説明

有機酸のケイ素含有前駆体化合物を触媒として、充填された、及び充填されていないポリマーコンパウンドに用いる使用

本発明は、有機酸のケイ素含有前駆体化合物、とりわけ有機酸のオレフィン性ケイ素含有前駆体化合物、及び/又はテトラカルボキシシランを、熱可塑性ベースポリマー、及び/又は熱可塑性ベースポリマーのモノマー及び/又はプレポリマーからの、充填された及び/又は充填されていないポリマーコンパウンド、ポリマー、充填されたプラスチック、例えば顆粒又は完成製品の製造に用いる使用に関する。完成製品とは、物品、例えば成形体、とりわけケーブル、チューブ、又は管である。本発明はさらに、ケイ素含有前駆体化合物を含むマスターバッチに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機酸のケイ素含有前駆体化合物、とりわけ有機酸のオレフィン性ケイ素含有前駆体化合物、及び/又はテトラカルボキシシランを、熱可塑性ベースポリマー、及び/又は熱可塑性ベースポリマーのモノマー及び/又はプレポリマーからの、充填された及び/又は充填されていないポリマーコンパウンド、ポリマー、又は充填されたプラスチック、例えば顆粒又は完成製品の製造に用いる使用に関する。完成製品とは物品であり、例えば、成形体、とりわけケーブル、チューブ、又は管である。本発明はさらに、ケイ素含有前駆体化合物を含む、マスターバッチに関する。
【0002】
充填された、又は充填されていないポリマーコンパウンド、とりわけポリエチレン(PE)、及びそのコポリマーを製造するため、シラングラフトされた、又はシラン共重合されたポリエチレンの架橋のためにシラノール縮合触媒として、有機スズ化合物、又は芳香族スルホン酸(Borealis Ambicat(登録商標))を用いることは公知である。有機スズ化合物の欠点はその高い毒性であり、一方スルホン酸には刺激臭が認められるが、その刺激臭は全ての工程段階を通じて最終製品まで続くことが欠点である。反応条件による副生成物によって、スルホン酸で架橋されたポリマーコンパウンドは通常、食料品分野、又は飲料水供給分野での使用、例えば水道管製造には適していない。通常のスズ−シラノール縮合触媒は、その配位球により触媒として作用する、ジラウリン酸ジブチルスズ(dibutyltindilaurate、DBTDL)、及びジラウリン酸ジオクチルスズ(diocytyltindilaurate、DOTL)である。
【0003】
湿分架橋可能なポリマーを製造するために、ラジカル形成剤の存在下でポリマー鎖にシランをグラフトさせ、そしてその成形後に、前述のシラン加水分解触媒及び/又はシラノール縮合触媒の存在下で湿分架橋を行うことは公知である。加水分解可能な不飽和シランによるポリマーの湿分架橋は、ケーブル、管、発泡体などの製造に世界的に使用されている。この種類の方法は、シオプラスプロセス(Sioplas-Prozess)(DE 19 63 571 C3、DE 21 51 270 C3、US 3,646,155)、及びモノシルプロセス(Monosil-Prozess)(DE 25 54 525 C3、US 4,117,195)という名称で知られている。モノシル法(Monosil-Verfahren)の場合、架橋触媒は既に第一の加工工程で添加され、シオプラス法(Sioplas-Verfahren)の場合、架橋触媒の添加は後続の成形工程で初めて行われる。その上、ビニル官能性シランは、モノマー及び/又はプレポリマーとともに直接共重合させてベースポリマーにできるか、又はポリマー鎖へのグラフトによってポリマーに結合させることができる。
【0004】
EP 207 627は、スズ含有触媒システム、ひいては、ジブチルスズ酸化物とエチレン−アクリル酸コポリマーとの反応に基づく変性コポリマーを開示している。JP 58013613は、Sn(アセチル)2を触媒として使用し、そしてJP 05162237はカルボン酸スズ、カルボン酸亜鉛、又はカルボン酸コバルトを、結合された炭化水素基と一緒にシラノール縮合触媒として、例えばマレイン酸ジオクチルスズ、モノブチルスズオキシド、ジメチルオキシブチルスズ、又はジブチルスズ二酢酸を用いる使用を教示している。JP 3656545は架橋のため、亜鉛とアルミニウム石鹸、例えば亜鉛オクチレート、ラウリン酸アルミニウムを使用する。JP 1042509は同様に、シランを架橋させるための、有機スズ化合物の使用を開示しているが、またチタンキレート化合物ベースのアルキルチタン酸エステルも開示している。
【0005】
官能性トリクロロシランの脂肪酸反応生成物は一般的に、1960年代から公知であり、とりわけ潤滑添加剤として知られている。DE 25 44 125は、磁気テープの被覆における潤滑添加剤としてのジメチルジカルボキシシランの使用を開示している。強酸及び強塩基の不在下では、化合物は加水分解に対して充分に安定性である。
【0006】
本発明の課題は、従来技術から公知の触媒の前記欠点を有さず、かつ好適にはシラングラフトされた、シラン共重合されたポリマー、モノマー、若しくはプレポリマーによって、又は一般的に熱可塑性ポリマーによって分散可能又は均質化可能な新規のシラン加水分解触媒及び/又はシラノール縮合触媒を開発することである。好ましくは、シラン加水分解触媒及び/又はシラノール縮合触媒は液状、ワックス状〜固体であり、かつ/又は担体材料上に施与され、又はカプセル化されている。
【0007】
この課題は、請求項1の特徴に相応する本発明による使用によって、また請求項12及び13に記載のマスターバッチによって解決される。好ましい実施態様は、従属請求項、及び明細書から読み取ることができる。
【0008】
意外なことに、有機酸のケイ素含有前駆体化合物がシラン加水分解触媒、及び/又はシラノール縮合触媒として使用可能なこと、とりわけシラノール架橋のための触媒として、又は基材の縮合可能な他の官能基とともに、例えばOH−Si、又はHO−基材とともに使用可能なことが判明した。前駆体化合物に対する一般的な要求は、前記化合物が加水分解可能なこと、とりわけ湿分の存在下で加水分解可能なことであり、これによって遊離有機酸を放出可能なこと、とりわけモノシルプロセス、及び/又はシオプラスプロセスの方法条件下で遊離有機酸を放出可能なことである。本発明によれば、有機酸のケイ素含有前駆体化合物は、熱供給下、より良好には溶融条件下、湿分の存在下で加水分解可能であり、かつ少なくとも部分的に、又は完全に有機酸を放出する。
【0009】
本発明のさらなる態様によれば、有機酸のケイ素含有前駆体化合物を、モノシル法、シオプラス法、又は共重合法で使用することができる。とりわけ前記化合物は、オレフィンポリマー上へのグラフトのため、モノマー、プレポリマー、及び/又は熱可塑性ベースポリマーによる共重合のために使用可能である。その上、意外なことに、有機酸のケイ素含有前駆体化合物はまた、定着剤(Haftvermittler)として、とりわけSi−O−Si結合の形成のため、又はSi−O−基材の形成にも使用可能であることが判明した。
【0010】
前駆体化合物を触媒として本発明により用いることによって、従来技術の触媒の上記欠点、例えば毒性や臭いによる汚損を有さない、熱可塑性ベースポリマー、ベースポリマーのモノマー及び/又はプレポリマーを簡単かつ経済的にポリマーコンパウンドに反応させることが可能になる。使用に応じて、ポリマーコンパウンド又はポリマーを製造する際にも、全体でアルコールが放出されない。
【0011】
本発明によれば、ケイ素含有前駆体化合物とは、カルボキシシラン、とりわけオレフィン性カルボキシシラン、及び/又はテトラカルボキシシランであってよい。有機酸のケイ素含有前駆体化合物であるカルボキシシランは、液相で、又は好ましくは固相で存在していてよく、かつこれによって好ましくは空気中の湿分による加水分解に対して不活性になる。オレフィン性カルボキシシランは本発明によれば、いわゆるオール−イン−ワン−パケット(All-in-one-Paket)である。というのもこれは、共重合又はグラフト可能であり、かつ同時に定着剤、及び/又はシラン加水分解触媒、及び/又はシラノール縮合触媒として作用するからである。有機酸への加水分解は好ましくは、熱及び湿分の供給下で初めて起こる。
【0012】
本発明によれば少なくとも1つの有機酸のケイ素含有前駆体化合物は、一般式I及び/又はII
【化1】

[式中、
相互に独立して、
zは0、1、2、又は3であり、
xは0、1、2、又は3であり、
yは0、1、2、又は3であり、
uは0、1、2、又は3であるが、
ただし、式I中でz+xは3以下であり、かつ式II中でy+uが独立して2以下であり、
Aは式I及び/又は式II中で相互に独立して一価のオレフィン基であり、
式II中でII価の基としてのAは、二価のオレフィン基であり、
1は相互に独立して、カルボニル−R3基に相応し、ここでR3は置換又は非置換の炭化水素基、とりわけ1〜45個のC原子を有する置換又は非置換の炭化水素基に相応し、かつ
2は相互に独立して置換又は非置換の炭化水素基に相応する]
に相応する。
【0013】
少なくとも1つの有機酸のケイ素含有前駆体化合物が、例えば一般式I(ただし、z=1、2、又は3)及び/又はII(ただし、y=0、1、2、又は3、かつ/又はz=0)、かつOR1が不飽和カルボキシレート基、とりわけテトラカルボキシシランに相応し、ベースポリマーにグラフトされるか、又は、ベースポリマーのモノマー及び/又はプレポリマーと共重合すれば、場合によりラジカル形成剤の存在下で、又は相応するカルボキシ置換されたシランでグラフトされたベースポリマーと混合されれば、かつ場合により成形後、好適には熱供給下での成形後、触媒として湿分の存在下、架橋が作用すれば、好適にはアルコールがもはや放出されない。付加的にグラフト又は共重合は、有機官能性シラン化合物の存在下で、例えば一般式IIIの不飽和アルコキシシランの存在下で行うことができる。
【0014】
好ましくは式I中、トリカルボキシシランについてはz=1かつx=0、又はz=0かつx=1であり、かつ/又はテトラカルボキシシランについてはz=0かつx=0であり、又はジカルボキシシランについてはz=1、かつx=1である。
【0015】
Aは好適には相互に独立して式I及び/又は式II中で一価のオレフィン基であり、例えばとりわけ
(R92C=C(R9)−Mk−、
ここでR9は同じであるか又は異なっており、かつ
9は水素原子、又はメチル基若しくはフェニル基であり、
基Mは−CH2−、−(CH22−、−(CH23−、−O(O)C(CH23−、又は−C(O)O−(CH23の群からの基であり、
kは0又は1、例えばビニル、アリル、3−メタクリロキシプロピル、及び/又はアクリロキシプロピル、n−3−ペンテニル、n−4−ブテニルであるか、又は
イソプレニル、3−ペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、テルペニル、スクアラニル、スクアレニル、ポリテルペニル、ベツラプレノキシ(Betulaprenoxy)、シス/トランスポリイソプレニル、又は
8−Fg−[C(R8)=C(R8)−C(R8)=C(R8)]r−Fg−、
ここでR8は同じであるか又は異なっており、かつ
6は水素原子、又は1〜3個のC原子を有するアルキル基、又はアリール基、又はアラルキル基、好適にはメチル基、又はフェニル基であり、
Fは−CH2−、−(CH22−、−(CH23−、−O(O)C(CH23−、又は−C(O)O−(CH23の群からの基であり、
rは1〜100、とりわけ1又は2であり、かつgは0又は1である、
を含み、
そして式II中、式IIでの二価オレフィン基としてのAは、相応するアルケニレン、例えば2−ペンタニレン、1,3−ブタジエニレン、イソ−3−ブテニレン、ペンテニレン、ヘキセニレン、ヘキセンジエニレン、シクロヘキセニレン、テルペニレン、スクアラニレン、スクアレニレン、ポリテルペニレン、シス/トランスポリイソプレニレンである。
【0016】
1は式I及び/又はII中で好適には、相互に独立してカルボニル−R3基、すなわち−(CO)R3基(−(C=O)−R3))に相応し、その結果−OR1は−O(CO)R3であり、ここでR3は置換又は非置換の炭化水素基(KW基)に相応し、とりわけ1〜45個のC原子、好ましくは4〜45個のC原子、とりわけ6〜45個のC原子、好ましくは6〜22個のC原子、特に好ましくは6〜14個のC原子、好適には8〜13個のC原子を有する、とりわけ線状、分枝状、及び/又は環状の非置換及び/又は置換の炭化水素基、特に好適には天然又は合成の脂肪酸の炭化水素基、とりわけR3はR1中で相互に独立して、Cn2n+1(ただしn=4〜45)の飽和KW基、例えば
【化2】

であり、又は好ましくはまた不飽和KW基、例えば
【化3】

である。短鎖のKW基R3、例えば−C49、−C37、−C25、−CH3(アセチル)、及び/又はR3=H(ホルミル)は、同様に組成物中で使用可能である。しかしながらKW基の疎水性が低いことに基づき、前記組成物は通常、式I及び/又はIIの化合物
[式中、R1は、4〜45個のC原子を有する、とりわけ6〜22個のC原子を有する、好ましくは8〜22個のC原子を有する、特に好ましくは6〜14個のC原子を有する、又は好適には8〜13個のC原子を有する、置換又は非置換の炭化水素基を有するR3の群から選択されるカルボニル−R3基である]
をベースとする。
【0017】
2は式I及び/又は式II中で相互に独立して、炭化水素基、とりわけ置換又は非置換の線状、分枝状、及び/又は環状の、1〜24個のC原子、好ましくは1〜18個のC原子を有するアルキル基、アルキニル基、アルキルアリール基、アルケニルアリール基、及び/又はアリール基である。1〜3個のC原子を有する場合にはとりわけ、アルキル基である。アルキル基として適しているのはとりわけ、エチル基、n−プロピル基、及び/又はi−プロピル基である。置換された炭化水素基として適しているのはとりわけ、ハロゲン化炭化水素、例えば3−ハロゲンプロピル基、例えば3−クロロプロピル基、又は3−ブロモプロピル基であり、これらは場合により求核置換に使用可能であり、又はPVCで適用可能でもある。
【0018】
そこで好適にはまた、アルキル置換されたジカルボキシシラン又はトリカルボキシシラン(z=0、かつx=1又は2)に相応する、一般式I及び/又はIIの有機酸のケイ素含有前駆体化合物を使用する。このための例は、メチル置換、ジメチル置換、エチル置換、又はメチルエチル置換された、カプリン酸、ミリスチン酸、油酸、又はラウリン酸をベースとするカルボキシシランである。
【0019】
カルボニル−R3基とは、有機カルボン酸の酸基と理解され(例えばR3−(CO)−)、これはカルボキシル基として前記式に相応して、ケイ素Si−OR1に上記のように結合されている。式I及び/又はIIの酸基は一般的に、天然に産生する、又は合成の脂肪酸から得ることができ、例えば飽和脂肪酸のバレリアン酸(ペンタン酸、R3=C49)、カプロン酸(ヘキサン酸、R3=C511)、エナント酸(ヘプタン酸、R3=C613)、カプリル酸(オクタン酸、R3=C715)、ペラルゴン酸(ノナン酸、R3=C817)、カプリン酸(デカン酸、R3=C919)、ラウリン酸(ドデカン酸、R3=C919)、ウンデカン酸(R3=C1023)、トリデカン酸(R3=C1225)、ミリスチン酸(テトラデカン酸、R3=C1327)、ペンタデカン酸(R3=C1429)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸、R3=C1531)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸、R3=C1633)、ステアリン酸(オクタデカン酸、R3=C1735)、ノナデカン酸(R3=C1837)、アラキン酸(エイコサン酸/イコサン酸、R3=C1939)、ベヘン酸(ドコサン酸、R3=C2143)、リグノセリン酸(テトラコサン酸、R3=C2347)、セロチン酸(ヘキサコサン酸、R3=C2551)、モンタン酸(オクタコサン酸、R3=C2755)、及び/又はメリッセン酸(トリアコンタン酸、R3=C2959)、また短鎖不飽和脂肪酸、例えばバレリン酸(ペンタン酸、R3=C49)、酪酸(R3=C37)、プロピオン酸(プロパン酸、R3=C25)、酢酸(R3=CH3)、及び/又はギ酸(R3=H)であり、これらは式I及び/又はIIのケイ素含有前駆体化合物として、そうでなければ純粋な有機シラノール縮合触媒に使用可能である。
【0020】
しかしながら好ましくは、式I及び/又はIIにおける脂肪酸は、充分な疎水性を有し、放出後に不快な臭いを出さず、かつ製造されたポリマーからブルームしない疎水性KW基とともに使用する。酸がポリマーに、又はモノマー若しくはプレポリマーに分散可能であれば、KW基は充分に疎水性である。このブルームは、例えばステアリン酸及びパルミチン酸を有機酸のケイ素含有前駆体化合物で比較的高濃度で使用することを、非常に限定的にする。例えば、放出されたステアリン酸又はパルミチン酸は、ポリマーの全組成物に対して約0.01質量%超の濃度で既に、製造されたポリマー上にワックス状のブルームが観察される。従って、ケイ素含有前駆体化合物の相応するステアレート及び/又はパルミテートを使用する際には、単に相応する放出酸が充分に低い濃度であるように注意すべきである。式I及び/又はIIにおける好ましい酸基は、以下の酸、例えばカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸から生成し、またベヘン酸も適切に使用可能である。
【0021】
同様に好ましくは、天然に産生する、又は合成の不飽和脂肪酸を、式I及び/又はIIの前駆体化合物に反応させることができる。これらは同時に2つの機能を満たし、1つは、シラン加水分解触媒として、及び/又はシラノール縮合触媒として役立つこと、そしてその不飽和炭化水素基によって直接ラジカル重合に参加できるということである。好ましい不飽和脂肪酸は、ソルビン酸(R3=C57)、ウンデシレン酸(R3=C1019)、パルミトレイン酸(R3=C1529)、油酸(R3=C1733)、エライジン酸(R3=C1733)、バクセン酸(R3=C1937)、イコセン酸(R3=C2141)、セトレイン酸(R3=C2141)、エルカン酸(R3=C2141)、ネルボン酸(R3=C2345)、リノール酸(R3=C1731)、α−リノール酸(R3=C1729)、γ−リノール酸(R3=C1729)、アラキドン酸(R3=C1931)、チムノドン酸(R3=C1929)、クルパノドン酸(R3=C2133)、リジノール酸(12−ヒドロキシ−9−オクタデセン酸(R3=C1733O))、及び/又はセルボン酸(R3=C2131)である。特に好ましいのは、少なくとも1つの油酸基(R3=C1733)を含む、式I及び/又はIIの前駆体化合物である。
【0022】
3−COO若しくはR1Oを有する式I及び/又はIIの前駆体化合物を製造可能なさらなる適切な酸は、グルタル酸、乳酸(R1は(CH3)(HO)CH−)、クエン酸(R1はHOOCCH2C(COOH)(OH)CH2−)、ブルピン酸(Vulpinsaeure)、テレフタル酸、グルコン酸、アジピン酸であり(ここでまた全てのカルボキシ基はSi官能化されていてよい)、コハク酸(R1はフェニル)、ニコチン酸(ビタミンB3、B5)である。しかしながらまた、天然又は合成のアミノ酸を使用することができ、R1は相応する基に相応し、例えばトリプトファン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−フェニルアラニン、L−ロイシンから出発して、この際に好ましくはL−ロイシンが使用可能である。これに相応してまた、相応するD−アミノ酸、又はL−アミノ酸とD−アミノ酸の混合物を使用することができ、或いは酸、例えばD[(CH2dCOOH]3、ただしD=N、P、及びdは独立して1〜12であり、好適には1、2、3、4、5、又は6であり、ここで各カルボン酸官能基のヒドロキシ基は独立してSi官能化されていてよい。
【0023】
よって、これらの酸の基をベースとする式I及び/又はIIの相応する化合物も、シラン加水分解触媒及び/又はシラノール縮合触媒として使用できる。
【0024】
有機酸のケイ素含有前駆体化合物はとりわけ、加水分解された形でシラン加水分解触媒及び/又はシラノール縮合触媒として、放出された有機酸によって活性に、並びにそれ自体加水分解された形態、又は加水分解されていない形態で、ポリマー上へのグラフトに、及び/又はベースポリマー、及び/又はポリマー/モノマー、又はプレポリマーとの共重合に、又は架橋に、例えば定着剤として適している。加水分解された形態では、形成されたシラノール化合物は、形成されたSi−O−Siシロキサン架橋、及び/又はSiーO−基材若しくは担体材料を用いた架橋のための縮合の際に貢献する。この架橋は他のシラノール、シロキサン、又は一般的には架橋に適した官能基とともに、基材、充填材、及び/又は担体材料を用いて行うことができる。
【0025】
従って好ましい充填材、及び/又は充填材料は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、熱分解法ケイ酸、沈降ケイ酸、シリケート、並びに以下で挙げるさらなる充填材と担体材料である。
【0026】
極めて特に好ましい前駆体化合物は、ビニルシラントリミリステート、ビニルシラントリラウレート、ビニルシラントリカプレート、並びに前掲の酸の相応するアリルシラン化合物、及び/又はシランテトラカルボキシレートSi(OR14、例えばシランテトラミリステート、シランテトララウレート、シランテトラカプレート、又はこれらの化合物の混合物である。適切には、一定の供給量でビニルシラントリステアレート、ビニルシラントリパルミテート、アルキルシラントリステアレート、及び/又はアルキルシラントリパルミテートを使用することができる。シランステアレート、及び/又はシランパルミテートは好適には、放出される酸、例えばステアリン酸又はパルミチン酸について0.05質量%以下、好ましくは0.01質量%〜0質量%、とりわけ0.01〜0.001質量%未満が、製造されるポリマーコンパウンド又はポリマーの質量%で組成物中に存在するのが望ましい。
【0027】
特に好ましく使用されるケイ素含有前駆体化合物は、酸又は有機酸のうちの1つが、プラスチックとの溶媒媒介(Loesungsvermittlung)又は分散性を可能にする少なくとも1つの疎水性基を有する、あらゆるものである。これらはとりわけ、長鎖、分枝状、又は環状、非極性の、とりわけ非置換の炭化水素基であり、とりわけ6〜22個、好ましくは8〜14個、特に好ましくは8〜13個のC原子を有し、少なくとも1つのカルボン酸基を有するものである。置換された炭化水素基として好適には、ハロゲン置換されたKW基が考慮される。
【0028】
ケイ素含有前駆体化合物I及び/又はIIは好ましくは、また代替的にポリマー上へのグラフトに、及び/又はモノマー、プレポリマー、又はベースポリマーとの共重合のため、及び引き続いた湿分架橋のために、本発明の意味合いで使用される。
【0029】
カルボキシシランの製造は、当業者に以前から知られている。そこでUS 4,028,391は、クロロシランをペンタン中で脂肪酸と反応させるカルボキシシランの製造を開示している。US 2,537,073はさらなる方法を開示している。例えば、非極性溶剤、例えばペンタン中で直接、トリクロロシランとともに、又は官能化されたトリクロロシランとともに還流下で酸を加熱して、カルボキシシランを得ることができる。テトラカルボキシシラン製造のために、例えばテトラクロロシランを相応する酸と適切な溶剤中で反応させる(Zeitschrift fuer Chemie (1963), 3(12), 475-6)。さらなる方法は、酸の塩又は無水物と、テトラクロロシラン又は官能化されたトリクロロシランとの反応に関する。
【0030】
有機酸とは、スルフェート基又はスルホン酸基を有さないカルボン酸と理解され、とりわけR3−COOHに相応する有機酸であり、ケイ素不含の前駆体化合物とはまた、これらの有機酸の無水物、エステル、又は塩とも理解され、これらは特に好ましくは、長鎖の、非極性の、とりわけ置換若しくは非置換の炭化水素基を有し、ここで炭化水素基は飽和又は不飽和であってよく、例えばR3が1〜45個のC原子、とりわけ4〜45個のC原子、好ましくは8〜45個のC原子、とりわけ6〜22個のC原子、好ましくは8〜22個のC原子、特に好ましくは6〜14個のC原子を有するものであり、とりわけ好ましくはR3が8〜13個のC原子を有するものであり、ここでR3が11〜13個のC原子を有するものであるのが特に好ましく、これは例えばラウリン酸又はミリスチン酸であり;又は水素(R3)、及び少なくとも1つのカルボン酸基(COOH)である。有機酸の定義から明示的に除外されるのは、有機アリールスルホン酸、例えばスルホンフタル酸、またナフタリン−ジスルホン酸である。
【0031】
よって、長鎖の疎水性炭化水素基を有する酸が、明らかに好ましい。これらの酸はまた、分散助剤として、及び/又は加工助剤として作用し得る。
【0032】
ケイ素含有前駆体化合物に対する一般的な要求は、モノシルプロセス及び/又はシオプラスプロセスの方法条件下で加水分解可能であること、ひいては遊離有機酸が放出されることである。加水分解は好適には、方法の架橋工程で初めて、とりわけ成形後、例えば水浴への導入とともに、又は成形後に湿分の存在下で始まるのが望ましい。適切には、ケイ素不含の前駆体化合物からは、加水分解下で無機酸及び有機酸に加水分解するものが除外されている。ここで無機酸とは、存在しているシラノールとは理解されない。
【0033】
有機酸のケイ素含有前駆体化合物は、担体材料に施与され、担体材料中に組み込まれ、かつ/又はカプセル化されていてよい。さらなる実施態様によれば、有機酸のケイ素含有前駆体化合物、とりわけ式I及び/又はIIのものは、シラン加水分解触媒として、及び/又はシラノール縮合触媒として、及び/又はポリマーへのグラフトのため、共重合のため、又は定着剤として使用されるのであれば、組成物中、又はマスターバッチ中に、場合により有機官能性シラン化合物とともに、場合によりラジカル形成剤とともに、及び場合によりさらなるシラノール縮合触媒とともに存在していてよい。
【0034】
好ましい使用によれば、少なくとも1つのケイ素含有前駆体化合物、とりわけ一般式I及び/又はIIの有機酸のケイ素含有前駆体化合物は、不飽和若しくはオレフィン性アルコキシシランに相応する有機官能性シラン化合物とともに、触媒として使用され、ここでシラン化合物は特に好適には、一価の不飽和アルコキシシランに相応する。
【0035】
本発明によればケイ素含有前駆体化合物は、触媒として、モノシルプロセス、シオプラスプロセス、及び/又は共重合プロセス、若しくはモノシル法、シオプラス法、及び/又は共重合法で使用される。特に適切には、シラン加水分解触媒及び/又はシラノール縮合触媒は、付加的に湿分を加えられて初めて有効になる。従って、充填されていない、又は充填されたポリマーの最終的に有効な架橋は、一般的に公知の方法に従って、水浴中、蒸気浴中、又は周辺温度での空気湿分(いわゆる「ambient curing」)によっても起こる。
【0036】
有機官能性シラン化合物はとりわけ、ポリマー上にグラフトするため、及び/又はモノマー、プレポリマー、又はベースポリマーとの共重合のため、及び引き続いた湿分架橋のために、本発明の意味合いにおいて適している。
【0037】
好ましい有機官能性シラン化合物は不飽和アルコキシシランであり、特に好ましいのは一般式III
【化4】

[式中、相互に独立して
bは0、1、2、又は3であり、
aは0、1、2、又は3であり、
ただし、式III中でa+bは3以下であり、
ただし、Bは相互に独立して式III中の一価の基
(R72C=C(R7)−Eq
であり、
ここでR7は同じであるか、又は異なっており、
7は水素原子、又はメチル基若しくはフェニル基であり、
基Eは−CH2ー、−(CH22−、−(CH23−、−O(O)C(CH23−、又は−C(O)O−(CH23−の群からの基であり、
qは0又は1であり、例えばビニル、アリル、n−3−ペンチル、n−4−ブテニル、3−メタクリロキシプロピル、及び/又はアクリロキシプロピル、又はイソプレニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、テルペニル、スクアラニル、スクアレニル、ポリテルペニル、ベツラプレノキシ、シス/トランス−ポリイソプレニルであり、或いは
Bはオレフィン基、例えばR6−Dp−[C(R6)=C(R6)−C(R6)=C(R6)]t−Dp
ここでR6は同じであるか、又は異なっていてよく、かつ
6は水素原子であるか、又は1〜3個のC原子を有するアルキル基、又はアリール基、又はアラルキル基、好適にはメチル基又はフェニル基であり、
基Dは同じであるか、又は異なっており、Dは−CH2ー、−(CH22−、−(CH23−、−O(O)C(CH23−、又は−C(O)O−(CH23−の群からの基であり、
pは0又は1であり、かつ
tは1又は2であり、
5は相互に独立してメチル、エチル、n−プロピル、又はイソプロピルであり、
4は相互に独立して置換又は非置換の炭化水素基、とりわけ1〜24個のC原子、とりわけ1〜16個のC原子、好ましくは1〜8個のC原子を有する、置換又は非置換の線状、分枝状、及び/又は環状のアルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基、アルケニルアリール基、及び/又はアリール基である]
のもの、例えばビニルアルコキシシランである。置換された基は、とりわけ疎水性である。
【0038】
アルキル基として適しているのはとりわけ、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、シクロ−ヘキシル基、n−オクチル基、i−オクチル基、ヘキサデシル基であり、置換されたアルキル基として適しているのはとりわけ、クロロ置換基、ブロモ置換基を有するハロゲンアルキル基、好ましくは求核置換に適したハロゲンアルキル基、例えば3−クロロプロピル基、又は3−ブロモプロピル基である。
【0039】
Bは特に好ましくは、少なくとも1つのオレフィン基、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンコポリマー、又はエチレンコポリマーを含み、とりわけ組成物が基b)の成分を含まないのであれば、場合によりラジカル形成剤、及び他の安定剤、及び/又は添加剤を含む。
【0040】
極めて特に好適には、一般式IIIの有機官能性シラン化合物として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジアルコキシシラン、ビニルトリエトキシメトキシシラン(VTMOEO)、ビニルトリ−i−プロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(MEMO)、及び/又はビニルエトキシジメトキシシラン、及び/又はアリルアルコキシシラン、例えばアリルトリエトキシシランを使用する。代替的に、又は前掲化合物との混合物で、有機官能性シラン化合物として、不飽和シロキサン、例えば好適にはオリゴマー性ビニルシロキサン、又は前掲化合物の混合物も使用できる。好ましい有機官能性シラン化合物は、ビニル基又はメタクリル基を有する。というのも、これらの化合物はラジカルに対して反応性であり、かつポリマー鎖上へのグラフトのため、又はモノマー、プレポリマーとの共重合のために適しているからである。
【0041】
本発明によれば少なくとも1つのケイ素含有前駆体化合物、とりわけ式I及び/又は式IIのものは、場合によりラジカル形成剤及び/又は有機官能性シラン化合物とともに、モノシル法、シオプラス法、及び/又は共重合法で使用され、とりわけ熱可塑性ベースポリマーとともに、モノシル法又はシオプラス法で、又は共重合法で熱可塑性ベースポリマーのモノマー及び/又はプレポリマーともに使用される。
【0042】
とりわけ、上記方法での前駆体化合物の使用は、モノシルプロセス、シオプラスプロセス、又は共重合法における不所望の加水分解及び/又は縮合を本来の使用前に阻止するために、架橋反応前、ほぼ水不含の条件下で行う。前駆体化合物の加水分解は好ましくは、成形後、とりわけ熱供給下、湿分の存在下で行う。好適には、湿分を添加する。
【0043】
ケイ素含有前駆体化合物の使用は好ましくは、他のシラノール縮合触媒とともに行うことができ、これにはジラウリン酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジオクチルスズ、ジオクチルスズジ−(2−エチルヘキサノエート)(C8172Sn((OOCC7152)、ジオクチルスズジ−(イソオクチルメルカプトアセテート)((C8172Sn(SCH2CO28172)、ジブチルスズジカルボキシレート((C492Sn(OOC−R)2)、モノブチルスズトリス−(2−エチルヘキサノエート)((C49)Sn(OOCC7153)、ジブチルスズジネオデカノエート((C492Sn(OOCC9192)、ラウリルスタノキサン([(C492Sn(OOCC1123)]2O)、ジブチルスズジケトノエート((C492Sn(C5722)、ジオクチルスズオキシド(DOTO)((C8172SnO)、ジブチルスズ二酢酸(DBTA)((C492Sn(OOCCH32)、マレイン酸ジブチルスズ((C492Sn(C4242)、二塩化ジブチルスズ((C492SnCl2)、硫化ジブチルスズ((C492SnS)、ジブチルスズオキシド(DBTO)((C492SnO)、有機スズ酸化物、モノブチルスズジヒドロキシクロリド((C49)Sn(OH)2Cl)、モノブチルスズオキシド(MBTO)((C49)SnOOH)、ジブチルスズ−ビス−(イソオクチルマレエート)、((C492Sn(C121942)が含まれる。このようにして通常の触媒、例えばスズを含有する触媒の濃度を、単独での使用に比べて減少させることができる。
【0044】
本発明の意味合いにおいて熱可塑性ベースポリマーとは、とりわけアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、並びにエチレン単位ベースのポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、EPDM、又はEPM、及び/又はセルロイド、又はシラン共重合されたポリマーと理解され、モノマー及び/又はプレポリマーとは、これらのベースポリマーの前駆体化合物、例えばエチレン、プロピレンである。さらなる熱可塑性ベースポリマーは、後述するものである。
【0045】
好ましい熱可塑性ベースポリマーは、シラングラフトされたベースポリマー、シラン共重合されたベースポリマー、及び/又はこれらのベースポリマーのモノマー及び/又はプレポリマー、又はシラン−ブロック−コプレポリマー、又はブロック−コプレポリマー、及び/又はこれらの混合物である。熱可塑性ベースポリマーは好適には、非極性ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、若しくは塩化ポリビニル、又はシラングラフトされたポリオレフィン、及び/又はシラン共重合されたポリオレフィン、及び/又は1つ又は複数のオレフィンと、極性基を有する1つ又は複数の補助モノマーとからのコポリマーである。
【0046】
熱可塑性ベースポリマーはまた、部分的に、又は完全に担体材料として機能することもでき、例えば、担体材料として熱可塑性ベースポリマー又はポリマー、及び有機酸のケイ素含有前駆体化合物、及び場合により有機官能性シラン化合物、及び/又はラジカル形成剤を含むマスターバッチ中で、機能することができる。
【0047】
シラン共重合された熱可塑性ベースポリマーの例はまた、エチレン−シランコポリマー、例えばエチレン−ビニルトリメトキシシランコポリマー、エチレン−ビニルトリエトキシシランコポリマー、エチレン−ジメトキシエトキシシランコポリマー、エチレン−γ−トリメトキシシランコポリマー、エチレン−γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランコポリマー、エチレン−γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシランコポリマー、エチレン−γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランコポリマー、エチレン−γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランコポリマー、及び/又はエチレン−トリアセトキシシランコポリマーである。
【0048】
非極性熱可塑性ベースポリマーとしては、熱可塑性樹脂、例えばとりわけ純粋なPEタイプが使用可能であり、例えばPE−LD、PE−LLD、PE−HD、m−PEである。極性基を有するベースポリマーによって例えば、改善された燃焼挙動、つまりより低い発火性及び排煙密度、並びに充填材吸収性の向上が得られる。極性基とは例えば、ヒドロキシ基、ニトリル基、カルボニル基、カルボキシ基、アシル基、アシロキシ基、カルボアルコキシ基、又はアミノ基、並びにハロゲン原子、とりわけ塩素原子である。オレフィン性二重結合、又はC−C二重結合は、極性ではない。ポリ塩化ビニルの他に適切なポリマーは、1つ又は複数のオレフィンと、極性基を有する1つ又は複数の補助モノマーとからのコポリマー、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、アクリロニトリルである。コポリマー中に極性基は例えば、ポリオレフィン構成要素に対して0.1〜50mol%、好適には5〜30mol%の量で存在する。特に適切なベースポリマーは、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)である。適切な市販のコポリマーは、酢酸ビニル構成要素19mol%と、エチレン構成要素81mol%とを含む。
【0049】
特に適切なベースポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、並びに相応するシラン変性されたポリマーである。従って、有機酸のケイ素含有前駆体化合物を組成物又はマスターバッチ中で使用することにより、とりわけシラングラフトされた、シラン共重合された、かつ/又はシラン架橋されたPE、PP、ポリオレフィンコポリマー、EVA、EPDM、EPMが有利な方法で得られる。シラングラフトされたポリマーは、充填材で充填されるか、又は充填されずに存在していてよく、かつ場合により成形後、引き続き湿分架橋することができる。相応して、シラン共重合された、充填材で充填された、又は充填されていないポリマーは、場合により成形後に引き続き湿分架橋することができる。
【0050】
本発明の対象はまた、有機酸のケイ素含有前駆体化合物、とりわけ式I及び/又は式IIのものを、充填されておらずSi架橋されたポリマーコンパウンドの製造、及び/又は充填されSi架橋されたポリマーコンパウンドの製造、及び/又は熱可塑性ベースポリマーをベースとする、相応して充填されSi架橋されたポリマーの製造、又は充填されていないSi架橋されたポリマーの製造に使用することである。Si架橋とは、Si−O−基材結合又はSi−O−Si結合の形成と理解され、例えばシラノールの間の、例えば加水分解された有機官能性シラン(III)、シリケート、ケイ酸、又は誘導体の間の結合である。基材としては、縮合可能な官能化されたあらゆる基材が考慮され、とりわけ上述の充填材、担体材料、顔料、又は有機官能性シランの加水分解生成物及び/又は縮合生成物などである。
【0051】
本発明のさらなる対象は、少なくとも1つの有機酸のケイ素含有前駆体化合物を、物品、とりわけ成形体、好ましくはケーブル、チューブ、又は管の製造の際、特に好ましくは水道管の製造の際に、或いはまた医療分野でのチューブの製造の際に用いる使用を企図している。
【0052】
置換パターンに従って、有機酸のケイ素含有前駆体化合物は液状、ワックス状〜固体で存在していてよく、好適にはワックス状〜固体であるか、又は担体材料上に結合されて、組み込まれて、又はカプセル化されていてよい。この措置によって、前駆体化合物は容易に水不含で保存することができ、かつ容易に供給することができる。不所望の加水分解及び/又は縮合は、使用前、とりわけモノシル法、シオプラス法、又は共重合法で抑制できる。
【0053】
供給性、及び場合により加水分解敏感性をより良好に制御するために、一般式I及び/又はIIの有機酸のケイ素含有前駆体化合物、有機官能性シラン化合物、及び場合によりラジカル形成剤は例えばEP 0 426 073に記載されているように、担体材料上に施与されていてよい。
【0054】
ケイ素含有前駆体化合物I及び/又はIIがそれ自体固体である限り、それ自体を担体材料として使用することができ、とりわけ有機官能性シランのため、例えば一般式IIIのシラン、例えばビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ビニル(コ)オリゴマー、又は式IIIの他の液状シランを担持するために使用できる。
【0055】
変法態様によれば、少なくとも1つの有機酸のケイ素含有前駆体化合物は、担体材料に施与され、担体材料中に組み込まれ、かつ/又はカプセル化されていてよい。より容易な供給性のために好ましくは、有機酸のケイ素含有前駆体化合物を固体で、又は流動性で(rieselfaehig)提供することができる。これは例えばまた、組成物で、又はマスターバッチで、場合により有機官能性シラン化合物とともに、及び/又は場合によりラジカル形成剤とともに、並びにとりわけ少なくとも1つのさらなるシラン加水分解触媒、及び/又はシラノール縮合触媒とともに、流動性のある固体調製物として提供することができる。これは例えば、担体としての担体材料及び/又は充填材の上、及び/又はその中で行うことができる。
【0056】
この担体は、多孔質、粒子状、膨潤可能な、又は場合により発泡状で存在していてよい。担体材料として適しているのはとりわけ、ポリオレフィン、例えばPE、PP、EVA、又はポリマーブレンドであり、充填材としては無機又は鉱物性のもの、有利には補強性の、延性の、並びに難燃性のものであってよい。
【0057】
担体材料と充填材は、以下でより詳細に述べる。
【0058】
好ましいラジカル形成剤は、有機過酸化物、及び/又は有機ペルエステル、又はこれらの混合物、例えば好適にはt−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、1,3−ジ(2−t−ブチルペルオキシ−イソプロピル)ベンゾール、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン(3)、ジ−t−アミルペルオキシド、1,3,5−トリス(2−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゾール、1−フェニル−1−t−ブチルペルオキシフタリド、α−α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)−ジイソプロピル−ベンゾール、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシ−ヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(TMCH)である。また、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)バレレート、エチル−3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート、及び/又は3,3,6,9,9−ヘキサメチル−1,2,4,5−テトラオキサ−シクロノナンを使用することが適切であり得る。
【0059】
加えて、少なくとも1つの安定剤、及び/又はさらなる添加剤、及び/又は添加物、又はこれらの混合物とともに組成物で、又はマスターバッチで使用することができる。安定化剤として、及び/又はさらなる添加剤として、場合により金属失活剤、加工助剤、無機若しくは有機の顔料、充填材、担体材料、定着剤を使用することができる。これらは例えば、二酸化チタン(TiO2)、タルク、粘土、石英、カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベントナイト、モンモリロナイト、雲母(白雲母)、炭酸カルシウム(白亜、ドロマイト)、着色剤、顔料、タルク、カーボンブラック、SiO2、沈降ケイ酸、熱分解法ケイ酸、酸化アルミニウム、例えばα−及び/又はγ−酸化アルミニウム、アルミニウムオキシドヒドロキシド、ベーマイト、バライト、硫酸バリウム、石灰、シリケート、アルミン酸塩、ケイ酸アルミニウム、及び/又はZnO、又はこれらの混合物である。担体材料又は添加剤、例えば顔料、充填材は好適には、粉末状、粒子状、多孔質、膨潤可能、又は場合により発泡状で存在する。
【0060】
好ましい金属失活剤は例えば、N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオニル)ヒドラジン、並びにトリス(2−t−ブチル−4−チオ(−2’−メチル−4−ヒドロキシ−5’−t−ブチル)フェニル−5−メチル)フェニルホスフィットである。
【0061】
さらに使用、とりわけ組成物又はマスターバッチでの使用は、さらなる成分、例えば少なくとも1つの熱安定剤とともに行うことができ、例えばペンタエリトリチル−テトラキス[3−(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、並びに4,4’−ビス−(1,1−ジメチルベンジル)−ジフェニルアミンである。
【0062】
使用される充填材は一般的に、無機又は鉱物性のものであり、有利には補強性、延性、並びに難燃性に作用し得るものである。これらは少なくともその表面上に、シラノール若しくは不飽和シラン化合物の、又は式I及び/又はIIの加水分解された化合物のアルコキシ基、ヒドロキシ基と反応し得る基を有する。その結果、このことによって、ケイ素原子をこれらと結合された官能基で表面に化学的に固定することができる。充填材の表面上にあるこのような基は、とりわけヒドロキシ基である。使用される充填材は好ましくは、化学量論含分を有するこれに相応する金属水酸化物、又はその様々な脱水段階で、ヒドロキシ基の準化学量論含分を有するもの〜比較的僅少な残分の、しかしながらDRIFT−IRスペクトロスコピー又はNIRスペクトロスコピーによって検出可能なヒドロキシ基を有する酸化物である。
【0063】
特に好ましく使用される充填材は、アルミニウムトリヒドロキシド(ATH)、アルミニウムオキシドヒドロキシド(AlOOH.aq)、マグネシウムジヒドロキシド(MDH)、ブルーサイト、ハンタイト、水苦土石、雲母、及びモンモリロナイトである。さらに、充填材として炭酸カルシウム、タルク、並びにガラス繊維を使用することができる。さらには、いわゆる"炭形成体(char former)"、例えばポリリン酸アンモニウム、スズ酸塩、ホウ酸塩、タルクを、又はこれらを他の充填材と組み合わせて使用することができる。
【0064】
担体材料として適しているのは好ましくは、ポリプロピレン、ポリオレフィン、炭素が少ないアルケンとのエチレンコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、又は線状の低密度ポリエチレンの群から選択される多孔質ポリマーである。この際、多孔質ポリマーは細孔体積が30〜90%であってよく、とりわけ顆粒状、又はペレット状で使用することができる。
【0065】
担体材料は代替的には、充填材又は添加剤であってもよく、とりわけナノスケールの充填材であってよい。好ましい担体材料、充填材、又は添加剤は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、熱分解法ケイ酸、沈降ケイ酸、珪灰石、か焼された変異体、化学的及び/又は物理的に変性された、例えばカオリン、変性カオリン、とりわけ粉砕された、層状(exfolierend)材料、例えば層状ケイ酸塩、好適には特殊なカオリン、ケイ酸カルシウム、ワックス、例えばLDPE(低密度ポリエチレン"Low density Polyethylen")ベースのポリオレフィンワックス、又はカーボンブラックである。
【0066】
担体材料は、ケイ素含有前駆体化合物、及び/又は有機官能性シラン化合物、及び/又はラジカル形成剤をカプセル化されて、又は物理的若しくは化学的に結合されて、とりわけマスターバッチとして保持することができる。この際、負荷された、又は負荷されていない担体材料が膨潤性、とりわけ溶剤中で膨潤性であれば、有利である。ケイ素含有前駆体化合物の量は通常、担体材料、有機官能性シラン化合物、及び/又はラジカル形成剤を含む全質量に対して、0.01質量%〜99.9質量%の範囲、好ましくは0.01質量%〜70質量%の範囲、特に好ましくは0.1質量%〜50質量%の範囲、とりわけ0.1質量%〜30質量%の範囲である。従って担体材料は通常、全質量(100質量%)に対して99.99〜70質量%で存在する。
【0067】
好ましい担体材料として詳細に挙げられるのは:ATH(アルミニウムトリヒドロキシドAl(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、又は工業的なスケールで四塩化ケイ素の連続的な加水分解により爆鳴気火炎中で製造される熱分解法ケイ酸である。この際、四塩化ケイ素を蒸発させ、そして引き続き火炎の内部で、爆鳴気反応に由来する水と自発的かつ定量的に反応させる。熱分解法ケイ酸は、詰まっていない青っぽい粉末状の、二酸化ケイ素の非晶質変性体である。粒径は通常、ナノメーター未満の範囲であり、よって比表面積は大きく、一般的に50〜600m2/gである。ここで、ビニルアルコキシシラン、及び/又はケイ素含有前駆体化合物、又はこれらの混合物の吸収は、基本的に吸着に基づく。沈降ケイ酸は一般的に、ナトリウム水ガラスの溶液から、無機酸を用いた中和によって制御条件下で製造される。液相の除去、洗浄、及び乾燥後に、未精製生成物を例えばスチームジェットミルで微粉砕する。沈降ケイ酸とはまた、比表面積が通常50〜150m2/gのほぼ非晶質の二酸化ケイ素である。沈降ケイ酸は熱分解法ケイ酸とは逆に、一定の多孔性、例えば約10体積%の多孔性を有する。従って、ビニルアルコキシシラン、及び/又はケイ素含有前駆体化合物、又はこれらの混合物の吸収は、表面での吸着によって、また細孔内への吸着によっても行うことができる。ケイ酸カルシウムは一般的には工業的に、石英又は珪藻土を、炭酸カルシウム若しくは酸化カルシウムと共融させることによって、又はメタケイ酸ナトリウム水溶液を水溶性カルシウム化合物で沈殿させることにより、製造される。入念に乾燥させた生成物は通常、多孔質であり、水又は油を、最大5倍の質量で吸収することができる。
【0068】
多孔質ポリオレフィン、例えばポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)、並びにコポリマー、例えば炭素が少ないアルケン、例えばプロペン、ブテン、ヘキセン、オクテン、又はエチレンビニルアセテート(EVA)とのエチレンコポリマーは、特別な重合技術と重合法によって製造される。その粒径は一般的に、3〜<1mmであり、多孔性は50体積%超であり、その結果、生成物は適切に大量の不飽和オルガノシラン/オルガノシラン混合物、例えば一般式IIIのもの、及び/又はケイ素含有前駆体化合物、又はこれらの混合物を、その自由流動性を失うことなく吸収することができる。
【0069】
ワックスとして適しているのはとりわけ、「低密度ポリエチレン(LDPE)」ベースの、好適には分枝状で長い側鎖を有する、ポリオレフィンワックスである。その融点、及び凝固点は通常、90〜120℃である。ワックスは通常、低粘度溶融物中で、不飽和オルガノシラン、例えばビニルアルコキシシラン、及び/又はケイ素含有前駆体化合物、又はこれらの混合物と良好に混合可能である。凝固した混合物は一般的に、顆粒化可能なほど充分に硬い。
【0070】
様々な取扱い形態のカーボンブラックが、例えば黒色ケーブル被覆の製造のために適している。
【0071】
例えば、オレフィン性シランカルボキシレート、例えばミリスチン酸若しくはラウリン酸のビニルシランカルボキシレートと、担体材料とから、又はビニルシランステアレートと担体材料から、又はテトラカルボキシシランと担体材料を有するビニルアルコキシシランとから、担持された組成物(ドライ−リキッド)を製造するためには、とりわけ以下の方法が利用可能である。
【0072】
最も公知の方法に該当するのは、スプレー乾燥である。以下、代替的な手法をより詳しく説明する:鉱物性担体、又は多孔質ポリマーを通常、例えば加熱トレーで60℃に予熱し、そして円筒形容器に入れ、乾燥窒素で洗浄し、充填した。引き続き一般的には、ビニルアルコキシシラン、及び/又はビニルカルボキシシランを添加し、そして容器を回転装置に入れ、これによってこの容器を約30分間、回転させる。この後、通常担体物質と、液状の高粘性な、又はワックス状のアルコキシシラン、及び/又はカルボキシシランから、流動性のある表面が乾燥した顆粒が形成され、これを適切に窒素下で光を通さない容器内で貯蔵する。代替的には、加熱された担体物質は、乾燥窒素で洗浄され、充填された混合器、例えばLOEDIGEタイプのスキ型混合機、又はHENSCHELタイプのプロペラ混合機に入れることができる。この混合装置は、早くも稼働することができ、オレフィン性アルコキシシラン、及び/又はカルボキシシラン、とりわけ式Iのもの、又はこれらの混合物を、最大混合出力に到達後、ノズルによって噴射することができる。添加終了後、一般的にはさらに約30分間均質化し、その後生成物を、例えば乾燥窒素稼働型の気圧式輸送器によって、光を通さない窒素で充填された容器に満たす。
【0073】
ペレット形状で融点が90〜120℃、又はそれより高いワックス/ポリエチレンワックスは、撹拌機、還流冷却器、及び液体添加装置を備える加熱可能な容器中で、少しずつ溶融させ、かつ溶融状態に維持することができる。製造工程全体の間、装置を通じて乾燥窒素を適切に導入する。液体添加装置によって、次第に、例えば液状ビニルカルボキシシラン/ビニルカルボキシシラン混合物を溶融物に入れ、そして強度の撹拌によってワックスと混合することができる。通常、この後に溶融物を凝固のために成形体で排出し、そして凝固した生成物を顆粒化する。代替的にはこの溶融物を、冷却された成形ベルト上に滴下させることができ、その上で溶融物が使用に便利な錠剤形態(Pastillenform)で凝固する。
【0074】
好ましい実施態様によれば、使用される組成物は、有機酸のケイ素含有前駆体化合物の選択物、とりわけ式I及び/又はIIのもの、及び場合により一価の不飽和アルコキシシラン、及び/又はさらなるシラノール縮合触媒、例えば前掲のスズ化合物、及び/又はラジカル形成剤、並びに場合により少なくとも1つの安定剤、及び/又は添加剤、及び/又は担体材料、及び/又は添加物、及び/又はこれらの混合物から成る。
【0075】
さらなる好ましい実施態様によれば、使用される組成物は、式I及び/又はIIの前駆体化合物の選択物(ここでR1はカルボニル−R3基である(R3は4〜45個のC原子、好ましくは6〜45個のC原子、とりわけ6〜22個のC原子、好ましくは8〜22個のC原子、特に好ましくは6〜14個のC原子、とりわけ好ましくはR3は8〜13個のC原子、とりわけR3は11〜13個のC原子を有するもの))、及び場合によりオレフィン性アルコキシシラン、とりわけ式IIIのもの、及び/又はラジカル形成剤、及び/又はさらなるシラノール縮合触媒、並びに場合により少なくとも1つの安定剤、及び/又は添加剤、及び/又は担体材料、及び/又は添加物、及び/又はこれらの混合物から成る。
【0076】
本発明の対象はまた、少なくとも1つの有機酸のケイ素含有前駆体化合物と、少なくとも1つのラジカル形成剤とを含むマスターバッチ、とりわけ熱可塑性ベースポリマーを架橋させるためのものである。
【0077】
代替的な実施態様によれば、本発明の対象は、
成分Aとして少なくとも1つの有機酸のケイ素含有前駆体化合物、とりわけ先の定義に相応する一般式I及び/又はIIのもの、並びに担体材料、及び
場合により成分Bとしてラジカル形成剤、及び
場合により成分Cとして有機官能性シラン化合物、とりわけ不飽和アルコキシシラン、好ましくは式IIIのもの(式中、b、a、B、R4、及びR5は先の定義の通り)
を含むマスターバッチ、とりわけ熱可塑性ベースポリマーを架橋させるためのものであって、
この際に前記成分A、B、及び/又はCのうち少なくとも1つが担持されているか、又はカプセル化されているものである。好適には少なくとも1つの成分が、少なくとも1つの担体又は担体材料上に施与され、組み込まれ、又は担体材料によってカプセル化されている。加えて、マスターバッチ又は成分A、B、及び/又はCのうちの1つは、少なくとも1つの添加剤、安定剤、添加物、又はこれらの混合物を含むことができる。
【0078】
変法態様によれば、有機官能性シラン化合物は、ケイ素含有前駆体化合物の上に担持されて、及び/又はその中にカプセル化されて存在する。
【0079】
成分Aは好ましくは、少なくとも1つの有機酸のケイ素含有前駆体化合物、とりわけ先の定義に相応する一般式I及び/又はIIのものを、成分A中で0.01〜99.9質量%、とりわけ0.01〜70質量%、好ましくは0.1〜50質量%、特に好ましくは0.1〜30質量%、及び担体材料100質量%に対して又は代替的に付加的に、成分A100質量%に対して少なくとも1つの安定剤、添加剤、添加物、又はこれらの混合物を含む。
【0080】
成分Bのラジカル形成剤は通常、成分B中に0.05〜10質量%存在し、ここで成分Bの100質量%に対して、少なくとも1つの添加剤、担体材料、安定剤、添加物、又はこれらの混合物が存在する。
【0081】
成分Cの有機官能性シラン化合物、とりわけ式IIIのものは通常、成分C中に60〜99.9質量%存在し、ここで成分Cの100質量%に対して、少なくとも1つの添加剤、担体材料、安定剤、添加物、又はこれらの混合物が存在する。
【0082】
適切なラジカル形成剤、添加剤、安定剤、添加物、並びに担体材料は、先に記載したものである。担体材料として考慮されるのはとりわけ、前掲のもの、例えばPE、PP、並びに前掲の他のものである。相応することが、ラジカル形成剤と、安定剤に当てはまる。成分AとB、又は成分AとCを、2つの方法工程で使用するのが望ましい場合、好適にはマスターバッチ中で相互に別個に存在する。同時に使用する場合、成分A、B、及び/又はCを、相互の物理的な混合物で、例えば粉末、顆粒、ペレットとして、或いはまた一緒に調製して、1つの調製物にすることができ、例えばペレットとして、又はタブレットとして存在していてよい。
【0083】
好ましいマスターバッチは、有機酸、例えば脂肪酸、とりわけミリスチン酸若しくはラウリン酸のケイ素含有前駆体化合物を例えば6質量%、ポリマー担体材料、例えばPE−HD上に有しており、ここでPE−HDは100質量%に対してマスターバッチ(成分A)の94質量%で存在する。さらなるマスターバッチは、有機酸のケイ素含有前駆体化合物として、ベヘン酸、L−ロイシン、カプリン酸、油酸、ラウリン酸、及び/又はミリスチン酸ベースのものを、場合により担体材料、例えばPE−HD上での混合物で含む。
【0084】
成分Cとして好適には、不飽和アルコキシシラン、とりわけ式IIIのもの、又はこれから製造されたオリゴマー性シロキサン、好ましくはビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシランが、ラジカル形成剤及び安定化剤とともに、場合によりさらなる添加剤とともに存在していてよい。好適には、担体材料上に、例えば顆粒として存在していてよい。
【0085】
本発明によれば、有機酸のケイ素含有前駆体化合物は、例えば組成物又はマスターバッチで、シラン加水分解触媒及び/又はシラノール縮合触媒として、モノシル法、シオプラス法、又は共重合法で、とりわけ充填された、及び/又は充填されていないポリマーコンパウンド(架橋されているか、又は架橋されていなくてよい)製造のため、及び/又は熱可塑性ベースポリマーベースの充填された、及び/又は充填されていない架橋されたポリマー製造のために使用される。本発明の意味合いにおいて架橋とはとりわけ、Si−O−基材結合の形成、又はSi−O−充填材、Si−O−担体材料、又はSi−O−Si橋かけ、すなわち、基材の縮合可能な他の基によるSi−OH基の縮合である。
【0086】
本発明の対象はまた、有機酸のケイ素含有前駆体化合物、とりわけ式I及び/又は式IIのものを、ケイ素含有ポリマー、ポリマーコンパウンド、充填されていない架橋されたポリマー、及び/又は充填され架橋されたポリマーを製造する際に用いる使用である。
【0087】
好ましくは、モノシル法、シオプラス法、及び/又は共重合法で使用する。ここでケイ素含有前駆体化合物I及び/又はIIは、またポリマー上へのグラフトに、及び/又はモノマー、プレポリマー、又はベースポリマーとの共重合のため、及び引き続いた湿分架橋のために、本発明の意味合いで使用される。
【0088】
シラングラフトされた、シラン共重合された、かつ/又は架橋された、とりわけシロキサン架橋された、充填された、又は充填されていないポリマーを製造するために使用するのが好ましい。前掲ポリマーはまた、ブロックコポリマーを含むことができる。同様に充填材は好ましくは、ケイ素含有前駆体化合物で架橋させる、とりわけSi−O−充填材/担体材料の結合によって架橋させる。充填材としてはとりわけ、前掲の充填材又は担体材料が考慮される。
【0089】
本発明の対象はまた、ポリマー、ポリマーコンパウンド、例えば充填されていない架橋ポリマー、及び/又は充填された架橋ポリマー、ケーブルコンパウンド、充填されたプラスチック、成形体、及び/又は物品を製造する際の、ケイ素含有前駆体化合物の使用である。相応する成形体、及び/又は物品は、ケーブル、チューブ、管、例えば水道管であり、或いは食料品分野、又は衛生用品分野、医療技術分野で、例えば医療器具として、又は医療用器具の一部、ブラウニューレ(Braunuele)、トロカール、ステント(stent)、血栓除去器具(Clot-Retriever)、ステント(Gefaessprothese)として、カテーテルの部材として使用可能な物品である(ほんの幾つかを挙げただけだが)。
【0090】
本発明によれば一般的に、湿分架橋された、充填されていない、又は充填されたポリマーコンパウンドが各原料成分の混合によって、溶融物中で相応して、適切には湿分排除下で製造される。このために適しているのは通常、慣用の加熱可能な均質化装置、例えば混練機、又は有利には連続稼働で、Bussのコ・ニーダー若しくは2スクリュー式押出機である。このために代替的にはまた、一軸式押出機を使用できる。ここでこれらの成分は、それぞれそれ自体で、又は部分混合物で所定の量比で流しながら、熱可塑性ベースポリマーの融点より高い温度に加熱された押出機に供給することができる。この温度は適切には、より低い粘度を調整し、これによって密な完全混合を達成可能にするため、スクリュー端部まで上昇させる。押出機は適切には、なお液状で、顆粒又は成形体、例えば管若しくはチューブを成形するための装置に供給する。充填されていない、又は充填されたポリマーの最終的に有効な架橋は、一般的に公知の方法に従って、水浴中、蒸気浴中、又は周辺温度での空気湿分(いわゆる「ambient curing」)によっても起こる。
【0091】
本発明の対象はまた、有機酸のケイ素含有前駆体化合物、とりわけ式I及び/又は式IIIのもの、及び/又はその加水分解生成物および/または縮合生成物を含む物品であり、とりわけポリマー、例えば架橋され充填された、又は架橋され充填されていないポリマーからの成形体;好ましくはケーブル、難燃ケーブル、例えばMg(OH)2、Al(OH)3、又は層状材料、例えば層状ケイ酸塩で充填されたもの;又は管、例えば水道管、医療分野でのチューブであり、或いは食料品分野、又は衛生用品分野、医療技術分野で、例えば医療器具として、又は医療用器具の一部として、チューブ、ブラウニューレ、トロカール、ステント(stent)、血栓除去器具、ステント(Gefaessprothese)として、カテーテルの部材として使用可能な物品である(ほんの幾つかを挙げただけだが)。
【0092】
1工程法、例えばモノシル法の場合、ポリマーと、架橋を開始させる組成物又はマスターバッチを押出機中に入れ、そして生成する固まりを1工程で最終生成物に加工する。組成物として適切には、有機官能性シラン化合物、とりわけ式IIIのもの、ラジカル形成剤、並びに有機酸のケイ素含有前駆体化合物、及び場合によりさらなるシラノール縮合触媒、並びに場合により安定剤を含む組成物を使用することができる。
【0093】
充填されたプラスチックを製造するためには、無機充填材をたいていは調製装置に直接供給し、そしてポリマーとともに最終生成物に加工する。選択的に、充填材をより後の時点で装置中に、例えば2スクリュー押出機又はコ・ニーダーの際にも導入することができる。有機酸のケイ素含有前駆体化合物の使用下で生成するグラフトポリマーにより、非極性ポリマーと極性充填材、例えば水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムとの相容性を明らかに改善することが可能になる。
【0094】
これに加えて、別々にグラフトポリマー、とりわけシオプラス材料を製造、場合により顆粒化、包装、とりわけ湿分から保護されて貯蔵する可能性が存在し、それから前記ポリマーをベース材料として、充填材の混入により充填されたプラスチック製品を製造するさらなる加工業者、例えばケーブル製造元又は管製造元に届ける可能性がある。
【0095】
以下の実施例は、本発明による使用、マスターバッチをより詳細に説明するものであるが、本発明はこの実施例によって制限されることはない。
【0096】
A)アルキルカルボキシシラン、アルケニルトリカルボキシシラン、又はテトラカルボキシシランの製造
一般的な実施例:
a)アルケニルトリカルボキシシラン製造のために、アルケニルトリクロロシラン1mol、若しくは一般的にアルケニルトリハロゲンシランを、有機モノカルボン酸3mol又は過剰量で直接反応させるか、或いは不活性溶剤中、とりわけ高められた温度で反応させる。
【0097】
b)アルキルトリカルボキシシラン製造のために、相応して、アルキルトリクロロシラン1molを、有機モノカルボン酸3mol又は過剰量で直接反応させるか、或いは不活性溶剤中で反応させる。この反応は好ましくは、高められた温度、例えば最大で溶剤の沸点で、又は有機脂肪酸若しくは有機酸の溶融温度で行う。
【0098】
c)テトラカルボキシシラン製造のために、テトラハロゲンシラン、とりわけテトラクロロシラン又はテトラブロモシラン1molを、少なくとも1つのモノカルボン酸、例えば脂肪酸又は脂肪酸混合物4mol又は過剰量と反応させる。この反応は、直接溶融によって、又は不活性溶剤中で、好適には高められた温度で行うことができる。
【0099】
実施例1
ビニルトリステアリルシランの製造
溶剤としてトルエン中での、ビニルトリクロロシラン1molと、ステアリン酸3molとの反応:ステアリン酸50g(50.1g)を、トルエン150.0gとともにフラスコ中に装入した。軽く加熱した後、固体が溶解する。冷却後に、濁った、高粘性の固まりが形成されたが、この固まりは再度加熱の際に再び透明な液体に戻る。油浴は、試験開始時に95℃に調整し、約20分の混合時間後、透明な液体が存在していた。引き続き、ビニルトリクロロシラン9.01gを、ピペットで素早く(zuegig)滴加した。約10分後、透明な液体が存在し、油温は150℃に調整した。試験開始からさらに約3時間後、不活性ガス下で冷却した。後処理は、トルエンの留去により行った。白色の固体が得られたが、これは溶融した状態では油状で黄色っぽく見える。さらなる精製のために、固体を再度ロータリーエバポレータで処理、例えば比較的長い時間(3〜5時間)、約90℃の油浴温度、<1mbarの真空で処理することができる。この固体をNMR(1H、13C、29Si)によってビニルトリクロロシランと同定した。
【0100】
実施例2
ビニルトリデカン酸の製造
溶剤としてトルエン中での、ビニルトリクロロシラン1molと、カプリン酸3molとの反応:カプリン酸(デカン酸)60.0gを、トルエン143.6gとともに、フラスコに装入した。試験開始の際に油浴を80℃に調整し、そして約55℃の塔底温度でビニルトリクロロシランをゆっくりと滴加した(約0.5時間、19.1g)。約45分後、油温を150℃に高めた。さらに約2時間の反応時間後に油浴を取り外し、この際に、撹拌、水冷、及び窒素被覆を完全に冷却するまで続けた。透明な液体を一つ口フラスコに移し、そしてロータリーエバポレータでトルエンを除去した。油浴温度としては、約80℃に調整した。真空は段階的に、<1mbarに調整した。生成物は、透明な液体であった。この液体をNMR(1H、13C、29Si)によってビニルトリカプリルシランと同定した。
【0101】
実施例3
ヘキサデシルトリカプリルシランの製造
溶剤としてトルエン中での、Dynasylan(登録商標)9016(ヘキサデシルトリクロロシラン)1molと、カプリン酸3molとの反応:カプリン酸(デカン酸)73.1gを、トルエン156.2gとともに、フラスコに装入した。試験開始の際に、油浴を95℃に調整し、Dynasylan(登録商標)9016 50.8gを約25分間にわたって、滴加した。約30分後、油温を150℃に高めた。約1.5時間の還流後、試験を終了した。透明な液体から、ロータリーエバポレータでトルエンを除去した。油浴温度としては、約80℃に調整した。真空は段階的に、<1mbarに調整した。生成物は、僅かに刺激臭のある油状の黄色い液体であった。この液体をNMR(1H、13C、29Si)によって、基本的にヘキサデシルトリカプリルシランと同定した。
【0102】
実施例4
ビニルトリパルミチルシランの製造
溶剤としてトルエン中での、ビニルトリクロロシラン1molと、パルミチン酸3molとの反応:パルミチン酸102.5gを、トルエン157.0gとともに、フラスコに装入した。試験開始の際に、油浴を92℃に調整し、そしてビニルトリクロロシラン22.0gをゆっくりと約15分間にわたって滴加した。約70分後、油温を150℃に高めた。約4時間、還流下で加熱し、そして引き続きトルエンを留去した。油浴温度としては約80℃に調整し、そして真空を段階的に2mbarに調整した。生成物の冷却後、白色の、再度溶融可能な固体が得られた。この固体をNMR(1H、13C、29Si)によって、ビニルトリパルミチルシランと同定することができた。
【0103】
実施例5
クロロプロピルトリパルミチルシランの製造
溶剤としてトルエン中での、CPTCS(クロロプロピルトリクロロシラン)1molと、パルミチン酸3molとの反応:パルミチン酸40.01gを、3つ口フラスコに装入し、そして油浴を加熱した。全部のパルミチン酸が溶解した後、CPTCS(純度99.89%(GC/WLD))11.03gを約10分以内に滴加した。引き続き、温度を130℃に高めた。約3.5時間後、連結されたガス洗浄瓶では、もはやガス活性が検出されず、合成は終了した。トルエンは、ロータリーエバポレータで除去した。より遅い時点で、固体を再度溶融させ、そして油浴温度約90℃、<1mbarの真空で、撹拌した。約4.5時間後には、もはや気泡が確認できなかった。この固体をNMR(1H、13C、29Si)によってクロロプロピルトリパルミチルシランと同定した。
【0104】
実施例6
プロピルトリミリスチルシランの製造
溶剤としてトルエン中での、PTCS(プロピルトリクロロシラン、純度98.8%)1molと、ミリスチン酸3molとの反応:この反応は、先の実施例と同様に行った。反応生成物は、プロピルトリミリスチルシランと同定できた。
【0105】
実施例7
ビニルトリミリスチルシラン(VTC)の製造
Dynasylan(登録商標)VTCと、ミリスチン酸の反応:ミリスチン酸40.5g、及びトルエン130gを、反応フラスコ中に装入し、混合し、約60℃に加熱した。滴加漏斗を用いて15分以内に、Dynasylan(登録商標)VTC9.5gを滴加した。添加の際に、フラスコ中の温度は約10℃上がった。添加後15分間、後撹拌し、そしてその後、油浴の温度を150℃に高めた。後撹拌の間、ガス発生(HCLガス)を観察することができる。ガス発生がもはや観察されなくなるまで後撹拌し(ガス排出コック)、そして3時間、後撹拌した。バッチの冷却後、未反応のDynasylan(登録商標)VTC、トルエンを約80℃、減圧下(0.5mbar)で留去した。反応フラスコ内に残っている生成物を、一晩フラスコ中でN2被覆下で貯蔵し、それからさらに後処理無しで移した。生成物は、後に固体となる。未精製生成物が約44.27g得られた。
【0106】
実施例8
プロピルトリミリスチルシランの製造
Dynasylan(登録商標)PTCSと、ミリスチン酸との反応:ミリスチン酸40.5g、及びトルエン150gを反応フラスコに装入し、混合し、約60℃に加熱した。滴加漏斗を用いて15分以内にDynasylan(登録商標)PTCSを滴加した。添加の際に、フラスコ中の温度は約10℃上がった。添加後に、油浴の温度を150℃に上げ、そして3時間、後撹拌した。後撹拌の間、ガス発生(HCLガス)を観察することができる。ガス排出コックでもはやガス発生が観察されなくなるまで、後撹拌した。バッチの冷却後、未反応のDynasylan(登録商標)PTCS、トルエンを約80℃、減圧下(0.5mbar)で留去した。生成物は不活性ガス下で保存し、固体になった。未精製生成物が約44.0g得られた。
【0107】
B)架橋例:
Dynasylan(登録商標)SILFIN 24(ビニルトリメトキシ(VTMO)、過酸化物及び加工助剤)。
【0108】
実施例9
工程A−Borealis社のPE−HD MG9641Sの、Dynasylan(登録商標)SILFIN 24混合物によるグラフト
グラフトは、Berstorff社の二軸スクリュー押出機(ZE25)で行った。この試験で、ストランドを製造した。このPEに架橋剤調製物を、その都度1時間にわたってタンブリングし(auftrommeln)、この際に事前に約1時間、70℃で予備乾燥した。グラフトされたストランドを、押出後に顆粒化した。顆粒は、顆粒化後に直接、アルミニウム層で被覆された袋で包装し、密閉した。密閉前に、顆粒を窒素で覆った。
【0109】
グラフト反応の加工パラメータは、ZE 25で
温度プロフィール:−/150/160/200/200/210/210/210℃
回転数:約100回転/分、添加量:Dynasylan(登録商標) SILFIN 24 1.5phr。
【0110】
工程B−架橋研究のための加工
シラングラフトされたポリエチレンを、実験用混練機中で(Thermo HAAKE社、70cm3)その都度の触媒と混練した(温度プロフィール:140℃/3分;2分で210℃に;210℃/5分、混練機回転数:30rpm)。引き続きこの混合物を、200℃でプレートにプレスした。架橋は水浴中、80℃で架橋した(4時間)。架橋されたプレートのゲル含分を測定した(8時間、p−キシレン、ソックスレー抽出器)。
【0111】
1)脂肪酸、脂肪酸及びアミノ酸の前駆体化合物によるスクリーニング
シラングラフトされたPE95質量%をその都度、触媒マスターバッチ5質量%と混合し、その際、触媒マスターバッチは、PE−HD 98質量%、及び触媒(有機酸)2質量%を有していた。その結果は、表1から読み取ることができる。
【0112】
【表1】

【0113】
実施例10
a)Borealis社のPE−HD MG9641 Sの、Dynasylan(登録商標)SILFIN 24によるグラフト
グラフトは、Berstorff社の押出機(ZE25)で行った。このPEに架橋剤調製物を、その都度1時間にわたってタンブリングし、この際に事前に約1時間、70℃で予備乾燥した。グラフトされたストランドを、押出後に顆粒化した。顆粒は、顆粒化後に直接、ポリエチレン−アルミニウム−ポリエチレンの外包装で包装し、密閉した。密閉前に、顆粒を窒素で覆った。
【0114】
グラフト反応の加工パラメータは、ZE 25で
温度プロフィール:−/150/160/200/200/210/210/210℃、
回転数:約100回転/分、
添加量:Dynasylan(登録商標) SILFIN 24 1.5phr(CS/V039/08)。
【0115】
b)混練
マスターバッチ製造のため、HAAKEの実験室用混練機でPE49.0gを、触媒1.0gと混練する(有機酸又はケイ素含有前駆体化合物)。
【0116】
加工パラメータ:
混練機、注入器(Einfuellrichter)、ベルト工具、ベルト出口;充填された入口ゾーン、
回転数30rpm、
温度プロフィール:200℃/5分。
【0117】
c)PE−HD SILFIN 24 95質量%と、マスターバッチ5質量%とからの混合物の製造
PE−HD SILFIN 24 95質量%と、触媒を有するマスターバッチ5質量%とからの混合物を製造する。加工は、HAAKE社の実験室用混練機で行った。PE−HD SILFIN 24 95質量%と、マスターバッチ5質量%とからの混合物を混練し、引き続き200℃でプレートにプレスし、そして最後に水浴で80℃に架橋した。
【0118】
加工パラメータ:
混練機、注入器、ベルト工具、ベルト出口;充填された入口ゾーン、
回転数30rpm、
温度プロフィール:140℃/3分;2分で210℃に;210℃/5分、
架橋時間:0時間、4時間、及び22時間。
【0119】
実施例11
シラングラフトされたPE−HDの架橋
HAAKE社の測定混練機(Messkneter)で、ポリエチレンを様々なビニルシランとともに過酸化物を添加して化学的に変性した(滴加、回転数:30 1/分、温度プロフィール:140℃で3分、2分で140℃から200℃に、200℃で10分)。グラフト反応の終了後、アルミニウムトリヒドロオキシド(ATH)を水供給物として混練機中に入れた。後架橋が強度の回転モーメント上昇によって実証可能かどうかを試験した。以下の混合物を使用した。
【0120】
【表2】

【0121】
ビニルトリカルボキシシランを用いた両方の試験で、ATHの添加後、強度の回転モーメント増加が見られた。この増加は、ビニルトリメトキシシランの場合よりも著しく強かった。これによって、より強度な後架橋反応が完成される。
【0122】
実施例12:
PE−HDの架橋:ビニル−トリ−パルミチン酸シランと、Dynasylan(登録商標)SILFIN 06との比較
この試験については、PE−HD粉末にそれぞれの架橋調製物を添加混合し、そして混練機中で(回転数35 1/分、温度プロフィール150℃で2分、3分で150℃から210℃に、210℃で5分)加工した。表3にその調合がまとめられている。
【0123】
【表3】

【0124】
混練された試料はプレートにプレスされ、そして引き続き水浴中で80℃で架橋した。架橋された試料のゲル含分は、様々な貯蔵時間で測定した。
【0125】
【表4】

【0126】
実施例13
マスターキット(マスターバッチ)
製造されたカルボキシシランを、触媒としてシオプラス法で使用した。このために、Dynasylan(登録商標)SILFIN 24でグラフトされたポリエチレン95質量%と、本発明による触媒凝縮物(Kat−MB)5質量%とを混練した。まず、各触媒1gと、PE−HD49gとを有するマスターバッチを、混練機中で製造した(温度プロフィール:200℃で5分)。その後、このうち2.5gを、押出成形されたDynasylan(登録商標)SILFIN 24 PE- HD 47.5gと一緒に混練し(温度プロフィール:140℃で3分、2分で140℃から210℃に、210℃で5分)、引き続き200℃でプレートにプレスし、最後に水浴で80℃で架橋した。このKat−MBはそれぞれ、各触媒、とりわけビニルトリカルボキシシラン又は脂肪酸を2質量%含んでいた。これらの結果を、触媒不含のバッチと比較した。これらのプレートは、水浴中80℃で架橋した。表5には、これらの架橋研究の結果が示されている。
【0127】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの有機酸のケイ素含有前駆体化合物を、シラン加水分解触媒及び/又はシラノール縮合触媒として用いる使用。
【請求項2】
少なくとも1つの有機酸のケイ素含有前駆体化合物が、一般式I及び/又はII
【化1】

[式中、
相互に独立して、
zは0、1、2、又は3であり、
xは0、1、2、又は3であり、
yは0、1、2、又は3であり、
uは0、1、2、又は3であるが、
ただし、式I中でz+xは3以下であり、かつ式II中でy+uが独立して2以下であり、
Aは式I及び/又は式II中で相互に独立して一価のオレフィン基であり、
式II中でII価の基としてのAは、二価のオレフィン基であり、
1は相互に独立して、カルボニル−R3基に相応し、ここでR3は置換又は非置換の炭化水素基、とりわけ1〜45個のC原子を有する置換又は非置換の炭化水素基に相応し、かつ
2は相互に独立して置換又は非置換の炭化水素基に相応する]
に相応することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
少なくとも1つの有機酸のケイ素含有前駆体化合物が、担体材料上に施与され、担体材料中に組み込まれ、かつ/又はカプセル化されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
モノシル法、シオプラス法、及び/又は共重合法における、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
モノシル法、熱可塑性ベースポリマーによるシオプラス法、又は熱可塑性ベースポリマーのモノマー及び/又はプレポリマーによる共重合法で、少なくとも1つのラジカル形成剤の存在下、有機酸のケイ素含有前駆体化合物を用いることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
充填されていないSi架橋されたポリマーコンパウンドの製造、及び/又は充填されSi架橋されたポリマーコンパウンドの製造のため;及び/又は熱可塑性ベースポリマーをベースとする、相応して充填されSi架橋されたポリマーの製造、又は充填されていないSi架橋されたポリマーの製造のための、請求項1から5までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
熱可塑性ベースポリマー、シラングラフトされたベースポリマー、シラン共重合されたベースポリマーの存在下、及び/又はこれらのベースポリマーのモノマー及び/又はプレポリマー、及び/又はこれらの混合物の存在下で使用を行うことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
有機官能性シラン化合物を併用する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
有機官能性シラン化合物が、不飽和アルコキシシラン、とりわけ一般式III
【化2】

[式中、
相互に独立して、
bは0、1、2、又は3であり、aは0、1、2、又は3であるが、ただし式III中でb+aは3以下であり、
Bは式III中で相互に独立して一価の基
(R72C=C(R7)−Eq
ここでR7は同じであるか、又は異なっており、R7は水素原子、又はメチル基、又はフェニル基であり、基Eは、−CH2−、−(CH22−、−(CH23−、−O(O)C(CH23−、又は−C(O)O−(CH23の群からの基であり、qは0又は1であり、又はイソプレニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、テルペニル、スクアラニル、スクアレニル、ポリテルペニル、ベツラプレノキシ、シス/トランスポリイソプレニル、又は基
6−Dp−[C(R6)=C(R6)−C(R6)=C(R6)]t−Dp
に相応し、
ここでR6は同じであるか、又は異なっており、R6は水素原子、又は1〜3個のC原子を有するアルキル基、又はアリール基、又はアラルキル基、好適にはメチル基、又はフェニル基であり、基Dは同じであるか、又は異なっており、Dは−CH2−、−(CH22−、−(CH23−、−O(O)(CH23−、又は−C(O)O−(CH23−の群からの基であり、pは0又は1、かつtは1又は2であり、
5は相互に独立して、メチル、エチル、n−プロピル、及び/又はイソ−プロピルであり、
4は相互に独立して、置換された、又は非置換の炭化水素基である]
の不飽和アルコキシシランに相応することを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
ジラウリン酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジオクチルスズ、ジオクチルスズジ−(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチルスズジ−(イソオクチルメルカプトアセテート)、ジブチルスズジカルボキシレート、モノブチルスズトリス−(2−エチルヘキサノエート)、ジブチルスズジネオデカノエート、ラウリルスタノキサン、ジブチルスズジケトノエート、ジオクチルスズオキシド、ジブチルスズ二酢酸、マレイン酸ジブチルスズ、二塩化ジブチルスズ、硫化ジブチルスズ、ジブチルスズオキシド、有機スズ酸化物、モノブチルスズジヒドロキシクロリド、モノブチルスズオキシド、ジブチルスズ−ビス−(イソオクチルマレエート)を含む、他のシラノール縮合触媒を併用する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
物品、とりわけ成形体、好ましくはケーブル又は管の製造における、請求項1から10までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
マスターバッチ、とりわけ熱可塑性ベースポリマーを架橋させるためのマスターバッチにおいて、
少なくとも1つの有機酸のケイ素含有前駆体化合物と、ラジカル形成剤とを含むことを特徴とする、前記マスターバッチ。
【請求項13】
マスターバッチ、とりわけ熱可塑性ベースポリマーを架橋させるためのマスターバッチにおいて、
成分Aとして少なくとも1つの有機酸のケイ素含有前駆体化合物、とりわけ先の定義に相応する一般式I及び/又はIIのものを含み、かつ
場合により成分Bとしてラジカル形成剤、及び
場合により成分Cとして有機官能性シラン化合物、とりわけ不飽和アルコキシシラン、好ましくは式IIIのもの(b、a、B、R4、及びR5は先に定義の通り)を含み、
この際、前記成分A、B、及び/又はCのうち少なくとも1つが担持されている、又はカプセル化されていることを特徴とする、前記マスターバッチ。
【請求項14】
熱可塑性ベースポリマー、シラングラフトされたベースポリマー、シラン共重合されたベースポリマー、及び/又はこれらのベースポリマーのモノマー及び/又はプレポリマー、及び/又はこれらの混合物を含む、請求項12又は13に記載のマスターバッチ。
【請求項15】
モノシル法、シオプラス法、又は共重合法での、とりわけ請求項1から14までのいずれか1項に従った、有機酸のケイ素含有前駆体化合物、とりわけ式I及び/又はIIのものの使用。
【請求項16】
ケイ素含有ポリマー、ポリマーコンパウンド、充填されていない架橋されたポリマー、及び/又は充填され架橋されたポリマーの製造における、有機酸のケイ素含有前駆体化合物、とりわけ式I及び/又はIIのものの使用。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか1項に記載の有機酸のケイ素含有前駆体化合物、及び/又はその加水分解生成物、及び/又はその縮合生成物を含む物品。

【公表番号】特表2012−502149(P2012−502149A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526430(P2011−526430)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058718
【国際公開番号】WO2010/028875
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】