説明

杭打機

【課題】リーダの長さに対して作業装置の昇降ストロークを十分に得ることができ、空頭高さが低い場所での作業を効率よく行える杭打機を提供する。
【解決手段】リーダ16を、ベースマシン15に装着する基本リーダ16aと、基本リーダ16aの上端部に取り付ける上部リーダ16bと、基本リーダ16aの下端部に取り付ける下部リーダ16cとで形成する。上部リーダ16bと下部リーダ16cに、基本リーダ16aのガイドパイプ19aに連結するガイドパイプ19b,19cをそれぞれ備える。作業装置18の昇降手段は、上部リーダ16bの内側に配置した上部従動側スプロケット24と、下部リーダ16cの内側に配置した下部従動側スプロケット25と、基本リーダ16aに配置した駆動側スプロケット22と、各スプロケット24,25,22に架け渡すと共に作業装置18に連結するチェーン26と、駆動側スプロケット22の回転駆動手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に関し、詳しくは、高さ制限のある施行現場での作業に適した杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋の下や建屋内、トンネル内、地下などの空頭高さに制限のある場所で低空頭杭打作業を行う杭打機として、運転室を上下に分割し、運転室の上部を取り外すことによってベースマシンの全高を低く抑えるようにしたものや、作業装置を横向きにして杭などを挿入できるようにしたりするものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
また、作業装置を昇降させる手段として、チェーンを用いたチェーン式の昇降手段が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−321480号公報
【特許文献2】特開2007−291807号公報
【特許文献3】特開2006−132118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の各特許文献のものでは、リーダの長さに対して作業装置の昇降ストロークが十分ではなく、低空頭杭打作業では杭などの継ぎ足し本数が多くなってしまうという問題があった。また、ガイドギブの長さを短くすることで作業装置の昇降ストロークを長くできるが、作業時に発生するモーメント荷重により、ガイドギブやガイドパイプに生じる応力が大きくなって早期摩耗などが発生する虞があった。
【0006】
そこで本発明は、リーダの長さに対して作業装置の昇降ストロークを十分に得ることができ、空頭高さが低い場所での作業を効率よく行うことができる杭打機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、ベースマシンの前部に立設されるリーダと、該リーダに設けたガイドパイプにガイドされるガイドギブを有する作業装置と、該作業装置をチェーンによって昇降させる昇降手段とを備えた杭打機において、前記リーダは、前記ベースマシンに装着される基本リーダと、前記基本リーダの上端部に取り付けられる上部リーダと、前記基本リーダの下端部に取り付けられる下部リーダとを有し、前記上部リーダ及び前記下部リーダには、前記基本リーダに設けられているガイドパイプに連結されるガイドパイプをそれぞれ備えると共に、前記昇降手段は、前記上部リーダの内側に配置された上部従動側スプロケットと、前記下部リーダの内側に配置された下部従動側スプロケットと、前記基本リーダに配置された駆動側スプロケットと、該駆動側スプロケットと前記上部従動側スプロケットと前記下部従動側スプロケットとに架け渡されると共に、前記作業装置に連結される前記チェーンと、前記駆動側スプロケットを回転駆動する回転駆動手段とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の杭打機によれば、基本リーダに上部リーダと下部リーダとをそれぞれ連結すると共に、上部リーダ及び下部リーダの内側に従動側スプロケットをそれぞれ配置し、上部リーダ及び下部リーダに基本リーダのガイドパイプに連結されるガイドパイプをそれぞれ設けたことにより、作業装置を、上部リーダの上端部から下部リーダの下端部に亘って設けられたガイドパイプに沿って昇降させることができ、作業装置の昇降ストロークを極力長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一形態例を示す杭打機の側面図である。
【図2】同じく平面図である。
【図3】同じく杭打機の要部側面図である。
【図4】同じく杭打機の要部正面図である。
【図5】図4のV-V断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本形態例に示す杭打機11は、クローラ12を備えた下部走行体13と、該下部走行体13の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体14とで構成されたベースマシン15と、前記上部旋回体14の前部に設けられたフロントブラケット14aに傾動可能に取り付けられたリーダ16と、該リーダ16をフロントブラケット14aの後部から支持する起伏シリンダ17と、前記リーダ16に昇降可能に設けられた作業装置18と、該作業装置18をリーダ16に沿って昇降させるためのチェーン式の昇降手段とを備えている。
【0011】
リーダ16は、上部旋回体14のフロントブラケット14aに装着される基本リーダ16aと、基本リーダ16aの上部に連結される上部リーダ16bと基本リーダ16aの下部に連結される下部リーダ16cとを備えている。リーダ16は、上部リーダ16bと基本リーダ16aと下部リーダ16cとを連結した状態で、上部リーダ16bの上端部の高さは、上部旋回体14の高さと同じか僅かに低く、また、下部リーダ16cの下端部の高さは、下部走行体13の下面よりも僅かに高くそれぞれ形成される。
【0012】
上部リーダ16bの左右両側には、基本リーダ16aの左右両側にそれぞれ設けられたガイドパイプ19aの上端に連結されるガイドパイプ19bが、下部リーダ16cの左右両側には、基本リーダ16aの前記ガイドパイプ19aの下端に連結されるガイドパイプ19cがそれぞれ設けられており、基本リーダ16aの上下に上部リーダ16bと下部リーダ16cとをそれぞれ装着した際に、各ガイドパイプ19a,19b、19cが連結されて一直線になるように形成されている。これにより、ガイドパイプ19a,19b、19cは、上部リーダ16bの上端部から下部リーダ16cの下端部に亘って連続して配置された状態になり、このガイドパイプ19a,19b、19cに前記作業装置18の後部両側に設けられた一対のガイドギブ20がガイドされることにより、作業装置18がリーダ16の前面に沿って昇降するように形成されている。
【0013】
前記昇降手段は、前記基本リーダ16aの中央後部側に配置された回転駆動手段である油圧モータ21と、該油圧モータ21の出力軸21aに結合した駆動側スプロケット22と、該駆動側スプロケット22の上下にそれぞれ配置される上下一対のガイドスプロケット23,23と、上部リーダ16bの内側に配置された上部従動側スプロケット24と、下部リーダ16cの内側に配置された下部従動側スプロケット25と、これらの各スプロケット22,23,23、24,25にそれぞれ掛け渡されると共に、両端が作業装置18の上部及び下部にそれぞれ連結されたチェーン26とを備えている。
【0014】
上部従動側スプロケット24は、上部リーダ16bの内側面に形成された取付フランジ部16dと基本リーダ16aの上面16eとの間に複数のボルト27にて挟着される上部ブラケット28aに取り付けられている。上部ブラケット28aの上面には、一対の軸受28b,28bが突設され、該軸受28b,28bにベアリングを介して上部従動側スプロケット24が回転可能に支持されている。
【0015】
下部従動側スプロケット25も上部従動側スプロケット24と同様に、下部リーダ16cの内側面に形成された取付フランジ部16fと基本リーダ16aの下面16gとの間に複数のボルト27にて挟着される下部ブラケット28cに取り付けられている。下部ブラケット28cの下面には、一対の軸受28d,28dが突設され、該軸受28d,28dにベアリングを介して下部従動側スプロケット25が回転可能に支持されている。
【0016】
また、基本リーダ16aの上面16e及び下面16gと上部ブラケット28aと下部ブラケット28cとには、前記チェーン26を挿通させる開口部29がそれぞれ形成されており、ガイドスプロケット23,23からのチェーン26は、前記開口部29を通って上部ブラケット28a及び下部ブラケット28cにそれぞれ掛け渡され、上部ブラケット28a及び下部ブラケット28cを経てリーダ16の前面に配置され、作業装置18の上部及び下部にそれぞれ連結される。
【0017】
ガイドスプロケット23,23は、駆動側スプロケット22と、上部従動側スプロケット24及び下部従動側スプロケット25との車体前後方向中間位置に配置され、チェーン26は、ガイドスプロケット23,23を介して前記駆動側スプロケット22に約半周分架け渡されている。
【0018】
作業装置18は、2基の駆動モータ30,30が搭載され、該駆動モータ30,30によって掘削ロッドなどを回転駆動するもので、作業装置18の後部両側に設けられた一対のガイドギブ20を前記ガイドパイプ19a,19b、19cに係合させた状態でガイドパイプ19a,19b、19cに沿って昇降可能に設けられる。
【0019】
上述のように形成された杭打機11は、基本リーダ16aの上端部に設けた上部従動側スプロケット24を覆うようにガイドパイプ19bを有する上部リーダ16bを設けると共に、基本リーダ16aの下端部に設けた下部従動側スプロケット25を覆うようにガイドパイプ19cを有する下部リーダ16cを設け、上部リーダ16b、基本リーダ16a、下部リーダ16cに連続した状態でガイドパイプ19b,19a、19cを形成しているので、前記作業装置18を、ガイドギブ20を介してリーダ16の略全長に亘って昇降させることができ、作業装置18の昇降ストロークを極力長くすることができる。これにより、空頭高さが低い場所、例えば空頭高さが2m以下の場所でも効率よく杭打ち作業を行うことができる。
【0020】
また、この杭打機は、基本リーダ16aに通常の延長リーダを連結することにより、通常の杭打ち作業を行うこともできるので、必要に応じて低空頭用杭打機として用いることができ、低空頭専用のものに比べて杭打機の稼働率を向上させて掘削作業コストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0021】
11…杭打機、12…クローラ、13…下部走行体、14…上部旋回体、14a…フロントブラケット、15…ベースマシン、16…リーダ、16a…基本リーダ、16b…上部リーダ、16c…下部リーダ、16d…取付フランジ部、16e…上面、16f…取付フランジ部、16g…下面、17…起伏シリンダ、18…作業装置、19a,19b、19c…ガイドパイプ、20…ガイドギブ、21…油圧モータ、21a…出力軸、22…駆動側スプロケット、23…ガイドスプロケット、24…上部従動側スプロケット、25…下部従動側スプロケット、26…チェーン、27…ボルト、28a…上部ブラケット、28c…下部ブラケット、28b,28d…軸受、29…開口部、30…駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンの前部に立設されるリーダと、該リーダに設けたガイドパイプにガイドされるガイドギブを有する作業装置と、該作業装置をチェーンによって昇降させる昇降手段とを備えた杭打機において、前記リーダは、前記ベースマシンに装着される基本リーダと、前記基本リーダの上端部に取り付けられる上部リーダと、前記基本リーダの下端部に取り付けられる下部リーダとを有し、前記上部リーダ及び前記下部リーダには、前記基本リーダに設けられているガイドパイプに連結されるガイドパイプをそれぞれ備えると共に、前記昇降手段は、前記上部リーダの内側に配置された上部従動側スプロケットと、前記下部リーダの内側に配置された下部従動側スプロケットと、前記基本リーダに配置された駆動側スプロケットと、該駆動側スプロケットと前記上部従動側スプロケットと前記下部従動側スプロケットとに架け渡されると共に、前記作業装置に連結される前記チェーンと、前記駆動側スプロケットを回転駆動する回転駆動手段とを備えていることを特徴とする杭打機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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