説明

栽培施設

【課題】風力発電と温室とをブラウンガスを介して効果的に組み合わせることにより、寒冷地や積雪地での温室内の保温を効率よく行うことができる栽培施設を提供する。
【解決手段】作物栽培用の温室1と、風力発電装置2と、該風力発電装置2で発電した電力を使用してブラウンガスを発生させるブラウンガス発生装置3と、該ブラウンガス発生装置3で発生したブラウンガスを利用したボイラー4とを備え、該ボイラー4で発生した熱を利用して前記温室1内を所定温度に保温する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培施設に関し、特に、寒冷地に設けられた温室内を効率よく保温することができる栽培施設に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、冬季や寒冷地における作物の栽培には、作物の生育環境を一定温度以上に保つために、温室、例えばビニールハウスやガラス温室が用いられており、温室内を保温するための装置として、液体燃料である重油や灯油を使用した加熱装置が広く採用されている。この場合は、燃料を補給する手間が掛かり、多額の燃料代も必要となる。このため、温室栽培に要する費用を削減するため、温室で使用する補助電力の発電源として太陽電池パネルや風力発電用風車を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−319720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、温室の照明やファンの電源として太陽電池パネルや風力発電用風車を用いただけでは十分なコストダウンを得ることができない。また、太陽電池パネルは積雪地では冬季の発電量が激減してしまうため、電力供給源として用いるのには問題がある。また、風力発電も、単に発電した電力をそのまま使用するだけでは、発電電力を有効利用することができないという問題があった。
【0004】
そこで本発明は、風力発電と温室とをブラウンガスを介して効果的に組み合わせることにより、寒冷地や積雪地での温室内の保温を効率よく行うことができる栽培施設を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の栽培施設は、作物栽培用の温室と、風力発電装置と、該風力発電装置で発電した電力を使用してブラウンガスを発生させるブラウンガス発生装置と、該ブラウンガス発生装置で発生したブラウンガスを利用したボイラーとを備え、該ボイラーで発生した熱を利用して前記温室内を所定温度以上に保温することを特徴としている。
【0006】
さらに、本発明の栽培施設で使用する前記風力発電装置は、基礎面から鉛直方向に立設した筒状部材にて構成された風洞と、前記筒状部材の周壁から法線方向に延出した複数の集風板と、該集風板相互間及び筒状部材の上端開口を閉塞する天板と、前記筒状部材の周壁に設けられて前記集風板によって集約された風を前記風洞内に導く複数の風取込口と、該風取込口に設けられて筒状部材外部から筒状部材内部への風の流通のみを許容し、内部から外部への流通を規制する逆流防止手段と、隣接する集風板間に設けられて集風板によって集約された風を下方に向けてガイドする複数のガイド板と、前記風洞の一端部から吹き出す風によって駆動されるタービンと、該タービンにより駆動される発電機とを含む風力発電装置であることが好ましい。
【0007】
また、前記風力発電装置において、隣接する前記集風板の外部側間に、外部から集風板間への風の流通のみを許容し、集風板間から外部への流通を規制する第2の逆流防止手段が設けられていると好適である。さらに、前記集風板は、筒状部材の周方向に6枚が等間隔で設けられていると好適である。前記風洞には、該風洞内に取り込まれた過剰の風を排出する余剰風排出部を設けることが好ましい。前記タービン及び前記発電機は、一つの風洞に風の流れ方向に複数設けられ、前記タービンの回転羽根は、風洞内に1/2〜1/4を臨ませると好適である。さらに、前記ブラウンガス発生装置は、前記ブラウンガスを貯留するガス貯槽を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の栽培施設によれば、風力発電装置で発電した電力をブラウンガスに変換して利用するので、電力の有効利用が図れる。また、風力発電装置として前述の構成の風力発電装置を使用することにより、風向きに関係なく、弱い風でも効率よく発電できるので、一つの風力発電装置で大面積の温室の保温が可能となる。さらに、余剰の電力を売電する他、一部をブラウンガスに変換してガス貯槽に貯留しておくことにより、一時的な熱量増大要求にも対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明の栽培施設の一形態例を示す概略図である。この栽培施設は、作物栽培用の温室1と、風力発電装置2と、該風力発電装置2で発電した電力Eを使用してブラウンガスを発生させるブラウンガス発生装置3と、該ブラウンガス発生装置3で発生したブラウンガスBを利用したボイラー4とを備えており、各ボイラー4で発生した熱を利用して各温室1内を保温するようにしている。また、ブラウンガス発生装置3には、発生したブラウンガスを貯留するガス貯槽5が併設されている。
【0010】
温室1は、その面積や栽培作物の種類等に応じて各種のものを用いることができ、小規模なビニールハウスから大規模なガラス温室まで、任意の構成のものを用いることができ、栽培作物に応じて各種構成のものを組み合わせることも可能である。
【0011】
ブラウンガス発生装置3は、周知のように、水を電気分解して水素と酸素との混合ガス、即ちブラウンガスを発生させる装置であって、一般的には、水を張った電解槽内に陽極と陰極とを配置し、陽極から発生する酸素と陰極から発生する水素とを捕集するように形成されている(例えば、特許第3130014号公報等参照)。
【0012】
前記風力発電装置2は、図2乃至図6に示すように、地下に発電機室11を、地上に集風手段12をそれぞれ設けている。該集風手段12は、基礎13の上方に立設した筒状部材14と、下端が基礎13に固設され、基部が筒状部材14の周壁に固定されて、該周壁の壁面から法線方向に延出した6枚の集風板15と、前記筒状部材14の上端開口及び隣接する集風板15同士の上端開口を閉塞する天板16と、前記筒状部材14の壁面に設けられた風取込口17と、隣接する集風板15間に設けられた上下複数のガイド板18とを有している。
【0013】
前記筒状部材14は、その内部に前記発電機室11に至る風洞19を有している。この筒状部材14は、正6角形状に形成されており、各角部に前記集風板15の基部が固着され、各辺部に前記風取込口17が設けられている。前記筒状部材14は、その高さや径に応じて周方向及び高さ方向に複数に分割形成し、風力発電装置の設置場所にて組み立てることができる。また、前記筒状部材14は、高さ方向全体を同一径としてもよく、該筒状部材14の強度や前記風洞19内の圧力状態等に応じて下方を大径に、上方を小径とした緩やかな円錐形状とすることもできる。
【0014】
前記集風板15は、風向きが年間を通して略一定の方向であれば2〜3枚とすることも可能であるが、全方向からの風を効率よく集風するためには6枚が最適である。すなわち、前記集風板15を前記筒状部材14の周囲に等間隔で6枚設置することにより、いずれの方向からの風であっても、最低でも隣接する2枚の前記集風板15によって風を中心部に集めて前記風洞19内に導くことができる。なお、前記集風板15を7枚以上設置することも可能であるが、装置コストが上昇する割には集風効果の向上は小さく経済的ではない。この集風板15も、高さや幅に応じて高さ方向及び幅方向に複数に分割形成して組み立てることができる。
【0015】
前記ガイド板18は、その側面視が、集風板15の先端側が略水平方向を向き、集風板15の基部側が鉛直方向を向く円弧状に湾曲した形状を有している。上下のガイド板18同士の間隔は、集風板15の基部から外端までの寸法に応じて設定することができる。また、ガイド板18を設けることにより、隣接する集風板15同士を連結して集風板15を補強することができる。
【0016】
このように設置した前記集風板15及びガイド板18により集められた風は、最下部が基礎13、最上部が天板16によって囲まれ、さらに、上下のガイド板18によって囲まれた平面視が三角形の頂点に向かって収斂する状態となるので、圧力が上昇した状態で、また、ガイド板18によって下向きの流れになって前記風取込口17から前記風洞19内に流入する。
【0017】
前記風取込口17は、前記筒状部材14の壁板を四角形状に打ち抜くことによって形成したものであって、風取込口17の外側で隣接する集風板15の基部同士の間には、外部から筒状部材14の内部に向かう風の流通を許容し、筒状部材14の内部から外部への風の流通を規制する第1の逆流防止手段20を備えた壁板21が設けられている。
【0018】
該第1の逆流防止手段20は、壁板21に設けた開口22の内側に、上部にヒンジ23を有するスイング式のフラップ24を設けたものである。このフラップ24は、外部から風圧が作用すると、ヒンジ23を中心にして下部が風取込口17側に開き、外部から筒状部材14の内部に向かう風の流通を許容する。また、外部から風圧が作用していないときには、自重によって開口22を閉じた状態になり、内部から外部への風の流通を規制する。
【0019】
さらに、隣接する集風板15の外端部には、外部から集風板15間への風の流通のみを許容し、集風板15間から外部への流通を規制する第2の逆流防止手段25が設けられている。この第2の逆流防止手段25は、集風板15の基部側に設けた前記逆流防止手段20と同様に、集風板15の外端部間を覆う壁板26に開口27を設け、この開口27の内側に、上部にヒンジ28を有するスイング式のフラップ29を設けたものである。このフラップ29も、外部から風圧が作用すると、ヒンジ28を中心にして下部が内側に開き、外部から集風板15間に向かう風の流通を許容する。また、外部から風圧が作用していないときには、自重によって開口27を閉じた状態になり、内部から外部への風の流通を規制する。
【0020】
したがって、風上側に位置した両逆流防止手段20,25は、風圧によってフラップ24,29が自動的に開状態となり、風上側以外の両逆流防止手段20,25は、自動的に閉状態となるように形成されている。また、開口22,27の周囲とフラップ24,29との間にゴム製シール材を設けることにより、密着性を向上させて確実な閉塞状態が得られる。
【0021】
さらに、前記逆流防止手段20,25は、寒冷地における低温状態で凍結したり、氷雪が付着したりして作動不良を生じないように、例えば、図7に示すように、直接外気に接する外側の第2の逆流防止手段25のフラップ29の背面に、軽量な炭素繊維を熱源とした加熱手段29aを貼り付けておき、外気温の状態などにより、発電した電力を用いて加熱手段29aを発熱させることができるようにしておくことが好ましい。このような加熱手段は、第2の逆流防止手段25の内側に位置する第1の逆流防止手段20にも同様に設けることができる。なお、前記逆流防止手段20,25の構造は、これらに限定されるものではない。
【0022】
このように形成した前記逆流防止手段20,25は、開口22,27の下方を開口させていることで、開口27から集風板15間に流入する風及び開口22から風洞19内に流入する風に下方に向かう流れを形成する。特に、前記ガイド板18及び前記逆流防止手段20の相乗作用によって風洞19内に下方の発電機室11に向かう風の流れを効率よく形成することができる。また、前記逆流防止手段20,25によって集風板15間及び風洞19内に取り込んだ風が外部に吹き抜けることを防止できるので、取り込んだ風を発電用として有効に利用することができる。
【0023】
前記風取込口17や前記逆流防止手段20,25の大きさ(流量)や設置数は、前記集風板15によって集風される風量に応じて設定され、集風板15の幅寸法が小さければ設置数を少なく、あるいは、小さな風取込口17とし、集風板15の幅寸法が大きいときには、設置数を多くして風取込口17や逆流防止手段20,25も大きなものとすればよい。
【0024】
地下に設けられた前記発電機室11には、前記風洞19に連通する地下風洞30が設けられ、この地下風洞30内を流れる風によって回転駆動されるタービン31と、このタービン31によって駆動される発電機32と、その他の送電設備等が設けられている。このタービン31及び発電機32には、風洞19から地下風洞30に供給される風圧、風量に対応したものを選択して使用することができ、風力発電装置2の設置場所における電力の使用目的に応じて選択すればよい。また、タービン31を駆動した風は、地下風洞30の末端30aから大気に排気される。
【0025】
また、前記風洞19の上下両端部に、風洞19内の圧力があらかじめ設定した圧力を超えたときに風洞19内から外部に圧力を逃がすための余剰風排出部をそれぞれ設けておくことにより、強風時に風洞19内に取り込まれた過剰の風を排出することができるので、タービン31の過負荷を防止することができる。余剰風排出部としては、天板16に通風孔を形成して、該通風孔を開閉するフラップ状のものを設けることで形成できる。
【0026】
上下の余剰風排出部の作動圧力は同一に設定することができるが、風洞19内の風の流れを考慮すると、下方の余剰風排出部の作動圧力を低く設定することが好ましい。また、余剰風排出部における排気流量も同一としておくとができるが、台風等の強風時を考慮すると、作動圧力を高めに設定した上方の余剰風排出部の排気流量を多く設定しておくことにより、通常の風力の変動範囲では、作動圧力を低く設定した下方の余剰風排出部のみが作動して風洞19内の風の流れを乱さずに少量の余剰風を排出し、台風等の強風時には作動圧力を高く設定した上方の余剰風排出部も作動して大量の余剰風を排出することにより、タービン31等の機器を確実に保護することができる。
【0027】
また、排気方向を風下側に向けることができるように、複数の方向に向けて余剰風排出部を設けておくこともできる。さらに、前記発電機32の発電状態に応じて排気量を自動的に調整する自動調整式の余剰風排出部を設けることもできる。また、前記風洞19や前記地下風洞30の底部には、風洞19内に侵入した水分を排出するドレンを設けておくことが好ましい。
【0028】
さらに、前記風取込口17から風洞19内に異物が侵入することを防止するため、前記風取込口17の外側や前記逆流防止手段20,25の外側にスクリーンを設置しておくことが好ましい。スクリーンは、例えば、通常の金網等をフレームにより保持し、このフレームを隣接する集風板15や壁板21,26に固定することによって設置することができる。
【0029】
このように、風力発電装置2における集風手段12として筒状部材14と、複数、特に6枚の集風板15と複数のガイド板18とを組み合わせることにより、様々な方向からの風を有効に捕集して発電用に使用することができ、弱風状態でも十分な発電出力を得ることができる。また、設置場所の条件に応じて高さと直径とを選択することによって必要な電力供給を安定して行うことができる。さらに、比較的小型の風力発電装置2では、基礎13に代わる底板を組み合わせて集風手段12をユニット化することも可能であり、この複数のユニットを積み重ねて用いることもできる。
【0030】
前記タービン31及び前記発電機32は、一つの地下風洞30に風の流れ方向に所定間隔を存して複数設け、風速に応じて発電機32の稼働数を増減させるようにしてもよい。例えば、図8に示すように、地下風洞30に5つのタービン31a,31b、31c、31d,31eを設け、各タービン31a〜31eによって駆動される発電機32a,32b,32c,32d,32eをそれぞれ設けることができる。地下風洞30に導入された風は、前記タービン31a〜31eを回転駆動し、これらのタービン31a〜31eによって各発電機32a〜32eを駆動して発電する。これらのタービン31a〜31eを回転駆動した風は、地下風洞30の末端30aから排気される。
【0031】
さらに、このように複数のタービン31及び発電機32を設置する場合、図9に示すように、タービン31の羽根車33は、地下風洞30内に1/2〜1/4程度を臨ませることにより、地下風洞30内を流れる風は風速の落ちないまま通過し、これらの複数のタービン31を回転駆動することができる。
【0032】
前記筒状部材14、前記集風板15、ガイド板18等は、風力発電装置全体の大きさや予測される最大風速等の条件に応じて適当な材料及び製造方法を採用することができる。一般的には、ステンレス鋼やアルミニウム合金等の耐食性に富んだ金属材料が好適であり、また、金属製の骨組に防蝕鉄板やFRP等の板材を張り付ける構造とすることもできる。
【0033】
前記集風板15の幅寸法は、風力発電装置の設置場所における各種条件に応じて決定することができ、また、前記風力発電装置の高さと直径(前記集風板15の先端部を通る円の直径)の比率も任意に選択することができる。例えば、高さ制限がない場合には、高さを100mあるいは200m以上に高くして前記集風板15を幅狭にしてもよく、設置面積に余裕がある場合には、高さを低く抑えて前記集風板15を幅広として直径を100m以上に大きくすることができる。通常は、地表部に比べて安定している上空の風を効果的に集風できるように、できるだけ高く形成することが好ましい。また、高層ビルの屋上等ならば高さや直径が数m乃至10m程度のものでも十分な集風力を得ることができる。
【0034】
建築物としての風力発電装置2の強度は、前記筒状部材14を中心として6方向に集風板15を設けているので、前記筒状部材14の高さ、集風板15の幅を適切に設定することにより、強風や地震に対しても十分な強度を得ることが可能である。また、必要に応じて適当な位置に補強部材を設けることもでき、耐震性に対しては適当な柔構造を採用することもできる。
【0035】
さらに、前記天板16の上部に展望台41を設けたり、下部にホール42を設けたりすることができ、ホール42から展望台41に昇降するためのエレベータを、筒状部材14や集風板15に沿って設けることができる。また、風力発電装置2の上部は、展望台41の他、ヘリポート、電波塔、無線中継所、測候所、天体観測所等を設置することもできる。さらに、筒状部材14や集風板15に梯子(ステップ)を設けておくことにより、逆流防止手段20,25等の保守、点検を行うことができる。また、集風板15や逆流防止手段25の外面を広告宣伝用として利用することができ、集風板15や逆流防止手段25に周囲の景観に応じた着色や模様を施したり、夜間にライトアップしたりすることも可能である。
【0036】
このように形成した風力発電装置2で発電した電力Eは、前記ブラウンガス発生装置3に供給されて水を電気分解するための電力に用いられ、ブラウンガス発生装置3で発生したブラウンガスBは、前記ボイラー4に供給されてボイラー4の熱源となる。ボイラー4で発生したスチームや高温水は、所定の配管により各温室1内の所定位置に供給循環され、温室1内の空気を加温し、温室1内を所定の温度、例えば冬季でも10℃以上に加温して保持する。
【0037】
このようにして風力発電装置2で発生した電力EでブラウンガスBを発生させ、このブラウンガスBをボイラー4の熱源として用いることにより、風力発電装置2からの電力を効率よく利用することができ、適当な規模の風力発電装置2を1基設置するだけで広大な温室1の保温を行うことが可能となる。
【0038】
また、余剰のブラウンガスを必要に応じてガス貯槽5に貯留しておくことにより、温室1内を加温するための熱量が一時的に大量に必要になったときに迅速に対応することができる。なお、発電した電力を直流に変換してバッテリーに充電しておくことも可能であるが、ガス貯槽に比べて初期コストが膨大で、メンテナンス費用も膨大なものとなる。このガス貯槽5は、温室1の大きさ等の条件により必要に応じて設ければよく、ガス貯槽5内に貯留したブラウンガスを各ボイラー4に供給できれば任意の構造のものを採用できる。なお、ガス貯槽5の有無に関係なく、余剰の電力を電力会社に売電することにより、余剰電力の有効利用が図れる。
【0039】
このような風力発電装置2及びブラウンガス発生装置3を組み合わせることにより、作物栽培用の温室1の面積や設定温度に応じた発電量及び熱量を容易に得ることができる。例えば、風洞直径0.3m、高さ3〜5m、直径1〜2m程度で一般的な大きさの温室の一つを保温するのに十分な熱量をボイラー4で発生させることができる。また、風洞直径0.6m、高さ40m、直径4m程度にすれば温室数棟分に対応することができ、風洞直径1m、高さ80m、直径10m程度にすれば比較的大規模な温室を数棟有する栽培施設に対応可能となる。さらに、風洞直径2m、高さ100m、直径20m程度にすれば大規模な栽培施設に対応でき、それ以上の大きさ、例えば風洞直径3m、高さ150m、直径50m、さらに、風洞直径4m、高さ200m、直径80m、また、風洞直径10m、高さ300m、直径200m等の風力発電装置2を構築することにより、日中でも外気温が氷点下となるような寒冷地に構築された温室面積が数十万平方メートルの栽培施設の加温用として、更には風力発電装置2からの電力を照明用等として十分に利用可能である。
【0040】
また、前記ボイラー4の形式、構造は、ブラウンガスを利用できれば任意に選定することができ、必要に応じて液体燃料、気体燃料、固体燃料を併用するものを用いることも可能である。また、温室1内におけるボイラー4の設置数は任意であり、ボイラー4で発生したスチーム等による温室1内の加温手段も温室1の大きさに合わせて任意に選定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の栽培施設の一形態例を示す概略図である。
【図2】本発明の栽培施設で使用する風力発電装置の一形態例を示す正面図である。
【図3】同じく横断面図である。
【図4】装置中央部の縦断面図である。
【図5】図4のV−V断面図である。
【図6】装置中央部の正面図である。
【図7】加熱手段を備えた逆流防止手段の一例を示す縦断面図である。
【図8】1つの風洞にタービン及び発電機を複数設けた例を示す縦断面図である。
【図9】図8のタービン及び発電機の設置部分の横断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1…温室、2…風力発電装置、3…ブラウンガス発生装置、4…ボイラー、5…ガス貯槽、11…発電機室、12…集風手段、13…基礎、14…筒状部材、15…集風板、16…天板、17…風取込口、18…ガイド板、19…風洞、20…第1の逆流防止手段、21…壁板、22…開口、23…ヒンジ、24…フラップ、24a…加熱手段,29a、25…第2の逆流防止手段、26…壁板、27…開口、28…ヒンジ、29…フラップ、29a…加熱手段、30…地下風洞、31,31a,31b,31c,31d,31e…タービン、32,32a,32b,32c,32d,32e…発電機、33…羽根車、41…展望台、42…ホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物栽培用の温室と、風力発電装置と、該風力発電装置で発電した電力を使用してブラウンガスを発生させるブラウンガス発生装置と、該ブラウンガス発生装置で発生したブラウンガスを利用したボイラーとを備え、該ボイラーで発生した熱を利用して前記温室内を保温することを特徴とする栽培施設。
【請求項2】
前記風力発電装置は、基礎面から鉛直方向に立設した筒状部材にて構成された風洞と、前記筒状部材の周壁から法線方向に延出した複数の集風板と、該集風板相互間及び筒状部材の上端開口を閉塞する天板と、前記筒状部材の周壁に設けられて前記集風板によって集約された風を前記風洞内に導く複数の風取込口と、該風取込口に設けられて筒状部材外部から筒状部材内部への風の流通のみを許容し、内部から外部への流通を規制する逆流防止手段と、隣接する集風板間に設けられて集風板によって集約された風を下方に向けてガイドする複数のガイド板と、前記風洞の一端部から吹き出す風によって駆動されるタービンと、該タービンにより駆動される発電機とを備えていることを特徴とする請求項1記載の栽培施設。
【請求項3】
隣接する前記集風板の外部側間に、外部から集風板間への風の流通のみを許容し、集風板間から外部への流通を規制する第2の逆流防止手段が設けられている請求項2記載の栽培施設。
【請求項4】
前記集風板は、筒状部材の周方向に6枚が等間隔で設けられている請求項2記載の栽培施設。
【請求項5】
前記風洞に、該風洞内に取り込まれた過剰の風を排出する余剰風排出部が設けられている請求項2記載の栽培施設。
【請求項6】
前記タービン及び前記発電機は、一つの風洞に風の流れ方向に複数設けられ、前記タービンの回転羽根は、風洞内に1/2〜1/4を臨ませる請求項2記載の栽培施設。
【請求項7】
前記ブラウンガスを貯留するガス貯槽を備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の栽培施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−148210(P2009−148210A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329555(P2007−329555)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(393015483)
【Fターム(参考)】