説明

普通型コンバイン

【課題】刈取穀稈の量が増加してもフィーダに噛み込み難いようにする。
【解決手段】走行機体の前方に備えた刈取部4と、刈取部4の後方側に配置された脱穀装置6と、刈取部4で刈り取られた刈取穀稈を脱穀装置6に搬送するフィーダ5とを備えた普通型コンバインであって、フィーダ5は、前端部開口を刈取部4側に、且つ、後端部開口を脱穀装置6側に向けて配置した筒状のフィーダケース50と、フィーダケース50の中に取り付けられ、前端部開口から取り込んだ刈取穀稈を、フィーダケース50の底面部との隙間Sを搬送空間として後端部開口側へ搬送するコンベヤ52とを備えて構成してあり、前端部開口における隙間Sへの刈取穀稈の噛み込みに伴って、隙間Sの高さ寸法が大きくなるのを許容する隙間拡大許容機構Kが設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の前方に備えた刈取部と、前記刈取部の後方側に配置された脱穀装置と、前記刈取部で刈り取られた刈取穀稈を前記脱穀装置に搬送するフィーダとを備えた普通型コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の普通型コンバインとしては、フィーダの構成として、筒形状のフィーダケースの中に、無端回動コンベヤとしてのチェーンコンベヤを備えたものがあった(例えば、特許文献1参照)。
チェーンコンベヤは、横軸芯周りに回転自在な前後一対の輪体と、前後一対の輪体に架け廻された左右一対のチェーンと、左右一対のチェーンにわたって設けられた多数のアングル材とを設けて構成してあり、前記輪体を回転駆動させることで、フィーダケース内に送り込まれた刈取穀稈を、前記アングル材で、チェーンコンベヤとフィーダケースの底面部との隙間に取り込みながら後方へ搬送するものである。
また、前記輪体は、チェーンコンベヤとフィーダケースの底面部との隙間寸法を一定に維持するために、その回転軸をフィーダケースの両側面部を貫通させて上下に動かない状態に固着してあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−178428号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の普通型コンバインによれば、チェーンコンベヤとフィーダケースの底面部との隙間の高さ寸法が一定に維持されているから、刈取部から送り込まれる刈取穀稈の量が多くなると、前記隙間に刈取穀稈が噛み込んだ状態となり、刈取穀稈のクサビ作用によってチェーンコンベヤの回転がロックされてしまう危険性がある。
コンベヤがロックされる度に、コンバインの運転を中止して、前記隙間に噛み込んだ刈取穀稈を除去する必要があるから刈取作業が中断されることになり、刈取作業の効率の向上が望まれている。
【0005】
従って、本発明の目的は、刈取穀稈の量が増加してもフィーダに噛み込み難い普通型コンバインを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、走行機体の前方に備えた刈取部と、
前記刈取部の後方側に配置された脱穀装置と、
前記刈取部で刈り取られた刈取穀稈を前記脱穀装置に搬送するフィーダとを備えた普通型コンバインであって、
前記フィーダは、前端部開口を前記刈取部側に、且つ、後端部開口を前記脱穀装置側に向けて配置した筒状のフィーダケースと、
前記フィーダケースの中に取り付けられ、前記前端部開口から取り込んだ刈取穀稈を、前記フィーダケースの底面部との隙間を搬送空間として前記後端部開口側へ搬送するコンベヤとを備えて構成してあり、
前記前端部開口における前記隙間への刈取穀稈の噛み込みに伴って、前記隙間の高さ寸法が大きくなるのを許容する隙間拡大許容機構が設けてあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、隙間拡大許容機構によって、コンベヤとフィーダケースの底面部との隙間の高さ寸法が大きくなるのを許容できるので、刈取部からの刈取穀稈の量が増加して噛み込みを生じるような場合に、隙間拡大許容機構で前記隙間を拡大させて、刈取穀稈が噛み込むのを緩和でき、それに伴うコンベヤのロック等を防止できるようになる。
従って、従来のように、コンバインの運転を中止して噛み込んでいる刈取穀稈を除去する手間が省け、コンバインの運転を効率よく継続することができる。
因みに、隙間拡大許容機構は、刈取穀稈の噛み込みに伴って隙間寸法が大きくなる機構であるから、コンベヤとフィーダケースの底面部とが、何れか一方、又は、何れもが離れられる機構を備えておればよい。例えば、コンベヤに対してフィーダケースの底面部が離れるような機構や、フィーダケースの底面部に対してコンベヤが離れるような機構や、それらの両方の機構を備えた構成が、例として挙げられる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記コンベヤは、横軸芯周りに回転自在な前後一対の輪体と、前後一対の輪体に架け廻されたチェーンとを備えたチェーンコンベヤで構成してあり、
前記隙間拡大許容機構は、前記フィーダケースの底面部に対して、前記前側の輪体が、上方に移動するスライド機構で構成してあるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、前記前側の輪体のスライド機構によって刈取穀稈の噛み込み現象の緩和を図れることは勿論のことであるが、輪体には、コンベヤの重量が作用しているから、フィーダに取り込まれる刈取穀稈の量が減少した際に、前記隙間寸法を初期の寸法まで減少させる復帰力として、コンベヤの重量を有効に利用することができる。従って、前記復帰力を作用させる特別な機構を省略したり、若しくは、その特別な機構を設ける場合でも、その機構に要求される前記復帰力を小さく設定することができ、経済性の向上を図ることができる。
また、フィーダケースの底面部が上下移動するような隙間拡大許容機構を比較例として挙げるならば、この比較例の場合、底面部と側面部との取り合い部分から刈取穀稈が漏れ出ないようにする対策が必要となり、コストアップにつながるが、本発明の第2の特徴構成によれば、フィーダケースに複雑な構造を組み込む必要が無いから、シンプルな構造のフィーダケースで充分な密閉性能が得られ、より経済性の向上を図ることができる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記前側の輪体を前記フィーダケースの底面部側に付勢する付勢機構が設けてあるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、多量の刈取穀稈がフィーダに取り込まれて、コンベヤとフィーダケースの底面部との隙間が拡大した後、刈取穀稈の量が減少するに伴って、付勢機構の付勢力の作用で前記隙間寸法を初期値に戻すことができる。
前記隙間寸法は、初期値としては、コンベヤによる搬送が効果的に実施できる寸法に設定されているから、隙間が拡大されたままの状態では、余分な空間が残され、搬送効率が低下しやすい。
従って、前記付勢機構によって適正な隙間寸法を確保できることで、最良の搬送効率を維持することができる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記前側の輪体を回転自在に支持する支持部には、前記フィーダケースの両側面部を貫通する軸部が設けてあり、
前記スライド機構は、挿通した前記軸部が上下に移動可能な穴部を前記フィーダケースの両側面部に設けて構成してあり、
前記付勢機構は、前記穴部から外方に突出した前記軸部に付勢力を作用させる状態に取り付けられたバネ部材で構成してあるところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、スライド機構そのものの構成が、フィーダケースの両側面部に形成した穴部であると共に、付勢機構そのものの構成が、バネ部材であるから、何れも極めて簡単な機構によって形成でき、軸部の上下移動、及び、下方への付勢の作用を、より経済的に実現することができる。
更には、前記付勢機構を、フィーダケースの外方に設けているから、フィーダケースの内側をより広く使用することができ、スムースに且つ効率よく刈取穀稈の搬送を行うことができる。
また、フィーダケースの外方にスライド機構や付勢機構が面しているから、これら各機構のメンテナンス作業を実施するような場合にも、フィーダケースを開かなくても簡単に実施することができる。
【0014】
本発明の第5の特徴構成は、前記穴部の縁部の内、前記スライド機構による前記軸部の移動軌跡の少なくとも延長線上に補強材が設けてあるところにある。
【0015】
穴部の内空部を、前記軸部が径方向に沿ってスライド移動するに伴って、移動軌跡の両端部においては、穴部の縁部に軸部の周部が当接することになる。
本発明の第5の特徴構成によれば、少なくとも、軸部からの応力が作用する穴部の縁部に補強材を設けてあるから、その部分の強化が図られ、例えば、穴部の周辺部に変形や亀裂等が発生するのを未然に防止することができる。
その結果、前記軸部のスライドを、移動軌跡の両端側で安定した状態に受け止めて、軸部の支持を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】コンバインの全体左側面図
【図2】コンバインの平面図
【図3】フィーダの横断平面図
【図4】フィーダの縦断側面図
【図5】前部輪体の取付状況を示す要部切欠き平面図
【図6】前部輪体の取付状況を示す要部側面図
【図7】前部輪体の取付状況を示す要部側面図
【図8】ロック機構を示す側面図
【図9】ロック機構を示す横断平面図
【図10】作業灯を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を普通型(全稈投入型)のコンバインに適用した例を図面に基づいて説明する。
【0018】
〔コンバインの全体構成〕
本発明に係るコンバインは、稲、麦などを収穫するものであって、図1,図2に示すごとく、機体の骨格である機体フレーム1と、機体を支持する左右一対のクローラ式の走行装置2と、機体フレーム1の前部に上下揺動可能に支持されたフィーダ5と、フィーダ5の前端に連結された刈取部4と、機体フレーム1の左側に配設された脱穀装置6と、脱穀装置6の右横側に配設された袋詰めタンク7と、フィーダ5及び脱穀装置6の右側かつ袋詰めタンク7の前側に配設された運転部8と、を備えている。
【0019】
刈取部4は、図1,図2に示すごとく、左右一対のデバイダ16と、プラットホーム14と、掻き込み部としての回転リール3と、プラットホーム14の前端において左右のデバイダ16に亘って配設されたバリカン型の切断装置17と、プラットホーム14の上に配設され、左右方向向きの軸芯回りに回転するオーガ15と、を備えている。
【0020】
フィーダ5が左右方向向きの軸芯X回りに脱穀装置6に対して上下に揺動操作可能なように、機体フレーム1とフィーダ5との間に油圧シリンダ58を配設してある(図1参照)。フィーダ5が揺動操作されることによって、刈取部4は、プラットホーム14が地面近くに下降した作業状態と、プラットホーム14が地面から高く上昇した非作業状態と、に姿勢変更する。
【0021】
また、回転リール3は、刈取部4に対して揺動軸芯P回りに上下揺動可能に支持されたリール支持部12に、回転自在に支持してある。回転リール3は、リール支持部12に支持される回転枠10と、常時下方を向くように回転枠10に支持され、刈取り対象の植立穀稈を掻き込む複数のタイン11と、を備えている。
【0022】
刈取部4を下降させて作業状態とし、コンバインを走行させると、植立穀稈がデバイダ16によって刈取り対象と非刈取り対象とに分草され、回転リール3の回転駆動によって刈取り対象の植立穀稈がプラットホーム14に掻き込まれながら切断装置17で刈取られる。プラットホーム14に掻き込まれた刈取穀稈は、オーガ15によってフィーダ5の前方に横送りされ、さらにフィーダ5に掻き込まれる。刈取穀稈はフィーダ5によって後方に搬送され、刈取穀稈の株元から穂先までの全体が脱穀装置6に投入される。
【0023】
脱穀装置6は、投入された刈取穀稈を回転する扱胴40によって脱穀処理する。脱穀処理された単粒化穀粒は、袋詰めタンク7に送られて一旦貯留され、袋詰めタンク7の下部から穀粒袋に排出される。機体フレーム1の右側面には、袋詰めタンク7からの袋詰め作業を行う作業デッキ7Aと(図2参照)、作業デッキ7Aに乗った作業者用の手摺となるフレーム7Bと、を前後方向向きの軸芯回りに揺動可能に配設してある。袋詰め作業を行わないときは、作業デッキ7A及びフレーム7Bを垂直に立てて収容する。
【0024】
〔オーガ〕
オーガ15は、図3に示すごとく、フィーダ5よりも右側部分に二条の螺旋である第一スパイラ15a及び第二スパイラ15bを備え、フィーダ5よりも左側に一条の第三スパイラ15cを備え、フィーダ5の前方に、径方向に突出させた複数の掻き込み杆15dを備えている。第一スパイラ15a及び第二スパイラ15bと、第三スパイラ15cとによってフィーダ5の前方まで刈取穀稈を横送りし、掻き込み杆15dによってフィーダ5に掻き込む。
【0025】
〔フィーダ〕
図3,図4に示すごとく、フィーダ5は、矩形筒形状のフィーダケース50と、フィーダケース50に内装されたコンベヤ52と、を備えている。
コンベヤ52は、左右方向向きの軸芯回りに回動可能にフィーダケース50に支持された前部輪体52a及び後部輪体52bと、前部輪体52aと後部輪体52bとに巻き回された左右一対のチェーン52cと、左右のチェーン52cに亘って配設されたチャンネル状の左右方向向き搬送部材52dと、を備えている。
さらに、後部輪体52bの回動軸芯と同一の軸芯上で後部輪体52bと一体回動可能なように、フィーダケース50の外側に従動プーリー53を備えている。エンジンの駆動力は、図には示さない駆動力伝達系を介してベルトからこの従動プーリー53に伝達され、フィーダ5を駆動させる。
【0026】
オーガ15の掻き込み杆15dによってフィーダケース50の前端部に掻き込まれた刈取穀稈は、搬送部材52dに引掛けられながらフィーダケース50の底面部50Aとコンベヤ52との隙間Sを通して後方に搬送される。
前記隙間Sに大量の刈取穀稈が集中して取り込まれると、噛み込みによってコンベヤ52の回転がロックされてしまう危険性があり、当該実施形態のフィーダ5には、刈取穀稈の噛み込みに伴って前記隙間Sの高さ寸法が大きくなるのを許容する隙間拡大許容機構Kが設けてあり、コンベヤ52のロック防止を図っている。
また増大した隙間の高さ寸法を元の状態に戻すのに、前部輪体52aをフィーダケース50の底面部50A側に付勢する付勢機構Fも設けられている。
【0027】
隙間拡大許容機構Kは、図5〜7に示すように、当該実施形態においては、前部輪体52aが、フィーダケース50の底面部50Aに対して上方に移動するスライド機構Uによって構成されている。
【0028】
前部輪体52aは、回転軸54と、その周りに形成されたドラム部55とを一体に備えて構成してある。
前記回転軸54の両端部は、ベアリング56aを介して一対の支持部56(後述)にそれぞれ支持されている。また、ドラム部55の外周部には、チェーン52cの横ずれを防止する左右一対の第1鍔部55aと、長手方向の中央部の第2鍔部55bとが一体に形成されている。
【0029】
支持部56は、チャンネル鋼材で形成された支持本体56Aと、支持本体56Aに取り付けられた軸部56Bと、支持本体56Aをフィーダケース50に上下揺動自在に取り付ける枢支軸56Cとを備え、枢支軸56C周りに上下揺動自在な状態でフィーダケース50に取り付けられている。
支持本体56Aは、フィーダケース50の両側面部50Bの内側に沿って配置してあり、軸部56B、及び、枢支軸56Cは、図5に示すように、フィーダケース50の両側面部50Bをそれぞれ貫通して端部が外側に突出する状態に設けられている。
支持本体56Aと枢支軸56Cとの関係は、図5に示すように、支持本体56Aの後部に左右向き筒状のボス部56Dが固着してあり、枢支軸56Cは、端部がボス部56Dの内空部を貫通する状態に設けてある。枢支軸56Cとボス部56Dとは、枢支軸芯周りに相対回転自在に嵌合しているので、支持本体56Aは、ボス部56Dを介して枢支軸56Cの周りに滑らかに揺動することができる。
【0030】
枢支軸56Cが貫通するフィーダケース50の第1穴部H1は、フィーダ5の長手方向に沿った長穴として形成してある(図6参照)。この長穴に沿って枢支軸56Cの固定位置を移動することで、後部輪体52bに対する前部輪体52aの距離を前後調整でき、その結果、チェーン52cの弛み調整を実施することができる。
枢支軸56Cの固定位置の前後調整機構57は、図5、図6に示すように、フィーダケース50の側面部50Bに設けたブラケット57aと、L字断面の頭部を備えると共に軸部がブラケット57aを挿通する調整ボルト57bと、ブラケット57aを挟む状態で調整ボルト57bに螺着された一対の調整ナット57cとを備えて構成されており、調整ボルト57bのL字断面の頭部に前記枢支軸56Cを螺着した状態で、前記調整ボルト57bに対する調整ナット57cの螺合位置を前後に調整することで、枢支軸56Cの取付位置を前後に調整することができる。
尚、支持本体56Aが枢支軸56Cの周りに上下揺動する際には、枢支軸56Cが第1穴部H1の縁部に接当して上下移動不能な状態、又は、枢支軸56Cがボルトの締付力により第1穴部H1に対して上下移動不能な状態になっているので、前後調整機構57に上下方向の無理な力が作用することを防止できる。
【0031】
軸部56Bが貫通するフィーダケース50の第2穴部(本発明に係る穴部に相当)H2は、前記第1穴部H1と同様に、フィーダ5の長手方向に沿った長穴として形成してあり、第2穴部H2の中での軸部56Bの前後スライドが許容されることで、枢支軸56Cの前後調整の妨げにならないように構成してある。また、第2穴部H2の上下寸法(短径寸法)は、穴内で前記軸部56Bが上下に移動できるように余裕をもたせた値に設定されている(図6参照)。従って、第2穴部H2の短径範囲内で軸部56Bが上下移動することが許容され、軸部56Bが取り付けてある前記支持本体56Aは、枢支軸56Cの周りに上下揺動することができる。また、それに伴って、支持本体56Aに支持されている前部輪体52aも上下に移動することができる。前記スライド機構Uは、この第2穴部H2によって構成されている。
また、第2穴部H2を貫通した軸部56Bの突出先端部には、フィーダケース50の側面部50Bの下端突出部50aとにわたる状態にコイルスプリング(バネ部材に相当)59が取り付けてある。このコイルスプリング5の引張力によって、軸部56Bが第2穴部H2の下縁部に当接するように付勢されている。この状態が、支持本体56Aの揺動下限位置となる。
従って、通常の状態では、図6に示すように、支持本体56Aは揺動下限位置に保持されている。
【0032】
また、前記オーガ15からの刈取穀稈の送りこみ量が一時的に増加するような場合には、図7に示すように、刈取穀稈が前記隙間Sに噛み込んで前部輪体52aを押しあげるように作用する。その押しあげ力による枢支軸56C周りの回転モーメントがコイルスプリング59の引張力による回転モーメントを上回ると、コイルスプリング59が引き伸ばされ、支持本体56Aは、枢支軸56C周りに上方に揺動する。それに伴って、前記隙間Sの増大が許容され、刈取穀稈が隙間Sに詰まるのを緩和することができる。
尚、刈取穀稈の送りこみ量が減少すれば、コイルスプリング59による引張方向の付勢力によって、支持本体56aは揺動下限位置に戻され、前記隙間Sの寸法ももとどおりの最小に戻る。
前記コイルスプリング59によって前記付勢機構Fが構成されている。
【0033】
因みに、第2穴部H2の縁部の内、上縁部と下縁部とには、断面「L」字形の補強材50bが溶接によって固着してある。この補強材50bによって穴周りを補強しているから、第2穴部H2の縁部に軸部56Bが強く当接しても安定した状態で受け止めることができる。
【0034】
一方、フィーダケース50の上面部50Cにおける前端部には、刈取部4を含む前方部に光を照射する作業灯60が取り付けてある(図1、図2参照)。
作業灯60は、図10に示すように、フィーダケース50に下端部を取り付けたステー部60Aと、ステー部60Aの上端に、上下方向に照射方向を変更可能な状態に取り付けられた照射部60Bとを備えて構成してある。
照射部60Bの上下首振りが可能であるから、例えば、オーガ15と前部輪体52aとの間の部分に光を照射したり、その前方に光を照射したり、自由に切り替えることができる。
【0035】
フィーダ5の前後中央部には、図4に示すように、フレーム50Dがフィーダケース50の外周面に沿って設けてあり、底面部50Aに設けられたフレーム50Dと、機体フレーム1とにわたって前記油圧シリンダ58が取り付けてある。
前記油圧シリンダ58が伸長することでプラットホーム14が地面から高く上昇した非作業状態となるが、伸長した状態を維持するためのロック機構Rが設けられている。
【0036】
ロック機構Rは、図8、図9に示すように、フレーム50Dに対して上下揺動自在に取り付けられたチャンネル部材61で構成してある。
チャンネル部材61は、油圧シリンダ58をフレーム50Dに取り付けるシリンダピン62を兼用の枢支軸として前記フレーム50Dに取り付けられている。
チャンネル部材61を下方へ揺動させると、伸長状態の油圧シリンダ58のシリンダロッド部58Aに外嵌する状態になり、チャンネル部材61の下端部が、シリンダ部58Bの上端面部に当接して突っ張りとなる。従って、油圧シリンダ58の伸縮をチャンネル部材61によって阻止することができる。
因みに、チャンネル部材61は、上述のように、シリンダピン62によって枢支されているが、被枢支部分は、チャンネル部材61の本体から一端側に延伸する一対の取付プレート部61aに、前記シリンダピン62を貫通させた構造となっている。また、一方の取付プレート62aには、シリンダピン62の抜け止めを図る抜け止めボルト64が着脱自在に取り付けられている。具体的には、抜け止めボルト64の頭部の鍔状部64aが、シリンダピン62の拡径頭部62aに被さった位置にあることで、シリンダピン62の抜け止めを図っている。
【0037】
また、プラットホーム14を地面近くに下降させた作業状態にするには、油圧シリンダ58を収縮させる必要があり、その際には、前記チャンネル部材61は、上方へ揺動させて、フィーダ5の底面部50Aに沿う退避姿勢にしておく。
チャンネル部材61の退避姿勢時には、前記フレーム50Dとチャンネル部材61とにわたって、外れ止め用のスナップピン63aを先端部に着脱可能な頭部拡径ピン63を挿通させることで下方への揺動が阻止され、退避姿勢を維持することができる。
また、頭部拡径ピン63の先端部にスナップピン63aを装着すると、より確実に、退避姿勢の維持を図ることができる。
【0038】
〔別実施形態〕
〈1〉隙間拡大許容機構Kは、先の実施形態では、前部輪体52aが、底面部50Aに対して上昇する機構を説明したが、この実施形態に替えて、例えば、前部輪体52aに対して、底面部50Aが下降するように構成するものや、前部輪体52aの上昇機構と、底面部50Aの下降機構との両方を備えたものであってもよい。
(2)付勢機構Fは、先の実施形態では、軸部56Bを下方へ付勢するコイルスプリング59を例に挙げて説明したが、コイルスプリング59以外の弾性部材で構成したり、又は、軸部56Bに錘を垂下して構成するものであってもよい。
また、コンベヤ52そのものの重量が大きく設定できる場合には、必ずしも付勢機構を設ける必要はない。即ち、コンベヤ52の重量によって隙間Sを初期値に戻す働きがある。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、駆動によって刈取部からフィーダに刈取穀稈を送り込む機構を備えた普通型コンバインに適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
4 刈取部
5 フィーダ
6 脱穀装置
50 フィーダケース
50A 底面部
50B 側面部
50b 補強材
52 コンベヤ
52a 前部輪体(輪体に相当)
52b 後部輪体(輪体に相当)
52c チェーン
56 支持部
56B 軸部
59 コイルスプリング(バネ部材に相当)
F 付勢機構
H2 第2穴部(穴部に相当)
K 隙間拡大許容機構
S 隙間
U スライド機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前方に備えた刈取部と、
前記刈取部の後方側に配置された脱穀装置と、
前記刈取部で刈り取られた刈取穀稈を前記脱穀装置に搬送するフィーダとを備えた普通型コンバインであって、
前記フィーダは、前端部開口を前記刈取部側に、且つ、後端部開口を前記脱穀装置側に向けて配置した筒状のフィーダケースと、
前記フィーダケースの中に取り付けられ、前記前端部開口から取り込んだ刈取穀稈を、前記フィーダケースの底面部との隙間を搬送空間として前記後端部開口側へ搬送するコンベヤとを備えて構成してあり、
前記前端部開口における前記隙間への刈取穀稈の噛み込みに伴って、前記隙間の高さ寸法が大きくなるのを許容する隙間拡大許容機構が設けてある普通型コンバイン。
【請求項2】
前記コンベヤは、横軸芯周りに回転自在な前後一対の輪体と、前後一対の輪体に架け廻されたチェーンとを備えたチェーンコンベヤで構成してあり、
前記隙間拡大許容機構は、前記フィーダケースの底面部に対して、前記前側の輪体が、上方に移動するスライド機構で構成してある請求項1に記載の普通型コンバイン。
【請求項3】
前記前側の輪体を前記フィーダケースの底面部側に付勢する付勢機構が設けてある請求項2に記載の普通型コンバイン。
【請求項4】
前記前側の輪体を回転自在に支持する支持部には、前記フィーダケースの両側面部を貫通する軸部が設けてあり、
前記スライド機構は、挿通した前記軸部が上下に移動可能な穴部を前記フィーダケースの両側面部に設けて構成してあり、
前記付勢機構は、前記穴部から外方に突出した前記軸部に付勢力を作用させる状態に取り付けられたバネ部材で構成してある請求項3に記載の普通型コンバイン。
【請求項5】
前記穴部の縁部の内、前記スライド機構による前記軸部の移動軌跡の少なくとも延長線上に補強材が設けてある請求項4に記載の普通型コンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−210164(P2012−210164A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76597(P2011−76597)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】