説明

映像表示システム

【課題】 大型のスクリーンを用いて広視野の映像を表示する場合に、簡単な構成で特定の人物のみに鮮明な映像を提示することができる映像表示システムを提供する。
【解決手段】 映像表示システムは、体験者の視線方向に大型の再帰性反射スクリーン5を配置し、予め設定された体験者に映像の視認を可能とさせる映像体験領域に体験者の眼位置が存在する場合に、当該体験者の顔面と正対する光入射面を有するハーフミラー4を設ける。そして、所定の画角の映像光L1が映像光出射部から出射され、ハーフミラー4の光入射面に対して所定の入射角度で入射させる。ここで、プロジェクタ3の所定の画角及び映像光L1の所定の入射角度を、映像体験領域に体験者の眼位置が存在する場合の体験者の再帰性反射スクリーン5に対する視野と、ハーフミラー4から再帰性反射スクリーン5に投影した映像光とを重畳させるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば体験者の各種疑似体験を行わせるために、大型スクリーンに映像を投影することによって当該大型スクリーンに映像を表示する映像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、大型のスクリーンに対して、投写型画像表示ユニットを使用して大画面映像を表示する技術としては、下記の特許文献1に記載されているように、投写型画像表示ユニットを上下方向及び左右方向に複数段積み重ねた構成となっており、複数の映像光を大型スクリーンに投影するものが知られている。
【0003】
これに対し、特定の観察者のみに鮮明な映像を提示する技術としては、下記の特許文献2に記載されたような頭部搭載型のディスプレイ装置や、下記の特許文献3に記載されたような再帰性反射素材を用いたスクリーンを使用した画像表示装置が知られている。
【0004】
特許文献2に記載されたヘッドマウントディスプレイ装置は、外界を表示しながら各種映像を提示するものであって、外界像と映像とを重ね合わせて、使用者の眼に導く光学系を備えている。これによって、ヘッドマウントディスプレイ装置では、使用者のみに映像を提示できるとしている。
【0005】
特許文献3に記載された画像表示装置は、実物体に相当する対象物表面を再帰性反射素材で構成し、当該対象物を視認するときの観察者の視野角と、プロジェクタから対象物への映像光とを共役関係とした状態としている。これにより、観察者の眼位置が所定の範囲にある場合の視野角において、対象物に映像が投影された仮想物体を提示することができ、観察者のみに映像を提示できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−19347号公報
【特許文献2】特開平5−303053号公報
【特許文献3】特開2000−10194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載されたヘッドマウントディスプレイ装置では、光学系等を収容したハウジングを頭部に装着する必要があるので、当該装着のための手間を要する。また、観察者の眼の直前に表示画面が存在するという構造となっているので、観察者が感ずる視野が狭くなる。
【0008】
また、特許文献3に記載された画像表示装置では、対象物の形状に限定した映像を提示するものであって、各種映像を大型のスクリーンに表示させるものではなく、広視野映像提示による没入感の高い疑似体験などを実現できるものではなかった。
【0009】
すなわち、特許文献3に記載された画像表示装置では、例えば疑似体験の体験者のみに映像を提示するに際して、図8のプロジェクタ101を体験者の上方に設置した場合及び図9にプロジェクタ101を体験者の側方に設置した場合を示すように、体験者の目前に、体験者の顔面に対して傾けたハーフミラー102を設けて、当該ハーフミラー102の反射によって映像光L102をスクリーンに投写する必要がある。これによって、プロジェクタ101から出射された映像光L101を体験者の視野と共役な関係とし、体験者のみに映像を提示する。
【0010】
したがって、スクリーンに大型の映像を表示させるためには、体験者の顔面に対して光入射面を傾けた角度でハーフミラー102を配置する構成となっているために、大きな映像を表示しようとするほど、大型のハーフミラー102を使用する必要がある。したがって、このような構成では、体験者とスクリーンとの距離をある程度保持し、且つ体験者の視野の多くで映像を視認させるためには、著しく大きなハーフミラー102を使用する必要があり、ハーフミラー102の強度や設置空間の制限等の問題を始めとして実現することが困難となり、更にはコスト増となってしまう。
【0011】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、大型のスクリーンを用いて広視野の映像を表示する場合に、簡単な構成で特定の人物のみに鮮明な映像を提示することができる映像表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る映像表示システムは、体験者の視線方向にスクリーンを配置して、当該スクリーンに立体映像を表示するために、再帰性反射素材で形成された投影面を備えたスクリーンと、予め設定された前記体験者に立体映像の視認を可能とさせる映像体験領域に前記体験者の眼位置が存在する場合に、当該体験者の顔面と正対する光入射面を有する第1のハーフミラーと、所定の画角の右眼用映像光を出射する右眼用映像光出射部と、所定の画角の左眼用映像光を出射する左眼用映像光出射部とを有し、前記右眼用映像光出射部の光出射口と前記左眼用映像光出射部の光出射口とを上下方向において対向して配置し、且つ、前記右眼用映像光出射部の光出射口と前記左眼用映像光出射部の光出射口とを左右方向において前記体験者の両眼間隔だけ離間して配置した映像光出射手段と、前記右眼用映像光及び前記左眼用映像光を、前記第1のハーフミラーの光入射面に対して所定の入射角度で入射させる光学系とを備え、上述の課題を解決するために、前記映像体験領域に前記体験者の眼位置が存在する場合の前記体験者の前記スクリーンに対する視野と、前記第1のハーフミラーから前記スクリーンに投影した右眼用映像光及び左眼用映像光とを重畳させるように前記所定の画角及び前記所定の入射角度が設定されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る映像表示システムは、映像光出射部からの映像光の所定の画角、及び、体験者の顔面に正対したハーフミラーに対する映像光の所定の入射角度を調整することによって、映像体験領域に体験者の眼位置が存在する場合の体験者のスクリーンに対する視野と、ハーフミラーからスクリーンに投影した映像光とを重畳させているので、大型のスクリーンを用いて広視野の映像を表示する場合に、簡単な構成で特定の人物のみに鮮明な映像を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係る映像表示システムの構成を示す側面から見た図である。
【図2】本発明を適用した第1実施形態に係る映像表示システムの構成を示す他の側面から見た図である。
【図3】本発明を適用した第1実施形態に係る映像表示システムの光学系について説明するための上から見た図である。
【図4】本発明を適用した第2実施形態に係る映像表示システムの構成を示す側面から見た図である。
【図5】本発明を適用した第2実施形態に係る映像表示システムの光学系について説明するための上から見た図である。
【図6】本発明を適用した第3実施形態に係る映像表示システムの構成を示す側面から見た図である。
【図7】本発明を適用した第3実施形態に係る映像表示システムの光学系について説明するための上から見た図である。
【図8】従来において、体験者の視野と映像光とを共役な関係とするための構成について説明するための図である。
【図9】従来において、体験者の視野と映像光とを共役な関係とするための他の構成について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
本発明は、プロジェクタ等の映像出射部から、再帰性反射素材を利用した大型のスクリーンに映像光を投影し、当該スクリーンを視認させることによって、特定の体験者のみに各種映像を提示させる映像表示システムに適用される。
【0017】
[第1実施形態]
本発明を適用した第1実施形態に係る映像表示システムは、図1に示すように、取付部材1、光学系設置部2、映像表示のための光学系であるプロジェクタ3、ハーフミラー4及び大型の再帰性反射スクリーン5を備えて構成されている。この映像表示システムは、例えばマンションの間取りを仮想的に体験させるための映像を、体験者の視線方向に配設された再帰性反射スクリーン5に表示する仮想体験システム等に適用される。
【0018】
この映像表示システムは、所定の映像表示空間である壁面を大きく覆うように再帰性反射スクリーン5を配設する。これにより、体験者の眼位置が予め設定しておいた映像体験領域に含まれた場合に、体験者の視野範囲の多くを映像で覆うような映像を表示する。
【0019】
再帰性反射スクリーン5は、映像光の入射角に拘わらず映像光入射方向に反射する鋭い指向性を有する材料(再帰性反射素材)が表面に形成されている。すなわち、再帰性反射スクリーン5は、ハーフミラー4からの映像光を、当該ハーフミラー4に向かって反射する。
【0020】
なお、再帰性反射素材を用いた場合には再帰性反射スクリーン5の投影面形状による映像光の歪みは基本的には生じず、部屋の壁面や天井面に再帰性反射素材を貼り付けることによって部屋の形状通りに再帰性反射スクリーン5を構成しても良い。これにより、再帰性反射スクリーン5が稜線の折れ曲がり等の影響が少ないことを利用して、映像提示空間を最大限に利用することができる。なお、再帰性反射スクリーン5のハーフミラー4からの映像光が投影される投影面は、入射角度を小さくするように映像光誘導装置1側を凹状の曲面とすることが望ましい。
【0021】
また、映像表示システムは、例えば天井面に取付部材1が設けられ、当該取付部材1につり下げられる形で光学系設置部2が配設されている。この光学系設置部2は、例えば人物の頭部高さ程度に配設される。
【0022】
この光学系設置部2の下面には、体験者の映像体験領域の目前に垂直方向にハーフミラー4が設けられると共に、所定の画角で出射された映像光L1がハーフミラー4の光入射面に向かうようにプロジェクタ3が配設されている。
【0023】
プロジェクタ3は、映像生成処理部6が接続され、当該映像生成処理部6から再帰性反射スクリーン5に表示される映像データが供給される。プロジェクタ3は、例えば小型のDLP(Degital Light Processing)プロジェクタで構成される。このプロジェクタ3は、例えば解像度がXGA(eXtended Graphics Array;横1024ドット×縦768ドット)程度の映像光を出射する。
【0024】
このプロジェクタ3は、通常、光出射口に対して上方向を光軸とした映像光L1を出射するように設計されているので、映像光L1が下方向に向かうような光軸とするように筐体上下面を逆転させて配設されている。これにより、プロジェクタ3は、映像光L1を所定の入射角度で確実にハーフミラー4に入射させる。なお、本来プロジェクタ3の筐体上面を下面にしたことによって、ハーフミラー4で反射した映像光L2の一部がプロジェクタ3等に遮断される映像のケラレが生じる場合には、当該ケラレを回避するようにプロジェクタ3の出射口を下方にするようにプロジェクタ3本体を傾けて配置しても良い。
【0025】
ハーフミラー4は、所定の体験者の映像体験領域から再帰性反射スクリーン5を視認した場合に、当該体験者の再帰性反射スクリーン5に対する視野を含む面積を有する。また、このハーフミラー4は、体験者の顔面と光入射面とが平行するように設けられている。これにより、ハーフミラー4は、体験者と正対する位置関係となっている。
【0026】
ここで、プロジェクタ3及びハーフミラー4は、ハーフミラー4で映像光L1を反射した映像光L2が再帰性反射スクリーン5の投影面全体に亘って投影されるように、プロジェクタ3の映像光L1の光軸及び画角に基づいて、プロジェクタ3の光出射口とハーフミラー4との距離が設定されている。また、プロジェクタ3及びハーフミラー4は、ハーフミラー4を透過した映像光L1が体験者の映像体験領域に重ならないように、プロジェクタ3の映像光L1の光軸及び画角に基づいて、プロジェクタ3の光出射口とハーフミラー4との距離が設定されている。
【0027】
更に、プロジェクタ3及びハーフミラー4は、再帰性反射スクリーン5に投影された映像を体験者に視認させるために、ハーフミラー4で反射した映像光L2と体験者の視野とが光学的に共役な関係となるように、位置関係が設定されている。すなわち、この映像表示システムは、映像体験領域に体験者の眼位置が存在する場合の体験者の再帰性反射スクリーン5に対する視野と、ハーフミラー4から再帰性反射スクリーン5に反射した映像光L2とを重畳させるように、ハーフミラー4に入射する映像光L1の所定の画角又はハーフミラー4に入射する映像光L1の所定の入射角度が設定されている。
【0028】
このような映像表示システムにおいて、プロジェクタ3からの映像光L1は、ハーフミラー4で拡大された映像光L2となり、再帰性反射スクリーン5側に反射される。これにより、映像光L2は、予め設定された映像体験領域に含まれる眼位置からの視野と略重畳した映像光となって、再帰性反射スクリーン5に投影される。そして、再帰性反射スクリーン5に入射された映像光L2は、体験者の視野角の範囲で反射して、ハーフミラー4を通過して体験者に視認される。
【0029】
また、この第1実施形態に係る映像表示システムは、図2に示すように、プロジェクタ3の光出射口とハーフミラー4との間に、NDフィルタ11及び広角レンズ12を設けても良く、映像生成処理部6として、例えばマンション間取りの3次元データを記憶したディスクDを再生するディスク再生装置21を設けても良い。
【0030】
NDフィルタ11は、プロジェクタ3から出射される映像光L1の光強度、ハーフミラー4の光透過率、再帰性反射スクリーン5の体験者への光反射率に基づいて、映像体験領域で視認される映像の明るさを調整するように設計されている。なお、必要に応じて映像生成処理部6によってプロジェクタ3から出射される映像光L1の光強度を調整可能な場合には、NDフィルタ11を設けなくても良い。
【0031】
広角レンズ12は、NDフィルタ11を通過した映像光L1が入射され、当該映像光L1の画角を拡大した映像光L1’とする。これにより、広角レンズ12は、映像光L1よりも画角を広くした映像光L1’をハーフミラー4に入射して、再帰性反射スクリーン5の投影面が更に拡大された場合であっても、再帰性反射スクリーン5の投影面全体に映像光L2を投影することができる。この広角レンズ12は、プロジェクタ3の光出射口からの距離、プロジェクタ3からハーフミラー4までの距離、再帰性反射スクリーン5の投影面の面積等に基づいて、各種の光学パラメータが設計される。なお、プロジェクタ3そのものに短焦点レンズを備えており、映像光L1の画角が十分に大きい場合には、広角レンズ12は不要となる。
【0032】
このようなNDフィルタ11及び広角レンズ12を備えた映像表示システムは、上から見た様子を図3に示すように、プロジェクタ3から出射された映像光L1がNDフィルタ11を通過した後に広角レンズ12で拡大された映像光L1’となりハーフミラー4に入射させる。このとき、広角レンズ12で拡大された映像光L1’及び映像光L2は、図1及び図2と同様に、ハーフミラー4上で体験者の視野と光学的に共役な関係となる。したがって、プロジェクタ3の画角が再帰性反射スクリーン5を視認する場合の視野角に対して小さくても、映像光L2と体験者の視野とを光学的に共役な関係とすることができる。
【0033】
以上詳細に説明したように、本発明を適用した映像表示システムによれば、体験者の顔面に正対するようにハーフミラー4を配設したので、例えばハーフミラー4を傾けることによって体験者の視野と再帰性反射スクリーン5に投影する映像光L2とを光学的に共役な関係とする場合と比較して、簡単に再帰性反射スクリーン5に投射される映像光L2を視野と共役な関係とすることの調整を行うことができる。すなわち、この映像表示システムによれば、プロジェクタ3とハーフミラー4との距離調整、又はプロジェクタ3の設置角度を調整することによって光出射口からの画角及びハーフミラー4に対する映像光の入射角度の調整を行うことによって、簡単に体験者の視野と映像光L2とを光学的に共役な関係に設定することができる。
【0034】
したがって、この映像表示システムによれば、大型の再帰性反射スクリーン5を用いて広視野の映像を表示する場合に、簡単な構成で特定の人物のみに鮮明な映像を提示することができ、更には、ハーフミラー4の設置角度を調整するための機構やが必要なくなることは勿論のこと、強度的に薄弱なハーフミラー4の設置角度を調整する必要が無く確実に映像体験領域で映像を視認させることができる。また、この映像表示システムによれば、ハーフミラーを傾けて設置する場合とは異なるが、体験者の視線方向とプロジェクタ3の光軸とをずらしてプロジェクタ3を配置してプリズムやビームスプリッタを使用する必要なく、簡単な構成とすることができる。
【0035】
更に、この映像表示システムによれば、体験者の顔面に正対するハーフミラー4を備えているので、体験者の視野に対してハーフミラー4の面積を最大限有効に利用することができ、ハーフミラー4の小型化を容易に実現することができ、低コスト化を実現することができる。また、ハーフミラーが体験者の顔面に対して傾いて設置されていたり、ハーフミラーが大型となることによる体験者の煩わしさを抑制することができる。
【0036】
なお、この映像表示システムにおいて、ハーフミラー4を透過した映像光L1が映像体験領域を通過しないように構成されているが、体験者の側面又は背面に映像光L1が投写されることを回避するために、体験者の周囲を暗幕等の光吸収材等で覆うことが望ましい。
【0037】
[第2実施形態]
つぎに、本発明を適用した第2実施形態に係る映像表示システムについて説明する。なお、上述した第1実施形態と同様な部分については、同一符号を付することによってその詳細な説明を省略する。
【0038】
第2実施形態に係る映像体験支援システムは、両眼の体験者の視差を利用して3次元映像を提示するために、右眼用のプロジェクタから出射する映像光の光軸と左眼用のプロジェクタから出射する映像光の光軸とを両眼視差に相当する距離だけ離間して構成して、立体映像を表示することを特徴とする。
【0039】
この映像表示システムは、図4に示すように、上下方向において左眼用プロジェクタ3Aの光出射口と、右眼用プロジェクタ3Bの光出射口とを対向させ、且つ左眼用プロジェクタ3A及び右眼用プロジェクタ3Bの上下面を逆転させて光学系設置部2に設置している。また、ハーフミラー4は、左眼用プロジェクタ3A及び右眼用プロジェクタ3Bからの映像光が入射される位置であって、第1実施形態と同様に、体験者の顔面に正対して設けられている。
【0040】
このような映像表示システムは、図5に上から見た様子を示すように、左右方向において左眼用プロジェクタ3Aの光出射口と、右眼用プロジェクタ3Bの光出射口との距離が体験者の両眼視差距離、すなわち両眼距離に相当する距離に配設されている。
【0041】
また、映像表示システムは、図5に示すように、左眼用プロジェクタ3Aから投影された左眼用映像光L11の光軸上に設けられた左眼用NDフィルタ31Aと、右眼用プロジェクタ3Bから投影された右眼用映像光L13の光軸上に設けられた右眼用NDフィルタ31Bと、当該右眼用NDフィルタ31Bを透過した右眼用映像光L13をハーフミラー4側に反射させて進行方向を反転させるミラー32とが光学系設置部2に設置されている。
【0042】
このような映像表示システムにおいて、左眼用プロジェクタ3Aから出射された左眼用映像光L11は、左眼用NDフィルタ31Aを通過して光強度が減衰された後に、ハーフミラー4で一部が反射して、左眼用映像光L12として再帰性反射スクリーン5に投影される。ここで、図4に示すように、左眼用プロジェクタ3Aの光出射角度が下方向となっているので、左眼用映像光L11が右眼用プロジェクタ3B等で遮断されることなくハーフミラー4に左眼用映像光L11を導いている。
【0043】
左眼用映像光L12の光軸は、左眼用プロジェクタ3Aとハーフミラー4の設置位置の調整によって、体験者の左眼が映像体験領域に含まれる場合の視野中心となっている。したがって、左眼用映像光L12と体験者の左眼の視野とは、光学的に共役な関係となっている。
【0044】
また、右眼用プロジェクタ3Bから出射された右眼用映像光L13は、右眼用NDフィルタ31Bを通過して光強度が減衰された後に、ミラー32で反射され、右眼用映像光L14としてハーフミラー4で一部が反射して、右眼用映像光L15として再帰性反射スクリーン5に投影される。ここで、右眼用映像光L14の光軸は、右眼用プロジェクタ3Bと右眼用NDフィルタ31Bとハーフミラー4との設置位置の調整によって、体験者の右眼が映像体験領域に含まれる場合の右眼の視野中心となっている。したがって、右眼用映像光L14と体験者の右眼の視野とは、光学的に共役な関係となっている。
【0045】
これにより、体験者の両眼が映像体験領域に含まれる場合に、再帰性反射スクリーン5で反射した左眼用映像光L12は、体験者の左眼で視認され、再帰性反射スクリーン5で反射した右眼用映像光L15は、体験者の右眼で視認されることになり、両眼の視差によって3次元映像を提示することができる。
【0046】
このような映像表示システムによれば、左右方向において左眼用プロジェクタ3Aと右眼用プロジェクタ3Bとを体験者の両眼間隔だけ離間して配置することによって、大型の再帰性反射スクリーン5を用いて広視野の立体映像を表示する場合に、簡単且つ低コストな構成で特定の人物のみに鮮明な映像を提示することができる。
【0047】
すなわち、ミラー32を使用せずに、左眼用プロジェクタ3Aと右眼用プロジェクタ3Bとを共にハーフミラー4に向かって同一方向に映像光を出射する構成とした場合には、相互の光出射口の距離を両眼間隔にして設置することが実際の寸法上困難であり、同一種類のプロジェクタを使用する場合には著しく小型化したプロジェクタを使用する必要がある。
【0048】
また、この映像表示システムによれば、偏光メガネ等を体験者に装着させることなく、映像体験領域に眼位置を含ませるように自然に頭部移動を促すのみで立体映像を視認させることができる。
【0049】
[第3実施形態]
つぎに、本発明を適用した第3実施形態に係る映像体験支援システムについて説明する。なお、上述した実施形態と同様な部分については、同一符号を付することによってその詳細な説明を省略する。
【0050】
第3実施形態に係る映像体験支援システムは、再帰性反射スクリーン5に導かれる映像光と体験者の視野とを光学的に共役な関係とするための構成として、図6に示すように、体験者の顔面に正対する一対のハーフミラー4,41を備えた点で、上述した実施形態とは異なる。
【0051】
また、この映像表示システムは、左眼用プロジェクタ3Aに映像データを出力するディスク再生装置21Aと、右眼用プロジェクタ3Bに映像データを出力するディスク再生装置21Bとを備える。これにより、例えば、マンションの間取りを仮想的に体験させるための映像を再帰性反射スクリーン5に表示する仮想体験システム等に適用される。そして、ディスク再生装置21Aによって左眼用映像データを記憶したディスクDを再生すると共に、ディスク再生装置21Bによって右眼用映像データを記憶したディスクDを再生することによって、左眼用プロジェクタ3A及び右眼用プロジェクタ3Bを同期させながら駆動させて、それぞれから映像光を出射させる。
【0052】
ハーフミラー41は、左眼用プロジェクタ3Aと右眼用プロジェクタ3Bとの間の光学系設置部2に設置される。これらハーフミラー4,41は共に、体験者が再帰性反射スクリーン5を視認する場合の視野が含まれる面積で構成されている。また、このハーフミラー4,41は共に、体験者の顔面に正対するように、体験者の顔面と光入射面とが平行するように設けられている。
【0053】
また、ハーフミラー41は、図7に示すように、左眼用NDフィルタ31Aからの左眼用映像光L21を透過し、且つ右眼用NDフィルタ31Bからの右眼用映像光L23をハーフミラー4側に反射すると共に、左眼用映像光L21及び右眼用映像光L24がハーフミラー4で再帰性反射スクリーン5側に反射された左眼用映像光L22及び右眼用映像光L25を透過させる面積で構成されている。
【0054】
このような映像表示システムにおいて、左眼用プロジェクタ3Aから出射された左眼用映像光L21は、左眼用NDフィルタ31A及びハーフミラー41を通過して、ハーフミラー4で一部が反射し、左眼用映像光L22としてハーフミラー41を通過して再帰性反射スクリーン5に投影される。
【0055】
この左眼用映像光L22の光軸は、左眼用プロジェクタ3Aとハーフミラー4の設置位置の調整によって、体験者の左眼が映像体験領域に含まれる場合の視野中心となっている。したがって、左眼用映像光L12と体験者の左眼の視野とは、光学的に共役な関係となっている。
【0056】
また、右眼用プロジェクタ3Bから出射された右眼用映像光L23は、右眼用NDフィルタ31Bを通過して光強度が減衰された後に、ハーフミラー41で反射され、右眼用映像光L24としてハーフミラー4で一部が反射して、右眼用映像光L25として再帰性反射スクリーン5に投影される。ここで、右眼用映像光L24の光軸は、右眼用プロジェクタ3Bと右眼用NDフィルタ31Bとハーフミラー4との設置位置の調整によって、体験者の右眼が映像体験領域に含まれる場合の視野中心となっている。したがって、右眼用映像光L14と体験者の右眼の視野とは、光学的に共役な関係となっている。
【0057】
これにより、体験者の両眼が映像体験領域に含まれる場合に、再帰性反射スクリーン5で反射した左眼用映像光L22は、体験者の左眼で視認され、再帰性反射スクリーン5で反射した右眼用映像光L25は、体験者の右眼で視認されることになり、両眼の視差によって3次元映像を提示することができる。
【0058】
ここで、左眼用プロジェクタ3Aから出射された映像光が再帰性反射スクリーン5に投影されるまでに、ハーフミラー4,41に入射する回数は、同じ3回とされている。したがって、左眼用NDフィルタ31Aと右眼用NDフィルタ31Bとは、同じ光減衰率であるものを使用することができる。したがって、右眼用映像光を投影させるための光学系と、左眼用映像光を投影させるための光学系とを光学的に等価なものとすることができる。
【0059】
したがって、この映像表示システムによれば、左眼用プロジェクタ3A及び右眼用プロジェクタ3Bとハーフミラー4との距離を長くすることによって、再帰性反射スクリーン5に投影させる映像光の投影角を大きくした場合であっても、左眼用映像光と右眼用映像光とで明るさが異なるような光学的に不連続な場合を回避することができ、広視野の立体映像を鮮明に表示することができる。
【0060】
また、この映像表示システムにおいては、ハーフミラー41として、左眼用映像光L21を透過させると共に右眼用映像光L24を反射させ、左眼用映像光L22及び右眼用映像光L25を透過させるような面積のものを使用したが、これに限らず、左眼用映像光L21を透過させると共に右眼用映像光L24を反射させるだけの面積であって、左眼用映像光L22及び右眼用映像光L25が入射されないような面積のものを使用しても良い。この場合、ハーフミラー4,41への入射回数を右眼用映像光及び左眼用映像光のそれぞれについて2回とすることができる。
【0061】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
1 取付部材
2 光学系設置部
3 プロジェクタ
4 ハーフミラー(第1のハーフミラー)
41 ハーフミラー(第2のハーフミラー)
5 再帰性反射スクリーン
6 映像生成処理部
11 NDフィルタ
12 広角レンズ
21 ディスク再生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体験者の視線方向にスクリーンを配置して、当該スクリーンに立体映像を表示する映像表示システムであって、
再帰性反射素材で形成された投影面を備えたスクリーンと、
予め設定された前記体験者に立体映像の視認を可能とさせる映像体験領域に前記体験者の眼位置が存在する場合に、当該体験者の顔面と正対する光入射面を有する第1のハーフミラーと、
所定の画角の右眼用映像光を出射する右眼用映像光出射部と、所定の画角の左眼用映像光を出射する左眼用映像光出射部とを有し、前記右眼用映像光出射部の光出射口と前記左眼用映像光出射部の光出射口とを上下方向において対向して配置し、且つ、前記右眼用映像光出射部の光出射口と前記左眼用映像光出射部の光出射口とを左右方向において前記体験者の両眼間隔だけ離間して配置した映像光出射手段と、
前記右眼用映像光及び前記左眼用映像光を、前記第1のハーフミラーの光入射面に対して所定の入射角度で入射させる光学系とを備え、
前記映像体験領域に前記体験者の眼位置が存在する場合の前記体験者の前記スクリーンに対する視野と、前記第1のハーフミラーから前記スクリーンに投影した右眼用映像光及び左眼用映像光とを重畳させるように前記所定の画角及び前記所定の入射角度が設定されていることを特徴とする映像表示システム。
【請求項2】
前記光学系は、前記右眼用映像光又は前記左眼用映像光の一方の映像光をミラーで反射させて前記第1のハーフミラーの光入射面に対して所定の入射角度で入射させ、他方の映像光を直接前記第1のハーフミラーの光入射面に対して所定の入射角度で入射させることを特徴とする請求項1に記載の映像表示システム。
【請求項3】
前記光学系は、前記右眼用映像光又は前記左眼用映像光の一方の映像光を第2のハーフミラーで反射させて前記第1のハーフミラーの光入射面に対して所定の入射角度で入射させ、他方の映像光を前記第2のハーフミラーを透過させて前記第1のハーフミラーの光入射面に対して所定の入射角度で入射させ、前記第1のハーフミラーに入射された右眼用映像光及び左眼用映像光を前記第2のハーフミラーを透過させて前記スクリーンに立体映像を表示させることを特徴とする請求項1に記載の映像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−107987(P2010−107987A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263910(P2009−263910)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【分割の表示】特願2004−303180(P2004−303180)の分割
【原出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】