説明

映像信号処理装置及び映像信号処理方法、並びにコンピューター・プログラム

【課題】立体映像の奥行き計算の結果に応じて、立体映像に含まれる被写体の輪郭や精細感の強調の強度を好適に調整する。
【解決手段】近景部分にフォーカスが合っていることが分かったときには、輪郭・精細感強調処理部103は、輪郭・精細感強調の強度を高める。逆に、遠景部分にフォーカスが合っていることが分かったときには、輪郭・精細感強調処理部103は、輪郭・精細感強調の強度を低くする。また、パンフォーカスのように被写体深度が深い映像の場合には、輪郭・精細感強調処理部103は、輪郭・精細感強調の強度をやや低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、左眼用映像信号及び右眼用映像信号からなる立体映像の画質調整を行なう映像信号処理装置及び映像信号処理方法、並びにコンピューター・プログラムに係り、特に、立体映像に含まれる被写体の輪郭や精細感の強調を実現する映像信号処理装置及び映像信号処理方法、並びにコンピューター・プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
左右の眼に視差のある画像を表示することで、観察者に3次元的に見える3次元視画像を提示することができる。例えば、時分割3次元視画像表示システムは、互いに異なる複数の画像を時分割で表示する表示装置と、画像の観察者がかけるシャッター眼鏡の組み合わせからなる。表示装置は左眼用画像及び右眼用画像を時分割で交互に表示するとともに、表示装置の表示切り換えに同期してシャッター眼鏡がシャッター機構により画像選択を行なうことで、観察するユーザーの脳内では左眼用画像と右眼用画像が融像され3次元視画像となる。
【0003】
左眼用画像と右眼用画像の視差量を大きくすると立体感が増すことが知られている。例えば、2D映像から3D映像に生成する過程で得られた視差情報PRに基づいて、立体感調整を行なう立体感調整方法について提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。しかしながら、視差情報PRを検出する具体的な方法については提案されていない。つまり、3D映像から視差情報(奥行き量)を検出して立体感調整を行なう場合、一般的な手法では、視差情報(奥行き量)の検出精度が低いため、そこで得られた視差情報(奥行き量)は立体感調整に使用できないと思料される。
【0004】
また、3D映像から奥行き方向(Z軸方向)の情報を検出して、その奥行き方向(Z軸方向)の情報から画質改善処理を行なう映像信号処理装置について提案がなされている(例えば、特許文献2を参照のこと)。しかしながら、奥行き方向(Z軸方向)の検出が難しい映像において、誤検出した奥行き方向(Z軸方向)の情報に基づいて画質改善処理が行なわれると、不自然な画質になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−239364号公報
【特許文献2】特開2011−19202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書で開示する技術の目的は、左眼用映像信号及び右眼用映像信号からなる立体映像の画質調整を好適に行なうことができる、優れた映像信号処理装置及び映像信号処理方法、並びにコンピューター・プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、上記課題を参酌してなされたものであり、請求項1に記載の技術は、
立体映像を入力する映像入力部と、
入力した立体映像の奥行き計算を行なう奥行き計算部と、
前記奥行き計算部による奥行き計算結果に基づいて、立体映像の輪郭・精細感強調の強度を変えて画質調整を行なう輪郭・精細感強調処理部と、
を具備する映像信号処理装置である。
【0008】
本願の請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の映像信号処理装置の輪郭・精細感強調処理部は、前記奥行き計算部による奥行き計算の結果から判定されるフォーカス位置に基づいて、輪郭・精細感強調の強度を決定するように構成されている。
【0009】
本願の請求項3に記載の技術によれば、請求項1に記載の映像信号処理装置の輪郭・精細感強調処理部は、前記奥行き計算部による奥行き計算結果として立体映像の近景部分にフォーカスが合っていることが分かったときには、輪郭・精細感強調の強度を高め、前記奥行き計算結果から立体映像の遠景部分にフォーカスが合っていることが分かったときには輪郭・精細感強調の強度を低くし、前記奥行き計算結果として立体映像の被写体深度が深い映像であることが分かったときには輪郭・精細感強調の強度をやや低くするように構成されている。
【0010】
本願の請求項4に記載の技術によれば、請求項1に記載の映像信号処理装置の輪郭・精細感強調処理部は、前記奥行き計算部による奥行き計算結果として立体映像の近景と遠景との奥行き量の差が大きいことが分かったときには輪郭・精細感強調の強度を高くし、前記奥行き計算結果から立体映像の近景と遠景との奥行き量の差が小さいことが分かったときには輪郭・精細感強調の強度を低くするように構成されている。
【0011】
本願の請求項5に記載の技術によれば、請求項1に記載の映像信号処理装置の輪郭・精細感強調処理部は、1フレームの映像全体について一様の強度で輪郭・精細感強調を行なうように構成されている。
【0012】
本願の請求項6に記載の技術によれば、請求項1に記載の映像信号処理装置の映像入力部は、同時刻の左眼用映像及び右眼用映像を時間方向で多重化する方式の立体映像を入力し、奥行き計算部は、左眼用映像から特徴量を抽出した後に、同時刻の右眼用映像から特徴量を抽出し、左眼用映像の特徴量と右眼用映像の特徴量を比較することによって、立体映像の奥行きを計算するように構成されている。
【0013】
本願の請求項7に記載の技術によれば、請求項6に記載の映像信号処理装置の奥行き計算部は、
左眼用映像の垂直方向及び水平方向に所定タップ数のバンドパス・フィルター処理をそれぞれ行ない、垂直方向のバンドパス成分と水平方向のバンドパス成分の積に基づいて各画素位置の特徴量を求め、各ブロック内で特徴量が最大となる画素位置をブロックの特徴点として検出し、各ブロックの特徴点の特徴量を保存し、右眼用映像の各ブロックの全画素位置で上記と同じ特徴量を算出し、左眼用映像の対応するブロックの特徴点において保存した特徴量と比較して、ブロック毎に左眼用映像の特徴点と一致する右眼用画像の画素位置を検出し、各ブロックにおいて左眼用映像の特徴点と一致する右眼用画像の画素位置における奥行き量と帯域成分を保存するように構成されている。
【0014】
本願の請求項8に記載の技術によれば、請求項6に記載の映像信号処理装置の奥行き計算部は、
左眼用映像について、各ブロックの特徴点について、垂直方向のバンドパス成分、水平方向のバンドパス成分、左上画素の平均値、右上画素の平均値、左下画素の平均値、右下画素の平均値、特徴点のブロック内のy座標、特徴点のブロック内のx座標を特徴点データとして保存し、右眼用映像について、各ブロックの全画素位置で、垂直方向のバンドパス成分、水平方向のバンドパス成分、左上画素の平均値、右上画素の平均値、左下画素の平均値、右下画素の平均値、特徴点のブロック内のy座標を特徴点データとして算出し、各画素位置における特徴点データと左眼用映像の対応する特徴点における特徴点データとの重み付き差分絶対和をとって各画素位置の評価値とし、右眼用映像の各ブロックで評価値が最小になる画素位置を左眼用映像の特徴点と一致する画素位置を求め、各ブロックにおいて左眼用映像の特徴点と一致する右眼用画像の画素位置における奥行き量と帯域成分を保存するように構成されている。
【0015】
本願の請求項9に記載の技術によれば、請求項7に記載の映像信号処理装置の奥行き計算部は、各ブロックを奥行き量に基づいて近景と遠景に分類し、近景のブロックについて奥行き量と帯域成分を平均化するとともに、遠景のブロックについて奥行き量と帯域成分を平均化するように構成されている。
【0016】
本願の請求項10に記載の技術によれば、請求項9に記載の映像信号処理装置の奥行き計算部は、近景のブロックの奥行き量の平均値を遠景のブロックの奥行き量の平均値を引き算して立体映像の近景と遠景との奥行き量の差を求め、立体映像の近景と遠景との奥行き量の差が大きいときには輪郭・精細感強調の強度に対する重みを大きくし、立体映像の近景と遠景との奥行き量の差が小さいときには輪郭・精細感強調の強度に対する重みを小さくするように構成されている。
【0017】
本願の請求項11に記載の技術によれば、請求項9に記載の映像信号処理装置の奥行き計算部は、近景のブロックの帯域成分の平均値を遠景のブロックの帯域成分の平均値を引き算して立体映像の近景と遠景との帯域成分の差を求め、前立体映像の近景と遠景との帯域成分の差が大きいときには輪郭・精細感強調の強度に対する重みを大きくし、立体映像の近景と遠景との帯域成分の差が小さいときには輪郭・精細感強調の強度に対する重みを小さくするように構成されている。
【0018】
本願の請求項12に記載の技術によれば、請求項9に記載の映像信号処理装置の奥行き計算部は、平均化された奥行き量に基づいて付与される重みと、平均化された帯域成分に基づいて付与される重みを組み合わせた後、ローパス・フィルター処理して輪郭・精細感強調の強度を求めるように構成されている。
【0019】
本願の請求項13に記載の技術によれば、請求項12に記載の映像信号処理装置は、入力映像のフレーム間変動を検出するフレーム間変動検出部をさらに備えている。そして、奥行き計算部は、フレーム間変動が大きいときには、時定数が小さいフィルター係数にして前記ローパス・フィルター処理を行ない、フレーム間変動が小さいときには、時定数が大きいフィルター係数にして前記ローパス・フィルター処理を行なうように構成されている。
【0020】
本願の請求項14に記載の技術によれば、請求項7に記載の映像信号処理装置は、右眼用映像のブロックよりも左眼用映像のブロックのサイズを小さくするように構成されている。
【0021】
また、本願の請求項に記載の技術15は、
立体映像を入力する映像入力ステップと、
入力した立体映像の奥行き計算を行なう奥行き計算ステップと、
前記奥行き計算ステップにおける奥行き計算結果に基づいて、立体映像の輪郭・精細感強調の強度を変えて画質調整を行なう輪郭・精細感強調処理ステップと、
を有する映像信号処理方法である。
【0022】
また、本願の請求項に記載の技術16は、
立体映像を入力する映像入力部、
入力した立体映像の奥行き計算を行なう奥行き計算部、
前記奥行き計算部による奥行き計算結果に基づいて、立体映像の輪郭・精細感強調の強度を変えて画質調整を行なう輪郭・精細感強調処理部、
としてコンピューターを機能させるようにコンピューター可読形式で記述されたコンピューター・プログラムである。
【0023】
本願の請求項16に係るコンピューター・プログラムは、コンピューター上で所定の処理を実現するようにコンピューター可読形式で記述されたコンピューター・プログラムを定義したものである。換言すれば、本願の請求項16に係るコンピューター・プログラムをコンピューターにインストールすることによって、コンピューター上では協働的作用が発揮され、本願の請求項1に係る映像信号処理装置と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本明細書で開示する技術によれば、立体映像の奥行き計算の結果に応じて、立体映像に含まれる被写体の輪郭や精細感の強調の強度を好適に調整することができる、優れた映像信号処理装置及び映像信号処理方法、並びにコンピューター・プログラムを提供することができる。
【0025】
本明細書で開示する技術によれば、1フレームの映像に含まれる近景部分と遠景部分の各々に対して輪郭・精細感強調の強度を変えるのではなく、1フレームの映像全体について一様の強度で輪郭・精細感強調を行なうようになっている。したがって、奥行き計算に誤検出があったとしても、不自然な画質なり難いという利点がある。
【0026】
本明細書で開示する技術によれば、立体映像に対して自然な輪郭・精細感強調を行なうことができる。
【0027】
本明細書で開示する技術によれば、小規模な回路構成により立体映像の奥行き量を算出することができ、計算の際にフレーム・メモリーを使う必要もない。
【0028】
本明細書で開示する技術のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本明細書で開示する技術に係る映像信号処理装置100の構成を模式的に示した図である。
【図2A】図2Aは、輪郭・精細感強調処理部103が奥行き計算の結果に基づいて行なう処理を概略的に示した図である。
【図2B】図2Bは、輪郭・精細感強調処理部103が奥行き計算の結果に基づいて行なう処理を概略的に示した図である。
【図3】図3は、奥行き計算部102において左眼用映像を処理するための機能的構成を示した図である。
【図4】図4は、特徴量算出部301が行なう処理を説明するための図である。
【図5】図5は、映像から特徴量を抽出するために用いられるバンドパス・フィルターの周波数特性の一例を示した図である。
【図6】図6は、左眼用映像中に複数のブロックを設定する様子を示した図である。
【図7】図7は、左眼用映像の各ブロックの特徴点に対して右眼用映像とのマッチング用に保存する特徴点データを示した図である。
【図8】図8は、奥行き計算部102において、左眼用映像と同時刻の右眼用映像を処理するための機能的構成を示した図である。
【図9A】図9Aは、左眼用映像のブロック位置と右眼用映像のブロック位置をそれぞれ示した図である。
【図9B】図9Bは、左眼用映像と右眼用映像で対応するブロックを重ねて描いた図である。
【図10】図10は、左眼用映像のブロック内の特徴点と、右眼用映像のブロック内の対応する画素位置を、近景の場合及び遠景の場合それぞれについて示した図である。
【図11】図11は、右眼用映像の帯域成分を抽出するための機能的構成を例示した図である。
【図12】図12は、奥行き計算部102において奥行き量を統計処理するための機能的構成を例示した図である。
【図13】図13は、映像に含まれるブロックを例示した図である。
【図14】図14は、近景と遠景との奥行き量の差に応じて与える輪郭・精細感強調の重みを例示した図である。
【図15】図15は、近景と遠景との帯域成分の差に応じて与える輪郭・精細感強調の重みを例示した図である。
【図16】図16は、バンドパス成分とハイパス成分の各々について輪郭・精細感強調の強度に対して時間軸方向にローパス・フィルター処理する構成例を示した図である。
【図17】図17は、フレーム間変動を検出するための機能的構成を例示した図である。
【図18】図18は、輪郭・精細感強調処理部103の内部構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本明細書で開示する技術の実施形態について詳細に説明する。
【0031】
図1には、本明細書で開示する技術に係る映像信号処理装置100の構成を模式的に示している。図示の映像信号処理装置100は、立体映像を入力する映像入力部101と、入力した立体映像の奥行きを計算する奥行き計算部102と、奥行き計算の結果に基づいて立体映像の輪郭・精細感強調の強度を調整する輪郭・精細感強調処理部103と、輪郭・精細感強調の処理を行なった後に立体映像を出力する映像出力部104で構成される。
【0032】
映像入力部101に入力される立体映像は、例えばフレーム・パッキング方式の映像である。フレーム・パッキングとは、1垂直帰線期間中に同時刻の左眼用映像及び右眼用映像の2フレーム分の映像を含める、立体映像信号の伝送フォーマットである。
【0033】
奥行き計算部102は、立体映像の奥行き計算を行なう。奥行き計算部102の計算結果として、映像の含まれる近景部分と遠景部分それぞれの奥行き量、近景部分と遠景部分のどの辺にフォーカスがあっているか、などの情報を算出して、奥行きに応じた輪郭・精細感強調の強度を得るようになっている。
【0034】
輪郭・精細感強調処理部103は、奥行き計算部102による奥行き計算の結果に基づいて立体映像の輪郭・精細感強調の強度を変えて、入力した立体映像の画質調整を行なう。図2には、輪郭・精細感強調処理部103が奥行き計算の結果に基づいて行なう処理を概略的に示している。
【0035】
奥行き計算部102による奥行き計算の結果として、近景部分にフォーカスが合っていることが分かったときには、輪郭・精細感強調処理部103で適用する輪郭・精細感強調の強度を高める。逆に、遠景部分にフォーカスが合っていることが分かったときには、輪郭・精細感強調処理部103は、輪郭・精細感強調の強度を低くする。また、パンフォーカスのように被写体深度が深い映像の場合には、輪郭・精細感強調処理部103で適用する輪郭・精細感強調の強度をやや低くする(図2Aを参照のこと)。
【0036】
また、奥行き計算部102は、奥行き計算結果から、入力画像の近景と遠景との奥行き量の差が大きいときには、輪郭・精細感強調処理部103で適用する輪郭・精細感強調の強度を大きくする。逆に、入力画像の近景と遠景との奥行き量の差が小さいときには、輪郭・精細感強調処理部103で適用する輪郭・精細感強調の強度を低くする(図2Bを参照のこと)。
【0037】
最終的には、フォーカス位置に基づく輪郭・精細感強調の強度と、奥行き量に基づく輪郭・精細感強調の強度の積で、輪郭・精細感強調処理部103で適用する最終的な輪郭・精細感強調の強度を決定する。
【0038】
なお、輪郭・精細感強調処理部103は、1フレームの映像に含まれる近景部分と遠景部分の各々に対して輪郭・精細感強調の強度を変えるのではなく、1フレームの映像全体について一様の強度で輪郭・精細感強調を行なうようになっている。したがって、奥行き計算部102による奥行き計算に誤検出があったとしても、不自然な画質になりにくいという利点がある。
【0039】
上述したように、映像入力部101には、フレーム・パッキング方式の立体映像が入力される。すなわち、映像入力部101には、同時刻の左眼用映像、右眼用映像の順で入力される。したがって、奥行き計算部102は、先に入力される左眼用映像から特徴量を抽出した後に、続いて入力される同時刻の右眼用映像から特徴量を抽出する。そして、左眼用映像の特徴量と右眼用映像の特徴量を比較することによって、映像の奥行きに関する情報を検出する。
【0040】
図3には、奥行き計算部102において左眼用映像を処理するための機能的構成を示している。図示の例では、奥行き計算部102は、左眼用映像の処理のために、特徴量算出部301と、最大特徴量検出部302と、特徴点データ保存部303を備えている。
【0041】
図4には、特徴量算出部301が行なう処理を図解している。特徴量算出部301は、入力された左眼用映像について、垂直方向と水平方向にそれぞれ9タップのバンドパス・フィルター(BPF)処理を行なう。ここで、映像から特徴量を抽出するために用いられるバンドパス・フィルターの周波数特性の一例を図5に示しておく。ここで、水平方向のバンドパス成分をfxlとし、垂直方向のバンドパス成分をfylとする。そして、特徴量算出部301は、画素毎に水平方向のバンドパス成分fxlと垂直方向のバンドパス成分fylの積を計算し、画素毎の計算結果fxl×fylを各画素の特徴量とする。
【0042】
次いで、図6に示すように、入力された左眼用映像中に複数のブロックを設定すると、最大特徴量検出部302は、各ブロック内で特徴量fxl×fylが最大になる画素位置を検出する。
【0043】
各ブロックの中で特徴量fxl×fylが最大になる画素位置は、ブロックの特徴点として扱う。輪郭などが特徴点になり易い。特徴量の計算にバンドパス・フィルターを使っているので、ノイズは特徴点になり難い。
【0044】
そして、特徴点データ保存部303は、各ブロックの特徴点における特徴量を、同時刻の左眼用映像とのマッチング用のデータすなわち特徴点データとして保存する。
【0045】
特徴点データ保存部303は、左眼用映像の各ブロックの特徴点に対して、右眼用映像とのマッチング用に、例えば以下に示す8個の特徴点データを保存しておく。図7には、これらの特徴点データを図解している。
【0046】
(1)垂直方向のバンドパス成分(fyl
(2)水平方向のバンドパス成分(fxl
(3)左上(8×4)画素の平均値(mal
(4)右上(8×4)画素の平均値(mbl
(5)左下(8×4)画素の平均値(mcl
(6)右下(8×4)画素の平均値(mdl
(7)特徴点のブロック内のy座標(dyl
(8)特徴点のブロック内のx座標(dxl
【0047】
図3に示したような左眼用映像に対して特徴点データを保存する処理は、フレーム・メモリーを必要としない。8ラインのライン・メモリーと特徴点データ保存用のメモリーがあればよい。
【0048】
また、図8には、奥行き計算部102において、左眼用映像と同時刻の右眼用映像を処理するための機能的構成を示している。図示の例では、奥行き計算部102は、右眼用映像の処理のために、特徴量算出部801と、特徴点データ比較評価部802と、最小評価値検出部803と、奥行き量及び帯域成分保存部804を備えている。
【0049】
特徴量算出部801は、各ブロックで全画素位置をスキャンして、各画素位置において、以下の7つの特徴点データを算出する。
【0050】
(1)垂直方向のバンドパス成分(fyr
(2)水平方向のバンドパス成分(fxr
(3)左上(8×4)画素の平均値(mar
(4)右上(8×4)画素の平均値(mbr
(5)左下(8×4)画素の平均値(mcr
(6)右下(8×4)画素の平均値(mdr
(7)特徴点のブロック内のy座標(dyr
【0051】
特徴点データ比較評価部802は、右眼用映像の各ブロック内の各画素位置における特徴点データを、左眼用映像の対応するブロックの特徴点について保存しておいた特徴点データと比較評価する。具体的には、特徴点データ比較評価部802は、下式(1)に示すように、右眼用映像の各ブロック内の各画素位置における特徴点データと、左眼用映像の対応するブロックの特徴点における特徴点データとの重み付き差分絶対和を算出して、算出結果を右眼用映像の各画素位置の評価値とする。
【0052】
【数1】

【0053】
特徴のない平坦部分などに対してマッチングを行なうのは難しい画像処理となる。このため、特徴のない映像部分では、奥行き検出の精度が下がることが懸念される。これに対し、本明細書で開示する技術では、特徴点データ比較部802において、特徴点だけに対して上記のようなステレオ・マッチングを行なうようにしているので、奥行き検出の精度がよい。
【0054】
最小評価値検出部803は、右眼用映像の各ブロックにおいて、上記のように求めた評価値が最小になる画素位置を、左眼用映像の対応するブロックの特徴点と一致する画素位置として検出する。
【0055】
立体映像の奥行き量は、視差量、すなわち左眼用映像の特徴点のx座標(dxl)と、この特徴点と一致する右眼用映像の画素位置のx座標(dxr)の差分である。奥行き量及び帯域成分保存部804は、右眼用映像の各ブロックにおいて最小評価値として検出された画素位置における奥行き量と帯域成分を保存する。
【0056】
但し、評価値に基づいて検出された画素位置がブロック内では左眼用映像の特徴点と最も一致しているということができても、映像全体でみるとあまり一致していない可能性もある。そこで、ブロック内で検出された最小評価値がある閾値以上である(左眼用映像のブロックの特徴点と十分一致する画素位置が右眼用映像のブロックに存在しない)場合、又は、右眼用映像の特徴量がある閾値以下である(特徴がなく、そもそもマッチングに不向きなブロックである)場合には、そのブロックから求められる奥行き量や帯域成分は使用しないようにする。
【0057】
実際には、右眼用映像のブロック内で検出された最小評価値がある閾値以下であり、且つ、右眼用映像の特徴量がある閾値以上である場合には、そのブロックに対しては、求めたデータ(奥行き量と帯域成分)が有効であることを示す有効フラグをセットする。有効フラグが立っているブロックについて保存されている奥行き量や帯域成分は、後段の輪郭・精細感強調処理において使われる。逆に、有効フラグが立っていない場合、そのブロックについて保存されている奥行き量や帯域成分は使われない。
【0058】
なお、図9Aには、左眼用映像のブロック位置と右眼用映像のブロック位置をそれぞれ示している。また、図9Bには、左眼用映像と右眼用映像で対応するブロックを重ねて描いている。上述したように、まず左眼用映像のブロック内で特徴点を抽出してから、右眼用映像の対応するブロック内でその特徴点に最もマッチする画素位置を探索する。図9Bに示すように、左眼用映像のブロックはサイズが小さく右眼用映像のブロックの内側にあるので、特徴点と一致する画素位置を探索する際に、ブロックを跨いで探索する必要がない。なお、左眼用映像のブロックに対する右眼用映像のブロックの左右の各端部のマージンは、立体映像の最大の視差量以上に設定するようにする。また、上下の各端部のマージンは、立体映像の撮影時のカメラ位置のずれを考慮して設定するようにする。
【0059】
立体映像の奥行き量は、視差量、すなわち左眼用映像の特徴点のx座標(dxl)と、この特徴点と一致する右眼用映像の画素位置のx座標(dxr)の差分である。図10には、左眼用映像のブロック内の特徴点と、右眼用映像のブロック内の対応する画素位置を、近景の場合及び遠景の場合それぞれについて図解している。同図から分かるように、近景では奥行き量dxl−dxrは大きくなり、遠景では奥行き量dxl−dxrは小さくなる。奥行き量及び帯域成分保存部804は、ブロック単位で奥行き量を算出して保存する。後述するが、統計処理により奥行き量と帯域成分の情報を近景と遠景に分離するようになっている。
【0060】
また、図11には、奥行き量及び帯域成分保存部804において右眼用映像の帯域成分を抽出するための機能的構成を例示している。
【0061】
垂直バンドパス・フィルター1101は、右眼用映像を入力して、垂直方向にバンドパス・フィルター処理を行なう。また、水平バンドパス・フィルター1102は、右眼用映像を入力して水平方向にバンドパス・フィルター処理を行なう。そして、各絶対値取得部1103、1104はそれぞれ垂直方向のバンドパス成分、水平方向のバンドパス成分の絶対値をとり、これらを加算して、右眼用映像のバンドパス成分(中域成分)を得ることができる。
【0062】
一方、垂直ハイパス・フィルター1111は、右眼用映像を入力して、垂直方向にハイパス・フィルター処理を行なう。また、水平バンドパス・フィルター1112は、右眼用映像を入力して水平方向にハイパス・フィルター処理を行なう。そして、各絶対値取得部1113、1114はそれぞれ垂直方向のハイパス成分、水平方向のハイパス成分の絶対値をとり、これらを加算して、右眼用映像のハイパス成分(高域成分)を得ることができる。
【0063】
奥行き量及び帯域成分保存部804は、右眼用映像の各ブロックにおいて、評価値が最小、すなわち左眼用映像の対応するブロックの特徴点と一致する画素位置で上記のように抽出されるバンドパス成分並びにハイパス成分を保存する。但し、帯域成分をブロック単位で平均化して保存するようにしてもよい。
【0064】
なお、図11に示した、奥行き量及び帯域成分保存部804で使用されるフィルターは、特徴量の算出に使用されるフィルターとは別であるが、輪郭・精細感強調処理で使われるフィルターと共通であってもよい。
【0065】
図12には、奥行き計算部102において、上記のようにして保存した奥行き量と帯域成分を統計処理するための機能的構成を例示している。図示の例では、奥行き計算部102は、奥行き量平均化部1201と、近景奥行き量平均化部1202と、近景帯域成分平均化部1203と、遠景奥行き量平均化部1204と、遠景帯域成分平均化部1205を備えている。
【0066】
例えば図13に示すように映像(右眼用映像)に7×8=56個のブロックがある場合、上記の奥行き量の計算により、1フレーム当たり56個の奥行き量が求められ、保存されていることになる。奥行き量平均化部1201は、有効フラグがセットされているブロック(すなわち、最小評価値がある閾値以下で、且つ、右眼用映像の特徴量がある閾値以上のブロック)の奥行き量を平均化する。
【0067】
近景奥行き量平均化部1202は、奥行き量平均化部1201で算出した平均の奥行き量より大きい奥行き量を近景の奥行き量として、これらの奥行き量を平均化する。但し、有効フラグがセットされているブロックのみを処理対象とする。
【0068】
近景帯域成分平均化部1203は、近景の奥行き量を持つ特徴点に対して、その特徴点の帯域成分を平均化する。 但し、有効フラグがセットされているブロック(特徴点)のみを処理対象とする。
【0069】
遠景奥行き量平均化部1204は、奥行き量平均化部1201で算出した平均の奥行き量より小さい奥行き量を遠景の奥行き量として、これらの奥行き量を平均化する。但し、有効フラグがセットされているブロックのみを処理対象とする。
【0070】
遠景帯域成分平均化部1205は、遠景の奥行き量を持つ特徴点に対して、その特徴点の帯域成分を平均化する。 但し、有効フラグがセットされているブロック(特徴点)のみを処理対象とする。
【0071】
なお、図11を参照しながら説明したように、ブロック毎に保存される帯域成分には、バンドパス成分とハイパス成分の2つの帯域成分がある。したがって、近景帯域成分平均化部1203並びに遠景帯域成分平均化部1205はそれぞれ、バンドパス成分とハイパス成分の各々について平均化処理を行なうものとする。
【0072】
近景奥行き量平均化部1202から出力される近景の奥行き量の平均値を、遠景奥行き量平均化部1204から出力される遠景の奥行き量の平均値で引き算することにより、入力画像の近景と遠景との奥行き量の差を求めることができる。図14には、近景と遠景との奥行き量の差に応じて与える輪郭・精細感強調の重みを例示している。図14に示すように、奥行き量の差が大きいときにより大きな重みを与えるようにすることで、図2Bに示したような、入力画像の近景と遠景との奥行き量の差が大きいときには輪郭・精細感強調の強度を大きくし、逆に、入力画像の近景と遠景との奥行き量の差が小さいときには輪郭・精細感強調の強度を低くする、という輪郭・精細感強調処理が実現する。奥行き量の差に応じた重みの付与は、奥行き計算部102又は輪郭・精細感強調処理部103のいずれで行なうようにしてもよい。
【0073】
また、近景帯域成分平均化部1203から出力される近景の帯域成分の平均値を、遠景帯域成分平均化部1205から出力される遠景の帯域成分の平均値で引き算して、帯域成分の差を求めることにより、入力画像の近景部分と遠景部分の度面にフォーカスが合っているかを判定することができる。帯域成分の差が大きいときには、近景部分にフォーカスがあっており、帯域成分の差が小さいときには、遠景部分にフォーカスが合っている、ということができる。図15には、近景と遠景との帯域成分の差に応じて与える輪郭・精細感強調の重みを例示している。図15に示すように、帯域成分の差が大きいときにより大きな重みを与えるようにすることで、図2Aに示したような、近景部分にフォーカスが合っているときには輪郭・精細感強調の強度を高め、逆に、遠景部分にフォーカスが合っているときには輪郭・精細感強調の強度を低くし、また、パンフォーカスのように被写体深度が深い映像の場合には輪郭・精細感強調の強度をやや低くするという輪郭・精細感強調処理が実現する。帯域成分の差に応じた重みの付与は、奥行き計算部102又は輪郭・精細感強調処理部103のいずれで行なうようにしてもよい。
【0074】
なお、帯域成分にはバンドパス成分とハイパス成分の2つの帯域成分があるので、上記の帯域成分の差に応じた重みは帯域成分毎に存在するものとする。
【0075】
図14に示したようにして得られた奥行き量に対する重みと、図15に示したようにして得られた帯域成分に対する重みを混合して、輪郭・精細感強調の強度を得ることができる。この輪郭・精細感強調の強度は、バンドパス成分とハイパス成分の成分毎に求められる。また、同一シーン内で輪郭・精細感強調の強度が激しく変化するのを防ぐため、輪郭・精細感強調の強度に対して時間軸方向にローパス・フィルター処理する。
【0076】
図16には、バンドパス成分とハイパス成分の各々について輪郭・精細感強調の強度に対して時間軸方向にローパス・フィルター処理する構成例を示している。例えば、IIR(Infinite Impulse Response:無限パルス応答)型のローパス・フィルターを適用することができる。
【0077】
但し、フレーム間変動に応じて、各ローパス・フィルターのフィルター係数を変更するようにする。フレーム間変動を検出するための機能的構成を図17に例示しておく。ヒストグラム作成部1701は、入力映像のフレーム毎に、輝度の画素数分布のヒストグラムを作成する。差分絶対和計算部1702は、前フレームで作成したヒストグラムと現フレームのヒストグラムの差分の絶対和を計算する。この差分絶対和に基づいてフレーム間変動を判別することができる。
【0078】
例えば、動きが激しいシーンでは、フレーム間変動が大きくなる。このような場合、時定数が小さいフィルター係数にして、輪郭・精細感強調の強度を激しく変化させるようにする。この場合、シーンの動きが激しいので、輪郭・精細感強調の強度が激しく変化しても自然である。
【0079】
一方、動きが穏やかなシーンでは、フレーム間変動が小さくなる。このような場合、時定数が大きなフィルター係数にして、輪郭・精細感強調の強度を激しく変化させないようにする。これは、奥行き計算が誤検出したとしても、瞬間的な誤検出であれば、ローパス・フィルター処理によって誤検出の結果が輪郭・精細感強調に反映されにくくなる。
【0080】
図18には、輪郭・精細感強調処理部103の内部構成例を示している。
【0081】
垂直バンドパス・フィルター1801は、立体映像の垂直方向のバンドパス成分を抽出し、後段の振幅調整部1805は、抽出した垂直方向のバンドパス成分の振幅を調整する。また、水平バンドパス・フィルター1802は、立体映像の水平方向のバンドパス成分を抽出し、後段の振幅調整部1806は、抽出した水平方向のバンドパス成分の振幅を調整する。振幅調整した後の垂直方向のバンドパス成分と水平方向のバンドパス成分は加算される。さらに、図16に示した処理に従って奥行き計算により得られた輪郭・精細感強調の強度で強度をバンドパス成分に与える。
【0082】
垂直ハイパス・フィルター1803は、立体映像の垂直方向のハイパス成分を抽出し、後段の振幅調整部1807は、抽出した垂直方向のハイパス成分の振幅を調整する。また、水平ハイパス・フィルター1804は、立体映像の水平方向のハイパス成分を抽出し、後段の振幅調整部1808は、抽出した水平方向のハイパス成分の振幅を調整する。振幅調整した後の垂直方向のハイパス成分と水平方向のハイパス成分は加算される。さらに、図16に示した処理に従って奥行き計算により得られた輪郭・精細感強調の強度で強度をハイパス成分に与える。
【0083】
そして、奥行き計算により得られた輪郭・精細感強調の強度で強度がそれぞれ与えられたバンドパス成分とハイパス成分を加算し、この結果を入力信号に加算する。
【0084】
要するに本明細書で開示する技術に係る映像信号処理装置100は、図2Aに示したように、立体映像のフォーカス位置や被写体深度に応じて、輪郭・精細感強調の強度を変えるように構成されているのである。
【0085】
また、映像信号処理装置100は、図2Bに示したように、立体映像の奥行き量に応じて、輪郭・精細感強調の強度を変えるように構成されているということができる。
【0086】
また、映像信号処理装置100は、図12に示したように、ブロック単位の奥行き量を近景と遠景に分離して、図14に示したように、近景の奥行き量と遠景の奥行き量の差から、輪郭・精細感強調の強度を算出するように構成されているということができる。
【0087】
また、映像信号処理装置100は、図12に示したように、ブロック単位の奥行き量を近景と遠景に分離して、図15に示したように、近景の帯域成分と遠景の帯域成分の差から、輪郭・精細感強調の強度を算出するように構成されているということができる。
【0088】
また、映像信号処理装置100は、奥行き量の計算の際に、左眼用映像と右眼用映像をブロック単位でマッチングするが、図9Bに示したように、右眼用映像のブロックのサイズに対して左眼用映像のブロックのサイズを小さくすることにより、特徴点の探索を簡略化するように構成されているということができる。
【0089】
なお、本明細書の開示の技術は、以下のような構成をとることも可能である。
(1)立体映像を入力する映像入力部と、入力した立体映像の奥行き計算を行なう奥行き計算部と、前記奥行き計算部による奥行き計算結果に基づいて、立体映像の輪郭・精細感強調の強度を変えて画質調整を行なう輪郭・精細感強調処理部と、を具備する映像信号処理装置。
(2)前記輪郭・精細感強調処理部は、前記奥行き計算部による奥行き計算の結果から判定されるフォーカス位置に基づいて、輪郭・精細感強調の強度を決定する、上記(1)に記載の映像信号処理装置。
(3)前記輪郭・精細感強調処理部は、前記奥行き計算部による奥行き計算結果として立体映像の近景部分にフォーカスが合っていることが分かったときには、輪郭・精細感強調の強度を高め、前記奥行き計算結果から立体映像の遠景部分にフォーカスが合っていることが分かったときには輪郭・精細感強調の強度を低くし、前記奥行き計算結果として立体映像の被写体深度が深い映像であることが分かったときには輪郭・精細感強調の強度をやや低くする、上記(1)に記載の映像信号処理装置。
(4)前記輪郭・精細感強調処理部は、前記奥行き計算部による奥行き計算結果として立体映像の近景と遠景との奥行き量の差が大きいことが分かったときには輪郭・精細感強調の強度を高くし、前記奥行き計算結果から立体映像の近景と遠景との奥行き量の差が小さいことが分かったときには輪郭・精細感強調の強度を低くする、上記(1)に記載の映像信号処理装置。
(5)前記輪郭・精細感強調処理部は、1フレームの映像全体について一様の強度で輪郭・精細感強調を行なう、上記(1)に記載の映像信号処理装置。
(6)前記映像入力部は、同時刻の左眼用映像及び右眼用映像を時間方向で多重化する方式の立体映像を入力し、前記奥行き計算部は、左眼用映像から特徴量を抽出した後に、同時刻の右眼用映像から特徴量を抽出し、左眼用映像の特徴量と右眼用映像の特徴量を比較することによって、立体映像の奥行きを計算する、上記(1)に記載の映像信号処理装置。
(7)前記奥行き計算部は、左眼用映像の垂直方向及び水平方向に所定タップ数のバンドパス・フィルター処理をそれぞれ行ない、垂直方向のバンドパス成分と水平方向のバンドパス成分の積に基づいて各画素位置の特徴量を求め、各ブロック内で特徴量が最大となる画素位置をブロックの特徴点として検出し、各ブロックの特徴点の特徴量を保存し、右眼用映像の各ブロックの全画素位置で上記と同じ特徴量を算出し、左眼用映像の対応するブロックの特徴点において保存した特徴量と比較して、ブロック毎に左眼用映像の特徴点と一致する右眼用画像の画素位置を検出し、各ブロックにおいて左眼用映像の特徴点と一致する右眼用画像の画素位置における奥行き量と帯域成分を保存する、上記(6)に記載の映像信号処理装置。
(8)前記奥行き計算部は、左眼用映像について、各ブロックの特徴点について、垂直方向のバンドパス成分、水平方向のバンドパス成分、左上画素の平均値、右上画素の平均値、左下画素の平均値、右下画素の平均値、特徴点のブロック内のy座標、特徴点のブロック内のx座標を特徴点データとして保存し、右眼用映像について、各ブロックの全画素位置で、垂直方向のバンドパス成分、水平方向のバンドパス成分、左上画素の平均値、右上画素の平均値、左下画素の平均値、右下画素の平均値、特徴点のブロック内のy座標を特徴点データとして算出し、各画素位置における特徴点データと左眼用映像の対応する特徴点における特徴点データとの重み付き差分絶対和をとって各画素位置の評価値とし、右眼用映像の各ブロックで評価値が最小になる画素位置を左眼用映像の特徴点と一致する画素位置を求め、各ブロックにおいて左眼用映像の特徴点と一致する右眼用画像の画素位置における奥行き量と帯域成分を保存する、上記(6)に記載の映像信号処理装置。
(9)前記奥行き計算部は、各ブロックを奥行き量に基づいて近景と遠景に分類し、近景のブロックについて奥行き量と帯域成分を平均化するとともに、遠景のブロックについて奥行き量と帯域成分を平均化する、上記(7)又は(8)のいずれかに記載の映像信号処理装置。
(10)前記奥行き計算部は、近景のブロックの奥行き量の平均値を遠景のブロックの奥行き量の平均値を引き算して立体映像の近景と遠景との奥行き量の差を求め、立体映像の近景と遠景との奥行き量の差が大きいときには輪郭・精細感強調の強度に対する重みを大きくし、立体映像の近景と遠景との奥行き量の差が小さいときには輪郭・精細感強調の強度に対する重みを小さくする、上記(9)に記載の映像信号処理装置。
(11)前記奥行き計算部は、近景のブロックの帯域成分の平均値を遠景のブロックの帯域成分の平均値を引き算して立体映像の近景と遠景との帯域成分の差を求め、前立体映像の近景と遠景との帯域成分の差が大きいときには輪郭・精細感強調の強度に対する重みを大きくし、立体映像の近景と遠景との帯域成分の差が小さいときには輪郭・精細感強調の強度に対する重みを小さくする、上記(9)に記載の映像信号処理装置。
(12)前記奥行き計算部は、平均化された奥行き量に基づいて付与される重みと、平均化された帯域成分に基づいて付与される重みを組み合わせた後、ローパス・フィルター処理して輪郭・精細感強調の強度を求める、上記(9)に記載の映像信号処理装置。
(13)入力映像のフレーム間変動を検出するフレーム間変動検出部をさらに備え、前記奥行き計算部は、フレーム間変動が大きいときには、時定数が小さいフィルター係数にして前記ローパス・フィルター処理を行ない、フレーム間変動が小さいときには、時定数が大きいフィルター係数にして前記ローパス・フィルター処理を行なう、上記(12)に記載の映像信号処理装置。
(14)右眼用映像のブロックよりも左眼用映像のブロックのサイズを小さくする、上記(7)又は(8)のいずれかに記載の映像信号処理装置。
(15)立体映像を入力する映像入力ステップと、入力した立体映像の奥行き計算を行なう奥行き計算ステップと、前記奥行き計算ステップにおける奥行き計算結果に基づいて、立体映像の輪郭・精細感強調の強度を変えて画質調整を行なう輪郭・精細感強調処理ステップと、を有する映像信号処理方法。
(16)立体映像を入力する映像入力部、入力した立体映像の奥行き計算を行なう奥行き計算部、前記奥行き計算部による奥行き計算結果に基づいて、立体映像の輪郭・精細感強調の強度を変えて画質調整を行なう輪郭・精細感強調処理部、としてコンピューターを機能させるようにコンピューター可読形式で記述されたコンピューター・プログラム。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本明細書で開示する技術について詳細に説明してきた。しかしながら、本明細書で開示する技術の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0091】
本明細書で説明した実施形態における輪郭・精細感強調の処理は、ハードウェア、ソフトウェアのいずれにより行なうこともできる。当該処理をソフトウェアによって実現する場合には、ソフトウェアにおける処理手順をコンピューター可読形式に記述したコンピューター・プログラムを所定のコンピューターにインストールして実行すればよい。
【0092】
要するに、例示という形態で本技術を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本技術の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【符号の説明】
【0093】
100…映像信号処理装置
101…映像入力部、102…奥行き計算部
103…輪郭・精細感強調処理部、104…映像出力部
301…特徴量算出部、302…最大特徴量検出部
303…特徴点データ保存部
801…特徴量算出部、802…特徴点データ比較部
803…最小評価値検出部、804…奥行き量及び帯域成分保存部
1101…垂直バンドパス・フィルター
1102…水平バンドパス・フィルター
1103…絶対値取得部、1104…絶対値取得部
1111…垂直ハイパス・フィルター
1112…水平ハイパス・フィルター
1113…絶対値取得部、1114…絶対値取得部
1201…奥行き量平均化部
1202…近景奥行き量平均化部、1203…近景帯域成分平均化部
1204…遠景奥行き量平均化部、1205…遠景帯域成分平均化部
1701…ヒストグラム作成部、1702…差分絶対を計算部
1801…垂直バンドパス・フィルター
1802…水平バンドパス・フィルター
1803…垂直ハイパス・フィルター
1804…水平ハイパス・フィルター
1805〜1808…振幅調整部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体映像を入力する映像入力部と、
入力した立体映像の奥行き計算を行なう奥行き計算部と、
前記奥行き計算部による奥行き計算結果に基づいて、立体映像の輪郭・精細感強調の強度を変えて画質調整を行なう輪郭・精細感強調処理部と、
を具備する映像信号処理装置。
【請求項2】
前記輪郭・精細感強調処理部は、前記奥行き計算部による奥行き計算の結果から判定されるフォーカス位置に基づいて、輪郭・精細感強調の強度を決定する、
請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項3】
前記輪郭・精細感強調処理部は、前記奥行き計算部による奥行き計算結果として立体映像の近景部分にフォーカスが合っていることが分かったときには、輪郭・精細感強調の強度を高め、前記奥行き計算結果から立体映像の遠景部分にフォーカスが合っていることが分かったときには輪郭・精細感強調の強度を低くし、前記奥行き計算結果として立体映像の被写体深度が深い映像であることが分かったときには輪郭・精細感強調の強度をやや低くする、
請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項4】
前記輪郭・精細感強調処理部は、前記奥行き計算部による奥行き計算結果として立体映像の近景と遠景との奥行き量の差が大きいことが分かったときには輪郭・精細感強調の強度を高くし、前記奥行き計算結果から立体映像の近景と遠景との奥行き量の差が小さいことが分かったときには輪郭・精細感強調の強度を低くする、
請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項5】
前記輪郭・精細感強調処理部は、1フレームの映像全体について一様の強度で輪郭・精細感強調を行なう、
請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項6】
前記映像入力部は、同時刻の左眼用映像及び右眼用映像を時間方向で多重化する方式の立体映像を入力し、
前記奥行き計算部は、左眼用映像から特徴量を抽出した後に、同時刻の右眼用映像から特徴量を抽出し、左眼用映像の特徴量と右眼用映像の特徴量を比較することによって、立体映像の奥行きを計算する、
請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項7】
前記奥行き計算部は、
左眼用映像の垂直方向及び水平方向に所定タップ数のバンドパス・フィルター処理をそれぞれ行ない、垂直方向のバンドパス成分と水平方向のバンドパス成分の積に基づいて各画素位置の特徴量を求め、各ブロック内で特徴量が最大となる画素位置をブロックの特徴点として検出し、各ブロックの特徴点の特徴量を保存し、
右眼用映像の各ブロックの全画素位置で上記と同じ特徴量を算出し、左眼用映像の対応するブロックの特徴点において保存した特徴量と比較して、ブロック毎に左眼用映像の特徴点と一致する右眼用画像の画素位置を検出し、
各ブロックにおいて左眼用映像の特徴点と一致する右眼用画像の画素位置における奥行き量と帯域成分を保存する、
請求項6に記載の映像信号処理装置。
【請求項8】
前記奥行き計算部は、
左眼用映像について、各ブロックの特徴点について、垂直方向のバンドパス成分、水平方向のバンドパス成分、左上画素の平均値、右上画素の平均値、左下画素の平均値、右下画素の平均値、特徴点のブロック内のy座標、特徴点のブロック内のx座標を特徴点データとして保存し、
右眼用映像について、各ブロックの全画素位置で、垂直方向のバンドパス成分、水平方向のバンドパス成分、左上画素の平均値、右上画素の平均値、左下画素の平均値、右下画素の平均値、特徴点のブロック内のy座標を特徴点データとして算出し、各画素位置における特徴点データと左眼用映像の対応する特徴点における特徴点データとの重み付き差分絶対和をとって各画素位置の評価値とし、
右眼用映像の各ブロックで評価値が最小になる画素位置を左眼用映像の特徴点と一致する画素位置を求め、
各ブロックにおいて左眼用映像の特徴点と一致する右眼用画像の画素位置における奥行き量と帯域成分を保存する、
請求項6に記載の映像信号処理装置。
【請求項9】
前記奥行き計算部は、各ブロックを奥行き量に基づいて近景と遠景に分類し、近景のブロックについて奥行き量と帯域成分を平均化するとともに、遠景のブロックについて奥行き量と帯域成分を平均化する、
請求項7又は8のいずれかに記載の映像信号処理装置。
【請求項10】
前記奥行き計算部は、
近景のブロックの奥行き量の平均値を遠景のブロックの奥行き量の平均値を引き算して立体映像の近景と遠景との奥行き量の差を求め、
立体映像の近景と遠景との奥行き量の差が大きいときには輪郭・精細感強調の強度に対する重みを大きくし、立体映像の近景と遠景との奥行き量の差が小さいときには輪郭・精細感強調の強度に対する重みを小さくする、
請求項9に記載の映像信号処理装置。
【請求項11】
前記奥行き計算部は、
近景のブロックの帯域成分の平均値を遠景のブロックの帯域成分の平均値を引き算して立体映像の近景と遠景との帯域成分の差を求め、
前立体映像の近景と遠景との帯域成分の差が大きいときには輪郭・精細感強調の強度に対する重みを大きくし、立体映像の近景と遠景との帯域成分の差が小さいときには輪郭・精細感強調の強度に対する重みを小さくする、
請求項9に記載の映像信号処理装置。
【請求項12】
前記奥行き計算部は、平均化された奥行き量に基づいて付与される重みと、平均化された帯域成分に基づいて付与される重みを組み合わせた後、ローパス・フィルター処理して輪郭・精細感強調の強度を求める、
請求項9に記載の映像信号処理装置。
【請求項13】
入力映像のフレーム間変動を検出するフレーム間変動検出部をさらに備え、
前記奥行き計算部は、フレーム間変動が大きいときには、時定数が小さいフィルター係数にして前記ローパス・フィルター処理を行ない、フレーム間変動が小さいときには、時定数が大きいフィルター係数にして前記ローパス・フィルター処理を行なう、
請求項12に記載の映像信号処理装置。
【請求項14】
右眼用映像のブロックよりも左眼用映像のブロックのサイズを小さくする、
請求項7又は8のいずれかに記載の映像信号処理装置。
【請求項15】
立体映像を入力する映像入力ステップと、
入力した立体映像の奥行き計算を行なう奥行き計算ステップと、
前記奥行き計算ステップにおける奥行き計算結果に基づいて、立体映像の輪郭・精細感強調の強度を変えて画質調整を行なう輪郭・精細感強調処理ステップと、
を有する映像信号処理方法。
【請求項16】
立体映像を入力する映像入力部、
入力した立体映像の奥行き計算を行なう奥行き計算部、
前記奥行き計算部による奥行き計算結果に基づいて、立体映像の輪郭・精細感強調の強度を変えて画質調整を行なう輪郭・精細感強調処理部、
としてコンピューターを機能させるようにコンピューター可読形式で記述されたコンピューター・プログラム。


【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図8】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図2A】
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【図2B】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図9A】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−46082(P2013−46082A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180171(P2011−180171)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】