説明

杭の設計方法

【課題】アンボンド処理を行わずとも杭頭接合部の固定度を低減させるとともに、固定度低減に応じた適切な設計を行う。
【解決手段】本発明に係る杭の設計方法においては、接合材の仕様を設定し、杭頭部での許容曲げモーメントMaを評価し、Maが杭頭に作用したときの杭頭回転角θを(1-a)式で算出し、杭頭回転角θを用いて回転剛性Kθを(2)式で算出し、回転剛性Kθを用いて発生曲げモーメントMθを算出し、Mθが(4)式を満たすかどうかを判定し、さらにMaがMθよりも過剰に大きすぎないかを判定し、さらに、杭5の許容曲げモーメントMpaが曲げモーメントMpよりも過剰に大きすぎないかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭頭に生じる曲げモーメントを低減可能な杭頭接合部を設計する際に用いられる杭の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭基礎には支持杭形式と摩擦杭形式とがあり、前者は、良質な支持層が地下深くにある場合に該支持層まで打ち込んだ杭の上に上部構造物を構築することによって、構造物重量を支持層で安定支持する形式であり、後者は、良質な支持層がない場合に周辺地盤との摩擦力によって上部構造物を支持する形式の基礎形式である。
【0003】
これらの杭は、その杭頭にて上部構造物の基礎スラブや基礎梁に接合されるが、かかる接合部においては、長期荷重として圧縮力が作用するほか、地震時には、上部構造物の転倒モーメントに起因する引抜き力、水平力に起因するせん断力あるいは曲げモーメントが作用する。
【0004】
そして、上部構造物がきわめて大きな地震に遭遇した場合には、杭頭に過大なせん断力や曲げモーメントが作用し、杭の破壊ひいては上部構造物の倒壊といった不測の事態を招くおそれがある。
【0005】
そこで、最近では、杭頭で発生する曲げモーメントを低減すべく、杭頭の端板に立設された異形スタッドの一部を切削加工したり、杭頭鉄筋の一部を筒体(シース管、スリーブ)内に配置したり、アンカーボルトにアスファルトを塗布したりすることで、基礎スラブを構成するコンクリートと異形スタッドや杭頭鉄筋あるいはアンカーボルトとの付着力を弱めあるいは付着を切る、いわゆるアンボンド処理が行われるようになってきた。
【0006】
かかるアンボンド処理を行うことにより、杭頭に発生する曲げモーメントを低減することが可能となる。
【0007】
【特許文献1】特開2000−144763
【特許文献2】特開2002−317454
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したアンボンド処理は、異形スタッドを切削加工したり筒体を配置したりするのに手間とコストがかかり、経済的な観点で改善の余地があった。そして何より、異形スタッド、鉄筋あるいはアンカーボルトといった鋼棒がコンクリートの中性化等によって経年的に腐食膨張するとともに該腐食膨張に起因してコンクリートとの付着が生じ、その結果、アンボンド状態を長期間維持することは困難であるという問題を生じていた。
【0009】
また、杭頭での回転変形を許容して発生曲げモーメントを低下させることが可能な構造を仮に採用することができたとしても、杭頭接合部を剛接とみなす従来の設計方法では、実際には固定度が1より小さいことが多いため、杭に生じる曲げモーメント分布が設計時のものと異なるものとなり、杭頭では設計値よりも小さくなるものの、中間部においては設計値より大きくなって、杭の破壊を招く懸念があるという問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、アンボンド処理を行わずとも杭頭接合部の固定度を低減させるとともに、固定度低減に応じた適切な設計を行うことが可能な杭の設計方法を提供することを目的とする。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る杭の設計方法は請求項1に記載したように、所定の接合材を介して頭部が上部構造物に接合され該上部構造物を支持する杭を設計する方法であって、
【0012】
前記接合材を、前記杭の頭部に設けられた端板に接合される固定度低減用平板と、該固定度低減用平板に立設され前記上部構造物に埋設されるアンカーボルトとから構成するとともに、水平力が前記上部構造物から前記杭の頭部に作用したとき、前記固定度低減用平板が面外に曲げ変形して前記杭の頭部が回転するように構成し、
【0013】
前記接合材の仕様を設定し、
【0014】
前記杭の頭部における許容曲げモーメントMaを評価し、
【0015】
該許容曲げモーメントMaが前記杭の頭部に作用したときの杭頭回転角θを、次式、
【0016】
θ=(Δb+Δp)/(Dp/2+rs−xno) (1−a)
【0017】
Δb;引張側のアンカーボルトの伸び量
【0018】
Δp;固定度低減用平板の曲げ変形量
【0019】
Dp;杭の外径
【0020】
s;アンカーボルトの配置半径
【0021】
no;断面の圧縮縁から中立軸位置までの距離
【0022】
で算出し、
【0023】
算出された杭頭回転角θを用いて回転剛性Kθを、次式、
【0024】
θ=Ma/θ (2)
【0025】
によって算出し、
【0026】
算出された回転剛性Kθを用いて発生曲げモーメントMθを算出し、
【0027】
該低減された発生曲げモーメントMθを用いて前記接合材の仕様を決定するものである。
【0028】
また、本発明に係る杭の設計方法は、前記(1−a)式に代えて、
【0029】
θ=(Δb+Δp+Δα)/(Dp/2+rs−xno) (1′−a)
【0030】
Δα;パイルキャップ(上部構造物のうち、アンカーボルトが埋設され る杭頭近傍箇所)の圧縮変形量又は回転変形量
【0031】
とするものである。
【0032】
また、本発明に係る杭の設計方法は請求項3に記載したように、所定の接合材を介して頭部が上部構造物に接合され該上部構造物を支持する杭を設計する方法であって、
【0033】
前記接合材を、前記杭の頭部に設けられた端板に取り付けられる固定度低減部材と、該固定度低減部材に取り付けられ前記上部構造物に埋設されるアンカーボルトとから構成するとともに、前記端板への取付け箇所と前記アンカーボルトへの取付け箇所との間において前記固定度低減部材に段差部、立ち上がり部等の非平坦部を形成してなり、水平力が前記上部構造物から前記杭の頭部に作用したとき、前記固定度低減部材が曲げ変形して前記杭の頭部が回転するように構成し、
【0034】
前記接合材の仕様を設定し、
【0035】
前記杭の頭部における許容曲げモーメントMaを評価し、
【0036】
該許容曲げモーメントMaが前記杭頭接合部に作用したときの杭頭回転角θを、次式、
【0037】
θ=(Δb+Δpb)/(Dp/2+rs−xno) (1−b)
【0038】
Δb;引張側のアンカーボルトの伸び量
【0039】
Δpb;固定度低減部材の曲げ変形量
【0040】
Dp;杭の外径
【0041】
s;アンカーボルトの配置半径
【0042】
no;断面の圧縮縁から中立軸位置までの距離
【0043】
で算出し、
【0044】
算出された杭頭回転角θを用いて回転剛性Kθを、次式、
【0045】
θ=Ma/θ (2)
【0046】
によって算出し、
【0047】
算出された回転剛性Kθを用いて発生曲げモーメントMθを算出し、
【0048】
該低減された発生曲げモーメントMθを用いて前記接合材の仕様を決定するものである。
【0049】
また、本発明に係る杭の設計方法は、前記(1−b)式に代えて、
【0050】
θ=(Δb+Δpb+Δα)/(Dp/2+rs−xno) (1′−b)
【0051】
Δα;パイルキャップ(上部構造物のうち、アンカーボルトが埋設され る杭頭近傍箇所)の圧縮変形量又は回転変形量
【0052】
とするものである。
【0053】
また、本発明に係る杭の設計方法は請求項5に記載したように、所定の接合材を介して頭部が上部構造物に接合され該上部構造物を支持する杭を設計する方法であって、
【0054】
前記接合材を、一方の側に延びる直線部が前記杭の頭部に設けられた端板に取り付けられ、L字状固定度低減部を介して他方の側に延びる直線部が前記上部構造物に埋設されるアンカーボルトとなるように構成するとともに、水平力が前記上部構造物から前記杭の頭部に作用したとき、前記L字状固定度低減部が曲げ変形して前記杭の頭部が回転するように構成し、
【0055】
前記接合材の仕様を設定し、
【0056】
前記杭の頭部における許容曲げモーメントMaを評価し、
【0057】
該許容曲げモーメントMaが前記杭の頭部に作用したときの杭頭回転角θを、次式、
【0058】
θ=(Δb+Δpl)/(Dp/2+rs−xno) (1−c)
【0059】
Δb;引張側のアンカーボルトの伸び量
【0060】
Δpl;L字状固定度低減部の曲げ変形量
【0061】
Dp;杭の外径
【0062】
s;アンカーボルトの配置半径
【0063】
no;断面の圧縮縁から中立軸位置までの距離
【0064】
で算出し、
【0065】
算出された杭頭回転角θを用いて回転剛性Kθを、次式、
【0066】
θ=Ma/θ (2)
【0067】
によって算出し、
【0068】
算出された回転剛性Kθを用いて発生曲げモーメントMθを算出し、
【0069】
該低減された発生曲げモーメントMθを用いて前記接合材の仕様を決定するものである。
【0070】
また、本発明に係る杭の設計方法は、前記(1−c)式に代えて、
【0071】
θ=(Δb+Δpl+Δα)/(Dp/2+rs−xno) (1′−c)
【0072】
Δα;パイルキャップ(上部構造物のうち、アンカーボルトが埋設され る杭頭近傍箇所)の圧縮変形量又は回転変形量
【0073】
とするものである。
【0074】
また、本発明に係る杭の設計方法は請求項7に記載したように、所定の接合材を介して頭部が上部構造物に接合され該上部構造物を支持する杭を設計する方法であって、
【0075】
前記接合材を、前記杭の頭部に設けられた端板と、該端板に立設され前記杭で支持される上部構造物に埋設されるアンカーボルトとから構成するとともに、水平力が前記上部構造物から前記杭の頭部に作用したとき、前記端板が面外に曲げ変形して前記杭の頭部が回転するように構成し、
【0076】
前記接合材の仕様を設定し、
【0077】
前記杭の頭部における許容曲げモーメントMaを評価し、
【0078】
該許容曲げモーメントMaが前記杭頭接合部に作用したときの杭頭回転角θを、次式、
【0079】
θ=(Δb+Δpe)/(Dp/2+rs−xno) (1−d)
【0080】
Δb;引張側のアンカーボルトの伸び量
【0081】
Δpe;端板の曲げ変形量
【0082】
Dp;杭の外径
【0083】
s;アンカーボルトの配置半径
【0084】
no;断面の圧縮縁から中立軸位置までの距離
【0085】
で算出し、
【0086】
算出された杭頭回転角θを用いて回転剛性Kθを、次式、
【0087】
θ=Ma/θ (2)
【0088】
によって算出し、
【0089】
算出された回転剛性Kθを用いて発生曲げモーメントMθを算出し、
【0090】
該低減された発生曲げモーメントMθを用いて前記接合材の仕様を決定するものである。
【0091】
また、本発明に係る杭の設計方法は、前記(1−d)式に代えて、
【0092】
θ=(Δb+Δpe+Δα)/(Dp/2+rs−xno) (1′−d)
【0093】
Δα;パイルキャップ(上部構造物のうち、アンカーボルトが埋設され る杭頭近傍箇所)の圧縮変形量又は回転変形量
【0094】
とするものである。
【0095】
本発明に係る杭の設計方法においては、まず、接合材の仕様を設定する。
【0096】
ここで、第1の発明に係る接合材は、杭の頭部に設けられた端板に接合される固定度低減用平板と、該固定度低減用平板に立設され上部構造物に埋設されるアンカーボルトとから構成してあるとともに、水平力が上部構造物から杭の頭部に作用したとき、固定度低減用平板が面外に曲げ変形して杭の頭部が回転するように構成してある。
【0097】
また、第2の発明に係る接合材は、杭の頭部に設けられた端板に取り付けられる固定度低減部材と、該固定度低減部材に取り付けられ上部構造物に埋設されるアンカーボルトとから構成してあるとともに、端板への取付け箇所とアンカーボルトへの取付け箇所との間において固定度低減部材に段差部、立ち上がり部等の非平坦部を形成してなり、水平力が上部構造物から杭の頭部に作用したとき、固定度低減部材が曲げ変形して杭の頭部が回転するように構成してある。
【0098】
また、第3の発明に係る接合材は、一方の側に延びる直線部が前記杭の頭部に設けられた端板に取り付けられ、L字状固定度低減部を介して他方の側に延びる直線部が前記上部構造物に埋設されるアンカーボルトとなるように構成するとともに、水平力が上部構造物から杭の頭部に作用したとき、L字状固定度低減部が曲げ変形して杭の頭部が回転するように構成してある。
【0099】
また、第4の発明に係る接合材は、杭の頭部に設けられた端板と、該端板に立設され杭で支持される上部構造物に埋設されるアンカーボルトとから構成するとともに、水平力が上部構造物から杭の頭部に作用したとき、端板が面外に曲げ変形して杭の頭部が回転するように構成してある。
【0100】
杭は、PRC杭、PC杭、PHC杭、鋼管杭、RC杭、SC杭などの既製杭が主たる対象であるが、上述した各接合材を頭部に取り付けることができる限り、種類は任意であって場所打ち杭であってもかまわない。
【0101】
アンカーボルトは、所定の鋼材で形成された鋼棒を適宜採用することが可能であり、固定度低減用平板、固定度低減部材及び端板に立設する方法としては、溶接又は螺合のいずれかを選択することができる。また、アンカーボルトの断面形状については任意であるが、典型的には丸鋼を採用することができる。
【0102】
接合材のうち、固定度低減用平板、固定度低減部材及び端板の仕様は例えば、平面形状、厚み、鋼材種類、変形拘束位置、すなわち、アンカーボルトの設置位置をその内容とすることができる。アンカーボルトの仕様は例えば、取付け本数、径及び埋込み長を内容とすることが考えられる。なお、建物荷重、杭配置、地盤定数、入力地震動に応じた杭設計用せん断力、杭設計用短期軸力及び杭設計用曲げモーメントについては予め定めておく。
【0103】
接合材の仕様が設定されたならば、次に、杭の頭部における許容曲げモーメントMaを評価する。
【0104】
ここで、杭の頭部における許容曲げモーメントMaについては、公知の手順によって適宜算出することが可能であるとともに、実験等で得られた公知の知見に基づいて、適宜、修正を行ってもかまわない。本明細書では、低減率等の修正が反映されている場合も含めて、許容曲げモーメントMaなる用語を用いるものとする。
【0105】
次に、許容曲げモーメントMaが杭の頭部に作用したときの杭頭回転角θを、(1−a)式、(1−b)式、(1−c)式又は(1−d)式で算出する。
【0106】
ここで、Δbは上述したように、許容曲げモーメントMaが杭の頭部に作用したときの引張側のアンカーボルトの伸び量であり、アンカーボルトの埋込み長や断面積、あるいは基礎部材との付着の度合い(アンボンドか、ボンドか)等を適宜勘案し、公知の方法で算出ないしは評価すればよい。
【0107】
Δp、Δpb、Δpl、Δpeはそれぞれ、許容曲げモーメントMaが杭の頭部に作用したときの固定度低減用平板、固定度低減部材、L字状固定度低減部及び端板の曲げ変形による変形量であって、アンカーボルトの材軸方向に沿ったアンカーボルト位置での変形量であり、固定度低減用平板、固定度低減部材、L字状固定度低減部及び端板の形状、厚み等を適宜勘案し、公知の方法で算出ないしは評価すればよい。
【0108】
次に、算出された杭頭回転角θを用いて回転剛性Kθを、次式、
【0109】
θ=Ma/θ (2)
【0110】
によって算出する。
【0111】
ここで、回転剛性Kθは、許容曲げモーメントMaに対応するいわば杭頭接合部のみの剛性であって、杭自体の剛性や地盤の剛性は含まれていない。
【0112】
次に、回転剛性Kθを用いて発生曲げモーメントMθを算出する。発生モーメントMθは、固定度を1とみなしていた従前の発生曲げモーメントM0に比べ、回転剛性Kθが考慮された分だけ低減されることとなる。なお、発生曲げモーメントMθを算出する手法自体については公知の算出式を用いることが可能であり、例えば、杭が打設される地盤を均質地盤(一様地盤)とみなし得る場合には、次式、
【0113】
θ=M0・Kθ/(EIβ+Kθ) (3)
【0114】
0; 固定度を1とした場合の発生曲げモーメント
【0115】
EI;杭の曲げ剛性
【0116】
β;地盤条件と杭から定まる係数(杭の水平抵抗特性値)
【0117】
によって算出することができる。
【0118】
次に、このように算出された発生曲げモーメントMθを用いて接合材の仕様を決定する。
【0119】
以上説明した杭の設計方法によれば、アンカーボルトの伸びと、固定度低減用平板、固定度低減部材、L字状固定度低減部又は端板の曲げ変形量とから杭頭接合部の回転変形を評価することにより、杭頭に発生する曲げモーメントを低減することが可能な接合材の仕様を定めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0120】
以下、本発明に係る杭の設計方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0121】
(第1実施形態)
【0122】
図1及び図2は、本実施形態に係る杭の設計方法を示したフローチャート、図3及び図4は、かかる設計方法の対象となる接合材及びそれを用いた杭頭接合構造を示した斜視図、平面図及び断面図である。
【0123】
図3及び図4でわかるように、本実施形態に係る接合材1は、固定度低減用平板2と該固定度低減用平板に立設されたアンカーボルト3とを備えるとともに、かかる接合材1を用いた杭頭接合構造4は、固定度低減用平板2を、PHC杭である杭5の頭部6(以下、杭頭6)に設けられた端板7に重ねた状態でボルト10で該端板に接合してあるとともに、杭5で支持される上部構造物8の基礎梁、基礎スラブ、柱型等の基礎部材9にアンカーボルト3を埋設して構成してある。
【0124】
固定度低減用平板2は、外半径R2が杭5の外半径r2と等しく、内半径R1が杭5の内半径r1よりも小さな円環状の鋼材で形成してあり、杭5のPC鋼線設置位置に対応する箇所に穿孔された挿通孔11にボルト10を挿通し端板2に形成されたボルト孔12にねじ込むことで、端板7に固定できるようになっている。
【0125】
固定度低減用平板2には、アンカーボルト3が挿通されるボルト孔13を設けてあり、該ボルト孔にアンカーボルト3を挿通してナット14,14を螺合することでアンカーボルト3を固定度低減用平板2に立設できるようになっている。
【0126】
ここで、ボルト孔13は、杭5の断面中心からの距離、換言すればアンカーボルト3の取付け半径Rが杭5の内径r1よりも小さくなるように位置決めしてある。そして、かかる構成により、アンカーボルト3の立設位置は、杭5の内周面よりも内側となる。
【0127】
本実施形態に係る杭頭接合構造4及びそれに用いる接合材1は、上述した構成により、地震時水平力が上部構造物9から杭頭6に作用したとき、杭頭6の端板7に重ねて接合してある固定度低減用平板2は、図5に示すように面外に曲げ変形するとともに、それに伴って杭頭6に回転変形が生じる。
【0128】
したがって、基礎部材9に対する杭頭6の接合度は緩和され、いわゆる半剛接合となる。加えて、杭頭6の回転角θに対する発生曲げモーメントM、換言すれば杭頭6における回転剛性は、固定度低減用平板2の面外曲げ剛性として評価することが可能となる。
【0129】
本実施形態に係る杭の設計方法においては、まず、杭5の仕様と、アンカーボルト3の仕様と、固定度低減用平板2の仕様とを設定する(ステップ101)。
【0130】
ここで、杭5の仕様は、杭径をその内容とし、アンカーボルト3の仕様は、取付け本数、径及び埋込み長を内容とし、固定度低減用平板2の仕様は、平面形状、厚み、鋼材種類、変形拘束位置、すなわち、アンカーボルト3の設置位置(ボルト孔13の位置)をその内容とする。
【0131】
また、建物荷重や地盤条件等を考慮して杭配置を適宜決定するとともに、設計対象となる杭6に作用する軸力N(最大軸力Nmax、最小軸力Nmin)を予め定めておく。地盤条件は例えばボーリング調査を行ってN値を調べればよい。杭設計用せん断力、杭設計用短期軸力及び杭設計用曲げモーメントについても、入力地震動に応じて予め算出しておく。
【0132】
杭5の仕様と、アンカーボルト3の仕様と、固定度低減用平板2の仕様とが設定されたならば、次に、杭の頭部における許容曲げモーメントMaを評価する(ステップ102)。なお、許容曲げモーメントMaについては、公知の手順によって適宜算出すればよい。
【0133】
次に、図6に示すように、許容曲げモーメントMaが杭頭に作用したときの杭頭回転角θを、次式、
【0134】
θ=(Δb+Δp)/(Dp/2+rs−xno) (1−a)
【0135】
Δb;引張側のアンカーボルトの伸び量
【0136】
Δp;固定度低減用平板の曲げ変形量
【0137】
Dp;杭の外径
【0138】
s;アンカーボルトの配置半径
【0139】
no;断面の圧縮縁から中立軸位置までの距離
【0140】
で算出する(ステップ103)。
【0141】
ここで、Δbは上述したように、許容曲げモーメントMaが杭6の頭部に作用したときの引張側のアンカーボルト3の伸び量であり、基礎部材9へのアンカーボルト3の埋込み長や断面積、あるいは基礎部材9との付着の度合い(アンボンドか、ボンドか)等を適宜勘案し、公知の方法で算出ないしは評価すればよい。
【0142】
Δpは、許容曲げモーメントMaが杭頭6に作用したときの固定度低減用平板2の曲げ変形による変形量であって、アンカーボルト3の材軸方向に沿ったアンカーボルト位置での変形量であり、固定度低減用平板2の形状、厚み等を適宜勘案し、公知の方法で算出ないしは評価すればよい。
【0143】
次に、算出された杭頭回転角θを用いて回転剛性Kθを、次式、
【0144】
θ=Ma/θ (2)
【0145】
によって算出する(ステップ104)。
【0146】
ここで、回転剛性Kθは、許容曲げモーメントMaに対応するいわば杭頭接合部のみの剛性であって、杭自体の剛性や地盤の剛性は含まれていない。
【0147】
次に、算出された回転剛性Kθを用いて発生曲げモーメントMθを算出するが、本実施形態では、杭が打設される地盤を均質地盤(一様地盤)であるとみなし得るものとし、次式、
【0148】
θ=M0・Kθ/(EIβ+Kθ) (3)
【0149】
0; 固定度を1とした場合の発生曲げモーメント
【0150】
EI;杭の曲げ剛性
【0151】
β;地盤条件と杭から定まる係数(杭の水平抵抗特性値)
【0152】
によって算出する(ステップ105)。
【0153】
次に、このように算出された発生曲げモーメントMθは、杭頭接合部の回転剛性が考慮されかつ杭自体の剛性や地盤の剛性も考慮された値であるため、許容曲げモーメントMaとは一致しない。
【0154】
そのため、低減された発生曲げモーメントMθが、次式、
【0155】
θ≦Ma (4)
【0156】
を満たすかどうかを判定する(ステップ106)。
【0157】
次に、(4)式が成立しない場合(ステップ106、NO)、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び固定度低減用平板2の仕様のうち、少なくともいずれかの仕様を再設定し(ステップ107)、ステップ102以降のステップを繰り返す。
【0158】
一方、上記判定において(4)式が成立する場合(ステップ106、YES)、さらに、MaがMθよりも過剰に大きすぎないか、換言すればオーバースペックになっていないかどうかを判定し、オーバースペックになっていると判断できる場合(ステップ108、NO)、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び固定度低減用平板2の仕様のうち、少なくともいずれかの仕様を再設定し(ステップ109)、ステップ102以降のプロセスを繰り返す。
【0159】
一方、オーバースペックになっていないと判断できる場合(ステップ108、YES)、低減された発生曲げモーメントMθ及び杭設計用せん断力Sを用いて杭5に発生する曲げモーメントMPを算出し、
【0160】
曲げモーメントMp≦杭5の許容曲げモーメントMpa (5)
【0161】
が杭5の全長にわたって成立するかどうかを判定する(ステップ110)。
【0162】
次に、(5)式が成立しない場合(ステップ110、NO)、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び固定度低減用平板2の仕様のうち、少なくともいずれかの仕様を再設定し(ステップ111)、ステップ102以降のステップを繰り返す。
【0163】
ここで、杭5の本体に発生する曲げモーメントMpが、杭5の許容曲げモーメントMpaより大きい場合、杭の曲げモーメント分布は、杭頭ではなく杭中間部で大きくなっている。そのため、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び固定度低減用平板2の仕様のうち、少なくともいずれかの仕様を再設定してやればよい。
【0164】
一方、(5)式が成立する場合(ステップ110、YES)、さらに、杭5の許容曲げモーメントMpaが曲げモーメントMpよりも過剰に大きすぎないか、換言すればオーバースペックになっていないかどうかを判定し、オーバースペックになっていると判断できる場合(ステップ112、NO)、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び固定度低減用平板2の仕様のうち、少なくともいずれかの仕様を再設定し(ステップ113)、ステップ102以降のプロセスを繰り返す。
【0165】
ここで、杭5の本体に発生する曲げモーメントMpが、杭5の許容曲げモーメントMpaより小さすぎる場合、杭の曲げモーメント分布は、杭中間部ではなく杭頭で大きくなっている。そのため、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び固定度低減用平板2の仕様のうち、少なくともいずれかの仕様を再設定してやればよい。
【0166】
一方、オーバースペックになっていないと判断できる場合(ステップ112、YES)、最初に定めた杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び固定度低減用平板2の仕様を、それぞれ杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び固定度低減用平板2の仕様として決定する(ステップ114)。
【0167】
以上説明したように本実施形態に係る杭の設計方法によれば、基礎部材9に対する杭頭6の固定度が従来よりも大幅に緩和され、いわゆる半剛接合が実現された杭の設計を適切に行うことが可能となる。
【0168】
すなわち、本実施形態によれば、アンカーボルト3の伸びだけではなく、固定度低減用平板2の曲げ変形によって、杭頭6の固定度を大幅に緩和するとともに、固定度低減用平板2の曲げ変形及びアンカーボルト3の伸びから杭頭6の回転変形を評価することにより、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び固定度低減用平板2の仕様を適切に定めることが可能となる。
【0169】
また、本実施形態に係る杭の設計方法によれば、(4)式や(5)式が成立する場合であっても、オーバースペックであると判断できる場合には、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び固定度低減用平板2の仕様を再設定し、ステップ102以降のプロセスを繰り返すようにしたので、より合理的かつ経済性に優れた設計を行うことが可能となる。
【0170】
本実施形態では、発生曲げモーメントMθを算出する際、杭が打設される地盤を均質地盤(一様地盤)とみなし得るものとして、(3)式によって算出したが、発生曲げモーメントMθ自体の算出は、地盤の状況によって公知の計算式から適宜選択すればよく、例えば地盤が多層地盤である場合には、それに応じた計算式を用いて発生曲げモーメントMθを算出すればよい。
【0171】
また、本実施形態では、ナット14,14を用いたボルト接合でアンカーボルト3を固定度低減用平板2に立設するようにしたが、これに代えて、アンカーボルト3の下端を固定度低減用平板2の上面に溶接することでアンカーボルト3を固定度低減用平板2に立設するようにしてもかまわない。
【0172】
また、本実施形態では、固定度低減用平板2を端板7にボルト接合するようにしたが、ボルト接合に代えて溶接により接合するようにしてもかまわない。
【0173】
また、本実施形態では、アンカーボルト3の立設位置を、杭5の内周面よりも内側に設定したが、これに代えて杭5の外周面よりも外側に設定してもかまわない。すなわち、アンカーボルト3が挿通されるボルト孔13を、杭5の断面中心からの距離、換言すればアンカーボルト3の取付け半径Rが杭5の外半径r2よりも大きくなるように位置決めする。
【0174】
図7は、このようにボルト孔13が位置決めされた固定度低減用平板42がどのように面外曲げ変形を生じるかを示した図である。同図でわかるように、かかる変形例であっても、杭頭6における回転剛性は、固定度低減用平板42の面外曲げ剛性として評価することが可能であり、上述の実施形態と同様、固定度低減用平板42に関する諸データだけで杭頭6の回転剛性を算出し、杭頭6における固定度低減の程度を容易に把握することができる。
【0175】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、固定度低減用平板2は一枚板である必要はなく、例えば図8及び図9に示すように、全体が円環状でそれぞれが扇状をなす4枚の分割片53で固定度低減用平板52を構成するとともに、各分割片53のそれぞれにアンカーボルト3を立設するようにしてもかまわない。
【0176】
かかる構成においても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏するほか、各分割片53が個別に面外曲げ変形を生じるため、全体の面外曲げ変形を把握しやすくなり、杭頭6における接合度の低減評価がさらに容易になる。
【0177】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、例えば図10に示すように、円環状に形成され内側縁部から半径方向外側に向かって延びるスリット73を90゜ごとに4カ所形成して固定度低減用平板72を構成し、該スリットで挟まれた4つの舌状体74にアンカーボルト3をそれぞれ立設するようにしてもかまわない。
【0178】
かかる構成においても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏するほか、各舌状体74が個別に面外曲げ変形を生じるため、全体の面外曲げ変形を把握しやすくなり、杭頭6における接合度の低減評価が容易になる。
【0179】
同様に図11に示すように、それぞれを矩形部の短手縁部に半円部を延設して形成した4つの舌片83で固定度低減用平板82を構成するとともにこれら4つの舌片83を90゜ごとに端板7に重ねて接合し、該各舌片の半円部にアンカーボルト3をそれぞれ立設するようにしてもかまわない。
【0180】
かかる構成においても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏するほか、各舌片83が個別に面外曲げ変形を生じるため、全体の面外曲げ変形を把握しやすくなり、杭頭6における接合度の低減評価が容易になる。
【0181】
また、本実施形態では、杭頭の回転変形を算出する際、引張側のアンカーボルトの伸び量及び固定度低減用平板の曲げ変形量だけを考慮したが、これに加えて、次式、
【0182】
θ=(Δb+Δp+Δα)/(Dp/2+rs−xno) (1′−a)
【0183】
により、パイルキャップ(上部構造物のうち、アンカーボルトが埋設される杭頭近傍箇所)の圧縮変形量又は回転変形量を考慮するようにしてもよい。
【0184】
(第2実施形態)
【0185】
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一のステップ等については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0186】
図12及び図13は、本実施形態に係る杭の設計方法の対象となる接合材及びそれを用いた杭頭接合構造を示した斜視図、平面図及び断面図である。同図でわかるように、本実施形態に係る接合材201は、固定度低減部材202と該固定度低減部材に取り付けられたアンカーボルト3とを備えるとともに、本実施形態に係る杭頭接合構造204は、固定度低減部材202を、PHC杭である杭5の頭部6(以下、杭頭6)に設けられた端板7にボルト10で接合してあるとともに、杭5で支持される上部構造物8の基礎部材9にアンカーボルト3を埋設して構成してある。
【0187】
固定度低減部材202は、平面形が短冊状の4つの舌片202aからなるとともに、該各舌片の一端には、ボルト10が挿通される挿通孔211,211を形成してあり、該挿通孔に挿通されたボルト10を端板7に形成されたボルト孔12にねじ込むことで、固定度低減部材202を端板7に固定することができるようになっている。
【0188】
また、舌片202aの他端にはボルト孔213を設けてあり、該ボルト孔にアンカーボルト3を挿通してナット14,14を螺合することで、アンカーボルト3を固定度低減部材202に取り付けることができるようになっている。
【0189】
それゆえ、挿通孔211,211は端板7への取付け箇所、ボルト孔213はアンカーボルト3への取付け箇所といえるが、かかる端板7への取付け箇所とアンカーボルト3への取付け箇所との間には、折曲げ成形によって形成された非平坦部としての段差部215を設けてある。
【0190】
ここで、ボルト孔213は、杭5の断面中心からの距離、換言すればアンカーボルト3の取付け半径Rが杭5の内半径r1よりも小さくなるように位置決めしてある。そして、かかる構成により、アンカーボルト3の立設位置は、杭5の内周面よりも内側となる。
【0191】
本実施形態に係る杭頭接合構造204及びそれに用いる接合材201は、上述した構成により、地震時水平力が上部構造物9から杭頭6に作用したとき、杭頭6の端板7に取り付けてある固定度低減部材202は、図14に示すように曲げ変形するとともに、それに伴って杭頭6に回転変形が生じる。
【0192】
したがって、基礎部材9に対する杭頭6の接合度は緩和され、いわゆる半剛接合となる。加えて、杭頭6の回転角θに対する発生曲げモーメントM、換言すれば杭頭6における回転剛性は、固定度低減部材202の曲げ剛性として評価することが可能となる。
【0193】
また、折曲げ成形により、段差部215に塑性箇所が形成されているため、固定度低減部材202を構成する4つの舌片202aにおける主たる曲げ変形箇所は、段差部215の折曲げ位置に特定することができる。
【0194】
本実施形態に係る杭の設計方法においては、まずステップ101と同様、杭5の仕様と、アンカーボルト3の仕様と、固定度低減部材202の仕様とを設定する。
【0195】
ここで、杭5の仕様は、杭径をその内容とし、アンカーボルト3の仕様は、取付け本数、径及び埋込み長を内容とし、固定度低減部材202の仕様は、段差部215等の形状、厚み、鋼材種類、変形拘束位置、すなわち、アンカーボルト3の設置位置(ボルト孔213の位置)をその内容とする。
【0196】
また、建物荷重や地盤条件等を考慮して杭配置を適宜決定するとともに、設計対象となる杭6に作用する軸力N(最大軸力Nmax、最小軸力Nmin)を予め定めておく。地盤条件は例えばボーリング調査を行ってN値を調べればよい。杭設計用せん断力、杭設計用短期軸力及び杭設計用曲げモーメントについても、入力地震動に応じて予め算出しておく。
【0197】
杭5の仕様と、アンカーボルト3の仕様と、固定度低減部材202の仕様とが設定されたならば、次に、ステップ102と同様、杭の頭部における許容曲げモーメントMaを評価する。許容曲げモーメントMaは、公知の手順によって適宜算出すればよい。
【0198】
次に、ステップ103と同様、許容曲げモーメントMaが杭頭に作用したときの杭頭回転角θを、次式、
【0199】
θ=(Δb+Δpb)/(Dp/2+rs−xno) (1−b)
【0200】
Δb;引張側のアンカーボルトの伸び量
【0201】
Δpb;固定度低減部材の曲げ変形量
【0202】
Dp;杭の外径
【0203】
s;アンカーボルトの配置半径
【0204】
no;断面の圧縮縁から中立軸位置までの距離
【0205】
で算出する。
【0206】
ここで、Δbは上述したように、許容曲げモーメントMaが杭6の頭部に作用したときの曲げ引張側のアンカーボルト3の伸び量であり、基礎部材9へのアンカーボルト3の埋込み長や断面積、あるいは基礎部材9との付着の度合い(アンボンドか、ボンドか)等を適宜勘案し、公知の方法で算出ないしは評価すればよい。
【0207】
Δpbは、許容曲げモーメントMaが杭頭6に作用したときの固定度低減部材202の曲げ変形による変形量であって、アンカーボルト3の材軸方向に沿ったアンカーボルト位置での変形量であり、固定度低減部材202の形状、厚み等を適宜勘案し、公知の方法で算出ないしは評価すればよい。
【0208】
次にステップ104と同様、算出された杭頭回転角θを用いて回転剛性Kθを(2)式によって算出する。
【0209】
次にステップ105と同様、算出された回転剛性Kθを用いて発生曲げモーメントMθを算出する。
【0210】
次にステップ106と同様、発生曲げモーメントMθが、(4)式を満たすかどうかを判定する。
【0211】
次に、(4)式が成立しない場合、ステップ107と同様、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び固定度低減部材202の仕様のうち、少なくともいずれかの仕様を再設定し、ステップ102以降のステップを繰り返す。
【0212】
一方、上記判定において(4)式が成立する場合、さらに、MaがMθよりも過剰に大きすぎないか、換言すればオーバースペックになっていないかどうかを判定し、オーバースペックになっていると判断できる場合、ステップ109と同様、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び固定度低減部材202の仕様のうち、少なくともいずれかの仕様を再設定し、ステップ102以降のプロセスを繰り返す。
【0213】
一方、オーバースペックになっていないと判断できる場合、ステップ110と同様、低減された発生曲げモーメントMθ及び杭設計用せん断力Sを用いて杭5に発生する曲げモーメントMPを算出し、(5)式が杭5の全長にわたって成立するかどうかを判定する。
【0214】
次に、(5)式が成立しない場合、ステップ111と同様、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び固定度低減部材202の仕様のうち、少なくともいずれかの仕様を再設定し、ステップ102以降のステップを繰り返す。
【0215】
一方、(5)式が成立する場合、さらに、杭5の許容曲げモーメントMpaが曲げモーメントMpよりも過剰に大きすぎないか、換言すればオーバースペックになっていないかどうかを判定し、オーバースペックになっていると判断できる場合、ステップ113と同様、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び固定度低減部材202の仕様のうち、少なくともいずれかの仕様を再設定し、ステップ102以降のプロセスを繰り返す。
【0216】
一方、オーバースペックになっていないと判断できる場合、ステップ114と同様、最初に定めた杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び固定度低減部材202の仕様を、それぞれ杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び固定度低減部材202の仕様として決定する。
【0217】
以上説明したように本実施形態に係る杭の設計方法によれば、基礎部材9に対する杭頭6の固定度が従来よりも大幅に緩和され、いわゆる半剛接合が実現された杭の設計を適切に行うことが可能となる。
【0218】
すなわち、本実施形態によれば、アンカーボルト3の伸びだけではなく、固定度低減部材202の曲げ変形によって、杭頭6の固定度を大幅に緩和するとともに、固定度低減部材202の曲げ変形及びアンカーボルト3の伸びから杭頭6の回転変形を評価することにより、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び固定度低減部材202の仕様を適切に定めることが可能となる。
【0219】
また、本実施形態に係る杭の設計方法によれば、(4)式や(5)式が成立する場合であっても、オーバースペックであると判断できる場合には、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び固定度低減部材202の仕様を再設定し、ステップ102以降のプロセスを繰り返すようにしたので、より合理的かつ経済性に優れた設計を行うことが可能となる。
【0220】
本実施形態では、ナット14,14を用いたボルト接合でアンカーボルト3を固定度低減部材202に立設するようにしたが、これに代えて、アンカーボルト3の下端を舌片202aの上面に溶接することで、アンカーボルト3を固定度低減部材202に立設するようにしてもかまわない。
【0221】
また、本実施形態では、固定度低減用部材202を端板7にボルト接合するようにしたが、ボルト接合に代えて溶接により接合するようにしてもかまわない。
【0222】
また、本実施形態では、アンカーボルト3の立設位置を、杭5の内周面よりも内側に設定したが、これに代えて杭5の外周面よりも外側に設定してもかまわない。すなわち、アンカーボルト3が挿通されるボルト孔13を、杭5の断面中心からの距離、換言すればアンカーボルト3の取付け半径Rが杭5の外半径r2よりも大きくなるように位置決めする。例えば、上述した実施形態における各舌片202aの端板7への取付け角度を180゜反転させることで、各舌片202aを半径方向外側に向かせ、これを本変形例に係る固定度低減部材とすることができる。
【0223】
このような変形例であっても、杭頭6における回転剛性は、固定度低減部材の曲げ剛性として評価することが可能であり、上述の実施形態と同様、固定度低減部材に関する諸データだけで杭頭6の回転剛性を算出し、杭頭6における固定度低減の程度を容易に把握することができる。
【0224】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、本発明に係る固定度低減部材を図15のように構成してもよい。すなわち同図に示す固定度低減部材242は、非平坦部としての立ち上がり部243が形成された4つのL字状断面材242aで構成してある。ここで、立ち上がり部243の背面にはカプラー244を溶接してあり、該カプラーにアンカーボルトとしてのネジ鉄筋3aをねじ込むことで、4本のネジ鉄筋3aを固定度低減部材242に固定することができるようになっている。
【0225】
この変形例によっても上述した実施形態と同様の作用効果を奏するが、ここではその説明を省略する。
【0226】
また、本実施形態では、杭頭の回転変形を算出する際、引張側のアンカーボルトの伸び量及び固定度低減部材の曲げ変形量だけを考慮したが、これに加えて、次式、
【0227】
θ=(Δb+Δpb+Δα)/(Dp/2+rs−xno) (1′−b)
【0228】
により、パイルキャップの圧縮変形量又は回転変形量を考慮するようにしてもよい。
【0229】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、本発明に係る接合材を図16のように構成してもよい。すなわち、同図に示す接合材252は、一方の側に延びる直線部253が杭頭6に設けられた端板7に取り付けられ、L字状固定度低減部254を介して他方の側に延びる直線部255が基礎部材9に埋設されるアンカーボルトとなる。
【0230】
接合材252は、地震時水平力が上部構造物8から杭頭6に作用したとき、L字状固定度低減部254が曲げ変形して杭頭が回転するように構成してある。L字状固定度低減部254は、上述した実施形態と同様、折曲げ成形によって形成しておくのがよい。
【0231】
このようにすると、杭頭6の回転変形に対する発生曲げモーメント、換言すれば回転剛性は、L字状固定度低減部254の曲げ剛性として評価することができるため、形状及び鋼材種類や、変形拘束位置、すなわち、アンカーボルトの設置位置といったL字状固定度低減部254に関する諸データだけで杭頭の回転剛性を算出することが可能となり、かくして杭頭における固定度低減の程度を容易に把握することができる。
【0232】
かかる変形例においては、(1−b)式に代えて、
【0233】
θ=(Δb+Δpl)/(Dp/2+rs−xno) (1−c)
【0234】
Δb;引張側のアンカーボルトの伸び量
【0235】
Δpl;L字状固定度低減部の曲げ変形量
【0236】
Dp;杭の外径
【0237】
s;アンカーボルトの配置半径
【0238】
no;断面の圧縮縁から中立軸位置までの距離
【0239】
を用いるが、この点を除き、設計方法の手順は上述した実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0240】
なお、本変形例においては、杭頭の回転変形を算出する際、引張側のアンカーボルトの伸び量及びL字状固定度低減部の曲げ変形量だけを考慮したが、これに加えて、次式、
【0241】
θ=(Δb+Δpl+Δα)/(Dp/2+rs−xno) (1′−c)
【0242】
により、パイルキャップの圧縮変形量又は回転変形量を考慮するようにしてもよい。
【0243】
(第3実施形態)
【0244】
次に、第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一のステップ等については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0245】
図17及び図18は、本実施形態に係る杭の設計方法の対象となる接合材及びそれを用いた杭頭接合構造を示した斜視図、平面図及び断面図である。同図でわかるように、本実施形態に係る接合材301は、端板302と該端板に立設されたアンカーボルト3とからなるとともに、本実施形態に係る杭頭接合構造304は、端板302をPHC杭である杭頭6に設けるとともに、杭5で支持される上部構造物8の基礎部材9にアンカーボルト3を埋設して構成してある。
【0246】
端板302は、外半径R2が杭5の外半径r2と等しく、内半径R1が杭5の内半径r1よりも小さな円環状の鋼材で形成してあり、該端板は、杭5を製造する際に公知の手段によって杭頭6に固定してある。
【0247】
端板302には、アンカーボルト3が挿通されるボルト孔13を設けてあり、該ボルト孔にアンカーボルト3を挿通してナット14,14を螺合することでアンカーボルト3を端板302に立設できるようになっている。
【0248】
ここで、ボルト孔13は、杭5の断面中心からの距離、換言すればアンカーボルト3の取付け半径Rが杭5の内半径r1よりも小さくなるように位置決めしてある。そして、かかる構成により、アンカーボルト3の立設位置は、杭5の内周面よりも内側となる。
【0249】
本実施形態に係る杭頭接合構造304及びそれに用いる接合材301は、上述した構成により、地震時水平力が上部構造物8から杭頭6に作用したとき、杭頭6に設けてある端板302は、図19に示すように面外に曲げ変形するとともに、それに伴って杭頭6に回転変形が生じる。
【0250】
したがって、基礎部材9に対する杭頭6の接合度は緩和され、いわゆる半剛接合となる。加えて、杭頭6の回転角θに対する発生曲げモーメントM、換言すれば杭頭6における回転剛性は、端板302の面外曲げ剛性として評価することが可能となる。
【0251】
本実施形態に係る杭の設計方法においては、まずステップ101と同様、杭5の仕様と、アンカーボルト3の仕様と、端板302の仕様とを設定する。
【0252】
ここで、杭5の仕様は、杭径をその内容とし、アンカーボルト3の仕様は、取付け本数、径及び埋込み長を内容とし、端板302の仕様は、形状、厚み、鋼材種類、変形拘束位置、すなわち、アンカーボルト3の設置位置(ボルト孔13の位置)をその内容とする。
【0253】
また、建物荷重や地盤条件等を考慮して杭配置を適宜決定するとともに、設計対象となる杭6に作用する軸力N(最大軸力Nmax、最小軸力Nmin)を予め定めておく。地盤条件は例えばボーリング調査を行ってN値を調べればよい。杭設計用せん断力、杭設計用短期軸力及び杭設計用曲げモーメントについても、入力地震動に応じて予め算出しておく。
【0254】
杭5の仕様と、アンカーボルト3の仕様と、端板302の仕様とが設定されたならば、次に、ステップ102と同様、杭の頭部における許容曲げモーメントMaを評価する。許容曲げモーメントMaは、公知の手順によって適宜算出すればよい。
【0255】
次に、ステップ103と同様、許容曲げモーメントMaが杭頭に作用したときの杭頭回転角θを、次式、
【0256】
θ=(Δb+Δpe)/(Dp/2+rs−xno) (1−d)
【0257】
Δb;引張側のアンカーボルトの伸び量
【0258】
Δpe;端板の曲げ変形量
【0259】
Dp;杭の外径
【0260】
s;アンカーボルトの配置半径
【0261】
no;断面の圧縮縁から中立軸位置までの距離
【0262】
で算出する。
【0263】
ここで、Δbは上述したように、許容曲げモーメントMaが杭6の頭部に作用したときの曲げ引張側のアンカーボルト3の伸び量であり、基礎部材9へのアンカーボルト3の埋込み長や断面積、あるいは基礎部材9との付着の度合い(アンボンドか、ボンドか)等を適宜勘案し、公知の方法で算出ないしは評価すればよい。
【0264】
Δpeは、許容曲げモーメントMaが杭頭6に作用したときの端板302の曲げ変形による変形量であって、アンカーボルト3の材軸方向に沿ったアンカーボルト位置での変形量であり、端板302の形状、厚み等を適宜勘案し、公知の方法で算出ないしは評価すればよい。
【0265】
次にステップ104と同様、算出された杭頭回転角θを用いて回転剛性Kθを(2)式によって算出する。
【0266】
次にステップ105と同様、算出された回転剛性Kθを用いて発生曲げモーメントMθを算出する。
【0267】
次にステップ106と同様、発生曲げモーメントMθが、(4)式を満たすかどうかを判定する。
【0268】
次に、(4)式が成立しない場合、ステップ107と同様、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び端板302の仕様のうち、少なくともいずれかの仕様を再設定し、ステップ102以降のステップを繰り返す。
【0269】
一方、上記判定において(4)式が成立する場合、さらに、MaがMθよりも過剰に大きすぎないか、換言すればオーバースペックになっていないかどうかを判定し、オーバースペックになっていると判断できる場合、ステップ109と同様、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び端板302の仕様のうち、少なくともいずれかの仕様を再設定し、ステップ102以降のプロセスを繰り返す。
【0270】
一方、オーバースペックになっていないと判断できる場合、ステップ110と同様、低減された発生曲げモーメントMθ及び杭設計用せん断力Sを用いて杭5に発生する曲げモーメントMPを算出し、(5)式が杭5の全長にわたって成立するかどうかを判定する。
【0271】
次に、(5)式が成立しない場合、ステップ111と同様、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び端板302の仕様のうち、少なくともいずれかの仕様を再設定し、ステップ102以降のステップを繰り返す。
【0272】
一方、(5)式が成立する場合、さらに、杭5の許容曲げモーメントMpaが曲げモーメントMpよりも過剰に大きすぎないか、換言すればオーバースペックになっていないかどうかを判定し、オーバースペックになっていると判断できる場合、ステップ113と同様、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び端板302の仕様のうち、少なくともいずれかの仕様を再設定し、ステップ102以降のプロセスを繰り返す。
【0273】
一方、オーバースペックになっていないと判断できる場合、ステップ114と同様、最初に定めた杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び端板302の仕様を、それぞれ杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び端板302の仕様として決定する。
【0274】
以上説明したように本実施形態に係る杭の設計方法によれば、基礎部材9に対する杭頭6の固定度が従来よりも大幅に緩和され、いわゆる半剛接合が実現された杭の設計を適切に行うことが可能となる。
【0275】
すなわち、本実施形態によれば、アンカーボルト3の伸びだけではなく、端板302の曲げ変形によって、杭頭6の固定度を大幅に緩和するとともに、端板302の曲げ変形及びアンカーボルト3の伸びから杭頭6の回転変形を評価することにより、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び端板302の仕様を適切に定めることが可能となる。
【0276】
また、本実施形態に係る杭の設計方法によれば、(4)式や(5)式が成立する場合であっても、オーバースペックであると判断できる場合には、杭5の仕様、アンカーボルト3の仕様及び端板302の仕様を再設定し、ステップ102以降のプロセスを繰り返すようにしたので、より合理的かつ経済性に優れた設計を行うことが可能となる。
【0277】
本実施形態では、ナット14,14を用いたボルト接合でアンカーボルト3を端板302に立設するようにしたが、これに代えて、アンカーボルト3の下端を端板302の上面に溶接することでアンカーボルト3を端板302に立設するようにしてもかまわない。
【0278】
また、本実施形態では、アンカーボルト3の立設位置を、杭5の内周面よりも内側に設定したが、これに代えて杭5の外周面よりも外側に設定してもかまわない。すなわち、アンカーボルト3が挿通されるボルト孔13aを、杭5の断面中心からの距離、換言すればアンカーボルト3の取付け半径Rが杭5の外半径r2よりも大きくなるように位置決めする。
【0279】
図20は、このようにボルト孔13aが位置決めされた端板342がどのように面外曲げ変形を生じるかを示した図である。同図でわかるように、かかる変形例においても、杭頭6における回転剛性は、端板342の面外曲げ剛性として評価することが可能であり、上述の実施形態と同様、端板342及びアンカーボルト3に関する諸データだけで杭頭6の回転剛性を算出し、杭頭6における固定度低減の程度を容易に把握することができる。
【0280】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、端板302は一枚板である必要はなく、例えば図21及び図22に示すように、全体が円環状でそれぞれが扇状をなす4枚の分割片353で端板352を構成するとともに、各分割片353のそれぞれにアンカーボルト3を立設するようにしてもかまわない。
【0281】
かかる構成においても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏するほか、各分割片353が個別に面外曲げ変形を生じるため、全体の面外曲げ変形を把握しやすくなり、杭頭6における接合度の低減評価がさらに容易になる。
【0282】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、例えば図23に示すように、円環状に形成され内側縁部から半径方向外側に向かって延びるスリット373を90゜ごとに4カ所形成して端板372を構成し、該スリットで挟まれた4つの舌状体374にアンカーボルト3をそれぞれ立設するようにしてもかまわない。
【0283】
かかる構成においても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏するほか、各舌状体374が個別に面外曲げ変形を生じるため、全体の面外曲げ変形を把握しやすくなり、杭頭6における接合度の低減評価が容易になる。
【0284】
図24は、スリット373で挟まれた4つの舌状体374にアンカーボルト3をそれぞれ2本ずつ合計8本立設した変形例を示したものであり、かかる変形例においても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏するほか、各舌状体374が個別に面外曲げ変形を生じるため、全体の面外曲げ変形を把握しやすくなり、杭頭6における接合度の低減評価が容易になる。
【0285】
図25は、円環状に形成され外側縁部から半径方向内側に向かって延びるスリット393を60゜ごとに6カ所形成して端板392を構成し、該スリットで挟まれた6つの舌状体394に6本のアンカーボルト3をそれぞれ立設した変形例を示したものである。
【0286】
かかる変形例においても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏するほか、各舌状体394が個別に面外曲げ変形を生じるため、全体の面外曲げ変形を把握しやすくなり、杭頭6における接合度の低減評価が容易になる。
【0287】
また、本実施形態では、杭頭の回転変形を算出する際、引張側のアンカーボルトの伸び量及び端板の曲げ変形量だけを考慮したが、これに加えて、次式、
【0288】
θ=(Δb+Δpe+Δα)/(Dp/2+rs−xno) (1′−d)
【0289】
により、パイルキャップの圧縮変形量又は回転変形量を考慮するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0290】
【図1】本実施形態に係る杭の設計方法のフローチャート。
【図2】同じく本実施形態に係る杭の設計方法のフローチャート。
【図3】本実施形態で用いた接合材の分解斜視図。
【図4】本実施形態が適用された杭頭接合構造の図であり、(a)は平面図、(b)はA−A線に沿う鉛直断面図。
【図5】本実施形態が適用された杭頭接合構造4及びそれに用いる接合材1の作用を示した図。
【図6】杭頭回転角θを算出するための模式図。
【図7】変形例に係る杭頭接合構造の作用を示した図。
【図8】変形例に係る接合材の分解斜視図。
【図9】変形例に係る杭頭接合構造の図であり、(a)は平面図、(b)はB−B線に沿う鉛直断面図。
【図10】変形例に係る杭頭接合構造の図であり、(a)は平面図、(b)はC−C線に沿う鉛直断面図。
【図11】変形例に係る杭頭接合構造の図であり、(a)は平面図、(b)はD−D線に沿う鉛直断面図。
【図12】本実施形態に係る接合材201の分解斜視図。
【図13】本実施形態に係る杭頭接合構造204の図であり、(a)は平面図、(b)はE−E線に沿う鉛直断面図。
【図14】本実施形態に係る杭頭接合構造204及びそれに用いる接合材201の作用を示した図。
【図15】変形例に係る接合材の固定度低減部材242及びそれを用いた杭頭接合構造の図であり、(a)は平面図、(b)はF−F線に沿う鉛直断面図。
【図16】変形例に係る接合材252及びそれを用いた杭頭接合構造の図であり、(a)は平面図、(b)はG−G線に沿う鉛直断面図。
【図17】本実施形態に係る接合材の分解斜視図。
【図18】本実施形態に係る杭頭接合構造の図であり、(a)は平面図、(b)はH−H線に沿う鉛直断面図。
【図19】本実施形態に係る杭頭接合構造304及びそれに用いる接合材301の作用を示した図。
【図20】変形例に係る杭頭接合構造の作用を示した図。
【図21】変形例に係る接合材の分解斜視図。
【図22】変形例に係る杭頭接合構造の図であり、(a)は平面図、(b)はI−I線に沿う鉛直断面図。
【図23】変形例に係る杭頭接合構造の図であり、(a)は平面図、(b)はJ−J線に沿う鉛直断面図。
【図24】変形例に係る杭頭接合構造の図であり、(a)は平面図、(b)はK−K線に沿う鉛直断面図。
【図25】変形例に係る杭頭接合構造の図であり、(a)は平面図、(b)はL−L線に沿う鉛直断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の接合材を介して頭部が上部構造物に接合され該上部構造物を支持する杭を設計する方法であって、
前記接合材を、前記杭の頭部に設けられた端板に接合される固定度低減用平板と、該固定度低減用平板に立設され前記上部構造物に埋設されるアンカーボルトとから構成するとともに、水平力が前記上部構造物から前記杭の頭部に作用したとき、前記固定度低減用平板が面外に曲げ変形して前記杭の頭部が回転するように構成し、
前記接合材の仕様を設定し、
前記杭の頭部における許容曲げモーメントMaを評価し、
該許容曲げモーメントMaが前記杭の頭部に作用したときの杭頭回転角θを、次式、
θ=(Δb+Δp)/(Dp/2+rs−xno) (1−a)
Δb;引張側のアンカーボルトの伸び量
Δp;固定度低減用平板の曲げ変形量
Dp;杭の外径
s;アンカーボルトの配置半径
no;断面の圧縮縁から中立軸位置までの距離
で算出し、
算出された杭頭回転角θを用いて回転剛性Kθを、次式、
θ=Ma/θ (2)
によって算出し、
算出された回転剛性Kθを用いて発生曲げモーメントMθを算出し、
該低減された発生曲げモーメントMθを用いて前記接合材の仕様を決定することを特徴とする杭の設計方法。
【請求項2】
前記(1−a)式に代えて、
θ=(Δb+Δp+Δα)/(Dp/2+rs−xno) (1′−a)
Δα;パイルキャップ(上部構造物のうち、アンカーボルトが埋設され る杭頭近傍箇所)の圧縮変形量又は回転変形量
とする請求項1記載の杭の設計方法。
【請求項3】
所定の接合材を介して頭部が上部構造物に接合され該上部構造物を支持する杭を設計する方法であって、
前記接合材を、前記杭の頭部に設けられた端板に取り付けられる固定度低減部材と、該固定度低減部材に取り付けられ前記上部構造物に埋設されるアンカーボルトとから構成するとともに、前記端板への取付け箇所と前記アンカーボルトへの取付け箇所との間において前記固定度低減部材に段差部、立ち上がり部等の非平坦部を形成してなり、水平力が前記上部構造物から前記杭の頭部に作用したとき、前記固定度低減部材が曲げ変形して前記杭の頭部が回転するように構成し、
前記接合材の仕様を設定し、
前記杭の頭部における許容曲げモーメントMaを評価し、
該許容曲げモーメントMaが前記杭頭接合部に作用したときの杭頭回転角θを、次式、
θ=(Δb+Δpb)/(Dp/2+rs−xno) (1−b)
Δb;引張側のアンカーボルトの伸び量
Δpb;固定度低減部材の曲げ変形量
Dp;杭の外径
s;アンカーボルトの配置半径
no;断面の圧縮縁から中立軸位置までの距離
で算出し、
算出された杭頭回転角θを用いて回転剛性Kθを、次式、
θ=Ma/θ (2)
によって算出し、
算出された回転剛性Kθを用いて発生曲げモーメントMθを算出し、
該低減された発生曲げモーメントMθを用いて前記接合材の仕様を決定することを特徴とする杭の設計方法。
【請求項4】
前記(1−b)式に代えて、
θ=(Δb+Δpb+Δα)/(Dp/2+rs−xno) (1′−b)
Δα;パイルキャップ(上部構造物のうち、アンカーボルトが埋設され る杭頭近傍箇所)の圧縮変形量又は回転変形量
とする請求項3記載の杭の設計方法。
【請求項5】
所定の接合材を介して頭部が上部構造物に接合され該上部構造物を支持する杭を設計する方法であって、
前記接合材を、一方の側に延びる直線部が前記杭の頭部に設けられた端板に取り付けられ、L字状固定度低減部を介して他方の側に延びる直線部が前記上部構造物に埋設されるアンカーボルトとなるように構成するとともに、水平力が前記上部構造物から前記杭の頭部に作用したとき、前記L字状固定度低減部が曲げ変形して前記杭の頭部が回転するように構成し、
前記接合材の仕様を設定し、
前記杭の頭部における許容曲げモーメントMaを評価し、
該許容曲げモーメントMaが前記杭の頭部に作用したときの杭頭回転角θを、次式、
θ=(Δb+Δpl)/(Dp/2+rs−xno) (1−c)
Δb;引張側のアンカーボルトの伸び量
Δpl;L字状固定度低減部の曲げ変形量
Dp;杭の外径
s;アンカーボルトの配置半径
no;断面の圧縮縁から中立軸位置までの距離
で算出し、
算出された杭頭回転角θを用いて回転剛性Kθを、次式、
θ=Ma/θ (2)
によって算出し、
算出された回転剛性Kθを用いて発生曲げモーメントMθを算出し、
該低減された発生曲げモーメントMθを用いて前記接合材の仕様を決定することを特徴とする杭の設計方法。
【請求項6】
前記(1−c)式に代えて、
θ=(Δb+Δpl+Δα)/(Dp/2+rs−xno) (1′−c)
Δα;パイルキャップ(上部構造物のうち、アンカーボルトが埋設され る杭頭近傍箇所)の圧縮変形量又は回転変形量
とする請求項5記載の杭の設計方法。
【請求項7】
所定の接合材を介して頭部が上部構造物に接合され該上部構造物を支持する杭を設計する方法であって、
前記接合材を、前記杭の頭部に設けられた端板と、該端板に立設され前記杭で支持される上部構造物に埋設されるアンカーボルトとから構成するとともに、水平力が前記上部構造物から前記杭の頭部に作用したとき、前記端板が面外に曲げ変形して前記杭の頭部が回転するように構成し、
前記接合材の仕様を設定し、
前記杭の頭部における許容曲げモーメントMaを評価し、
該許容曲げモーメントMaが前記杭頭接合部に作用したときの杭頭回転角θを、次式、
θ=(Δb+Δpe)/(Dp/2+rs−xno) (1−d)
Δb;引張側のアンカーボルトの伸び量
Δpe;端板の曲げ変形量
Dp;杭の外径
s;アンカーボルトの配置半径
no;断面の圧縮縁から中立軸位置までの距離
で算出し、
算出された杭頭回転角θを用いて回転剛性Kθを、次式、
θ=Ma/θ (2)
によって算出し、
算出された回転剛性Kθを用いて発生曲げモーメントMθを算出し、
該低減された発生曲げモーメントMθを用いて前記接合材の仕様を決定することを特徴とする杭の設計方法。
【請求項8】
前記(1−d)式に代えて、
θ=(Δb+Δpe+Δα)/(Dp/2+rs−xno) (1′−d)
Δα;パイルキャップ(上部構造物のうち、アンカーボルトが埋設され る杭頭近傍箇所)の圧縮変形量又は回転変形量
とする請求項7記載の杭の設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−208517(P2008−208517A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43185(P2007−43185)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【Fターム(参考)】