説明

校正装置及び測定装置

【課題】角度2点法プローブのゼロ点校正を角度2点法の環境に対するロバスト性を維持しながら、迅速に、精度よく、かつ簡便に実現できる校正装置及び真直形状測定装置を提供する。
【解決手段】校正対象となる2つの角度センサSS1〜SS2を円板CP1〜CP2に対して相対的に固定し、回転角θ=0度において2つの多面鏡CP1〜CP2の傾斜角を、各角度センサセンサSS1〜SS2を用いて測定して第1の測定値を求め、且つ回転角θ=180度において2つの多面鏡CP1〜CP2の傾斜角を、角度センサセンサSS1〜SS2を用いて測定して第2の測定値を求め、第1の測定値と第2の測定値とに基づいて、前記角度センサのゼロ点誤差を校正できる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真直形状および真直運動姿勢誤差を測定するための角度2点法プローブのゼロ点校正技術に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの角度センサを用いた角度2点法プローブにより被測定対象形状を精度良く測定をするためには、2つの角度センサのゼロ点のずれ(ゼロ点誤差)による放物線誤差を取り除く必要があり、そのために、ゼロ点誤差を校正する必要がある。また、運動の姿勢誤差の測定では、ゼロ点誤差があると姿勢の一様な変化と区別がつかないため、ここでもゼロ点の校正が必要になる。ここで、そのゼロ点誤差を校正する手法として、既知の直線に沿う角度変化(以下角度形状とよぶ)を基準にする方法、角度2点法による測定と改良型反転法による測定を併用してゼロ点誤差を求める方法、既知の角度形状の角度幅を基準にして、その角度幅を構成する2本の直線を、角度2点法プローブを反転させることで2回測定して得られる角度幅の長手方向の変化形状を得て、既知の角度幅と比較してゼロ点を決める方法がある。これらは、別の方法で得た直線の角度形状や角度幅の基準を用いている。
【0003】
上記の既知の角度幅基準を用いる方法で、被測定面と対向させてダミーの面を設置しその場で角度幅を測定しながら、プローブを反転して角度2点法で角度幅を構成する両側の直線母線を測定する方法もあり、これは準リアルタイムのゼロ点調整方法といえる。
【0004】
その他に,水準器を用いて、走査運動軌跡の両端の傾斜の差を測定して、角度2点法で得た走査運動軌跡の両端での傾斜の差と比較して、ゼロ点を算出する方法も知られている。水準器の代わりにオートコリメータと反射鏡を用いて走査運動の軌跡の両端の傾斜の差を測定する方法も成立する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】清夫慧、「3点法及び角度2点法のゼロ点誤差補正方法」、精密工学会北海道支部講演会(2006年9月札幌)の前刷り
【非特許文献2】清野慧、奥山栄樹、「角度センサの利用による精密測定の高度化」、精密工学会講演論文集(2007年3月東京)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、既知の基準を用いてゼロ点誤差を校正する方法では、校正後に被測定対象を測定する場所にプローブを移動して実際の測定を行うまでのゼロ点の変化が問題になる。角度幅を基準にしてプローブを反転させる方法でも、反転前後の角度2点法での測定中のゼロ点変化が影響して正確なゼロ点が決め難い。
【0007】
さらに、角度2点法でローリング運動を測定する目的では、既知のローリング角度形状を有する基準鏡を得ることは極めて面倒になる。
【0008】
これに対し、走査運動軌跡の両端の傾斜を補正する方法は環境が整えば精度の高い方法となる。また、水準器の使える環境では、ローリング測定用の角度2点法のプローブのゼロ点も校正できる。しかし、水準器では、角度2点法プロープでは除去できる機械的な外乱振動が測定誤差になり、オートコリメータでは空気の揺らぎが誤差要因になるなど、角度2点法の要求する以外の環境の整備がゼロ点検出のために必要になるという難点がある。
【0009】
発明は、このような従来法の問題に鑑みなされたもので、角度2点法プローブのゼロ点校正を角度2点法の環境に対するロバスト性を維持しながら、迅速に、精度よく、かつ簡便に実現できる校正装置及び真直形状測定装置を提供する目的でなされたものである。また、ピッチングやヨーイングだけでなくローリングをも測定する2次元の角度2点法プローブの校正にも資する目的もある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の校正装置は、
校正対象となる2つの角度センサを保持するベースと、
中心を挟む2点の軸方向の傾斜角度幅(軸方向平行度)が所定の一か所以上の回転角位置で校正されている2つ以上の多面鏡と、
前記ベースに対して回転可能に支持され、所望の間隔で前記多面鏡を取り付けた回転軸と、を有し、
校正対象となる2つの角度センサを前記多面鏡に対して相対的に固定し、前記所定の回転角位置において前記2つ以上の多面鏡の軸方向傾斜角を、各角度センサを用いて測定して第1の測定値を求め、且つ前記所定の回転角位置から180度回転させた回転角位置において前記2つ以上の多面鏡の軸方向傾斜角を、各角度センサを用いて測定して第2の測定値を求め、前記第1の測定値と前記第2の測定値とに基づいて、前記角度センサのゼロ点を校正できることを特徴とする。
【0011】
本発明の装置に必要な多面鏡鏡面の軸方向の傾斜角の対向する2点での和の測定原理について説明する。図1の例のように、外周面が鏡面になっている多面鏡CPでは、中心を挟んで対向する2面の軸方向の傾斜角の和を軸方向の平行度として定義することができる。
【0012】
図2に、回転可能に支持された回転軸SHに並列に同軸になるよう取り付けた多面鏡CP1,CP2の中心を挟む2点の軸方向の傾斜角を、3つの角度センサA,Bを用いて測定する状態を示す。ここでは、多面鏡CP1,CP2を同じ矩形状の鏡面を6つ備えた六面鏡を例として示すが、これに限られない。回転軸SHの中心を含む平面による断面における軸方向の接線の傾斜は、図1のように右向きに内側に傾斜する場合を正として表す。測定点の傾斜を測定する一つの角度センサの出力は、多面鏡CP1の鏡面の軸方向傾斜角の和と、多面鏡CP1の剛体的な傾斜角α(θ)の和となる。対向する測定点では剛体的な傾斜角α(θ)の符号が正負逆になる。対向する測定点での2つの角度センサA,Bの出力の和は、剛体的な傾斜角α(θ)が相殺され、θが変化しても、多面鏡CP1の鏡面の対向する2点での傾斜角の和の変化分だけが現れる。対向する2つの角度センサA,Bのゼロ点は必ずしも一致しないが、この2つの角度センサA,Bが校正中は変化しないとすると回転中の回転軸SHの振れの影響も受けずに、対向する2点での形状としての軸方向の傾斜角の和の変化だけを取り出せる。
【0013】
図2に点線で示すように、一対の角度センサA,Bの相互関係を維持しつつ、多面鏡CP1,CP2を相対移動させ、他の多面鏡CP2の軸方向傾斜角を測定することによっても、多面鏡CP1,CP2相互の前記対向する2点での軸方向傾斜角の和の多面鏡間の差を検出できることになる。ちょうどこれは、円板の直径の変化を調べるときに対向する2点に対峙する2つのセンサの出力の和の変化をみるときと同様の関係になる。なお、図2では2個の多面鏡CP1,CP2が一つの回転軸SHに固定されている状態を示しているが、回転軸SHに固定される前の独立した多面鏡CP1,CP2を回転テーブル(不図示)上に重ねて配置したり、次々に取り換えて配置して測定することも可能である。
【0014】
また、円周に沿う方向の傾斜は、軸方向の傾斜角が上記の手段で校正されている多面鏡が取り付けられている、ゼロ点校正用冶具について校正する。図7に示す装置では、多面鏡CP1,CP2を取り付けた回転軸SHが、ベースBSに対して多面鏡軸受SPHで回転自在に支持されている。又、ベースBSには、回転軸SHの回転角位置を検出する回転角センサ(不図示)が固定され、円周方向の傾斜を検出するローリング方向角度センサSS3が独立固定された可動センサホルダMSHにより支持されており、角度センサSS3をベースBSに対して相対的に移動することで、角度センサSS3の検出ターゲットとなる多面鏡CP1とCP2を切り替えることができるようになっている。可動センサホルダMSH移動の際のローリング角を、可動センサホルダMSHに取り付けられた電子水準器ELで検出して補正することで、回転軸SHの同一回転位置における2個の多面鏡CP1、CP2の相対的な回転角をローリング方向角度センサSS3の読みから知ることで校正する。なお、ベースに水準器を搭載して、ベースのローリング角を検出しながら、角度センサのターゲットとなる多面鏡を替えることも同様の効果を持つ。
【0015】
本発明の原理について説明する。図3は本発明の数学的原理を説明するための図である。180度で対向する2点の傾斜角の和の相対差が既知の2つの多面鏡CP1、CP2が、センサホルダHL上に角度2点法プローブのセンサSS1、SS2の間隔と等しい間隔で固定配置されており、センサSS1、SS2は多面鏡CP1、CP2の鏡面にそれぞれ対峙して、その軸方向傾斜角を測定可能となっている。多面鏡CP1、CP2は、その軸方向平行度の変化が所定の回転角位置で予め校正されている。不図示の回転角センサが、回転軸SHの回転角位置を測定可能となっている。
【0016】
回転軸SHが、第1の測定を行う回転角θ=0度の位置にある状態を図3(a)に、これと対向する第2の測定を行う回転角θ=180度の位置に回転した状態を図3(b)に示す。図3(a)、(b)では、角度センサSS1、SS2のプローブの感度軸方向は水平面内にあり、回転軸SHの重力の影響によるたわみの影響は図では現れていない。
【0017】
以下、角度センサのゼロ点校正について説明する。ここで、回転軸SHに対する多面鏡CP1、CP2の取り付けの誤差により、多面鏡CP2の軸線が多面鏡CP1の軸線に対して角度Δφだけ、図3(a)で互いに近寄り側に傾斜し、図3(b)では同じ量だけ互いに遠ざかる側に傾斜しているものとする。また、角度センサSS2のゼロ点位置が角度センサSS1のゼロ点位置に対して、角度αだけ傾いているものとする。このとき,回転軸SHの回転角度位置をθとして、2つの角度センサSS1、SS2の出力を、それぞれμA(θ),μB(θ)とする。
【0018】
まず、図3(a)に示す状態では,2つの角度センサSS1、SS2による角度2点法プローブの差動出力(第1の測定値)をμ(0)とすると、幾何学的関係より、
μ(0)=μA(0)−μB(0)=Δφ+α (1)
と表せる。ただし、多面鏡CP1、CP2の当該測定面の傾斜角度差は、校正値を用いて補正するものとして、式では省略している。
【0019】
次に、図3(a)に示す状態から回転軸SHが180度回転した図3(b)に示す状態では,2つの角度センサSS1、SS2による角度2点法プローブの差動出力(第2の測定値)をμ(π)とすると、幾何学的関係より、
μ(π)=μA(π)−μB(π)=−Δφ+α (2)
と表せる。
【0020】
P0が両者の平均値であるから、(1)、(2)式よりΔφを消去すると、以下の式でP0(位置ズレ)を求めることができる。
α={μ(0)+μ(π)}/2 (3)
【0021】
求められたαだけ、角度センサSS2を移動させることで、両側の角度センサSS1、SS2のゼロ点位置を一致させることができる。このように、ズレ量αを求めて角度センサの姿勢ズレを補正することを、角度2点プローブのゼロ点調整という。
【0022】
次に、角度センサSS1、SS2の感度軸が、鉛直方向に向いている場合について検討する。この場合は重力の影響で軸がたわみ、このたわみによって、円板CP1に対して円板CP2が角度βだけ傾く。
【0023】
まず、図4(a)に示す状態と図4(b)に示す状態では、多面鏡CP1,CP2は180度回転しているが、取り付けによる傾斜と異なり、重力による回転軸Sのたわみは回転前後で同じ姿勢になるので、多面鏡CP1,CP2の相互傾斜角のたわみによる影響は反転前後の出力の和からは取り除けず2倍に現れる。角度センサの感度軸が水平方向にある場合に対して鉛直方向にある場合の見かけのゼロ点の差が重力による軸のたわみの影響を示しており、これを予め測定しておけば、後のゼロ点調整においても補正に用いることができる。
【0024】
以上の説明では、一つの角度位置にある、2つの多面鏡におけるそれぞれの対向する鏡面の軸方向平行度の相互差が校正済みという条件で原理を説明したが、複数の回転角度位置での軸方向平行度の相互差が校正されていれば、複数の前記回転角度位置での軸方向平行度の校正値を使って角度センサ間のゼロ点の校正結果の平均値を校正値とすることもできる。その時、例えば式(3)の一対の鏡面に対応する2か所の回転角度位置でのセンサの読みの代わりに前記複数の回転角度位置での読みの平均値を用いる。前記軸方向平行度の相互差が校正されている回転角度位置が十分に多くて、一回転にわたる平均の軸方向平行度の2つの多面鏡における相互差が校正されていれば、角度センサ間のゼロ点誤差の調整には、その平均的な軸方向平行度差(傾斜角の和の平均値)を用いることもできる。
【0025】
従って、一つの角度センサで多面鏡の傾斜角を測定する方法で得た平均傾斜角を多面鏡の対向する2面の傾斜角の和の代わりの校正値に用いても、同様の校正装置が構成できることは言うまでもない。なお、これらのいずれの方法を用いるときも多面鏡の傾斜角の校正の際の傾斜角度読み取り位置と同じ回転角度位置を再現して同じ位置でのゼロ点を校正すべき角度センサの読みをとる方が精度の観点からは好ましい。
【0026】
本発明によれば、測定の際に特別の基準を必要としない、対向する鏡面のなす角度の差だけを用いるので、精度の高い安定した角度2点法プローブのゼロ点校正装置が構成できる。また、本発明によれば、一つの角度センサによる多面鏡一回転分の傾斜角度の平均傾斜角の差を対向する鏡面のなす傾斜角度平均値の差に代用できるので、簡便に角度2点法プローブのゼロ点校正装置が構成できる。
【0027】
本発明によれば、軸方向傾斜を検出するための角度センサの感度軸が水平面内にあるゼロ点を基準に、その感度軸を鉛直方向に設置した場合のゼロ点の移動(回転軸の撓みによる傾斜)δの影響を補正することができる。
【0028】
更に本発明の校正装置は、前記回転軸は2点で支持されており、重力により前記回転軸のたわみが生じたときに、重力方向のたわみによる傾斜角が等しくなる2か所に前記多面鏡をそれぞれ取り付けたことを特徴とする。
【0029】
更に図3(a)〜(b)に示すようにして、本発明の校正装置は、校正対象となる2つの角度センサを感度軸が水平方向に向くように前記多面鏡に対して相対的に固定し、前記所定の回転角位置において前記2つ以上の多面鏡の円周を、各角度センサを用いて測定して第1の測定値を求め、且つ前記所定の回転角位置に対して180度回転させた前記2つ以上の多面鏡の鏡面の軸方向傾斜を、各角度センサを用いて測定して第2の測定値を求め、前記第1の測定値と前記第2の測定値とに基づいて、1つの角度センサの姿勢ズレを求めるのを基本とする。
【0030】
更に校正対象となる2つの角度センサを感度軸が鉛直方向に向くように前記多面鏡に対して相対的に固定し、前記所定の回転角位置において前記2つ以上の多面鏡の軸方向傾斜角を、各角度センサを用いて測定して第3の測定値を求め、且つ前記所定の回転角位置に対して180度回転させた前記2つ以上の多面鏡の軸方向傾斜角を、各角度センサを用いて測定して第4の測定値を求め、前記第3の測定値と前記第4の測定値と、前記1つの角度センサの傾斜角出力のズレに基づいて、前記回転軸の撓みによる傾斜角量を求めることができることを特徴とする。尚、「感度軸」とは、角度センサならそのセンサが検出する点を通り、そのセンサが検出する傾斜角の方向を指す軸を言う。
【0031】
また、多面鏡の円周方向の鏡面の傾斜を検出する方向の角度センサに関しては、軸のたわみの影響は生じない。
【0032】
本発明の真直形状測定装置は、上述の校正装置によって構成された角度センサを用いていることを特徴とする。
【0033】
本発明では、経時的な、あるいは環境変化による角度変化が小さい2個の多面鏡,あるいは一個の長い棒状の多面鏡の軸方向の定められた2箇所の傾斜角を角度幅基準として用いることができる。必要なセンサの数を増やさないため2つの多面鏡あるいは棒状多面鏡の2か所の円断面の傾斜角差を予め校正して用いると好ましい。本発明では、校正に用いる多面鏡の軸方向への走査はせず、必要最小限の長さの校正用回転軸を利用することができる。角度2点法プローブが校正用回転軸に簡単に迅速にアクセスできるように,プローブの近傍へ校正装置を設置できる構造とすると好ましい。
【0034】
本発明は、熱膨張係数が十分小さい素材で作られていて、その傾斜角が所定の一か所以上の回転角位置で校正されている多面鏡と、所望の間隔で2個以上の前記多面鏡が取り付けられる一つの回転軸と、前記回転軸の前記所定の回転角位置を検知することのできる信号発生部とを備えていると好ましい。
【0035】
本発明は、回転軸を2点支持し、そのとき重力によるたわみに伴う傾斜が等しくなる軸上の2か所に前記多面鏡を取り付けることで重力によるたわみの影響を極小にすると好ましい。
【0036】
本発明は、前記回転軸の回転中に生じる軸のたわみ変形の再現誤差を検出するために前記多面鏡に向けて固定された一個以上の角度センサを備えると好ましい。又、角度センサが、多面鏡の軸方向の傾斜に加えて、円周方向の傾斜角を検出できる2次元角度センサであって、軸方向の傾斜角のゼロ点を求める操作の際に、同時に円周方向の角度を検出して、それぞれの円周方向傾斜角の角度センサ出力の一回転分の平均値の差から、円周方向傾斜角の角度センサのゼロ点のズレを校正することができるものであると好ましい。更に、角度センサが、多面鏡の軸方向の傾斜に加えて、円周方向の傾斜角を検出できる2次元角度センサであって、この円周方向の角度から、前記所定の回転角位置を定めるものであると好ましい。
【0037】
本発明は、前記2個の多面鏡を回転軸に取り付けた状態で対向する2つの角度センサで軸方向の傾斜角を測定する際に180度回転した2か所で測定して平均を出す方法で、鉛直方向と水平方向の見かけの直径の違いを校正しておき,角度2点法プローブのゼロ点校正の際のプローブの感度方向における重力によるたわみに伴う傾斜の影響を計算で補正することができると好ましい。
【0038】
本発明は、被測定物の搭載されたテーブルと相対的に移動する角度2点法プローブを保持するコラムに取り付けられ、前記テーブルに対してプローブと一体的に相対移動すると好ましい。
【発明の効果】
【0039】
本発明ではプローブが、重力によるたわみの影響を受けない水平面内に感度軸のある場合には、角度2点法プローブで180度対向した2か所で得た読みの角度2点法としての差動出力の平均値を用い、予め校正された2か所の傾斜角の差から決まる理論上の前記差動出力を基準にしてゼロ点を校正するので校正中の角度センサ出力のドリフトの影響は受け難い技術を提供できる。
【0040】
本発明では、水平方向以外にプローブの感度軸を置いた場合の重力による回転軸のたわみ量を水平方向で得たゼロ点との違いから検出しておきプローブ感度軸の方向の違いによる見かけの直径差の変化を修正して任意の方向でのゼロ点を校正することができる。
【0041】
本発明では角度2点法プローブのゼロ点校正において、水準器やオートコリメータを必要としないので、外乱振動や空気の揺らぎの影響を受け難い角度2点法本来のロバスト性を保持できる。
【0042】
本発明では被測定対象をゼロ点校正に用いないので、任意の形をした回転できない被測定対象にも角度2点法が適用でき、その形状を測定出来る。
【0043】
本発明では、ゼロ点校正用の回転軸を角度2点法プローブの傍に比較的簡易に保持して用いることができるため、測定作業中でも必要に応じて迅速にゼロ点校正を繰り返すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の多面鏡の軸方向の平行度を説明するための図である。
【図2】本発明に用いる多面鏡の軸方向平行度の変化を測定する方法を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる校正装置を示す図である。
【図4】重力による軸のたわみの影響の仕方について説明する図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる校正装置を示す図である。
【図6】校正された角度センサSS1〜SS2を用いた真直形状測定装置を示す図である。
【図7】本発明に用いる複数の多面鏡間の円周方向の傾斜角の差を校正するときの原理的な構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を参照して、本発明にかかる実施の形態を説明する。図5は本発明の実施形態にかかる校正装置を示す図である。図5において、ベースBS上に、平行に離間するようにして板状の支持台SP1,SP2の下端が固定されている。支持台SP1,SP2は上縁にV字状の切欠VL1,VL2を有しており、これが軸受の役目をする。切欠VL1,VL2内には回転軸SHが載置され、これにより回転軸SHは支持台SP1,SP2により2点で水平に回転可能に支持されている。
【0046】
回転軸SHの外周には、2つの多面鏡CP1、CP2が同軸に固定されている。尚、切欠VL1、VL2の間隔及び位置は、2つの多面鏡CP1、CP2の固定点における回転軸SHの重力による傾斜角が等しくなる(つまり2つの固定点を結ぶと水平線になる)ように、回転軸の支持位置の外側に重りを付けることも可能である。
【0047】
更にベースBS上には、センサホルダHLが多面鏡CP1、CP2に沿って保持されている。センサホルダHLは、2つの角度センサSS1、SS2を保持している。2つの角度センサSS1、SS2は、それぞれ2つの多面鏡CP1、CP2の外周に対向するように配置されている。図示していないが、回転軸SHの回転角位置を検出する回転角センサを設けても良い。角度センサSS1、SS2の感度軸を鉛直方向とするには、センサホルダHLを回転軸真上に移動してセンサ軸を鉛直方向に向ければよい。角度センサSS1、SS2は、例えば光束を被測定面に出射して、その反射光を入射することで、出射光と反射光のズレから被測定面の角度を検出できる光学式のものであると良いが、それに限られない。
【0048】
本実施の形態によれば、図3を参照して説明した校正方法にて、2つの角度センサSS1、SS2について相互のゼロ点の差の校正を行える。
【0049】
回転軸SHに回転を与えるための手段は手動でも、電動モータでも有効である。電動の場合連続的に回転する方式でも、所定の回転角度間隔でステップ上に回転と停止を繰り返す方式でもよい。前者ではデータ収録のタイミングを決めるトリガ信号を別途発生する必要があるが、後者では静止時にサンプリングをするようにプログラムされていればよい。
【0050】
なお、多面鏡2個の代わりに必要な長さの多面鏡や、2つ以上の円板を用いて軸方向の所定の2か所の相互の軸方向平行度差を校正して用いてもよいのは言うまでもない。多面鏡は2つ以上あれば足りる。更に、回転軸上に多面鏡を軸線方向に移動可能に取り付けて、隣接する多面鏡の間にスペーサを挿入し、多面鏡の間隔を任意に設定するようにしても良い。
【0051】
図6は、このようにして校正された角度センサSS1、SS2を用いた真直形状測定装置を示す図である。図6に示すように、コラムCLに対して直進する移動ステージSTXに被測定試料SPを設置し、同時に、この被測定試料SPの水平面内にある面に、校正した角度2点法プローブ(センサホルダHLによりコラムCLに対して並列に取り付けられた2本のセンサSS1、SS2)を対向させて、被測定試料SPの表面形状を、移動ステージSTXを移動させながら角度測定を行う。センサSS1、SS2は上述した方法で構成されているので、被測定試料SPの表面形状と、移動ステージSTXの移動の際のピッチングの移動の際のピッチングを精度良く測定することができる。なお、2つのセンサSS1、SS2がx軸回りの微小傾斜角を検出する機能を有するときは、運動のローリングをも測定することができ、又ヨーイングも測定できるから結果として被測定試料SPの真直形状を測定できることとなる。
【符号の説明】
【0052】
BS ベース
CL コラム
CP1、CP2 多面鏡
SH センサホルダ
MSH 可動センサホルダ
SC 直定規
SH 回転軸
SP1,SP2 支持台
SS1〜SS2 角度センサ
STX 移動ステージ
VL1、VL2 切欠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
校正対象となる2つの角度センサを保持するベースと、
中心を挟んで対向する鏡面上の2点の軸方向傾斜角の和(軸方向平行度)が所定の回転角位置で校正されている2つ以上の多面鏡と、
前記ベースに対して回転可能に支持され、所望の間隔で前記多面鏡を取り付けた回転軸と、を有し、
校正対象となる2つの角度センサを前記多面鏡に対して相対的に固定し、前記所定の回転角位置において前記2つ以上の多面鏡の鏡面の軸方向傾斜角を、各角度センサを用いて測定して第1の測定値を求め、且つ前記所定の回転角位置から180度回転させた回転角位置において前記2つ以上の多面鏡の鏡面の軸方向傾斜角を、各角度センサを用いて測定して第2の測定値を求め、前記第1の測定値と前記第2の測定値とに基づいて、前記角度センサの相互のゼロ点位置を校正できることを特徴とする校正装置。
【請求項2】
前記2つ以上の多面鏡の鏡面の前記対向する2点での軸方向傾斜角の和(軸方向平行度)の一周に渡る平均値の相互差が校正されていて、前記2つのセンサの相互のゼロ点位置を前記傾斜角の和の平均直を用いて校正することを特徴とする請求項1に記載の校正装置
【請求項3】
前記回転軸は2点で支持されており、重力により前記回転軸のたわみが生じたときに、たわみによる軸方向傾斜角が等しくなる2か所に前記多面鏡をそれぞれ取り付けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の校正装置。
【請求項4】
校正対象となる2つの角度センサを感度軸が水平面内にあるように前記多面鏡に対して相対的に固定し、前記所定の回転角位置において前記2つ以上の多面鏡の鏡面の軸方向傾斜角を、各角度センサを用いて測定して第1の測定値を求め、且つ前記所定の回転角位置に対して180度回転させた前記2つ以上の多面鏡の鏡面の軸方向傾斜角を、各角度センサを用いて測定して第2の測定値を求め、前記第1の測定値と前記第2の測定値とに基づいて、角度センサの相互のゼロ点のズレを求め、
更に校正対象となる2つの角度センサを感度軸が鉛直方向に向くように前記多面鏡に対して相対的に固定し、前記所定の回転角位置において前記2つ以上の多面鏡の鏡面の軸方向傾斜角を、各角度センサを用いて測定して第3の測定値を求め、且つ前記所定の回転角位置に対して180度回転させた前記2つ以上の多面鏡の鏡面の軸方向傾斜角を、各角度センサを用いて測定して第4の測定値を求め、前記第3の測定値と前記第4の測定値と、前記2の角度センサ相互のゼロ点のズレとに基づいて、前記回転軸の撓みによる前記多面鏡の軸方向傾斜角を求めることができることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の校正装置。
【請求項5】
前記角度センサが、前記多面鏡の軸方向の傾斜に加えて、円周方向の傾斜角を検出できる2次元角度センサであって、前記軸方向の傾斜角のゼロ点を求める操作の際に、同時に円周方向の角度を検出して、予め校正されているそれぞれの円周方向傾斜角の角度センサ出力の一回転分の平均値の差から、円周方向傾斜角の角度センサのゼロ点のズレを校正することができる請求項4に記載の校正装置。
【請求項6】
前記角度センサが、前記多面鏡の軸方向の傾斜に加えて、円周方向の傾斜角を検出できる2次元角度センサであって、この円周方向の角度から、前記所定の回転角位置を定めることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の校正装置。
【請求項7】
前記2つ以上の多面鏡の代わりに2つ以上の円板を用いることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の校正装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の校正装置によって構成された角度センサを用いて、真直形状およびピッチングとヨーイングとローリングの内いずれか一つ以上の真直運動姿勢誤差を測定する測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−169815(P2011−169815A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35065(P2010−35065)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(597122518)
【出願人】(508364369)
【出願人】(591238981)
【Fターム(参考)】