説明

果樹栽培用簡易ハウス及び果樹栽培用簡易ハウスの組立方法

【課題】
1枚のシート1の横幅方向中央部に雨除け機能を有させ、左右側方には通気性、遮光性又は/及び遮熱性を有させることで果樹群11への降雨量を調整し、側方はロープ14を側視トラス状にして枠とシート1を接続し強風にも強い低コストなハウスを提供可能とする。
【解決手段】1列の果樹群11の頂部を被覆可能な所定横幅を有する通気性及び雨除け機能を具備する天井シート部2と、通水性及び前記天井シート部よりは通気性の高い側面シート部3、4を連設し、天井シート部2と側面シート部3、4との境界部にはS状のフック10が吊設されている。ロープ14は、地表面上に設けられた枠とS状のフック10に引っ掛けて側視トラス状に張設され、ロープ14の外側は側面シート部3、4を垂下して覆い、側面シート部の前後端部は夫々対向端縁を打ち合わせて重合し、留め具15を用いて前後方を閉塞している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、柑橘類、桃、梨、林檎等の列状に栽培された果樹に好適な果樹栽培用簡易ハウス及び果樹栽培用簡易ハウスの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温州みかん、伊予柑、不知火、清見タンゴール、タロッコ等の柑橘栽培において成長促進、糖度調整、防虫、鳥獣害防止、褪色防止等のためにハウス栽培が行われている。この種のハウスは特許文献1、特許文献2及び特許文献3に示すような柱や梁及び屋根を有する一定形状のものを使用することが一般的である。特許文献1や特許文献2に記載されているハウスは、屋根を支持するために多数に柱を有し、又、重い屋根を支持するためにトラス粱を使用しているため材料費が高額になり、組立及び解体作業に手間を要し、高コスト化により果樹生産業者の経営を圧迫しているという問題点があった。特許文献3に記載のハウスは、屋根部分にビニールフィルムを張設し、一方向に換気口を開設しているため、特許文献1や特許文献2に記載のハウスと比較して柱の本数が少なくて済み、組立及び解体作業も軽減されるが、相変わらず柱と補強用パイプ(梁に相当)を必要とし材料費が高額となり、又、組立及び解体作業に手間を要するという欠点を有していた。
そこで、本願発明者は1枚のシートを幅方向中央部は通気性及び雨除け機能を有する透明な網状シートとし、両側部は中央部の網状シートよりは通気性があり且つ遮光性を有する網状シートとし、幅方向中央部と両側部を機能別に区分けした果樹覆いシートを考案し、実願2008−6861号として実用新案登録出願をし、登録第3147033号として実用新案登録された(特許文献4参照)。
特許文献4に記載の果樹覆いシートは、公報第5ページの[0030]の段の全文、第7頁の図7及び図8に示すように、1本の果樹の頭頂部中央に1枚のシートの中心部が略位置するように被せ、シートの周縁を垂下して下方を窄め、幹の部分にロープで縛り付けて果樹全体を袋状に覆っていた。特許文献4に記載の果樹覆いシートは、必要部材がシートとロープのみであるため軽量で、柱や梁を使用しないため取付及び取り外し作業が簡便で、しかも部品点数が極めて少量であるため低コスト化が実現できるという長所がある反面、果樹1本ごとに被覆作業をしなければならず作業性が悪いという問題点があった。
【特許文献1】特開2009−144368号公報
【特許文献2】特開2003−9674号公報
【特許文献3】実開平6−86441号公報
【特許文献4】実用新案登録第3147033号の登録実用新案公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みて創案されたものであって、果樹、特に柑橘類は列状に植えられ栽培されていることに着目し、1枚の一方向に長いシートの横幅方向中央部に天井シート部を、天井シート部の左右両側にS状フックを設けた側面シート部を連設し、アンカー杭間に張設したワイヤーロープとS状フックとの間にロープをジグザグに架け渡して側面を形成し、列状の果樹群を一枚の軽量なシート内側に収容可能で果樹群に負荷をかけず、又、天井シート部から雨水が直接果樹群根元付近に落下せず必要な部分にのみ雨水が適量供給され、蛾等の飛翔害虫や鳥獣がハウス内に入ることがなく、通気性も確保し、シートに着色等をすることで遮光等の調光や調熱も可能な果樹栽培用簡易ハウス及び果樹栽培用簡易ハウスの組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、シートと、アンカー杭と、ワイヤーロープ、フック及びロープとよりなる果樹栽培用簡易ハウスであって、シートは列状に栽培された果樹群をひとまとめにして内側に配設して覆うと共に、シートの左右両端縁部が地表面を覆って1列の果樹群全体を被覆可能な大きさを有し、シートの横幅方向中央部には長さ方向全長に亘り、1列の果樹群の頂部を被覆可能な所定横幅を有する通気性及び雨除け機能を具備する天井シート部を設け、該天井シート部の左右両側方には通水性及び天井シート部よりは通気性の高い側面シート部を天井シート部と連設し、地面に於いて前記1列の果樹群を囲む位置に沿って、アンカー杭を所定間隔離隔すると共にアンカー杭の頭部を地表面から突出させて設け、アンカー杭の頭部間にはワイヤーロープが張設され、1列の果樹群を囲む位置に対応する地表面上にワイヤーロープで枠が設けられ、天井シート部と側面シート部との境界部にはS状のフックが取り付けられ、ロープは1列の果樹群の長さ方向に沿ってワイヤーロープ、アンカー杭、S状のフックにジグザグに架け渡して側視トラス状に取り付けられ、この側視トラス状に張設されたロープの外側には、左右の側面シート部を夫々垂下し、列状果樹群の左右側方を夫々ロープを介在して覆い、側面シート部の左右側端縁は地表面に重合当接し、側面シート部の前端部と後端部で1列の果樹群の前方と後方を夫々被覆して塞ぐように、側面シート部の前端部と後端部は、1列の果樹群の前方と後方に於いて夫々対向端縁を重合していることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、上記天井シート部が、合成樹脂製の扁平なテープ状ヤーンを経糸と緯糸に使用して交錯し、熱溶着したものであることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、上記側面シート部がネットよりなることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、上記側面シート部が遮光性又は/及び遮熱性を有することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、上記側面シート部のうち天井シート部との境界部近傍には長さ方向に沿ってS状フック取付用ロープを取着し、該S状フック取付用ロープにS状フックを取り付けていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、列状に栽培された果樹群をひとまとめにして内側に配設して覆い、且つシートの左右両端縁部が地表面に重合して地表面を覆い地表面との間に隙間を形成すること無く、1列の果樹群全体を被覆する果樹栽培用簡易ハウスの組立方法であって、1列の果樹群の頂部を被覆可能な所定横幅を有する通気性及び雨除け機能を具備する天井シート部の左右両側方に連設した通水性及び前記天井シート部よりは通気性の高い側面シート部を、前記天井シート部と前記側面シート部の境界を折目として上方に折り返し、前記天井シート部の上面に重合して3重に折り畳む工程と、該3重に折り畳まれたシートを1列の果樹群上に載置する工程と、アンカー杭を、1列の果樹群を囲む位置に於いて所定間隔離隔し、且つアンカー杭の頭部を地表面から突出させて地面に打設する工程と、アンカー杭の頭部間にワイヤーロープを張設して地表面上に果樹群を囲む枠を形成する工程と、1列の果樹群上に載置した3重に折り畳まれたシートのうち、天井シート部と前記側面シート部の境界である折目に、長さ方向に沿ってS状フックを吊設する工程と、ロープ端部を1列の果樹群の最前部に位置するアンカー杭に固定後、ロープを上方へ引き上げてS状フックに掛止し、次に下方に引き下げてワイヤーロープに引っ掛け、次に上方へ引き上げてS状フックに掛止する作業を順次反覆し、1列の果樹群の最後部に位置するアンカー杭にロープを固定的に取付け、果樹群の左右側方に於いてロープを側視トラス状に張設する工程と、前記側視トラス状に張設されたロープ上に側面シート部を垂下して被覆し、シートを展開する工程と、前記側面シート部の左右側端縁を前記ワイヤーロープに取り付ける工程と、1列の果樹群の前方及び後方に於いて、側面シート部の前端部と後端部の夫々対向端縁を内側方に折り返して重合し、側面シート部の前端部の重合と後端部の重合で1列の果樹群の前方と後方を被覆閉塞する工程とよりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本願発明は、鉄骨を使用することなく1枚のシートとロープ等の僅かな部品を用い、極めて簡便な作業で側面を有する果樹栽培用簡易ハウスを組立可能であるため、低コスト化及びハウスの軽量化が可能であるという効果がある。又、1枚のシートで列状果樹群の周囲の地表面から列状果樹群全体をひとまとめにして被覆するので、ハウスの組立及び取り外し作業が極めて簡便であり、作業性が向上するという効果がある。
本願発明は、天井シート部には雨除け機能を有する材料を、側面シート部には通水性及び通気性を有する材料を使用しているので、果樹に供給される雨水は側面シート部から入り込んだ雨水となり、果樹根元土壌への供給水量が少なく、栽培された果実が高糖度となり市場における商品価値が高いという効果がある。
本願発明は、果樹群の左右側方に於いて天井シート部の左右両側縁から地表面に設けた枠との間にロープをジグザグに取り付け、果樹群を上方から天井シート部で押さえ付けているが、シートが軽量なため果樹への負荷が少なく、又、強風による風圧や雪圧等の圧力をロープのジグザグ構造がロープの移動等により吸収し、果樹は倒木せず、且つロープのワイヤーロープとS状フック間への張設によりシートは軽量であっても風に吹き飛ばされること無く安定的に果樹群を内側に収容保持すると共に被覆保護するという効果がある。
本願発明は列状果樹群を1つの被覆体とし、列状果樹群を囲む位置の地表面から頭頂部までの全体に亘り1枚のシートで覆うので、鳥獣や蛾等がシート内に侵入することがなく健康で美観を呈する市場において高品質の果実を成育可能であるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
シートの横幅方向中央部に通気性及び雨除け機能を有する天井シート部を、天井シート部の左右両側には通水性及び天井シート部よりは高通気性を有する側面シート部を連続して設けることで、側面シート部を通過した雨水を果樹に供給する水分にし、通気性を損なうことなく水分供給量の調整を実現した。シートを折り返して3重にし、折目にS状フックを取り付けることで、ロープを側視トラス状に取り付ける作業性が向上し、また、側視トラス状に張設されたロープの外方に側面シート部を側端縁部を地面に重合させて被せることでハウスの軽量化及び鳥獣や飛翔害虫等のシート内側への侵入の防止を実現した。
【実施例1】
【0007】
図に基づいて果樹栽培用簡易ハウスの実施例について説明する。先ず、図1において、シート1は、天井シート部2の左右両側縁に左右の側面シート部3、4が連設されてなり、展開すると前後方向に著しく長い1枚の平視矩形状に形成されている。シート1の横幅方向の中央には、使用する果樹の平面から視た枝葉を含む直径と略同一長さの横幅を有し、且つシート1の前端縁と後端縁に亘り天井シート部2が延設されている。天井シート部2の右側方には側面シート部3が天井シート部2の左側方には側面シート部4が、天井シート部2の左右側縁と夫々連設されて1枚のシート1を形成している。
天井シート部2は通気性及び雨除け機能を具備する。図2に示すように、天井シート部2は、例えば耐水性、耐薬品性、高耐久性を有する透明なポリエチレン等の合成樹脂製の扁平なテープ状ヤーンを経糸5と緯糸6に使用し、経糸5と緯糸6を交錯させて平織りを織成し、経糸5と緯糸6の交差部を熱溶着したものを使用することが、通気性及び雨除け機能を発揮する観点より好適である。具体的には、横幅が3〜15mm程度のテープ状ヤーンを使用して隣り合う糸間隔を例えば0.5〜5.0mm程度にした平織りに織成されたものの交差部を熱溶着することが考えられる。合成樹脂製の扁平なテープ状ヤーンよりなる経糸5と緯糸6の交差部は熱溶着しないものであってもよい。交差部を熱溶着しないものについては、横幅が1〜10mm程度の糸を使用し、糸間隔を0.1〜3.0mm程度の高密度の平織りに織成したもの使用するとよい。天井シート部2は、熱溶着して全体としてフィルム化したものの方が果樹群11にシート1を被覆作業中に天井シート部2の織目が部分的に拡開したりすることが無く、形状保持能力が高いため取り扱い易く果樹への被覆作業性が良好で、且つ通気性及び雨除け機能の双方を必要とする天井シート部2には好適である。又、天井シート部2には暖まった空気を排気するために直径数センチ程度の通気孔を穿設するか、或は経糸5間と緯糸6間の間隔を大きくして織密度を粗くし、糸間の隙間を通気孔として作用させることもできる。尚、天井シート部2は合成樹脂製の扁平なテープ状ヤーンを平織りしたシートに限定するものではなく、通気性及び雨除け機能を有するものであればよい。又、天井シート部2は、使用する果樹に応じて着色をしたものであってもよい。
側面シート部3、4は通水性及び前記天井シート部2よりは通気性の高いこと必要とする。側面シート部3、4は用途に応じた形状のネットよりなる。ネットは主としてポリエチレン等の耐薬品性及び高耐久性を有する材料を用いてなる。ネットの形状、材料及び網目の目合は用途により適宜異なる。例えばネットの目合は、アザミウマ等の害虫の侵入防止を目的とする場合は0.4mmであり、鳥の侵入防止目的の場合は4.0mmであり、猪の侵入防止目的の場合はより大きくなり、このように目合は目的により適宜設定される。又、防風を主目的とするネットに着色をすることで遮光率を高める。例えば、ポリエチレン糸を交錯して略矩形状の網目を有するネットにおいて、目合が1mmの場合、青色ポリエチレン糸を使用すると防風及び害虫侵入防止作用に加えて遮光率か55%になり、黒色ポリエチレン糸を使用すると遮光率が73%になる。目合が2mmのネットの場合、青色ポリエチレン糸を使用すると遮光率が33%になり、目合が3mmの青色ネットの場合は遮光率が25%になり、目合が6mmの青色ネットの場合は遮光率が15%になる。
又、側面シート部3、4に用いる遮光性又は/及び遮熱性を有するネットとしては、図3に示すように、経方向に連続する鎖編みの編目列7に遮光性を有するヤーンを挿入糸8として架け渡して経編した網状編み地を用いる。遮光性を高めるためには、向かい合う編目列7間に架け渡す隣り合う挿入糸8間の高密度化し、且つ、挿入糸8として使用するヤーンを黒色等の濃色に着色したものを使用する。遮光性及び遮熱性を有するネットは、前記網状編み地に使用するヤーンの色を灰色、白色或はアルミ蒸着加工等により表面を銀色にしたり、或は編目列7間の挿入糸の間に隙間を設けて通気性を高めるように形成したものを使用する。
天井シート部2の左側縁には側面シート部3を、右側縁には側面シート部4を夫々連続して一体的に取り付けている。取付手段は縫着或は熱融着の何れの手段を用いてもよい。
【0008】
図4に示すように、側面シート部3、4のうち天井シート部2との境界部には、長さ方向に沿ってS状フック取付用ロープ9が取り付けられている。S状フック取付用ロープ9には長さ方向に沿って所定間隔を有してS状フック10が着脱可能に吊設されている。S状フック10は、1本のワイヤの両端から同一距離の位置で、互いに相反する方向に彎曲され、これら両端彎曲部がフックとしての作用を有するように形成されている。
【0009】
列状に植立された果樹群11の頭頂部を天井シート部2で覆い、果樹群11の左側方は後述するロープ14を介して側面シート部3で覆われ、右側方は後述するロープ14を介して側面シート部4で覆われている。側面シート部3と側面シート部4の左右側端縁は、後述するワイヤーロープ13の外側に於いて、地表面に重合載置されている。側面シート部3と側面シート部4の地表面との接地量は、側面シート部3と側面シート部4が垂下し地表面と当接した位置から30cm程度以上であることが好適である。接地長さが30cm程度以上であれば、害鳥や害獣或は蛾等の害虫は側面シート部3、4と地表面との間からハウス内に侵入不可能なためである。
【0010】
アンカー杭12は、列状果樹群11の左右側方に於ける地表面に列方向に沿って所定間隔離隔し、且つアンカー杭12の頭部を地表面から5cm程度浮かせて地中に打ち込まれている。ワイヤーロープ13のアンカー杭12の頭部への係脱作業を簡便に行うためである。アンカー杭12の頭部には、ワイヤーロープ13が順次巻着されて連結張設され、列状果樹群11の周囲を囲むように地表面上にワイヤーロープ13で枠を形成している。
【0011】
ロープ14の両端は、列状果樹群11の最前部に位置するアンカー杭12と最後部に位置するアンカー杭12に夫々巻着され、ロープ14の中途部分はS状フック10とワイヤーロープ13との間に掛けられて、側視がジグザグのトラス状を呈するようにしている。
【0012】
果樹群11の前後方に於いては、右側面シート部4と左側面シート部3の対向端部を夫々打ち合わせて重合し、該重合部を留め具15で夫々留めることで果樹群11の前後方を覆い、ハウスの前後を閉塞している。果樹群11の左右側方は、右側面シート部4と左側面シート部3の左右側縁部をワイヤーロープ13に留め具15で留め、右側面シート部4と左側面シート部3が鳥獣や風の影響を受けても上方へ浮き上らないようにしている。
【0013】
上記構成の果樹栽培用簡易ハウスは、果樹上方を雨除け機能を有する天井シート部2で覆い、果樹側方を通気性の良好な側面シート部3、4で覆っているため、雨は天井シート郎2から側面シート部3、4へ流れ、側面シート部3、4よりハウス内に落下し、適量の水分が地面に供給される。天井シート部2から果樹群11へ直接降雨しないため、果樹根元近傍の地中の水分供給量は少なく、果実が高糖度となり美味で果実が大玉にならず美観を呈し、且つ、果実が激しい降雨や雹等により落下したり表皮に傷を形成する事態が生じないという効果がある。具体的には、天井シート部2が無い場合の果樹根元近傍の降雨量を100%とすると、実施例1の果樹栽培用簡易ハウスを使用すると、果樹根元近傍の降雨量は30%であった。特に、不知火等の晩柑類は2月以降が収穫期であるので、本願果樹栽培用簡易ハウスを使用すると、高糖度で無傷の優良な果実を収穫可能である。本願果樹栽培用簡易ハウスは、屋根を支持する鉄骨の柱、梁が不要なため低コスト化でき、メンテナンス作業も簡単であるという効果がある。又、シート1は側方に側視トラス状のジグザグに張設したロープ14で果樹群11を支持する構成であるため、天井シート部2で果樹群11の頭頂部を上方から押さえ、ロープ14がフックと枠の掛止部間を移動することにより側面に伸縮性を有させている。シート1が軽量であるため果樹を損傷することなく、又、強風によっても果樹が傾木や倒木しない。側視トラス状に取り付けられたロープと留め具により、超強風によっても軽量なシートが吹き飛ばされないという効果がある。又、シート1を長さ方向に別のシート1を連結していくことで、より長い列の果樹群にも使用できる。通常は1つの果樹農園内で数種類の収穫時期の異なる果樹を栽培しているが、収穫期が徒過した果樹群からシート1を取り除き、ワイヤーロープからなる枠のみをそのまま地面に放置し、収穫期に入っていない他の果樹群の周囲に新たに枠を形成し収穫期が徒過した果樹群から取り除いたシート1を再使用することができる。つまり、ワイヤーロープ13よりなる枠のみを設けていれば、シート1を何度も使用することができる。
【0014】
果樹栽培用簡易ハウスの組立方法について説明する。先ずは、天井シート部2を最下層にし、天井シート部2と側面シート部3、4との境界を折目として側面シート部3、4を天井シート部2の上面に交互に折り返して畳み、1枚のシート1を下方から天井シート部2、側面シート部3、4が3層に重合する前後方向に長い3重折り形状にする。3重に折られたシート1を、さらに後方から折り畳み、前端部が最も上部に位置する多重層に折り畳む。図5に示すように、列状の果樹群11の上面に於いて、多重層に折り畳まれたシート1のうち最も上部に位置する前端部から前方に引き延ばして展開し、3重折り状態のシートのうち天井シート部2が列状の果樹群11の上面全体を覆うように載置する。側面シート部3、4のうち天井シート部2の左右側縁と隣り合う編目列7との間にS状フック取付用ロープ9を長さ方向に取着する。取付方法の一例として、挿入糸8間にS状フック取付用ロープ9を差し込んでいくことが考えられる。S状フック取付用ロープ9にはS状フック10の一方の彎曲部が引っ掛けられ、長さ方向に沿って所定間隔を有して多数のS状フック10が吊設されている。
次に、列状の果樹群11の周囲にアンカー杭12を所定間隔離隔し、且つアンカー杭12の頭部が地表面から5cm程度上方に位置するようにアンカー杭12を地中に打ち込む。アンカー杭12の頭部にワイヤーロープ13を巻着し易くするためである。又、アンカー杭12は、列状の果樹群11の左右側方に於いては、一直線上に位置するように打ち込む。多数のアンカー杭12の夫々の頭部にはワイヤーロープ13が巻着され、隣合うアンカー杭12間にワイヤーロープ13は張設されて地表面より僅か上方にワイヤーロープ13より成る枠を形成する。枠は、列状の果樹群11の根元から側方へ所定距離離隔した位置にて列状の果樹群11を一まとめにして列状の果樹群11の周囲を囲む。
【0015】
図7に示すように、ロープ14を列状果樹群11の最前端或は最後端の何れか一端に打ち込まれているアンカー杭12の頭部に巻着し、ロープ14を上方に引き上げてS状フック10の他方の彎曲部に引っ掛け、ロープ14を下降させてワイヤーロープ13に引っ掛けた後、ロープ14を引き上げてS状フック10に引っ掛ける作業を順次行い、列状果樹群11の最前端或は最後端の何れか他端に打ち込まれているアンカー杭12の頭部にロープ14を巻着する。果樹群11の左右両側方には、夫々ロープ14がジグザグの側視トラス状に張設されている。
【0016】
図8に示すように、側面シート部3、4を垂下し、シート1を展開する。側面シート3、4は、ロープ14を介在して果樹群11の側方を覆い、側面シート3、4の左右側端縁部は地表面に当接する。側面シート3、4の左右側端縁部のうち地表面と当接する長さは、接地部から側面シート3、4の左右側端縁までの垂直距離が30cm以上であることが好適である。接地位置から左右側端縁までの長さが30cmあれば、鳥獣や虫等が内部に侵入不可能であるという理由による。側面シート3、4の左右側端縁部は、留め具15でワイヤーロープ13に挟み付けられ、果樹群11の左右側方を側面シート3、4で塞ぐ。図1に示すように、果樹群11の前方は側面シート部3、4の前端部を互いに打ち合わせ、該打ち合わせ部を留め具15で挟み付けて果樹群11の前方を塞ぎ、果樹群11の後方は側面シート部3、4の後端部を互いに打ち合わせ、該打ち合わせ部を留め具15で挟み付けて果樹群11の後方を塞ぐことで果樹栽培用簡易ハウスを組み立てる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】果樹栽培用簡易ハウスの組立状態を示す斜視図である。(実施例1)
【図2】天井シート部の一例を示す拡大平面図である。(実施例1)
【図3】側面シート部の一例を示す拡大平面図である。(実施例1)
【図4】側面シート部に取り付けたS状フック取付用ロープにS状フックを吊設し、S状フックにロープを引っ掛けた状態を示す説明図である。(実施例1)
【図5】3重に折り畳まれたシートを展延しながら列状の果樹群上に載置する状態を示す説明図である。(実施例1)
【図6】3重に折り畳まれたシートにS状フックを取り付け、シートを列状果樹群上に載置し、果樹群の周囲の地表面にワイヤーロープで枠を形成した状態を示す説明図である。(実施例1)
【図7】ロープをアンカー杭、S状フック及びワイヤーロープにジグザグに取り付けた状態を示す説明図である。(実施例1)
【図8】シートを展開し、列状の果樹群の左右側方に夫々左右側面シート部を垂下した状態を示す説明図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0018】
1 シート
2 天井シート
3、4 側面シート部
5 経糸
6 緯糸
9 S状フック取付用ロープ
10 S状フック
11 果樹群
12 アンカー杭
13 ワイヤーロープ
14 ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートと、アンカー杭と、ワイヤーロープ、フック及びロープとよりなる果樹栽培用簡易ハウスであって、
前記シートは列状に栽培された果樹群をひとまとめにして内側に配設して覆うと共に、シートの左右両端縁部が地表面を覆って1列の果樹群全体を被覆可能な大きさを有し、
前記シートの横幅方向中央部には長さ方向全長に亘り、1列の果樹群の頂部を被覆可能な所定横幅を有する通気性及び雨除け機能を具備する天井シート部を設け、該天井シート部の左右両側方には通水性及び前記天井シート部よりは通気性の高い側面シート部を前記天井シート部と連続して設け、
地面に於いて前記1列の果樹群を囲む位置に沿って、アンカー杭を所定間隔離隔すると共にアンカー杭の頭部を地表面から突出させて設け、
前記アンカー杭の頭部間にはワイヤーロープが張設され、前記1列の果樹群を囲む位置に対応する地表面上にワイヤーロープで枠が設けられ、
前記天井シート部と前記側面シート部との境界部にはS状のフックが取り付けられ、
前記ロープは、1列の果樹群の長さ方向に沿って前記ワイヤーロープ、前記アンカー杭、前記S状のフックにジグザグに架け渡して側視トラス状に取り付けられ、
前記左右側方の側視トラス状に張設されたロープの外側には、前記左右の側面シート部を垂下し、列状果樹群の左右側方を夫々前記ロープを介在して覆い、前記側面シート部の左右側端縁は地表面に重合当接し、
側面シート部の前端部と後端部で1列の果樹群の前方と後方を夫々被覆して塞ぐように、1列の果樹群の前方と後方に於いて前記側面シート部の前端部と後端部は夫々対向端縁が重合されていることを特徴とする果樹栽培用簡易ハウス。
【請求項2】
上記天井シート部が、合成樹脂製の扁平なテープ状ヤーンを経糸と緯糸に使用して交錯し、熱溶着したものであることを特徴とする請求項1に記載の果樹栽培用簡易ハウス。
【請求項3】
上記側面シート部が、ネットよりなることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の果樹栽培用簡易ハウス。
【請求項4】
上記側面シート部が、遮光性又は/及び遮熱性を有することを特徴とする請求項1、2又は3の何れかに記載の果樹栽培用簡易ハウス。
【請求項5】
上記側面シート部のうち天井シート部との境界部近傍には長さ方向に沿ってS状フック取付用ロープを取着し、該S状フック取付用ロープにS状フックを取り付けていることを特徴とする請求項1、2、3又は4の何れかに記載の果樹栽培用簡易ハウス。
【請求項6】
列状に栽培された果樹群をひとまとめにして内側に配設して覆い、且つシートの左右両端縁部が地表面に重合して地表面を覆い地表面との間に隙間を形成すること無く、1列の果樹群全体を被覆する果樹栽培用簡易ハウスの組立方法であって、
1列の果樹群の頂部を被覆可能な所定横幅を有する通気性及び雨除け機能を具備する天井シート部の左右両側方に連設した通水性及び前記天井シート部よりは通気性の高い側面シート部を、前記天井シート部と前記側面シート部の境界を折目として上方に折り返し、前記天井シート部の上面に重合して3重に折り畳む工程と、
該3重に折り畳まれたシートを1列の果樹群上に載置する工程と、
アンカー杭を、1列の果樹群を囲む位置に於いて所定間隔離隔し、且つアンカー杭の頭部を地表面から突出させて地面に打設する工程と、
アンカー杭の頭部間にワイヤーロープを張設して地表面上に果樹群を囲む枠を形成する工程と、
1列の果樹群上に載置した3重に折り畳まれたシートのうち、天井シート部と前記側面シート部の境界である折目に、長さ方向に沿ってS状フックを吊設する工程と、
ロープ端部を1列の果樹群の最前部に位置するアンカー杭に固定後、ロープを上方へ引き上げてS状フックに掛止し、次に下方に引き下げてワイヤーロープに引っ掛け、次に上方へ引き上げてS状フックに掛止する作業を順次反覆し、1列の果樹群の最後部に位置するアンカー杭にロープを固定的に取付け、果樹群の左右側方に於いてロープを側視トラス状に張設する工程と、
前記側視トラス状に張設されたロープ上に側面シート部を垂下して被覆し、シートを展開する工程と、
前記側面シート部の左右側端縁を前記ワイヤーロープに取り付ける工程と、
1列の果樹群の前方及び後方に於いて、側面シート部の前端部と後端部の夫々対向端縁を内側方に折り返して重合し、側面シート部の前端部の重合と後端部の重合で1列の果樹群の前方と後方を被覆閉塞する工程とよりなる果樹栽培用簡易ハウスの組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−110037(P2011−110037A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282174(P2009−282174)
【出願日】平成21年11月21日(2009.11.21)
【出願人】(593231689)株式会社一色本店 (4)
【Fターム(参考)】