘍から離脱し、血流又はリンパ系に進入することもできる。血流又はリンパ系を通って移動することにより、癌は原発部位から広がって、他の器官において新しい腫瘍を形成することができ、これは転移と呼ばれている。
【0169】
大部分の種類の癌は、TNM(腫瘍サイズ、リンパ節の関与、転移)表示を有するが、一部の癌にはない。例えば、脳及び脊髄の癌は、その細胞型及びグレードに応じて分類される。異なるステージ分類体系がリンパ腫等、多くの血液又は骨髄の癌に用いられる。アナーバー(Ann Arbor)ステージ分類は、リンパ腫のステージ分類に一般に用いられ、AJCC(対癌米国合同委員会)及びUICC(国際対癌連合)の両方によって採用された。しかし、大部分の種類の白血病等、他の血液又は骨髄の癌は、明快なステージ分類体系を持たない。世界産婦人科連合によって開発された別のステージ分類体系は、子宮頸部、子宮、卵巣、膣及び外陰の癌のステージ分類に用いられる。この体系は、TNM式を用いる。その上、小児癌は、TNM体系か、或いは小児治験を行うグループである小児腫瘍学グループ(Children’s Oncology Group)のステージ分類基準のいずれかを用いてステージ分類される。
【0170】
TNMステージ分類体系は、次の通りである。Tは腫瘍サイズ及び近傍組織で浸潤したかを表し、Nは関与する任意のリンパ節を表し、Mは転移の存在を表す。
原発腫瘍(T)
TX 原発腫瘍を評価できない
T0 原発腫瘍の証拠なし
Tis 原位置の癌腫(近隣の組織へと広がっていない早期癌)
T1、T2、T3、T4 原発腫瘍のサイズ及び/又は程度
局所リンパ節(N)
NX 局所リンパ節を評価できない
N0 リンパ節の関与なし(リンパ節において癌は発見されない)
N1、N2、N3 局所リンパ節の関与(拡散の数及び/又は程度)
遠隔転移(M)
MX 遠隔転移を評価できない
M0 遠隔転移なし(癌は身体の他の部分へと広がっていない)
M1 遠隔転移(癌は身体の他の部分へと広がっている)
【0171】
TNM体系に従った一例は、例えば乳癌T3N2M0であり、これは乳房外部の近傍リンパ節に広がったが、身体の他の部分には広がっていない大きな腫瘍を意味する。前立腺癌T2N0M0は、腫瘍が前立腺内のみに局在し、リンパ節又は身体の他のいかなる部分にも広がっていないことを意味する。
【0172】
NCIの監視疫学遠隔成績プログラム(SEER)等、多くの癌登録は、概要ステージ分類を利用する。この体系は、あらゆる種類の癌に用いられる。これは、癌症例を5つの主要カテゴリーに分類する。
− 原位置型は、癌が最初に生じた細胞層にのみ存在する早期癌である。
− 局在型は、癌が最初に生じた器官に限定された拡散の証拠のない癌である。
− 局所型は、元々の(原発)部位を越えて近傍リンパ節又は器官及び組織へと広がった癌である。
− 遠隔型は、原発部位から遠隔器官又は遠隔リンパ節へと広がった癌である。
− 不明は、ステージを示すのに十分な情報がない症例の説明に用いられる。
【0173】
別の一般に用いられるステージ分類体系は、ローマ数字を用いる。
ステージ0:原位置の癌腫(癌が最初に生じた細胞層にのみ存在する早期癌)。
ステージI、II及びIII:数字が大きくなる程、より広範の疾患、より大型の腫瘍サイズ及び/又は癌の原発腫瘍に隣接する近傍リンパ節及び/又は器官への拡散を示す。
ステージIV:癌が別の器官へと広がった。
【0174】
よって、本発明によって提供される癌の診断及び検出方法、例えば本明細書に記載されている標識抗体を用いた方法も、腫瘍のステージ分類に非常に有用である[腫瘍は増殖につれて変化するため]。例えば、これは、特に癌の初期に他の現在利用できる技法によって検出できない増殖の検出及び/又は位置の特定を可能にする。
【0175】
よって、さらにまた別の一態様において、本発明は、対象における自己免疫疾患の診断のための方法であって、
a.対象から試料を得る工程と、
b.前記試料を本発明に係る少なくとも1種類の抗体、抗KTPAF50抗体又はそれを含む組成物と接触させる工程と、
c.前記少なくとも1種類の抗体とその特異抗原との複合体の形成を検出手段により検出する工程と、
を含み、それにより、複合体の検出が、前記対象が自己免疫疾患に罹患していることを示す方法を提供する。
【0176】
上述の方法は、複合体の検出及び治療中の異なる時点(治療前、治療中及び治療後)におけるそのレベルの比較が自己免疫疾患に罹患している又は罹患する可能性のある対象における治療効率及び結果の評価を提供する、自己免疫疾患の予後に適用することもできる。
【0177】
本発明の前記診断方法の一実施形態において、前記試料は血液試料である。
【0178】
本明細書において定義されている通り、「試料」は、対象、一般には哺乳類の対象から得られる任意の試料を意味する。生物試料の例として、体液及び組織検体が挙げられる。試料ソースは、血液、血清、血漿、母乳、膿汁、脳脊髄液、スワブ、擦り取った組織、洗液、尿、糞便、体腔の洗浄によって得られたリンス液、痰、身体の各領域(咽頭、膣、耳、眼、皮膚、リンパ節その他等の痛みのある組織)から採取したスワブ等の生理的媒体に由来し得る。組織検体は、脾臓、リンパ節及び任意のリンパ球含有組織の生検を含む。
【0179】
本明細書及び特許請求の範囲における用語「試料」は、本明細書において広義で用いられている。
【0180】
一般に、スワブ及び先験的に液体ではない試料は液体媒体と接触され、次にこれが検出剤と接触させられる。
【0181】
本発明の特定の一実施形態において、本発明の方法において用いられる前記試料は、体液又は培養由来試料の内いずれか1種類である。
【0182】
培養由来試料は、細胞抽出物、培地試料又は体液由来の培養物、例えば血液試料培養物となることができる。
【0183】
「全血」とは、動物又はヒトから採取された血液を意味する。全血は、ヘパリン、EDTA、クエン酸又は凝血及び凝固を抑制するその他の物質を用いて採取してよい。
【0184】
生物試料は、ニトロセルロース等の固相支持体若しくは担体又は細胞、細胞粒子若しくは可溶性タンパク質を固定化することができる他の固体支持体若しくは担体で処理することができる。上述の通り、次に支持体又は担体は、適切なバッファーで洗浄され、続いて本発明に係る検出可能に標識された抗体で処理される。次に、固相支持体又は担体は、バッファーで2回目の洗浄を行い、非結合抗体を除去する。次に、結合した抗原又は前記固体支持体若しくは担体上の標識の量は、従来の手段によって検出することができる。
【0185】
「固相支持体」、「固相担体」、「固体支持体」、「固体担体」、「支持体」又は「担体」により、抗原又は抗体と結合できるあらゆる支持体又は担体が企図されている。良く知られた支持体又は担体として、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロンアミラーゼ、天然及び修飾セルロース、ポリアクリルアミド並びにマグネタイトが挙げられる。担体の性質は、ある程度可溶性であっても、或いは本発明の目的のため不溶性であってもよい。支持体材料は、そこに結合した分子が抗原又は抗体と結合できる限り、実質的にどの可能な構造形態であってもよい。したがって、支持体又は担体の形態は、ビーズ等の球状、試験管の内部表面等の円柱状又は棒状体の外表面であってよい。同一チューブ内の異なる抗原に対して、異なる担体が用いられ得る。或いは、表面はシート、試験紙等のように平坦であってもよい。特定の支持体又は担体は、ポリスチレンビーズを含む。当業者であれば、抗体又は抗原を結合するための他の多くの適切な担体を知っている、或いはルーチン実験の使用により同を確認できるであろう。
【0186】
洗浄、撹拌、振盪、濾過等、他の工程が、通例として、或いは特定の局面に必要なものとしてアッセイに加えられてよい。
【0187】
本明細書に定義されている「培養液」は、本発明を実施するための試料の維持に用いることのできる任意の培地を意味し、好ましくは適切な抗生物質及びグルタミン、並びに必要に応じて抗真菌剤、非必須アミノ酸、DTT、ピルビン酸ナトリウム等の他の添加物を添加した、ウシ(calf/bovine)胎仔血清を含む或いは含まないRPMI1640を含むが、これに限定されるものではない。本発明の実施に用いることのできる他の培養液は、イーグル、ダルベッコ、McCoy、Media199、Waymouth培地及び添加物あり又はなしの無血清培地を含むが、これらに限定されるものではない。別の一実施形態において、培地に刺激物質は含まれていない。
【0188】
本発明は、必要とする対象に治療上効果的な投与量の本発明の抗体を投与する工程を含む、癌治療の方法も提供する。特に、前記抗体は、治療に用いる場合、細胞毒性薬物とコンジュゲートされる、或いは毒性物質を標的細胞へ送達するための担体として機能する。これに関連して、標的細胞は本発明の抗体によって認識される細胞であり、これは腫瘍関連抗原を発現する細胞を意味し、したがって異常増殖に関連する。
【0189】
さらにまた別の一態様において、本発明は、次の構成要素、
a.本発明の本明細書に記載されている少なくとも1種類の抗体又はそれを含む組成物と、
b.前記抗体によって特異的に認識される抗原の、試料における存在の検出を行うための取扱説明書と、
を含む、癌の診断、治療有効性のモニタリング又は予後評価の内いずれか1つのためのキットを提供する。
【0190】
前記キットは、次の構成要素、
a.検査する試料を採取するための少なくとも1つの手段と、
b.前記抗体による前記抗原の前記認識の検出に必要な少なくとも1種類の試薬と、
c.少なくとも1種類の対照試料と、
の内少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0191】
本発明は、癌の診断及び/又は予後評価のためのキットも提供する。
【0192】
キットは、基本的に対象における腫瘍抗原特異抗体を検出するためのものである。対象は、哺乳類、ヒト又は非ヒトであってよい。通常、対象はヒト患者、癌患者又は健常者である。
【0193】
別の一態様において、本発明は、次の構成要素、
a.本発明の本明細書に記載されている少なくとも1種類の抗体又はそれを含む組成物と、
b.前記抗体によって特異的に認識される抗原の、試料における存在の検出を行うための取扱説明書と、
を含む、自己免疫疾患の診断、治療有効性のモニタリング及び予後の内少なくとも1つのためのキットも提供する。
【0194】
同様に、前記キットは、次の構成要素、
a.検査する試料を採取するための少なくとも1つの手段と、
b.前記抗体による前記抗原の前記認識の検出に必要な少なくとも1種類の試薬と、
c.少なくとも1種類の対照試料と、
の内少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0195】
一実施形態において、このようなキットは、例えば、ELISAキット等、適切であれば固体支持体、本発明に定義されている少なくとも1種類の抗体及び必要に応じて二次抗体を含む抗体(又は認識用薬剤)捕捉アッセイキットである。キットは、上述の通り、検出可能な成分、酵素基質及び発色試薬等、その他必要な試薬をさらに必要に応じて含むことができる。或いは、抗体捕捉診断キットは、本明細書に記載されている構成要素及び試薬を一般に含むイムノブロットキットである。本発明の診断キットに含まれている特定の試薬及び他の構成要素は、キットで実施される特異的診断方法に従った、本技術分野で利用できる試薬及び他の構成要素から選択することができる。このようなキットは、組織又は体液、特に全血、PBMC或いは対象から採取された培養前及び/又は後の白血球等、生物試料における抗体の検出に用いることができる。
【0196】
本発明の方法において「適切な手段」と記載されている場合、前記適切な手段は、とりわけ免疫親和性手順、酵素アッセイ又は構造的特色を検出するための手段となることができる。
【0197】
前記適切な手段が免疫親和性手順である場合、前記手順は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降法、FACS又は本発明に記載されている抗体を利用するその他免疫親和性手順の内いずれか1種類である。
【0198】
特定の一実施形態において、検出は捕捉ELISAによって達成される。
【0199】
捕捉ELISA(「サンドイッチ」ELISAとしても知られている)は、ピコグラムからマイクログラム量の物質(ホルモン、細胞シグナル伝達化学物質、感染症抗原及びサイトカイン等)を定量化するための高感度アッセイである。この種のELISAは、解析される物質がポリスチレンマイクロタイタープレートと結合するには希釈され過ぎた(細胞培養上清中のタンパク質等)場合、或いはプラスチックと十分に結合しない(有機小分子等)場合に特によく用いられる。抗体、試料、対照及び検出用抗体の捕捉に最適な希釈並びにインキュベーション時間は経験的に決定され、広範な用量設定を必要とし得る。理想的には、酵素標識された検出用抗体が用いられる。しかし、検出用抗体が非標識である場合、二次抗体は、コーティング用抗体又は試料のいずれかと交差反応してはならない。適切な陰性及び陽性対照も含まれるべきである。
【0200】
用いられる捕捉又はコーティング用抗体は、炭酸−重炭酸バッファー又はPBSで希釈するべきである。捕捉用抗体は通常、0.2〜10μg/mlで蒔かれる。アフィニティー精製された抗体を用いる、或いはIgG画分を最小限用いることが好ましい。一般に、試料は、10ng〜10μg/ウエル範囲(アッセイの感度が高くなる程、より少量の試料が必要とされる)になるようPBSで希釈される。
【0201】
本明細書において、用語「検出可能な成分」は、任意の原子、分子又はそれらの一部を意味し、その存在、不在又はレベルは、直接又は間接的にモニターすることができる。一例として、放射性同位元素が挙げられる。他の例として、(i)変色又は光放射(発光)反応を触媒できる酵素及び(ii)フルオロフォアが挙げられる。例えば、フルオロフォアの場合等、検出可能な成分それ自体が検出可能であれば、検出可能な成分の検出は直接的となることができる。或いは、検出可能な成分の検出は間接的であってもよい。後者の場合、それ自身が直接的に検出可能である、検出可能な成分と反応する第二の成分が好ましくは用いられる。検出可能な成分は、抗体固有のものとなることができる。例えば、抗体定常部は、直接的に検出可能な成分を備える二次抗体が特異的に結合することのできる、間接的に検出可能な成分として機能することができる。
【0202】
このように、二次抗体は、本発明の方法における抗体の検出に特に適した手段である。この二次抗体は、それ自体が検出可能な成分とコンジュゲートすることができる。本発明に係る抗体が検出可能に標識され得る一方法は、同を酵素と結合することによるものである。同様に、この酵素は、その後適切な基質に曝露されるのであれば、例えば、分光光度的、蛍光定量的又は視覚的手段により検出され得る化学的成分を生成するような仕方で基質と反応するであろう。抗体の検出可能な標識に用いることのできる酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコール脱水素酵素、アルファ−グリセロリン酸脱水素酵素、トリオースリン酸イソメラーゼ、アスパラギナーゼ、グルコース酸化酵素、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素、グルコアミラーゼ及びアセチルコリンエステラーゼを含むが、これらに限定されるものではない。
【0203】
検出は、酵素に対する発色性基質を用いる比色法によって達成することができる。検出は、同様に調製した標準と比較した、基質の酵素反応の程度の視覚的比較によって達成することもできる。
【0204】
第一の抗体が結合する固体支持体は、任意の水に不溶性で水に懸濁不能の固体支持体となることができる。適切な固体支持体の例として、例えばポリスチレン製の大型のビーズ、濾紙、試験管及びマイクロタイタープレートが挙げられる。第一の抗体は、共有結合又は吸着によって固体支持体と結合することができる。固体支持体を用いることの利点は、固相と液相の分離のための遠心分離工程の必要がないことである。
【0205】
上述の固体支持体は、ポリスチレン、アガロース、セファロース、セルロース、ガラスビーズ及び磁化可能なセルロース粒子その他のポリマー等、ポリマーを含むこともできる。固体支持体は、大型又は小型のビーズ又は粒子、チューブ、プレートその他の形状となることができる。
【0206】
固体支持体として、好ましくはその内壁が第一の抗体、例えば本発明のために本発明者らによって調製された特異的な抗体又はその任意の断片若しくは誘導体でコーティングされたマイクロタイタープレートの試験管からなるものが用いられる。
【0207】
本発明の方法において用いられている「決定」の言及は、評価、定量化、計算又は特定の試料中に存在するバイオマーカー量に由来するその他を含む。これは、例えば、検出可能な産物の出現、例えば基質レベルの任意の検出可能な変化、又は産物出現若しくは基質消失率の任意の変化となることのできる終点指示を測定することにより、或いは本発明に記載のバイオマーカーと結合した抗体量を測定することにより達成することができる。
【0208】
前記検査キットの全てにおいて、検査される試料を採取するための前記手段は、スワブ、ピペット又は類似の採取手段となることができ、前記インキュベーション手段は、プレート、試験管、ガラス若しくはプラスチック表面、ウエル又は吸取り紙片上に置かれた液体又は半流動性培養液、或いは同様の手段となることができる。
【0209】
いかなる型式のキットも、検査が走査装置上で行われ、結果がコンピュータにリアルタイムで送り込まれるようにも設計されていることを理解するべきである。これは、全情報が関係者全員に直接メールされ、後に参照できるよう無編集で保存されることを確実にするであろう。
【0210】
キットの別の一実施形態において、前記試料は、体液及び培養由来試料のいずれか1種類である。
【0211】
本発明の抗体と接触させられる試料は、アレイに配置することができる。
【0212】
本発明の方法及びキットに用いられている用語「アレイ」は、認識用薬剤、即ち本発明の抗体の内少なくとも1つの「アドレス指定された」空間配置を意味する。アレイの各「アドレス」は、認識用薬剤を含有する所定の特定の空間領域である。例えば、アレイは、そのそれぞれが異なる抗体を含有する複数の容器(試験管)、プレート、マイクロプレートのマイクロウエルとなることができる。アレイは、別個の領域(点、線、カラム)において異なる且つ公知の認識用薬剤、例えば抗体を保持する任意の固体支持体となることもできる。アレイは、好ましくは、作り付けの適切な対照、例えば試料なし領域、抗体なし領域、どちらもない領域、即ち溶媒及び試薬のみ領域並びに抗体によって認識される合成又は単離されたタンパク質又はペプチド(陽性対照)を含む領域を含む。本発明のアレイに用いられる固体支持体は、本発明によって提供されるキットに関連して、本明細書において後により詳細に説明される。
【0213】
本発明のキットにおける使用に適した固体支持体は、一般に、実質的に液相に不溶性である。本発明の固体支持体は、特定の種類の支持体に限定されない。むしろ、多数の支持体が利用でき、当業者に知られている。よって、有用な固体支持体は、エーロゲル及びハイドロゲル等の固体及び半流動性マトリックス、樹脂、ビーズ、バイオチップ(薄膜コーティングされたバイオチップ等)、マイクロ流体チップ、シリコンチップ、マルチウエルプレート(マイクロタイタープレート又はマイクロプレートとも言う)、メンブレン、フィルター、導電性及び非導電性金属、ガラス(顕微鏡用スライド等)並びに磁性支持体を含む。有用な固体支持体のさらなる具体例として、シリカゲル、ポリマーメンブレン、粒子、誘導体化プラスチックフィルム、ガラスビーズ、綿、プラスチックビーズ、アルミナゲル、セファロース等の多糖類、ナイロン、ラテックスビーズ、磁性ビーズ、常磁性ビーズ、超常磁性ビーズ、デンプン等が挙げられる。
【0214】
本発明の方法及びキットのいずれかに含まれている試薬のいずれかが、上述の固体支持体材料のいずれかに包埋、連結、接続、結合、配置又は融合された試薬として提供され得ることに、さらに留意するべきである。
【0215】
本発明の方法及びキットによって用いられる任意の抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え、例えば本発明の抗体に由来するキメラ若しくは単鎖抗体(ScFv)であってよいことに留意するべきである。
【0216】
本発明は、その内容が本明細書の開示内に含まれているものとして読解される、特許請求の範囲によって規定される。
【0217】
開示され、記載されている通り、本発明は、本明細書において開示されている特定の実施例、工程段階及び材料に限定されないことを理解するべきであり、これはこのような工程段階及び材料はある程度変化する可能性があるためである。本明細書における用語使用は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されるため、これは限定を企図しないことも理解するべきである。
【0218】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、その内容が明らかにそれ以外を示さない限り、単数形は複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。
【0219】
本明細書及び続く特許請求の範囲を通じて、文脈がそれ以外を必要としない限り、語句「含む」並びに「含んだ」及び「含んでいる」等の変化形は、記載された整数若しくは工程又は整数若しくは工程群の包含を暗示するが、その他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程群の除外を暗示しないことが理解される。
【0220】
次の実施例は、本発明者らによって本発明の態様の実施に用いられる技法の代表例である。これらの技法は本発明の実施のための好ましい実施形態の例示であるが、当業者であれば、本開示を考慮し、企図された本発明の範囲から逸脱することなく多くの修正を行ってよいことを認識すると理解するべきである。
【0221】
他に規定されていない限り、本明細書に用いられているあらゆる技術及び科学用語は、本発明に関与する当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。
【実施例】
【0222】
方法
例えばELISA等の多くの免疫学的技法は当業者によく知られており、例えばHarlow及びLane(1988年)Antibodies:a laboratory manual、Cold Spring Harbour Laboratoryに詳細に記載されているため、本明細書における各事例において詳細には記載されない。
【0223】
一般的な分子生物学的方法
多くの分子生物学的技術の方法は当業者によく知られているため、本明細書において詳述されない。このような方法は、PCR、cDNAの発現、ヒト細胞のトランスフェクション等を含む。このような方法について説明する教科書は、例えばSambrookら(1989年)Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、ISBN:0879693096;F.M.Ausubel(1988年)Current Protocols in Molecular Biology、ISBN:047150338X、John Wiley&Sons,Inc.である。さらに、例えばウエスタンブロット等、多くの免疫学的技法は当業者によく知られているため、本明細書における各事例において詳細には記載されない。例えば、Harlow及びLane(1988年)Antibodies:a laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratoryを参照のこと。
【0224】
ELISA一般プロトコル
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)は、容易にアッセイされる酵素と結合した抗体又は抗原を用いることによって、抗体の特異性と簡便な酵素アッセイの感度とを組み合わせる。ELISAは、抗原又は抗体濃度の有用な測定値を提供することができる。ELISAは、5段階からなる手順である。1)マイクロタイタープレートウエルをPBSで希釈した抗原でコーティングし、一晩4℃でインキュベートし、洗浄する。2)非結合部位をPBSに溶解したBSA/FCSでブロッキングして偽陽性結果を抑制し、1時間インキュベートし、洗浄する。3)抗体をウエルに添加し、1時間インキュベートし、洗浄する。4)酵素とコンジュゲートした抗ヒトIgGを添加し、1時間インキュベートし、洗浄する。5)基質と酵素との反応が、発色産物を生成し、最終的に陽性反応を示す。
【0225】
FACSプロトコル
1.細胞を収集、洗浄し、氷冷PBS、10%FCS、1%アジ化ナトリウム中に1〜5×10細胞/ml濃度になるよう懸濁液において調整した。
2.0.1〜10μg/mlの標識一次抗体を添加した。必要であれば、抗体を3%BSA/PBSに希釈した。
3.細胞+抗体を少なくとも30分間室温又は4℃でインキュベートした。
4.400gで5分間遠心分離し、500μl〜1mlの氷冷PBS、10%FCS、1%アジ化ナトリウムに再懸濁することにより、細胞を3回洗浄した。
5.これにより、細胞はフローサイトメーターによる解析の準備が整った。
【0226】
KTPAF50検出のためのELISA手順
1.検量線:PBS(Biological Industries、カタログ番号02−023−5A)中に2000pg/ml〜31pg/mlとなるようPRT3の段階希釈液を調製した。
2.37℃の水槽において試料を急速に解凍した。
3.70μlの2回複製した各血液試料(希釈されず)及び70μlの3回複製した標準試料をMaxisorp96ウエルプレート(NUNC、F96Maxisorp、カタログ番号442404)にロードし、4℃で一晩振盪しつつインキュベートした。
4.洗浄:300μlの0.05%TW−20(Amresco、カタログ番号0777−1L)/PBSでプレートを4回洗浄した。
5.ブロッキング:300μlのブロッキングバッファー、5%BSA(MP biomedicals、カタログ番号160069)/PBSを各ウエルにロードし、室温で1時間、振盪しつつインキュベートした。
6.洗浄:工程#4に同じ。
7.検出:KTPAF50特異抗体(アフィニティー精製した)を希釈液(PBS中に0.05%TW−20、0.1%BSAを溶解)で1:250に希釈した。100μlの検出用抗体を各ウエルにロードし、室温で2時間、振盪しつつインキュベートした。
8.洗浄:上の工程#4に同じ。
9.HRPコンジュゲート:ヤギ抗ウサギHRPコンジュゲート抗体(Cell signaling、カタログ番号7074)を希釈液で1:200に希釈した。100μlのHRPコンジュゲートを各ウエルにロードし、30分間、室温で振盪しつつインキュベートした。
10.洗浄:4回ではなく5回洗浄する以外は上の工程#4に同じ。
11.発色:100μlのTMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、西洋ワサビペルオキシダーゼ基質、Millipore、カタログ番号ES001−500ML)を各ウエルに添加した。青色を呈色したら、50μlの2N HSO(Frutarom、カタログ番号5552540)を添加した。
12.プレート読取り:マイクロプレートリーダーにおいて、450nmの吸光度を検査した。
【0227】
ポリクローナル抗体の調製
ポリクローナル抗体調製のための標準的なプロトコルを用いて、ポリクローナル抗体をウサギにおいて産生した。
【0228】
KTPAF50特異的ポリクローナル抗体の調製に用いた抗原は、KTPAF50タンパク質C末端における最後の14アミノ酸(EKGAAFSPIYPRRK)に対応するペプチドであり、これは配列番号3で表される配列に相当する。
【0229】
図1は、KTPAF50特異抗体のその抗原に対する特異性の曲線を示す。
【0230】
KTPAF50特異的モノクローナル抗体の調製及びキャリブレーション
当業者に知られた抗体の標準的なプロトコルに従ってGenemed Synthesis,Inc.(米国テキサス州サン・アントニオ)により、KTPAF50に対するモノクローナル抗体をオーダーメイドした。次の通り、抗体親和性のキャリブレーションをELISAにより行った。
1.KTPAF50ペプチドを1000、500、100及び0ng/mlになるようPBSに希釈し、検量線を作製した。2枚のMAXISORP(商標)ELISA Nunc Immuno(商標)プレート(Nunc#442404)においてこれらの濃度の液を2回複製して30回分ロードした。プレートを一晩4℃で穏やかに振盪しつつインキュベートした。
2.インキュベーション後、0.05%Tween−20/PBS(300μl/ウエル)を用いてプレートを4回洗浄した。
3.300μl/ウエルの1%BSA/PBSをロードし、その後4℃で穏やかに振盪しつつ一晩インキュベーションすることによってウエルをブロッキングした。
4.インキュベーション後、工程2に記載の通りプレートを洗浄した。各KTPAF50希釈曲線において、各100μlの30種のモノクローナルKTPAF50抗体を2回複製してロードした。対照として、ポリクローナルKTPAF50抗体(1:250希釈された)も各プレートにロードし、プレートを1時間37℃でインキュベートした。
5.インキュベーション後、工程2に記載の通りプレートを洗浄した。0.1%BSA、0.05%Tween−20/PBSに1:200希釈した50μlのペルオキシダーゼ−AffiniPureヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch#115−035−206)を各ウエルにロードした。プレートを1時間37℃でインキュベートした。
6.インキュベーション後、工程2に記載の通りプレートを洗浄した。100μlのTMB/E(Millipore#ES001−500ML)を各ウエルにロードし、15分間37℃でインキュベートした。
7.50μlの2N HSOを各ウエルにロードした。
8.マイクロプレートリーダーを用いて450nmでプレートの読取りを行った。
【0231】
TDSプロトコル(eBioscience(商標)による)
1.100μl/ウエルの捕捉用抗体/コーティングバッファー(試薬セットに同封されている分析証明書に記されている通り希釈)でCorning Costar9018ELISAプレートをコーティングした。プレートを密封し、一晩4℃でインキュベートした。
2.ウエルを吸引し、>250μl/ウエルの洗浄バッファーで5回洗浄した。各洗浄工程の際に浸漬時間(約1分間)を設け、洗浄効果を高めた。吸取り紙で残渣バッファーをプレートから除去した。
3.1倍量の5×濃縮アッセイ希釈液を4倍量のDI水で希釈した。ウエルを200μl/ウエルの1×アッセイ希釈液でブロッキングし、室温で1時間インキュベートした。
4.洗浄を5回繰り返した。
5.検量線のため、100μl/ウエルの希釈標準を適切なウエルに添加し、最高濃度の標準から段階2倍希釈液を調製して検量線を作製した。100μl/ウエルの試料を適切なウエルに添加した。プレートを被覆又は密封し、室温で2時間(或いは感度を最大にするため一晩4℃)インキュベートした。
6.洗浄を5回繰り返した。
7.1×アッセイ希釈液に希釈した検出用抗体を100μl/ウエル添加した。プレートを密封し、室温で1時間インキュベートした。
8.洗浄を5回繰り返した。
9.1×アッセイ希釈液に希釈されたアビジン−HRPを100μl/ウエル添加した。プレートを密封し、室温で30分間インキュベートした。
10.最後の洗浄において、吸引前にウエルを洗浄バッファーに1〜2分間浸漬し、この洗浄を合計7回繰り返した。
11.50μlの停止液100μl/ウエルの基質溶液を各ウエルに添加した。プレートを室温で15分間インキュベートし、反応を50μlの停止液で停止させた。
12.プレートを450nmで読み取った。波長の差し引きが可能であれば、450nmの値から570nmの値を差し引いてデータ解析を行う。
【0232】
Poietics(登録商標)細胞の解凍手順
DNase Iは、培養細胞及び単核細胞の凝集を抑制するよう機能するため、培地に添加した。
1.凍結細胞のバイアルを37℃ウォーターバスにおいて急速に解凍した。
2.最大2mlの細胞懸濁液を50mlのコニカルチューブに無菌的に移した。
3.バイアルを10%FBS又は1%BSA及び20U/mlのDNase Iを含む1mlの予め温めた培地でリンスした。
4.数滴の培地をそれぞれに添加した後穏やかに旋回させつつ、合計容量は5mlとなった(=3分間)。
5.培地をそれぞれに添加した後穏やかに旋回させつつ、1ml〜2ml容量の培地を滴下することによって増量を完了した(=5〜10分間)。
6.細胞懸濁液を200×gにて室温で15分間遠心分離した。
7.細胞ペレットを残りの培地に穏やかに再懸濁した。
8.洗浄培地により容量を徐々に増し、培地をそれぞれに添加した後に穏やかに旋回しつつ、1ml〜2ml容量の培地を添加することによりチューブを充填した。
9.細胞懸濁液を200×gにて室温で15分間遠心分離した。
10.2mlの洗浄液を慎重に取り除き、細胞ペレットを残りの2mlの培地で穏やかに再懸濁した。細胞を計数した。細胞数が予想より少ない場合、必要であれば工程7で取り分けておいた上清でさらに洗浄を行って細胞を合わせてよい。
11.細胞を1時間37℃及び5%CO2にて静置し、2度目の計数を行い、次に培養に付した。
DNase添加のため、10%FBS及び20U/mlのDNase I(Sigma D4513)を含む20mlの培地を調製するとよい。DNase含有培地を細胞の希釈に用いた。
【0233】
動物
Harlan IsraelからBalb/Cマウスを購入した。
【表3】

【0234】
(例1)
ヒト血液試料におけるKTPAF50の検出
Asterand(登録商標)から年齢50〜65歳の男女に由来する19種のヒト血液血清試料を得た。9試料は肺癌患者で10試料は健常者である。使用まで−80℃より低温で全試料を維持した。
【0235】
ポリクローナル抗KTPAF50抗体を用いて、KTPAF50タンパク質の存在に関して血液試料を検査した。図2から理解できるように、KTPAF50の発現は、肺癌試料において有意に高かった。
【0236】
したがって、抗KTPAF50抗体は、肺癌検出のための診断ツールとして用いることができる。
【0237】
(例2)
抗KTPAF50特異的モノクローナル抗体の作製
KTPAF50ペプチド(抗原1、2又は3、下表参照)又は全長KTPAF50タンパク質を抗原として用いてKTPAF50特異的モノクローナル抗体を作製した。抗原を下の表1に記す。抗原2は、ポリクローナル抗体の調製と基本的に同様に用いられるが、そのN末端にプロリン、そのC末端にシステインを有する。抗体は、Genemed Synthesis,Inc.(米国テキサス州サン・アントニオ)に委託した。
【表4】

【0238】
Genemed Synthesis,Inc.(米国テキサス州サン・アントニオ)により30種の異なるモノクローナル抗体が生産され、それらのKTPAF50に対する親和性を検証した。
【0239】
表2は、各ハイブリドーマの抗原特異性をまとめる。
【表5】

【0240】
各モノクローナル抗体に対する親和性検量線の結果を表3にまとめる。
【表6−1】


【表6−2】

【0241】
(例3)
雌Balb/C脾細胞の生存率におけるモノクローナルKTPAF50抗体の効果
30種のKTPAF50特異的モノクローナル抗体を、脾細胞生存率におけるその効果に関して検査した。レサズリンアッセイを用いて生存率を検査した。
【0242】
手順:
1.1匹の雌Balb/C(20週齢)の脾臓を収集し、1×RBC溶解バッファー(eBioscience#00−4333)を用いて赤血球を溶解した。
2.細胞を2枚のF96MicroWell(商標)プレート(Nunc#167008)に分配した。各プレートにおいて、200μlの核型分析培地(Biological Industries01−201−1B)中に懸濁した50,000細胞を5×5ウエルにロードした。細胞を24時間37℃、5%COでインキュベートした。
3.インキュベーション後、各ウエルに次の処理を5回複製して行った。
a.対照(抗p53抗体[Santa Cruz CS−65334]−10μl)
b.100ng/ml KTPAF50
c.1000ng/ml KTPAF50
d.15μlのα−KTPAF50 1(ハイブリドーマ3E3G7)
e.15μlのα−KTPAF50 2(ハイブリドーマ5E11H3)
4.37℃、5%COにて第一のプレートを24時間インキュベートし、第二のプレートを48時間インキュベートした。
【0243】
インキュベーション時間の後、20μlのレサズリン(R&D systems#AR002)を各ウエルに添加し、プレートリーダーを用いて4及び24時間目にウエルの蛍光(530/590nm)を検査した。
【0244】
結果を図3A〜3Cに示す。基本的に、処理及びレサズリンによる4時間インキュベーションの24時間後、細胞生存率は3E3G7及び5E11H3で処理した培養においてそれぞれ54%及び58%に低下した(図6A)。細胞生存率低下は、レサズリンによる24時間インキュベーション後により一層顕著であり、3E3G7及び5E11H3で処理した培養においてそれぞれ29%及び35%であった(図6B)。
【0245】
KTPAF50特異抗体による48時間処理は、細胞生存率を24時間処理と同様の程度まで低下させた(図6C)。
【0246】
結果は、KTPAF50に対するモノクローナル抗体がBalb/C脾細胞の生存率を大幅に低下できることを明らかに示し、これはKTPAF50がマウス脾細胞の生存率維持に中心的役割を果たすことを示唆する。特異的モノクローナル抗体によるKTPAF50活性の中和は、マウスにおいて誘導された自己免疫疾患を治療するための非常に強力なツールとして機能する。同様に、KTPAF50特異的モノクローナル抗体は、ヒト治験において用いられるであろう。
【0247】
(例4)
C57/black脾細胞の生存率におけるモノクローナルKTPAF50抗体の効果
30種のKTPAF50特異的モノクローナル抗体を、脾細胞生存率におけるその効果に関して検査した。レサズリンアッセイを用いて生存率を検査した。
【0248】
手順:
1.1匹の雌及び1匹の雄C57/black(8週齢)の脾臓を収集し、1×RBC溶解バッファー(eBioscience#00−4333)を用いて赤血球を溶解した。
2.細胞を2枚のF96MicroWell(商標)プレート(Nunc#167008)に分配した。各プレートにおいて、200μlの核型分析培地(Biological industries 01−201−1B)中に懸濁した50,000細胞を5×5ウエルにロードした。細胞を24時間、37℃、5%COにてインキュベートした。
3.インキュベーション後、各ウエルに次の処理を5回複製して行った。
a.対照(抗p53抗体[Santa Cruz CS−65334]−10μl)
b.15μlの抗KTPAF50 1(抗体5E11H3)
c.15μlの抗KTPAF50 2(抗体3E3G7)
d.100ng/ml KTPAF50
e.500ng/ml KTPAF50
4.37℃、5%COにて第一のプレートを24時間インキュベートし、第二のプレートを48時間インキュベートし、第三のプレートを72時間インキュベートした。
5.インキュベーション時間の後、20μlのレサズリン(R&D systems#AR002)を各ウエルに添加し、4及び24時間目にプレートリーダーを用いて蛍光(530/590nm)を測定した。
【0249】
結果を図7A〜7Fに示す。基本的に、処理及びレサズリンによる24時間インキュベーションの24時間後、雄由来の細胞における細胞生存率は、5E11H3及び3E3G7で処理した培養において36%に低下し(図4A)、雌由来の細胞における細胞生存率は5E11H3及び3E3G7で処理した培養においてそれぞれ52%及び58%に低下した(図4B)。KTPAF50特異抗体による48時間処理は、雄と雌両方の細胞の細胞生存率を雌における24時間処理と同様の程度まで低下させた(図4C及び4D)。
【0250】
抗体による処理を延長(72時間処理)しても、さらなる細胞生存率低下は示されなかった(図4E及び4F)。
【0251】
結果は、KTPAF50に対するモノクローナル抗体がC57Bl/6脾細胞の生存率を大幅に低下できることを明らかに示し、これはKTPAF50がマウス脾細胞の生存率維持に中心的役割を果たすことを示唆する。特異的モノクローナル抗体によるKTPAF50活性の中和は、マウスにおいて誘導された自己免疫疾患を治療するための非常に強力なツールとして機能する。同様に、KTPAF50特異的モノクローナル抗体は、ヒト治験において用いられるであろう。
【0252】
(例5)
KTPAF50抗体による処理に加えて、ELISAアッセイを用いて上清中のKTPAF50の存在に関して細胞を評価した。
【0253】
手順:
1.セクションA(手順の工程4)から得られた24時間対照試料をMaxisorp immunoplate(Maxisorp#442404)上にロードした。各ウエルにつき100μlを3回複製した。ゼロ基準として、核型分析培地も3回複製してロードした。定量化のため、PRT3の段階希釈液もロードした(2000〜63pg/ml)。プレートを4℃で一晩インキュベートした。
2.インキュベーションの後、マルチピペットを用いてプレートを300μlの0.05%TW−20(Amresco #0777−1L)/PBSで4回洗浄した。
3.5%BSA(MP biomedicals#160069)/PBSを用いてプレートをブロッキングした。300μlを各ウエルにロードした。R.T.で1時間、振盪しつつインキュベーションした。
4.工程2に記載されている通り、プレートを洗浄した。
5.PRT3ポリクローナル抗体(アフィニティー精製された)を希釈液(0.05%TW−20、0.1%BSA/PBS)で1:250希釈した。100μlの抗体を各ウエルにロードした。プレートをR.T.で2時間、振盪しつつインキュベートした。
6.工程2に記載されている通り、プレートを洗浄した。
7.ヤギ抗ウサギHRPコンジュゲート抗体(Cell signaling、7074)を希釈液で1:200希釈した。100μlのHRPコンジュゲートを各ウエルにロードした。プレートを30分間、R.Tで振盪しつつインキュベートした。
8.4回ではなく5回洗浄する以外は工程2に記載されている通り、プレートを洗浄した。
9.100μlのTMB(Millipore(商標)、ES001−500ML)を各ウエルにロードし、発色後に50μlの2N HSO(Frutarom、5552540)をロードして反応を停止させた。
10.マイクロプレートリーダーにおいて450nmでプレートを読み取った。
【0254】
結果を図5に示すが、これは上清中のmKTPAF50の存在を確認する。
【0255】
(例6)
ヒト単球におけるモノクローナルKTPAF50抗体の効果
ヒト単球におけるKTPAF50抗体の効果を、細胞生存率、サイトカイン発現、上清中のKTPAF50タンパク質の存在及び細胞形態に関して解析した。
【0256】
A.レサズリンアッセイを用いて細胞生存率を検査した
手順:
1.ヒト末梢血単核細胞(HPBMC)(Lonza#CC−2702)を公式プロトコル(別添Bを参照)に従って解凍し、末梢血核型分析培地(Biological industries#01−201−1B)において培養した。
2.細胞を2枚のF96MicroWell(商標)プレート(Nunc#167008)に分配した。各プレートにおいて、200μlの核型分析培地中に懸濁した50,000細胞を4×5ウエルにロードした。細胞を24時間、37℃、5%COにてインキュベートした。
3.インキュベーション後、次の処理を各ウエルに4回複製して行った。
a.対照(抗p53抗体[Santa Cruz CS−65334]−10μl)
b.10μlの抗KTPAF50 1(5E11H3)
c.25μlの抗KTPAF50 1(5E11H3)
d.10μlの抗KTPAF50 2(,3E3G7)
e.25μlの抗KTPAF50 2(3E3G7)
4.37℃、5%COにて第一のプレートを24時間インキュベートし、第二のプレートを48時間インキュベートした。
【0257】
インキュベーション時間の後、20μlのレサズリン(R&D systems#AR002)を各ウエルに添加し、プレートリーダーを用いて2、4及び24時間目(24時間インキュベーションの後に)又は2及び4時間目(48時間インキュベーションの後に)に蛍光(530/590nm)を測定した。結果をそれぞれ図6A〜6C及び7A〜7Bに示す。
【0258】
B.ELISAアッセイを用いた、抗KTPAF50抗体による処理後の培地(上清)中のサイトカイン発現の変化の解析
手順:
1.ヒト末梢血単核細胞(HPBMC)(Lonza#CC−2702)を解凍プロトコル(上述を参照)に従って解凍し、末梢血核型分析培地(Biological Industries 01−201−1B)において培養した。
2.細胞を4枚の6ウエルマルチディッシュプレート(Nunc#140675)に分配した。各ウエルにつき、1Mの細胞を2mL核型分析培地にロードした。細胞を24時間、37℃、5%COにてインキュベートした。
3.インキュベーション後、次の処理を各ウエルに行った。
a. 対照
b. 100μlの抗KTPAF50 1(5E11H3)
c. 10μlの抗KTPAF50 2(3E3G7)
d. 100ng/ml KTPAF50
e. 500ng/ml KTPAF50
f. 1000ng/ml KTPAF50
4.プレートを24、48、120及び144時間、37℃、5%COにてインキュベートした。
5.インキュベーション後、プレートを氷上に置き、試料を採取し、300Gで10分間遠心分離した。培地(上清)をELISAアッセイ用に取り分けた。
6.ELISAアッセイのため、Maxisorp immunoplate(Nunc#442404)上に試料をロードした。メーカーの取扱説明書(TDSプロトコル、上述を参照)に従い、次のELISAキットを各サイトカインの検査に用いた。
a.ヒトTNF−アルファ(eBioscience(商標)#88−7346)。1:10希釈試料。
b.ヒトIFN−ガンマ(eBioscience(商標)#88−7316)。1:10希釈試料。
c.ヒトIL−10(eBioscience(商標)#88−7106)。1:6希釈試料。
d.PRT−3。希釈していない試料。
【0259】
TNF−α発現は、抗KTPAF50処理の24又は48時間処理では変化しなかったが(図8B〜8C)、120時間処理では有意に低下し(図8D)、144時間処理では抗体5E11H3により低下が起きた(図8E)。
【0260】
IFN−γ発現は抗KTPAF50処理後に低下し、この低下は時間と共に増幅した(図9B〜9E)。
【0261】
抗KTPAF50処理によりIL−10発現が抑制された(図10A〜10D)。
【0262】
これらの結果は、KTPAF50特異抗体がTNF−α及びIFN−γ等、ヒト末梢白血球から分泌されるヒト炎症性サイトカインを下方制御できることを強力に証明する。したがって、本明細書において提供されるモノクローナル抗体は、ヒト自己免疫疾患、移植片拒絶及び同様の他の状態を治療するための潜在的な薬物候補である。
【0263】
C.ELISAアッセイを用いた、培地中に存在するKTPAF50の解析
手順
1.セクションB(手順の工程6)の2種の対照試料をMaxisorp immunoplate(Maxisorp#442404)上にロードした。各ウエルにつき100μlを3回複製した。ゼロ基準として、核型分析培地も3回複製してロードした。プレートを4℃で一晩インキュベートした。
2.インキュベーション後、マルチピペットを用いて300μlの0.05%TW−20(Amresco#0777−1L)/PBSでプレートを4回洗浄した。
3.5%BSA(MP Biomedicals#160069)/PBSを用いてプレートをブロッキングした。300μlを各ウエルにロードした。R.T.にて1時間、振盪しつつインキュベーションした。
4.工程2に記載されている通り、プレートを洗浄した。
5.KTPAF50ポリクローナル抗体(アフィニティー精製した)を希釈液(0.05%TW−20、0.1%BSA/PBS)で1:250希釈した。100μlの抗体を各ウエルにロードした。プレートを室温で2時間、振盪しつつインキュベートした。
6.工程2に記載されている通り、プレートを洗浄した。
7.ヤギ抗ウサギHRPコンジュゲート抗体(Cell signaling#7074)を希釈液で1:200希釈した。100μlのHRPコンジュゲートを各ウエルにロードした。プレートを30分間、室温で振盪しつつインキュベートした。
8.4回ではなく5回洗浄する以外は工程2に記載されている通り、プレートを洗浄した。
9.100μlのTMB(Milipore#ES001−500ML)を各ウエルにロードした。発色後、50μlの2N HSO(Frutarom#5552540)をロードして反応を停止させた。
10.マイクロプレートリーダーにおいて450nmでプレートを読み取った。
【0264】
結果を図11に示すが、これは上清におけるKTAPAF50の存在を確認する。
【0265】
D.抗KTPAF50処理後のヒト単球細胞における形態変化、光学顕微鏡による解析
手順:
1.ヒト末梢血単核細胞(HPBMC)(Lonza#CC−2702)を解凍プロトコル(上述を参照)に従って解凍し、末梢血核型分析培地(Biological Industries01−201−1B)において培養した。
2.細胞を4枚の6ウエルマルチディッシュプレート(Nunc#140675)に分配した。各ウエルにおいて、1Mの細胞を2mL核型分析培地にロードした。細胞を24時間、37℃、5%COにてインキュベートした。
3.インキュベーション後、次の処理を各ウエルに行った。
a.対照
b.100μlの抗KTPAF50 1(5E11H3)
c.10μlの抗KTPAF50 2(3E3G7)
d.100ng/ml KTPAF50
e.500ng/ml KTPAF50
f.1000ng/ml KTPAF50
4.プレートを120時間、37℃、5%COにてインキュベートし、光学顕微鏡(倍率×100)及びCCDカメラを用いて可視化した(図15A〜15F)。
【0266】
PHAで処理したヒト末梢血細胞は、増殖して大きな細胞凝集塊を生じる。本結果は、PHA処理に続いて抗KTPAF50モノクローナル抗体処理が行われる場合、これらの細胞の完全な増殖抑制が観察されたことを疑いの余地なく示す。このことは、本明細書に提供される抗体を、増殖制御のための強力なツールとし、癌、炎症過程に関与する疾患等の望ましくない細胞増殖に関与する任意の状態の治療法とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
KTPAF50タンパク質又はその任意の断片若しくは誘導体を特異的に認識する抗体。
【請求項2】
前記KTPAF50タンパク質が配列番号1又は配列番号2で表される、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
KTPAF50由来ペプチドを特異的に認識する抗体。
【請求項4】
前記KTPAF50由来ペプチドが、配列番号3、配列番号5、配列番号6及び配列番号7のいずれか一配列で表される、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
KTPAF50タンパク質又はその任意の断片若しくは誘導体を特異的に認識する抗体を有効成分として含む組成物。
【請求項6】
薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
診断方法における使用のための、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
自己免疫障害及び癌の内一方の診断における使用のための、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
癌治療における使用のための、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項10】
癌又は自己免疫疾患のいずれか一方の予後における使用のための、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項11】
前記癌が肺癌、乳癌及び卵巣癌からなる群から選択された、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
前記自己免疫障害が炎症性腸疾患である、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の抗体を産生する、抗体産生細胞系。
【請求項14】
3E3G7又は5E11H3のいずれか一方である、ハイブリドーマ細胞系。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の細胞系に由来する抗体。
【請求項16】
診断組成物の調製における、請求項1から4まで及び請求項15のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項17】
前記組成物が、癌及び自己免疫疾患のいずれか一方の診断のためのものである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記癌が肺癌、乳癌及び卵巣癌からなる群から選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記自己免疫障害が炎症性腸疾患である、請求項17に記載の使用。
【請求項20】
治療組成物の調製における、請求項1から4まで及び請求項15のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項21】
前記組成物が、癌、自己免疫疾患、神経変性疾患、糖尿病及び移植片拒絶からなる群から選択される状態の治療のためのものである、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
対象における癌の診断のための方法であって、
a.対象から試料を得る工程と、
b.前記試料を請求項1から4まで及び請求項15のいずれか一項に記載の少なくとも1種類の抗体又は請求項5から8までのいずれか一項に記載の組成物と接触させる工程と、
c.前記少なくとも1種類の抗体とその特異抗原との複合体の形成を検出手段により検出する工程と、
を含み、それにより、複合体の検出が、前記対象が癌に罹患していることを示す上記方法。
【請求項23】
前記試料が血液試料である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が請求項4及び15に記載の抗体であり、前記癌が肺癌である、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
対象における自己免疫障害の診断のための方法であって、
a.対象から試料を得る工程と、
b.前記試料を請求項1から4まで及び請求項15のいずれか一項に記載の少なくとも1種類の抗体又は請求項5から8までのいずれか一項に記載の組成物と接触させる工程と、
c.前記少なくとも1種類の抗体とその特異抗原との複合体の形成を検出手段により検出する工程と、
を含み、それにより、複合体の検出が、前記対象が自己免疫障害に罹患していることを示す上記方法。
【請求項26】
前記試料が血液試料である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記自己免疫障害がIBDである、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
癌の治療方法であって、必要とする対象に治療上有効量の少なくとも1種類の抗KTPAF50抗体若しくはその組合せ又はそれを含む組成物を投与する工程を含む、上記方法。
【請求項29】
細胞増殖を抑制する方法であって、有効量の少なくとも1種類の抗KTPAF50抗体若しくはその組合せ又はそれを含む組成物を細胞と接触させる工程を含む、上記方法。
【請求項30】
サイトカイン発現を抑制する方法であって、有効量の少なくとも1種類の抗KTPAF50抗体若しくはその組合せ又はそれを含む組成物を、前記サイトカインを発現する細胞と接触させる工程を含む、上記方法。
【請求項31】
前記サイトカインが炎症性サイトカインである、請求項30の方法。
【請求項32】
前記サイトカインが、TNF−α、IFN−γ又はIL−10からなる群から選択された、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
癌の診断、治療有効性のモニタリング又は予後評価の内いずれか1つのためのキットであって、次の構成要素、
a.請求項1から4まで及び請求項15のいずれか一項に記載の少なくとも1種類の抗体又は請求項5から8までのいずれか一項に記載の組成物と、
b.前記抗体によって特異的に認識される抗原の、試料における存在の検出を行うための取扱説明書と、
を含む、上記キット。
【請求項34】
次の構成要素、
a.検査する試料を採取するための少なくとも1つの手段と、
b.前記抗体による前記抗原の前記認識の検出に必要な少なくとも1種類の試薬と、
c.少なくとも1種類の対照試料と、
の内少なくとも1つをさらに含む、請求項33に記載のキット。
【請求項35】
自己免疫疾患の診断及び治療有効性のモニタリング又は予後評価の内少なくとも1種のためのキットであって、次の構成要素、
a.請求項1から4まで及び請求項15のいずれか一項に記載の少なくとも1種類の抗体又は請求項5から8までのいずれか一項に記載の組成物と、
b.前記抗体によって特異的に認識される抗原の、試料における存在の検出を行うための取扱説明書と、
を含む、上記キット。
【請求項36】
次の構成要素、
a.検査する試料を採取するための少なくとも1つの手段と、
b.前記抗体による前記抗原の前記認識の検出に必要な少なくとも1種類の試薬と、
c.少なくとも1種類の対照試料と、
の内少なくとも1つをさらに含む、請求項35に記載のキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図4E】
image rotate

【図4F】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate

【図8D】
image rotate

【図8E】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図9D】
image rotate

【図9E】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図10D】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図12C】
image rotate

【図12D】
image rotate

【図12E】
image rotate

【図12F】
image rotate


【公表番号】特表2012−532122(P2012−532122A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518146(P2012−518146)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000524
【国際公開番号】WO2011/001432
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(512002172)ツー トゥー バイオテック リミテッド (2)
【Fターム(参考)】