説明

有機材料のマイクロ波真空乾燥

食品および生物活性物質などの有機材料をマイクロ波真空乾燥させる装置20は、複数のマイクロ波発生器50を有し、この発生器を、それぞれのマイクロ波照射線の間に干渉を起こし、真空チャンバ34の端から端までマイクロ波エネルギーを均等に照射するように作動する。乾燥させる有機材料がコンベアベルト60に載ってこの窓の端から端まで移動し、チャンバ34を通過するマイクロ波エネルギーが即座に有機材料に達するようにチャンバのマイクロ波透過窓36を配置することによって、エネルギーを緩和し、アーク放電を軽減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、ならびに、ワクチン、抗生物質、タンパク質および微生物培養物などの生物活性物質を含む有機材料のマイクロ波真空乾燥装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料の脱水は、食品加工産業および生物活性物質の生成において広く実施されている。これは備蓄用に製品を保存するために実施されることがある。また、例えば乾燥ハーブおよび多種多様なチップスなど、脱水形態で使用される製品を生成するのにも実施されることがある。従来の有機製品の脱水方法には、空気乾燥および凍結乾燥がある。この乾燥方法はどちらにも限界がある。一般に、空気乾燥は遅く、凍結乾燥はコストがかかり、どちらの方法も製品の外観およびテクスチャーを劣化させる傾向にあり、食品の場合には望ましいものではない。
【0003】
食品および生物活性物質の脱水に用いられるもう一つの方法が、マイクロ波真空脱水である。この例が、特許文献1(Durance等、2009年4月23日公開)および特許文献2(Durance等、2009年3月19日公開)に記載されている。マイクロ波真空乾燥は、空気乾燥および凍結乾燥した製品と比較して品質の向上した製品を生み出すことができる迅速な方法である。乾燥は低圧力で実施されるため、水の沸点および大気の酸素含有量は低くなり、その結果、酸化および熱劣化の影響を受けやすい食品ならびに医薬成分を空気乾燥よりも良く保存することができる。また、乾燥プロセスも空気乾燥および凍結乾燥よりも遙かに速い。本発明は、マイクロ波真空乾燥の先行技術の改良に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許第2009/049409号明細書
【特許文献2】国際特許第2009/033285号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明の一側面は、真空チャンバで有機材料を乾燥させる際のマイクロ波発生器の操作方式に関する。本発明者は、複数のマイクロ波発生器を使用し、この発生器をプログラムした組み合わせおよび順序で作動させることにより、マイクロ波電界をマイクロ波透過窓の端から端までにわたって正確に制御することが可能であることを見つけ出した。マイクロ波の干渉を利用することにより、本発明は、電気的に制御したマイクロ波によるランダムスキャンを実現することができるため、有機材料はマイクロ波エネルギーによって一様に処理される。これにより、乾燥プロセスのさらに高度な制御が可能になる。
【0006】
マイクロ波の出力照射線が重複するように2つ以上のマイクロ波照射源を一緒に動作すると、合流する2つの川のように、出力照射線が合体し、合流照射線またはビームの状態で互いに干渉する。2つのマイクロ波照射線の場合、この2つが互いの位相から外れると、位相がシフトすることによってマイクロ波の合流照射線の再配向が生じる。本発明者は、複数のマイクロ波照射源をランダムな時間で作動/作動停止すると、結果としてマイクロ波ビームはランダムな方位を持つことを見つけ出した。この原理を用いて、合流したマイクロ波照射線をランダムかつ均等に所定スペースの端から端まで照射またはスキャンすることができ、マイクロ波発生器の向きを機械的に変更する必要はない。本発明では、脱水する有機材料を入れた真空チャンバにマイクロ波の放射線を伝送するためのマイクロ波透過窓の端から端までマイクロ波照射線を照射またはスキャンする。脱水する材料は場合によっては、真空チャンバの中を通ってまたは内部で動いていてもよい。材料がこのように動くことにより、マイクロ波エネルギーの材料内部へのさらなる照射を補助できる。
【0007】
マイクロ波チャンバには、窓を通過し、脱水中の有機材料を通過したマイクロ波エネルギーを吸収するための適切な水負荷終端器を組み入れてもよい。この水負荷終端器は、真空チャンバ内で余分なマイクロ波放射線が反射するのを軽減する役割を果たし、高電界の節に対する電位を制御することによってアーク放電の電位を下げる。
【0008】
本発明の一側面によれば、有機材料の脱水装置であって、真空チャンバと、2つ以上のマイクロ波発生器からなるセットと、マイクロ波放射線を真空チャンバ内に伝送するためのマイクロ波透過窓と、マイクロ波発生器と窓との間にあるマイクロ波チャンバと、マイクロ波発生器の動作を制御してこのマイクロ波発生器をプログラムした組み合わせおよび順序で作動/作動停止させることによって、任意の1つの発生器からのマイクロ波の照射線とセットの他の発生器からのマイクロ波の照射線との間に干渉を起こす手段とを有する装置が提供される。
【0009】
本発明のもう一つの側面は、マイクロ波による真空脱水装置で発生するマイクロ波放射線のアーク放電の軽減に関するものである。アーク放電は、脱水中の製品を燃焼させるおそれがある。本発明者は、真空チャンバのマイクロ波透過窓を通過する放射線が即座に有機材料に達してから、真空チャンバ内のさらに先へ進むように有機材料を配置する構成によって、このようなアーク放電を軽減できることを見つけ出した。こうすることによって、真空チャンバ内のマイクロ波エネルギーを緩和する効果があるため、アーク放電が軽減される。有機材料によって起こるマイクロ波の反射線は、マイクロ波チャンバ内に戻り、そこで定在波およびホットスポットを生成することができる。マイクロ波チャンバの圧力は大気圧であるため、アーク放電が起こる確率は非常に低い。この構成は、有機材料を窓に接触させるか接近させて配置することにより達成し、場合によっては、例えば窓に接触させるか接近させたマイクロ波透過コンベヤベルトに載せて、窓の端から端まで有機材料を運搬することによって達成する。
【0010】
本発明のこの側面によれば、有機材料を脱水する装置であって、真空チャンバと、マイクロ波発生器と、真空チャンバ内のマイクロ波透過窓と、窓と発生器との間にあるマイクロ波チャンバと、場合によっては、真空チャンバ内のマイクロ波透過窓の端から端まで有機材料を運搬する手段とを有する装置が提供される。
【0011】
前述の特徴の両方、すなわちマイクロ波電界の制御およびアーク放電の軽減を1つの装置に組み入れることができる。本発明のこの側面によれば、装置は、真空チャンバと、2つ以上のマイクロ波発生器からなるセットと、真空チャンバ内のマイクロ波透過窓と、マイクロ波発生器と窓との間にあるマイクロ波チャンバであって、窓を通過するマイクロ波放射線が即座に有機材料に達することができるよう、有機材料が窓に接触するか隣接して配置されるように窓が位置決めされるマイクロ波チャンバと、マイクロ波発生器の動作を制御してこのマイクロ波発生器をプログラムした組み合わせおよび順序で作動/作動停止させることによって、任意の1つの発生器からのマイクロ波の照射線とセットの他の任意の発生器からのマイクロ波の照射線との間に干渉を起こす手段とを備える。
【0012】
本発明はさらに、有機材料の脱水方法を提供する。本発明による脱水に適した材料の例には、丸ごと、ピューレ状またはカットした果物、凍結または凍結していない果物で、バナナ、マンゴー、パパイヤ、パイナップル、メロン、リンゴ、ナシ、サクランボ、ベリー、モモ、アンズ、プラム、ブドウ、オレンジ、レモン、グレープフルーツなど;新鮮なまたは凍結した丸ごと、ピューレ状またはカットした野菜で、エンドウ、インゲン、トウモロコシ、ニンジン、トマト、コショウ、ハーブ、ジャガイモ、ビート、カブ、カボチャ、タマネギ、ニンニクなど;果物ジュースおよび野菜ジュース;調理済み穀物で、米、オートムギ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、亜麻仁など;親水コロイド溶液または懸濁液、植物性ガム;凍結液体細菌培養物、ワクチン、酵素、タンパク質分離物;アミノ酸;注射薬、医薬品、天然の医薬品化合物、抗生物質、抗体;親水コロイドまたはガムが、比較的不安定な材料の小滴または粒子を、その不安定な材料を保護して安定化させる手段として包囲かつ封入する複合材料;肉、魚および魚介類で、新鮮なまたは凍結したもの、丸ごと、ピューレ状またはカットしたもの;牛乳、チーズ、ホエータンパク質分離物、およびヨーグルトなどの日用食品;果物、野菜および肉の液状エキスがある。
【0013】
本脱水方法の一側面は、マイクロ波発生器の動作方式に関するものである。この側面によれば、本方法は、有機材料を真空チャンバに導入する工程と、真空チャンバの圧力を大気圧よりも低い圧力まで低下させる工程と、2つ以上のマイクロ波発生器からなるセットをプログラムした組み合わせおよび順序で作動/作動停止させることによって、任意の1つの発生器からのマイクロ波の照射線と他の任意の発生器からのマイクロ波の照射線との間に干渉を起こし、マイクロ波透過窓を介して真空チャンバ内へマイクロ波放射線の照射線を印加して有機材料を脱水する工程と、脱水した材料を真空チャンバから取り除く工程とを含む。
【0014】
本脱水方法のもう一つの側面は、有機材料の脱水を実行している間にマイクロ波による真空脱水装置内で起こるマイクロ波放射線のアーク放電を軽減することに関し、これによってマイクロ波電界が窓を通過すると即座に有機材料によって緩和される。この側面によれば、本方法は、有機材料を真空チャンバに導入する工程と、圧力を大気圧よりも低い圧力まで低下させる工程と、マイクロ波放射線を窓を介して印加してこの窓に接触させるか接近させた有機材料を、場合によっては真空チャンバの中を通って運搬しながら脱水する工程と、脱水した有機材料を真空チャンバから取り除く工程とを含む。
【0015】
前述の方法の両方を1つの方法に組み入れることができ、この方法は、有機材料をマイクロ波透過窓の端から端まで運搬する工程と、複数のマイクロ波発生器をプログラムした組み合わせおよび順序で作動/作動停止させてマイクロ波放射線を窓を介して印加する工程とを含む。
【0016】
本発明のこれらの特徴およびその他の特徴は、以下の好適な実施形態についての記載および図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態による装置の等角図である。
【図2】図1の図を反対側から見た等角図であり、出力モジュールハウジングと真空チャンバのカバーを取り除いた図である。
【図3】図1の線3−3で切断した切開図である。
【図4】図2の線4−4で切断した切開図である。
【図5】装置の別の実施形態の長手方向の切開図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の記載および図では、対応する部分および同様の部分には同じ参照符号を付し、当業者が完全に理解できるように特定の詳細を記載している。しかし、本開示を不必要に不明瞭にするのを避けるため、公知の要素を図示したり詳細に記載したりはしていない。そのため、記載および図面は例示的なものであり、限定的な意味はないと解釈されるべきものである。
【0019】
脱水装置20は処理ユニット22を備え、この装置で有機材料をマイクロ波により真空乾燥させる。このユニットは、入口端24および出口端26を有し、入口端には原材料の搭載モジュール28を備え、出口端には脱水した材料の吐出モジュール30を備える。処理ユニット22はフレーム32で支持する。
【0020】
真空チャンバ34は、処理ユニット22の全長にわたって延びている。テフロン(登録商標)製のマイクロ波透過窓36は、真空チャンバの底壁を形成する。真空チャンバは、カバー38および側壁40を有し、壁の間には支持部材106を備える。マイクロ波チャンバモジュールは窓36の下に配置し、図示した実施形態ではこのような4つのモジュール42A、42B、42C、42Dがある。各モジュールは、6つのマイクロ波発生器50およびマイクロ波チャンバ52からなるセットを有する。各マイクロ波チャンバは、くぼみ56のある床部54であって、それぞれのくぼみがそれぞれのマイクロ波発生器50を収容する床部、および外側に向かって上向きに広がる2つの側壁58を有する。マイクロ波チャンバの横断方向の側壁59は、隣接するマイクロ波チャンバを隔てている。マイクロ波透過窓36は、マイクロ波チャンバ52の上壁を形成する。マイクロ波チャンバは、大気から密閉されてはいないため、空気が充満し、気圧は大気圧である。マイクロ波チャンバは、空間および距離によって干渉マイクロ波を生成するために使用する。
【0021】
図1から図4の実施形態は、各モジュールに6つのマイクロ波発生器を有するが、本装置はこのようにする代わりに、各モジュールに少なくとも2つの発生器があり、それぞれの発生器から発生する波同士の間で干渉が生じうるようにするかぎり、各モジュールにこれとは異なる数の発生器を有することができる。例えば、各モジュールは、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のマイクロ波発生器を有してもよい。モジュール内の発生器は、2列以上に配置し、各列に2つ以上の発生器があってもよい。たとえば、図1〜4の実施形態では、平行な2列があり(1列が処理ユニット22の長手軸に直角の方向)、1列あたり3つの発生器を備えている。このようにする代わりに、各モジュールには単一列の発生器が処理ユニットの長手軸に直角にあり、各列に2つ、3つまたはこれ以上の発生器があってもよい。図5は、各モジュールに単一列に配置した3つのマイクロ波発生器50がある装置の実施形態200を示す。いずれの場合でも、モジュール内の発生器同士の間の間隔は、それぞれの発生器から発生するマイクロ波照射線の間に干渉が起こるように設定する。
【0022】
有機材料を真空チャンバの中を通って移送するマイクロ波透過コンベアベルト60は、窓36に沿って延び、窓に直接接している。コンベアベルトは、以下で説明するように、搭載モジュール28および吐出モジュール30の中に延び、例えばマイクロ波発生器の下を通過することによって途切れのないループを形成する。
【0023】
搭載モジュール28は、コンベアベルト60の上に位置する原材料供給器62を有し、脱水する原材料をコンベアベルトの上に落下させるように構成する。ベルトは、搭載モジュール内のコンベアローラ63の外周を通過する。原材料供給タンク64を供給管66を介して原材料供給器62に接続する。供給制御装置68が原材料の供給機への流れを制御する。供給タンク64の圧力は大気圧である。真空チャンバと供給タンクとの間の圧力差によって、脱水用の液状の原材料を供給器および真空チャンバの中に吸引することができる。断片形状もしくは微粒子形状の、または開口容器に入った脱水用原材料であれば、導管、オーガまたは事実上真空ロスなしに材料を真空チャンバに移送することができるその他の装置によって、処理ユニット22に導入できる。例えば、ガラス製の血清バイアルなど、個々に開口した一連の容器であれば、真空チャンバに導入し、マイクロ波透過ベルト上か窓に直接載せて窓の端から端まで運搬してもよい。搭載モジュール28は、処理ユニットの入口端24に固定して密着させたハウジング70を有する。搭載モジュールの内部は真空チャンバに対して開口しているため、装置の動作中は圧力が低い。ハウジングにあるのぞき窓72によって、真空チャンバの中を視覚的に点検することができる。
【0024】
吐出モジュール30は、コンベアベルト60を誘導するコンベアローラ74を有する。外向きのローラの下に、コンベアベルトから落下する脱水した材料を受容する材料収集器76を設置する。モータ80によって回転する駆動ローラ78でコンベアベルトを駆動する。吐出モジュール30は、処理ユニット22の出口端26に固定して密閉したハウジング82と、のぞき窓73とを備える。吐出モジュールは、真空チャンバに対して開口しているため、装置の作動中は圧力が低い。
【0025】
場合によっては、図3に示すように、コンベアベルト60は、マイクロ波発生器の下に延びることなく途切れのないループを形成することができる。この場合、コンベアベルトの経路は、搭載モジュールにある単一ローラ63の周りおよび吐出モジュールにある単一ローラ74の周りであり、ベルトの復路はその往路とマイクロ波透過窓36との間にある。したがって、往路のベルトは復路のベルトの上にあり、復路のベルトはマイクロ波透過窓36の上にある。ベルトの駆動には駆動ローラ(図3には図示せず)を備える。
【0026】
オーガコンベア84を材料収集器76の下に設置し、この収集器から脱水した材料を受け取る。材料収集器76の下端部とオーガコンベア84との間の真空シール86が、真空チャンバ34およびオーガコンベア84内部の真空を維持する。オーガ84はモータ88で駆動する。オーガコンベアの一方の端部にある1対の出口バルブ90A、90Bにより、脱水した材料を装置から取り除く。バルブ90A、90Bがエアロックの機能を果たすことによって乾燥製品を取り除くことができる。乾燥製品を受容する真空密閉した容器(図示せず)をバルブに取り付ける。一方のバルブが一定時間開口して1つの容器にオーガから来る製品を受容するのに対し、もう一方のバルブは閉鎖して充填された容器をそのバルブから取り除けるようにする。この2つのバルブの開口と閉鎖を交互に行い、オーガが連続的に稼働できるようにする。
【0027】
脱水装置は、導管97を介して真空供給器110に作動的に接続する真空ポンプ96を備え、真空供給器は、真空チャンバの側壁40にある真空口98で真空チャンバに接続する。凝縮器100を作動的に冷却ユニット102に接続し、有機材料の脱水中に生成される水蒸気を凝縮する。このようにする代わりに、凝縮器は真空チャンバの外部に設置し、真空チャンバと真空ポンプとの間に接続してもよい。
【0028】
装置は、コンプレッサ、冷却ファンおよび冷媒ポンプを有する冷却ユニット102を備え、この冷却ユニットは冷媒パイプ108を介して冷媒を凝縮器100まで運搬するよう接続され、これによって凝縮器を所望の温度に維持する。
【0029】
水負荷終端器を真空チャンバ34の上方部に設けてマイクロ波エネルギーを吸収することにより、真空チャンバでのマイクロ波の反射を防止する。これは、真空チャンバのカバー38の下にある図4に示すマイクロ波透過性の水管112によって達成する。ポンプ(図示せず)によって水管を通って汲み上げる水は、塩水または淡水である。水管112のサイズおよび構成は、マイクロ波電界に適合するようにさまざまであってよい。
【0030】
装置20は、システムの動作を制御するようにプログラムし、接続したプログラマブルロジックコントローラ(PLC)を備え、このコントローラは、供給原料の流入、モータ、マイクロ波発生器、真空ポンプおよび冷媒ポンプの制御などを行う。このコントローラは、マイクロ波発生器モジュール42A〜42Dのそれぞれにあるマイクロ波発生器を作動/作動停止するようにプログラムする。マイクロ波発生器が作動するたびに、発生器が生成したマイクロ波は新たな位相を持つ。マイクロ波の干渉により、新たな位相を持つマイクロ波は他のマイクロ波と干渉し、有機材料全体に新たなマイクロ波の照射ができる。マイクロ波発生器はPLCプログラムによって作動/作動停止するが、マイクロ波の位相はランダムに生成される。マイクロ波の照射はこのようにランダムに頻繁に変化する。時間が経過すると、有機材料全体にかかる平均的なマイクロ波エネルギーは均等化される。
【0031】
例えば、1つのモジュール内で所定の発生器をセットした時間に5秒間オンにし、その後2秒間オフにし、その後5秒間オンにするということなどができる。1つのモジュール内の発生器の少なくとも2つを任意の所定時間照射させ、発生器から出力される電力がより強く、製品の脱水に利用可能なものとなることが好ましい。発生器が作動する時間の特有のランダムなバリエーションによって、任意の1つの発生器が生成するマイクロ波の位相は、これ以外の発生器それぞれが生成するマイクロ波の位相から常に外れている。したがって、マイクロ波照射線は互いに干渉し合い、パルスが強化したマイクロ波エネルギーを生成して真空チャンバに進入する。パルスの方向は、モジュール内の発生器が照射したチャンバ内の領域でランダムに変化する。ある時間が経過すると、この領域のどの部分も実質的に同量のエネルギーを受ける。
【0032】
脱水装置20は、以下の方法で動作する。真空ポンプ、冷媒ポンプ、水ポンプ、マイクロ波発生器、モータ80、88および原材料供給制御装置68をすべてPLCの制御で作動させる。真空チャンバ内の圧力を約1.33Pa(0.01Torr)〜約13330Pa(100Torr)の範囲内にすることができ、このようにする代わりに約13.3Pa(0.1Torr)〜約4000Pa(30Torr)にすることができる。脱水する有機材料をコンベアベルト60の上に供給し、マイクロ波透過窓の端から端まで真空チャンバの中を通って運搬する。窓を通過する発生器からの照射によって材料を脱水する。処理時間は約0.5〜2時間の範囲内にすることができる。脱水した材料は材料収集器76に落下し、オーガコンベア84内に移動し、出口バルブ90A、90Bを通って装置から取り外される。
【0033】
実施例1
前述した装置20の形態の脱水装置はマイクロ波発生器を有し、この発生器のそれぞれの出力電力は1,200ワットである。したがって、4つの発生器からなる所与のマイクロ波発生器モジュール内のピーク電力は、4.8キロワットである。真空システムは、装置を真空にして絶対圧13.3Pa(0.1Torr)にする。それぞれのマイクロ波チャンバは、高さ14.5インチ(36.8cm)、長さ27インチ(68.6cm)および幅(上部分)28インチ(71.1cm)である。マイクロ波発生器同士の間の間隔(中央から中央)は、隣接する列同士の間が12インチ(30.5cm)、列の隣接する発生器同士の間が6インチ(15.2cm)である。コンベアベルトは、毎秒0.01〜1センチメートルの範囲の速度で動作する。
【0034】
実施例2
バッチ方式で有機材料を乾燥させる本発明の実施形態を動作させ、さまざまな食品、生体活性材料およびバイアル内の材料を、場合によっては凍結材料を用いて脱水した。脱水した材料の最終水分含量を測定した。
【0035】
(a)牛肉塊、芽キャベツ、グリーンピースおよび卵白の大量のサンプルを圧力4666Pa(35Torr)で乾燥させた。その結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

(b)生体活性材料、すなわちリパーゼおよびアミラーゼの凍結サンプルを約20Pa(0.15Torr)以下の圧力で乾燥させた。その結果を表2に示す。
【0037】
【表2】

(c)バイアル内の材料サンプルを約20Pa(0.15Torr)以下の圧力で乾燥させた。その結果を表3に示す。
【0038】
【表3】

本装置のいくつかの機能または特定の構造もしくはステップを実行する特定の手段を好適な実施形態に沿って上記のように記載したが、本発明の本装置および方法にはこれ以外のさまざまな手段、構造およびステップを用いてもよいことが理解されるべきである。この例には以下ものがある。
【0039】
(i)マイクロ波透過窓の端から端まで有機材料を運搬する手段には、窓の振動、窓の傾斜、および重力の使用、機械的押出機などを含めてもよい。
(ii)真空チャンバ内の圧力を低下させる手段には、施設の中央真空システムへの接続など、真空チャンバに真空を印加するどのような手段を含めてもよい。
【0040】
(iii)有機材料を真空チャンバに搭載する手段および/または脱水した材料を吐出する手段は、固体、ゲルなどのさまざまな材料形態の搭載、およびバイアルに入ったワクチンなど、容器内の材料の扱いが容易になる構造にすることができる。
【0041】
(iv)脱水装置は、バッチ方式でも連続方式でも動作する構造にすることができる。バッチ方式の場合、装置は搭載モジュールおよび吐出モジュール、または有機材料を真空チャンバの中を通って移動させるコンベアは必ずしも必要ではない。適切に言えば、材料を真空チャンバ内に配置したのち、真空チャンバを密閉して真空状態にする。脱水後、真空状態を崩して真空チャンバの密閉を解放し、乾燥した材料を取り除く。このような動作は機械化してもよいし、作業者が手動で行ってもよい。
【0042】
(v)処理装置には、単一のモジュールをはじめ、所望数および実用的な数のモジュールを備えることができる。モジュールは、装置が必要とする床スペースを縮小するために積層構成に配置してもよい。
【符号の説明】
【0043】
20 脱水装置
22 処理ユニット
24 処理ユニットの入口端
26 処理ユニットの出口端
28 搭載モジュール
30 吐出モジュール
32 フレーム
34 真空チャンバ
36 マイクロ波透過窓
38 真空チャンバのカバー
40 真空チャンバの側壁
42A〜D マイクロ波チャンバモジュール
50 マイクロ波発生器
52 マイクロ波チャンバ
54 マイクロ波チャンバの床
56 床のくぼみ
58 マイクロ波チャンバの側壁
59 マイクロ波チャンバの奧壁
60 コンベアベルト
62 原材料供給器
63 搭載モジュールのコンベアベルトローラ
64 原材料タンク
66 供給管
68 供給制御装置
70 搭載モジュールのハウジング
72 搭載モジュールののぞき窓
73 吐出モジュールののぞき窓
74 吐出モジュールのコンベアベルトローラ
76 材料収集器
78 駆動ローラ
80 駆動ローラ用モータ
82 吐出モジュールのハウジング
84 オーガコンベア
86 吐出モジュールの真空シール
88 オーガコンベア用モータ
90A、B 出力制御バルブ
96 真空ポンプ
97 真空管
98 真空チャンバの側壁にある真空口
100 凝縮器
102 冷却ユニット
106 真空チャンバ支持材
108 冷媒パイプ
110 真空供給器
112 水搭載チューブ
200 脱水装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機材料の脱水装置であって、
(a)真空チャンバと、
(b)2つ以上のマイクロ波発生器からなるセットと、
(c)前記マイクロ波発生器から前記真空チャンバへマイクロ波放射線を伝送するマイクロ波透過窓と、
(d)前記マイクロ波発生器と前記マイクロ波透過窓との間にあるマイクロ波チャンバであって、前記セット内の前記2つ以上のマイクロ波発生器は、任意の1つの発生器からのマイクロ波の照射線が、前記マイクロ波チャンバ内で前記セットのその他の任意の発生器からのマイクロ波の照射線と重複するように配置されるマイクロ波チャンバと、
(e)前記マイクロ波発生器の動作を制御して前記マイクロ波発生器を作動/作動停止させることによって、任意の1つの発生器からの前記マイクロ波の照射線と前記セットの他の任意の発生器からの前記マイクロ波の照射線との間に干渉を起こす制御手段と
を有する装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記セットの第1の発生器を第1の時間に第1の継続時間の間作動させ、これを第2の継続時間の間作動停止し、前記発生器の別の1つを第2の時間に第3の継続時間の間作動させ、これを第4の継続時間の間作動停止する手段を含み、前記第1の時間は前記第2の時間とは異なる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記有機材料を前記真空チャンバに搭載する搭載手段をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
脱水した有機材料を前記真空チャンバから吐出する吐出手段をさらに備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記有機材料を前記真空チャンバの中を通って運搬する運搬手段をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記運搬手段は、前記有機材料を前記真空チャンバ内の前記マイクロ波透過窓の端から端まで運搬する手段を備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記運搬手段は、前記マイクロ波透過窓に隣接するコンベアベルトを備える、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記マイクロ波チャンバおよびマイクロ波発生器の前記セットはモジュールを備え、前記装置は2つ以上のモジュールを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、入口端部および該入口端部から離れた出口端部を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記搭載手段は前記装置の入口端にあり、前記吐出手段は前記装置の出口端にある、請求項4に記載の装置。
【請求項11】
前記マイクロ波発生器は、前記装置の長手軸に対して全体的に直角の列に位置する、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記セットは3つのマイクロ波発生器を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記セットは、前記装置の長手軸に対して全体的に直角の2つ以上の列に位置する4つ以上のマイクロ波発生器を備え、各列は2つ以上の発生器を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記真空チャンバに配置される水負荷終端器をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記水負荷終端器は、前記真空チャンバの上部カバーに隣接する水管を備える、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記コンベアベルトは、前記マイクロ波発生器の下に延びる途切れのないループを形成する、請求項7に記載の装置。
【請求項17】
前記コンベアベルトは、前記マイクロ波透過窓に隣接する途切れのないループを形成する、請求項7に記載の装置。
【請求項18】
前記真空チャンバ内部の圧力を低下させる手段をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
有機材料の脱水装置であって、
(a)真空チャンバと、
(b)マイクロ波発生器と、
(c)前記マイクロ波発生器からのマイクロ波放射線を前記真空チャンバへ伝送するマイクロ波透過窓と、
(d)前記マイクロ波発生器と前記マイクロ波透過窓との間にあるマイクロ波チャンバと、
(e)前記有機材料を前記真空チャンバ内の前記マイクロ波透過窓の端から端まで運搬する運搬手段と
を備える有機材料の脱水装置。
【請求項20】
前記運搬手段は、前記マイクロ波透過窓に隣接するコンベアベルトを備える、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記コンベアベルトは、前記マイクロ波発生器の下に延びる途切れのないループを形成する、請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記コンベアベルトは、前記マイクロ波透過窓に隣接する途切れのないループを形成する、請求項19に記載の装置。
【請求項23】
前記有機材料を前記真空チャンバに搭載する搭載手段をさらに備える、請求項19に記載の装置。
【請求項24】
脱水した有機材料を前記真空チャンバから吐出する吐出手段をさらに備える、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記搭載手段は前記装置の入口端にあり、前記吐出手段は前記装置の出口端にある、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記真空チャンバに配置される水負荷終端器をさらに備える、請求項19に記載の装置。
【請求項27】
前記水負荷終端器は、前記真空チャンバの上部カバーに隣接する水管を備える、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記真空チャンバ内部の圧力を低下させる手段をさらに備える、請求項19に記載の装置。
【請求項29】
有機材料の脱水方法であって、
(a)該有機材料を真空チャンバに導入する工程であって、前記チャンバは2つ以上のマイクロ波発生器からなるセットからのマイクロ波放射線を受けるように配置され、前記セットの前記発生器は任意の1つの発生器からのマイクロ波の照射線が前記セットのその他の任意の発生器からのマイクロ波の照射線と重複するように配置される工程と、
(b)前記真空チャンバの圧力を大気圧よりも低い圧力まで低下させる工程と、
(c)前記セットの前記2つ以上の発生器を複数の時間に作動/作動停止させることによって、前記発生器の任意の1つからのマイクロ波の照射線と前記発生器のその他の任意の発生器からのマイクロ波の照射線との間に干渉を起こし、マイクロ波の前記照射線をマイクロ波透過窓を介して印加して前記真空チャンバ内の前記有機材料を脱水する工程と、
(d)前記脱水した材料を前記真空チャンバから取り除く工程と
を含む方法。
【請求項30】
前記作動/作動停止させる工程は、
前記セットの第1の発生器を第1の時間に第1の継続時間の間作動させ、これを第2の継続時間の間作動を停止し、前記発生器の別の1つを第2の時間に第3の継続時間の間作動させ、これを第4の継続時間の間作動を停止することを含み、前記第1の時間は前記第2の時間とは異なる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の継続時間は前記第3の継続時間と重複する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記セットには少なくとも3つのマイクロ波発生器があり、それぞれの発生器は別々の時間に作動する、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記発生器の少なくとも2つは同一時間に放射する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
脱水する際に前記有機材料を前記真空チャンバの中を通って運搬する前記工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記有機材料は前記マイクロ波透過窓の端から端まで運搬される、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記有機材料は容器内で導入され取り除かれる、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記方法は連続方式で動作し、圧力を低下させる前記工程は、前記有機材料を導入する前記工程の前に行う、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
前記方法はバッチ方式で動作し、圧力を低下させる前記工程は、前記有機材料を導入する前記工程の後に行う、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
前記低下した圧力は、1.33Pa(0.01Torr)〜13330Pa(100Torr)の範囲内の圧力である、請求項29に記載の方法。
【請求項40】
前記低下した圧力は、13.3Pa(0.1Torr)〜4000Pa(30Torr)の範囲内の圧力である、請求項29に記載の方法。
【請求項41】
前記マイクロ波チャンバ内の導管に水を流入してマイクロ波エネルギーを吸収させるステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項42】
前記有機材料は、果物、野菜、果物ジュース、野菜ジュース、調理済み穀物、細菌培養物、ワクチン、酵素、タンパク質分離物、親水コロイド、注射薬、医薬品、抗生物質、抗体、肉、魚、魚介類、牛乳、チーズ、ホエータンパク質分離物、ヨーグルト、果物エキス、野菜エキスおよび肉エキスのうちの1つを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項43】
前記有機材料は、新鮮なものおよび凍結したもののうちの1つである、請求項29に記載の方法。
【請求項44】
前記有機材料は親水コロイドに封入されている、請求項29に記載の方法。
【請求項45】
有機材料の脱水方法であって、
(a)前記有機材料を真空チャンバに導入する工程と、
(b)前記真空チャンバの圧力を大気圧よりも低い圧力まで低下させる工程と、
(c)前記真空チャンバのマイクロ波透過窓の端から端まで前記真空チャンバの中を通って前記有機材料を運搬する工程と、
(d)マイクロ波放射線を前記マイクロ波透過窓を介して印加し、前記真空チャンバの中を通って前記有機材料を運搬する際に該有機材料を脱水する工程と、
(e)前記脱水した有機材料を前記真空チャンバから取り除く工程と
を含む方法。
【請求項46】
前記工程(c)は、前記窓に隣接するコンベアベルトの移動を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記有機材料は容器内で導入され取り除かれる、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記方法は連続方式で動作し、圧力を低下させる前記工程は、前記有機材料を導入する前記工程の前に行う、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記方法はバッチ方式で動作し、圧力を低下させる前記工程は、前記有機材料を導入する前記工程の後に行う、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記低下した圧力は、1.33Pa(0.01Torr)〜13330Pa(100Torr)の範囲内の圧力である、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記低下した圧力は、13.3Pa(0.1Torr)〜4000Pa(30Torr)の範囲内の圧力である、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
前記マイクロ波チャンバ内の導管に水を流入してマイクロ波エネルギーを吸収させる工程をさらに含む、請求項45に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−517442(P2013−517442A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548314(P2012−548314)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001686
【国際公開番号】WO2011/085467
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(510089351)エンウェイブ コーポレイション (2)
【氏名又は名称原語表記】ENWAVE CORPORATION
【Fターム(参考)】