説明

施肥装置の散布具

【課題】肥料を供給するガイド体の下端に横長の筒形状で且つ後方末広がり形状のノズル体を接続し、このノズル体の内部における放出路の中央部に隆起部を設けることで、周囲の土に妨害されることなく畝内でノズル体による左右方向に略均等な拡散施肥を容易に行えるようにする。
【解決手段】肥料タンク2からの肥料Hを供給する筒状のガイド体3と、このガイド体3の下端に接続され且つ畝U内に挿入されるノズル体4とを有している。ノズル体4は、横長の筒形状で且つガイド体3に接続された前部から後部にかけて後方末広がり形状であり、内部に肥料Hを拡散させて放出する放出路5が形成され、この放出路5の底面における左右方向の中央部には、この中央部を通る肥料H1の量を抑えて放出路5の中央部からの肥料H1の放出量と左右側部からの肥料H2、H3の放出量とを均す隆起部6が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畝内に肥料を拡散施肥する施肥装置の散布具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタに牽引される作業機に装着された施肥装置に設けられ、成形途中の畝に挿入して用いられる施肥ノズルが知られている。
この施肥ノズルは、パイプ状のノズル本体の下端部前面に作溝部材が略下方に延びた状態で一体に取付けられており、施肥ノズルの下端部を畝に挿入したまま前進させることで、作溝部材の後方に施肥溝を作溝することができる。また、施肥ノズルは、ノズル本体の下端で且つ作溝部材の上端部に肥料排出口が形成されており、肥料排出口から排出された肥料を作溝部材で案内して施肥溝の底部に到達させることで、肥料排出口に土が詰まらないように構成されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−230293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の施肥ノズルの作溝部材としては、施肥ノズルの下端部から下方に延設した略台形状の作溝板が用いられており、この作溝板の背面部の略中央部には、施肥溝の幅方向の全体に亘って均等に散布させる略半円筒形状の肥料案内体が左右方向に沿って形成されている。
しかしながら、作溝板は板状体であって背面部(上面)が露出しており、この背面部上を肥料が流下している際に施肥溝の周囲の土が崩れ落ちて肥料の拡散が妨げられるため、施肥溝の幅方向全体に亘って均等に肥料を散布させることが困難になっている。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて、肥料を供給するガイド体の下端に接続されたノズル体を横長の筒形状で且つ後方末広がり形状とし、ノズル体の内部における放出路の中央部に隆起部を形成することで、周囲の土によって妨害されることなく畝内でノズル体によって左右方向に略均等な施肥を容易に行うことができる施肥装置の散布具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る施肥装置の散布具は、以下の技術的手段を採用した。
第1に、肥料タンク2からの肥料Hを供給する筒状のガイド体3と、このガイド体3の下端に接続され且つ畝U内に挿入されるノズル体4とを有していて、前記畝U内に肥料Hを施肥する施肥装置の散布具であって、前記ノズル体4は、横長の筒形状で且つ前記ガイド体3に接続された前部から後部にかけて後方末広がり形状であり、内部に肥料Hを拡散させて放出する放出路5が形成され、この放出路5の底面における左右方向の中央部には、この中央部を通る肥料H1の量を抑えて前記放出路5の中央部からの肥料H1の放出量と左右側部からの肥料H2、H3の放出量とを均す隆起部6が形成されていることを特徴とする。
【0007】
第2に、前記ノズル体4の外底面の左右方向中央に下方へ突出する中央溝切体7を設けていることを特徴とする。
第3に、前記ノズル体4の外底面の左右側部に下方へ突出し且つ突出長さが前記中央溝切体7より短い側部溝切体8を設けていることを特徴とする。
第4に、前記ガイド体3の下部を前後に長い断面略長円形状又は断面略楕円形状に形成していることを特徴とする。
これらの特徴により、肥料Hを供給するガイド体3下端に横長の筒形状で且つ後方末広がり形状のノズル体4を接続し、ノズル体4の内部で肥料Hを拡散して放出する放出路5の底面における左右方向の中央部に隆起部6を形成することで、周囲の土が崩れても妨害されることなく畝Uの土中において放出路5の中央部からの肥料H1の放出量と左右側部からの肥料H2、H3の放出量とを均すことができ、ノズル体4内部で肥料Hを施肥幅に亘って略均等に拡散させることができる。
【0008】
また、ノズル体4の外底面の左右方向中央に下方突出する中央溝切体7を設けることで、ノズル体4の左右中央の下方における畝Uの土を掘って溝切りでき、土中に放出された中央の肥料Hを畝U内のより深い位置で施肥することが可能となる。
さらに、ノズル体4の外底面の左右側部に下方突出状で且つ突出長さが中央溝切体7より短い側部溝切体8を設けることで、ノズル体4の左右側部の下方における畝Uの土を、中央溝切体7によって掘られる深さよりも浅く掘って溝切りし、ノズル体4の下方で畝断面略円弧状となるように肥料Hを畝U内に散布することができる。
【0009】
そして、ガイド体3の下部を、前後に長い断面略長円形状又は断面略楕円形状に形成することで、土中におけるガイド体3下部の前後方向の抵抗を減らし、下部が埋没したガイド体3を畝U内で容易に前進させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、肥料を供給するガイド体の下端に接続されたノズル体を横長の筒形状で且つ後方末広がり形状とし、ノズル体の内部における放出路の中央部に隆起部を形成して、周囲から崩れてきた土によって妨害されることなくノズル体にて左右方向に略均等な拡散施肥を畝内で容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る施肥装置を載せたロータリ耕耘機の側面図。
【図2】施肥装置の散布具の斜視図。
【図3】散布具の背面斜視図。
【図4】散布具の要部平面図。
【図5】畝内の散布具及び散布された肥料の正面図。
【図6】ロータリ耕耘機の背面斜視図。
【図7】散布具の取付部分を示す斜視図。
【図8】比較例に係るロータリ耕耘機の耕耘爪の正面図。
【図9】耕耘爪の要部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1、5〜7には、施肥装置47を搭載したロータリ耕耘機21が示され、図2〜4には施肥装置47に取り付けられた本発明に係る散布具1が示されている。
ロータリ耕耘機21は、ロータリ耕耘部31、畝成形器41及び施肥装置47を有しており、トラクタTの後部にリンク機構22を介して昇降自在に連結されたロータリ機枠23によって支持されている。
このロータリ機枠23は、左右方向中央部のギアケース24から左右両側に突設するサポートアーム25と、これら左右のサポートアーム25から上方へ延設された施肥機枠26と、前記ギアケース24から上方突出状に固定されたトップマスト27と、ギアケース24の下端側に上部が連結されている伝動ケース28とを備えている。
【0013】
この伝動ケース28の下部には、圃場Fを耕耘する複数の耕耘爪(鉈爪タイプ)29を有する爪軸30が、左右軸心回りに回転自在に設けられロータリ耕耘部31を形成している。
ロータリ耕耘部31は、センタドライブ駆動方式であって、トラクタTのPTO軸からの駆動力が、ギアケース24及び伝動ケース28内に設けられた伝動機構を介して爪軸30に伝達される。この爪軸30が図1の矢印X方向に回転することで、耕耘爪29は土を耕起反転すると共に砕土する。
【0014】
なお、ロータリ耕耘部31は、サイドドライブ式のものを採用してもよい。
ロータリ機枠23には、ロータリ耕耘部31を覆う耕耘カバー32が支持されている。
この耕耘カバー32は、ロータリ耕耘部31の上方を覆う側面視で円弧状の板体であって、取付手段33によって、ロータリ機枠23に対して爪軸30の軸心を中心として回動自在で且つ任意の回動位置で固定可能に、該ロータリ機枠23に取り付けられている。
取付手段33は、左右各サポートアーム25に固定された左右一対の固定ブラケット34と、耕耘カバー32の上面に固定された左右一対の可動ブラケット35とを有する。
【0015】
左右各可動ブラケット35には爪軸30の軸心を中心とする円弧状の長孔35aが前後一対形成され、ロータリ機枠23に対して可動ブラケット35と共に耕耘カバー32が爪軸30を中心として回動可能とされ、ネジ、ボルト等の締結具36で固定ブラケット34と可動ブラケット35とを締結することにより、耕耘カバー32が任意の回動位置でロータリ機枠23に対して固定されるように構成されている。
前記可動ブラケット35は後方に延長されており、この延長部分に支持フレーム37が固定されている。この支持フレーム37及び耕耘カバー32に畝Uの成形を行う畝成形器41が取り付けられており、ロータリ機枠23に対して、耕耘カバー32、支持フレーム37、畝成形器41が爪軸30を中心として角度調節自在である。
【0016】
これによって、後述するゲージ輪44の高さ調整部46によってロータリ耕耘部31の耕深がかわった場合でも、取付手段33を調節して畝成形器41を略水平に支持し、且つ支持フレーム37に取り付けられた散布具1を所定の高さに保つことが可能となる。
支持フレーム37は、左右の可動ブラケット35の後端に左右方向に配置されたツールバー38と、このツールバー38の左右方向中途部に設けられた取付具39とを有する。
ツールバー38は、角パイプ等によって構成され、左右可動ブラケット35の後端に溶接等によって連結されている。
【0017】
取付具39は、図1、6、7に示す如く、施肥装置47における散布具1を取り付けるものであって、ツールバー38の左右方向中途部であって左右対称となる位置に2箇所設けられている。
支持フレーム37の下方側には、ロータリ耕耘部31から後方に放てきされる土を左右方向中央に案内する左右一対の案内板40と、左右の各案内板40の内側縁から後方へ延設している畝成形器41とが配備されている。
案内板40は、平面視で略ハの字状に2つの板状体を配置したものであって、左右案内板40間に畝成形口40aを形成していて、後方に放てきされた土を中央の畝成形口40aへ集めて後方の畝成形器41に案内している。左右の案内板40は、若干後傾した断面円弧状となっており、ロータリ耕耘部31で耕耘され後方へ放てきされた土を掻き上げることができる。
【0018】
図1、6に示したように、畝成形器41は、畝成形口40aから略後方へ延びる天板42と、この天板42の左右端に背面視で略ハの字状に取り付けられた左右一対の側板43とを有しており、天板42と左右の側板43とが畝成形口40aの縁に沿うように設けられている。
天板42は、前端が左右の案内板40の間で且つ畝成形口40a上方に取り付けられた板体であり、後方にいくにつれて徐々に下がるように配備されており、この天板42に沿って畝Uの上面が形成される。また、天板42には、後述する散布具1のガイド体3を挿通させる挿通孔42aが形成されている。
【0019】
左右各側板43は、畝成形口40aの側縁且つ天板42の側端に沿って取り付けられた板状体で、図6の如く、背面視で左右方向に末広がりとなるように配置されている。この各側板43に土が沿うことで畝Uの側面が形成される。つまり、ロータリ耕耘部31で耕耘された土が、畝成形器41内をくぐることで断面略台形状の畝Uに成形される。
一方、畝成形器41の左右両側には、畝Uの左右両側を転動してロータリ耕耘部31の耕深を決定するゲージ輪(ゲージ部材)44が配置されている。
左右のゲージ輪44は、左右サポートアーム25の中途部に揺動自在に取り付けられた支持枠体45によって回動自在に支持されており、この支持枠体45と前記トップマスト27とにわたって、ゲージ輪44の高さを調整する高さ調整部46が設けられている。
【0020】
図1、6、7で示す如く、施肥装置47は、上述した施肥機枠26と、この施肥機枠26によって支持されていて肥料Hを貯留する左右一対の肥料タンク2と、これらの左右肥料タンク2の下端側にそれぞれ取り付けられ且つ肥料Hを繰り出す左右の肥料繰出機構48と、これら各肥料繰出機構48から繰り出された肥料Hを下方に案内する各案内ホース49と、これらの案内ホース49によって送られた肥料Hをロータリ耕耘部31の後方で且つ畝U内に散布する左右の散布具1とを有している。
施肥機枠26は、左右の各サポートアーム25の左右方向中途部に揺動自在に取り付けられた左右の支柱受け50と、この左右支柱受け50に対し固定具51aによって高さ調整自在に支持できる左右の支柱51と、この左右支柱51の上端間に亘って架設されていて該支柱51に取付固定された横梁部材52と、この横梁部材52に固定されたタンク取付フレーム53とを有する。
【0021】
各支柱受け50は、各サポートアーム25の左右方向中途部の上面に設けられた揺動ブラケット50aによって左右軸回りに回動自在に支持されている。
横梁部材52の左右方向略中央部には、リンク機構22の連結ロッド22aが連結されたリンク連結部52aが設けられており、左右の支柱受け50及び支柱51の揺動が規制されていると共に、連結ロッド22aの長さを調節することによって、肥料タンク2の水平度が調節可能となっている。
肥料タンク2は、前記タンク取付フレーム53に左右に各1つずつ取り付けられ、上方開口状で下方へいくほど先細り且つ下部中央に吐き出し口を有したホッパ2aと、このホッパ2aの上方開口部を塞ぐ蓋体2bとを有している。よって、肥料タンク2内における粒状、粉状等の肥料Hは、ホッパ2aの下部中央に集って吐き出し口から肥料繰出機構48へ送り込まれる。
【0022】
肥料繰出機構48は、肥料タンク2の下端に設けられたケーシング48aと、このケーシング48a内部に回動自在に支持された繰出ロール54とを有している。
この繰出ロール54は、左右軸回りに所定の回転速度で回転可能な円柱体であって、この周面には複数の肥料繰り出し用の繰出凹部54aが周方向に沿って所定間隔ごとに形成されている。また、繰出ロール54の回転速度を調節することによって、肥料Hの繰り出し量を調節することができる。
繰り出された肥料Hは、案内ホース49を通って左右の各散布具1に供給される。
【0023】
散布具1は、図1〜7に示されたように、案内ホース49からの肥料Hを下方へ供給するガイド体3と、このガイド体3の下端に接続され且つ畝U内に挿入されるノズル体4とを有している。
ガイド体3は、案内ホース49の下端に取り付けられた筒状体であって、図2、7に示した如く、上部が前述したツールバー38の取付具39によって高さ調整自在に取り付けられる取付部3aを形成し、下部が取付部3aよりも径小で且つ前後に長い断面略長円形状又は断面略楕円形状に形成された土中挿入部3bを構成している。
【0024】
取付部3aは、上端に前記案内ホース49が接続されていて肥料タンク2からの肥料Hがガイド体3内部に送り込まれる。また、取付部3aは、ガイド体3の上端から下方へ所定長さの断面略円形状に形成され、ツールバー38の取付具39に内嵌されて取り付けられる。
なお、取付具39は、角パイプ状のツールバー38周面を外嵌するブラケット部39aと、このブラケット部39aの後面に取り付けれていてガイド体3を内部に挿通させる筒状の挿通部39bとを有している。この挿通部39b周面の後部側が開口しており、この開口部を通ってガイド体3の取付部3aを径内外方向に移動可能な固定体39cが設けられている。この固定体39cをネジ、ボルト等の固定具によって取付部3aの外周面に押し付け固定することで、畝U内での意図した施肥深さに応じてガイド体3の高さを調整できる。
【0025】
土中挿入部3bは、取付部3a下端から下方に延設され且つ畝成形器41の天板42の挿通孔42aを通って畝U内に埋没していて、断面形状の左右幅が前後幅よりも細くなるような向きに略長円状又は略楕円状に形成されている。したがって、畝Uの土中における土中挿入部3bの前後方向の抵抗が減り、ガイド体3を畝U内で容易に前進させることができ、土中挿入部3bは下端から土中のノズル体4へ肥料Hを送り込むこととなる。
前記ノズル体4は、ガイド体3下端に前部が接続されていて、この前部から後部にかけて後方末広がり形状で且つ後方開口した(この開口部を放出口4eとする)横長の筒形状となっている。
【0026】
詳しくは、図3、4で示すように、前記ガイド体3下端の開口縁に溶接などによって取り付けられ且つ前方から後方にかけて幅広となるように延設された略台形状の上壁4aと、この上壁4aの前縁から下方に延設した前壁4bと、上壁4aの左右側縁から下方に延設した左右の側壁4cと、これら、前壁4b及び左右側壁4cの下端側に取り付けられた上壁4aと略同一形状の底壁4dとを有している。このような筒形状のノズル体4は、ガイド体3と連通していて、ガイド体3の下端に後方にいくにしたがって下向きに傾斜するように取り付けられており、ガイド体3から進入した肥料Hはノズル体4内部を転がって後方から畝U内に放出される。
【0027】
ノズル体4の内部である底壁4d上面には、ガイド体3からの肥料Hを左右方向に拡散させて左右方向で肥料Hの放出量を略均等とする略台形状の放出路5が設けられている。
この放出路5及びノズル体4の左右幅は、前部から後部に亘りガイド体3の左右幅よりも広く形成されており、ノズル体4が土中を進む際には、ノズル体4及び放出路5におけるガイド体3の左右幅よりも左右外方へ突出した部分がガイド体3の左右幅狭の土中挿入部3bよりも幅広い範囲の土を切り崩しながら前進することとなる。
しかし、放出路5は上方が前記上壁4aによって覆われているため、ノズル体4が土中進行中で土が切り崩されても放出路5の上方から土が侵入することを防ぐことができ、肥料Hの左右拡散に支障を及ぼすことはない。
【0028】
図2〜4に示されたように、放出路5の底面における左右方向の中央部には、肥料Hを左右方向に略均等に拡散させる隆起部6が設けられている。
この隆起部6は、底壁4dから緩やかに上方へ膨らみはじめる先端部6aがガイド体3下端の開口から所定長さだけ後方に位置していて、先端部6aから下流端までに亘って左右方向中央に位置する膨出部6bが底壁4dを上方へ膨出させて形成されている。したがって、ガイド体3下端からノズル体4内部に入ってきた肥料Hは、まず隆起部6の先端部6aに当たり、左右へ略均等に拡散される肥料H2、H3と、そのまま真っ直ぐ流下する肥料H1とに分かれる。
【0029】
分岐された肥料H1〜H3は、隆起部6及び放出路5の左右の平坦な部分(平坦部4f、4gとする)上を下流側へ向けて転がっていき放出路5の下流端から畝U内に放出され、放出路5の下端から放出される肥料Hの量(肥料Hの放出量)はノズル体4の左右方向にわたって略等しく均される。つまり、上方に膨出する隆起部6を形成することで、ガイド体3から真っ直ぐ落下してくる肥料Hの勢いを削ぎ、左右方向中央部での上壁4aと底壁4dとの距離を狭くすることで放出路5の中央部を通る肥料H1の量を抑えることができる。その結果、放出路5の中央部からの肥料H1の放出量と、左右側部からの肥料H2、H3の放出量とを略均等とすることができる。
【0030】
なお、放出口4eは、隆起部6が放出路5の下端まで上方に隆起しているため、左右方向の中央部の上下幅が左右側部の上下幅よりも狭く形成されている。
また、ノズル体4は、土中における散布具1の進行方向(略水平方向)に対して側面視で約30度の角度をなして後下方に延設するように設けられている。これによって、ノズル体4は、内部を肥料Hが拡散しながら転がるのに必要で、且つ土中のノズル体4の抵抗を可及的に少なくするような後方下向き傾斜を有している。
ノズル体4の底壁4dの下面(ノズル体4の外底面)には、中央溝切体7とこの中央溝切体7の左右外側方に位置する左右一対の側部溝切体8とを設けている。
【0031】
中央溝切体7は、底壁4dの下面の左右方向中央で且つ隆起部6の周縁に略沿う位置から後下方へ突出する略三角柱状体であって、前方から後方にかけて後方末広がりとなるように略三角形状の板材を折り曲げて断面略V字形状に形成されている。つまり、中央溝切体7は、ノズル体4の左右方向中央部の直下における土を掻き分けて掘りながら前進することとなる。
前記側部溝切体8は、底壁4dの外底面の左右側部(底壁4dにおける平坦部4f、4gの外底面)から後下方に突出しており、中央溝切体7と略相似形状に且つ小さく形成された柱体8aと、この柱体8aの尖った前側辺に沿って前方に設けられた断面略円形状の棒体8bとを有している。なお、棒体8bは、後端が柱体8a先端を巻くように後方へ湾曲し、棒体8bの後端面と柱体8aの後面とは側面視で略面一となっている。
【0032】
側部溝切体8(柱体8a及び棒体8b全体として)の後下方への突出長さは、中央溝切体7よりも短く設定されており、ノズル体4の左右側部の直下であって中央溝切体7よりも浅い位置にある土を掻き分けることとなる。
また、側部溝切体8における柱体8aと棒体8bとを合わせた前後長さは、中央溝切体7よりも若干短く設定されている。
第1実施形態に係る施肥装置47の散布具1を装着したロータリ耕耘機21の使用態様を説明する。
【0033】
まず、圃場Fに下ろしたロータリ耕耘機21をトラクタTで牽引してロータリ耕耘部31で圃場Fを耕耘する。
次に、ロータリ耕耘部31の後方にある案内板40によって、耕耘された土が中央に集められ、その土が畝成形器41をくぐることで畝Uが形成されると同時に、成形される畝U内に散布具1から肥料Hが散布される。
ここで、肥料タンク2からの肥料Hは、案内ホース49及びガイド体3を経てノズル体4の内部に供給される。供給された肥料Hは、ノズル体4内部で放出路5の隆起部6にぶつかり、中央だけでなく左右にも分散され、放出路5における中央部からの肥料H1の放出量と左右側部からの肥料H2、H3の放出量とが均されて、畝U内で肥料Hを全施肥幅に亘って略均等に拡散させることができる。
【0034】
このとき、図5に示したように、中央溝切体7がノズル体4の直下における土を掻き分けて掘りながら前進して中央溝切体7の直後に空間が形成されることによって断面略V字形の溝M1が切られ、この溝M1の底に放出路5の中央部から土中に放出された肥料H1が散布される。
これと同時に、左右の側部溝切体8によってノズル体4の左右側部の直下の土が掻き分けられ、左右側部溝切体8の直後にできる空間(断面略V字形の溝M2、M3)が形成され、溝M2、M3の深さは、図5中にて1点鎖線で示した如く、中央溝切体7による溝M1の深さよりも浅くなる。
【0035】
したがって、浅い溝M2、M3の底に放出路5の左右側部から土中に放出された肥料H2、H3が散布されることで、図5にて示したように、ノズル体4の下方で畝断面略円弧状となるように肥料Hを畝U内に散布することができる。
これによって、栽培する野菜の根域だけに成育に必要な肥料Hを局所散布することができ、肥料Hを無駄なく活用して減肥を行うことが可能となる。特に、レタスやキャベツ等の葉菜類の根が肥料焼けすることなく畝U内において根域を中心として略円弧状に肥料Hを散布できるため、不必要な肥料Hを可及的に減らすことができる。
【0036】
図8、9は、比較例に係る施肥装置搭載型のロータリ耕耘機61と、このロータリ耕耘機61に取り付けられた耕耘爪62を示している。
比較例と第1実施形態との違いは、ロータリ耕耘部31の前方にて施肥をしている点と、第1実施形態における鉈爪タイプの耕耘爪29と異なった局所撹拌用の耕耘爪62を有する点とである。
ロータリ耕耘機61は、耕耘カバー32の前方から案内ホース63を垂らしており、耕耘される前の圃場Fに肥料Hが散布される。この散布位置は後述する耕耘爪62の前方であり、肥料Hは土ごとロータリ耕耘部31によって耕起、撹拌されることとなる。
【0037】
比較例におけるロータリ耕耘部31は、伝動ケース28から左右外方に配備された傾斜爪軸30aの外隣りに肥料Hを局所撹拌する耕耘爪62を有している。この耕耘爪62は、爪軸30に取り付けられた爪ブラケット30bに対してネジ、ボルト等の固定具30cによって固定されている。
図9に示されたように、耕耘爪62は、短尺タイプの爪であって、側面視で略への字形に途中で左右方向内方へ約40°屈曲しており、この屈曲した部分(屈曲部)62aの両側縁には、土を切り込んで撹拌するための刃62bが設けられている。このような両刃型であるために、同一形状の耕耘爪62を爪軸30の左右で兼用できる。耕耘爪62の基端側には、固定具30cを挿通させる固定孔62cが設けられている。
【0038】
耕耘爪62の長さは、鉈爪タイプの耕耘爪29よりも短く(屈曲部62aも含めた上下長さが約12cm)設定されており、前方で散布された肥料Hを限られた範囲で撹拌し、栽培する野菜の根域だけに肥料Hを撹拌混入することが可能となる。
また、耕耘爪29は、側面視で爪軸30から放射状に複数延びているが、局所撹拌用の耕耘爪62は左右に1本ずつ配備されており、撹拌範囲が抑えられている。耕耘爪62は、栽培する野菜の根域に応じた長さ及び屈曲角度としてもよい。
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。施肥装置47の散布具1等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【0039】
ガイド体3の土中挿入部3bは、取付部3aと同径で断面略円形であってもよく、土中挿入部3bの前側にアングル材を設けて土中での抵抗を減らすものとしてもよい。
ノズル体4は、内部で肥料Hが転がって左右方向に拡散するのであれば、土中での抵抗がなるべく少なくなるように、略水平から若干後下方へ傾斜する角度でガイド体3に取り付けられていてもよい。
中央溝切体7は、前側に断面略円形状の棒体を有していてもよい。
中央溝切体7及び側部溝切体8を設けなくてもよく、このとき、肥料Hは畝U内の所定深さにて略横一列に散布されることとなる。
【0040】
また、中央溝切体7のみを設け、側部溝切体8は設けないものとしてもよく、この場合には、中央溝切体7によって断面略V字形の溝M1が形成され、畝U内で野菜の根を中心として略V字状に肥料Hを散布することができる。
また、側部溝切体8は、柱体8aのみで、棒体8bを有さないものであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 施肥装置の散布具
2 肥料タンク
3 ガイド体
4 ノズル体
5 放出路
6 隆起部
7 中央溝切体
8 側部溝切体
H 肥料
H1 放出路の中央部を通る肥料
H2、H3 放出路の左右側部を通る肥料
U 畝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥料タンク(2)からの肥料(H)を供給する筒状のガイド体(3)と、このガイド体(3)の下端に接続され且つ畝(U)内に挿入されるノズル体(4)とを有していて、前記畝(U)内に肥料(H)を施肥する施肥装置の散布具であって、
前記ノズル体(4)は、横長の筒形状で且つ前記ガイド体(3)に接続された前部から後部にかけて後方末広がり形状であり、内部に肥料(H)を拡散させて放出する放出路(5)が形成され、
この放出路(5)の底面における左右方向の中央部には、この中央部を通る肥料(H1)の量を抑えて前記放出路(5)の中央部からの肥料(H1)の放出量と左右側部からの肥料(H2、H3)の放出量とを均す隆起部(6)が形成されていることを特徴とする施肥装置の散布具。
【請求項2】
前記ノズル体(4)の外底面の左右方向中央に下方へ突出する中央溝切体(7)を設けていることを特徴とする請求項1に記載の施肥装置の散布具。
【請求項3】
前記ノズル体(4)の外底面の左右側部に下方へ突出し且つ突出長さが前記中央溝切体(7)より短い側部溝切体(8)を設けていることを特徴とする請求項2に記載の施肥装置の散布具。
【請求項4】
前記ガイド体(3)の下部を前後に長い断面略長円形状又は断面略楕円形状に形成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の施肥装置の散布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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