説明

核医学診断装置およびエミッションデータの吸収補正方法

【課題】外部線源やX線撮像系を備えることなく、エミッションデータを適切に吸収補正することができる核医学診断装置およびエミッションデータの吸収補正方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ガントリ3の内周面と底板11とで囲まれる中空部内と被写体mとの隙間に水が満たされるように構成されている。したがって、検出ユニット5から収集されるエミッションデータは、被写体mから放出され、水を透過したガンマ線に応じたものである。また、補正係数算出部27は、ガントリ3の中空部(被写体mおよび水)の吸収係数を推定した推定吸収係数μと、検出ユニット5とガントリ3との相対的な位置情報とから、中空部Aに応じた補正係数を算出する。そして、吸収補正部23は、中空部に応じたエミッションデータについて、中空部に応じた補正係数に基づいて吸収補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被写体から放出される放射線を検出する核医学診断装置に係り、特に、収集されたエミッションデータを吸収補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
核医学診断装置は、放射性薬剤が投与された被写体から放出される放射線を検出する検出ユニットと、検出ユニットから収集されたエミッションデータについて補正係数を用いて吸収補正する吸収補正部と、を備えている。また、断層像を取得する装置にあっては、収補正されたエミッションデータに基づいて断層像を生成する再構成処理部をさらに備えている。ここで、吸収補正は、定量的な断層像を得るために不可欠な処理である。
【0003】
人体または動物の全体を被写体とする場合は、軟組織、骨部、肺野などのように不均一な吸収体が混在する。従来の核医学診断装置においても、外部線源を備えた全身用PET(Positron Emission Tomography)装置や、PETCT装置によれば、このような被写体に応じた補正係数を適切に求めることができる。具体的には、全身用PET装置は、外部線源から放射された放射線を検出して得られるトランスミッションデータおよびブランクデータから補正係数を取得するように構成されている。このとき、補正係数を直接求める手法のほかに、先ず吸収係数マップを作成し、この吸収係数マップから補正係数を取得する手法がある。また、PETCT装置は、X線撮像系によって得られるCT画像から、CT値と吸収係数の対応関係を考慮して吸収係数マップを作成し、この吸収係数マップから補正係数を取得するように構成されている。
【0004】
近年、被写体として人体または動物の一部(例えば、脳、乳房)、あるいは小動物を対象とした核医学診断装置の需要が高まっている。このような装置では、小さい被写体に対してより高い分解能を実現するため、検出ユニットは被写体に近い位置に配置できるようにコンパクトに設計される。ただし、検出ユニットの小型化に伴って、回転機構や遮蔽機構を伴う外部線源やX線撮像系を検出ユニットに付設することは困難になる。
【0005】
しかしながら、例えば脳のように被写体の吸収係数が略均一と仮定できる場合には、エミッションデータからスライス面における被写体の輪郭を求めることが可能である。この手法を用いれば、エミッションデータから吸収係数マップを作成し、補正係数を取得することができる(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】北村圭司、外4名、“(8)jPET−D4における各種データ補正法の開発”、平成17年度 次世代PET装置開発研究報告書、独立行政法人放射線医学総合研究所、平成18年3月1日、p.47−51
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置において、エミッションデータから求めた被写体の輪郭の精度は、エミッションデータ(カウント値)に依存して影響を受けることがある。具体的には、エミッションデータ(カウント値)をある程度収集しなければ、輪郭の誤差を抑えることができない。そのため、長時間にわたって放射線を検出する必要があったり、求めた輪郭をその都度確認する必要がある。このように、外部線源やX線撮像系を備えておらず、トランスミッションデータ等やCT画像を取得できない従来の核医学診断装置では、適切な補正係数を求めることができず、エミッションデータを好適に吸収補正することができないという不都合がある。
【0007】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、外部線源やX線撮像系を備えることなく、エミッションデータを適切に吸収補正することができる核医学診断装置およびエミッションデータの吸収補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、被写体から放出された放射線を検出する核医学診断装置において、被写体から放出された放射線を検出する検出手段と、前記検出手段の内側に形成される所定領域の内側と被写体との間に被写体と略等しい吸収係数を有する放射線吸収材を満たす供給手段と、前記検出手段および前記所定領域の相対的な位置情報と、被写体および前記放射線吸収材の各吸収係数に応じた推定吸収係数とから与えられる補正係数に基づいて、前記検出手段から収集されたエミッションデータを吸収補正する吸収補正手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、所定領域内に放射性吸収材を満たす給手段を備えることで、検出手段から収集されるエミッションデータは、被写体から放出され、放射線吸収材を透過した放射線を検出して得られたものとすることができる。このようなエミッションデータは被写体を含む所定領域に応じたものである。また、放射性吸収材は被写体と略等しい吸収係数を有するので、所定領域の吸収係数は全体にわたって推定吸収係数で略均一と推定することができる。この推定吸収係数と、検出手段および所定領域の相対的な位置情報とから、所定領域に応じた補正係数が与えられる。したがって、吸収補正手段は、所定領域に応じたエミッションデータについて、所定領域に応じた補正係数に基づいて好適に吸収補正することができる。
【0010】
ここで、「吸収係数が略等しい」とは、所望の吸収補正をすることができる程度、言い換えれば、所望の補正係数を算出できる範囲内であればよい。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、被写体から放出された放射線を検出する核医学診断装置において、被写体から放出された放射線を検出する検出手段と、前記検出手段の内側に形成される所定領域の内側と被写体との間に満たされた、被写体と略等しい吸収係数を有する放射線吸収材と、前記検出手段および前記所定領域の相対的な位置情報と、被写体および前記放射線吸収材の各吸収係数に応じた推定吸収係数とから与えられる補正係数に基づいて、前記検出手段から収集されたエミッションデータを吸収補正する吸収補正手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
[作用・効果]請求項2に記載の発明によれば、所定領域内に放射性吸収材を備えることで、検出手段から収集されるエミッションデータは、被写体から放出され、放射線吸収材を透過した放射線を検出して得られたものであり、被写体を含む所定領域に応じたものである。また、放射性吸収材は被写体と略等しい吸収係数を有するので、所定領域の吸収係数は全体にわたって推定吸収係数で略均一と推定することができる。この推定吸収係数と、検出手段および所定領域の相対的な位置情報とから、所定領域に応じた補正係数が与えられる。したがって、吸収補正手段は、所定領域に応じたエミッションデータについて、所定領域に応じた補正係数に基づいて好適に吸収補正することができる。
【0013】
上述した発明において、さらに、前記放射線吸収材を前記所定領域に供給する供給手段を備えていることが好ましい(請求項3)。供給手段によって、所定領域内を放射線吸収材で好適に満たすことができる。
【0014】
上述した発明において、前記所定領域は、前記検出手段の内側面で区画されることが好ましい(請求項4)。所定領域の外形を検出手段の内周面と一致させることで、位置情報を簡略化できる。また、装置構成も簡略化できる。
【0015】
上述した発明において、さらに、前記検出手段の内側に配置され、前記放射線吸収材および被写体を収容する収容部材を備え、前記所定領域は前記収容部材で区画されることが好ましい(請求項5)。所定領域を形成する収容部材を備えることで、放射線吸収材を所定領域に好適に満たすことができる。
【0016】
上述した発明において、前記放射線吸収材は、水または肉の少なくともいずれかを含むことが好ましい(請求項6)。水または肉のいずれも被写体の吸収係数と略等しく、好適な放射線吸収材とすることができる。
【0017】
上述した発明において、前記位置情報と前記推定吸収係数とに基づいて前記補正係数を算出する算出手段を備え、前記吸収補正手段は前記算出手段によって得られた補正係数を用いて処理することが好ましい(請求項7)。算出手段を備えることで、好適に補正係数を与えることができる。
【0018】
上述した発明において、前記補正係数を記憶する記憶手段を備え、前記吸収補正手段は前記記憶手段から前記補正係数を読み出すことが好ましい(請求項8)。記憶手段を備えることで、好適に補正係数を与えることができる。
【0019】
上述した発明において、被写体に対する前記放射線吸収材の吸収係数の差は、被写体の吸収係数の5%以内であることが好ましい(請求項9)。請求項1と請求項2に記載する「被写体と略等しい吸収係数」として、被写体と放射線吸収材との各吸収係数の差が被写体の吸収係数の5%以下であれば、補正係数を適切に与えることができる。
【0020】
上述した発明において、被写体に対する前記放射線吸収材の吸収係数の差は、トランスミッションデータによって被写体の吸収係数を推定した場合に生じる誤差と同程度であることが好ましい(請求項10)。請求項1と請求項2に記載する「被写体と略等しい吸収係数」として、被写体と放射線吸収材との各吸収係数の差が、仮にトランスミッションデータによって推定したならば生じるであろう誤差の範囲内であれば、補正係数を適切に与えることができる。
【0021】
また、請求項11に記載の発明は、被写体から放出された放射線を検出する核医学診断装置において、被写体の周囲に設けられ、被写体から放出された放射線を検出する複数個の検出器ブロックと、前記検出器ブロックを被写体に当接する位置まで移動させる移動手段と、前記検出器ブロックのそれぞれの位置を計測する計測手段と、前記計測手段から得られた計測結果と、被写体の吸収係数に応じた推定吸収係数とに基づいて補正係数を算出する算出手段と、前記算出手段から得られた補正係数を用いて、前記検出手段から収集されたエミッションデータを吸収補正する吸収補正手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0022】
[作用・効果]請求項11に記載の発明によれば、検出器ブロックから収集されるエミッションデータは、被写体から放出された放射線を検出して得られたものであり、被写体に応じたものである。また、移動手段と計測手段を備え、計測手段の計測結果から被写体の形状を取得することができる。このような計測結果と被写体の吸収係数を推定した推定吸収係数とから、被写体に応じた補正係数が与えられる。したがって、吸収補正手段は、被写体に応じたエミッションデータについて、被写体に応じた補正係数に基づいて好適に吸収補正することができる。
【0023】
また、請求項12に記載の発明は、被写体から放出される放射線を検出する検出手段から収集されたエミッションデータを吸収補正するエミッションデータの吸収補正方法において、前記検出手段の内側に形成される所定領域の内側と被写体との間に満たされた放射線吸収材を透過した放射線を検出する前記検出手段から収集されたエミッションデータに対して、前記検出手段および前記所定領域の相対的な位置情報と、被写体および前記放射線吸収材の各吸収係数に応じた推定吸収係数とから与えられる補正係数に基づいて吸収補正することを特徴とするものである。
【0024】
[作用・効果]請求項12に記載の発明によれば、収集されたエミッションデータは、被写体から放出され、放射線吸収材を透過した放射線を検出して得られたものであり、被写体を含む所定領域に応じたものである。また、放射性吸収材は被写体と略等しい吸収係数を有するので、所定領域内の吸収係数は全体にわたって推定吸収係数で略均一と推定することができる。この推定吸収係数と、検出手段および所定領域の相対的な位置情報とから、所定領域に応じた補正係数が与えられる。このような所定領域に応じた補正係数に基づいて、上述のエミッションデータを吸収補正するので、エミッションデータを好適に吸収補正することができる。
【0025】
なお、本明細書は、次のような核医学診断装置に係る発明も開示している。
【0026】
(1)請求項1から請求項10のいずれかに記載の核医学診断装置において、前記放射線吸収材の温度を調節する温調手段を備えていることを特徴とする核医学診断装置。
【0027】
前記(1)に記載の発明によれば、被写体の快適性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明に係る核医学診断装置によれば、所定領域内に放射性吸収材を満たす供給する供給手段を備えることで、検出手段から収集されるエミッションデータは、被写体から放出され、放射線吸収材を透過した放射線を検出して得られたものとすることができ、このようなエミッションデータは被写体を含む所定領域に応じたものである。また、放射性吸収材は被写体と略等しい吸収係数を有するので、所定領域の吸収係数は全体にわたって推定吸収係数で略均一と推定することができる。この推定吸収係数と、検出手段および所定領域の相対的な位置情報とから、所定領域に応じた補正係数が与えられる。したがって、吸収補正手段は、所定領域に応じたエミッションデータについて、所定領域に応じた補正係数に基づいて好適に吸収補正することができる。
【実施例1】
【0029】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係るPET(Positron Emission Tomography)装置の全体構成を示すブロック図であり、図2はガントリの水平断面図である。なお、本実施例では、核医学診断装置として、被検体(人体)Mの乳房を被写体mとする用途のPET装置を例に採って説明する。
【0030】
本実施例に係るPET装置は、被検体Mをうつ伏せの状態で載置する天板1を備えている。天板1には開口が形成されており、この開口の下には、ガントリ3が設けられている。ガントリ3の中央には、その内周面で区画される中空部Aが形成されている。説明の便宜上、以下では中空部Aの中心軸を鉛直軸gと呼ぶ。ただし、中空部Aの中心軸は鉛直方向に限定されず、その向きは装置構成によって適宜に選択変更される。なお、実施例1では、図2に示すように、天板1に対して単一のガントリ3を設けているが、これに限られることなく、複数個のガントリ3を配備するように構成してもよい。中空部Aは、この発明における所定領域に相当する。
【0031】
ガントリ3には、検出ユニット5が設けられている。検出ユニット5は、複数個の検出器ブロック7が鉛直軸gを中心とした円環状に配列され、かつ、鉛直軸g方向に多段に配列されて構成されている。図1では、検出器ブロック7を3段重ねた様子を模式的に示している。各検出器ブロック7は、ガンマ線を光に変換するシンチレータと、光を電気信号に変換する光電子増倍管とを備えている(いずれも図示省略)。そして、このように構成される検出器ブロック7においてガンマ線を検出した位置を弁別できる最小区画を検出器素子dと呼ぶ(後述する図3参照)。検出ユニット5は、この発明における検出手段に相当する。
【0032】
ガントリ3の下部には、中空部Aの底面を閉塞する底板11が設けられている。このような構成により、ガントリ3の内周面Sと底板11が、中空部Aを内部空間とする収容部材を構成している。
【0033】
また、この底板11には供給配管13の一端が接続されており、供給配管13はガントリ3の中空部Aと連通している。供給配管13の他端側は水供給源15に接続されている。また、供給配管13には開閉弁17が設けられている。この開閉弁17は図示省略の供給制御部によって操作される。これにより、中空部A内に水が満たされるように構成されている。なお、水の吸収係数は、0.095cm−1であり、被写体mの吸収係数と略等しい。供給配管13と開閉弁17は、この発明における供給手段に相当する。また、中空部A内に満たされた水は、この発明における放射線吸収材に相当する。
【0034】
各検出器ブロック7には収集部21が接続されている。収集部21の出力側には、吸収補正部23が接続され、吸収補正部23の出力側に再構成部25が接続されている。吸収補正部23の入力側には、補正係数算出部27も接続されている。再構成部25にはモニタ31が接続されている。
【0035】
収集部21は、グルーピング回路や同時係数回路や収集メモリ等を備えて、2つの検出器素子dからの電気信号が同時計数と判定されると、この事象をエミッションデータとして収集する。
【0036】
補正係数算出部27は、検出ユニット5と中空部Aの相対的な位置情報と、推定吸収係数μとが予め設定されている。具体的には、位置情報は、各検出器素子dとガントリ3の内周面Sとの相対的な位置関係に関する情報である。また、推定吸収係数μは、被写体mおよび水の各吸収係数を考慮した値であり、定数である。そして、任意の2つの検出器素子dを結ぶ仮想的な直線(以下、検出素子対LOR(Line Of Response)と呼ぶ)がガントリ3の中空部Aを通る距離Lを位置情報に基づいて算出する。次に、算出した距離Lと予め設定されている推定吸収係数μとから補正係数を算出する。
【0037】
吸収補正部23は算出された補正係数を用いてエミッションデータを吸収補正する。再構成部25は、補正されたエミッションデータに基づいて再構成処理を行い、断層像を作成する。作成された断層像は適宜、モニタ31に出力される。
【0038】
これら収集部21と吸収補正部23と再構成部25と補正係数算出部27とは、所定のプログラムを読み出して実行する中央演算処理装置(CPU)や、各種情報を記憶するRAM(Random-Access Memory)や固定ディスク等の記憶媒体等で実現される。
【0039】
次に、実施例1に係るPET装置の動作について説明する。
【0040】
被検体Mを天板1にうつ伏せの状態で載置するとともに、被写体(乳房)mをガントリ3の中空部Aに収める。続いて、図示省略の供給制御部の操作により、開閉弁17が開放し、ガントリ3の中空部Aに水を供給する。中空部A内と被写体mとの間に水が満たされると、開閉弁17を閉止し、水の供給を停止する。
【0041】
次に、被検体Mに陽電子放出核種で標識された放射性薬剤を投与する。被写体m内で陽電子放出核種から放出された陽電子が消滅し、2本のガンマ線が互いに180度反対方向に放出される。放出されたガンマ線の一部は、被写体mおよび中空部A内の水を透過して検出ユニット5に入射する。検出ユニット5は、入射されたガンマ線を電気信号に変換して出力する。
【0042】
収集部21は、グルーピング回路を経由させて電気信号からガンマ線が入射した位置(検出器素子d)を弁別するとともに、同時計数回路によって異なる2つの位置(検出器素子d)からの信号が同時計数であるか否かを判定する。同時計数であると判定されると、収集メモリにおいて、2つの検出器素子dに応じた検出素子対LORに対応するアドレスのエミッションデータ(カウント値)に1を加算する。
【0043】
このように収集部21によって収集されたエミッションデータは、ノーマライズ処理(図示省略)されてから、吸収補正部23に出力される。このノーマライズ処理によって、検出器素子d間の利得や立体角などの差異を考慮した検出器素子dの感度補正が行われる。
【0044】
補正係数算出部27は、予め設定されている検出ユニット5とガントリ3との相対的な位置情報に基づいて、各検出器素子対LORが中空部Aを通過する距離Lを算出する。そして、算出した距離Lと予め設定される推定吸収係数μとから補正係数を算出する。
【0045】
図3を参照して説明する。図3は、実施例1に係る吸収係数マップの模式図である。図3に示される吸収係数マップは、中空部Aに応じたものである。すなわち、吸収係数マップの輪郭Eは、中空部Aの輪郭(ガントリ3の内周面Sを所定のスライス面で切り取った形状)に相当し、ガント3の内周面Sの位置情報から与えられる。そして、この輪郭Eの内側の各位置には推定吸収係数μが一律に対応付けられている。また、各検出器素子dの位置も、各検出器素子dとガントリ3の内周面Sとの相対的な位置関係に関する情報から与えられる。
【0046】
このような吸収係数マップから明らかなように、任意の検出器素子対LORと輪郭Eとの相対的な位置関係がわかり、輪郭Eと検出器素子対LORとの交点Pおよび交点Qの位置も求めることができる。補正係数算出部27は、各検出器素子対LORについて交点Pおよび交点Qの位置から距離Lを算出し、算出した距離Lを次に示す式(1)に代入することで、各検出器素子対LORに応じた補正係数を算出する。なお、式(1)において、Kは補正係数である。
【0047】
K=1/exp(−μ・L) ………(1)
【0048】
なお、上述した視覚的な吸収係数マップを作成しなくても、補正係数を算出することはできる。したがって、補正係数算出部27において吸収係数マップを作成するか否かは、適宜に設計される事項である。補正係数算出部27は、この発明における算出手段に相当する。
【0049】
吸収補正部23は、収集部21によって収集されたエミッションデータに、補正係数算出部27から算出された補正係数を乗じて、エミッションデータを吸収補正する。
【0050】
再構成部25は、吸収補正されたエミッションデータに基づいて再構成処理を行い、断層像を生成する。そして、適宜に生成された断層像をモニタ31に出力する。再構成処理としては、フィルタ逆投影法(filtered back projection)や逐次近似法(iterative approximation method)や3Dフーリエ変換法、3D−FBP法、リビニング法(rebinning)、3D再投影法、FORE法(Fourier rebinning)など、既存の手法が適宜に採用される。
【0051】
このように、実施例1に係るPET装置によれば、ガントリ3の内周面Sと底板11とで囲まれる中空部A内と被写体mとの隙間に水を満たすように構成されているので、検出ユニット5から収集されるエミッションデータは、被写体mから放出され、水を透過したガンマ線を検出して得られたものであり、被写体mと水を含む中空部Aに応じたものである。このように、中空部A内に水を満たすことで、被写体mとは別個に既知の形状の測定系を作り出している。また、水は被写体mと略等しい吸収係数を有するので、中空部Aの吸収係数は一律に推定吸収係数μであると推定できる。したがって、補正係数算出部27は、この推定吸収係数μと、検出ユニット5とガントリ3との相対的な位置情報とから、中空部Aに応じた補正係数を算出できる。したがって、吸収補正部23は、中空部Aに応じたエミッションデータについて、中空部Aに応じた補正係数に基づいて好適に吸収補正することができる。
【0052】
また、輪郭の抽出等は行わず、既知の距離と吸収係数を用いた計算のみによって補正係数を算出するので、エミッションデータから輪郭を抽出して補正係数を算出する場合に比べて、補正係数の精度が安定する。
【0053】
また、供給配管13および開閉弁17を備えることで、好適に中空部A内に水を満たすことができる。
【0054】
また、被写体m自体も軟組織のみの乳房であるので、中空部Aの吸収係数を一律に推定吸収係数μとしても、十分精度よく推定することができる。
【実施例2】
【0055】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
図4は、実施例2に係るPET装置の全体構成を示すブロック図であり、図5は実施例2に対応した吸収係数マップの模式図である。なお、実施例1と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0056】
実施例2では、実施例1で説明したガントリ3を省略し、検出ユニット5を露出させている。検出ユニット5は、実施例1と同様に複数個の検出器ブロック7が鉛直軸gを中心とした円環状に配列され、かつ、鉛直軸g方向に多段(4段)に配列されている。これにより、検出ユニット5の内側面(内周面)で区画される中空部Bが形成される。また、底板11は検出ユニット5の下部に設置され、中空部Bの底面を閉塞する。中空部Bは、この発明における所定領域に相当する。
【0057】
また、実施例2では、実施例1で説明した供給配管13と水供給源15と開閉弁17とを備えていない。そのかわり、中空部Bの内側と被写体mとの間には肉片41が詰められている。肉片41としては、豚肉や牛肉などの獣肉、またはこれを主成分とした粒状物やゲル状物が例示される。肉片41は、被写体mの隙間を埋めることができる程度に、比較的小さい大きさを分割されており、各肉片41はそれぞれ弾力性を有して容易に変形可能である。また、肉片41の吸収係数は被写体mの吸収係数と略等しい。ここで、「略」とは、被写体mに対する肉片41の吸収係数の差が、被写体mの吸収係数の5%以内であることが好ましい。さらに望ましくは3%以内である。別の観点からみると、肉片41と被写体mとの各吸収係数の差が、トランスミッションデータによって被写体mの吸収係数を推定した場合に生じる誤差と同程度であることが好ましい。この場合、別途、被写体mに対して外部線源を用いてガンマ線を照射してトランスミッションデータを取得し、このトランスミッションデータから推定された吸収係数に含まれる誤差を算出して、被写体mと肉片41との各吸収係数の差が算出した誤差と同程度であるような肉片41を適宜に選択決定することによって、実現できる。肉片41は、この発明における放射線吸収部材に相当する。
【0058】
補正係数算出部27は、検出ユニット5と所定領域Bとの相対的な位置情報と、推定吸収係数μとが予め設定されている。本実施例2では、検出ユニット5の内側面(内周面)が中空部Bの位置を規定しているので、検出ユニット5と所定領域Bとの相対的な位置情報は、検出ユニット5の位置情報(各検出器素子dの位置に関する情報)で足りる。また、推定吸収係数μは、被写体mと肉片41との各吸収係数を考慮した値であり、定数である。そして、任意の検出素子対LOR(Line Of Response)が、中空部Bを通る距離Lを位置情報に基づいて算出する。次に、算出した距離Lと予め設定される推定吸収係数μとから補正係数を算出する。
【0059】
次に、実施例2に係るPET装置の動作について説明する。なお、実施例1と同じ動作については簡略して説明する。
【0060】
被写体(乳房)mを検出ユニット5の内周面で区画される中空部Bに収めつつ、肉片41を中空部B内と被写体mとの間に埋める。
【0061】
次に、被検体Mに放射性薬剤を投与する。検出ユニット5は、被写体mから放射され、肉片41を透過したガンマ線を検出する。収集部21は、検出ユニット5からエミッションデータを収集する。
【0062】
補正係数算出部27は、予め設定されている検出ユニット5の位置情報に基づいて、各検出器素子対LORが中空部Bを通過する距離Lを算出する。そして、算出した距離Lと予め設定される推定吸収係数μとから補正係数を算出する。
【0063】
図5を参照して説明する。図5は、実施例2に係る吸収係数マップの模式図である。図5に示される吸収係数マップは、中空部Bに応じたものである。すなわち、吸収係数マップの輪郭Eは、中空部Bの輪郭に相当し、これは検出ユニット5の位置情報のみから与えられる。そして、この輪郭Eの内側領域の各位置には推定吸収係数μが一律に対応付けられている。
【0064】
このような吸収係数マップから明らかなように、任意の検出器素子対LORと輪郭Eとの交点Pおよび交点Qは、検出器素子dの位置そのものである。補正係数算出部27は、各検出器素子対LORについて交点Pおよび交点Qの位置から距離Lを算出し、上述した式(1)を用いて各検出器素子対LORに応じた補正係数を算出する。
【0065】
吸収補正部23は、補正係数算出部27から算出された補正係数を用いてエミッションデータを吸収補正する。再構成処理部25は、吸収補正されたエミッションデータに基づいて断層像を生成する。
【0066】
このように、実施例2に係るPET装置によれば、中空部B内と被写体mとの間に肉片41を満たすように構成されているので、検出ユニット5から収集されるエミッションデータは、中空部Bに応じたものである。また、肉片41は被写体mと略等しい吸収係数を有するので、中空部Bの吸収係数は一律に推定吸収係数μであると推定できる。したがって、補正係数算出部27は、この推定吸収係数μと、検出ユニット5の位置情報から、中空部Bに応じた補正係数を算出できる。したがって、吸収補正部23は、中空部Bに応じたエミッションデータについて、中空部Bに応じた補正係数に基づいて好適に吸収補正することができる。
【0067】
また、検出ユニット5の内側面(内周面)が中空部Bの輪郭となるように構成されているので、補正係数算出部27には、検出ユニット5のみの位置情報を有していればよく、また、距離Lを算出する処理も簡略化される。
【0068】
また、肉片41を中空部B内に埋めるように構成することで、実施例1で説明した供給配管13等を省略することができ、PET装置の構成を簡略化することができる。また、肉片41は被写体mと略等しい吸収係数を有するので、補正係数を好適に得ることができる。
【実施例3】
【0069】
次に、図面を参照してこの発明の実施例3を説明する。
図6は、実施例3に係るPET装置の全体構成を示すブロック図であり、図7は実施例3に対応した吸収係数マップの模式図である。なお、実施例1と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0070】
実施例3では、実施例1で説明したガントリ3を省略し、検出ユニット5を露出させている。検出ユニット5は、実施例1と同様に複数個の検出器ブロック7が鉛直軸gを中心とした円環状に配列され、かつ、鉛直軸g方向に多段(4段)に配列されている。さらに、各検出器ブロック7を独立に、鉛直軸gに向かって水平方向に進退させる移動機構45が配備されている。この移動機構45は、たとえばシリンダー機構が例示される。移動制御部47は、移動機構45を操作して各検出器ブロック7の移動制御を行う。また、移動機構45に対する操作量を、各検出器ブロック7の位置を計測した計測結果として補正係数算出部27に出力する。移動機構45と移動制御手段47は、それぞれこの発明における移動手段と移動制御手段に相当する。また、領域Cは、この発明における所定領域に相当する。
【0071】
補正係数算出部27には、推定吸収係数μが予め設定されている。この推定吸収係数μは、被写体mの吸収係数のみを考慮した値であり、定数である。また、移動制御部47から得た操作量に基づいて、検出ユニット5の位置情報を算出する。そして、算出された位置情報に基づいて、任意の検出素子対LOR(Line Of Response)が被写体mを通る距離Lを算出する。次に、算出した距離Lと予め設定される推定吸収係数μとから補正係数を算出する。
【0072】
次に、実施例3に係るPET装置の動作について説明する。なお、実施例1と同じ動作については簡略して説明する。
【0073】
被写体(乳房)mをガントリ3の中空部に収める。続いて、移動制御部47は、各検出器ブロック7がそれぞれ被写体mに当接するまで、軸gに向けて前進させる。各検出器ブロック7の位置が決められると、移動制御部47は移動機構45に対する操作量を補正係数算出部27に出力する。
【0074】
次に、被検体Mに放射性薬剤を投与する。検出ユニット5は、被写体mから放射されたガンマ線を検出する。収集部21は、検出ユニット5からエミッションデータを収集する。
【0075】
補正係数算出部27は、移動機構45に対する操作量に基づいて、検出ユニット5の位置情報を算出する。そして、各検出器素子対LORが被写体mを通る距離Lを算出する。そして、算出した距離Lと予め設定される推定吸収係数μとから補正係数を算出する。
【0076】
図7を参照して説明する。図7は、実施例3に係る吸収係数マップの模式図である。図7に示される吸収係数マップは、被写体mに応じたものである。すなわち、吸収係数マップの輪郭Eは被写体mの輪郭に相当し、各検出器ブロック7の位置情報によって与えられる。なお、図7では、輪郭Eが検出器ブロック7間で途切れているが、適宜に輪郭Eを延長して互いに連結するような処理を行ってもよい。そして、この輪郭Eの内側領域の各位置には推定吸収係数μが一律に対応付けられている。
【0077】
このような吸収係数マップから明らかなように、任意の検出器素子対LORと輪郭Eとの交点Pおよび交点Qは、検出器素子dの位置そのものである。補正係数算出部27は、各検出器素子対LORについて交点Pおよび交点Qの位置から距離Lを算出し、上述した式(1)を用いて各検出器素子対LORに応じた補正係数を算出する。
【0078】
図8、図9を参照してより詳細に説明する。図8は、実施例3に係る検出器ブロックの斜視図であり、図9は、検出器素子対と機械的原点との位置関係を模式的に示す図である。点OMはPET装置の機械的原点であり、既知である。また、点OAと点OBは、それぞれ検出器ブロック7の中心座標であり、点Pと点Qはそれぞれ点OA、点OBを中心とする検出器ブロック7内の検出器素子dの点座標である。ここで、機械的原点OMから検出器ブロック7の中心座標OA、OBに至るベクトルVA,VBは上述の移動制御部47から得られる操作量に基づいて求められる。また、検出器ブロック7の中心座標OA、OBから検出器素子dの点座標P、Qに至るベクトルWA,WBは検出器ブロック7における検出器素子dのアドレス(座標)に基づいて求められる。
【0079】
すなわち、機械的原点OMから各検出器素子dの点座標P、Qに至るベクトルuA,uBも次の式(2)および式(3)によって求められる。
uA=VA+WA ………(2)
uB=VB+WB ………(3)
【0080】
また、距離Lは算出された点座標P、Qに基づいて求められる。
【0081】
吸収補正部23は、補正係数算出部27から算出された補正係数を用いてエミッションデータを吸収補正する。再構成処理部25は、吸収補正されたエミッションデータに基づいて断層像を生成する。
【0082】
ここで、同時計数と判定されるごとに検出素子対LORが求められる場合については、逐次近似型のリストモード再構成アルゴリズムが適用される〔例えばJ Reader et al 1998 Phys.Med Bial.43 835-846 (非特許文献)を参照〕。このリストモード再構成アルゴリズムの画像の更新式は(4)式の通りである。(4)式の更新式が繰り返されることで断層像が求まる。
【0083】
【数1】

【0084】
ここで、fk j はk回目の反復における画素jの画素値、aijは画素jから出たγ線が検出素子対LORiに検出される確率、Mは測定されたイベント(同時計数と判定される事象)の数、Iは本撮像条件(検出器配置)における全LORの数である。なお、実施例3の装置に適用される画像再構成アルゴリズムで用いられる更新式は(4)式に限られるものではない。
【0085】
このように、実施例3に係るPET装置によれば、検出器ブロック7から収集されるエミッションデータは、被写体mに応じたものである。また、移動機構45を備えることで、検出器ブロック7を被写体mに当接するように位置決めすることで、被写体mの外形を取得することができる。補正係数算出部27は、取得された被写体mの外形と予め設定されている推定吸収係数μとから、被写体mに応じた補正係数を算出する。したがって、吸収補正部23は、被写体mに応じたエミッションデータについて、被写体mに応じた補正係数に基づいて好適に吸収補正することができる。
【0086】
また、実施例1、実施例2で説明したように、中空部A、Bを水や肉片41で満たすことがないので、PET装置の構成を簡略化することができる。
【0087】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0088】
(1)上述した各実施例では、被検体Mの乳房を被写体mとしたが、これに限られるものではない。被検体Mのその他の部位、小動物全体を被写体としてもよい。
【0089】
(2)上述した実施例1、2では、放射線吸収材として水または肉片41を説明したが、被写体mと略等しい吸収係数を有していれば、適宜に選択変更することができる。ここで、実施例2でも説明したが、「略等しい」とは、被写体mに対する放射線吸収材の吸収係数の差が、被写体mの吸収係数の5%以内であることが好ましく、さらに望ましくは3%以内である。あるいは、放射線吸収材と被写体mとの各吸収係数の差が、トランスミッションデータによって被写体mの吸収係数を推定した場合に生じる誤差と同程度であることが好ましい。そして、具体的に選択される放射線吸収材は、液体、固体(粉状物、粒状物)、あるいはゲル状物のいずれでもよい。
【0090】
(3)上述した各実施例で説明した各構成を、適宜に組み合わせ、変更してもよい。すなわち、実施例1で説明したガントリ3の中空部A内に実施例2で説明した肉片41を満たすように構成してもよい。また、実施例2で説明した検出ユニット5の中空部Bに実施例1で説明した供給配管13を連通接続させて、中空部B内に水を満たすように構成してもよい。また、放射線吸収部材として水と肉片41の混合物を用いてもよい。
【0091】
(4)上述した実施例1、2で説明した補正係数算出部27は、予め補正係数が記憶されている記憶部に変更してもよい。この変形実施例に係るPET装置の全体構成を示すブロック図を図10に示す。すなわち、実施例1で説明した検出ユニット5とガントリ3との相対的な位置情報、または、実施例2で説明した検出ユニット5の位置情報が常に同じ場合であって、推定吸収係数μも常に同じときは、各検出器素子対LORに応じた補正係数も同じ値をとる。したがって、このような場合には、予め算出した補正係数自体を記憶する記憶部51を備え、吸収補正部23が記憶部51から補正係数を読み出し可能に構成してもよい。
【0092】
(5)上述した実施例1では、ガントリ3の内周面Sと底板11が、中空部Aを内部空間とする収容部材を構成したが、これに限られない。図10を参照する。図示するように、ガントリ3の中空部A内(検出ユニット5の内側)に被写体mを収める容器53を備えて、この容器53に供給配管13を連通接続するように構成してもよい。この場合は、容器53は、この発明における収容部材に相当し、容器53で区画される領域がこの発明における所定領域に相当する。
【0093】
(6)上述した実施例1で説明した、中空部Aに満たされる水については、特に説明しなかったが、水の温度調節をする温調部55をさらに備えるように構成してもよい(図10参照)。これによれば、快適に被写体mの診断を快適に行うことができる。
【0094】
(7)上述した各実施例では、検出ユニット5の中空部(A、B)が鉛直軸gに向いた、いわゆる水平姿勢で配備された検出ユニット5を備えていたが、検出ユニット5の姿勢は適宜に変更することができる。また、実施例1、2では、ガントリ3または検出ユニット5の下部に底板11を設置していたが、検出ユニット5の姿勢に応じて適宜に変更することができる。また、ガントリ3と底板11を一体に構成するように変更してもよい。
【0095】
(8)実施例3では、移動機構45は、検出器ブロック7単位で移動させるものとしたが、検出ユニット5の内側面(内周面)を被写体mに当接するように変形することができれば、適宜に変更してもよい。たとえば、検出器ブロック7を構成するシンチレータのみを変形してもよい。また、検出ユニット5の内側面(内周面)を被写体mに当接するかわりに、ガントリ3の内周面を当接するように変更してもよい。すなわち、実施例1で説明したガントリ3を備え、このガントリ3内に検出器ブロック7を固定的に収容し、かつ、ガントリ3の内周面が被写体mに当接するまで変形可能に構成してもよい。この場合には、ガントリ3の内周面の位置を計測する計測手段を備えて、この計測手段から得られた計測結果を補正係数算出部27に出力するように構成される。
【0096】
(9)上述した各実施例では、再構成部25を備えていたが、これを省略して被写体mの投影像のみを得るように変更してもよい。また、上述した各実施例では、リング状の検出ユニット5を被写体mの周囲を配置していたが、リング状でなくてもよい。たとえば、被写体mを挟んで対向配置される2または3以上に分離した検出ユニットを備えるように構成してもよい。
【0097】
(10)上述した各実施例では、PET装置を例にとって説明したが、この発明は放射性薬剤が投与された被写体mから発生した放射線を検出する核医学診断装置であれば、PET装置に限定されず、SPECT(Single Photon Emission CT)装置などにも適用することができる。
【0098】
(11)上述した各実施例では、検出ユニット5を静止させたままでガンマ線を検出する静止型であったが、被写体mの周りを回転しながらガンマ線を検出する回転型でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】実施例1に係るPET装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】検出ユニットの水平断面図である。
【図3】実施例1に係る吸収係数マップの模式図である。
【図4】実施例2に係るPET装置の全体構成を示すブロック図である。
【図5】実施例2に対応した吸収係数マップの模式図である。
【図6】実施例3に係るPET装置の全体構成を示すブロック図である。
【図7】実施例3に対応した吸収係数マップの模式図である。
【図8】実施例3に係る検出器ブロックの斜視図である。
【図9】検出器素子対と機械的原点との位置関係を模式的に示す図である。
【図10】変形実施例に係るPET装置の全体構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0100】
3 …ガントリ
5 …検出ユニット
7 …検出器ブロック
11 …底板
13 …供給配管
17 …開閉弁
23 …吸収補正部
27 …補正係数算出部
A、B …中空部
d …検出器素子
μ …推定吸収係数
LOR …検出器素子対
L …距離
S …ガントリの内周面
41 …肉片
51 …記憶部
53 …容器
55 …温調部
m …被写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体から放出された放射線を検出する核医学診断装置において、被写体から放出された放射線を検出する検出手段と、前記検出手段の内側に形成される所定領域の内側と被写体との間に被写体と略等しい吸収係数を有する放射線吸収材を満たす供給手段と、前記検出手段および前記所定領域の相対的な位置情報と、被写体および前記放射線吸収材の各吸収係数に応じた推定吸収係数とから与えられる補正係数に基づいて、前記検出手段から収集されたエミッションデータを吸収補正する吸収補正手段と、を備えていることを特徴とする核医学診断装置。
【請求項2】
被写体から放出された放射線を検出する核医学診断装置において、被写体から放出された放射線を検出する検出手段と、前記検出手段の内側に形成される所定領域の内側と被写体との間に満たされた、被写体と略等しい吸収係数を有する放射線吸収材と、前記検出手段および前記所定領域の相対的な位置情報と、被写体および前記放射線吸収材の各吸収係数に応じた推定吸収係数とから与えられる補正係数に基づいて、前記検出手段から収集されたエミッションデータを吸収補正する吸収補正手段と、を備えていることを特徴とする核医学診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の核医学診断装置において、さらに、前記放射線吸収材を前記所定領域に供給する供給手段を備えていることを特徴とする核医学診断装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の核医学診断装置において、前記所定領域は、前記検出手段の内側面で区画されることを特徴とする核医学診断装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の核医学診断装置において、さらに、前記検出手段の内側に配置され、前記放射線吸収材および被写体を収容する収容部材を備え、前記所定領域は前記収容部材で区画されることを特徴とする核医学診断装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の核医学診断装置において、前記放射線吸収材は、水または肉の少なくともいずれかを含むことを特徴とする核医学診断装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の核医学診断装置において、前記位置情報と前記推定吸収係数とに基づいて前記補正係数を算出する算出手段を備え、前記吸収補正手段は前記算出手段によって得られた補正係数を用いて処理することを特徴とする核医学診断装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の核医学診断装置において、前記補正係数を記憶する記憶手段を備え、前記吸収補正手段は前記記憶手段から前記補正係数を読み出すことを特徴とする核医学診断装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の核医学診断装置において、被写体に対する前記放射線吸収材の吸収係数の差は、被写体の吸収係数の5%以内であることを特徴とする核医学診断装置。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の核医学診断装置において、被写体に対する前記放射線吸収材の吸収係数の差は、トランスミッションデータによって被写体の吸収係数を推定した場合に生じる誤差と同程度であることを特徴とする核医学診断装置。
【請求項11】
被写体から放出された放射線を検出する核医学診断装置において、被写体の周囲に設けられ、被写体から放出された放射線を検出する複数個の検出器ブロックと、前記検出器ブロックを被写体に当接する位置まで移動させる移動手段と、前記検出器ブロックのそれぞれの位置を計測する計測手段と、前記計測手段から得られた計測結果と、被写体の吸収係数に応じた推定吸収係数とに基づいて補正係数を算出する算出手段と、前記算出手段から得られた補正係数を用いて、前記検出手段から収集されたエミッションデータを吸収補正する吸収補正手段と、を備えていることを特徴とする核医学診断装置。
【請求項12】
被写体から放出される放射線を検出する検出手段から収集されたエミッションデータを吸収補正するエミッションデータの吸収補正方法において、前記検出手段の内側に形成される所定領域の内側と被写体との間に満たされた放射線吸収材を透過した放射線を検出する前記検出手段から収集されたエミッションデータに対して、前記検出手段および前記所定領域の相対的な位置情報と、被写体および前記放射線吸収材の各吸収係数に応じた推定吸収係数とから与えられる補正係数に基づいて吸収補正することを特徴とするエミッションデータの吸収補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−333512(P2007−333512A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164669(P2006−164669)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】