核酸の存在比測定装置、核酸の存在比測定方法、核酸の存在比測定プログラム、判定方法、及び核酸の存在比測定キット
【課題】簡易に核酸の存在比を測定することができる核酸の存在比測定装置、核酸の存在比測定方法、核酸の存在比測定プログラム、判定方法、及び核酸の存在比測定キットを提供する。
【解決手段】2種類の核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々の温度と蛍光強度の微分値との関係を表す微分融解曲線に基づいて、各々異なる大きさの融解温度(TmW及びTmM)を含む2つの温度範囲(ΔTW及びΔTM)内における微分融解曲線とベース値とを示す直線とで囲まれた部分の面積比(SM/SW)と2種類の核酸の存在比との関係を表す検量線をメモリ26に記憶しておく。測定対象の核酸混合物の微分融解曲線の2つの温度範囲(ΔT’W及びΔT’M)内における微分融解曲線とベース値とを示す直線とで囲まれた部分の面積比(S’M/S’W)を演算して、演算された面積比と検量線に基づいて、核酸の存在比を演算することで検体の核酸の存在比を測定する。
【解決手段】2種類の核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々の温度と蛍光強度の微分値との関係を表す微分融解曲線に基づいて、各々異なる大きさの融解温度(TmW及びTmM)を含む2つの温度範囲(ΔTW及びΔTM)内における微分融解曲線とベース値とを示す直線とで囲まれた部分の面積比(SM/SW)と2種類の核酸の存在比との関係を表す検量線をメモリ26に記憶しておく。測定対象の核酸混合物の微分融解曲線の2つの温度範囲(ΔT’W及びΔT’M)内における微分融解曲線とベース値とを示す直線とで囲まれた部分の面積比(S’M/S’W)を演算して、演算された面積比と検量線に基づいて、核酸の存在比を演算することで検体の核酸の存在比を測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸の存在比測定装置、核酸の存在比測定方法、核酸の存在比測定プログラム、判定方法、及び核酸の存在比測定キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各温度におけるサンプルのシグナル値を表す融解曲線のシグナル値を微分したシグナル微分値と温度との関係で表された微分融解曲線で表された融解曲線から、異なる2つのピークの有無及びその温度範囲を判定することにより、遺伝子の多型の型を判別する融解曲線解析方法及び融解曲線解析装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/081965号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、遺伝子の多型の型を自動的に判別することはできても、その遺伝子の変異の割合を得ることはできない、という問題がある。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、簡易に核酸の存在比を演算することで核酸の存在比を測定することができる核酸の存在比測定装置、核酸の存在比測定方法、核酸の存在比測定プログラム、判定方法、及び核酸の存在比測定キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の核酸の存在比測定装置は、1以上の融解温度を有する核酸混合物の融解曲線の検出信号を、異なる温度範囲内において検出する検出手段と、前記検出手段により検出された検出信号から得られる特徴量の比と検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算手段と、を含んで構成されている。検量情報とは、特徴量の比と核酸の存在比との関係を表す情報であり、例えば、特徴量の比と核酸の存在比との関係を表す検量線、表、計算式等である。
【0007】
本発明の核酸の存在比測定装置によれば、検出手段が、1以上の融解温度を有する核酸混合物の融解曲線の検出信号を、異なる温度範囲内において検出する。そして、存在比演算手段が、検出手段により検出された検出信号から得られる特徴量の比と検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算することで、検体(測定対象の核酸混合物)中の核酸の存在比を測定する。
【0008】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、各々異なる融解温度を有する核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々から得られた温度と検出信号との関係を表す融解曲線に基づいて、前記融解温度を含む複数の温度範囲内における前記融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比と前記存在比との関係を表す検量情報を記憶した記憶手段、または前記検量情報を入力するための入力手段を含んで構成することができる。
【0009】
このような形態によれば、記憶手段に、各々異なる融解温度を有する核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々から得られた温度と検出信号との関係を表す融解曲線に基づいて、各々異なる融解温度を含む複数の温度範囲内における融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比と存在比との関係を表す検量情報が記憶されている。または、この検量情報が入力手段により入力される。そして、測定対象の核酸混合物の融解曲線の複数の温度範囲の各々に対応する温度範囲内における融解曲線の検出信号に基づいて、特徴量の比を演算し、演算された特徴量の比と検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算することで、検体中の核酸の存在比を測定する。
【0010】
このように、複数の核酸の存在比と各核酸の融解温度を含む複数の温度範囲内の融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比との関係を表す検量情報と、測定対象の核酸混合物の複数の温度範囲の各々に対応する温度範囲内の融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比とに基づいて、簡易に核酸の存在比を演算することで検体中の核酸の存在比を測定することができる。
【0011】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、前記特徴量の比を、一つの融解温度付近における検出信号のレベルからバックグラウンドレベルを減算した値と、他の融解温度付近における検出信号のレベルからバックグラウンドレベルを減算した値との比、一つの融解温度付近における検出信号の微分値からバックグラウンドレベルを減算した値と他の融解温度付近における検出信号の微分値からバックグラウンドレベルを減算した値との比、一つの温度範囲内の検出信号の微分値の和と他の温度範囲内の検出信号の微分値の和との比、または一つの温度範囲内の検出信号の微分値の和からバックグラウンドレベルの和を減算した値と、他の温度範囲内の検出信号の微分値の和からバックグラウンドレベルの和を減算した値との比とすることができる。
【0012】
融解温度付近における検出信号とは、本来は融解温度における検出信号を用いることが望ましいが、試薬条件(検体の状態)やサイクル数によって生じる融解温度のぶれや、測定装置の検出感度(例えば、1℃単位で測定)により生じる誤差を考慮して、融解温度付近における検出信号を用いることを意味するものである。なお、融解温度付近における検出信号には、融解温度における検出信号が含まれる。
【0013】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、前記特徴量の比を、温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線において、一つの温度範囲の下限値に対応する点と前記一つの温度範囲の上限値に対応する点とを通る直線と融解曲線とで囲まれた部分の面積と、他の温度範囲の下限値に対応する点と前記他の温度範囲の上限値に対応する点とを通る直線と融解曲線とで囲まれた部分の面積との比とすることができる。
【0014】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、前記温度範囲の上限値または下限値を、温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線における2つのピーク間で検出信号の微分値が最小となる温度、温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線におけるピークの裾野に対応する温度、または温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線におけるピークから±15℃以内の温度とすることができる。
【0015】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、前記温度範囲の上限値または下限値を、温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線におけるピークから±10℃以内の温度とすることができる。
【0016】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、前記温度範囲の上限値または下限値を、温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線におけるピークから±7℃以内の温度とすることができる。
【0017】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、前記一つの温度範囲の上限値と、前記一つの温度範囲より高い温度範囲を含有する温度範囲の下限値とを、異なる値とすることができる。
【0018】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、前記一つの温度範囲の下限値から上限値までの幅と、前記他の温度範囲の下限値から上限値までの幅を、同一の幅とすることができる。
【0019】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、前記一つの温度範囲の下限値から上限値までの幅と、前記他の温度範囲の下限値から上限値までの幅を、異なる幅とすることができる。
【0020】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、前記核酸混合物の温度変化を制御する温度制御手段と、前記検出信号として吸光度、蛍光強度、または相対蛍光強度を計測する計測手段と、をさらに含んで構成することができる。この構成により、検体から計測した検出信号を用いて、検体中の核酸の存在比を測定することができる。
【0021】
また、本発明の核酸の存在比測定方法は、1以上の融解温度を有する核酸混合物の融解曲線の検出信号を、異なる温度範囲内において検出する検出工程と、前記検出工程において検出された検出信号から得られる特徴量の比と検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算工程と、を含む方法である。
【0022】
本発明の核酸の存在比測定方法によれば、検出工程で、1以上の融解温度を有する核酸混合物の融解曲線の検出信号を、異なる温度範囲内において検出する。そして、存在比演算工程で、検出工程において検出された検出信号から得られる特徴量の比と検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算することで、検体中の核酸の存在比を測定する。
【0023】
また、本発明の核酸の存在比測定方法の他の形態は、各々異なる融解温度を有する核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々から得られた温度と検出信号との関係を表す融解曲線に基づいて、前記融解温度を含む複数の温度範囲内における前記融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比と前記存在比との関係を表す検量情報を作成する検量情報作成工程と、測定対象の核酸混合物の融解曲線の前記複数の温度範囲の各々に対応する温度範囲内における融解曲線の検出信号に基づいて特徴量の比を演算する特徴量比演算工程と、前記特徴量比演算工程において演算された特徴量の比と前記検量情報作成工程において作成された検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算工程と、を含む方法であってもよい。これらの工程を経て核酸の存在比を演算することで、核酸の存在比を測定することができる。
【0024】
また、本発明の核酸の存在比測定プログラムは、コンピュータを、1以上の融解温度を有する核酸混合物の融解曲線の検出信号であって、異なる温度範囲内において検出された検出信号を取り込み、取り込んだ検出信号から得られる特徴量の比と検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算手段として機能させることで、コンピュータに検体中の核酸の存在比を測定させるためのプログラムである。
【0025】
また、本発明の核酸の存在比測定プログラムの他の形態は、コンピュータを、各々異なる融解温度を有する核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々から得られた温度と検出信号との関係を表す融解曲線に基づいて、前記融解温度を含む複数の温度範囲内における前記融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比と前記存在比との関係を表す検量情報が記憶された記憶手段から該検量情報を取得するか、または入力手段により入力される前記検量情報を取得する取得手段、測定対象の核酸混合物の融解曲線の前記複数の温度範囲の各々に対応する温度範囲内における融解曲線の検出信号に基づいて特徴量の比を演算する特徴量比演算手段、及び前記特徴量比演算手段により演算された特徴量の比と前記取得手段により取得された検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算手段として機能させることもできる。これにより、コンピュータに検体中の核酸の存在比を測定させることができる。また、本発明の核酸存在比測定プログラムの他の形態として、前記コンピュータを、前記検出信号や一部の演算を他のコンピュータで実行させるための制御手段として機能させることができる。
【0026】
また、本発明の判定方法は、上記の核酸の存在比測定装置、上記の核酸の存在比測定方法、または上記の核酸の存在比測定プログラムを用いて得られる核酸の存在比と、予め定めた核酸の存在比と患者の状態との関係とに基づいて、患者の状態を判定する方法である。
【0027】
また、本発明の判定方法は、上記の核酸の存在比測定装置、上記の核酸の存在比測定方法、または上記の核酸の存在比測定プログラムを用いて得られる核酸の存在比と、予め定めた核酸の存在比と体質及び体質に適した薬剤処方量の少なくとも一方との関係とに基づいて、体質及び体質に適した薬剤処方量の少なくとも一方を判定する方法である。
【0028】
また、本発明の核酸の存在比測定キットは、上記の核酸の存在比測定装置、上記の核酸の存在比測定方法、または上記の核酸の存在比測定プログラムにおいて、前記核酸の存在比を測定する際に用いられ、前記核酸混合物中の核酸に存在し得る標的とする変異を含む核酸配列の領域にハイブリダイズ可能なプローブと、前記核酸混合物中の核酸に存在し得る標的とする変異を含む核酸配列を増幅可能なプライマーセットと、を含む核酸の存在比測定キットである。また、本発明の核酸の存在比測定キットを、予め定めた核酸の存在比と体質及び体質に適した薬剤処方量の少なくとも一方との関係とに基づいて、体質及び体質に適した薬剤処方量の少なくとも一方を判定するために用いることもできる。
【0029】
また、本発明の核酸の存在比測定装置は、複数の核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々の温度と検出信号との関係を表す融解曲線に基づいて、各々異なる大きさの融解温度を含む複数の温度範囲内における融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比と前記存在比との関係を表す検量情報を記憶した記憶手段と、測定対象の核酸混合物の融解曲線の前記複数の温度範囲の各々に対応する温度範囲内における融解曲線の検出信号に基づいて、特徴量の比を演算する特徴量比演算手段と、前記特徴量比演算手段により演算された特徴量の比と前記記憶手段に記憶された検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算手段と、を含んで構成してもよい。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明の核酸の存在比測定装置、核酸の存在比測定方法、及び核酸の存在比測定プログラムによれば、異なる融解温度を有する核酸混合物の融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比と検量情報とに基づいて、簡易に核酸の存在比を演算することで検体中の核酸の存在比を測定することができる、という効果が得られる。
【0031】
また、本発明の判定方法及び判定キットによれば、本発明の核酸の存在比測定装置、核酸の存在比測定方法、または核酸の存在比測定プログラムにより得られた核酸の存在比を用いて、患者の状態を判定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施の形態の核酸の存在比測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】(A)核酸混合物の融解曲線、及び(B)微分融解曲線の一例を示す図である。
【図3】微分融解曲線の他の例を示す図である。
【図4】検量線の一例を示す図である。
【図5】本実施の形態の核酸の存在比測定装置における核酸の存在比測定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図6】実施例における核酸混合物の各サンプルの微分融解曲線を示す図である。
【図7】実施例における測定対象の核酸混合物の融解曲線を示す図である。
【図8】実施例における測定対象の核酸混合物の微分融解曲線を示す図である。
【図9】核酸混合物の(A)融解曲線、及び(B)微分融解曲線の他の例を示す図である。
【図10】特徴量の比の他の例について説明するための図である。
【図11】微分融解曲線において2つの温度範囲が離れている例を示す図である。
【図12】微分融解曲線においてベース値がずれている例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して、本発明の核酸の存在比測定装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0034】
図1に示すように、本実施の形態の核酸の存在比測定装置10は、キーボード、マウス、タッチパネル、バーコードリーダ等の読取装置で構成され、かつ操作することにより各種情報を入力するための操作部12、核酸の存在比の測定結果を表示するための表示部14、及び核酸の存在比の測定処理を実行するコンピュータ16を備えている。
【0035】
コンピュータ16は、核酸の存在比測定装置10全体の制御を司るCPU20、後述する核酸の存在比測定処理等の各種プログラムを記憶した記憶媒体としてのROM22、ワークエリアとしてデータを一時的に格納するRAM24、各種情報が記憶された記憶手段としてのメモリ26、入出力ポート(I/Oポート)28、ネットワークインターフェース(ネットワークI/F)30、及びこれらを接続するバスを含んで構成されている。I/Oポート28には、操作部12、及び表示部14が接続されている。なお、さらにHDDを設けてもよい。
【0036】
また、メモリ26には、2種類の核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々の融解曲線に基づいて、各々異なる大きさの融解温度を含む2つの温度範囲内における融解曲線の検出信号の微分値の和からバックグラウンドレベルの和を減算した値の比と2種類の核酸の存在比との関係を表す検量線が記憶されている。なお、検量線は、ROM22またはHDDに記憶しておいてもよい。また、本実施の形態では、記憶しておいた検量線を演算前に事前に読み出す場合について説明するが、バーコードリーダで検量線の情報を含んだバーコードを読み取ったり、各種読取装置でICチップやRFIDに記録された検量線の情報を読み取ったりするなど、検量線の情報を操作部12から入力してもよいし、検量線の情報をI/Oポート28やネットワークI/F30を介して接続された外部装置から受信するようにしてもよい。
【0037】
ここで、検量線の作成方法について説明する。
【0038】
まず、例えば、ワイルド型の核酸Wtとミュータント型の核酸Mtとの2種類の核酸の存在比を各々異ならせた複数の核酸混合物を作製し、複数の核酸混合物の各々について、融解曲線解析装置を用いて融解曲線を得る。
【0039】
図2(A)に、ある1つの核酸混合物の温度と吸光度または蛍光強度等の検出信号との関係で表された融解曲線、及び同図(B)に温度と検出信号の微分値との関係で表された融解曲線(微分融解曲線ともいう)を示す。この微分融解曲線からピークを検出することにより、核酸Wtの融解温度TmW及び核酸Mtの融解温度TmMを検出して、TmW及びTmMを含む温度範囲の各々を設定する。TmWを含む温度範囲ΔTWとしては、例えば、TmWとTmMとの間で検出信号の微分値が最小となる温度を下限、検出信号のピークの裾野に対応する温度を上限とする温度範囲を設定することができる。また、TmMを含む温度範囲ΔTMとしては、例えば、TmWとTmMとの間で検出信号の微分値が最小となる温度を上限、検出信号のピークの裾野に対応する温度を下限とする温度範囲を設定することができる。なお、温度範囲ΔTW及び温度範囲ΔTMは、図2(B)に示すように、同一の幅(例えば、10℃)となるよう、または、図3に示すように、異なる幅(例えば、温度範囲ΔTWが7℃、温度範囲ΔTMが16℃)となるように設定することができる。また、温度範囲ΔTW及び温度範囲ΔTMは、それぞれの融解温度TmからプラスX℃、マイナスX℃の幅(X℃は例えば15℃以内、望ましくは10℃以内、より望ましくは7℃以内)というように設定することができる。このような温度範囲の設定を自動的に行うのは容易である。
【0040】
次に、温度範囲ΔTW及び温度範囲ΔTMの各々について、微分融解曲線の温度範囲の下限に対応する点と上限に対応する点とを通る直線と微分融解曲線とで囲まれた面積(図2(B)の斜線部分)を求める。面積の求め方の一例として、具体的に以下のように求めることができる。温度Tにおける検出信号の微分値をf(T)とし、温度Tにおけるベース値をB(T)として、下記(1)式により求める。
【0041】
面積S={f(Ts+1)−B(Ts+1)}+{f(Ts+2)−B(Ts+2)}
+・・・+{f(Te−1)−B(Te−1)} ・・・(1)
【0042】
ただし、Tsは各温度範囲における下限値、Teは上限値である。また、各温度Tにおけるベース値B(T)は、下記(2)式により求まる値であり、検出信号に含まれるバックグラウンドレベルを表すものである。このベース値を検出信号の微分値から減算することにより、検出信号に含まれるバックグラウンドの影響を、より適切に除去することができる。
【0043】
B(T)=a×(T−Ts)+f(Ts) ・・・(2)
ただし、a={f(Te)−f(Ts)}/(Te−Ts) である。
【0044】
上記(1)式及び(2)式に従って、各核酸混合物について、温度範囲ΔTWにおける面積SW及び温度範囲ΔTMにおける面積SMを求め、面積比と各核酸混合物の存在比との関係を表す検量線を作成する。図4に、横軸に存在比(核酸混合物の総量に対する核酸Mtの割合)をとり、縦軸に面積比(SM/SW)をとった検量線の一例を示す。このように作成された検量線をメモリ26に記憶しておく。なお、面積比はSW/SMで定めてもよい。
【0045】
次に、図5を参照して、本実施の形態の核酸の存在比測定装置10において実行される測定対象の核酸混合物に対する核酸の存在比測定処理ルーチンについて説明する。
【0046】
ステップ100で、メモリ26に記憶された検量線を読み込む。
【0047】
次に、ステップ102で、2種類の核酸の存在比が未知である検体(測定対象の核酸混合物)の融解曲線のデータを取得する。融解曲線のデータは、ネットワークI/F30を介して接続された融解曲線解析装置等の外部装置から取得したり、記録媒体に記録されたデータを読み込んだりすることにより取得することができる。
【0048】
次に、ステップ104で、上記ステップ102で取得した融解曲線の検出信号を温度に関して微分して、温度と検出信号の微分値との関係を表す微分融解曲線を演算する。
【0049】
次に、ステップ106で、上記ステップ104で演算した微分融解曲線に対して、上記ステップ100で読み込んだ検量線を作成したときに設定した温度範囲ΔTW及びΔTMの各々に対応した温度範囲ΔT’W及びΔT’Mを設定する。なお、温度範囲ΔT’W及びΔT’Mは、検量線を作成したときに設定した温度範囲ΔTW及びΔTMと同一の温度範囲を設定してもよいし、温度範囲ΔTW及びΔTMに近似した温度範囲を設定してもよい。
【0050】
そして、温度範囲ΔT’W及び温度範囲ΔT’Mの各々について、微分融解曲線の温度範囲の下限に対応する点と上限に対応する点とを通る直線と微分融解曲線とで囲まれた面積を求める。具体的には、(1)式及び(2)式に従って、検量線を作成する際に各温度範囲における面積を演算したのと同様の手法により、温度範囲ΔT’Wにおける面積S’W、及び温度範囲ΔT’Mにおける面積S’Mを演算する。
【0051】
次に、ステップ108で、上記ステップ106で演算した面積S’W及びS’Mを用いて、面積比S’M/S’Wを演算する。
【0052】
次に、ステップ110で、上記ステップ108で演算した面積比S’M/S’Wと、上記ステップ100で読み込んだ検量線に基づいて、面積比S’M/S’Wに対応する核酸の存在比を演算することで検体の核酸の存在比を測定する。すなわち、検体の変異の割合を測定する。
【0053】
次に、ステップ112で、上記ステップ110での測定結果が表示部14に表示されるように、測定結果を出力して、処理を終了する。
【0054】
なお、上記ルーチンでは、ステップ102において、融解曲線を取得する前に、検量線の事前の読み込みを行っているが(ステップ100)、検量線の読み込みは、ステップ110において、面積比及び検量線に基づいて、核酸の存在比(変位の割合)を測定する前であれば、いずれの段階で行ってもよい。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態の核酸の存在比測定装置によれば、2種類の核酸の存在比と各核酸の融解温度を含む2つの温度範囲内の微分融解曲線から得られる面積比との関係を表す検量線と、存在比が未知の測定対象の核酸混合物の微分融解曲線の2つの温度範囲の各々に対応する温度範囲内の微分融解曲線から得られる面積比とに基づいて、簡易に検体の核酸の存在比を演算することで、簡易に検体の核酸の存在比を測定することができる。すなわち、簡易に検体の変異の割合を測定することができる。
【0056】
[実施例1]
c−kit遺伝子の部分配列を測定対象の核酸として用いて、本発明の一実施例を以下に説明する。
【0057】
サンプルとして表3に示す核酸混合物のサンプル(103コピー/反応液)を用い、全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(商標)、アークレイ社製)を用いてPCRおよびTm分析を行った。PCR反応液組成は表1の通り、PCRおよびTm分析の条件は表4の通りである。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
プラスミドには、pT7Blue T−vector(タカラバイオ社)に下記に示す配列(Wt配列:配列番号4、Mt配列:配列番号5)を挿入し、EcoRIでリニアライズしたものを用いた。Wt配列とMt配列とは、大文字で示した塩基が異なっている。Wt配列を挿入したプラスミドをWtプラスミド、Mt配列を挿入したプラスミドをMtプラスミドとする。
【0062】
Wt配列:cactatagtattaaaaagttagttttcactctttacaagttaaaatgaatttaaatggttttcttttctcctccaacctaatagtgtattcacagagacttggcagccagaaatatcctccttactcatggtcggatcacaaagatttgtgattttggtctagccagagAcatcaagaatgattctaattatgtggttaaaggaaacgtgagtacccattctctgcttgacagtcctgcaaaggatttttagtttcaactttcgataaaaattgtttcctgtgactttcataatgtaaat
【0063】
Mt配列:cactatagtattaaaaagttagttttcactctttacaagttaaaatgaatttaaatggttttcttttctcctccaacctaatagtgtattcacagagacttggcagccagaaatatcctccttactcatggtcggatcacaaagatttgtgattttggtctagccagagTcatcaagaatgattctaattatgtggttaaaggaaacgtgagtacccattctctgcttgacagtcctgcaaaggatttttagtttcaactttcgataaaaattgtttcctgtgactttcataatgtaaat
【0064】
【表4】
【0065】
図6に、上記条件により測定した各サンプルの微分融解曲線を示す。本実施例では、検出信号として蛍光強度が得られる。図6の微分融解曲線からピークを検出して各核酸の融解温度TmW及びTmMを求め、求めた融解温度を含む温度範囲ΔTW(58℃〜66℃)、温度範囲ΔTM(50℃〜58℃)を設定した。そして、各サンプルについて、上記(1)式及び(2)式に従って、温度範囲ΔTWにおける面積SW及び温度範囲ΔTWにおける面積SMを求め、面積比SM/SWを求めた。表5に、各サンプルの面積SM及びSW、並びに面積比SM/SWを示す。
【0066】
【表5】
【0067】
表5に示した各値に基づいて、横軸にサンプルの総量に対するMtの割合をとり、縦軸に面積比SM/SWをとった検量線を作成した。ここで作成した検量線は、図4に一例と示した検量線と同一である。
【0068】
次に、この検量線を用いて、WtとMtとの存在比が未知である測定対象の核酸混合物の核酸の存在比を測定した。
【0069】
まず、図7に示す測定対象の核酸混合物の温度と蛍光強度との関係を表す融解曲線のデータを取得し(ステップ102)、図8に示すように、融解曲線の蛍光強度を微分して、温度と蛍光強度の微分値との関係を表す微分融解曲線を演算した(ステップ104)。
【0070】
次に、演算した微分融解曲線に対して、図4の検量線を作成したときに設定した温度範囲ΔTW(58℃〜66℃)、温度範囲ΔTM(50℃〜58℃)と同じ温度範囲ΔT’W及び温度範囲ΔT’Mを設定し、(1)式及び(2)式に従って、温度範囲ΔT’Wにおける面積S’W、及び温度範囲ΔT’Mにおける面積S’Mを演算した(ステップ106)。ここでは、S’W=730、面積S’M=241.5が得られた。
【0071】
次に、演算した面積S’W及びS’Mを用いて、面積比S’M/S’Wを演算した(ステップ108)。ここでは、S’M/S’W=0.331(33.1%)が得られた。
【0072】
次に、図4の検量線において、面積比S’M/S’W(=33.1%)に対応するMtの割合、すなわち変異の割合を演算することで、変異の割合を測定した(ステップ110)。ここでは、Mtの割合が40〜50%の間となった。
【0073】
なお、上記実施例では、融解状態を示す検出信号として、蛍光を発するプローブを用いて、蛍光物質に応じた励起光により放射される蛍光の強度を用いる場合について説明したが、これに限定されない。例えば、二本鎖核酸の融解により増加する260nmにおける吸光度を用いてもよい。また、上記実施例では、二本鎖の形成(非融解)のときに消光するプローブを用いる場合について説明したが、二本鎖の形成のときに蛍光を発するプローブを用いてもよい。その場合、図9(A)に示すような温度と蛍光強度との関係を表す融解曲線が得られ、これから同図(B)に示すような微分融解曲線が得られる。
【0074】
蛍光物質の具体例としては、エチジウムブロマイドやSYBR(登録商標)Greenのようなインターカレーターがあげられる。これらは、一般に、二本鎖の形成により蛍光を発し、二本鎖の融解によって蛍光の発生が抑制される。また、蛍光物質は、例えば、二本鎖核酸を構成する少なくとも一方の一本鎖核酸に結合してもよい。蛍光物質が結合した一本鎖核酸としては、例えば、本実施例で用いたグアニン消光プローブとして知られているQProbe(登録商標)のようないわゆる蛍光消光プローブがあげられる。蛍光消光プローブは、一般に、二本鎖の形成により蛍光が消光し、二本鎖の融解によって蛍光を発生する。
【0075】
また、本発明における核酸混合物の融解状態を示す検出信号は、上述のように、例えば、サンプルの非融解によって発生し、サンプルの融解によって発生が抑制されるものでもよいし、反対に、サンプルの非融解によって発生が抑制され、サンプルの融解によって発生するものであってもよい。また、検出信号の微分値は、例えば、温度に関して検出信号を微分して「dF/dT」で表してもよいし、「−dF/dT」で表してもよい。dFは検出信号の変化量、dTは温度の変化量である。サンプルの融解によって検出信号の発生が抑制される場合、検出信号の微分値を「dF/dT」で表した微分融解曲線において、ピークは谷型となり、検出信号の微分値を「−dF/dT」で表した微分融解曲線において、ピークは山型となる。また、サンプルの融解によって検出信号を発生する場合、検出信号の微分値を「dF/dT」で表した微分融解曲線において、ピークは山型となり、検出信号の微分値を「−dF/dT」で表した微分融解曲線において、ピークは谷型となる。いずれの場合も、所定の温度範囲における微分融解曲線とベース値を表す直線とで囲まれた部分の面積を求めることができる。また、検出信号の微分値は、温度に関して検出信号を微分した微分値に限らず、時間に関して検出信号を微分した微分値を用いてもよい。
【0076】
また、上記実施の形態及び実施例では、融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比として、上記の面積比を用いる場合について説明したが、これに限定されない。特徴量の比として、図10(A)に示すように、融解温度TmWにおける検出信号のレベルFWと融解温度TmMにおける検出信号のレベルFMとの比(FM/FW)を用いてもよい。また、温度範囲ΔTWの下限値における検出信号のレベルと上限値における検出信号のレベルとの差ΔFWと、温度範囲ΔTMの下限値における検出信号のレベルと上限値における検出信号のレベルとの差ΔFMとの比(ΔFM/ΔFW)を用いてもよい。また、融解温度TmWにおける検出信号のレベルからバックグラウンドレベルを減算した値(F−B)Wと、融解温度TmMにおける検出信号のレベルからバックグラウンドレベルを減算した値(F−B)Mとの比((F−B)M/(F−B)W)を用いてもよい。
【0077】
また、同図(B)に示すように、融解温度TmWにおける検出信号の微分値fWと融解温度TmMにおける検出信号の微分値fMとの比(fM/fW)を用いてもよい。また、温度範囲ΔTWの検出信号の微分値の和ΣfW(同図中右下がり斜線部の面積に相当)と温度範囲ΔTMの検出信号の微分値の和ΣfM(同図中右上がり斜線部の面積に相当)との比(ΣfM/ΣfW)を用いてもよい。また、融解温度TmWにおける検出信号の微分値からバックグラウンドレベルを減算した値(f−B)Wと融解温度TmMにおける検出信号の微分値からバックグラウンドレベルを減算した値(f−B)Mとの比((f−B)M/(f−B)W)を用いてもよい。(f−B)Wは、温度範囲ΔTWの下限値に対応する点と上限値に対応する点とを通る直線上の融解温度TmWに対応する値をfWから差し引いて求めることができる。(f−B)Mについても同様に、温度範囲ΔTMの下限値に対応する点と上限値に対応する点とを通る直線上の融解温度TmMに対応する値をfMから差し引いて求めることができる。
【0078】
また、上記実施例では、1塩基のみが異なる核酸の存在比を測定しているが、目的とする各々の核酸の融解温度が異なるものであれば、相同性は特に限定されるものではなく、相同性が全くなくてもよい。例えば、融解温度が異なり、かつ相同性のない遺伝子Aと遺伝子Bとの核酸混合物について、遺伝子Aと遺伝子Bとの存在比を測定することもできる。
【0079】
また、上記実施例では、各々の核酸に対して同じプローブを用いて検出しているが、異なるプローブを用いてもよい。
【0080】
また、上記実施の形態及び実施例では、核酸の各々の融解温度を含む温度範囲(ΔTW及びΔTM)が連続している場合について説明したが、図11に示すように、融解温度が離れている場合などには、温度範囲も非連続な範囲で設定することができる。
【0081】
また、上記実施の形態及び実施例では、バックグラウンドレベルを減算するためのベース値を、微分融解曲線における温度範囲の下限値に対応する点と上限値に対応する点とを通る直線上の値とする場合について説明したが、例えば、ベース値を、温度範囲の上限値または下限値に対応する検出信号の微分値で一定にしてもよい。ただし、図12に示すように、温度範囲の下限値に対応する検出信号の微分値と上限値に対応する検出信号の微分値との差が大きい場合(ベース値に所定量以上のずれが生じている場合)には、上記実施の形態及び実施例のように、温度範囲の下限値に対応する点と上限値に対応する点とを通る直線上の値をベース値とした方が、精度よくバックグラウンドの影響を除去することができる。また、ベース値を直線ではなく曲線で定めるようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施の形態及び実施例では、2種類の核酸の存在比が異なる核酸混合物について、核酸の存在比を演算する場合について説明したが、3種類以上の核酸の存在比が異なる核酸混合物についても、同様に本発明を適用することができる。
【0083】
また、上記実施の形態及び実施例では、検量情報として、図4に示すような検量線を用いる場合について説明したが、特徴量の比と核酸の存在比との関係を表形式で表した検量情報や、特徴量の比と核酸の存在比との関係を計算式で表した検量情報を用いてもよい。
【0084】
また、上記実施の形態では、測定結果を表示部14に表示する場合について説明したが、印字装置を設けて、測定結果を紙などの媒体に印字出力するようにしてもよいし、可搬性記録媒体に記録するようにしてもよいし、I/Oポート28やネットワークI/F30を介して接続された外部装置に、測定結果を出力するようにしてもよい。
【0085】
また、本実施の形態の核酸の存在比測定装置に、予め定めた核酸の存在比と病気の進行状況との関係と、演算された核酸の存在比とに基づいて、病気の進行状況を判定する判定部をさらに設けて構成してもよい。変異遺伝子と正常遺伝子との存在比を測定し、その存在比を患者の状態を見るためのパラメーターとして用いることができる。例えば、血中遊離核酸における変異遺伝子(例えば、ガン疾患に関連する遺伝子)と正常遺伝子との割合と病気の進行状況との関係を定めたテーブルを予め作成しておく。そして、変異遺伝子と正常遺伝子との存在比を測定し、予め作成しておいたテーブルと比較することにより、病気の進行状態を判定することができる。このように、測定した核酸の存在比を用いて、患者の状態、例えば病気の進行状況などをモニタリングすることができる。
【0086】
また、本実施の形態の核酸の存在比測定装置に、予め定めた核酸の存在比と体質及び体質に適した薬剤処方量の少なくとも一方との関係と、演算された核酸の存在比とに基づいて、体質及び体質に適した薬剤処方量の少なくとも一方を判定する判定部をさらに設けて構成してもよい。体質とは、被測定者の特定の疾患に対する罹患し易さや、特定の薬剤投与に対する薬効である。例えば、ある遺伝子(コピー数多型(copy number variant)がある遺伝子)とコピー数が既知の対象となる遺伝子との割合と、特定の疾患に対する罹患し易さ、特定の疾患の罹患の有無、病状、薬効、薬剤処方量等との関係を定めたテーブルを予め作成しておく。そして前記コピー数多型が知られている遺伝子と対象となる遺伝子の存在比を測定し、予め作成しておいたテーブルと比較することにより、特定の疾患に対する罹患し易さ、薬効等の体質や、罹患の有無や病状、薬剤処方量等を判定することができる。このように、測定した核酸の存在比を用いて、被測定者の体質や薬剤処方量等を判定することができる。例えばCCL3Lのコピー数が多い場合には、HIVに罹患し難い体質であることが知られており、FCGR3Bのコピー数が少ない場合には、全身性エリテマトーデスなどのような自己免疫疾患に罹患し易い体質であることが知られている。また、自閉症や統合失調症や突発性学習障害などに関連する遺伝子においても、このような遺伝子のコピー数多型が表れることが知られている。
【0087】
また、本発明の核酸の存在比測定キットは、標的とする変異を含む核酸配列の領域にハイブリダイズ可能なプローブと、標的とする変異を含む核酸配列を増幅可能なプライマーセットとを含む。これらの試薬を含む測定キットを用いることにより、より簡便に目的とする遺伝子の変異を検出して、存在比を測定することができるなどの利点を有する。
【0088】
本発明の核酸の存在比測定キットを構成するプローブ及びプライマーの配列は、目的とする遺伝子の配列、更には目的とする遺伝子変異の配列が既知であれば、これらの配列に基づいて当業者によって適宜設計可能である。検査を効果的に実施するために必要なプローブの長さ、プライマーセットのアニール位置なども、当業者により適宜調整することができる。
【0089】
また、上記のプローブは、標識が付されている標識化プローブであることが検出の効率性の観点から好ましい。標識化プローブにおける標識物質の具体例としては、例えば、蛍光色素および蛍光団が挙げられる。標識化プローブの具体例としては、例えば、蛍光色素で標識され、単独で蛍光を示し且つハイブリッド形成により蛍光が減少(例えば、消光)するプローブが好ましい。
【0090】
このような蛍光消光現象(Quenching phenomenon)を利用したプローブは、一般に、蛍光消光プローブと呼ばれる。中でも、前記プローブとしては、オリゴヌクレオチドの3’領域(例えば、3’末端)もしくは5’領域(例えば、5’末端)の塩基が蛍光色素で標識化されていることが好ましく、標識化される塩基は、シトシン(C)であることが好ましい。この場合、前記標識化プローブがハイブリダイズする検出目的配列において、前記標識化プローブの末端塩基Cと対をなす塩基もしくは前記対をなす塩基から1〜3塩基離れた塩基がグアニン(G)となるように、前記標識化プローブの塩基配列を設計することが好ましい。このようなプローブは、一般的にグアニン消光プローブと呼ばれ、いわゆるQ Probeとして知られている。このようなグアニン消光プローブが検出目的配列にハイブリダイズすると、蛍光色素で標識化された末端のCが、前記検出目的配列におけるGに近づくことによって、前記蛍光色素の発光が弱くなる(蛍光強度が減少する)という現象を示す。このようなプローブを使用すれば、シグナルの変動により、ハイブリダイズと解離とを容易に確認することができる。また、前記標識物質は、例えば、通常、ヌクレオチドのリン酸基に結合することができる。
【0091】
本発明の核酸の存在比測定キットに含まれる各試薬は、異なる容器に含まれていてもよく、同一の容器に含まれていてもよい。なお、本明細書における「異なる容器」とは、各試薬が非接触状態を維持できるように区分けされたものであればよく、必ずしも、独立して取扱い可能な個別の容器でなくてもよい。
【0092】
また、本発明の核酸の存在比測定キットには、上記の他に、増幅に必要なポリメラーゼ等の試薬又は緩衝液、ハイブリダイズのために必要な試薬又は緩衝液、検体試料を希釈するための希釈剤等を含んでもよい。更に、本発明の核酸の存在比測定キットには、本発明の核酸の存在比測定方法を記載した説明書、キットに含まれる若しくは追加的に含むことが可能な各種の試薬に関する使用説明書等を含むことが好ましい。
【0093】
また、上記実施の形態では、融解曲線のデータを、融解曲線解析装置等の外部装置から取得したり、記録媒体に記録されたデータを読み込んだりすることにより取得する場合について説明したが、融解曲線解析装置と本実施の形態の核酸の存在比測定装置とを一体に構成してもよい。具体的には、上記実施の形態の構成に加え、核酸混合物の温度変化を制御する温度制御部と、吸光度、蛍光強度、相対蛍光強度等の検出信号を計測する計測部とを設ける。そして、温度制御部により検体である核酸混合物を温度変化させたときの検出信号を計測部により計測することで、融解曲線のデータを得る。後は、上記実施の形態と同様に、融解曲線を用いて検体の核酸の存在比を測定することができる。
【0094】
なお、上記の核酸の存在比測定処理ルーチンを規定したプログラムを記録媒体に記録して提供するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0095】
10 核酸の存在比測定装置
12 操作部
14 表示部
16 コンピュータ
20 CPU
22 ROM
24 RAM
26 メモリ
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸の存在比測定装置、核酸の存在比測定方法、核酸の存在比測定プログラム、判定方法、及び核酸の存在比測定キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各温度におけるサンプルのシグナル値を表す融解曲線のシグナル値を微分したシグナル微分値と温度との関係で表された微分融解曲線で表された融解曲線から、異なる2つのピークの有無及びその温度範囲を判定することにより、遺伝子の多型の型を判別する融解曲線解析方法及び融解曲線解析装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/081965号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、遺伝子の多型の型を自動的に判別することはできても、その遺伝子の変異の割合を得ることはできない、という問題がある。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、簡易に核酸の存在比を演算することで核酸の存在比を測定することができる核酸の存在比測定装置、核酸の存在比測定方法、核酸の存在比測定プログラム、判定方法、及び核酸の存在比測定キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の核酸の存在比測定装置は、1以上の融解温度を有する核酸混合物の融解曲線の検出信号を、異なる温度範囲内において検出する検出手段と、前記検出手段により検出された検出信号から得られる特徴量の比と検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算手段と、を含んで構成されている。検量情報とは、特徴量の比と核酸の存在比との関係を表す情報であり、例えば、特徴量の比と核酸の存在比との関係を表す検量線、表、計算式等である。
【0007】
本発明の核酸の存在比測定装置によれば、検出手段が、1以上の融解温度を有する核酸混合物の融解曲線の検出信号を、異なる温度範囲内において検出する。そして、存在比演算手段が、検出手段により検出された検出信号から得られる特徴量の比と検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算することで、検体(測定対象の核酸混合物)中の核酸の存在比を測定する。
【0008】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、各々異なる融解温度を有する核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々から得られた温度と検出信号との関係を表す融解曲線に基づいて、前記融解温度を含む複数の温度範囲内における前記融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比と前記存在比との関係を表す検量情報を記憶した記憶手段、または前記検量情報を入力するための入力手段を含んで構成することができる。
【0009】
このような形態によれば、記憶手段に、各々異なる融解温度を有する核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々から得られた温度と検出信号との関係を表す融解曲線に基づいて、各々異なる融解温度を含む複数の温度範囲内における融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比と存在比との関係を表す検量情報が記憶されている。または、この検量情報が入力手段により入力される。そして、測定対象の核酸混合物の融解曲線の複数の温度範囲の各々に対応する温度範囲内における融解曲線の検出信号に基づいて、特徴量の比を演算し、演算された特徴量の比と検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算することで、検体中の核酸の存在比を測定する。
【0010】
このように、複数の核酸の存在比と各核酸の融解温度を含む複数の温度範囲内の融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比との関係を表す検量情報と、測定対象の核酸混合物の複数の温度範囲の各々に対応する温度範囲内の融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比とに基づいて、簡易に核酸の存在比を演算することで検体中の核酸の存在比を測定することができる。
【0011】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、前記特徴量の比を、一つの融解温度付近における検出信号のレベルからバックグラウンドレベルを減算した値と、他の融解温度付近における検出信号のレベルからバックグラウンドレベルを減算した値との比、一つの融解温度付近における検出信号の微分値からバックグラウンドレベルを減算した値と他の融解温度付近における検出信号の微分値からバックグラウンドレベルを減算した値との比、一つの温度範囲内の検出信号の微分値の和と他の温度範囲内の検出信号の微分値の和との比、または一つの温度範囲内の検出信号の微分値の和からバックグラウンドレベルの和を減算した値と、他の温度範囲内の検出信号の微分値の和からバックグラウンドレベルの和を減算した値との比とすることができる。
【0012】
融解温度付近における検出信号とは、本来は融解温度における検出信号を用いることが望ましいが、試薬条件(検体の状態)やサイクル数によって生じる融解温度のぶれや、測定装置の検出感度(例えば、1℃単位で測定)により生じる誤差を考慮して、融解温度付近における検出信号を用いることを意味するものである。なお、融解温度付近における検出信号には、融解温度における検出信号が含まれる。
【0013】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、前記特徴量の比を、温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線において、一つの温度範囲の下限値に対応する点と前記一つの温度範囲の上限値に対応する点とを通る直線と融解曲線とで囲まれた部分の面積と、他の温度範囲の下限値に対応する点と前記他の温度範囲の上限値に対応する点とを通る直線と融解曲線とで囲まれた部分の面積との比とすることができる。
【0014】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、前記温度範囲の上限値または下限値を、温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線における2つのピーク間で検出信号の微分値が最小となる温度、温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線におけるピークの裾野に対応する温度、または温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線におけるピークから±15℃以内の温度とすることができる。
【0015】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、前記温度範囲の上限値または下限値を、温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線におけるピークから±10℃以内の温度とすることができる。
【0016】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、前記温度範囲の上限値または下限値を、温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線におけるピークから±7℃以内の温度とすることができる。
【0017】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、前記一つの温度範囲の上限値と、前記一つの温度範囲より高い温度範囲を含有する温度範囲の下限値とを、異なる値とすることができる。
【0018】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、前記一つの温度範囲の下限値から上限値までの幅と、前記他の温度範囲の下限値から上限値までの幅を、同一の幅とすることができる。
【0019】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、前記一つの温度範囲の下限値から上限値までの幅と、前記他の温度範囲の下限値から上限値までの幅を、異なる幅とすることができる。
【0020】
また、本発明の核酸の存在比測定装置の他の形態は、前記核酸混合物の温度変化を制御する温度制御手段と、前記検出信号として吸光度、蛍光強度、または相対蛍光強度を計測する計測手段と、をさらに含んで構成することができる。この構成により、検体から計測した検出信号を用いて、検体中の核酸の存在比を測定することができる。
【0021】
また、本発明の核酸の存在比測定方法は、1以上の融解温度を有する核酸混合物の融解曲線の検出信号を、異なる温度範囲内において検出する検出工程と、前記検出工程において検出された検出信号から得られる特徴量の比と検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算工程と、を含む方法である。
【0022】
本発明の核酸の存在比測定方法によれば、検出工程で、1以上の融解温度を有する核酸混合物の融解曲線の検出信号を、異なる温度範囲内において検出する。そして、存在比演算工程で、検出工程において検出された検出信号から得られる特徴量の比と検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算することで、検体中の核酸の存在比を測定する。
【0023】
また、本発明の核酸の存在比測定方法の他の形態は、各々異なる融解温度を有する核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々から得られた温度と検出信号との関係を表す融解曲線に基づいて、前記融解温度を含む複数の温度範囲内における前記融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比と前記存在比との関係を表す検量情報を作成する検量情報作成工程と、測定対象の核酸混合物の融解曲線の前記複数の温度範囲の各々に対応する温度範囲内における融解曲線の検出信号に基づいて特徴量の比を演算する特徴量比演算工程と、前記特徴量比演算工程において演算された特徴量の比と前記検量情報作成工程において作成された検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算工程と、を含む方法であってもよい。これらの工程を経て核酸の存在比を演算することで、核酸の存在比を測定することができる。
【0024】
また、本発明の核酸の存在比測定プログラムは、コンピュータを、1以上の融解温度を有する核酸混合物の融解曲線の検出信号であって、異なる温度範囲内において検出された検出信号を取り込み、取り込んだ検出信号から得られる特徴量の比と検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算手段として機能させることで、コンピュータに検体中の核酸の存在比を測定させるためのプログラムである。
【0025】
また、本発明の核酸の存在比測定プログラムの他の形態は、コンピュータを、各々異なる融解温度を有する核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々から得られた温度と検出信号との関係を表す融解曲線に基づいて、前記融解温度を含む複数の温度範囲内における前記融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比と前記存在比との関係を表す検量情報が記憶された記憶手段から該検量情報を取得するか、または入力手段により入力される前記検量情報を取得する取得手段、測定対象の核酸混合物の融解曲線の前記複数の温度範囲の各々に対応する温度範囲内における融解曲線の検出信号に基づいて特徴量の比を演算する特徴量比演算手段、及び前記特徴量比演算手段により演算された特徴量の比と前記取得手段により取得された検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算手段として機能させることもできる。これにより、コンピュータに検体中の核酸の存在比を測定させることができる。また、本発明の核酸存在比測定プログラムの他の形態として、前記コンピュータを、前記検出信号や一部の演算を他のコンピュータで実行させるための制御手段として機能させることができる。
【0026】
また、本発明の判定方法は、上記の核酸の存在比測定装置、上記の核酸の存在比測定方法、または上記の核酸の存在比測定プログラムを用いて得られる核酸の存在比と、予め定めた核酸の存在比と患者の状態との関係とに基づいて、患者の状態を判定する方法である。
【0027】
また、本発明の判定方法は、上記の核酸の存在比測定装置、上記の核酸の存在比測定方法、または上記の核酸の存在比測定プログラムを用いて得られる核酸の存在比と、予め定めた核酸の存在比と体質及び体質に適した薬剤処方量の少なくとも一方との関係とに基づいて、体質及び体質に適した薬剤処方量の少なくとも一方を判定する方法である。
【0028】
また、本発明の核酸の存在比測定キットは、上記の核酸の存在比測定装置、上記の核酸の存在比測定方法、または上記の核酸の存在比測定プログラムにおいて、前記核酸の存在比を測定する際に用いられ、前記核酸混合物中の核酸に存在し得る標的とする変異を含む核酸配列の領域にハイブリダイズ可能なプローブと、前記核酸混合物中の核酸に存在し得る標的とする変異を含む核酸配列を増幅可能なプライマーセットと、を含む核酸の存在比測定キットである。また、本発明の核酸の存在比測定キットを、予め定めた核酸の存在比と体質及び体質に適した薬剤処方量の少なくとも一方との関係とに基づいて、体質及び体質に適した薬剤処方量の少なくとも一方を判定するために用いることもできる。
【0029】
また、本発明の核酸の存在比測定装置は、複数の核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々の温度と検出信号との関係を表す融解曲線に基づいて、各々異なる大きさの融解温度を含む複数の温度範囲内における融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比と前記存在比との関係を表す検量情報を記憶した記憶手段と、測定対象の核酸混合物の融解曲線の前記複数の温度範囲の各々に対応する温度範囲内における融解曲線の検出信号に基づいて、特徴量の比を演算する特徴量比演算手段と、前記特徴量比演算手段により演算された特徴量の比と前記記憶手段に記憶された検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算手段と、を含んで構成してもよい。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明の核酸の存在比測定装置、核酸の存在比測定方法、及び核酸の存在比測定プログラムによれば、異なる融解温度を有する核酸混合物の融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比と検量情報とに基づいて、簡易に核酸の存在比を演算することで検体中の核酸の存在比を測定することができる、という効果が得られる。
【0031】
また、本発明の判定方法及び判定キットによれば、本発明の核酸の存在比測定装置、核酸の存在比測定方法、または核酸の存在比測定プログラムにより得られた核酸の存在比を用いて、患者の状態を判定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施の形態の核酸の存在比測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】(A)核酸混合物の融解曲線、及び(B)微分融解曲線の一例を示す図である。
【図3】微分融解曲線の他の例を示す図である。
【図4】検量線の一例を示す図である。
【図5】本実施の形態の核酸の存在比測定装置における核酸の存在比測定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図6】実施例における核酸混合物の各サンプルの微分融解曲線を示す図である。
【図7】実施例における測定対象の核酸混合物の融解曲線を示す図である。
【図8】実施例における測定対象の核酸混合物の微分融解曲線を示す図である。
【図9】核酸混合物の(A)融解曲線、及び(B)微分融解曲線の他の例を示す図である。
【図10】特徴量の比の他の例について説明するための図である。
【図11】微分融解曲線において2つの温度範囲が離れている例を示す図である。
【図12】微分融解曲線においてベース値がずれている例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して、本発明の核酸の存在比測定装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0034】
図1に示すように、本実施の形態の核酸の存在比測定装置10は、キーボード、マウス、タッチパネル、バーコードリーダ等の読取装置で構成され、かつ操作することにより各種情報を入力するための操作部12、核酸の存在比の測定結果を表示するための表示部14、及び核酸の存在比の測定処理を実行するコンピュータ16を備えている。
【0035】
コンピュータ16は、核酸の存在比測定装置10全体の制御を司るCPU20、後述する核酸の存在比測定処理等の各種プログラムを記憶した記憶媒体としてのROM22、ワークエリアとしてデータを一時的に格納するRAM24、各種情報が記憶された記憶手段としてのメモリ26、入出力ポート(I/Oポート)28、ネットワークインターフェース(ネットワークI/F)30、及びこれらを接続するバスを含んで構成されている。I/Oポート28には、操作部12、及び表示部14が接続されている。なお、さらにHDDを設けてもよい。
【0036】
また、メモリ26には、2種類の核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々の融解曲線に基づいて、各々異なる大きさの融解温度を含む2つの温度範囲内における融解曲線の検出信号の微分値の和からバックグラウンドレベルの和を減算した値の比と2種類の核酸の存在比との関係を表す検量線が記憶されている。なお、検量線は、ROM22またはHDDに記憶しておいてもよい。また、本実施の形態では、記憶しておいた検量線を演算前に事前に読み出す場合について説明するが、バーコードリーダで検量線の情報を含んだバーコードを読み取ったり、各種読取装置でICチップやRFIDに記録された検量線の情報を読み取ったりするなど、検量線の情報を操作部12から入力してもよいし、検量線の情報をI/Oポート28やネットワークI/F30を介して接続された外部装置から受信するようにしてもよい。
【0037】
ここで、検量線の作成方法について説明する。
【0038】
まず、例えば、ワイルド型の核酸Wtとミュータント型の核酸Mtとの2種類の核酸の存在比を各々異ならせた複数の核酸混合物を作製し、複数の核酸混合物の各々について、融解曲線解析装置を用いて融解曲線を得る。
【0039】
図2(A)に、ある1つの核酸混合物の温度と吸光度または蛍光強度等の検出信号との関係で表された融解曲線、及び同図(B)に温度と検出信号の微分値との関係で表された融解曲線(微分融解曲線ともいう)を示す。この微分融解曲線からピークを検出することにより、核酸Wtの融解温度TmW及び核酸Mtの融解温度TmMを検出して、TmW及びTmMを含む温度範囲の各々を設定する。TmWを含む温度範囲ΔTWとしては、例えば、TmWとTmMとの間で検出信号の微分値が最小となる温度を下限、検出信号のピークの裾野に対応する温度を上限とする温度範囲を設定することができる。また、TmMを含む温度範囲ΔTMとしては、例えば、TmWとTmMとの間で検出信号の微分値が最小となる温度を上限、検出信号のピークの裾野に対応する温度を下限とする温度範囲を設定することができる。なお、温度範囲ΔTW及び温度範囲ΔTMは、図2(B)に示すように、同一の幅(例えば、10℃)となるよう、または、図3に示すように、異なる幅(例えば、温度範囲ΔTWが7℃、温度範囲ΔTMが16℃)となるように設定することができる。また、温度範囲ΔTW及び温度範囲ΔTMは、それぞれの融解温度TmからプラスX℃、マイナスX℃の幅(X℃は例えば15℃以内、望ましくは10℃以内、より望ましくは7℃以内)というように設定することができる。このような温度範囲の設定を自動的に行うのは容易である。
【0040】
次に、温度範囲ΔTW及び温度範囲ΔTMの各々について、微分融解曲線の温度範囲の下限に対応する点と上限に対応する点とを通る直線と微分融解曲線とで囲まれた面積(図2(B)の斜線部分)を求める。面積の求め方の一例として、具体的に以下のように求めることができる。温度Tにおける検出信号の微分値をf(T)とし、温度Tにおけるベース値をB(T)として、下記(1)式により求める。
【0041】
面積S={f(Ts+1)−B(Ts+1)}+{f(Ts+2)−B(Ts+2)}
+・・・+{f(Te−1)−B(Te−1)} ・・・(1)
【0042】
ただし、Tsは各温度範囲における下限値、Teは上限値である。また、各温度Tにおけるベース値B(T)は、下記(2)式により求まる値であり、検出信号に含まれるバックグラウンドレベルを表すものである。このベース値を検出信号の微分値から減算することにより、検出信号に含まれるバックグラウンドの影響を、より適切に除去することができる。
【0043】
B(T)=a×(T−Ts)+f(Ts) ・・・(2)
ただし、a={f(Te)−f(Ts)}/(Te−Ts) である。
【0044】
上記(1)式及び(2)式に従って、各核酸混合物について、温度範囲ΔTWにおける面積SW及び温度範囲ΔTMにおける面積SMを求め、面積比と各核酸混合物の存在比との関係を表す検量線を作成する。図4に、横軸に存在比(核酸混合物の総量に対する核酸Mtの割合)をとり、縦軸に面積比(SM/SW)をとった検量線の一例を示す。このように作成された検量線をメモリ26に記憶しておく。なお、面積比はSW/SMで定めてもよい。
【0045】
次に、図5を参照して、本実施の形態の核酸の存在比測定装置10において実行される測定対象の核酸混合物に対する核酸の存在比測定処理ルーチンについて説明する。
【0046】
ステップ100で、メモリ26に記憶された検量線を読み込む。
【0047】
次に、ステップ102で、2種類の核酸の存在比が未知である検体(測定対象の核酸混合物)の融解曲線のデータを取得する。融解曲線のデータは、ネットワークI/F30を介して接続された融解曲線解析装置等の外部装置から取得したり、記録媒体に記録されたデータを読み込んだりすることにより取得することができる。
【0048】
次に、ステップ104で、上記ステップ102で取得した融解曲線の検出信号を温度に関して微分して、温度と検出信号の微分値との関係を表す微分融解曲線を演算する。
【0049】
次に、ステップ106で、上記ステップ104で演算した微分融解曲線に対して、上記ステップ100で読み込んだ検量線を作成したときに設定した温度範囲ΔTW及びΔTMの各々に対応した温度範囲ΔT’W及びΔT’Mを設定する。なお、温度範囲ΔT’W及びΔT’Mは、検量線を作成したときに設定した温度範囲ΔTW及びΔTMと同一の温度範囲を設定してもよいし、温度範囲ΔTW及びΔTMに近似した温度範囲を設定してもよい。
【0050】
そして、温度範囲ΔT’W及び温度範囲ΔT’Mの各々について、微分融解曲線の温度範囲の下限に対応する点と上限に対応する点とを通る直線と微分融解曲線とで囲まれた面積を求める。具体的には、(1)式及び(2)式に従って、検量線を作成する際に各温度範囲における面積を演算したのと同様の手法により、温度範囲ΔT’Wにおける面積S’W、及び温度範囲ΔT’Mにおける面積S’Mを演算する。
【0051】
次に、ステップ108で、上記ステップ106で演算した面積S’W及びS’Mを用いて、面積比S’M/S’Wを演算する。
【0052】
次に、ステップ110で、上記ステップ108で演算した面積比S’M/S’Wと、上記ステップ100で読み込んだ検量線に基づいて、面積比S’M/S’Wに対応する核酸の存在比を演算することで検体の核酸の存在比を測定する。すなわち、検体の変異の割合を測定する。
【0053】
次に、ステップ112で、上記ステップ110での測定結果が表示部14に表示されるように、測定結果を出力して、処理を終了する。
【0054】
なお、上記ルーチンでは、ステップ102において、融解曲線を取得する前に、検量線の事前の読み込みを行っているが(ステップ100)、検量線の読み込みは、ステップ110において、面積比及び検量線に基づいて、核酸の存在比(変位の割合)を測定する前であれば、いずれの段階で行ってもよい。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態の核酸の存在比測定装置によれば、2種類の核酸の存在比と各核酸の融解温度を含む2つの温度範囲内の微分融解曲線から得られる面積比との関係を表す検量線と、存在比が未知の測定対象の核酸混合物の微分融解曲線の2つの温度範囲の各々に対応する温度範囲内の微分融解曲線から得られる面積比とに基づいて、簡易に検体の核酸の存在比を演算することで、簡易に検体の核酸の存在比を測定することができる。すなわち、簡易に検体の変異の割合を測定することができる。
【0056】
[実施例1]
c−kit遺伝子の部分配列を測定対象の核酸として用いて、本発明の一実施例を以下に説明する。
【0057】
サンプルとして表3に示す核酸混合物のサンプル(103コピー/反応液)を用い、全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(商標)、アークレイ社製)を用いてPCRおよびTm分析を行った。PCR反応液組成は表1の通り、PCRおよびTm分析の条件は表4の通りである。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
プラスミドには、pT7Blue T−vector(タカラバイオ社)に下記に示す配列(Wt配列:配列番号4、Mt配列:配列番号5)を挿入し、EcoRIでリニアライズしたものを用いた。Wt配列とMt配列とは、大文字で示した塩基が異なっている。Wt配列を挿入したプラスミドをWtプラスミド、Mt配列を挿入したプラスミドをMtプラスミドとする。
【0062】
Wt配列:cactatagtattaaaaagttagttttcactctttacaagttaaaatgaatttaaatggttttcttttctcctccaacctaatagtgtattcacagagacttggcagccagaaatatcctccttactcatggtcggatcacaaagatttgtgattttggtctagccagagAcatcaagaatgattctaattatgtggttaaaggaaacgtgagtacccattctctgcttgacagtcctgcaaaggatttttagtttcaactttcgataaaaattgtttcctgtgactttcataatgtaaat
【0063】
Mt配列:cactatagtattaaaaagttagttttcactctttacaagttaaaatgaatttaaatggttttcttttctcctccaacctaatagtgtattcacagagacttggcagccagaaatatcctccttactcatggtcggatcacaaagatttgtgattttggtctagccagagTcatcaagaatgattctaattatgtggttaaaggaaacgtgagtacccattctctgcttgacagtcctgcaaaggatttttagtttcaactttcgataaaaattgtttcctgtgactttcataatgtaaat
【0064】
【表4】
【0065】
図6に、上記条件により測定した各サンプルの微分融解曲線を示す。本実施例では、検出信号として蛍光強度が得られる。図6の微分融解曲線からピークを検出して各核酸の融解温度TmW及びTmMを求め、求めた融解温度を含む温度範囲ΔTW(58℃〜66℃)、温度範囲ΔTM(50℃〜58℃)を設定した。そして、各サンプルについて、上記(1)式及び(2)式に従って、温度範囲ΔTWにおける面積SW及び温度範囲ΔTWにおける面積SMを求め、面積比SM/SWを求めた。表5に、各サンプルの面積SM及びSW、並びに面積比SM/SWを示す。
【0066】
【表5】
【0067】
表5に示した各値に基づいて、横軸にサンプルの総量に対するMtの割合をとり、縦軸に面積比SM/SWをとった検量線を作成した。ここで作成した検量線は、図4に一例と示した検量線と同一である。
【0068】
次に、この検量線を用いて、WtとMtとの存在比が未知である測定対象の核酸混合物の核酸の存在比を測定した。
【0069】
まず、図7に示す測定対象の核酸混合物の温度と蛍光強度との関係を表す融解曲線のデータを取得し(ステップ102)、図8に示すように、融解曲線の蛍光強度を微分して、温度と蛍光強度の微分値との関係を表す微分融解曲線を演算した(ステップ104)。
【0070】
次に、演算した微分融解曲線に対して、図4の検量線を作成したときに設定した温度範囲ΔTW(58℃〜66℃)、温度範囲ΔTM(50℃〜58℃)と同じ温度範囲ΔT’W及び温度範囲ΔT’Mを設定し、(1)式及び(2)式に従って、温度範囲ΔT’Wにおける面積S’W、及び温度範囲ΔT’Mにおける面積S’Mを演算した(ステップ106)。ここでは、S’W=730、面積S’M=241.5が得られた。
【0071】
次に、演算した面積S’W及びS’Mを用いて、面積比S’M/S’Wを演算した(ステップ108)。ここでは、S’M/S’W=0.331(33.1%)が得られた。
【0072】
次に、図4の検量線において、面積比S’M/S’W(=33.1%)に対応するMtの割合、すなわち変異の割合を演算することで、変異の割合を測定した(ステップ110)。ここでは、Mtの割合が40〜50%の間となった。
【0073】
なお、上記実施例では、融解状態を示す検出信号として、蛍光を発するプローブを用いて、蛍光物質に応じた励起光により放射される蛍光の強度を用いる場合について説明したが、これに限定されない。例えば、二本鎖核酸の融解により増加する260nmにおける吸光度を用いてもよい。また、上記実施例では、二本鎖の形成(非融解)のときに消光するプローブを用いる場合について説明したが、二本鎖の形成のときに蛍光を発するプローブを用いてもよい。その場合、図9(A)に示すような温度と蛍光強度との関係を表す融解曲線が得られ、これから同図(B)に示すような微分融解曲線が得られる。
【0074】
蛍光物質の具体例としては、エチジウムブロマイドやSYBR(登録商標)Greenのようなインターカレーターがあげられる。これらは、一般に、二本鎖の形成により蛍光を発し、二本鎖の融解によって蛍光の発生が抑制される。また、蛍光物質は、例えば、二本鎖核酸を構成する少なくとも一方の一本鎖核酸に結合してもよい。蛍光物質が結合した一本鎖核酸としては、例えば、本実施例で用いたグアニン消光プローブとして知られているQProbe(登録商標)のようないわゆる蛍光消光プローブがあげられる。蛍光消光プローブは、一般に、二本鎖の形成により蛍光が消光し、二本鎖の融解によって蛍光を発生する。
【0075】
また、本発明における核酸混合物の融解状態を示す検出信号は、上述のように、例えば、サンプルの非融解によって発生し、サンプルの融解によって発生が抑制されるものでもよいし、反対に、サンプルの非融解によって発生が抑制され、サンプルの融解によって発生するものであってもよい。また、検出信号の微分値は、例えば、温度に関して検出信号を微分して「dF/dT」で表してもよいし、「−dF/dT」で表してもよい。dFは検出信号の変化量、dTは温度の変化量である。サンプルの融解によって検出信号の発生が抑制される場合、検出信号の微分値を「dF/dT」で表した微分融解曲線において、ピークは谷型となり、検出信号の微分値を「−dF/dT」で表した微分融解曲線において、ピークは山型となる。また、サンプルの融解によって検出信号を発生する場合、検出信号の微分値を「dF/dT」で表した微分融解曲線において、ピークは山型となり、検出信号の微分値を「−dF/dT」で表した微分融解曲線において、ピークは谷型となる。いずれの場合も、所定の温度範囲における微分融解曲線とベース値を表す直線とで囲まれた部分の面積を求めることができる。また、検出信号の微分値は、温度に関して検出信号を微分した微分値に限らず、時間に関して検出信号を微分した微分値を用いてもよい。
【0076】
また、上記実施の形態及び実施例では、融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比として、上記の面積比を用いる場合について説明したが、これに限定されない。特徴量の比として、図10(A)に示すように、融解温度TmWにおける検出信号のレベルFWと融解温度TmMにおける検出信号のレベルFMとの比(FM/FW)を用いてもよい。また、温度範囲ΔTWの下限値における検出信号のレベルと上限値における検出信号のレベルとの差ΔFWと、温度範囲ΔTMの下限値における検出信号のレベルと上限値における検出信号のレベルとの差ΔFMとの比(ΔFM/ΔFW)を用いてもよい。また、融解温度TmWにおける検出信号のレベルからバックグラウンドレベルを減算した値(F−B)Wと、融解温度TmMにおける検出信号のレベルからバックグラウンドレベルを減算した値(F−B)Mとの比((F−B)M/(F−B)W)を用いてもよい。
【0077】
また、同図(B)に示すように、融解温度TmWにおける検出信号の微分値fWと融解温度TmMにおける検出信号の微分値fMとの比(fM/fW)を用いてもよい。また、温度範囲ΔTWの検出信号の微分値の和ΣfW(同図中右下がり斜線部の面積に相当)と温度範囲ΔTMの検出信号の微分値の和ΣfM(同図中右上がり斜線部の面積に相当)との比(ΣfM/ΣfW)を用いてもよい。また、融解温度TmWにおける検出信号の微分値からバックグラウンドレベルを減算した値(f−B)Wと融解温度TmMにおける検出信号の微分値からバックグラウンドレベルを減算した値(f−B)Mとの比((f−B)M/(f−B)W)を用いてもよい。(f−B)Wは、温度範囲ΔTWの下限値に対応する点と上限値に対応する点とを通る直線上の融解温度TmWに対応する値をfWから差し引いて求めることができる。(f−B)Mについても同様に、温度範囲ΔTMの下限値に対応する点と上限値に対応する点とを通る直線上の融解温度TmMに対応する値をfMから差し引いて求めることができる。
【0078】
また、上記実施例では、1塩基のみが異なる核酸の存在比を測定しているが、目的とする各々の核酸の融解温度が異なるものであれば、相同性は特に限定されるものではなく、相同性が全くなくてもよい。例えば、融解温度が異なり、かつ相同性のない遺伝子Aと遺伝子Bとの核酸混合物について、遺伝子Aと遺伝子Bとの存在比を測定することもできる。
【0079】
また、上記実施例では、各々の核酸に対して同じプローブを用いて検出しているが、異なるプローブを用いてもよい。
【0080】
また、上記実施の形態及び実施例では、核酸の各々の融解温度を含む温度範囲(ΔTW及びΔTM)が連続している場合について説明したが、図11に示すように、融解温度が離れている場合などには、温度範囲も非連続な範囲で設定することができる。
【0081】
また、上記実施の形態及び実施例では、バックグラウンドレベルを減算するためのベース値を、微分融解曲線における温度範囲の下限値に対応する点と上限値に対応する点とを通る直線上の値とする場合について説明したが、例えば、ベース値を、温度範囲の上限値または下限値に対応する検出信号の微分値で一定にしてもよい。ただし、図12に示すように、温度範囲の下限値に対応する検出信号の微分値と上限値に対応する検出信号の微分値との差が大きい場合(ベース値に所定量以上のずれが生じている場合)には、上記実施の形態及び実施例のように、温度範囲の下限値に対応する点と上限値に対応する点とを通る直線上の値をベース値とした方が、精度よくバックグラウンドの影響を除去することができる。また、ベース値を直線ではなく曲線で定めるようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施の形態及び実施例では、2種類の核酸の存在比が異なる核酸混合物について、核酸の存在比を演算する場合について説明したが、3種類以上の核酸の存在比が異なる核酸混合物についても、同様に本発明を適用することができる。
【0083】
また、上記実施の形態及び実施例では、検量情報として、図4に示すような検量線を用いる場合について説明したが、特徴量の比と核酸の存在比との関係を表形式で表した検量情報や、特徴量の比と核酸の存在比との関係を計算式で表した検量情報を用いてもよい。
【0084】
また、上記実施の形態では、測定結果を表示部14に表示する場合について説明したが、印字装置を設けて、測定結果を紙などの媒体に印字出力するようにしてもよいし、可搬性記録媒体に記録するようにしてもよいし、I/Oポート28やネットワークI/F30を介して接続された外部装置に、測定結果を出力するようにしてもよい。
【0085】
また、本実施の形態の核酸の存在比測定装置に、予め定めた核酸の存在比と病気の進行状況との関係と、演算された核酸の存在比とに基づいて、病気の進行状況を判定する判定部をさらに設けて構成してもよい。変異遺伝子と正常遺伝子との存在比を測定し、その存在比を患者の状態を見るためのパラメーターとして用いることができる。例えば、血中遊離核酸における変異遺伝子(例えば、ガン疾患に関連する遺伝子)と正常遺伝子との割合と病気の進行状況との関係を定めたテーブルを予め作成しておく。そして、変異遺伝子と正常遺伝子との存在比を測定し、予め作成しておいたテーブルと比較することにより、病気の進行状態を判定することができる。このように、測定した核酸の存在比を用いて、患者の状態、例えば病気の進行状況などをモニタリングすることができる。
【0086】
また、本実施の形態の核酸の存在比測定装置に、予め定めた核酸の存在比と体質及び体質に適した薬剤処方量の少なくとも一方との関係と、演算された核酸の存在比とに基づいて、体質及び体質に適した薬剤処方量の少なくとも一方を判定する判定部をさらに設けて構成してもよい。体質とは、被測定者の特定の疾患に対する罹患し易さや、特定の薬剤投与に対する薬効である。例えば、ある遺伝子(コピー数多型(copy number variant)がある遺伝子)とコピー数が既知の対象となる遺伝子との割合と、特定の疾患に対する罹患し易さ、特定の疾患の罹患の有無、病状、薬効、薬剤処方量等との関係を定めたテーブルを予め作成しておく。そして前記コピー数多型が知られている遺伝子と対象となる遺伝子の存在比を測定し、予め作成しておいたテーブルと比較することにより、特定の疾患に対する罹患し易さ、薬効等の体質や、罹患の有無や病状、薬剤処方量等を判定することができる。このように、測定した核酸の存在比を用いて、被測定者の体質や薬剤処方量等を判定することができる。例えばCCL3Lのコピー数が多い場合には、HIVに罹患し難い体質であることが知られており、FCGR3Bのコピー数が少ない場合には、全身性エリテマトーデスなどのような自己免疫疾患に罹患し易い体質であることが知られている。また、自閉症や統合失調症や突発性学習障害などに関連する遺伝子においても、このような遺伝子のコピー数多型が表れることが知られている。
【0087】
また、本発明の核酸の存在比測定キットは、標的とする変異を含む核酸配列の領域にハイブリダイズ可能なプローブと、標的とする変異を含む核酸配列を増幅可能なプライマーセットとを含む。これらの試薬を含む測定キットを用いることにより、より簡便に目的とする遺伝子の変異を検出して、存在比を測定することができるなどの利点を有する。
【0088】
本発明の核酸の存在比測定キットを構成するプローブ及びプライマーの配列は、目的とする遺伝子の配列、更には目的とする遺伝子変異の配列が既知であれば、これらの配列に基づいて当業者によって適宜設計可能である。検査を効果的に実施するために必要なプローブの長さ、プライマーセットのアニール位置なども、当業者により適宜調整することができる。
【0089】
また、上記のプローブは、標識が付されている標識化プローブであることが検出の効率性の観点から好ましい。標識化プローブにおける標識物質の具体例としては、例えば、蛍光色素および蛍光団が挙げられる。標識化プローブの具体例としては、例えば、蛍光色素で標識され、単独で蛍光を示し且つハイブリッド形成により蛍光が減少(例えば、消光)するプローブが好ましい。
【0090】
このような蛍光消光現象(Quenching phenomenon)を利用したプローブは、一般に、蛍光消光プローブと呼ばれる。中でも、前記プローブとしては、オリゴヌクレオチドの3’領域(例えば、3’末端)もしくは5’領域(例えば、5’末端)の塩基が蛍光色素で標識化されていることが好ましく、標識化される塩基は、シトシン(C)であることが好ましい。この場合、前記標識化プローブがハイブリダイズする検出目的配列において、前記標識化プローブの末端塩基Cと対をなす塩基もしくは前記対をなす塩基から1〜3塩基離れた塩基がグアニン(G)となるように、前記標識化プローブの塩基配列を設計することが好ましい。このようなプローブは、一般的にグアニン消光プローブと呼ばれ、いわゆるQ Probeとして知られている。このようなグアニン消光プローブが検出目的配列にハイブリダイズすると、蛍光色素で標識化された末端のCが、前記検出目的配列におけるGに近づくことによって、前記蛍光色素の発光が弱くなる(蛍光強度が減少する)という現象を示す。このようなプローブを使用すれば、シグナルの変動により、ハイブリダイズと解離とを容易に確認することができる。また、前記標識物質は、例えば、通常、ヌクレオチドのリン酸基に結合することができる。
【0091】
本発明の核酸の存在比測定キットに含まれる各試薬は、異なる容器に含まれていてもよく、同一の容器に含まれていてもよい。なお、本明細書における「異なる容器」とは、各試薬が非接触状態を維持できるように区分けされたものであればよく、必ずしも、独立して取扱い可能な個別の容器でなくてもよい。
【0092】
また、本発明の核酸の存在比測定キットには、上記の他に、増幅に必要なポリメラーゼ等の試薬又は緩衝液、ハイブリダイズのために必要な試薬又は緩衝液、検体試料を希釈するための希釈剤等を含んでもよい。更に、本発明の核酸の存在比測定キットには、本発明の核酸の存在比測定方法を記載した説明書、キットに含まれる若しくは追加的に含むことが可能な各種の試薬に関する使用説明書等を含むことが好ましい。
【0093】
また、上記実施の形態では、融解曲線のデータを、融解曲線解析装置等の外部装置から取得したり、記録媒体に記録されたデータを読み込んだりすることにより取得する場合について説明したが、融解曲線解析装置と本実施の形態の核酸の存在比測定装置とを一体に構成してもよい。具体的には、上記実施の形態の構成に加え、核酸混合物の温度変化を制御する温度制御部と、吸光度、蛍光強度、相対蛍光強度等の検出信号を計測する計測部とを設ける。そして、温度制御部により検体である核酸混合物を温度変化させたときの検出信号を計測部により計測することで、融解曲線のデータを得る。後は、上記実施の形態と同様に、融解曲線を用いて検体の核酸の存在比を測定することができる。
【0094】
なお、上記の核酸の存在比測定処理ルーチンを規定したプログラムを記録媒体に記録して提供するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0095】
10 核酸の存在比測定装置
12 操作部
14 表示部
16 コンピュータ
20 CPU
22 ROM
24 RAM
26 メモリ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の融解温度を有する核酸混合物の融解曲線の検出信号を、異なる温度範囲内において検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された検出信号から得られる特徴量の比と検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算手段と、
を含む核酸の存在比測定装置。
【請求項2】
各々異なる融解温度を有する核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々から得られた温度と検出信号との関係を表す融解曲線に基づいて、前記融解温度を含む複数の温度範囲内における前記融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比と前記存在比との関係を表す検量情報を記憶した記憶手段、または前記検量情報を入力するための入力手段
を含む請求項1に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項3】
前記特徴量の比を、
一つの融解温度付近における検出信号のレベルからバックグラウンドレベルを減算した値と、他の融解温度付近における検出信号のレベルからバックグラウンドレベルを減算した値との比、
一つの融解温度付近における検出信号の微分値からバックグラウンドレベルを減算した値と他の融解温度付近における検出信号の微分値からバックグラウンドレベルを減算した値との比、
一つの温度範囲内の検出信号の微分値の和と他の温度範囲内の検出信号の微分値の和との比、または
一つの温度範囲内の検出信号の微分値の和からバックグラウンドレベルの和を減算した値と、他の温度範囲内の検出信号の微分値の和からバックグラウンドレベルの和を減算した値との比
とした請求項1または請求項2に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項4】
前記特徴量の比を、温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線において、一つの温度範囲の下限値に対応する点と前記一つの温度範囲の上限値に対応する点とを通る直線と融解曲線とで囲まれた部分の面積と、他の温度範囲の下限値に対応する点と前記他の温度範囲の上限値に対応する点とを通る直線と融解曲線とで囲まれた部分の面積との比とした請求項1または請求項2に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項5】
前記温度範囲の上限値または下限値を、
温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線における2つのピーク間で検出信号の微分値が最小となる温度、
温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線におけるピークの裾野に対応する温度、または
温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線におけるピークから±15℃以内の温度
とした請求項4に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項6】
前記温度範囲の上限値または下限値を、温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線におけるピークから±10℃以内の温度とした請求項4に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項7】
前記温度範囲の上限値または下限値を、温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線におけるピークから±7℃以内の温度とした請求項4に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項8】
前記一つの温度範囲の上限値と、前記一つの温度範囲より高い温度範囲を含有する温度範囲の下限値とを、異なる値とした請求項4〜請求項7のいずれか1項に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項9】
前記一つの温度範囲の下限値から上限値までの幅と、前記他の温度範囲の下限値から上限値までの幅を、同一の幅とした請求項4〜請求項8のいずれか1項に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項10】
前記一つの温度範囲の下限値から上限値までの幅と、前記他の温度範囲の下限値から上限値までの幅を、異なる幅とした請求項4〜請求項8のいずれか1項に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項11】
前記核酸混合物の温度変化を制御する温度制御手段と、
前記検出信号として吸光度、蛍光強度、または相対蛍光強度を計測する計測手段と、
を含む請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項12】
1以上の融解温度を有する核酸混合物の融解曲線の検出信号を、異なる温度範囲内において検出する検出工程と、
前記検出工程において検出された検出信号から得られる特徴量の比と検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算工程と、
を含む核酸の存在比測定方法。
【請求項13】
各々異なる融解温度を有する核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々から得られた温度と検出信号との関係を表す融解曲線に基づいて、前記融解温度を含む複数の温度範囲内における前記融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比と前記存在比との関係を表す検量情報を作成する検量情報作成工程と、
測定対象の核酸混合物の融解曲線の前記複数の温度範囲の各々に対応する温度範囲内における融解曲線の検出信号に基づいて特徴量の比を演算する特徴量比演算工程と、
前記特徴量比演算工程において演算された特徴量の比と前記検量情報作成工程において作成された検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算工程と、
を含む核酸の存在比測定方法。
【請求項14】
コンピュータを、
1以上の融解温度を有する核酸混合物の融解曲線の検出信号であって、異なる温度範囲内において検出された検出信号を取り込み、取り込んだ検出信号から得られる特徴量の比と検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算手段
として機能させるための核酸の存在比測定プログラム。
【請求項15】
コンピュータを、
各々異なる融解温度を有する核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々から得られた温度と検出信号との関係を表す融解曲線に基づいて、前記融解温度を含む複数の温度範囲内における前記融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比と前記存在比との関係を表す検量情報が記憶された記憶手段から該検量情報を取得するか、または入力手段により入力される前記検量情報を取得する取得手段、
測定対象の核酸混合物の融解曲線の前記複数の温度範囲の各々に対応する温度範囲内における融解曲線の検出信号に基づいて特徴量の比を演算する特徴量比演算手段、及び
前記特徴量比演算手段により演算された特徴量の比と前記取得手段により取得された検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算手段
として機能させるための核酸の存在比測定プログラム。
【請求項16】
請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の核酸の存在比測定装置、請求項12もしくは請求項13に記載の核酸の存在比測定方法、または請求項14もしくは請求項15に記載の核酸の存在比測定プログラムを用いて得られる核酸の存在比と、予め定めた核酸の存在比と患者の状態との関係とに基づいて、患者の状態を判定する判定方法。
【請求項17】
請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の核酸の存在比測定装置、請求項12もしくは請求項13に記載の核酸の存在比測定方法、または請求項14もしくは請求項15に記載の核酸の存在比測定プログラムを用いて得られる核酸の存在比と、予め定めた核酸の存在比と体質及び体質に適した薬剤処方量の少なくとも一方との関係とに基づいて、体質及び体質に適した薬剤処方量の少なくとも一方を判定する判定方法。
【請求項18】
請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の核酸の存在比測定装置、請求項12もしくは請求項13に記載の核酸の存在比測定方法、または請求項14もしくは請求項15に記載の核酸の存在比測定プログラムにおいて、前記核酸の存在比を測定する際に用いられ、
前記核酸混合物中の核酸に存在し得る標的とする変異を含む核酸配列の領域にハイブリダイズ可能なプローブと、
前記核酸混合物中の核酸に存在し得る標的とする変異を含む核酸配列を増幅可能なプライマーセットと、
を含む核酸の存在比測定キット。
【請求項19】
前記プローブが標識化プローブである請求項18に記載の核酸の存在比測定キット。
【請求項1】
1以上の融解温度を有する核酸混合物の融解曲線の検出信号を、異なる温度範囲内において検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された検出信号から得られる特徴量の比と検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算手段と、
を含む核酸の存在比測定装置。
【請求項2】
各々異なる融解温度を有する核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々から得られた温度と検出信号との関係を表す融解曲線に基づいて、前記融解温度を含む複数の温度範囲内における前記融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比と前記存在比との関係を表す検量情報を記憶した記憶手段、または前記検量情報を入力するための入力手段
を含む請求項1に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項3】
前記特徴量の比を、
一つの融解温度付近における検出信号のレベルからバックグラウンドレベルを減算した値と、他の融解温度付近における検出信号のレベルからバックグラウンドレベルを減算した値との比、
一つの融解温度付近における検出信号の微分値からバックグラウンドレベルを減算した値と他の融解温度付近における検出信号の微分値からバックグラウンドレベルを減算した値との比、
一つの温度範囲内の検出信号の微分値の和と他の温度範囲内の検出信号の微分値の和との比、または
一つの温度範囲内の検出信号の微分値の和からバックグラウンドレベルの和を減算した値と、他の温度範囲内の検出信号の微分値の和からバックグラウンドレベルの和を減算した値との比
とした請求項1または請求項2に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項4】
前記特徴量の比を、温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線において、一つの温度範囲の下限値に対応する点と前記一つの温度範囲の上限値に対応する点とを通る直線と融解曲線とで囲まれた部分の面積と、他の温度範囲の下限値に対応する点と前記他の温度範囲の上限値に対応する点とを通る直線と融解曲線とで囲まれた部分の面積との比とした請求項1または請求項2に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項5】
前記温度範囲の上限値または下限値を、
温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線における2つのピーク間で検出信号の微分値が最小となる温度、
温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線におけるピークの裾野に対応する温度、または
温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線におけるピークから±15℃以内の温度
とした請求項4に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項6】
前記温度範囲の上限値または下限値を、温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線におけるピークから±10℃以内の温度とした請求項4に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項7】
前記温度範囲の上限値または下限値を、温度と検出信号の微分値との関係を表す融解曲線におけるピークから±7℃以内の温度とした請求項4に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項8】
前記一つの温度範囲の上限値と、前記一つの温度範囲より高い温度範囲を含有する温度範囲の下限値とを、異なる値とした請求項4〜請求項7のいずれか1項に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項9】
前記一つの温度範囲の下限値から上限値までの幅と、前記他の温度範囲の下限値から上限値までの幅を、同一の幅とした請求項4〜請求項8のいずれか1項に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項10】
前記一つの温度範囲の下限値から上限値までの幅と、前記他の温度範囲の下限値から上限値までの幅を、異なる幅とした請求項4〜請求項8のいずれか1項に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項11】
前記核酸混合物の温度変化を制御する温度制御手段と、
前記検出信号として吸光度、蛍光強度、または相対蛍光強度を計測する計測手段と、
を含む請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の核酸の存在比測定装置。
【請求項12】
1以上の融解温度を有する核酸混合物の融解曲線の検出信号を、異なる温度範囲内において検出する検出工程と、
前記検出工程において検出された検出信号から得られる特徴量の比と検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算工程と、
を含む核酸の存在比測定方法。
【請求項13】
各々異なる融解温度を有する核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々から得られた温度と検出信号との関係を表す融解曲線に基づいて、前記融解温度を含む複数の温度範囲内における前記融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比と前記存在比との関係を表す検量情報を作成する検量情報作成工程と、
測定対象の核酸混合物の融解曲線の前記複数の温度範囲の各々に対応する温度範囲内における融解曲線の検出信号に基づいて特徴量の比を演算する特徴量比演算工程と、
前記特徴量比演算工程において演算された特徴量の比と前記検量情報作成工程において作成された検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算工程と、
を含む核酸の存在比測定方法。
【請求項14】
コンピュータを、
1以上の融解温度を有する核酸混合物の融解曲線の検出信号であって、異なる温度範囲内において検出された検出信号を取り込み、取り込んだ検出信号から得られる特徴量の比と検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算手段
として機能させるための核酸の存在比測定プログラム。
【請求項15】
コンピュータを、
各々異なる融解温度を有する核酸の存在比が各々異なる複数の核酸混合物の各々から得られた温度と検出信号との関係を表す融解曲線に基づいて、前記融解温度を含む複数の温度範囲内における前記融解曲線の検出信号から得られる特徴量の比と前記存在比との関係を表す検量情報が記憶された記憶手段から該検量情報を取得するか、または入力手段により入力される前記検量情報を取得する取得手段、
測定対象の核酸混合物の融解曲線の前記複数の温度範囲の各々に対応する温度範囲内における融解曲線の検出信号に基づいて特徴量の比を演算する特徴量比演算手段、及び
前記特徴量比演算手段により演算された特徴量の比と前記取得手段により取得された検量情報とに基づいて、核酸の存在比を演算する存在比演算手段
として機能させるための核酸の存在比測定プログラム。
【請求項16】
請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の核酸の存在比測定装置、請求項12もしくは請求項13に記載の核酸の存在比測定方法、または請求項14もしくは請求項15に記載の核酸の存在比測定プログラムを用いて得られる核酸の存在比と、予め定めた核酸の存在比と患者の状態との関係とに基づいて、患者の状態を判定する判定方法。
【請求項17】
請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の核酸の存在比測定装置、請求項12もしくは請求項13に記載の核酸の存在比測定方法、または請求項14もしくは請求項15に記載の核酸の存在比測定プログラムを用いて得られる核酸の存在比と、予め定めた核酸の存在比と体質及び体質に適した薬剤処方量の少なくとも一方との関係とに基づいて、体質及び体質に適した薬剤処方量の少なくとも一方を判定する判定方法。
【請求項18】
請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の核酸の存在比測定装置、請求項12もしくは請求項13に記載の核酸の存在比測定方法、または請求項14もしくは請求項15に記載の核酸の存在比測定プログラムにおいて、前記核酸の存在比を測定する際に用いられ、
前記核酸混合物中の核酸に存在し得る標的とする変異を含む核酸配列の領域にハイブリダイズ可能なプローブと、
前記核酸混合物中の核酸に存在し得る標的とする変異を含む核酸配列を増幅可能なプライマーセットと、
を含む核酸の存在比測定キット。
【請求項19】
前記プローブが標識化プローブである請求項18に記載の核酸の存在比測定キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−29689(P2012−29689A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148520(P2011−148520)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
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