説明

暗渠管用継手

【課題】 通水性を有する有孔管等からなる暗渠管を用いて排水暗渠や灌漑用暗渠を施工する際の暗渠管の接続を容易に行うことができ、接続部周辺を大きく開削する必要がない暗渠管用継手を提供する。
【解決手段】 地中に埋設される暗渠管16を接続するための受口13を備えた弾性変形可能な材料からなる暗渠管用継手11であって、前記受口13の基部に周方向半周分の切込部14を設けるとともに、該切込部14と受口開口端13aとの間に、受口軸方向のスリット15を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗渠管用継手に関し、詳しくは、湿地や圃場等の地中に埋設される暗渠管を接続する際に使用する暗渠管用継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水はけの悪い土地に排水暗渠を形成するための暗渠管(有孔管、暗渠排水パイプ)を埋設して排水性を向上させたり、圃場の地中に暗渠管を埋設して灌漑に利用したりすることが行われている。暗渠管の埋設は、あらかじめバックホーやトレンチャーを使用して暗渠管を埋設するための溝(管埋設溝)を掘削形成し、この管埋設溝内に暗渠管を敷設するようにしている。このとき、暗渠管同士の接続や暗渠管の分岐部には、従来から一般的に用いられている管継手を使用していることから、受口内に暗渠管の端部を挿入する作業を行うためのスペースが必要であり、管接続部分を大きく開削して作業を行っていた。また、暗渠管の分岐部に使用する継手(チーズやクロス)として、半筒状の一対の継手半体を組み合わせたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−355225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記特許文献1記載の継手は、本管に対する分岐管の接続を任意の位置で行えるという利点は有しているものの、部品点数が多く、一対の継手半体をボルト・ナットで固定する作業も面倒であり、コストアップとなってしまう。また、この継手を用いて分岐管を接続する場合にも、周辺を大きく開削する必要がある。また、本管に分岐管を接続するための継手として、サドル継手が知られているが、本管周壁に形成した開口と継手管とを合致させた状態でサドルを固定する必要があり、この位置合わせや固定作業のために周辺を大きく開削する必要があった。
【0004】
そこで本発明は、通水性を有する有孔管等からなる暗渠管を用いて排水暗渠や灌漑用暗渠を施工する際の暗渠管の接続を容易に行うことができ、接続部周辺を大きく開削する必要がない暗渠管用継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の暗渠管用継手は、地中に埋設される暗渠管を接続するための受口を備えた弾性変形可能な材料からなる継手であって、前記受口の基部に周方向半周分の切込部を設けるとともに、該切込部と受口開口端との間に、受口軸方向のスリットを設けたことを特徴としている。
【0006】
さらに、本発明の暗渠管用継手は、弾性変形可能な材料からなり、前記受口の外径に対応した内径及び受口の長さに対応した長さを有する断面C字状のカバー材を、前記暗渠管の端部を接続した受口の外周に装着し、該カバー材によって前記スリットを覆うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の暗渠管用継手によれば、受口に設けたスリットを暗渠管に向けた状態で継手を押し込むことにより、あるいは、スリットに向けて暗渠管を押し込むことにより、受口の切込部から先端側が弾性変形してスリットが開いた状態になり、さらに押し込んで受口内に暗渠管が進入すると受口が元の形状に戻り、暗渠管の端部を包み込んで保持した状態となる。したがって、継手に形成される複数の受口の切込部やスリットを全て同一方向に向けて設けておくことにより、複数の暗渠管の端部を所定位置に配置して継手を一側方から押し付けるだけで複数の暗渠管を接続することができる。また、接続する際に継手の精密な位置合わせや固定を行わないでよいことから、周辺を大きく開削する必要もなくなる。また、カバー材でスリット部分を覆うことにより、暗渠管との接続強度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1乃至は図5は、本発明の第1形態例を示すもので、暗渠管用継手の基本形状を示している。図1は接続前の状態を示す斜視図、図2は一部切り欠き正面図、図3は図2のIII−III断面図、図4は接続中の状態を示す断面図、図5は接続後の状態を示す斜視図である。
【0009】
まず、暗渠管用継手11は、直管からなる継手本体12と、該継手本体12の両側に設けられた受口13,13とで形成されている。受口13の基部には、周方向半周分の切込部14が設けられるとともに、該切込部14と受口開口端13aとの間には、受口軸方向のスリット15が設けられている。このスリット15は、切込部14の周方向中間部に連続した状態で設けられており、スリット15を拡げると、切込部14から先の受口両翼部分13b,13bが弾性変形して両側に開くように形成されている。
【0010】
このように形成した暗渠管用継手11を使用して暗渠管16を接続する際には、管端16aを所定位置に配置した状態で、スリット15の部分を暗渠管16の端部外周面に押し付ける。このとき、スリット15の間隔を、暗渠管16の外周面の曲率に応じて適当に設定しておくことにより、暗渠管用継手11を暗渠管16に更に押し付けていくと、図4に示すように、受口両翼部分13b,13bが弾性変形してスリット15が拡がり、暗渠管16が受口13内に進入する。そして、暗渠管16が受口13内に収まると受口両翼部分13b,13bがその弾性によって元の形状に復帰し、暗渠管16が受口13内に挿入された状態となる。すなわち、暗渠管16に対して、スリット15を対応させた状態で暗渠管用継手11を軸線に直交する方向から押し付けるだけの操作により、暗渠管16を暗渠管用継手11に接続することができる。
【0011】
したがって、管埋設溝の底部に敷設した暗渠管16に向けて上方から暗渠管用継手11を押し付けるだけの操作で暗渠管16を接続することができ、継手接続部分を大きく開削する必要がなくなり、暗渠管16の敷設作業を簡略化することができる。これにより、管の接続に厳密な水密性を必要としない暗渠排水や暗渠灌漑における管敷設作業の大幅なコスト削減を図れる。
【0012】
なお、この暗渠管用継手11は、通水孔16bを有する暗渠管16同士の接続だけでなく、通常のパイプ材の接続にも適用可能であり、さらに、口径が異なる暗渠管の接続にも、受口13の口径をそれぞれ対応させることによって適用可能である。また、切込部14は、通常は受口13の周方向半周分で十分であるが、受口両翼部分13b,13bの弾性変形の状態に応じて半周分を超えて形成するようにしてもよい。
【0013】
通常の暗渠管接続作業では、上述のようにして暗渠管用継手11で暗渠管16を接続するだけで十分であるが、暗渠管接続後の受口13の外周にカバー材17を装着することにより、受口13と暗渠管16との接続強度を向上させることができる。このカバー材17は、暗渠管用継手11と同様の弾性変形可能な材料により、円筒体の一部に軸方向の開口18を設けた断面C字状に形成されている。カバー材17の内径は、前記受口13の外径に対応しており、長さは、受口13の長さに対応した長さに設定されている。
【0014】
このように形成したカバー材17は、開口18を受口13の外周面に押し付けることにより、カバー材17の全体が弾性変形して開口18が拡がった状態となるので、前述の暗渠管16と受口13との接続と同様に、カバー材17を受口13の外周に押し付けるだけでカバー材17を受口13の外周に装着することができる。
【0015】
さらに、カバー材17の開口18の位置をスリット15とは異なる位置とし、カバー材17によってスリット15を覆うことにより、スリット15が拡がる方向の外力が加わった場合でも、スリット15が拡がることを防止して暗渠管16の接続状態を確実に保持することができる。特に、カバー材17の弾性変形前の内径を受口13の外径よりも小さく設定しておくことにより、カバー材17によって受口13を締め付けることができるので、受口13からの暗渠管16の抜けなどを確実に防止できる。なお、カバー材17の長さは、スリット15の開きを防止できれば、受口13の長さより短くてもよく、長くてもよい。また、受口13やカバー材17の肉厚は、材質や口径、弾性変形量等の条件を考慮して設定すればよい。
【0016】
図6及び図7は、本発明の第2形態例を示すもので、暗渠管用継手をチーズに適用した例を示している。図6は接続前の状態を示す斜視図、図7は接続後の状態を示す斜視図である。なお、以下の説明において、前記第1形態例で示した暗渠管用継手における構成要素と同一の構成要素には、それぞれ同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0017】
本形態例に示す暗渠管用継手(チーズ)21は、暗渠主管22から側方に暗渠支管23を分岐させる位置に設けられるもので、暗渠主管22,22を接続するための一対の主管側受口24と、暗渠支管23を接続するための分岐管側受口25とを備えている。主管側受口24及び分岐管側受口25には、前記第1形態例に示した受口13と同様に、受口基部の周方向半周分の切込部14と、該切込部14と受口開口端との間の受口軸方向のスリット15とがそれぞれ形成されている。
【0018】
本形態例に示す暗渠管用継手21においても、所定長さに切断した一対の暗渠主管22,22と暗渠支管23とを管埋設溝の底部にそれぞれ配置した後、各受口24,25のスリット15を各管22,23の外周面に押し付けることにより、暗渠管用継手21を介して暗渠主管22,22と暗渠支管23とを接続することができる。さらに、管接続後の各受口24,25にカバー材17を装着してスリット15を覆うことにより、各管との接続強度を向上させることができる。
【0019】
図8乃至図10は、本発明の第3形態例を示すもので、暗渠管用継手をクロスに適用したときの施工例を示している。図8は暗渠管用継手の底面図、図9は暗渠主管と暗渠支管とを管埋設溝内に敷設した状態を示す平面図、図10は接続時の状態を示す断面正面図である。
【0020】
本形態例に示す暗渠管用継手(クロス)31は、暗渠主管32から両側に暗渠支管33,33をそれぞれ分岐させる位置に設けられるもので、暗渠主管32,32を接続するための一対の主管側受口34,34と、暗渠支管33,33を接続するための一対の分岐管側受口35,35とを備えている。主管側受口34及び分岐管側受口35には、前記第1形態例に示した受口13と同様に、受口基部の周方向半周分の切込部14と、該切込部14と受口開口端との間の受口軸方向のスリット15とがそれぞれ形成されている。
【0021】
暗渠主管32及び暗渠支管33の接続作業は、まず、図9に示すように、暗渠主管32を敷設する主管用管埋設溝36と暗渠支管33を敷設する支管用管埋設溝37とを掘削するとともに、各管埋設溝36,37に暗渠主管32と暗渠支管33とを敷設する。このとき、図9に示したように、一方の暗渠管、例えば暗渠主管32の上を通るように暗渠支管33を敷設するようにしてもよく、一方の暗渠管、例えば暗渠主管32を敷設した後に所定長さに切断した暗渠支管33を暗渠主管32の両側に配置するようにしてもよい。
【0022】
次に、暗渠主管32及び暗渠支管33の端部を所定の切断位置38にてそれぞれ切断した後、図10に示すように、溝上方から暗渠管用継手31を埋設溝内に挿入し、主管側受口34のスリット15を暗渠主管32の端部外周面に、分岐管側受口35のスリット15を暗渠支管33の端部外周面に、それぞれ押し付けることにより、各主管側受口34,35内に各暗渠管32,33の端部を挿入して接続することができる。さらに、必要に応じてカバー材17を装着することができる。
【0023】
なお、第2形態例に示すチーズや第3形態例に示すクロスの場合、主管側受口を大径、分岐管側受口を小径とすることにより、大径の暗渠主管から小径の暗渠支管を分岐接続することができる。また、主管側受口に合流管等として用いる無孔管を接続し、分岐管側受口に暗渠主管を接続することもできる。
【0024】
さらに、各形態例の説明では、所定位置に配置した暗渠管に対して暗渠管用継手を押し付けることで各受口に各暗渠管の端部を同時に挿入する操作を説明したが、これとは逆に、継手を管埋設溝の底部所定位置に配置した状態で、各暗渠管を1本ずつ上方から所定位置のスリットに向けて押し付け、各受口に各暗渠管の端部をそれぞれ挿入接続するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の暗渠管用継手の第1形態例を示すもので、接続前の状態を示す斜視図である。
【図2】暗渠管用継手の一部切り欠き正面図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】接続中の状態を示す断面図である。
【図5】接続後の状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の暗渠管用継手の第2形態例を示すもので、接続前の状態を示す斜視図である。
【図7】接続後の状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の暗渠管用継手の第3形態例を示す底面図である。
【図9】暗渠主管と暗渠支管とを管埋設溝内に敷設した状態を示す平面図である。
【図10】接続前の状態を示す断面正面図である。
【符号の説明】
【0026】
11…暗渠管用継手、12…継手本体、13…受口、13a…受口開口端、13b…受口両翼部分、14…切込部、15…スリット、16…暗渠管、16a…管端、16b…通水孔、17…カバー材、18…開口、21…暗渠管用継手(チーズ)、22…暗渠主管、23…暗渠支管、24…主管側受口、25…分岐管側受口、31…暗渠管用継手(クロス)、32…暗渠主管、33…暗渠支管、34…主管側受口、35…分岐管側受口、36…主管用管埋設溝、37…支管用管埋設溝、38…切断位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設される暗渠管を接続するための受口を備えた弾性変形可能な材料からなる継手であって、前記受口の基部に周方向半周分の切込部を設けるとともに、該切込部と受口開口端との間に、受口軸方向のスリットを設けたことを特徴とする暗渠管用継手。
【請求項2】
弾性変形可能な材料からなり、前記受口の外径に対応した内径及び受口の長さに対応した長さを有する断面C字状のカバー材を、前記暗渠管の端部を接続した受口の外周に装着し、該カバー材によって前記スリットを覆うことを特徴とする請求項1記載の暗渠管用継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−83565(P2006−83565A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268168(P2004−268168)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(301035976)独立行政法人農業工学研究所 (9)
【出願人】(596029085)株式会社パディ研究所 (28)