説明

昆虫飼育用材

【課題】本発明はコバエの発生を有効に抑えることができる手段を提供することを目的とする。
【解決手段】昆虫幼若ホルモン様化合物を昆虫飼育用材に処理することで、昆虫飼育中に発生するコバエの発生を有効に抑える。すなわち本発明は、昆虫幼若ホルモン様化合物を処理したことを特徴とする昆虫飼育用材、昆虫幼若ホルモン様化合物を昆虫飼育用材に処理することを特徴とするコバエ防除方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫幼若ホルモン様化合物を処理した昆虫飼育用材、及び昆虫幼若ホルモン様化合物を昆虫飼育用材に処理するコバエ防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クワガタムシやカブトムシの昆虫の飼育がブームとなっているが、飼育中にダニやコバエ等の害虫が発生するという問題がある。ところが害虫を防除するためにピレスロイド殺虫剤等を用いると、飼育昆虫に影響を与える可能性がある。そのため飼育中でも昆虫に影響を与えることがない害虫の防除方法が検討されている。例えば、特許文献1には、シンナムアルデヒド、ベンジルアルコール等を飼育昆虫、培地に処理すること、特許文献2には、ヒノキ、ヒバ、スギの乾燥木片を飼育床として用いることが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−212006号公報(1−3頁)
【特許文献2】登録実用新案3121740号公報(1−5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術は飼育中に発生するダニを対象としたものであり、コバエに対しては有効な防除方法とは言えない。そこで本発明はコバエの発生を有効に抑えることができる手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、昆虫幼若ホルモン様化合物を昆虫飼育用材に処理することで、昆虫飼育中に発生するコバエの発生を有効に抑えることができることを見出し本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の(1)および(2)によって達成されるものである。
(1)昆虫幼若ホルモン様化合物を処理したことを特徴とする昆虫飼育用材。
(2)昆虫幼若ホルモン様化合物を昆虫飼育用材に処理することを特徴とするコバエ防除方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、飼育昆虫(例えばクワガタムシやカブトムシの成虫)に影響を与えることなく、昆虫飼育中に発生するコバエを防除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の有効成分である昆虫幼若ホルモン様化合物としては、例えば、メトプレン、ハイドロプレン、ピリプロキシフェン、フルフェノクスロン、トリフルムロン等が挙げられ、昆虫飼育用材にスプレー、混合、塗布等して用いればよい。
【0009】
昆虫飼育用材としては、飼育培地(飼育床)、飼育飼料(固形餌、虫ゼリー)、天然及び人工の樹木、枝、葉、乾燥木材片、木材の発酵物、カワラタケ等のキノコ菌糸のブロック等が挙げられる。
【0010】
飼育培地としては、例えば、乾燥木材片、木材の発酵物、腐葉土、昆虫マット等が挙げられる。
【0011】
飼育飼料としては、例えば、虫ゼリー、木材の発酵物、カワラタケ等のキノコ菌糸のブロック等が挙げられる。
【0012】
昆虫幼若ホルモン様化合物を昆虫飼育用材に処理する場合、例えば、水やアルコール等の溶剤に溶解させて液剤として用いればよく、必要に応じて界面活性剤等を併用してもよい。前記液剤は飼育飼料中に均一に混合したり、スプレー等で飼育培地や樹木等に噴霧して処理すればよい。
【0013】
昆虫幼若ホルモン様化合物の処理濃度としては、前記液剤として用いる場合、昆虫飼育用材中の昆虫幼若ホルモン様化合物の配合量が0.0005質量%以上、好ましくは0.001〜0.05質量%となるように調製すればよい。また、昆虫幼若ホルモン様化合物をそのまま用いることもできるが、その場合には、対象とする昆虫飼育用材中での濃度が前記範囲となるように調整することが好ましい。
【0014】
例えば昆虫飼育用材が飼育培地(飼育床)である場合、飼育培地中の昆虫幼若ホルモン様化合物の濃度は、0.001〜0.05質量%が好ましく、0.005〜0.05質量%がより好ましい。
【0015】
昆虫飼育用材が飼育飼料(餌)である場合、飼育飼料中の昆虫幼若ホルモン様化合物の濃度は、0.001〜0.05質量%が好ましく、0.005〜0.05質量%がより好ましい。
【0016】
昆虫飼育用材が天然及び人工の樹木、葉、乾燥木材片である場合、当該昆虫飼育用材中の昆虫幼若ホルモン様化合物の濃度は0.01〜1g/mが好ましく、0.05〜1g/mがより好ましい。
【0017】
前記液剤においては、例えば、緑茶由来成分(茶抽出物、ポリフェノール、カテキン等)、植物精油(ヒバ、スギ、ヒノキ等)、シンナムアルデヒド、ベンジルアルコール、サリチル酸フェニル等の防ダニ剤等を配合することで消臭、抗菌、芳香、防ダニ等の機能を付与することができる。
【0018】
飼育昆虫としては、クワガタムシ、カブトムシ、コガネムシ、スズムシ、コオロギの成虫等が挙げられる。
【0019】
コバエとしては、例えば、キイロショウジョウバエ等のショウジョウバエ、ノミバエ、クチキバエ、キノコバエ等が挙げられる。
【実施例】
【0020】
以下に実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
試験例1
メトプレン1質量%、界面活性剤(Tween80)0.333質量%をエタノール100mlに溶解し検体とした。市販の虫ゼリー(MITANI社製)を沸騰した湯で溶かし、約40℃まで冷却した後、脱イオン水を用いて所期の濃度に調整した検体を加えゼリーを固化させた。カップに入ったゼリー15gの上にキイロショウジョウバエ終齢幼虫20頭を放飼し10日後に、成虫となった数を調査して成虫の発生率(%)求めた。試験は3回繰り返して行い、その平均を結果として表1に記載した。
【0022】
【表1】

【0023】
試験例1では、キイロショウジョウバエ終齢幼虫は虫ゼリー上に長時間留まることはなく、2〜3時間でゼリーから離れていた。よって実際のキイロショウジョウバエ終齢幼虫とメトプレンとの接触時間は2〜3時間程度であった。そしてキイロショウジョウバエ幼虫は、そのまま致死することはなく、蛹の状態で致死していた。
【0024】
試験例2
トウモロコシ粉100g、グルコース50g、プロピオン酸4ml、粉末乾燥酵母エビ
オス(アサヒビール社製)3g、寒天5g、水1000mlからなる昆虫飼育培地を調製し、加熱後ゲルが固化する前に試験例1と同様にして検体を加えて1晩固化させた。プラスチックカップに前記昆虫飼育培地40gとキイロショウジョウバエ雌成虫20頭を入れ、通気性部材で蓋をして25℃条件下の明るい所に置いた。3日後に雌成虫を取り除き、14日後に次世代の成虫の発生数を調査しキイロショウジョウバエの発生率(%)求めた。試験は3回繰り返して行い、その平均を結果として表2に記載した。
【0025】
【表2】

【0026】
試験例1と同様にキイロショウジョウバエは幼虫で致死することはなく、蛹の状態で致死していた。
【0027】
試験例1および2の結果から、キイロショウジョウバエの発生を抑制するには、虫ゼリーおよび飼育培地におけるメトプレンの濃度を0.001質量%以上とすることが好適であると判断された。なお、試験例1、2の条件下ではカブトムシ、クワガタムシの成虫には何ら影響は見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆虫幼若ホルモン様化合物を処理したことを特徴とする昆虫飼育用材。
【請求項2】
昆虫幼若ホルモン様化合物を昆虫飼育用材に処理することを特徴とするコバエ防除方法。

【公開番号】特開2008−31050(P2008−31050A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203388(P2006−203388)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】