説明

枝豆収穫機

【課題】圃場に栽培された枝豆から枝豆莢をもぎ取る前に大部分の枝葉を除去して、枝豆莢の収穫率の向上、また、もぎ取り後の選別作業の労力軽減と省力化を図れる枝豆収穫機を提供する。
【解決手段】走行装置20により走行しながら、圃場Gに栽培されている枝豆1を収穫する収穫機において、走行装置20の進行方向前方に枝豆1の上部枝葉部3を切断除去する夾雑物除去装置30を備える。また、枝豆1の上部枝葉部3を切断除去する夾雑物除去装置30と、枝豆1より枝豆莢2をもぎ取るもぎ取り装置50と、もぎ取られた枝豆莢2を搬送する搬送コンベア70と、枝豆莢2と枝葉3”を選別する風選ファン80と、選別された枝豆莢2を収容する収容コンテナ90とを備え、夾雑物除去装置30をもぎ取り装置50の前方に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枝豆収穫機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、収穫期における枝豆の収穫方法としては、大よそ以下の3通りがある。
(1)圃場内に植え付けられた状態の枝豆から収穫機で枝豆莢だけをもぎ取る。
(2)圃場内の枝豆を人力または収穫機で根ごと引き抜いて作業場や工場へ移送し、定置式脱莢機に掛ける。
(3)収穫機で枝豆の根から切り取りコンベア搬送し、機械後方の脱莢機でもぎ取る。
【0003】
収穫期の枝豆は高さが60〜70cmあり、地面より約40cmまでが莢の生える位置で、それ以上は5cm〜15cm位の大きさの複葉の枝葉で全体が大きく覆われている。このため、例えば上記(1)の方法では、収穫機で枝豆莢をもぎ取る時、枝豆莢と一緒に葉や枝が大量に混入するため、大量に混入した枝葉と枝豆莢とを後工程で選別ファンや人力を利用して選別していた。選別ファンによる選別では風力の調整が大変難しく、大量の枝葉を選別するべく風を強くすると枝豆莢も一緒に廃棄されて歩留まりが悪化し、風を弱くすると今度は多くの枝葉が枝豆莢と一緒に収容されてしまうという問題があった。後者の場合、工場等に移送後、人の手で選別し直す二度手間が発生した。一方、人力の利用による選別は、選別に時間が費やされ、収穫後の枝豆の鮮度が落ちるという問題があった。そして、枝豆の収穫作業は、鮮度維持のため夜明け前早朝からの作業であり、選別作業の効率の悪さは、農家が枝豆の栽培面積を拡大する上での大きな障害となっていた。
【0004】
枝豆収穫機に関しては、特開平5-103526号、特開2000−236725号、特開2000−201519号の各公報に開示のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-103526号公報
【特許文献2】特開2000−236725号公報
【特許文献3】特開2000−201519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、いずれの公報に開示された枝豆収穫機においても、もぎ取り時に枝豆莢と一緒に葉や枝が大量に混入するという問題が避けられず、収穫率の低さや、選別作業の大変さといった諸問題が解決されないままであった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、圃場に栽培された枝豆から枝豆莢をもぎ取る前に大部分の枝葉を除去して、枝豆莢の収穫率の向上、また、もぎ取り後の選別作業の労力軽減と省力化を図れる枝豆収穫機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る枝豆収穫機は、走行装置により走行しながら、圃場に栽培されている枝豆を収穫する収穫機において、走行装置の進行方向前方に枝豆の上部枝葉部を切断除去する夾雑物除去装置を備えることを最も主要な特徴とする。
【0009】
圃場に栽培されている枝豆をもぎ取る前に、前方の夾雑物除去装置により、枝豆の上部に大きく茂った枝葉部を切断除去するので、枝豆莢のもぎ取り時に枝葉部が邪魔にならず、枝豆莢を効率よくもぎ取ることができ、枝豆莢の収穫率が向上する。また、枝豆莢のもぎ取り時に大部分の枝葉部が予め除去されているので、もぎ取り後の選別作業の労力が軽減され、省力化が図られる。
【0010】
本発明に係る枝豆収穫機は、夾雑物除去装置が、往復動により枝葉を切断するバリカン刃と、切断された枝葉を掻き込む掻き込みローラと、掻き込まれた枝葉を排出する排出コンベアとで構成されることを第2の特徴とする。
【0011】
本発明に係る枝豆収穫機は、夾雑物除去装置が、枝葉を切断する回転刃と固定刃からなるシリンダー刃と、切断され払い込まれた枝葉を排出する排出コンベアとで構成されることを第3の特徴とする。
【0012】
圃場に栽培されている枝豆に対し回転刃が掻き込みローラと同様の掻き込み作用をするので、掻きこみローラを省略可能で、部品点数を減らし、製作コストを低減できる。
【0013】
本発明に係る枝豆収穫機は、夾雑物除去装置が、地面からの高さが変更可能であることを第4の特徴とする。
【0014】
枝豆の品種等によって枝豆収穫時の成長高さが異なるので、枝豆の成長に合わせて地面からの高さを自在に変更可能にすることで、枝豆上部の枝葉部の切断除去を確実にする。
【0015】
本発明に係る枝豆収穫機は、枝豆の上部枝葉部を切断除去する夾雑物除去装置と、枝豆より枝豆莢をもぎ取るもぎ取り装置と、もぎ取られた枝豆莢を搬送する搬送コンベアと、枝豆莢と枝葉を選別する風選ファンと、選別された枝豆莢を収容する収容コンテナとを備え、前記夾雑物除去装置をもぎ取り装置の前方に取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る枝豆収穫機によると、走行装置の進行方向前方に枝豆の上部枝葉部を切断除去する夾雑物除去装置を備えたから、もぎ取り時に枝豆莢と一緒に枝葉が大量に混入することがなくなり、枝豆莢を効率よく確実にもぎ取ることができ、枝豆莢の収穫率を向上させることができる。また、枝豆莢のもぎ取り時に大部分の枝葉部が予め除去されているので、もぎ取り後の選別作業の労力の軽減と省力化を図ることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、バリカン刃タイプの枝豆収穫機の側面図、
【図2】図1に示す枝豆収穫機の正面図、
【図3】図1に示す枝豆収穫機の背面図、
【図4】図1に示す枝豆収穫機の要部斜視図、
【図5】図1に示す枝豆収穫機の要部側面図、
【図6】圃場内で枝豆の収穫作業の様子を示す全体斜視図、
【図7】圃場内の枝豆収穫機の走行経路と枝葉部の排出方向を示す平面図、
【図8】本発明の他の実施形態を示すもので、回転刃タイプの枝豆収穫機の要部側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1ないし図7において、符号10は枝豆収穫機を示している。
【0019】
図6に示す圃場Gには、数条にわたり枝豆1が栽培されている。収穫時の枝豆1は、高さが60〜70cmあり、地面Gより約40cmまでが枝豆莢2の生える位置でそれ以上は5cm〜15cm位の大きさの複葉の枝葉(以下「上部枝葉部」という)3で全体が大きく覆われている(図5参照)。
【0020】
枝豆収穫機10は、図1ないし図3に示すように、走行装置20に、夾雑物除去装置30と、もぎ取り装置50と、搬送コンベア70と、風選ファン80と、収容コンテナ90とを備えている。
【0021】
走行装置20は、エンジン21により油圧式トランスミッション(図示せず)を介して駆動される左右一対のクローラ22を下部に備え、左右のクローラ22、22を圃場Gの数条の畝(枝豆1が植え付けられている)に跨がらせて圃場G内を数条の畝に沿って走行するようになっている。より具体的には、三条の畝間約1.6m(軌道間)、長さ50〜60mを走行しながら収穫作業する。走行装置20の上部には、操縦席23と走行ハンドル24が設置され、走行ハンドル24の前方にはコントロールボックス25が設置されている。コントロールボックス25には、エンジン制御機器及び計器類が装備されている。また、操縦席23の近くには、夾雑物除去装置30、もぎ取り装置50、搬送コンベア70、風選ファン80等の駆動用油圧モータの操作レバー、夾雑物除去装置30、もぎ取り装置50、搬送コンベア70、収容コンテナ90の昇降用油圧シリンダの操作レバー等が設置されている。
【0022】
夾雑物除去装置30は、畝上の枝豆1がもぎ取り装置50に進入する前に枝豆1の上部枝葉部3を切断除去するもので、走行装置20の進行方向前方に設けられており、図5に示すように、後述するもぎ取りカバー51の天面に取り付けられた支持軸31を支点として、油圧シリンダ32により夾雑物除去装置30全体を上下に位置調整可能とされている。夾雑物除去装置30は、上部枝葉部3を切断するバリカン刃33と、切断された上部枝葉部3を掻き込む掻き込みローラ34と、掻き込まれた上部枝葉部3を排出する枝葉排出コンベア35とで構成されている。
【0023】
バリカン刃33は、図2に示す中央の駆動モータ36により上下刃を左右に往復駆動し、畝上に植え付けられた枝豆1の、地面より枝豆莢2の生える部位を残して上部枝葉部3を切断するもので、前記軸31から前方に伸びる左右の支持アーム37の先端間に取付支持されている。掻き込みローラ34は、図2および図4に示すように、左右の支持アーム37から延びるブラケット38の先端間に軸支される回転軸39の周囲に幅方向略中央位置から左右対称に螺旋状に延在する棒状の掻き込み部材40が支持部材40Aを介して複数本支持され、駆動モータ41により回転軸39の周囲を回転する左右の掻き込み部材40により、切断された上部枝葉部3を掻き込み、背後の枝葉排出コンベア35に排出するようになっている。枝葉排出コンベア35は、左右の支持アーム37から延びるブラケット42により吊下げ支持され、駆動モータ43の正転・逆転により枝葉排出コンベア35上の上部枝葉部3を右から左・左から右に搬送し、コンベア端から圃場G上に排出するようになっている。
【0024】
もぎ取り装置50は、上部枝葉部3が切断除去された後の畝上の枝豆1から枝豆莢2をもぎ取るもので、もぎ取りカバー51内部にもぎ取りローラ52が収容配置されている。もぎ取りローラ52は、もぎ取りカバー51の左右側板51Aの内側に軸支される回転軸53の外周に周方向および全長にわたり多数本のもぎ取り爪54が密に取り付けられ、駆動モータ55により回転軸53の周囲を、図5の時計回りに回転する多数本のもぎ取り爪54により、上部枝葉部3が切断除去された後の畝上の枝豆1から枝豆莢2を効率よくもぎ取るようになっている。もぎ取りローラ52ともぎ取りカバー51の天板内面との間には、もぎ取られた枝豆莢2を効率よく後方の搬送コンベア70に送るための送出空間56が設けられている。
【0025】
もぎ取りカバー51は、走行装置20の左右の下フレーム26間に軸支された支持軸27に支持された支持部材57と、走行装置20の上フレーム28に連結された油圧シリンダ58とにより浮上姿勢に支持されており、油圧シリンダ58の作動により、もぎ取り装置50全体が上下に位置調整可能とされている。もぎ取り装置50の上下位置調整はフロート式とされ、左右の下フレーム26の先端には左右一対の高さ調整ローラ59が設けられている。高さ調整ローラ59により予め設定された畝間の地面レベルに対し、高さ調整ローラ59にかかる負荷が設定圧力よりも大きくなると、油圧シリンダ58の油圧が設定値よりも大きくなり、油圧が設定値と等しくなるように油圧シリンダ58のロッド58Aが縮小し、高さ調整ローラ59にかかる負荷が設定圧力よりも小さくなると、油圧シリンダ58の油圧が設定値よりも小さくなり、油圧が設定値と等しくなるように油圧シリンダ58のロッド58Aが伸長し、その結果、もぎ取り装置50は、走行作業中、圃場Gの地面レベルに倣って自動昇降するようになっている。これに連動して前方の夾雑物除去装置30も圃場Gの地面レベルに倣って自動昇降するようになっている。
【0026】
高さ調整ローラ59は、図5に示すように、左右の下フレーム26の先端に下向きのシリンダ60が取付固定され、シリンダ60内にスライドパイプ61が収納され、スライドパイプ61の上面にはねじ棒62が同軸上に連結されている。ねじ棒62の上端はシリンダ60の上面に設けられたねじ孔63の上に突出して、ねじ棒62の上端にはハンドル64が設けられている。ねじ棒62の外周面とねじ孔63の内周面には互いに螺合する雌ねじと雄ねじが設けられ、ハンドル64を正転・逆転することにより、シリンダ60の下端からのスライドパイプ61の突出量を調整し、これにより、圃場Gの地面レベルからのもぎ取り装置50の高さの設定レベルを調整・変更可能である。
【0027】
搬送コンベア70は、もぎ取り装置50でもぎ取られた枝豆莢2を駆動モータ71により後方の収容コンテナ90へ搬送するもので、その前端がもぎ取りカバー51内に位置し、操縦席23の下部を通り、その後端が後方の収容コンテナ90よりも上方位置まで延在している。搬送コンベア70の後端付近には、搬送コンベア70上に枝豆莢2の間に僅かに残る少量の枝葉を拾う枝葉拾いローラ72が配置されている。この枝葉拾いローラ72は、走行装置20の後部支柱29間にブラケット73を介して軸支された回転軸74の周囲および軸方向に複数の爪75が疎に取り付けられ、駆動モータ76により回転軸74の周囲を、図1の時計回りに回転する複数本の爪75により、枝豆莢2の間に僅かに残る少量の枝葉3’を拾い取り、運転席23背後の枝葉排出コンベア77に排出するようになっている。運転席23背後の枝葉排出コンベア77は、走行装置20の幅方向に延在し、駆動モータ78の正転・逆転により、枝葉排出コンベア77上の少量の枝葉を右から左・左から右に搬送し、コンベア端から圃場G上に排出するようになっている。
【0028】
風選ファン80は、枝豆莢2と枝葉拾いローラ72から洩れたごく少量の葉3”を送風により選別するもので、搬送コンベア70の下方で後部支柱29に取り付けられている。駆動モータ81により送風ファン82を回転させて、搬送コンベア70の後端から収容コンテナ90上部のシューター91に落下する枝豆莢2とごく少量の葉3”に対し吹出口83からの送風により両者を選別し、ごく少量の非常に軽い葉3”はシューター91外の圃場Gへ廃棄され、大部分の枝豆莢2は、シューター91から直下の収容コンテナ90内にことごとく収容される。
【0029】
収容コンテナ90は、選別された枝豆莢2を収容するもので、左右の後部支柱29に連結された4点リンク式の平行アーム92,92と油圧シリンダ93によりフレーム94を介して支持されており、油圧シリンダ93の駆動により、下方の収容位置(図1の矢印L)と上方の排出位置(図1の矢印H)に切り替えることができる。収容コンテナ90の底板95は、前後に2分割され、点線で示す小型の油圧シリンダ96の駆動により、下方の収容位置では底板95を閉口し、上方の排出位置では底板95を開口することができる。
【0030】
上方の排出位置にある収容コンテナ90内の枝豆莢2は、底板94の開口により、その直下の運搬車(図示せず)に移し替えられ、食品工場に運ばれる。
【0031】
次に、上記構成の枝豆収穫機10を用いて、圃場G内に栽培されている枝豆1の収穫方法について説明する。
【0032】
図7に圃場Gの平面例を示す。圃場Gの大部分を占める中央区画Aを除く奥の端区画Bと手前の端区画Cには、図示しないが横方向に延びる3条の畝が作られ、中央区画Aには縦に延びる多数条の畝が作られ、それらの畝には枝豆1が一定間隔に植え付けられている。収穫順は、まず、奥および手前の端区画B、Cの順から行い、次いで、中央区画Aについて行う。
【0033】
まず、奥の端区画Bにおいて、3条の畝を跨るように枝豆収穫機10を図7のように位置決めする。コントロールボックス25上の操作により、エンジン21を始動し、合わせて、夾雑物除去装置30、もぎ取り装置50、搬送コンベア70、風選ファン80等を始動させる。かかる始動状態からエンジン21の駆動力を左右のクローラ22に伝達し、端区画Bを右のスタート地点1から左へ低速走行させる。
【0034】
枝豆収穫機10の走行中、先頭に位置する夾雑物除去装置30のバリカン刃33が、畝上に植え付けられた枝豆1の、地面より枝豆莢2の生える部位を残して上部枝葉部3を切断する。切断された上部枝葉部3は、回転する掻き込み部材40により後方の枝葉排出コンベア35に向けて掻き込まれ、枝葉排出コンベア35上に排出される。枝葉排出コンベア35上に排出された上部枝葉部3は、駆動モータ43の正転により一方向、すなわち進行方向に対し圃場Gの外側(進行方向右側)へ排出する。
【0035】
枝豆収穫機10の走行により、上部枝葉部3が切断除去された後の枝豆1がもぎ取り装置50に進入し、枝豆1上の枝豆莢2が、回転するもぎ取りローラ52の多数本のもぎ取り爪54により効率よくもぎ取られ、もぎ取りカバー51内の送出空間56内を後方の搬送コンベア60へ向けて送られる。もぎ取りローラ52は、枝豆1の上部枝葉部3が予め切断除去されるから、もぎ取り爪54が枝豆莢2をもぎ取る確率が高くなり、枝豆莢2の取りこぼしが極力減る結果、枝豆莢2の収穫率が格段に向上する。
【0036】
搬送コンベア70上に排出された枝豆莢2は、搬送コンベア70上を後方へ向けて搬送される。搬送コンベア70上には枝豆莢2以外に少量の枝葉3’が混入するが、回転する枝葉拾いローラ72の爪75により効率よく拾われ、枝葉排出コンベア77上に排出される。枝葉排出コンベア77上に排出された枝葉3’は、駆動モータ78により一方向、すなわち進行方向に対し圃場Gの外側(進行方向右側)へ排出する。
【0037】
搬送コンベア70上を後方へ向けて搬送される枝豆莢2は、収容コンテナ90上部のシューター91に落下されるが、ここで風選ファン80からの調整された送風により、重量のある枝豆莢2と拾い洩らした軽い葉3”が選別される。軽い葉3”はシューター91外の圃場Gへ排出され、重量のある枝豆莢2はシューター91直下の収容コンテナ90内にことごとく収容される。
【0038】
奥の端区画Bの収穫作業が終わったら、枝豆収穫機10を手前の端区画Cに対し位置決めし、手前の端区画Cを左のスタート地点2から右へ低速走行させる。枝豆収穫機10の走行中、枝葉排出コンベア35上の上部枝葉部3および枝葉排出コンベア77上の枝葉3’は、それぞれ圃場Gの外側(進行方向右側)へ排出する。手前の端区画Cの収穫作業が終わったら、中央区画Aの収穫作業に移る。中央区画Aでは枝豆収穫機10を折り返し運転して、畝3条ずつ、枝豆1の収穫作業を行う。なお、既に収穫を終えた奥および手前の端区画B、Cは枝豆収穫機10の折り返し場所となる。
【0039】
図7における中央区画Aの収穫作業は端区画B、Cと同様であるが、枝豆収穫機10における夾雑物除去装置30の枝葉排出コンベア35、搬送コンベア70の枝葉排出コンベア77はいずれも正転・逆転可能とされている。そこで、中央区画Aのスタート地点3の最初の折り返し点4で各枝葉排出コンベア35、枝葉排出コンベア77の回転方向を逆転させると、切断除去後の上部枝葉部3、枝葉3’を収穫済の圃場G内(進行方向左側)へ排出することができる。同じようにして、スタート地点3側の折り返し点5、7では正転、反対側の折り返し点6、8では逆転とすることにより、切断除去後の上部枝葉部3、枝葉3’を常に収穫済の圃場G内へ排出することができる。
【0040】
収容コンテナ90内が選別された枝豆莢2で一杯になったら、収容コンテナ90を上方排出位置に持ち上げて、圃場Gに横付けあるいは後付けされた搬送車に対し、収容コンテナ90の底板94を開口して内部の枝豆莢2を移し替え、次の収穫作業に移る。収納袋等に枝豆莢2を載せた搬送車は、食品工場等に移動し、収穫された枝豆莢2は新鮮なうちに冷凍倉庫等に保管される。
【0041】
以上の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)枝豆1の上部は、大部分が収穫を必要としない枝葉であり、上部枝葉部3を枝豆莢2のもぎ取り前に除去する事で、収容コンテナ90内に夾雑物の混入がほぼ無くなり、後の人手による選別作業が省力化できた。
(2)収穫を必要としない枝葉をもぎ取り前に除去する事で、枝豆莢2の収穫率が上がり、歩留まりが改善された。
(3)短時間で収穫作業ができ、新鮮なうちに枝豆莢2を商品として出荷することができる。
(4)もぎ取り時に枝豆莢2の取りこぼしが減り、枝豆収穫機10の機械作業精度と能率が向上し、栽培面積を規模拡大できると共に、労力軽減と省力化につながった。
(5)枝豆1に茂った枝葉は、枝豆収穫機10の走行中に圃場Gにそのまま廃棄されるが、トラクター等により圃場Gに鋤きこむ事で有機堆肥となる。
【0042】
図8は、本発明に係る枝豆収穫機の別の実施形態で、本実施形態の枝豆収穫機10’においては、夾雑物除去装置30’が、上部枝葉部3を切断する回転刃101と固定刃102からなるシリンダ刃100と、切断され払い込まれた上部枝葉部3を排出する枝葉排出コンベア35とで構成されている。シリンダ刃100は、固定刃102に対し、刃先が螺旋状に形成され駆動モータ103により回転する回転刃101とのせん断作用によって上部枝葉部3を切断するようになっている。シリンダ刃100は、回転刃101の回転軸104を軸支するブラケット105が支持軸31から前方に延びる左右の支持アーム37の先端間に取付支持されている。支持軸31を支点として、油圧シリンダ32により夾雑物除去装置30’全体が上下に位置調整可能とされている。なお、図4に示す枝豆収穫機10と同一部材には同一符号を付してその説明は省略する。
【0043】
シリンダ刃100は、回転刃101が図1の掻き込みローラ34と同様の掻き込み作用をするので、掻きこみローラ34を省略可能であり、夾雑物除去装置30’の部品点数を減らして、製作コストを低減できる効果がある。
【0044】
本発明に係る枝豆収穫機は、前記実施形態で説明した枝豆収穫機10,10’の構造に限定されない。走行装置20の前方に夾雑物除去装置30だけを備えた枝豆収穫作業機も含む概念である。この枝豆収穫作業機を、別置きの脱莢専用機と組み合わせることにより、従来の引抜収穫作業において、枝豆1の引抜前に上部枝葉部3を除去する事で作物が減量され、移送などに係わる取り扱いが容易になる。
【0045】
さらに本発明に係る枝豆収穫機は、前記実施形態で説明した乗用型の枝豆収穫機に限定されない。本発明を小型の一畝用の歩行型収穫機などにも広く適用可能であり、枝豆莢2をもぎ取る前に上部枝葉部3を除去する事でその後の選別作業等において効果が大きい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、枝豆収穫作業に用いる機械として、乗用型、歩行型の他、枝豆の夾雑物除去専用機としても利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 枝豆
2 枝豆莢
3 上部枝葉部
3’枝葉
3” 葉
10,10’ 枝豆収穫機
20 走行装置
21 エンジン
22 クローラ
23 操縦席
24 走行ハンドル
25 下フレーム
26,31 支持軸
27 上フレーム
28 後部支柱
30,30’ 夾雑物除去装置
32,58,93,95 油圧シリンダ
33 バリカン刃
34 掻き込みローラ
35 枝葉排出コンベア
36,41,43,55,71,76,78,81,103 駆動モータ
37 支持アーム
38,42,73,105 ブラケット
39,53,74,104 回転軸
40 掻き込み部材
50 もぎ取り装置
51 もぎ取りカバー
51A 左右側板
52 もぎ取りローラ
54 もぎ取り爪
56 送出空間
57 支持部材
58A ロッド
59 高さ調整ローラ
60 シリンダ
61 スライドパイプ
62 ねじ棒
63 ねじ孔
64 ハンドル
70 搬送コンベア
72 枝葉拾いローラ
75 爪
77 枝葉排出コンベア
80 風選ファン
82 送風ファン
83 吹出口
90 収容コンテナ
91 シューター
92 平行アーム
94 フレーム
95 底板
100 シリンダ刃
101 回転刃
102 固定刃
A 中央区画
B,C 端区画
G 圃場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置により走行しながら、圃場に栽培されている枝豆を収穫する収穫機において、走行装置の進行方向前方に枝豆の上部枝葉部を切断除去する夾雑物除去装置を備えることを特徴とする枝豆収穫機。
【請求項2】
夾雑物除去装置が、往復動により枝葉を切断するバリカン刃と、切断された枝葉を掻き込む掻き込みローラと、掻き込まれた枝葉を排出する排出コンベアとで構成されることを特徴とする、請求項1記載の枝豆収穫機。
【請求項3】
枝葉を切断する回転刃と固定刃からなるシリンダー刃と、切断され払い込まれた枝葉を排出する排出コンベアとで構成されることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の枝豆収穫機。
【請求項4】
夾雑物除去装置は、夾雑物除去装置が、地面からの高さが変更可能であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の枝豆収穫機。
【請求項5】
枝豆の上部枝葉部を切断除去する夾雑物除去装置と、枝豆より枝豆莢をもぎ取るもぎ取り装置と、もぎ取られた枝豆莢を搬送する搬送コンベアと、枝豆莢と枝葉を選別する風選ファンと、選別された枝豆莢を収容する収容コンテナとを備え、前記夾雑物除去装置をもぎ取り装置の前方に取り付けたことを特徴とする枝豆収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−24514(P2011−24514A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175409(P2009−175409)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(592264237)松元機工株式会社 (16)
【Fターム(参考)】