施設園芸用温室の二酸化炭素供給方法および供給装置
【課題】光合成に必要な二酸化炭素を効果的に園芸作物に供給でき高品質の園芸作物を得ることが可能であり、しかも二酸化炭素を製造するために必要な燃料の消費量を大幅に低減でき省エネルギー効果が高い施設園芸用温室の二酸化炭素供給方法および供給装置を提供する。
【解決手段】二酸化炭素吸収材2を含有し二酸化炭素を吸収貯留する二酸化炭素吸収手段3と、二酸化炭素を含有する空気あるいは燃焼排ガスを上記二酸化炭素吸収手段3に送風する送風手段4と、上記二酸化炭素吸収材2を加熱して二酸化炭素を温室内に放出させるための加熱手段5とを備えることを特徴とする施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置1である。
【解決手段】二酸化炭素吸収材2を含有し二酸化炭素を吸収貯留する二酸化炭素吸収手段3と、二酸化炭素を含有する空気あるいは燃焼排ガスを上記二酸化炭素吸収手段3に送風する送風手段4と、上記二酸化炭素吸収材2を加熱して二酸化炭素を温室内に放出させるための加熱手段5とを備えることを特徴とする施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は施設園芸用温室の二酸化炭素供給方法および供給装置に係り、特に光合成に必要な二酸化炭素を効果的に園芸作物に供給でき高品質の園芸作物を得ることが可能であり、しかも二酸化炭素を製造するために必要な燃料の消費量を大幅に低減でき省エネルギー効果が高い施設園芸用温室の二酸化炭素供給方法および供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蔬菜、果実、庭樹、花卉などの園芸作物を普通の時季以外にも成長結実させる目的で、上記園芸作物を温室等の施設内で栽培する施設園芸農法が都市近郊等において広く実施されている。この施設園芸の温室では、特に冬季夜間の冷温時に温室内を暖房するために、として加温機(暖房機)を稼動させている。この加温機は、重油や灯油のほか液化石油ガス(LPG)や都市ガスを燃料とし、バーナーで燃焼させて熱源としている。
【0003】
一方で、高品質な園芸作物を生産するために、温室内で植物が光合成を行う際の原料の一つとなる二酸化炭素(以下CO2)濃度を高めるCO2施用装置も普及している。加温機から排出される排気ガスは、炭化水素である燃料を燃焼させるため大気中よりも高濃度のCO2を含有しており、この排気ガスをCO2施用として直接温室内に供給する装置が実用化されており、例えば特開2004−344154号公報、特開2004−169937号公報など多数の技術文献にて公開されている。
【特許文献1】特開2004−344154号公報
【特許文献2】特開2004−169937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の二酸化炭素供給装置において、寒冷時に暖房のために加温機が稼動する夜間は植物の光合成反応は進行せず、CO2施用を行う必要性は無い。施用するCO2ガスを製造するために加温機を稼動させることは、消費する燃料等の無駄に直結しエネルギーコストが増大化する問題点があった。現状では、CO2施用が実施されている時間帯は、日の出の早朝から温室内換気が実施されるまでの数時間であり、この時間帯は加温機で暖房する必要性が少ない。
【0005】
すなわち、従来の二酸化炭素供給装置においては、暖房が必要な時間帯とCO2施用が必要な時間帯は合致していないために、暖房が不必要な時間帯にCO2を得るためにのみ加温機を稼動させる必要があり、本来の暖房用に消費されるべき貴重な燃料が無駄に消費され省エネルギー化に逆行する問題点を生じていた。また、夏季は夜間でも温暖であり加温機で温室内の温度を上昇させる必要がない場合が多く、CO2施用のためにのみ化石燃料を焚くことによって、燃料コストが増大化する問題点があった。
【0006】
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、光合成に必要な二酸化炭素を効果的に園芸作物に供給でき高品質の園芸作物を得ることが可能であり、しかも二酸化炭素を製造するために必要な燃料の消費量を大幅に低減でき省エネルギー効果が高い施設園芸用温室の二酸化炭素供給方法および供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明に係る施設園芸用温室の二酸化炭素供給方法は、二酸化炭素吸収材を用いて、空気あるいは燃焼排ガスに含有される二酸化炭素を吸収・貯留する工程と、園芸作物が光合成を行う時間帯に合わせて、上記二酸化炭素吸収材に貯留された二酸化炭素を温室内に放出させる工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
また本発明に係る施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置は、二酸化炭素吸収材を含有し二酸化炭素を吸収貯留する二酸化炭素吸収手段と、二酸化炭素を含有する空気あるいは燃焼排ガスを上記二酸化炭素吸収手段に送風する送風手段と、上記二酸化炭素吸収材を加熱して二酸化炭素を温室内に放出させるための加熱手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明に係る施設園芸用温室の二酸化炭素供給方法および供給装置によれば、空気または排ガス中に含有される二酸化炭素(CO2)を吸収・貯留する一方、必要に応じて二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収手段を設けているために、暖房が必要な時間帯とは別に二酸化炭素を施用する時間帯を設定することが可能となり、光合成に必要な二酸化炭素を効果的に園芸作物に最適時間帯に供給でき高品質の園芸作物を得ることが可能となる。また、施用する二酸化炭素を製造するためにのみに貴重な化石燃料等を焚くことがなくなり、燃料コストが低減され省エネルギー効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明に係る施設園芸用温室の二酸化炭素供給方法および供給装置の実施例について添付図面を参照して以下に具体的に説明する。
【0011】
[実施例1]
図1および図2は本発明に係る施設園芸温室の二酸化炭素供給方法を実施するための供給装置のシステム構成およびその運用方法を示すブロック図である。図1は加温機の稼動がない夏季における運用方法を示し、二酸化炭素(炭酸ガス)の吸収過程(図1(a))と放出過程(図1(b))とに分けてそれぞれ示している。
【0012】
一方、図2は加温機を稼動する冬季における運用方法を示し、炭酸ガスの吸収過程(図2(a))と放出過程(図2(b))とに分けてそれぞれ示している。
【0013】
図1および図2に示す施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置1は、リチウム複合酸化物を二酸化炭素吸収材2として含有し二酸化炭素を吸収貯留する二酸化炭素吸収手段3と、二酸化炭素を含有する空気あるいは燃焼排ガスを上記二酸化炭素吸収手段3に送風する送風手段4と、上記二酸化炭素吸収材2を加熱して二酸化炭素を温室内に放出させるための加熱手段5としてのヒータとを備えて構成される。また、各二酸化炭素供給装置1には、冬季に温室内を暖房するための加温機(暖房機)6が付設されている。
【0014】
すなわち、図1および図2に示すシステムは、基本的には加温機6とCO2供給装置1とで構成されるが、図1に示すように夏季において加温機6は休止状態にあり、冬季の寒冷時期のみに燃料を焚いて温めた空気を温室に供給するように構成される。CO2供給装置1は、主にリチウム複合酸化物を含む二酸化炭素吸収材2を内蔵しており、この吸収材2は下記(1)式に示す反応に基づいてCO2を吸収したり、または放出したりする。
[数1]
Li4SiO4+CO2⇔Li2SiO3+Li2CO2+Q ……(1)
【0015】
この反応は可逆反応であり、650℃程度に加熱すると逆反応によりCO2を放出し、吸収材が再使用できる。反応に伴う化学エンタルピ変化により右方向への反応が発熱反応であり、左方向への反応が吸熱反応となる。この吸収材のCO2吸収可能温度範囲は常温から600℃までであり、この特徴を利用して施設園芸用温室のCO2供給装置1が構築される。
【0016】
上記のように構成されたCO2供給装置1は下記のように運転される。すなわち、図1(a)に示すように加温機6による暖房を必要としない夏季においては、温室内外の大気中に300ppm程度含有される炭酸ガスをCO2源として取り込み、前記(1)式の右方向への反応によりCO2吸収材2中にCO2を吸収し蓄積する。
【0017】
夏季においてCO2を温室に供給する時には、図1(b)に示すように加熱手段としてのヒータ5によってCO2吸収材2を所定の温度まで加熱してCO2を放出させ、放出されたCO2を空気で希釈してCO2リッチな空気を温室に送り込む。
【0018】
一方、冬季においては、図2(a)に示すように温室暖房用の加温機6が稼動するため、空気より高濃度のCO2が含有される加温機6からの排気ガスをCO2源として吸収し貯留する。前記リチウム複合酸化物から成るCO2吸収材2の特性として、高濃度・高温であればCO2吸収速度が速く、短時間の運転で十分な量のCO2を吸収し蓄積することができる。
【0019】
冬季においてCO2を温室内に供給する時は、図1(b)に示す夏季と同様に図2(b)に示すように、加熱手段としてのヒータ5によってCO2吸収材2を所定の温度まで加熱してCO2を放出させ、空気で希釈してCO2リッチな空気を温室に送り込む。
【0020】
図3および図4は、それぞれ夏季および冬季におけるCO2供給装置1の1昼夜(24時間)にわたる運転ダイヤグラムの典型例を示し、各図の上段から順に日照量の時間変化、CO2の蓄積量の時間変化および温室内のおけるCO2の平均濃度の時間変化を相対的に示している。
【0021】
図3に示す夏季の運転ダイヤグラムの場合、日の出が6時であり日の入りが18時であったと仮定すれば、ある園芸作物に対して図3の中段に示すダイヤグラムの通り、6時から温室を換気するまでの数時間の時間帯にCO2を供給すればよい。図3では夜間(22時〜3時)に大気を取り込み、大気中に含有されるCO2を吸収材2内に吸収蓄積させる運転をしているが、CO2を供給しない時間帯を選択して吸収する時間帯を適宜変更することも可能である。CO2は日の出の時刻から温室を換気する時刻までの時間帯に最も枯渇すると考えられるが、この時間にCO2施用を実行することにより、温室内におけるCO2の平均濃度が、光合成の可能範囲の下限値を常時上回るように制御することができる。
【0022】
一方、図4に示す冬季の運転ダイヤグラムの場合、7時から16時までの時間帯に日照があり、開放換気を実施しない温室で栽培する園芸作物に対しては、図4の中段に示すダイヤグラムで日の出から日没までCO2施用する。温室内が冷え込んでくる夕刻(18時頃)から早朝(7時頃)にかけて温室内温度を一定に保つために、図4の中段に示すダイヤグラム通りに加温機6が間欠的に運転されたとすると、その排気ガスを有効に利用してCO2を吸収した吸収材2は、図4の中段に示すようなCO2の蓄積量曲線を辿ることになる。このような運転を実行すれば、温室内におけるCO2の平均濃度は光合成可能範囲の下限値を下回ることはなく、昼間の日照時間中で加温の必要がない時間帯にCO2施用のためだけに貴重な燃料を焚いて加温機6を稼動させる必要がない。
【0023】
以上の実施例1に係る施設園芸用温室の二酸化炭素供給方法および供給装置によれば、大気あるいは加温機の排気ガス中に含有されるCO2を吸収蓄積しておき、最適な時間帯に合わせてCO2を温室に供給する効果的なCO2施用により、高品質な園芸作物の育成が期待できると共に、施設園芸分野における省エネルギー化も実現できる。
【0024】
すなわち、空気または排ガス中の含有される二酸化炭素(CO2)を吸収・貯留する一方、必要に応じて二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収手段3を設けているために、暖房が必要な時間帯とは別に二酸化炭素を施用する時間帯を設定することが可能となり、光合成に必要な二酸化炭素を効果的に園芸作物に最適時間帯に供給でき、高品質の園芸作物を得ることが可能となる。また、施用する二酸化炭素を製造するためにのみに貴重な化石燃料等を焚くことがなくなり、燃料コストが低減され省エネルギー効果を高めることができる。
【0025】
なお上記実施例において、送風手段4とCO2吸収手段3との位置関係としては、図5(a)に示すようにCO2吸収材2とヒータ5とから成るCO2吸収手段3の1次側に押込み型ブロワ−4aを配置して構成することも可能であるが、図5(b)に示すようにCO2吸収材2とヒータ5とから成るCO2吸収手段3の2次側に吸込み型ブロワ−4bを配置して構成することも可能である。
【0026】
CO2吸収過程においては、図5(a)に示すように押込み型ブロワ4aによってCO2吸収手段3に押込むように供給された空気または排気ガス中の炭酸ガスはCO2吸収材2によって吸収蓄積される一方、炭酸ガスを除かれた空気または排気ガスが温室に供給される。また、図5(b)に示すように吸込み型ブロワ4bによってCO2吸収手段3に吸込まれるように供給された空気または排気ガス中の炭酸ガスはCO2吸収材2によって吸収蓄積される一方、炭酸ガスを除かれた空気または排気ガスが温室に供給される。
【0027】
これに対して、CO2放出過程においては、図6(a)に示すように押込み型ブロワ4aによってCO2吸収手段3に押込むように供給された空気と、ヒータ5によるCO2吸収材2の加熱によって放出された炭酸ガスとが混合されてCO2リッチな空気が温室に供給される。また、図6(b)に示すように吸込み型ブロワ4bによってCO2吸収手段3に吸込まれるように供給された空気と、ヒータ5によるCO2吸収材2の加熱によって放出された炭酸ガスとが混合されてCO2リッチな空気が温室に供給される。
【0028】
このように実施例1に係るCO2供給装置は、CO2吸収材2と、空気あるいは加温機から排出される排気ガスを送風する送風手段4としてのブロワと、CO2吸収材2を加熱して炭酸ガスを放出するための加熱手段5としてのヒータとで構成され、CO2吸収材2とブロワ4とは適当な配管やダクトで連結されている。CO2供給装置1は、最低限これらの機器を具備していれば、CO2の吸収・蓄積と放出とが可能である。
【0029】
[実施例2]
図7および図8は、本発明に係るCO2供給装置の他の実施例およびその動作を示す要部断面図である。すなわち実施例2に係るCO2供給装置は、二酸化炭素吸収手段3aが、二酸化炭素吸収過程において空気あるいは燃焼排ガスを前記二酸化炭素吸収材2に供給し、かつ二酸化炭素を吸収された空気または燃焼排ガスを温室に供給する送風通路7と、二酸化炭素放出過程において送風する空気が、前記二酸化炭素吸収材2を通らずに前記二酸化炭素吸収手段3aの一次側から二次側にバイパスするバイパス通路8とを具備するように構成される。すなわち、バイパス通路8は、送風通路7のうち二酸化炭素吸収材2を備える部分と並列に設けられている。さらに、送風通路7からバイパス通路8分岐する部位には、切替弁9が設けられており、運転過程によってこれらの通路の切り替えができるようになっている。
【0030】
ところで実施例1に係る二酸化炭素供給装置のように、送風手段4によってCO2吸収手段3に供給通気される空気または排気ガスの全量がCO2吸収材2を通過する構成を採用した場合には、炭酸ガスの放出過程においてCO2吸収材2を650℃の高温度に保持して放出効率を高く維持すると共に、放出反応に必要な熱を加熱した空気の対流によって供給するためには大容量のヒータが必要で、電力消費量も多くなる。したがって、電力使用量に起因する運転コストが大幅に増加する恐れがある。
【0031】
そこで、図7および図8に示すように、炭酸ガスの吸収過程と放出過程とにおいて空気が流れる経路(通路)を別々に設けている。そして炭酸ガスの吸収過程では、図7に示すように、バイパス通路8が切替弁9によって閉止された状態で、送風手段4から送出された空気または排気ガスの全量がCO2吸収材2に通気され、ガス中に含有される炭酸ガスがCO2吸収材2中に吸収・蓄積される。一方、炭酸ガスの放出過程では図8に示すように、CO2吸収手段3aに向かう送風通路7が切替弁9によって閉止される一方、バイパス通路8が開放された状態になる。そして、送風手段4から送出された空気はCO2吸収材2に通されず、バイパス通路8を通りCO2吸収手段3aの二次側に供給される。バイパス通路8が送風通路7に合流する部位には通路の切替弁は設けられていないので、バイパス通路を通りCO2吸収手段3aの二次側に供給された空気は、ヒータ5の加熱により放出されたCO2を希釈して施用ガスとして用いられる。
【0032】
この場合、炭酸ガスの放出過程におけるCO2吸収材2への伝熱形態は、吸収材2の充填層内における熱伝導が主体であるので、一旦充填層が650℃まで高温度に加熱されれば、以後は放熱分と反応熱のみの熱供給で済むため、熱供給コストが大幅に削減される。また、低温度である大量の空気によってCO2吸収材2が冷却される恐れもないために、放出過程において炭酸ガスの放出効率が低下することもなく、効果的なCO2施用が可能になる。
【0033】
なお、図5および図6と、図7および図8とでは、CO2吸収材2の配置が縦置きと横置きとで異なるが、CO2吸収材2の置き方や向きは本発明に何ら制限を加えるものではなく、例えば図5に示すCO2吸収材2を斜めに配置したり、図7に示すCO2吸収放出システムを倒立させたりしても、それらの機能に有意差は生じない。
【0034】
[実施例3]
図9および図10は、本発明に係るCO2供給装置の他の実施例およびその動作を示す要部断面図であり、図7および図8に示す実施例2の構成に下記のような搬送空気通路をさらに付加したものである。すなわち実施例3に係る施設園芸用温室のCO2供給装置は、二酸化炭素放出過程において、二酸化炭素吸収材2から放出された二酸化炭素(炭酸ガス)を温室方向に誘導しその輸送を補助する空気が流れる搬送空気通路10を具備して構成される。
【0035】
CO2吸収材2からCO2が放出されると、CO2吸収材2を充填した充填層の空隙におけるCO2分圧が上昇する。このCO2分圧の上昇は放出反応速度を低下させることが実験結果から明らかになっている。したがって、発生したCO2を速やかに除去する方策を講じると有効である。
【0036】
すなわち、図9および図10に示すように、バイパス経路8から搬送空気通路(キャリアガス経路)10が分岐しており、この搬送空気通路の他端はCO2吸収材2の二次側表面部に開口している。バイパス経路8から分岐し搬送空気通路10を流れる微量な空気がキャリアガスとしてCO2吸収材2の表層を流れる。この時、キャリアガスは、移動流により発生したCO2を速やかに輸送し、CO2吸収材2の表層部におけるCO2分圧を降下させる効果が得られる。したがって、CO2吸収材2を充填した充填層の空隙におけるCO2分圧が上昇することが防止でき、炭酸ガスの放出効率を高く維持できる。
【0037】
[実施例4]
図11(a)は、本発明に係るCO2供給装置の他の実施例を示す要部断面図であり、図9に示す実施例3の構成に対して、さらにキャリアガスの予熱機能を付加した実施例4の構成を示す要部断面図である。すなわち実施例4に係る施設園芸用温室のCO2供給装置は、二酸化炭素放出過程において、加熱手段5によって前記二酸化炭素吸収材2から放出された二酸化炭素の輸送を補助する空気を予熱する予熱手段11を具備して構成される。
【0038】
図11(a)に示す上記予熱手段11は、図11(b)に示すようにCO2吸収材2を詰めたコンテナ12と加熱ヒータ13とから構成されている。コンテナ12の底面はCO2吸収材2の粒子径より目が細かいメッシュ材14を配置した構造となっており、キャリアガスを容易に通過させることができる。また、加熱ヒータ13は、図11(c)に示すように、例えばカートリッジヒータ15を挿通するための挿通口16を所定数穿設したヒータブロック17と、キャリアガスをヒータブロック17の全面に分配するマニホールド19とから構成される。ヒータブロック17の厚さ方向にはキャリアガスが流通する多数の貫通孔18が開けられているために、下方からのキャリアガスを容易に通過させると共にキャリアガスの予熱が十分にできる。上記ヒータブロック17はコンテナ12と接触しているため、熱伝導により内部のCO2吸収材2にも熱を効率的に伝達させることが可能である。
【0039】
予熱手段を有しない図9に示すようなCO2吸収手段3aの場合には、キャリアガスはCO2吸収材2の表層に到達するまで、ほぼ大気温度であり、CO2吸収材の温度を降下させて、CO2放出を阻害する場合がある。しかるに、図11に示すようなキャリアガスの予熱手段11を付加した本実施例4に係るCO2供給装置によれば、二酸化炭素放出過程において、二酸化炭素吸収材2から放出された二酸化炭素の輸送を補助する空気(キャリアガス)を予熱する予熱手段11を備えているために、キャリアガスによってCO2吸収材2の温度が降下することがなくCO2の放出効率を高く維持できる。
【0040】
[実施例5]
図12(a)は、本発明に係るCO2供給装置の他の実施例を示す要部断面図であり、図11に示す予熱手段11とは別の予熱手段11aを具備して構成される実施例5の構成を示す要部断面図である。
【0041】
図12(a)に示す上記予熱手段11aは、図12(b)に示すようにCO2吸収材2を詰めたコンテナ12と加熱ヒータ13と、図12(c)に示すようにコンテナ12の側面に配置されたマニホールド19aとから構成されている。このマニホールド19aからコンテナ12内部に至る数本の穴開き管20が配設される。この穴開き管20によってキャリアガスがCO2吸収材2中に均等に分配される。マニホールド19aはコンテナ12と一体化あるいは密に接しているため十分に加熱されており、その内部を通るキャリアガスも効果的に加熱される。したがって、前記実施例4と同様にキャリアガスによってCO2吸収材2の温度が降下することがなくCO2の放出効率を高く維持できる。
【0042】
なお図示は省略するが、上記構成以外に、上記穴開き管を1〜2本折り曲げてコンテナ12底部に張り巡らせて予熱手段を構成しても良い。また、穴開き管をヒータブロックと一体化させて構成しても良い。なお、ヒータやコンテナは矩形の直方体であるが、円筒形状であっても別段問題は生じない。
【0043】
以上の実施例1〜5の態様を総括すると、最低限の構成として、CO2吸収材2と、空気あるいは加温機の排気ガスを送風する送風手段(ブロワ)4と、CO2吸収材2を加熱するための加熱手段(ヒータ)5とを備えれば、各実施例のCO2供給装置を実現することができる。上記ヒータ5の消費電力と容量とを抑制するためには、放出過程用のバイパス通路を付加すればよい。
【0044】
さらに効率よくCO2を発生放出させるために、キャリアガスを用いてCO2を速やかに除去する方法やヒータ5とCO2吸収材コンテナ12との組み合わせでキャリアガスを予熱する機構を付与すると良い。本実施例によれば、高効率で省エネルギー性が向上した施設園芸用温室のCO2供給装置を提供することが可能となる。
【0045】
[実施例6]
図13および図14は、本発明に係るCO2供給装置の他の実施例を示す要部断面図であり、図9および図10に示す実施例3の構成に下記のような流量調整手段をさらに付加したものである。すなわち実施例6に係る施設園芸用温室のCO2供給装置は、二酸化炭素吸収過程において空気あるいは燃焼排ガスを二酸化炭素吸収材2に供給し、かつ二酸化炭素を吸収された空気または燃焼排ガスを温室に供給する送風通路7と、二酸化炭素放出過程において送風する空気が、前記二酸化炭素吸収材2を通らずに前記二酸化炭素吸収手段3aの一次側から二次側にバイパスするバイパス通路10とから成るの二つの通路のうちの上記バイパス通路10に、空気あるいは燃焼排ガスの流量を調整する流量調整手段21としてのダンパーを具備して構成される。
【0046】
図9および図10に示すように送風通路7およびバイパス通路8の開閉を切替弁9によって実行していた実施例3に係るCO2供給装置においては、炭酸ガスの吸収過程と放出過程とでは、空気あるいは排気ガスが流れる通路が異なり、送風通路7およびバイパス通路8の一方を閉止する必要があった。
【0047】
しかるに本実施例6によれば、図13および図14に示すように、バイパス経路8に自動あるいは手動の流量調整手段21としてのダンパー1つを設けることにより、流路の切り替えを容易に実施できる。
【0048】
上記実施例6において、炭酸ガスの吸収過程では、図13に示すように、ダンパー21
を閉止して、全ての空気/排気ガスをCO2吸収材2に通す。一方、CO2放出過程では図14に示すように、ダンパー21を開放して、バイパス通路8に空気を呼び込みキャリアガス通路10にも微量の空気を送り込む。なお、1つのダンパーは主経路(送風通路7)内に設けることも可能である。
【0049】
[実施例7]
図15および図16は、本発明に係るCO2供給装置の他の実施例を示す要部断面図であり、図7および図8に示す実施例2の構成に下記のような流量調整手段をさらに付加したものである。すなわち実施例7に係る施設園芸用温室のCO2供給装置は、送風通路7と、バイパス通路8との双方に、空気あるいは燃焼排ガスの流量を調整する流量調整手段21としてのダンパー21a、21bを具備して構成される。すなわち、ダンパーを主経路としての送風通路7とバイパス通路8との2箇所に配設している。
【0050】
上記構成の実施例7において、炭酸ガスの吸収過程では、図15に示すように主経路ダンパー21aを全開にする一方、バイパスダンパー21bを全閉にして、全ての空気/排気ガスをCO2吸収材2に通す。一方、炭酸ガスの放出過程では、図16に示すようにバイパスダンパー21bを全開して、希釈空気として使用する一方で、主経路ダンパー21aを少し開けて空気を流し、キャリアガスとして用いることもできる。
【0051】
以上の実施例6〜7を総括すると、送風通路(主経路)あるいはバイパス通路8のいずれかあるいは両方にダンパー等の流量調整機構あるいは通路を開閉可能な流量調整手段を配置することにより、空気/排気ガスの切り替えが容易な施設園芸用温室のCO2供給装置を提供することが可能となる。
【0052】
[実施例8]
図17は、本発明に係るCO2供給装置の他の実施例を示す要部断面図であり、CO2吸収手段3bを複数のCO2吸収材2a、2b、2cと複数のヒータ5a、5b、5cとの組み合わせで構成している。すなわち実施例8に係る施設園芸用温室のCO2供給装置は、二酸化炭素吸収材2a、2b、2cと、この二酸化炭素吸収材2a、2b、2cを加熱して二酸化炭素を放出させるための加熱手段としてのヒータ5a、5b、5cとの組み合わせが複数個設けられて構成されている。
【0053】
ここで、炭酸ガスの放出過程におけるCO2放出反応速度は吸収速度よりはるかに速い。そのため、実施例1〜3に示すように、一塊のCO2吸収材2に対して1個のヒータ5を組み合わせたCO2供給装置では、反応温度まで加熱されたCO2吸収材2から一気にCO2が放出されてしまう結果、長い時間を掛けて炭酸ガスを均等に放出させることが困難になり、いずれにしても炭酸ガスの放出量を正確に制御することが困難である問題があった。また、CO2吸収材2から放熱などによる熱損失についても、CO2吸収材2を一様に加熱した場合には、CO2吸収材2の反応終了部分からの熱損失も大きくなる問題点もあった。
【0054】
しかるに、図17に示すように、円板状に成形した複数のCO2吸収材2a、2b、2cと、その外周縁に装着されたヒータ5a、5b、5cとの組み合わせを、ガスの流れ方向に複数個設けた場合には、各ヒータ5a、5b、5cの通電量の個別制御が可能であり、全CO2吸収材2a、2b、2cから一気にCO2が放出される恐れはなく、しかも長い時間を掛けて炭酸ガスを均等に放出させることが可能になる。
【0055】
図18は、上記実施例8に係るCO2供給装置の3個の二酸化炭素吸収材2a、2b、2cを順次加熱して二酸化炭素を放出させるためヒータ5a、5b、5cの通電量を個別に制御する運転ダイヤグラムと、温室内に放出される炭酸ガスの放出濃度の時間変動を示すグラフである。
【0056】
図18に示す結果から明らかなように、CO2吸収材を小分けに分割する一方、分割したCO2吸収材にそれぞれ付設されたヒータを個別に逐次通電するように制御することにより、分割したCO2吸収材から炭酸ガスを逐次放出させることができ、長時間に亘るCO2の放出が可能となり、放出反応に関与しない他の吸収材部分での加熱および熱損失が少なくなり、省エネルギー効果が高まる。なお、図17に示す実施例8では、CO2吸収材とヒータとの組み合わせを3個設けた場合を示しているが、2個でも効果は期待できる。もちろん、4個以上であればコストは増加するが機能的にはさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置の一実施例を示し、加温機を稼動させない夏季における構成を示すブロック図であり、(a)は炭酸ガスの吸収過程での動作を示し、(b)は炭酸ガスの放出過程での動作を示すブロック図。
【図2】本発明に係る施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置の一実施例を示し、加温機を稼動させる冬季における構成を示すブロック図であり、(a)は炭酸ガスの吸収過程での動作を示し、(b)は炭酸ガスの放出過程での動作を示すブロック図。
【図3】施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置における夏季の運転ダイヤグラムを示すグラフ。
【図4】施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置における冬季の運転ダイヤグラムを示すグラフ。
【図5】施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置におけるCO2吸収材と送風手段との位置関係を示す側面図であり、(a)はCO2吸収材の1次側に送風手段を設けた構成と吸収過程での作用を示し、(b)はCO2吸収材の2次側に送風手段を設けた構成と吸収過程での作用を示す側面図。
【図6】図5に示す二酸化炭素供給装置における炭酸ガス放出過程の作用を示す側面図であり、(a)は図5(a)に示す装置における炭酸ガス放出過程の作用を示す側面図であり、(b)は図5(b)に示す装置における炭酸ガス放出過程の作用を示す側面図。
【図7】バイパス通路を付加した二酸化炭素供給装置の吸収過程の作用を示す断面図。
【図8】バイパス通路を付加した二酸化炭素供給装置の放出過程の作用を示す断面図。
【図9】搬送空気通路(キャリアガス通路)を付加した二酸化炭素供給装置の吸収過程の作用を示す断面図。
【図10】搬送空気通路(キャリアガス通路)を付加した二酸化炭素供給装置の放出過程の作用を示す断面図。
【図11】キャリアガスの予熱手段を付加した二酸化炭素供給装置の構成を示す図であり、(a)は上記予熱手段を付加した二酸化炭素供給装置の全体構成を示す断面図であり、(b)は上記予熱手段の構成を示す斜視図であり、(c)は加熱ヒータの構成を示す斜視図。
【図12】キャリアガスの他の予熱手段を付加した二酸化炭素供給装置の構成を示す図であり、(a)は上記予熱手段を付加した二酸化炭素供給装置の全体構成を示す断面図であり、(b)は上記予熱手段の構成を示す斜視図であり、(c)はコンテナの構成を示す斜視図。
【図13】流量調整手段としてのダンパーを付加した二酸化炭素供給装置の吸収過程での作用を示す断面図。
【図14】流量調整手段としてのダンパーを付加した二酸化炭素供給装置の放出過程での作用を示す断面図。
【図15】流量調整手段としてのダンパーを付加した二酸化炭素供給装置の吸収過程での作用を示す断面図。
【図16】流量調整手段としてのダンパーを付加した二酸化炭素供給装置の放出過程での作用を示す断面図。
【図17】CO2吸収材と加熱手段との組み合わせを3個配置して構成した二酸化炭素供給装置の放出過程での作用を示す断面図。
【図18】図17に示す二酸化炭素供給装置の運転ダイヤグラムを示すグラフ。
【符号の説明】
【0058】
1 二酸化炭素供給装置(CO2供給装置)
2,2a,2b,2c 二酸化炭素吸収材(CO2吸収材)
3,3a 二酸化炭素吸収手段(CO2吸収手段)
4,4a,4b 送風手段(ブロワ)
5,5a,5b,5c 加熱手段(ヒータ)
6 加温機(暖房機)
7 送風通路(主経路)
8 バイパス通路
9 切替弁
10 搬送空気通路(キャリアガス通路)
11,11a 予熱手段
12 コンテナ
13 加熱ヒータ
14 メッシュ材
15 カートリッジヒータ
16 挿通口
17 ヒータブロック
18 貫通孔
19,19a マニホールド
20 穴開き管
21,21a,21b 流量調整手段(ダンパー)
【技術分野】
【0001】
本発明は施設園芸用温室の二酸化炭素供給方法および供給装置に係り、特に光合成に必要な二酸化炭素を効果的に園芸作物に供給でき高品質の園芸作物を得ることが可能であり、しかも二酸化炭素を製造するために必要な燃料の消費量を大幅に低減でき省エネルギー効果が高い施設園芸用温室の二酸化炭素供給方法および供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蔬菜、果実、庭樹、花卉などの園芸作物を普通の時季以外にも成長結実させる目的で、上記園芸作物を温室等の施設内で栽培する施設園芸農法が都市近郊等において広く実施されている。この施設園芸の温室では、特に冬季夜間の冷温時に温室内を暖房するために、として加温機(暖房機)を稼動させている。この加温機は、重油や灯油のほか液化石油ガス(LPG)や都市ガスを燃料とし、バーナーで燃焼させて熱源としている。
【0003】
一方で、高品質な園芸作物を生産するために、温室内で植物が光合成を行う際の原料の一つとなる二酸化炭素(以下CO2)濃度を高めるCO2施用装置も普及している。加温機から排出される排気ガスは、炭化水素である燃料を燃焼させるため大気中よりも高濃度のCO2を含有しており、この排気ガスをCO2施用として直接温室内に供給する装置が実用化されており、例えば特開2004−344154号公報、特開2004−169937号公報など多数の技術文献にて公開されている。
【特許文献1】特開2004−344154号公報
【特許文献2】特開2004−169937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の二酸化炭素供給装置において、寒冷時に暖房のために加温機が稼動する夜間は植物の光合成反応は進行せず、CO2施用を行う必要性は無い。施用するCO2ガスを製造するために加温機を稼動させることは、消費する燃料等の無駄に直結しエネルギーコストが増大化する問題点があった。現状では、CO2施用が実施されている時間帯は、日の出の早朝から温室内換気が実施されるまでの数時間であり、この時間帯は加温機で暖房する必要性が少ない。
【0005】
すなわち、従来の二酸化炭素供給装置においては、暖房が必要な時間帯とCO2施用が必要な時間帯は合致していないために、暖房が不必要な時間帯にCO2を得るためにのみ加温機を稼動させる必要があり、本来の暖房用に消費されるべき貴重な燃料が無駄に消費され省エネルギー化に逆行する問題点を生じていた。また、夏季は夜間でも温暖であり加温機で温室内の温度を上昇させる必要がない場合が多く、CO2施用のためにのみ化石燃料を焚くことによって、燃料コストが増大化する問題点があった。
【0006】
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、光合成に必要な二酸化炭素を効果的に園芸作物に供給でき高品質の園芸作物を得ることが可能であり、しかも二酸化炭素を製造するために必要な燃料の消費量を大幅に低減でき省エネルギー効果が高い施設園芸用温室の二酸化炭素供給方法および供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明に係る施設園芸用温室の二酸化炭素供給方法は、二酸化炭素吸収材を用いて、空気あるいは燃焼排ガスに含有される二酸化炭素を吸収・貯留する工程と、園芸作物が光合成を行う時間帯に合わせて、上記二酸化炭素吸収材に貯留された二酸化炭素を温室内に放出させる工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
また本発明に係る施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置は、二酸化炭素吸収材を含有し二酸化炭素を吸収貯留する二酸化炭素吸収手段と、二酸化炭素を含有する空気あるいは燃焼排ガスを上記二酸化炭素吸収手段に送風する送風手段と、上記二酸化炭素吸収材を加熱して二酸化炭素を温室内に放出させるための加熱手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明に係る施設園芸用温室の二酸化炭素供給方法および供給装置によれば、空気または排ガス中に含有される二酸化炭素(CO2)を吸収・貯留する一方、必要に応じて二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収手段を設けているために、暖房が必要な時間帯とは別に二酸化炭素を施用する時間帯を設定することが可能となり、光合成に必要な二酸化炭素を効果的に園芸作物に最適時間帯に供給でき高品質の園芸作物を得ることが可能となる。また、施用する二酸化炭素を製造するためにのみに貴重な化石燃料等を焚くことがなくなり、燃料コストが低減され省エネルギー効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明に係る施設園芸用温室の二酸化炭素供給方法および供給装置の実施例について添付図面を参照して以下に具体的に説明する。
【0011】
[実施例1]
図1および図2は本発明に係る施設園芸温室の二酸化炭素供給方法を実施するための供給装置のシステム構成およびその運用方法を示すブロック図である。図1は加温機の稼動がない夏季における運用方法を示し、二酸化炭素(炭酸ガス)の吸収過程(図1(a))と放出過程(図1(b))とに分けてそれぞれ示している。
【0012】
一方、図2は加温機を稼動する冬季における運用方法を示し、炭酸ガスの吸収過程(図2(a))と放出過程(図2(b))とに分けてそれぞれ示している。
【0013】
図1および図2に示す施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置1は、リチウム複合酸化物を二酸化炭素吸収材2として含有し二酸化炭素を吸収貯留する二酸化炭素吸収手段3と、二酸化炭素を含有する空気あるいは燃焼排ガスを上記二酸化炭素吸収手段3に送風する送風手段4と、上記二酸化炭素吸収材2を加熱して二酸化炭素を温室内に放出させるための加熱手段5としてのヒータとを備えて構成される。また、各二酸化炭素供給装置1には、冬季に温室内を暖房するための加温機(暖房機)6が付設されている。
【0014】
すなわち、図1および図2に示すシステムは、基本的には加温機6とCO2供給装置1とで構成されるが、図1に示すように夏季において加温機6は休止状態にあり、冬季の寒冷時期のみに燃料を焚いて温めた空気を温室に供給するように構成される。CO2供給装置1は、主にリチウム複合酸化物を含む二酸化炭素吸収材2を内蔵しており、この吸収材2は下記(1)式に示す反応に基づいてCO2を吸収したり、または放出したりする。
[数1]
Li4SiO4+CO2⇔Li2SiO3+Li2CO2+Q ……(1)
【0015】
この反応は可逆反応であり、650℃程度に加熱すると逆反応によりCO2を放出し、吸収材が再使用できる。反応に伴う化学エンタルピ変化により右方向への反応が発熱反応であり、左方向への反応が吸熱反応となる。この吸収材のCO2吸収可能温度範囲は常温から600℃までであり、この特徴を利用して施設園芸用温室のCO2供給装置1が構築される。
【0016】
上記のように構成されたCO2供給装置1は下記のように運転される。すなわち、図1(a)に示すように加温機6による暖房を必要としない夏季においては、温室内外の大気中に300ppm程度含有される炭酸ガスをCO2源として取り込み、前記(1)式の右方向への反応によりCO2吸収材2中にCO2を吸収し蓄積する。
【0017】
夏季においてCO2を温室に供給する時には、図1(b)に示すように加熱手段としてのヒータ5によってCO2吸収材2を所定の温度まで加熱してCO2を放出させ、放出されたCO2を空気で希釈してCO2リッチな空気を温室に送り込む。
【0018】
一方、冬季においては、図2(a)に示すように温室暖房用の加温機6が稼動するため、空気より高濃度のCO2が含有される加温機6からの排気ガスをCO2源として吸収し貯留する。前記リチウム複合酸化物から成るCO2吸収材2の特性として、高濃度・高温であればCO2吸収速度が速く、短時間の運転で十分な量のCO2を吸収し蓄積することができる。
【0019】
冬季においてCO2を温室内に供給する時は、図1(b)に示す夏季と同様に図2(b)に示すように、加熱手段としてのヒータ5によってCO2吸収材2を所定の温度まで加熱してCO2を放出させ、空気で希釈してCO2リッチな空気を温室に送り込む。
【0020】
図3および図4は、それぞれ夏季および冬季におけるCO2供給装置1の1昼夜(24時間)にわたる運転ダイヤグラムの典型例を示し、各図の上段から順に日照量の時間変化、CO2の蓄積量の時間変化および温室内のおけるCO2の平均濃度の時間変化を相対的に示している。
【0021】
図3に示す夏季の運転ダイヤグラムの場合、日の出が6時であり日の入りが18時であったと仮定すれば、ある園芸作物に対して図3の中段に示すダイヤグラムの通り、6時から温室を換気するまでの数時間の時間帯にCO2を供給すればよい。図3では夜間(22時〜3時)に大気を取り込み、大気中に含有されるCO2を吸収材2内に吸収蓄積させる運転をしているが、CO2を供給しない時間帯を選択して吸収する時間帯を適宜変更することも可能である。CO2は日の出の時刻から温室を換気する時刻までの時間帯に最も枯渇すると考えられるが、この時間にCO2施用を実行することにより、温室内におけるCO2の平均濃度が、光合成の可能範囲の下限値を常時上回るように制御することができる。
【0022】
一方、図4に示す冬季の運転ダイヤグラムの場合、7時から16時までの時間帯に日照があり、開放換気を実施しない温室で栽培する園芸作物に対しては、図4の中段に示すダイヤグラムで日の出から日没までCO2施用する。温室内が冷え込んでくる夕刻(18時頃)から早朝(7時頃)にかけて温室内温度を一定に保つために、図4の中段に示すダイヤグラム通りに加温機6が間欠的に運転されたとすると、その排気ガスを有効に利用してCO2を吸収した吸収材2は、図4の中段に示すようなCO2の蓄積量曲線を辿ることになる。このような運転を実行すれば、温室内におけるCO2の平均濃度は光合成可能範囲の下限値を下回ることはなく、昼間の日照時間中で加温の必要がない時間帯にCO2施用のためだけに貴重な燃料を焚いて加温機6を稼動させる必要がない。
【0023】
以上の実施例1に係る施設園芸用温室の二酸化炭素供給方法および供給装置によれば、大気あるいは加温機の排気ガス中に含有されるCO2を吸収蓄積しておき、最適な時間帯に合わせてCO2を温室に供給する効果的なCO2施用により、高品質な園芸作物の育成が期待できると共に、施設園芸分野における省エネルギー化も実現できる。
【0024】
すなわち、空気または排ガス中の含有される二酸化炭素(CO2)を吸収・貯留する一方、必要に応じて二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収手段3を設けているために、暖房が必要な時間帯とは別に二酸化炭素を施用する時間帯を設定することが可能となり、光合成に必要な二酸化炭素を効果的に園芸作物に最適時間帯に供給でき、高品質の園芸作物を得ることが可能となる。また、施用する二酸化炭素を製造するためにのみに貴重な化石燃料等を焚くことがなくなり、燃料コストが低減され省エネルギー効果を高めることができる。
【0025】
なお上記実施例において、送風手段4とCO2吸収手段3との位置関係としては、図5(a)に示すようにCO2吸収材2とヒータ5とから成るCO2吸収手段3の1次側に押込み型ブロワ−4aを配置して構成することも可能であるが、図5(b)に示すようにCO2吸収材2とヒータ5とから成るCO2吸収手段3の2次側に吸込み型ブロワ−4bを配置して構成することも可能である。
【0026】
CO2吸収過程においては、図5(a)に示すように押込み型ブロワ4aによってCO2吸収手段3に押込むように供給された空気または排気ガス中の炭酸ガスはCO2吸収材2によって吸収蓄積される一方、炭酸ガスを除かれた空気または排気ガスが温室に供給される。また、図5(b)に示すように吸込み型ブロワ4bによってCO2吸収手段3に吸込まれるように供給された空気または排気ガス中の炭酸ガスはCO2吸収材2によって吸収蓄積される一方、炭酸ガスを除かれた空気または排気ガスが温室に供給される。
【0027】
これに対して、CO2放出過程においては、図6(a)に示すように押込み型ブロワ4aによってCO2吸収手段3に押込むように供給された空気と、ヒータ5によるCO2吸収材2の加熱によって放出された炭酸ガスとが混合されてCO2リッチな空気が温室に供給される。また、図6(b)に示すように吸込み型ブロワ4bによってCO2吸収手段3に吸込まれるように供給された空気と、ヒータ5によるCO2吸収材2の加熱によって放出された炭酸ガスとが混合されてCO2リッチな空気が温室に供給される。
【0028】
このように実施例1に係るCO2供給装置は、CO2吸収材2と、空気あるいは加温機から排出される排気ガスを送風する送風手段4としてのブロワと、CO2吸収材2を加熱して炭酸ガスを放出するための加熱手段5としてのヒータとで構成され、CO2吸収材2とブロワ4とは適当な配管やダクトで連結されている。CO2供給装置1は、最低限これらの機器を具備していれば、CO2の吸収・蓄積と放出とが可能である。
【0029】
[実施例2]
図7および図8は、本発明に係るCO2供給装置の他の実施例およびその動作を示す要部断面図である。すなわち実施例2に係るCO2供給装置は、二酸化炭素吸収手段3aが、二酸化炭素吸収過程において空気あるいは燃焼排ガスを前記二酸化炭素吸収材2に供給し、かつ二酸化炭素を吸収された空気または燃焼排ガスを温室に供給する送風通路7と、二酸化炭素放出過程において送風する空気が、前記二酸化炭素吸収材2を通らずに前記二酸化炭素吸収手段3aの一次側から二次側にバイパスするバイパス通路8とを具備するように構成される。すなわち、バイパス通路8は、送風通路7のうち二酸化炭素吸収材2を備える部分と並列に設けられている。さらに、送風通路7からバイパス通路8分岐する部位には、切替弁9が設けられており、運転過程によってこれらの通路の切り替えができるようになっている。
【0030】
ところで実施例1に係る二酸化炭素供給装置のように、送風手段4によってCO2吸収手段3に供給通気される空気または排気ガスの全量がCO2吸収材2を通過する構成を採用した場合には、炭酸ガスの放出過程においてCO2吸収材2を650℃の高温度に保持して放出効率を高く維持すると共に、放出反応に必要な熱を加熱した空気の対流によって供給するためには大容量のヒータが必要で、電力消費量も多くなる。したがって、電力使用量に起因する運転コストが大幅に増加する恐れがある。
【0031】
そこで、図7および図8に示すように、炭酸ガスの吸収過程と放出過程とにおいて空気が流れる経路(通路)を別々に設けている。そして炭酸ガスの吸収過程では、図7に示すように、バイパス通路8が切替弁9によって閉止された状態で、送風手段4から送出された空気または排気ガスの全量がCO2吸収材2に通気され、ガス中に含有される炭酸ガスがCO2吸収材2中に吸収・蓄積される。一方、炭酸ガスの放出過程では図8に示すように、CO2吸収手段3aに向かう送風通路7が切替弁9によって閉止される一方、バイパス通路8が開放された状態になる。そして、送風手段4から送出された空気はCO2吸収材2に通されず、バイパス通路8を通りCO2吸収手段3aの二次側に供給される。バイパス通路8が送風通路7に合流する部位には通路の切替弁は設けられていないので、バイパス通路を通りCO2吸収手段3aの二次側に供給された空気は、ヒータ5の加熱により放出されたCO2を希釈して施用ガスとして用いられる。
【0032】
この場合、炭酸ガスの放出過程におけるCO2吸収材2への伝熱形態は、吸収材2の充填層内における熱伝導が主体であるので、一旦充填層が650℃まで高温度に加熱されれば、以後は放熱分と反応熱のみの熱供給で済むため、熱供給コストが大幅に削減される。また、低温度である大量の空気によってCO2吸収材2が冷却される恐れもないために、放出過程において炭酸ガスの放出効率が低下することもなく、効果的なCO2施用が可能になる。
【0033】
なお、図5および図6と、図7および図8とでは、CO2吸収材2の配置が縦置きと横置きとで異なるが、CO2吸収材2の置き方や向きは本発明に何ら制限を加えるものではなく、例えば図5に示すCO2吸収材2を斜めに配置したり、図7に示すCO2吸収放出システムを倒立させたりしても、それらの機能に有意差は生じない。
【0034】
[実施例3]
図9および図10は、本発明に係るCO2供給装置の他の実施例およびその動作を示す要部断面図であり、図7および図8に示す実施例2の構成に下記のような搬送空気通路をさらに付加したものである。すなわち実施例3に係る施設園芸用温室のCO2供給装置は、二酸化炭素放出過程において、二酸化炭素吸収材2から放出された二酸化炭素(炭酸ガス)を温室方向に誘導しその輸送を補助する空気が流れる搬送空気通路10を具備して構成される。
【0035】
CO2吸収材2からCO2が放出されると、CO2吸収材2を充填した充填層の空隙におけるCO2分圧が上昇する。このCO2分圧の上昇は放出反応速度を低下させることが実験結果から明らかになっている。したがって、発生したCO2を速やかに除去する方策を講じると有効である。
【0036】
すなわち、図9および図10に示すように、バイパス経路8から搬送空気通路(キャリアガス経路)10が分岐しており、この搬送空気通路の他端はCO2吸収材2の二次側表面部に開口している。バイパス経路8から分岐し搬送空気通路10を流れる微量な空気がキャリアガスとしてCO2吸収材2の表層を流れる。この時、キャリアガスは、移動流により発生したCO2を速やかに輸送し、CO2吸収材2の表層部におけるCO2分圧を降下させる効果が得られる。したがって、CO2吸収材2を充填した充填層の空隙におけるCO2分圧が上昇することが防止でき、炭酸ガスの放出効率を高く維持できる。
【0037】
[実施例4]
図11(a)は、本発明に係るCO2供給装置の他の実施例を示す要部断面図であり、図9に示す実施例3の構成に対して、さらにキャリアガスの予熱機能を付加した実施例4の構成を示す要部断面図である。すなわち実施例4に係る施設園芸用温室のCO2供給装置は、二酸化炭素放出過程において、加熱手段5によって前記二酸化炭素吸収材2から放出された二酸化炭素の輸送を補助する空気を予熱する予熱手段11を具備して構成される。
【0038】
図11(a)に示す上記予熱手段11は、図11(b)に示すようにCO2吸収材2を詰めたコンテナ12と加熱ヒータ13とから構成されている。コンテナ12の底面はCO2吸収材2の粒子径より目が細かいメッシュ材14を配置した構造となっており、キャリアガスを容易に通過させることができる。また、加熱ヒータ13は、図11(c)に示すように、例えばカートリッジヒータ15を挿通するための挿通口16を所定数穿設したヒータブロック17と、キャリアガスをヒータブロック17の全面に分配するマニホールド19とから構成される。ヒータブロック17の厚さ方向にはキャリアガスが流通する多数の貫通孔18が開けられているために、下方からのキャリアガスを容易に通過させると共にキャリアガスの予熱が十分にできる。上記ヒータブロック17はコンテナ12と接触しているため、熱伝導により内部のCO2吸収材2にも熱を効率的に伝達させることが可能である。
【0039】
予熱手段を有しない図9に示すようなCO2吸収手段3aの場合には、キャリアガスはCO2吸収材2の表層に到達するまで、ほぼ大気温度であり、CO2吸収材の温度を降下させて、CO2放出を阻害する場合がある。しかるに、図11に示すようなキャリアガスの予熱手段11を付加した本実施例4に係るCO2供給装置によれば、二酸化炭素放出過程において、二酸化炭素吸収材2から放出された二酸化炭素の輸送を補助する空気(キャリアガス)を予熱する予熱手段11を備えているために、キャリアガスによってCO2吸収材2の温度が降下することがなくCO2の放出効率を高く維持できる。
【0040】
[実施例5]
図12(a)は、本発明に係るCO2供給装置の他の実施例を示す要部断面図であり、図11に示す予熱手段11とは別の予熱手段11aを具備して構成される実施例5の構成を示す要部断面図である。
【0041】
図12(a)に示す上記予熱手段11aは、図12(b)に示すようにCO2吸収材2を詰めたコンテナ12と加熱ヒータ13と、図12(c)に示すようにコンテナ12の側面に配置されたマニホールド19aとから構成されている。このマニホールド19aからコンテナ12内部に至る数本の穴開き管20が配設される。この穴開き管20によってキャリアガスがCO2吸収材2中に均等に分配される。マニホールド19aはコンテナ12と一体化あるいは密に接しているため十分に加熱されており、その内部を通るキャリアガスも効果的に加熱される。したがって、前記実施例4と同様にキャリアガスによってCO2吸収材2の温度が降下することがなくCO2の放出効率を高く維持できる。
【0042】
なお図示は省略するが、上記構成以外に、上記穴開き管を1〜2本折り曲げてコンテナ12底部に張り巡らせて予熱手段を構成しても良い。また、穴開き管をヒータブロックと一体化させて構成しても良い。なお、ヒータやコンテナは矩形の直方体であるが、円筒形状であっても別段問題は生じない。
【0043】
以上の実施例1〜5の態様を総括すると、最低限の構成として、CO2吸収材2と、空気あるいは加温機の排気ガスを送風する送風手段(ブロワ)4と、CO2吸収材2を加熱するための加熱手段(ヒータ)5とを備えれば、各実施例のCO2供給装置を実現することができる。上記ヒータ5の消費電力と容量とを抑制するためには、放出過程用のバイパス通路を付加すればよい。
【0044】
さらに効率よくCO2を発生放出させるために、キャリアガスを用いてCO2を速やかに除去する方法やヒータ5とCO2吸収材コンテナ12との組み合わせでキャリアガスを予熱する機構を付与すると良い。本実施例によれば、高効率で省エネルギー性が向上した施設園芸用温室のCO2供給装置を提供することが可能となる。
【0045】
[実施例6]
図13および図14は、本発明に係るCO2供給装置の他の実施例を示す要部断面図であり、図9および図10に示す実施例3の構成に下記のような流量調整手段をさらに付加したものである。すなわち実施例6に係る施設園芸用温室のCO2供給装置は、二酸化炭素吸収過程において空気あるいは燃焼排ガスを二酸化炭素吸収材2に供給し、かつ二酸化炭素を吸収された空気または燃焼排ガスを温室に供給する送風通路7と、二酸化炭素放出過程において送風する空気が、前記二酸化炭素吸収材2を通らずに前記二酸化炭素吸収手段3aの一次側から二次側にバイパスするバイパス通路10とから成るの二つの通路のうちの上記バイパス通路10に、空気あるいは燃焼排ガスの流量を調整する流量調整手段21としてのダンパーを具備して構成される。
【0046】
図9および図10に示すように送風通路7およびバイパス通路8の開閉を切替弁9によって実行していた実施例3に係るCO2供給装置においては、炭酸ガスの吸収過程と放出過程とでは、空気あるいは排気ガスが流れる通路が異なり、送風通路7およびバイパス通路8の一方を閉止する必要があった。
【0047】
しかるに本実施例6によれば、図13および図14に示すように、バイパス経路8に自動あるいは手動の流量調整手段21としてのダンパー1つを設けることにより、流路の切り替えを容易に実施できる。
【0048】
上記実施例6において、炭酸ガスの吸収過程では、図13に示すように、ダンパー21
を閉止して、全ての空気/排気ガスをCO2吸収材2に通す。一方、CO2放出過程では図14に示すように、ダンパー21を開放して、バイパス通路8に空気を呼び込みキャリアガス通路10にも微量の空気を送り込む。なお、1つのダンパーは主経路(送風通路7)内に設けることも可能である。
【0049】
[実施例7]
図15および図16は、本発明に係るCO2供給装置の他の実施例を示す要部断面図であり、図7および図8に示す実施例2の構成に下記のような流量調整手段をさらに付加したものである。すなわち実施例7に係る施設園芸用温室のCO2供給装置は、送風通路7と、バイパス通路8との双方に、空気あるいは燃焼排ガスの流量を調整する流量調整手段21としてのダンパー21a、21bを具備して構成される。すなわち、ダンパーを主経路としての送風通路7とバイパス通路8との2箇所に配設している。
【0050】
上記構成の実施例7において、炭酸ガスの吸収過程では、図15に示すように主経路ダンパー21aを全開にする一方、バイパスダンパー21bを全閉にして、全ての空気/排気ガスをCO2吸収材2に通す。一方、炭酸ガスの放出過程では、図16に示すようにバイパスダンパー21bを全開して、希釈空気として使用する一方で、主経路ダンパー21aを少し開けて空気を流し、キャリアガスとして用いることもできる。
【0051】
以上の実施例6〜7を総括すると、送風通路(主経路)あるいはバイパス通路8のいずれかあるいは両方にダンパー等の流量調整機構あるいは通路を開閉可能な流量調整手段を配置することにより、空気/排気ガスの切り替えが容易な施設園芸用温室のCO2供給装置を提供することが可能となる。
【0052】
[実施例8]
図17は、本発明に係るCO2供給装置の他の実施例を示す要部断面図であり、CO2吸収手段3bを複数のCO2吸収材2a、2b、2cと複数のヒータ5a、5b、5cとの組み合わせで構成している。すなわち実施例8に係る施設園芸用温室のCO2供給装置は、二酸化炭素吸収材2a、2b、2cと、この二酸化炭素吸収材2a、2b、2cを加熱して二酸化炭素を放出させるための加熱手段としてのヒータ5a、5b、5cとの組み合わせが複数個設けられて構成されている。
【0053】
ここで、炭酸ガスの放出過程におけるCO2放出反応速度は吸収速度よりはるかに速い。そのため、実施例1〜3に示すように、一塊のCO2吸収材2に対して1個のヒータ5を組み合わせたCO2供給装置では、反応温度まで加熱されたCO2吸収材2から一気にCO2が放出されてしまう結果、長い時間を掛けて炭酸ガスを均等に放出させることが困難になり、いずれにしても炭酸ガスの放出量を正確に制御することが困難である問題があった。また、CO2吸収材2から放熱などによる熱損失についても、CO2吸収材2を一様に加熱した場合には、CO2吸収材2の反応終了部分からの熱損失も大きくなる問題点もあった。
【0054】
しかるに、図17に示すように、円板状に成形した複数のCO2吸収材2a、2b、2cと、その外周縁に装着されたヒータ5a、5b、5cとの組み合わせを、ガスの流れ方向に複数個設けた場合には、各ヒータ5a、5b、5cの通電量の個別制御が可能であり、全CO2吸収材2a、2b、2cから一気にCO2が放出される恐れはなく、しかも長い時間を掛けて炭酸ガスを均等に放出させることが可能になる。
【0055】
図18は、上記実施例8に係るCO2供給装置の3個の二酸化炭素吸収材2a、2b、2cを順次加熱して二酸化炭素を放出させるためヒータ5a、5b、5cの通電量を個別に制御する運転ダイヤグラムと、温室内に放出される炭酸ガスの放出濃度の時間変動を示すグラフである。
【0056】
図18に示す結果から明らかなように、CO2吸収材を小分けに分割する一方、分割したCO2吸収材にそれぞれ付設されたヒータを個別に逐次通電するように制御することにより、分割したCO2吸収材から炭酸ガスを逐次放出させることができ、長時間に亘るCO2の放出が可能となり、放出反応に関与しない他の吸収材部分での加熱および熱損失が少なくなり、省エネルギー効果が高まる。なお、図17に示す実施例8では、CO2吸収材とヒータとの組み合わせを3個設けた場合を示しているが、2個でも効果は期待できる。もちろん、4個以上であればコストは増加するが機能的にはさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置の一実施例を示し、加温機を稼動させない夏季における構成を示すブロック図であり、(a)は炭酸ガスの吸収過程での動作を示し、(b)は炭酸ガスの放出過程での動作を示すブロック図。
【図2】本発明に係る施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置の一実施例を示し、加温機を稼動させる冬季における構成を示すブロック図であり、(a)は炭酸ガスの吸収過程での動作を示し、(b)は炭酸ガスの放出過程での動作を示すブロック図。
【図3】施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置における夏季の運転ダイヤグラムを示すグラフ。
【図4】施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置における冬季の運転ダイヤグラムを示すグラフ。
【図5】施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置におけるCO2吸収材と送風手段との位置関係を示す側面図であり、(a)はCO2吸収材の1次側に送風手段を設けた構成と吸収過程での作用を示し、(b)はCO2吸収材の2次側に送風手段を設けた構成と吸収過程での作用を示す側面図。
【図6】図5に示す二酸化炭素供給装置における炭酸ガス放出過程の作用を示す側面図であり、(a)は図5(a)に示す装置における炭酸ガス放出過程の作用を示す側面図であり、(b)は図5(b)に示す装置における炭酸ガス放出過程の作用を示す側面図。
【図7】バイパス通路を付加した二酸化炭素供給装置の吸収過程の作用を示す断面図。
【図8】バイパス通路を付加した二酸化炭素供給装置の放出過程の作用を示す断面図。
【図9】搬送空気通路(キャリアガス通路)を付加した二酸化炭素供給装置の吸収過程の作用を示す断面図。
【図10】搬送空気通路(キャリアガス通路)を付加した二酸化炭素供給装置の放出過程の作用を示す断面図。
【図11】キャリアガスの予熱手段を付加した二酸化炭素供給装置の構成を示す図であり、(a)は上記予熱手段を付加した二酸化炭素供給装置の全体構成を示す断面図であり、(b)は上記予熱手段の構成を示す斜視図であり、(c)は加熱ヒータの構成を示す斜視図。
【図12】キャリアガスの他の予熱手段を付加した二酸化炭素供給装置の構成を示す図であり、(a)は上記予熱手段を付加した二酸化炭素供給装置の全体構成を示す断面図であり、(b)は上記予熱手段の構成を示す斜視図であり、(c)はコンテナの構成を示す斜視図。
【図13】流量調整手段としてのダンパーを付加した二酸化炭素供給装置の吸収過程での作用を示す断面図。
【図14】流量調整手段としてのダンパーを付加した二酸化炭素供給装置の放出過程での作用を示す断面図。
【図15】流量調整手段としてのダンパーを付加した二酸化炭素供給装置の吸収過程での作用を示す断面図。
【図16】流量調整手段としてのダンパーを付加した二酸化炭素供給装置の放出過程での作用を示す断面図。
【図17】CO2吸収材と加熱手段との組み合わせを3個配置して構成した二酸化炭素供給装置の放出過程での作用を示す断面図。
【図18】図17に示す二酸化炭素供給装置の運転ダイヤグラムを示すグラフ。
【符号の説明】
【0058】
1 二酸化炭素供給装置(CO2供給装置)
2,2a,2b,2c 二酸化炭素吸収材(CO2吸収材)
3,3a 二酸化炭素吸収手段(CO2吸収手段)
4,4a,4b 送風手段(ブロワ)
5,5a,5b,5c 加熱手段(ヒータ)
6 加温機(暖房機)
7 送風通路(主経路)
8 バイパス通路
9 切替弁
10 搬送空気通路(キャリアガス通路)
11,11a 予熱手段
12 コンテナ
13 加熱ヒータ
14 メッシュ材
15 カートリッジヒータ
16 挿通口
17 ヒータブロック
18 貫通孔
19,19a マニホールド
20 穴開き管
21,21a,21b 流量調整手段(ダンパー)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素吸収材を用いて、空気あるいは燃焼排ガスに含有される二酸化炭素を吸収・貯留する工程と、園芸作物が光合成を行う時間帯に合わせて、上記二酸化炭素吸収材に貯留された二酸化炭素を温室内に放出させる工程とを備えることを特徴とする施設園芸用温室の二酸化炭素供給方法。
【請求項2】
二酸化炭素吸収材を含有し二酸化炭素を吸収貯留する二酸化炭素吸収手段と、二酸化炭素を含有する空気あるいは燃焼排ガスを上記二酸化炭素吸収手段に送風する送風手段と、上記二酸化炭素吸収材を加熱して二酸化炭素を温室内に放出させるための加熱手段とを備えることを特徴とする施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置。
【請求項3】
前記二酸化炭素吸収手段は、二酸化炭素吸収過程において空気あるいは燃焼排ガスを前記二酸化炭素吸収材に供給し、かつ二酸化炭素を吸収された空気または燃焼排ガスを温室に供給する送風通路と、二酸化炭素放出過程において送風する空気が前記二酸化炭素吸収材をバイパスするように前記送風通路に並列に設けられたバイパス通路とを具備することを特徴とする請求項2記載の施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置。
【請求項4】
二酸化炭素放出過程において、前記二酸化炭素吸収材から放出された二酸化炭素を温室方向に誘導しその輸送を補助する空気が流れる搬送空気通路を具備することを特徴とする請求項2または3記載の施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置。
【請求項5】
二酸化炭素放出過程において、前記加熱手段によって前記二酸化炭素吸収材から放出された二酸化炭素の輸送を補助する空気を予熱する予熱手段を具備することを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置。
【請求項6】
二酸化炭素吸収過程において空気あるいは燃焼排ガスを前記二酸化炭素吸収材に供給し、かつ二酸化炭素を吸収された空気または燃焼排ガスを温室に供給する送風通路と、二酸化炭素放出過程において送風する空気が前記二酸化炭素吸収材をバイパスするように前記送風通路に並列に設けられたバイパス通路との少なくとも一方に、空気あるいは燃焼排ガスの流量を調整する流量調整手段を具備することを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置。
【請求項7】
前記二酸化炭素吸収材と、この二酸化炭素吸収材を加熱して二酸化炭素を放出させるための加熱手段との組み合わせが複数個設けられていることを特徴とする請求項2ないし6のいずれかに記載の施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置。
【請求項1】
二酸化炭素吸収材を用いて、空気あるいは燃焼排ガスに含有される二酸化炭素を吸収・貯留する工程と、園芸作物が光合成を行う時間帯に合わせて、上記二酸化炭素吸収材に貯留された二酸化炭素を温室内に放出させる工程とを備えることを特徴とする施設園芸用温室の二酸化炭素供給方法。
【請求項2】
二酸化炭素吸収材を含有し二酸化炭素を吸収貯留する二酸化炭素吸収手段と、二酸化炭素を含有する空気あるいは燃焼排ガスを上記二酸化炭素吸収手段に送風する送風手段と、上記二酸化炭素吸収材を加熱して二酸化炭素を温室内に放出させるための加熱手段とを備えることを特徴とする施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置。
【請求項3】
前記二酸化炭素吸収手段は、二酸化炭素吸収過程において空気あるいは燃焼排ガスを前記二酸化炭素吸収材に供給し、かつ二酸化炭素を吸収された空気または燃焼排ガスを温室に供給する送風通路と、二酸化炭素放出過程において送風する空気が前記二酸化炭素吸収材をバイパスするように前記送風通路に並列に設けられたバイパス通路とを具備することを特徴とする請求項2記載の施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置。
【請求項4】
二酸化炭素放出過程において、前記二酸化炭素吸収材から放出された二酸化炭素を温室方向に誘導しその輸送を補助する空気が流れる搬送空気通路を具備することを特徴とする請求項2または3記載の施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置。
【請求項5】
二酸化炭素放出過程において、前記加熱手段によって前記二酸化炭素吸収材から放出された二酸化炭素の輸送を補助する空気を予熱する予熱手段を具備することを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置。
【請求項6】
二酸化炭素吸収過程において空気あるいは燃焼排ガスを前記二酸化炭素吸収材に供給し、かつ二酸化炭素を吸収された空気または燃焼排ガスを温室に供給する送風通路と、二酸化炭素放出過程において送風する空気が前記二酸化炭素吸収材をバイパスするように前記送風通路に並列に設けられたバイパス通路との少なくとも一方に、空気あるいは燃焼排ガスの流量を調整する流量調整手段を具備することを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置。
【請求項7】
前記二酸化炭素吸収材と、この二酸化炭素吸収材を加熱して二酸化炭素を放出させるための加熱手段との組み合わせが複数個設けられていることを特徴とする請求項2ないし6のいずれかに記載の施設園芸用温室の二酸化炭素供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−340683(P2006−340683A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170709(P2005−170709)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】
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