説明

栓体

【課題】 手元側竿体の内径が異なるものであっても適合可能な栓体を提供する。
【解決手段】 一番竿体1に取付け固定され手元側竿体4の竿先端側開口に内嵌される外周面を備えた玉の柄用口ゴム5であって、その玉の柄用口ゴム5の外周面の円周方向に沿った複数箇所に、軸線方向に沿った突条5aを形成するとともに、突条5の断面を矩形に形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の竿体を伸縮可能に備える玉の柄、又は、渓流竿等に使用される栓体に関する。
【背景技術】
【0002】
上記玉の柄、及び、渓流竿においては、一番竿体を含む複数本の竿体を手元側竿体の中に収納した状態で栓体を手元側竿体の竿先側開口内に内嵌させて、手元側竿体内に収納した一番竿体等が脱出することを阻止する構成を採っている。
上記栓体における、手元側竿体の竿先側開口内に内嵌されるところの外周面は、凹凸のない円弧面に形成されており、その外径は軸線方向に沿って徐々に拡径する緩円錐台状のものに形成されていた(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−129532号公報(段落番号〔0022〕、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した構成においては、栓体としてゴム等の弾性材を使用している場合であっても、栓体の外周面は僅かに傾斜する緩傾斜面に形成されているだけである。その為に、手元側竿体の竿先側開口の内径変化に対する追従性が十分でない面があった。
したがって、手元側竿体の内径が異なる場合には、異なる内径の手元側竿体毎に、夫々、その内径に適合した栓体を備える必要があり、専用の栓体を多数形成することに対する製作上の改善の余地があった。
【0005】
本発明の目的は、手元側竿体の内径が異なるものであっても適合可能な栓体を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、前記外周面の円周方向に沿った複数箇所に、軸線方向に沿った突条を形成するとともに、前記突条の半径方向先端側部分における円周方向に沿った幅寸法と、前記突条の半径方向基端側部分における円周方向に沿った幅寸法とを、同一の又は略同一の長さのものに設定して、前記突条の断面を矩形に形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
手元側竿体の先端内周面に内嵌するものとして、栓体の外周面に突条を形成した。この突条は、矩形断面を呈している。
したがって、突条が手元側竿体の先端内周面に接触した場合に、その先端内周面より押さえ反力を受けると、隣接する突条(円周方向)側に倒れを生じ、手元側竿体の先端内周面に適合した状態になる。
このような構成によって、突条の外周面径に比べて小さな内径を有する手元側竿体にも、この栓体を適用することが可能になる。
【0008】
〔効果〕
したがって、手元側竿体の先端内周面の内径が異なるものであっても、栓体の兼用が可能になり、手元側竿体毎の専用の栓体を装備する必要がない。
【0009】
請求項2に係る発明の特徴構成は、請求項1にかかる発明において、前記断面の高さ寸法を前記幅寸法より大きくしてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
つまり、高さ寸法が幅寸法より高く形成されているので、突条は倒れを生じ易く、手元側竿体の先端内周面の内径が異なるものへの対応性を高くできる。
【0011】
請求項3に係る発明の特徴構成は、請求項2に係る発明において、前記断面の高さ寸法より前記軸線方向に沿った長さ寸法を長くしてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】
〔作用効果〕
つまり、高さより長く設定された軸線方向に沿った長い部分を、手元側竿体の先端内周面の奥まで接触させることができるので、突条の接触域を大きくでき、手元側竿体への栓体の装着状態を強固なものにできる。
【0013】
請求項4に係る発明の特徴構成は、前記栓体が、小径竿体を大径の前記手元側竿体内に収納した状態でその手元側竿体の竿先端側開口に装着される釣り竿用口栓である点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0014】
〔作用効果〕
ここで、栓体は、小径竿体を大径の前記手元側竿体内に収納した状態でその手元側竿体の竿先端側開口に装着されるところの口栓として使用される。そして、口栓において前記した矩形断面を有する突条を形成してあるので、手元側竿体の先端部内径が異なるものにも使用できる兼用効果を発揮させることができる。
【0015】
請求項5に係る発明の特徴構成は、前記栓体が、一番竿体の竿先端に取り付けてある玉の柄用口ゴムである点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0016】
〔作用効果〕
つまり、栓体は、一番竿体の竿先端に取り付ける口ゴムとして使用される。そして、口ゴムにおいて前記した矩形断面を有する突条を形成してあるので、手元側竿体の先端部内径が異なるものにも使用できる兼用効果を発揮させることができる。
【0017】
請求項6に係る発明の特徴構成は、玉の柄が前記口ゴムを備えている点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0018】
〔作用効果〕
つまり、前記した突条を形成した口ゴムは、手元側竿体の先端部内径が異なる玉の柄にも適用できるので、兼用効果を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
振出式の玉の柄Aについて説明する。
振出式の玉の柄Aは、図1に示すように、一番竿体1と、二番竿体2、三番竿体3、手元側竿体4とを備えて、構成されている。一番竿体1には栓体としての口ゴム5を装備し、手元側竿体4の竿尻端には尻栓6が設けてある。
玉の柄Aは、一番竿体1、二番竿体2、三番竿体3を手元側竿体4内に収納する収縮状態と一番竿体1、二番竿体2、三番竿体3を手元側竿体4より引き出した伸長状態とに切換可能に構成されている。
【0020】
一番竿体1等の各竿体は、炭素繊維等の強化繊維を引き揃え、その引き揃えた強化繊維群に、エポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成したプリプレグを所定の形状に裁断し、その裁断したメインパターンをマンドレルに巻回し、巻回したものを焼成して、所定の寸法に切断して、形成される。
【0021】
一番竿体1の先端には、魚を掬い取るタモ網Bが取付られる。その取り付け構造を説明する。図1及び図2に示すように、タモ網Bは、網本体7と枠体8とからなり、枠体8に一番竿体1への装着部8Aが形成されている。装着部8Aには雄ネジ軸8aが突設されている。
一方、図2(イ)に示すように、一番竿体1の先端内には取付用スリーブ9が嵌め込み固定してあり、その取付用スリーブ9の内周面に雌ネジ部9aが形成されている。
以上のようなネジ部構造によって、図2(ロ)に示すように、タモ網Bの雄ネジ軸8aを取付用スリーブ9の雌ネジ部9aに螺合させることによって、タモ網Bを玉の柄Aに取り付けることができる。
【0022】
口ゴム5と一番竿体1との取り付け構造について説明する。図2、図3に示すように、口ゴム5は、その外周面に、前端側から後端側に掛けて、大径摘まみ部5Aと、中径手元側竿体用嵌合部5Bと、小径逃げ部5Cとを形成して構成されている。口ゴム5の内周面には、一番竿体1の竿先端部の外周面1Aを外嵌保持する摩擦保持部5Dが形成されている。
【0023】
図2、図3に示すように、大径摘まみ部5Aには、ローレット加工が施してあり、摘まみ易い構造になっている。また、中径手元側竿体用嵌合部5Bから小径逃げ部5Cまでには、次ぎのような突条5aが複数個形成されている。
突条5aは、中径手元側竿体用嵌合部5Bから小径逃げ部5Cにおいて、円周方向複数箇所に亘って形成してあり、矩形状の断面を備えるとともに、矩形状の断面を維持しながら、中径手元側竿体用嵌合部5Bから小径逃げ部5Cに亘って軸線方向に沿って配置されている。
【0024】
突条5aの断面寸法は次ぎのようになっている。図3に示すように、突条5aの半径方向先端側部分における円周方向に沿った幅寸法T1と、突条5aの半径方向基端側部分における円周方向に沿った幅寸法T2とを、同一の又は略同一の長さのものに設定してある。また、断面の高さ寸法Hを幅寸法T1、T2より大きくしてある。断面の高さ寸法Hより軸線方向に沿った長さ寸法Lを長くしてある。
【0025】
上記したように、突条5aは、断面矩形に形成され、先端側の幅寸法T1と基端側の幅寸法T2とを同一または略同一の長さのものに設定しているので、突条5aが手元側竿体4の竿先側開口の内周面に当接した場合に、その内周面より押さえ荷重を受けて圧縮されるだけでなく、長柱のように倒れを生じ易くなっている。
このように、倒れを生じ易くなっているので、竿先側開口の内径が異なる手元側竿体4にも、この口ゴム5を使用することが可能になる。
【0026】
口ゴム5はゴム製のものであり、アクリロニトリルーブタジエンゴム(NBR)を材料とし、硬度としてはJIS硬さとして30〜90のものを使用できる。但し、このゴムに相当する硬度を有するものであれば、合成樹脂を材料とすることもできる。
突条5aの設置個数としては、手元側竿体4の竿先端開口径に応じて増加する方向に変動するが、総じて、12〜60個の中から選択することができる。
また、突条5aの幅寸法T1、T2としては、0.5mm〜2.0mm程度のものを選択し、高さHとしては1mm〜10mm程度のものを選択することができる。
【0027】
図3に示すように、突条5aは、中径手元側竿体用嵌合部5Bにおいて一定高さHに維持され、小径逃げ部5Cにおいて傾斜面に沿うように高さを低くしている。このように、小径逃げ部5Cにおいて徐々に高さを低くしているので、上記のように、高さが低くなると、低くなるほど突条5aは小径逃げ部5Cでの先端位置を中径手元側竿体用嵌合部5B側に後退させる構成を採ることとなる。
【0028】
図2(ロ)に示すように、一番竿体1にタモ網Bを取り付けた際には、タモ網Bの装着部8Aの側面8bを、口ゴム5の前面5dに当接させている。口ゴム5は前記したようにゴム製でありその弾性変形性により軸線方向に圧縮される。これによって、口ゴム5はタモ網Bと一番竿体1とに離間する方向の力を作用させるところから、タモ網B側のネジ軸8aとスリーブ9との螺合状態を維持する機能を発揮することになる。
【0029】
玉の柄Aは振出竿式のものであるので、各竿体を伸長させた使用状態から各竿体を短縮させた状態とに切り換えられるものであるが、第2図(ロ)に示すように収縮状態に設定すると、手元側竿体4の竿先端開口が口ゴム5の中径手元側竿体用嵌合部5Bに外嵌し、その収縮状態を維持するようになっている。
【0030】
〔第2実施形態〕
渓流竿C等の手元側竿体4の竿先側開口を閉塞する栓体としての口栓10について説明する。
図4に示すように、渓流竿C等は、手元側竿体4としての元竿内に二番竿体2、三番竿体3等の中竿、及び、一番竿体1としての穂先竿を収納した状態で、元竿4の竿先開口に口栓10を装着する構成を採っている。
【0031】
図4に示すように、口栓10は、前記した口ゴム5と同様に、大径摘まみ部10Aと、中径手元側竿体用嵌合部10Bと、小径逃げ部10Cとを形成して構成されている。口栓10には、口ゴム5のように、内周面側に貫通孔は設けられてはなく、中実体に形成されている。
一方、中径手元側竿体用嵌合部10Bには、第1実施形態で示したと同様の突条10aが設けてあり、突条10aの個数、断面寸法は、口ゴム5と同様である。
【0032】
つまり、口栓10の材料として、前記した口ゴムと同様のアクリロニトリルーブタジエンゴム(NBR)を使用してもよく、または、コルクやプライウッド等の木材質のものや、合成樹脂等を使用してもよい。
10aの設置個数としては、手元側竿体4の竿先端開口径に応じて増加する方向に変動するが、総じて、12〜60個の中から選択することができる。
また、突条10aの幅寸法T1、T2としては、0.5mm〜2.0mm程度のものを選択し、高さHとしては1mm〜10mm程度のものを選択することができる。
【0033】
図4に示すように、渓流竿Cにおいては、一番竿体1の先端に回転式の糸連結部材1Bが取り付けてあり、この糸連結部材1Bに釣り糸aが取り付けてある。そして、口栓10を手元側竿体4の竿先側開口に取り付ける場合には、釣り糸aを口栓10における隣接する突条10a、10a同士の間隙部分を通して手元側竿体4から釣り糸aを導出することができる。
したがって、口栓10を取り付ける場合にも、釣り糸aを取外す必要はない。
【0034】
〔別実施の形態〕
(1) 一番竿体1と口ゴム5の取り付け構造としては、次ぎのようなものでもよい。前記した実施形態では、一番竿体1の竿先端外周面に口ゴム5等を外嵌するのに、口ゴム5の内周面に摩擦保持部5Dを形成して対応しているが、この摩擦保持部5Dとともに、ネジで嵌合するネジ部を並設する構成を採ってもよい。
(2) 突条5,10の断面形状としては、必ずしも高さHが幅寸法T1、T2より高くなくてもよく、高さHと幅寸法T1、T2とが略同一の寸法であってもよく、矩形状の断面を呈するものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】玉の柄とタモ網とを示す斜視図
【図2】口ゴムと一番竿体と手元側竿体とを示し、(イ)は、口ゴムを一番竿体に取り付けた状態を示す縦断側面図、(ロ)は、玉網を一番竿体に取り付けた状態を示す縦断側面図
【図3】口ゴムを示し、(イ)は縦断側面図、(ロ)は正面図、(ハ)は突条の断面形状を示す縦断正面図
【図4】渓流竿用口栓と一番竿体と手元側竿体とを示し、口栓を手元側竿体に取り付けた状態を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0036】
1 一番竿体
4 手元側竿体
5,10 栓体(口ゴム、口栓)
5B 外周面(中径手元側竿体用嵌合部)
5a 突条
T1、T2 幅寸法
H 高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手元側竿体の竿先端側開口に内嵌される外周面を備えた栓体であって、
前記外周面の円周方向に沿った複数箇所に、軸線方向に沿った突条を形成するとともに、前記突条の半径方向先端側部分における円周方向に沿った幅寸法と、前記突条の半径方向基端側部分における円周方向に沿った幅寸法とを、同一の又は略同一の長さのものに設定して、前記突条の断面を矩形に形成してある栓体。
【請求項2】
前記断面の高さ寸法を前記幅寸法より大きくしてある請求項1記載の栓体。
【請求項3】
前記断面の高さ寸法より前記軸線方向に沿った長さ寸法を長くしてある請求項2記載の栓体。
【請求項4】
前記栓体が、小径竿体を大径の前記手元側竿体内に収納した状態でその手元側竿体の竿先端側開口に装着される請求項1から3のうちのいずれか一つに記載の釣り竿用の口栓。
【請求項5】
前記栓体が、一番竿体の竿先端に取り付けてある請求項1から3のうちのいずれか一つに記載の玉の柄用口ゴム。
【請求項6】
前記玉の柄用口ゴムを備えた請求項5記載の玉の柄。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−143474(P2007−143474A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342020(P2005−342020)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】