梯子連結装置
【課題】番線等の緊締作業に依存することなく、連結部の曲げ剛性等を十分に確保するとともに、重合せ継手の長さや、単梯子同士の相対位置を規則的且つ容易に定めることができる梯子連結装置を提供する。
【解決手段】梯子連結装置(1)は、単梯子(A1,A2)を重合せ継手(S)によって連結するための一対の梯子連結具(2)を有する。各梯子連結具は、単梯子の中空踏桟(K)に挿入される直杆状の芯材(3)と、芯材の基端部に一体的に連結された板状係留部材(4)と、芯材の先端部に取付けられ且つ中空芯材から外方に突出する係止具(6)とを有する。一方の梯子連結具の係留部材は、他方の梯子連結具の係止具によって単梯子の側面に固定される。
【解決手段】梯子連結装置(1)は、単梯子(A1,A2)を重合せ継手(S)によって連結するための一対の梯子連結具(2)を有する。各梯子連結具は、単梯子の中空踏桟(K)に挿入される直杆状の芯材(3)と、芯材の基端部に一体的に連結された板状係留部材(4)と、芯材の先端部に取付けられ且つ中空芯材から外方に突出する係止具(6)とを有する。一方の梯子連結具の係留部材は、他方の梯子連結具の係止具によって単梯子の側面に固定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梯子(はしご)連結装置に関するものであり、より詳細には、番線等の緊締作業に依存することなく、連結部の曲げ剛性等を十分に確保するとともに、重合せ継手の長さや、単梯子同士の相対位置を規則的且つ容易に定めることができる梯子連結装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設現場等において昇降手段又は上下移動手段として使用される金属製の梯子が知られている。この種の梯子は、現場内搬送等のための軽量性又は可搬性や、長年に亘って繰り返し使用される利用形態に耐える強度及び耐久性等のために、アルミニウム合金等の軽量合金により一般に製作される(JIS S 1121(アルミニウム合金製脚立及びはしご))。
【0003】
このような金属製梯子として、左右の支柱と、支柱間に水平に延びる多数の踏桟とから構成される単梯子(特開平9-209672号公報)、複数の単梯子を伸縮式に連結してなる伸縮形梯子(特開平10-140957号公報)、複数の単梯子をヒンジによって回動可能に連結してなる折畳み式梯子(特開2006-183259号公報)等が知られている。
【0004】
単梯子は、伸縮形梯子や折畳み式梯子と比べて汎用性、可搬性等の点で有利であり、多くの建設現場等において汎用的に使用されている。
【0005】
しかしながら、単梯子の最大使用長さには限界があり、単梯子の全長は、一般に3〜5m程度であるにすぎない。このため、上部支点を構成する構造体又は仮設部材等が単梯子の長さ範囲に存在しない場合、単梯子を立て掛けることができない。このような場合、複数の単梯子を番線(鉄線)等によって緊結して相互連結し、梯子の全長を延長することが実際に行われている。
【0006】
図12には、長さLの2つの単梯子A1、A2を部分的に重合せ、クロス形又はたすき形に結束した12番線以上の番線Bによって重合わ部分を緊締し、これにより、梯子の総全長Tを延長した構成が示されている。このように単梯子A1、A2を部分的に重合せた構成の連結部は、重合せ継手と呼ばれている。図12に示すように下側の単梯子A1の最下端部は地盤Gに接地し、上側の単梯子A2の最上部は建物等の構造体Cに支持される。
【0007】
労働安全衛生規則第527条には、このような梯子の連結に関し、「継手が重合せ継手のときは、接続部において1.5メートル以上を重ね合せて2箇所以上において堅固に固定すること。」と規定されている。従って、例えば、重合せ継手の長さSが1.5mであり、各単梯子A1、A2の全長Lが3〜5mであるとき、梯子の総全長Tは、4.5〜8.5mである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9-209672号公報
【特許文献2】特開平10-140957号公報
【特許文献3】特開2006-183259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような重合せ継手による単梯子の連結は、番線結束に依存した構造のものであるので、継手の強度は人為的な番線緊締作業の適否又は良否によって影響される。このため、安定した継手強度を確保するには、堅固な緊締作業が常に必要とされるが、このような人為的作業を常に確実に行うことは、現実問題として、極めて困難である。
【0010】
また、連結部の曲げ剛性等は番線の結束力又は引張強度に依存したものであるが、各番線の結束力又は引張強度は比較的低いことから、利用者の体重や、強風等の外力によって連結部が変形することが懸念される。
【0011】
更には、このような番線結束による連結によっては、重合せ継手の長さや、単梯子同士の相対位置を規則的且つ容易に定めることは困難である。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、 番線等の緊締作業に依存することなく、連結部の曲げ剛性等を十分に確保するとともに、重合せ継手の長さや、単梯子同士の相対位置を規則的且つ容易に定めることができる梯子連結装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成すべく、単梯子を重合せ継手によって連結するための一対の梯子連結具を有する梯子連結装置であって、
各梯子連結具は、前記単梯子の中空踏桟に挿入される真っ直ぐな芯材と、該芯材の基端部に一体的に連結された板状の係留部材と、前記芯材の先端部に取付けられ且つ前記中空芯材から外方に突出する係止具とを有し、
一方の梯子連結具の係留部材は、他方の梯子連結具の係止具によって前記単梯子の側面に係留されることを特徴とする梯子連結装置を提供する。
【0014】
本発明によれば、上下の単梯子を重合せ継手の形態に整列配置し、各梯子連結具の芯材を単梯子の中空踏桟内に挿入し、一方の梯子連結具の係留部材を他方の梯子連結具の係止具に係留することにより、上下の単梯子を組付けることができる。このような梯子連結装置によれば、番線等の緊締作業に依存することなく、単梯子を連結することができる。また、上記構成の梯子連結装置によれば、芯材、係留部材及び係止具の剛性によって連結部の曲げ剛性、剪断剛性、圧縮・引張剛性等を十分に確保することができる。更に、上記構成の梯子連結装置によれば、各梯子連結具の位置は、単梯子の中空踏桟の位置によって決定されるので、重合せ継手の長さや、単梯子同士の相対位置を規則的且つ容易に定めることができる。
【0015】
他の観点より、本発明は、1.5m以上の長さを有する重合せ継手によって複数の単梯子を上下に連結してなる梯子において、上記構成の梯子連結装置を重合せ継手の範囲内で上下方向に間隔を隔てて配置し、該梯子連結装置によって上下の単梯子を組付けたことを特徴とする梯子を提供する。
【0016】
更に他の観点より、本発明は、1.5m以上の長さを有する重合せ継手によって複数の単梯子を上下に連結する単梯子連結方法において、上記構成の梯子連結装置を重合せ継手の範囲内で上下方向に間隔を隔てて配置し、該梯子連結装置によって上下の単梯子を組付けることを特徴とする単梯子連結方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(A)及び図1(B)は、単梯子の正面図及び側面図である。
【図2】図2は、本発明の梯子連結装置によって2連に連結した単梯子の使用状態を示す側面図である。
【図3】図3は、本発明の梯子連結装置を構成する一対のL形連結具を示す平面図である。
【図4】図4は、係留板を有する基端部の側から見たL形連結具の側面図である。
【図5】図5は、六角ボルトを有する先端部の側から見たL形連結具の側面図である。
【図6】図6(A)及び図6(B)は、単梯子の構造を示す横断面図及び部分側面図である。
【図7】図7(A)及び図7(B)は、単梯子を重合せ継手形態に連結すべく整列配置した状態を示す横断面図及び部分側面図である。
【図8】図8(A)及び図8(B)は、一方のL形連結具を単梯子に装着した状態を示す横断面図及び部分側面図である。
【図9】図9(A)及び図9(B)は、他方のL形連結具を単梯子に更に装着した状態を示す横断面図及び部分側面図である。
【図10】図10(A)、図10(B)及び図10(C)は、係留板を六角ボルトに係止・係留した状態を示す横断面図、部分側面図及び部分斜視図である。なお、図10(C)において、梯子の支柱及び中空踏桟は、図示を省略されている。
【図11】図11は、使用状態における梯子連結装置の状態を示す部分側面図である。
【図12】図12は、番線を用いた従来の重合せ継手によって2連に連結した単梯子の使用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好適な実施形態によれば、上記係止具は、芯材の先端部に螺合又は螺入するボルトからなり、上記係留部材は、ボルトのボルトヘッドによって梯子の側面に締付けられる。好ましくは、係留部材は、ボルトの軸部を受入れ可能な下面開放形又は上面開放形の溝又は切欠き部を備えた板状部材からなり、ボルトヘッドは、係留部材の外側面に締付けられる。更に好ましくは、芯材は、係留部材の構面に対して垂直に連結され、対をなす梯子連結具は、点対称の構造及び各部寸法を有する。点対称の構成を有する一対の梯子連結具は、梯子を連結する際に各梯子連結具を区別なく使用し得るので、使用経験や、格別の予備知識のないユーザが取扱いに戸惑うことなく、しかも、各梯子連結具を取り違えることなく確実に梯子連結具を使用することができる。
【0019】
本発明の更に好適な実施形態によれば、係留部材は、溝又は切欠き部内に位置するボルトの軸部が溝又は切欠き部から離脱するのを防止する突起を外側面に有し、バネ座金等の弾性体がボルトヘッドと係留部材との間に介挿される。弾性体は、ボルトヘッドから係留部材に作用する締付け力を緩和する。突起は、ボルトの締付け時、或いは、連結後の単梯子の使用時、ボルトの軸部が溝又は切欠き部から離脱しようとすると、ボルトの座金又はボルトヘッドに当接してボルト及び係留板の相対変位を阻止し、これにより、ボルトの軸部が溝又は切欠き部から離脱するのを防止する。
【0020】
好ましくは、溝又は切欠き部は、芯材の中心軸線を中心とした所定の曲率半径を有する円弧状の溝又は切欠き部からなる。更に好ましくは、踏桟内に挿入された各梯子連結具の芯材は、初期的に所定距離(r)を隔てて平行に配置される。係留部材は、上側の単梯子の自重による単梯子同士の相対変位によって回動して、芯材の水平離間距離(r')を短縮せしめ、この結果、芯材は踏桟の内面に当接する。
【0021】
本発明の好適な実施例に係る梯子連結方法によれば、単梯子は、その支柱を地面又は床面に水平に置いた状態で梯子連結装置によって組付けられ、梯子組立体は起立される。係留部材は、上側の単梯子の自重による単梯子同士の相対変位によって僅かに回動し、芯材の水平離間距離を短縮せしめる。この結果、芯材は踏桟の内面に当接し、上下の単梯子は堅固に連結される。
【実施例】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例に係る梯子連結装置について詳細に説明する。
【0023】
図1(A)及び図1(B)は、単梯子の正面図及び側面図であり、図2は、本発明に係る梯子連結装置によって単梯子を2連に連結した状態を示す側面図である。
【0024】
単梯子A1、A2は、対をなすアルミニウム合金製の支柱Dと、左右の支柱Dの間に水平に掛け渡されたアルミニウム合金製の中空踏桟Kとから構成される。中空踏桟Kの両端部は支柱Dを貫通し、中空踏桟Kの中空部Vが支柱Dの側面に開口する。支柱Dの上端部には、樹脂製又はゴム製の上端具Eが取付けられ、支柱Dの下端部には、下端具(滑止め用端具)が取付けられる。下端具Fは、支柱Dの下端部に固定された支軸Jと、支軸Jに回動可能に支持された脚部Mと、脚部Mの下面に取付けられた樹脂製又はゴム製の接地部Nとから構成される。補強金具Qの各端部が、最下段の中空踏桟Kと支柱Dの下端部とに接合される。補強金具Qは、単梯子A1、A2の下端部の剛性を向上する斜材(ブレース)として機能する。
【0025】
図2に示す如く、2つの単梯子A1、A2が上下の梯子連結装置1によって重合せ継手形態に連結される。上側の梯子連結装置1は、下側単梯子A1の最上段の中空踏桟Kと、上側単梯子A2の中段(例えば、下から5段目)の中空踏桟Kとに係合する。下側の梯子連結装置1は、下側単梯子A1の中段(例えば、上から5段目)の中空踏桟Kと、上側単梯子A2の最下段の中空踏桟Kとに係合する。下側の単梯子A1の最下端部は地盤Gに接地し、上側の単梯子A2の最上部は、建物等の構造体Cに支持される。なお、各単梯子A1、A2の全長Lは約3〜5m、例えば、4mであり、梯子の総全長Tは、約4.5〜8.5m、例えば、6.5mであり、重合せ継手の長さSは1.5〜2mの範囲内、例えば、1.5mに設定される。
【0026】
図3は、本発明の梯子連結装置1を構成する2つのL形連結具2を示す平面図である。また、図4は、L形連結具2の基端部側の側面図であり、図5は、L形連結具2の先端部側の側面図である。
【0027】
図3に示す如く、梯子連結装置1は、一対のL形連結具2から構成される。2つのL形連結具2(以下、「連結具2」という。)は同一の構造及び各部寸法を有する同一製品である。各連結具2は、直径約20mmの円形鋼管からなる直杆状の中空芯材3と、中空芯材3の基端部に一体的に連結された鋼製の係留板4と、中空芯材3の先端部に固定された六角ナット5と、六角ナット5に螺入する座金組込み六角ボルト6とから構成される。座金組込み六角ボルト6(以下、「六角ボルト6」という。)は、平座金6a、雄螺子部6b、ボルトヘッド6c及びバネ座金6dを有する。六角ボルト6は、中空芯材3から突出し、他の連結具2の係留板4を係留する係止具又は係留具を構成する。
【0028】
中空芯材3は、係留板4の構面に対して垂直且つ一体的に連結され、中空踏桟Kの中空部を貫通する。図4及び図5に示すように、係留板4は、全体的に長円形輪郭を有する板体からなる。係留板4は、六角ボルト6の雄螺子部6bを受入れる下方開放形(又は上方開放形)の湾曲溝(又は切欠き部)7と、六角ボルト6の平座金6aに係合可能な一対の円形突起8とを有する。湾曲溝7の中心線(図5及び図6に一点鎖線で示す)は、中空芯材3の中心軸線Xを中心とした曲率半径rの円弧である。
【0029】
図6(A)及び図6(B)は、単梯子A1、A2の構造を示す横断面図及び部分側面図である。
【0030】
前述の如く、単梯子A1、A2は、左右の支柱Dと、左右の支柱Dの間に水平に掛け渡された中空踏桟Kとから構成される。中空踏桟Kの両端部は支柱Dを貫通し、中空踏桟Kの中空部Vが支柱Dの側面に開口する。中空踏桟Kは、かしめ加工によって支柱Dに堅固に固定される。
【0031】
図7(A)及び図7(B)は、単梯子A1、A2を重合せ継手形態に連結すべく整列配置した状態を示す横断面図及び部分側面図である。
【0032】
単梯子A1、A2は、支柱Dを互いに接触させた状態で整列配置される。単梯子A1、A2の中空踏桟Kは、梯子の正面から見て実質的に同一の位置又は重り合う位置に配置される。なお、連結作業は、通常は、単梯子A1、A2の支柱Dを地面又は床面に水平に置いた状態で実施される。
【0033】
図8(A)及び図8(B)は、一方の連結具2を単梯子A2に装着した状態を示す横断面図及び部分側面図である。
【0034】
連結具2の中空芯材3は、支柱Dの第1の側面(図において右側の側面)から単梯子A2の中空部V内に挿入される。六角ボルト6は、支柱Dの第2の側面(図において左側の側面)から外方に突出する。
【0035】
図9(A)及び図9(B)は、他方の連結具2を単梯子A1に更に装着した状態を示す横断面図及び部分側面図である。
【0036】
連結具2の中空芯材3は、支柱Dの第2の側面から単梯子A2の中空部V内に挿入される。六角ボルト6は、支柱Dの第1の側面から外方に突出する。
【0037】
両側の係留板4は、図9(B)に矢印で示す如く、中空芯材3の中心軸線Xを中心に下方に回動される。下方開放形の湾曲溝7は六角ボルト6の雄螺子部6bを受入れ、係留板4は雄螺子部6bに係止する。
【0038】
図10(A)及び図10(B)は、係留板4を六角ボルト6に係止・係留した状態を示す横断面図及び部分側面図である。
【0039】
雄螺子部6bに係止した係留板4は、梯子の構面に対して実質的に垂直な方向に配向される。この状態では、係留板4の外面に設けられた円形突起8は、ボルトヘッド6cに近接した位置に位置する。六角ボルト6は六角ナット5に螺子込まれ、係留板4に対して締付けられる。平座金6a及びバネ座金6dは、ボルトヘッド6cと六角ナット5との間において圧縮される。バネ座金6dは、ボルトヘッド6cから係留板4に作用する締付け力を緩和するように機能する。六角ナット5に対する六角ボルト6の締付けにより、係留板4は六角ボルト6に係留される。
【0040】
締付け時の六角ボルト6の回転方向が図10(B)に矢印で示されている。締付け力(締付けトルク)の回転方向は、係留板4を上方に回動させる方向に作用する力であるが、円形突起8は、平座金6aに当接して係留板4の回動(追随又はつれ回り)を阻止する。係留板4の回動時に平座金6aに衝合可能な円形突起8は、連結後の単梯子A1、A2を使用する際、六角ボルト6が係留板4から離脱するのを阻止するようにも機能する。
【0041】
六角ボルト6の中心軸線Xは湾曲溝7の中心線上に位置し、従って、各連結具2の中空芯材3の中心軸線Xは、曲率半径rの間隔を隔てた位置に配置される。この状態では、中空芯材3の外周面と中空踏桟Kの内面との間に僅かな遊び寸法又は間隙が残されており、中空芯材3の中心軸線Xは、使用の際(起立時)に僅かな距離だけ水平方向に更に接近することができる。
【0042】
図11は、使用状態における梯子連結装置1の状態を示す部分側面図である。
【0043】
梯子連結装置1によって連結された単梯子A1、A2は、使用において垂直位置又は傾斜位置に起立する。下側の単梯子A1は、地盤又は床面等に接地し、支持されるが、単梯子A1によって支持された上側の単梯子A2は、重力の作用により、単梯子A1に対して相対的に下方変位しようとする。上記のとおり、中空芯材3の中心軸線Xは、僅かな距離だけ水平方向に更に接近し得るので、単梯子A2は単梯子A1に対して下方に僅かに変位し、中心軸線X間の距離は、使用時の水平距離r'に短縮する。この結果、中空芯材3の外周面と中空踏桟Kの内面との間の僅かな遊びが消失し又は吸収され、中空芯材3の外周面は中空踏桟Kの内面に接触する。
【0044】
かくして、各連結具2の中空芯材3は中空踏桟Kの内面に当接し、中心軸線Xの相対位置は固定され、この結果、上下の単梯子A1、A2は、図2に示す如く、2つの梯子連結装置1によって堅固に連結される。
【0045】
本発明者等は、梯子連結装置1によって連結された単梯子A1、A2に関し、JIS S 1121に規定された「はしごの支柱の強度試験」、「伸縮形はしごの上はしご止め具の強度試験」及び「はしごのねじれ強度試験」を実施した。これらの試験の結果、梯子連結装置1によって単梯子A1、A2を連結してなる梯子は、JIS S 1121に規定された支柱の強度、止め具の強度及びねじれ強度を十分に発揮することが確認された。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態及び実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
【0047】
例えば、上記実施例では、梯子連結装置は鋼製の梯子連結具を有するが、梯子連結具をアルミニウム合金等の合金製連結具として製作しても良い。
【0048】
また、上記実施例では、単梯子を2連に連結してなる梯子について説明したが、単梯子を3連以上に連結してなる梯子において本発明の梯子連結装置を使用しても良い。
【0049】
更には、上記実施例は、2つの梯子連結具を重合せ継手の部分に配置した構成のものであるが、3つ以上の梯子連結具を重合せ継手の部分に配置しても良い。
【0050】
また、梯子連結具を構成する各部材の形状及び寸法は、単梯子の形状及び寸法等に相応して適宜設計変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、単梯子を重合せ継手によって連結するための梯子連結装置に適用される。本発明の梯子連結装置によれば、番線結束等による緊締作業によって単梯子を連結することなく、工場製作又は工場加工された梯子連結具を用いて迅速且つ確実に単梯子を連結することができるので、実用的に極めて有利である。
【0052】
また、各梯子連結具は、芯材、係留部材及び係止具を一体的に組付け可能な構成を有するので、各構成部品の逸失又は散逸を防止することができ、従って、取扱いの利便性や、携帯性又は可搬性に優れる。
【0053】
更には、従来のように番線で梯子を結束した場合、番線は、連結部解体時に廃棄処分されるのに対し、本発明の梯子連結装置は、繰返し使用することができ、しかも、耐久性の高い金属製品として市場に供給し得る構成のものであるので、その実用的価値は顕著である。
【符号の説明】
【0054】
1 梯子連結装置
2 L形連結具
3 中空芯材
4 係留板
5 六角ナット
6 六角ボルト
6a 平座金
6b 雄螺子部
6c ボルトヘッド
6d バネ座金
7 湾曲溝(又は切欠き部)
8 円形突起
A1、A2 単梯子
D 支柱
K 中空踏桟
L 全長
S 重合せ継手の長さ
T 総全長
V 中空部
X 中心軸線
r 曲率半径
r' 水平距離
【技術分野】
【0001】
本発明は、梯子(はしご)連結装置に関するものであり、より詳細には、番線等の緊締作業に依存することなく、連結部の曲げ剛性等を十分に確保するとともに、重合せ継手の長さや、単梯子同士の相対位置を規則的且つ容易に定めることができる梯子連結装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設現場等において昇降手段又は上下移動手段として使用される金属製の梯子が知られている。この種の梯子は、現場内搬送等のための軽量性又は可搬性や、長年に亘って繰り返し使用される利用形態に耐える強度及び耐久性等のために、アルミニウム合金等の軽量合金により一般に製作される(JIS S 1121(アルミニウム合金製脚立及びはしご))。
【0003】
このような金属製梯子として、左右の支柱と、支柱間に水平に延びる多数の踏桟とから構成される単梯子(特開平9-209672号公報)、複数の単梯子を伸縮式に連結してなる伸縮形梯子(特開平10-140957号公報)、複数の単梯子をヒンジによって回動可能に連結してなる折畳み式梯子(特開2006-183259号公報)等が知られている。
【0004】
単梯子は、伸縮形梯子や折畳み式梯子と比べて汎用性、可搬性等の点で有利であり、多くの建設現場等において汎用的に使用されている。
【0005】
しかしながら、単梯子の最大使用長さには限界があり、単梯子の全長は、一般に3〜5m程度であるにすぎない。このため、上部支点を構成する構造体又は仮設部材等が単梯子の長さ範囲に存在しない場合、単梯子を立て掛けることができない。このような場合、複数の単梯子を番線(鉄線)等によって緊結して相互連結し、梯子の全長を延長することが実際に行われている。
【0006】
図12には、長さLの2つの単梯子A1、A2を部分的に重合せ、クロス形又はたすき形に結束した12番線以上の番線Bによって重合わ部分を緊締し、これにより、梯子の総全長Tを延長した構成が示されている。このように単梯子A1、A2を部分的に重合せた構成の連結部は、重合せ継手と呼ばれている。図12に示すように下側の単梯子A1の最下端部は地盤Gに接地し、上側の単梯子A2の最上部は建物等の構造体Cに支持される。
【0007】
労働安全衛生規則第527条には、このような梯子の連結に関し、「継手が重合せ継手のときは、接続部において1.5メートル以上を重ね合せて2箇所以上において堅固に固定すること。」と規定されている。従って、例えば、重合せ継手の長さSが1.5mであり、各単梯子A1、A2の全長Lが3〜5mであるとき、梯子の総全長Tは、4.5〜8.5mである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9-209672号公報
【特許文献2】特開平10-140957号公報
【特許文献3】特開2006-183259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような重合せ継手による単梯子の連結は、番線結束に依存した構造のものであるので、継手の強度は人為的な番線緊締作業の適否又は良否によって影響される。このため、安定した継手強度を確保するには、堅固な緊締作業が常に必要とされるが、このような人為的作業を常に確実に行うことは、現実問題として、極めて困難である。
【0010】
また、連結部の曲げ剛性等は番線の結束力又は引張強度に依存したものであるが、各番線の結束力又は引張強度は比較的低いことから、利用者の体重や、強風等の外力によって連結部が変形することが懸念される。
【0011】
更には、このような番線結束による連結によっては、重合せ継手の長さや、単梯子同士の相対位置を規則的且つ容易に定めることは困難である。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、 番線等の緊締作業に依存することなく、連結部の曲げ剛性等を十分に確保するとともに、重合せ継手の長さや、単梯子同士の相対位置を規則的且つ容易に定めることができる梯子連結装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成すべく、単梯子を重合せ継手によって連結するための一対の梯子連結具を有する梯子連結装置であって、
各梯子連結具は、前記単梯子の中空踏桟に挿入される真っ直ぐな芯材と、該芯材の基端部に一体的に連結された板状の係留部材と、前記芯材の先端部に取付けられ且つ前記中空芯材から外方に突出する係止具とを有し、
一方の梯子連結具の係留部材は、他方の梯子連結具の係止具によって前記単梯子の側面に係留されることを特徴とする梯子連結装置を提供する。
【0014】
本発明によれば、上下の単梯子を重合せ継手の形態に整列配置し、各梯子連結具の芯材を単梯子の中空踏桟内に挿入し、一方の梯子連結具の係留部材を他方の梯子連結具の係止具に係留することにより、上下の単梯子を組付けることができる。このような梯子連結装置によれば、番線等の緊締作業に依存することなく、単梯子を連結することができる。また、上記構成の梯子連結装置によれば、芯材、係留部材及び係止具の剛性によって連結部の曲げ剛性、剪断剛性、圧縮・引張剛性等を十分に確保することができる。更に、上記構成の梯子連結装置によれば、各梯子連結具の位置は、単梯子の中空踏桟の位置によって決定されるので、重合せ継手の長さや、単梯子同士の相対位置を規則的且つ容易に定めることができる。
【0015】
他の観点より、本発明は、1.5m以上の長さを有する重合せ継手によって複数の単梯子を上下に連結してなる梯子において、上記構成の梯子連結装置を重合せ継手の範囲内で上下方向に間隔を隔てて配置し、該梯子連結装置によって上下の単梯子を組付けたことを特徴とする梯子を提供する。
【0016】
更に他の観点より、本発明は、1.5m以上の長さを有する重合せ継手によって複数の単梯子を上下に連結する単梯子連結方法において、上記構成の梯子連結装置を重合せ継手の範囲内で上下方向に間隔を隔てて配置し、該梯子連結装置によって上下の単梯子を組付けることを特徴とする単梯子連結方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(A)及び図1(B)は、単梯子の正面図及び側面図である。
【図2】図2は、本発明の梯子連結装置によって2連に連結した単梯子の使用状態を示す側面図である。
【図3】図3は、本発明の梯子連結装置を構成する一対のL形連結具を示す平面図である。
【図4】図4は、係留板を有する基端部の側から見たL形連結具の側面図である。
【図5】図5は、六角ボルトを有する先端部の側から見たL形連結具の側面図である。
【図6】図6(A)及び図6(B)は、単梯子の構造を示す横断面図及び部分側面図である。
【図7】図7(A)及び図7(B)は、単梯子を重合せ継手形態に連結すべく整列配置した状態を示す横断面図及び部分側面図である。
【図8】図8(A)及び図8(B)は、一方のL形連結具を単梯子に装着した状態を示す横断面図及び部分側面図である。
【図9】図9(A)及び図9(B)は、他方のL形連結具を単梯子に更に装着した状態を示す横断面図及び部分側面図である。
【図10】図10(A)、図10(B)及び図10(C)は、係留板を六角ボルトに係止・係留した状態を示す横断面図、部分側面図及び部分斜視図である。なお、図10(C)において、梯子の支柱及び中空踏桟は、図示を省略されている。
【図11】図11は、使用状態における梯子連結装置の状態を示す部分側面図である。
【図12】図12は、番線を用いた従来の重合せ継手によって2連に連結した単梯子の使用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好適な実施形態によれば、上記係止具は、芯材の先端部に螺合又は螺入するボルトからなり、上記係留部材は、ボルトのボルトヘッドによって梯子の側面に締付けられる。好ましくは、係留部材は、ボルトの軸部を受入れ可能な下面開放形又は上面開放形の溝又は切欠き部を備えた板状部材からなり、ボルトヘッドは、係留部材の外側面に締付けられる。更に好ましくは、芯材は、係留部材の構面に対して垂直に連結され、対をなす梯子連結具は、点対称の構造及び各部寸法を有する。点対称の構成を有する一対の梯子連結具は、梯子を連結する際に各梯子連結具を区別なく使用し得るので、使用経験や、格別の予備知識のないユーザが取扱いに戸惑うことなく、しかも、各梯子連結具を取り違えることなく確実に梯子連結具を使用することができる。
【0019】
本発明の更に好適な実施形態によれば、係留部材は、溝又は切欠き部内に位置するボルトの軸部が溝又は切欠き部から離脱するのを防止する突起を外側面に有し、バネ座金等の弾性体がボルトヘッドと係留部材との間に介挿される。弾性体は、ボルトヘッドから係留部材に作用する締付け力を緩和する。突起は、ボルトの締付け時、或いは、連結後の単梯子の使用時、ボルトの軸部が溝又は切欠き部から離脱しようとすると、ボルトの座金又はボルトヘッドに当接してボルト及び係留板の相対変位を阻止し、これにより、ボルトの軸部が溝又は切欠き部から離脱するのを防止する。
【0020】
好ましくは、溝又は切欠き部は、芯材の中心軸線を中心とした所定の曲率半径を有する円弧状の溝又は切欠き部からなる。更に好ましくは、踏桟内に挿入された各梯子連結具の芯材は、初期的に所定距離(r)を隔てて平行に配置される。係留部材は、上側の単梯子の自重による単梯子同士の相対変位によって回動して、芯材の水平離間距離(r')を短縮せしめ、この結果、芯材は踏桟の内面に当接する。
【0021】
本発明の好適な実施例に係る梯子連結方法によれば、単梯子は、その支柱を地面又は床面に水平に置いた状態で梯子連結装置によって組付けられ、梯子組立体は起立される。係留部材は、上側の単梯子の自重による単梯子同士の相対変位によって僅かに回動し、芯材の水平離間距離を短縮せしめる。この結果、芯材は踏桟の内面に当接し、上下の単梯子は堅固に連結される。
【実施例】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例に係る梯子連結装置について詳細に説明する。
【0023】
図1(A)及び図1(B)は、単梯子の正面図及び側面図であり、図2は、本発明に係る梯子連結装置によって単梯子を2連に連結した状態を示す側面図である。
【0024】
単梯子A1、A2は、対をなすアルミニウム合金製の支柱Dと、左右の支柱Dの間に水平に掛け渡されたアルミニウム合金製の中空踏桟Kとから構成される。中空踏桟Kの両端部は支柱Dを貫通し、中空踏桟Kの中空部Vが支柱Dの側面に開口する。支柱Dの上端部には、樹脂製又はゴム製の上端具Eが取付けられ、支柱Dの下端部には、下端具(滑止め用端具)が取付けられる。下端具Fは、支柱Dの下端部に固定された支軸Jと、支軸Jに回動可能に支持された脚部Mと、脚部Mの下面に取付けられた樹脂製又はゴム製の接地部Nとから構成される。補強金具Qの各端部が、最下段の中空踏桟Kと支柱Dの下端部とに接合される。補強金具Qは、単梯子A1、A2の下端部の剛性を向上する斜材(ブレース)として機能する。
【0025】
図2に示す如く、2つの単梯子A1、A2が上下の梯子連結装置1によって重合せ継手形態に連結される。上側の梯子連結装置1は、下側単梯子A1の最上段の中空踏桟Kと、上側単梯子A2の中段(例えば、下から5段目)の中空踏桟Kとに係合する。下側の梯子連結装置1は、下側単梯子A1の中段(例えば、上から5段目)の中空踏桟Kと、上側単梯子A2の最下段の中空踏桟Kとに係合する。下側の単梯子A1の最下端部は地盤Gに接地し、上側の単梯子A2の最上部は、建物等の構造体Cに支持される。なお、各単梯子A1、A2の全長Lは約3〜5m、例えば、4mであり、梯子の総全長Tは、約4.5〜8.5m、例えば、6.5mであり、重合せ継手の長さSは1.5〜2mの範囲内、例えば、1.5mに設定される。
【0026】
図3は、本発明の梯子連結装置1を構成する2つのL形連結具2を示す平面図である。また、図4は、L形連結具2の基端部側の側面図であり、図5は、L形連結具2の先端部側の側面図である。
【0027】
図3に示す如く、梯子連結装置1は、一対のL形連結具2から構成される。2つのL形連結具2(以下、「連結具2」という。)は同一の構造及び各部寸法を有する同一製品である。各連結具2は、直径約20mmの円形鋼管からなる直杆状の中空芯材3と、中空芯材3の基端部に一体的に連結された鋼製の係留板4と、中空芯材3の先端部に固定された六角ナット5と、六角ナット5に螺入する座金組込み六角ボルト6とから構成される。座金組込み六角ボルト6(以下、「六角ボルト6」という。)は、平座金6a、雄螺子部6b、ボルトヘッド6c及びバネ座金6dを有する。六角ボルト6は、中空芯材3から突出し、他の連結具2の係留板4を係留する係止具又は係留具を構成する。
【0028】
中空芯材3は、係留板4の構面に対して垂直且つ一体的に連結され、中空踏桟Kの中空部を貫通する。図4及び図5に示すように、係留板4は、全体的に長円形輪郭を有する板体からなる。係留板4は、六角ボルト6の雄螺子部6bを受入れる下方開放形(又は上方開放形)の湾曲溝(又は切欠き部)7と、六角ボルト6の平座金6aに係合可能な一対の円形突起8とを有する。湾曲溝7の中心線(図5及び図6に一点鎖線で示す)は、中空芯材3の中心軸線Xを中心とした曲率半径rの円弧である。
【0029】
図6(A)及び図6(B)は、単梯子A1、A2の構造を示す横断面図及び部分側面図である。
【0030】
前述の如く、単梯子A1、A2は、左右の支柱Dと、左右の支柱Dの間に水平に掛け渡された中空踏桟Kとから構成される。中空踏桟Kの両端部は支柱Dを貫通し、中空踏桟Kの中空部Vが支柱Dの側面に開口する。中空踏桟Kは、かしめ加工によって支柱Dに堅固に固定される。
【0031】
図7(A)及び図7(B)は、単梯子A1、A2を重合せ継手形態に連結すべく整列配置した状態を示す横断面図及び部分側面図である。
【0032】
単梯子A1、A2は、支柱Dを互いに接触させた状態で整列配置される。単梯子A1、A2の中空踏桟Kは、梯子の正面から見て実質的に同一の位置又は重り合う位置に配置される。なお、連結作業は、通常は、単梯子A1、A2の支柱Dを地面又は床面に水平に置いた状態で実施される。
【0033】
図8(A)及び図8(B)は、一方の連結具2を単梯子A2に装着した状態を示す横断面図及び部分側面図である。
【0034】
連結具2の中空芯材3は、支柱Dの第1の側面(図において右側の側面)から単梯子A2の中空部V内に挿入される。六角ボルト6は、支柱Dの第2の側面(図において左側の側面)から外方に突出する。
【0035】
図9(A)及び図9(B)は、他方の連結具2を単梯子A1に更に装着した状態を示す横断面図及び部分側面図である。
【0036】
連結具2の中空芯材3は、支柱Dの第2の側面から単梯子A2の中空部V内に挿入される。六角ボルト6は、支柱Dの第1の側面から外方に突出する。
【0037】
両側の係留板4は、図9(B)に矢印で示す如く、中空芯材3の中心軸線Xを中心に下方に回動される。下方開放形の湾曲溝7は六角ボルト6の雄螺子部6bを受入れ、係留板4は雄螺子部6bに係止する。
【0038】
図10(A)及び図10(B)は、係留板4を六角ボルト6に係止・係留した状態を示す横断面図及び部分側面図である。
【0039】
雄螺子部6bに係止した係留板4は、梯子の構面に対して実質的に垂直な方向に配向される。この状態では、係留板4の外面に設けられた円形突起8は、ボルトヘッド6cに近接した位置に位置する。六角ボルト6は六角ナット5に螺子込まれ、係留板4に対して締付けられる。平座金6a及びバネ座金6dは、ボルトヘッド6cと六角ナット5との間において圧縮される。バネ座金6dは、ボルトヘッド6cから係留板4に作用する締付け力を緩和するように機能する。六角ナット5に対する六角ボルト6の締付けにより、係留板4は六角ボルト6に係留される。
【0040】
締付け時の六角ボルト6の回転方向が図10(B)に矢印で示されている。締付け力(締付けトルク)の回転方向は、係留板4を上方に回動させる方向に作用する力であるが、円形突起8は、平座金6aに当接して係留板4の回動(追随又はつれ回り)を阻止する。係留板4の回動時に平座金6aに衝合可能な円形突起8は、連結後の単梯子A1、A2を使用する際、六角ボルト6が係留板4から離脱するのを阻止するようにも機能する。
【0041】
六角ボルト6の中心軸線Xは湾曲溝7の中心線上に位置し、従って、各連結具2の中空芯材3の中心軸線Xは、曲率半径rの間隔を隔てた位置に配置される。この状態では、中空芯材3の外周面と中空踏桟Kの内面との間に僅かな遊び寸法又は間隙が残されており、中空芯材3の中心軸線Xは、使用の際(起立時)に僅かな距離だけ水平方向に更に接近することができる。
【0042】
図11は、使用状態における梯子連結装置1の状態を示す部分側面図である。
【0043】
梯子連結装置1によって連結された単梯子A1、A2は、使用において垂直位置又は傾斜位置に起立する。下側の単梯子A1は、地盤又は床面等に接地し、支持されるが、単梯子A1によって支持された上側の単梯子A2は、重力の作用により、単梯子A1に対して相対的に下方変位しようとする。上記のとおり、中空芯材3の中心軸線Xは、僅かな距離だけ水平方向に更に接近し得るので、単梯子A2は単梯子A1に対して下方に僅かに変位し、中心軸線X間の距離は、使用時の水平距離r'に短縮する。この結果、中空芯材3の外周面と中空踏桟Kの内面との間の僅かな遊びが消失し又は吸収され、中空芯材3の外周面は中空踏桟Kの内面に接触する。
【0044】
かくして、各連結具2の中空芯材3は中空踏桟Kの内面に当接し、中心軸線Xの相対位置は固定され、この結果、上下の単梯子A1、A2は、図2に示す如く、2つの梯子連結装置1によって堅固に連結される。
【0045】
本発明者等は、梯子連結装置1によって連結された単梯子A1、A2に関し、JIS S 1121に規定された「はしごの支柱の強度試験」、「伸縮形はしごの上はしご止め具の強度試験」及び「はしごのねじれ強度試験」を実施した。これらの試験の結果、梯子連結装置1によって単梯子A1、A2を連結してなる梯子は、JIS S 1121に規定された支柱の強度、止め具の強度及びねじれ強度を十分に発揮することが確認された。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態及び実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
【0047】
例えば、上記実施例では、梯子連結装置は鋼製の梯子連結具を有するが、梯子連結具をアルミニウム合金等の合金製連結具として製作しても良い。
【0048】
また、上記実施例では、単梯子を2連に連結してなる梯子について説明したが、単梯子を3連以上に連結してなる梯子において本発明の梯子連結装置を使用しても良い。
【0049】
更には、上記実施例は、2つの梯子連結具を重合せ継手の部分に配置した構成のものであるが、3つ以上の梯子連結具を重合せ継手の部分に配置しても良い。
【0050】
また、梯子連結具を構成する各部材の形状及び寸法は、単梯子の形状及び寸法等に相応して適宜設計変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、単梯子を重合せ継手によって連結するための梯子連結装置に適用される。本発明の梯子連結装置によれば、番線結束等による緊締作業によって単梯子を連結することなく、工場製作又は工場加工された梯子連結具を用いて迅速且つ確実に単梯子を連結することができるので、実用的に極めて有利である。
【0052】
また、各梯子連結具は、芯材、係留部材及び係止具を一体的に組付け可能な構成を有するので、各構成部品の逸失又は散逸を防止することができ、従って、取扱いの利便性や、携帯性又は可搬性に優れる。
【0053】
更には、従来のように番線で梯子を結束した場合、番線は、連結部解体時に廃棄処分されるのに対し、本発明の梯子連結装置は、繰返し使用することができ、しかも、耐久性の高い金属製品として市場に供給し得る構成のものであるので、その実用的価値は顕著である。
【符号の説明】
【0054】
1 梯子連結装置
2 L形連結具
3 中空芯材
4 係留板
5 六角ナット
6 六角ボルト
6a 平座金
6b 雄螺子部
6c ボルトヘッド
6d バネ座金
7 湾曲溝(又は切欠き部)
8 円形突起
A1、A2 単梯子
D 支柱
K 中空踏桟
L 全長
S 重合せ継手の長さ
T 総全長
V 中空部
X 中心軸線
r 曲率半径
r' 水平距離
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単梯子を重合せ継手によって連結するための一対の梯子連結具を有する梯子連結装置であって、
各梯子連結具は、前記単梯子の中空踏桟に挿入される真っ直ぐな芯材と、該芯材の基端部に一体的に連結された板状の係留部材と、前記芯材の先端部に取付けられ且つ前記中空芯材から外方に突出する係止具とを有し、
一方の梯子連結具の係留部材は、他方の梯子連結具の係止具によって前記単梯子の側面に係留されることを特徴とする梯子連結装置。
【請求項2】
前記係止具は、前記芯材の先端部に螺合又は螺入するボルトからなり、前記係留部材は、前記ボルトのボルトヘッドによって前記梯子の側面に締付けられることを特徴とする請求項1に記載の梯子連結装置。
【請求項3】
前記係留部材は、前記ボルトの軸部を受入れ可能な下面開放形又は上面開放形の溝又は切欠き部を備えた板状部材からなり、前記ボルトヘッドは、前記係留部材の外側面に締付けられることを特徴とする請求項2に記載の梯子連結装置。
【請求項4】
前記係留部材は、前記溝又は切欠き部内に位置する前記軸部が該溝又は切欠き部から離脱するのを防止する突起を前記外側面に有することを特徴とする請求項3に記載の梯子連結装置。
【請求項5】
前記突起は、連結後の単梯子の使用時、或いは、前記ボルトの締付け時に、前記軸部が溝又は切欠き部から離脱しようとすると、前記ボルトの座金又はボルトヘッドに当接して前記ボルト及び前記係留部材の相対変位を阻止し、前記軸部が溝又は切欠き部から離脱するのを防止することを特徴とする請求項4に記載の梯子連結装置。
【請求項6】
前記ボルトヘッドから前記係留部材に作用する締付け力を緩和する弾性体が前記ボルトヘッドと前記係留部材との間に介挿されることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の梯子連結装置。
【請求項7】
前記溝又は切欠き部は、前記芯材の中心軸線を中心とした所定の曲率半径を有する円弧状の溝又は切欠き部からなることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の梯子連結装置。
【請求項8】
前記踏桟内に挿入された各梯子連結具の芯材は、所定距離(r)を隔てて平行に配置され、前記係留部材は、上側の単梯子の自重による単梯子同士の相対変位によって回動して、前記芯材の水平離間距離(r')を短縮せしめ、前記芯材は、前記水平離間距離の短縮により前記踏桟の内面に当接することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の梯子連結装置。
【請求項9】
前記芯材は、前記係留部材に対して垂直に連結され、対をなす前記梯子連結具は、点対称の構造及び各部寸法を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の梯子連結装置。
【請求項10】
1.5m以上の長さを有する重合せ継手によって複数の単梯子を上下に連結してなる梯子において、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載された梯子連結装置を前記重合せ継手の範囲内で上下方向に間隔を隔てて配置し、該梯子連結装置によって上下の単梯子を組付けたことを特徴とする梯子。
【請求項11】
1.5m以上の長さを有する重合せ継手によって複数の単梯子を上下に連結する単梯子連結方法において、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載された梯子連結装置を前記重合せ継手の範囲内で上下方向に間隔を隔てて配置し、該梯子連結装置によって上下の単梯子を組付けることを特徴とする単梯子連結方法。
【請求項12】
前記単梯子の支柱を地面又は床面に水平に置いた状態で前記梯子連結装置によって前記単梯子を組付けた後、該単梯子の組立体を起立させ、上側の単梯子の自重による単梯子同士の相対変位によって前記係留部材を回動させて前記芯材の水平離間距離を短縮せしめ、これにより、前記芯材を前記踏桟の内面に当接させることを特徴とする請求項11に記載の梯子連結方法。
【請求項1】
単梯子を重合せ継手によって連結するための一対の梯子連結具を有する梯子連結装置であって、
各梯子連結具は、前記単梯子の中空踏桟に挿入される真っ直ぐな芯材と、該芯材の基端部に一体的に連結された板状の係留部材と、前記芯材の先端部に取付けられ且つ前記中空芯材から外方に突出する係止具とを有し、
一方の梯子連結具の係留部材は、他方の梯子連結具の係止具によって前記単梯子の側面に係留されることを特徴とする梯子連結装置。
【請求項2】
前記係止具は、前記芯材の先端部に螺合又は螺入するボルトからなり、前記係留部材は、前記ボルトのボルトヘッドによって前記梯子の側面に締付けられることを特徴とする請求項1に記載の梯子連結装置。
【請求項3】
前記係留部材は、前記ボルトの軸部を受入れ可能な下面開放形又は上面開放形の溝又は切欠き部を備えた板状部材からなり、前記ボルトヘッドは、前記係留部材の外側面に締付けられることを特徴とする請求項2に記載の梯子連結装置。
【請求項4】
前記係留部材は、前記溝又は切欠き部内に位置する前記軸部が該溝又は切欠き部から離脱するのを防止する突起を前記外側面に有することを特徴とする請求項3に記載の梯子連結装置。
【請求項5】
前記突起は、連結後の単梯子の使用時、或いは、前記ボルトの締付け時に、前記軸部が溝又は切欠き部から離脱しようとすると、前記ボルトの座金又はボルトヘッドに当接して前記ボルト及び前記係留部材の相対変位を阻止し、前記軸部が溝又は切欠き部から離脱するのを防止することを特徴とする請求項4に記載の梯子連結装置。
【請求項6】
前記ボルトヘッドから前記係留部材に作用する締付け力を緩和する弾性体が前記ボルトヘッドと前記係留部材との間に介挿されることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の梯子連結装置。
【請求項7】
前記溝又は切欠き部は、前記芯材の中心軸線を中心とした所定の曲率半径を有する円弧状の溝又は切欠き部からなることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の梯子連結装置。
【請求項8】
前記踏桟内に挿入された各梯子連結具の芯材は、所定距離(r)を隔てて平行に配置され、前記係留部材は、上側の単梯子の自重による単梯子同士の相対変位によって回動して、前記芯材の水平離間距離(r')を短縮せしめ、前記芯材は、前記水平離間距離の短縮により前記踏桟の内面に当接することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の梯子連結装置。
【請求項9】
前記芯材は、前記係留部材に対して垂直に連結され、対をなす前記梯子連結具は、点対称の構造及び各部寸法を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の梯子連結装置。
【請求項10】
1.5m以上の長さを有する重合せ継手によって複数の単梯子を上下に連結してなる梯子において、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載された梯子連結装置を前記重合せ継手の範囲内で上下方向に間隔を隔てて配置し、該梯子連結装置によって上下の単梯子を組付けたことを特徴とする梯子。
【請求項11】
1.5m以上の長さを有する重合せ継手によって複数の単梯子を上下に連結する単梯子連結方法において、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載された梯子連結装置を前記重合せ継手の範囲内で上下方向に間隔を隔てて配置し、該梯子連結装置によって上下の単梯子を組付けることを特徴とする単梯子連結方法。
【請求項12】
前記単梯子の支柱を地面又は床面に水平に置いた状態で前記梯子連結装置によって前記単梯子を組付けた後、該単梯子の組立体を起立させ、上側の単梯子の自重による単梯子同士の相対変位によって前記係留部材を回動させて前記芯材の水平離間距離を短縮せしめ、これにより、前記芯材を前記踏桟の内面に当接させることを特徴とする請求項11に記載の梯子連結方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−21298(P2012−21298A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158702(P2010−158702)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(591195189)株式会社杉孝 (22)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(591195189)株式会社杉孝 (22)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]