説明

施工支援システムによる無人化施工方法

【課題】無人の建設機械を用いて切土・盛土作業等を行う無人化施工において、有人の搭乗運転を対象とした施工支援システムの3次元バックホウコントロールシステム等を無人化施工に容易に低コストで適用することができる無人化施工方法を提供する。
【解決手段】バックホウ3の運転席に、ディスプレー20とキーボード21を有するコントローラー11を設置し、GPS12,13と各種センサー14、15を組み合わせ、バックホウのバケット刃先座標を3次元で把握することで、予め入力した設計データとの差をオペレーターに認識させて施工を支援する3次元バックホウコントロールシステム10を用い、コントローラー11の表示画面をカメラで撮影し、その映像を遠隔操作室Aに無線で送信し、この映像に基づいて遠隔操作室Aのオペレーターがバックホウ3を遠隔操作して施工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作される無人の建設機械を用いて切土・盛土等の作業を行う場合の無人化施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切土・盛土作業においては、遠隔操作される無人のバックホウ等の建設機械による無人化施工を行う場合があり、この無人化施工では、有人施工と同様の丁張を設置することは困難である。そのため、無人化施工では、丁張の代わりに無人測量機(例えば特許文献1参照)を用いている。
【0003】
土砂掘削を行う前に無人測量機のマーキング装置により切盛ポイントをマーキングし、遠隔操作室のオペレーターは、施工支援カメラ及びバックホウ搭載カメラによって視認したポイントを目標に作業を開始する。マーキングしたポイント間をバックホウで切口を入れてポイント間を結び、この切口から法面掘削を行う(図1、図2参照)。
【0004】
法面掘削は、有人の搭乗運転においてもオペレーターの技量によりその出来栄えが左右され、特に無人化施工ではそれが顕著に現れる。また、掘削勾配を確保するため、無人測量機で確認しながらの作業となり、作業効率が低下する(図1の繰り返しフロー部分)。
【0005】
このような問題を解決すべく、GPS(全地球測位システム)と各種センサーを組み合わせた3次元バックホウコントロールシステムが開発されている。このシステムは、バックホウの運転席に、ディスプレーとキーボードを有するコントローラーを設置したものであり、搭乗運転を対象としている技術である。
【0006】
また、このシステムは、バックホウの刃先座標を3次元で把握することによって、予め入力した設計データとの差を運転席のオペレーターに認識させて施工を支援するシステムである。設計データとバックホウの刃先座標は、コントローラーの表示画面に表示され、画面の切替により平面・横断面・縦断面が表示される。
【0007】
また、本発明に関連する無人施工の先行技術文献として特許文献2〜5がある。特許文献2の発明は、同一の作業現場で同時に多くの作業機械を使用して無人施工を行う場合において、無線通信による電波の効率的利用と複数台の作業機械の設置・運用・管理の容易化ができる無人施工システムである。
【0008】
特許文献3の発明は、植樹を無人で行えるようにする遠隔操作植栽法であり、人の立ち入りが行えない無人化施工区域で無人測量を行って植樹溝の掘削位置にマーキングし、マーキング位置を掘削して植樹溝を形成し、有人施工区域の植木をクローラダンプにより遠隔操作で植樹溝へ誘導し、バックホウに爪を設けた移栽装置で植木を植樹溝内に移し、土を入れて植付けを行うものである。
【0009】
特許文献4の発明は、建設機械の完全無人化施工を実現するGPS無人施工管理システムであり、少なくとも5衛星で遠隔操作式建設機械の位置等をリアルタイム検出する位置姿勢検出手段と、無人区域の前記建設機械を撮影するテレビカメラと、モニター画面・コンピュータ・遠隔操作盤を備える遠隔操作室などからなり、建設機械の位置及び当該位置から把握した施工現況をコンピュータにより施工計画と共にリアルタイムにモニター画面に表示し、テレビカメラからの画像をリアルタイムでモニター画面に表示するものである。
【0010】
特許文献5の発明は、掘削機用の機械制御システムであり、タッチスクリーン制御パネルを使用してデータを入力し、表示して掘削機を制御するものである。
【0011】
【特許文献1】特開2006−138154号公報
【特許文献2】特開2003−333041号公報
【特許文献3】特開2003−284438号公報
【特許文献4】特開平10−88624号公報
【特許文献5】特許第3452461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述のような搭乗運転を対象とした3次元バックホウコントロールシステムを用いて無人化施工を行おうとする場合、運転席のコントローラーからのデータ信号を遠隔操作室に無線で送信し、操作信号を遠隔操作室からコントローラーに無線で送信する新たな3次元バックホウコントロールシステムを構築すればよいが、新たなシステムの構築には、多大の費用と時間を要するなどの問題がある。
【0013】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたもので、無人の建設機械を用いて切土・盛土作業等を行う無人化施工において、有人の搭乗運転を対象とした施工支援システムの3次元バックホウコントロールシステム等を無人化施工に容易に低コストで適用することができる無人化施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1に係る発明は、建設機械(バックホウ等)を遠隔操作して切土・盛土等の作業を無人で行う無人化施工において、建設機械の運転席に設置されたコントローラーの表示画面に建設機械の作業アーム先端部分を表示して施工を支援する施工支援システムを建設機械に搭載し、コントローラーの表示画面をカメラで撮影し、その映像を遠隔操作室に無線で送信し、この映像に基づいて遠隔操作室のオペレーターが建設機械を遠隔操作して施工を行うことを特徴とする施工支援システムによる無人化施工方法である。
【0015】
本発明は、有人の搭乗運転を対象とした施工支援システムの3次元バックホウコントロールシステム等を遠隔操作室のオペレーターが扱えるようにしたものであり、多大な費用と時間を要する新たな施工支援システムを構築することなく、カメラ等の機材を運転席に設置するだけで、容易にかつ低コストで、施工支援システムを用いた無人化施工が可能となる。
【0016】
3次元バックホウコントロールシステムは、バックホウの運転席に、ディスプレーとキーボードを有するコントローラーを設置し、GPSと各種センサーを組み合わせ、バックホウのバケット刃先座標を3次元で把握することによって、予め入力した設計データとの差をオペレーターに認識させて施工を支援するシステムである。設計データとバックホウの刃先座標は、コントローラーの表示画面に表示され、画面の切替により平面・横断面・縦断面が表示される。
【0017】
遠隔操作室において、オペレーターが画面表示により設計データとバックホウ等のバケットの刃先座標をリアルタイムで認識しながら、バックホウ等を遠隔操作して、法面の掘削を行う。3次元バックホウコントロールシステム等を用い、オペレーターが遠隔操作することにより、出来栄えの良い法面掘削を一回で迅速に無人化施工することができる。
【0018】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の施工支援システムによる無人化施工方法において、コントローラーのキーボードに押しボタン式の操作装置を設置し、遠隔操作室からの操作信号により前記操作装置を動作させ、コントローラーを操作することを特徴とする施工支援システムによる無人化施工方法である。
【0019】
アクチュエーターで押しボタンスイッチを上下動させて、キーを押す方式の押しボタン式の操作装置を遠隔操作室からの操作信号により動作させ、コントローラーの平面・横断面・縦断面(それぞれ座標値が表示されている)の画面切替を行う。この操作装置にカメラを取付ける。カメラと操作装置を運転席に設置するだけの簡易な構成で、無人化施工の施工支援システムを容易かつ低コストで構築することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以上のような構成からなるので、次のような効果が得られる。
(1)施工支援システムの3次元バックホウコントロールシステム等を遠隔操作室のオペレーターが扱えるようにし、多大な費用と時間を要する新たな施工支援システムを構築することなく、カメラ等の機材を運転席に設置するだけでよいため、容易にかつ低コストで、施工支援システムを用いた無人化施工が可能となる。
【0021】
(2)施工支援システムの3次元バックホウコントロールシステム等を用いることにより、設計データとバケット刃先座標をリアルタイムで認識できるため、従来の丁張、無人測量機での確認測量が不要となり、作業効率が向上する。
【0022】
(3)遠隔操作室でオペレーターが遠隔操作することにより、出来栄えの良い法面掘削を一回で迅速に無人化施工することができる。
【0023】
(4)カメラと操作装置を運転席に設置するだけの簡易な構成で、無人化施工の施工支援システムを容易かつ低コストで構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を図示する実施の形態に基づいて説明する。図1は、無人化施工による切土作業の従来の施工フロー図であり、図2は、無人化施工における切土作業の概要を示すイメージ図である。図3は、本発明で用いる3次元バックホウコントロールシステムを示すバックホウの平面図と側面図である。図4は、本発明の無人化施工を実施するための装置の一例を示すバックホウ運転席内の斜視図である。図5は、本発明における遠隔操作室のコントローラー表示画面を示す図である。
【0025】
図1、図2に示すように、無人化施工による切土作業においては、無人測量機1のマーキング装置により掘削位置(切盛ポイント)をマーキングし、マーキングしたポイント間を小型のバックホウ2で切口を入れてポイント間を結び、大型のバックホウ3でこの切口から法面掘削を行い、切口で明示した範囲を掘削し、ダンプトラック4に積み込んでいる。従来は、遠隔操作室のオペレーターが施工支援カメラ及びバックホウ搭載カメラによって視認したポイントを目標に法面掘削を行い、掘削勾配を確保するため、無人測量機1で確認しながらの作業となり、作業効率が低下する(図1の繰り返しフロー部分)。
【0026】
図3に示すように、バックホウ施工支援システムの3次元バックホウコントロールシステム10を用いることにより、無人測量機1による確認作業を無くし、1回の法面掘削で所望の掘削勾配が得られる。このシステム10は、バックホウ3に搭載され、コントローラー11と、GPS12、13と、各種センサー14、15から構成されている。
【0027】
コントローラー11は、バックホウ3の運転席に設置され、ディスプレー20と、キーボード21と、ライトバー22から構成されている。マスターGPS12によりバックホウ(ショベル)3の位置を検出し、スレーブGPS13によりバックホウ3の方位角を検出し、各種センサー14、15によりバケット5の位置を検出し、結果をコントローラー11に画面表示する。バケット位置は、デジタルチルトセンサー14、デジタルピッチセンサー15と、コントローラー11の入力パラメータを利用して算出される。
【0028】
このシステム10は、バックホウのバケット5の刃先座標を3次元で把握することによって、予め入力した設計データとの差を運転席のオペレーターに認識させて施工を支援するものである。設計データとバケット5の刃先座標は、コントローラー11の表示画面に表示され、画面の切替により平面・横断面・縦断面が表示される。
【0029】
本発明においては、図4に示すように、コントローラー11の表示画面をカメラ30で撮影し、その映像を遠隔操作室Aに無線で送信し、この映像に基づいて遠隔操作室Aのオペレーターがバックホウ3を遠隔操作して施工を行う。図5に示すように、遠隔操作室Aの表示画面には、設計データによる切口ライン、バケット5の3次元の刃先座標と、バックホウ3など表示され、さらに画面の切替により平面・横断面・縦断面が表示される。
【0030】
また、図4に示すように、コントローラー11のキーボード21の上に押しボタン式の操作装置31を設置し、遠隔操作室Aからの操作信号により操作装置31を動作させ、コントローラー11の平面・横断面・縦断面の画面切替を行う。操作装置31はソレノイド方式等のアクチュエーター32で押しボタンスイッチ33を上下動させて、キーを押す方式であり、コントローラー11の横に支持装置34を固定し、これに操作装置31を取付ける。カメラ30は操作装置31に取付け、表示画面を撮影できるようにする。
【0031】
遠隔操作室Aにおいては、オペレーターが画面表示により設計データとバックホウバケットの刃先座標をリアルタイムで認識しながら、バックホウ3を遠隔操作して、法面の掘削を行う。3次元バックホウコントロールシステム10を用い、オペレーターが遠隔操作することにより、出来栄えの良い法面掘削を一回で迅速に無人化施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】無人化施工による切土作業の従来の施工フロー図である。
【図2】無人化施工における切土作業の概要を示す断面図である。
【図3】本発明で用いる3次元バックホウコントロールシステムを示す(a)はバックホウの平面図、(b)はバックホウの側面図である。
【図4】本発明の無人化施工を実施するための装置の一例を示すバックホウ運転席内の斜視図である。
【図5】本発明における遠隔操作室のコントローラー表示画面を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1……無人測量機
2……小型のバックホウ
3……大型のバックホウ
4……ダンプトラック
5……バケット
10…3次元バックホウコントロールシステム
11…コントローラー
12…マスターGPS
13…スレーブGPS
14…デジタルチルトセンサー
15…デジタルピッチセンサー
20…ディスプレー
21…キーボード
22…ライトバー
30…カメラ
31…押しボタン式の操作装置
32…アクチュエーター
33…押しボタンスイッチ
34…支持装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械を遠隔操作して切土・盛土等の作業を無人で行う無人化施工において、
建設機械の運転席に設置されたコントローラーの表示画面に建設機械の作業アーム先端部分を表示して施工を支援する施工支援システムを建設機械に搭載し、コントローラーの表示画面をカメラで撮影し、その映像を遠隔操作室に無線で送信し、この映像に基づいて遠隔操作室のオペレーターが建設機械を遠隔操作して施工を行うことを特徴とする施工支援システムによる無人化施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の施工支援システムによる無人化施工方法において、コントローラーのキーボードに押しボタン式の操作装置を設置し、遠隔操作室からの操作信号により前記操作装置を動作させ、コントローラーを操作することを特徴とする施工支援システムによる無人化施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate