説明

椅子

【課題】アクチュエータにより座と背凭れの位置を変更する椅子において、座と背凭れの位置を迅速に変更することができる椅子を提供する。
【解決手段】基体12と、基体12に各々別のアクチュエータ24a〜24eを介して傾動可能に設けた座支持体14および背凭れ支持体16と、座支持体14にアクチュエータ24a〜24eを介して前後移動可能に設けた座18と、背凭れ支持体16にアクチュエータ24a〜24eを介して上下移動可能に設けた背凭れ20とを備える椅子であって、各アクチュエータ24a〜24eを同時に作動して座18と背凭れ20の位置を変更する制御手段26を有するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータにより座と背凭れの位置を変更する椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、座と背凭れの位置や傾斜姿勢を、アクチュエータで変更可能とした椅子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような椅子に関し、本件特許出願人は、既に特願2008−264658に示す椅子の背凭れ装置、特願2008−264659に示す椅子の座装置、特願2008−264660および特願2008−264661に示す体圧分布の表示システムを提供している。
【0004】
【特許文献1】特許第3843739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の従来の特許文献1の椅子は、アクチュエータにより座と背凭れの位置や傾斜姿勢を変更するものであるが、その変更動作は、座と背凭れを移動させる各々のアクチュエータを順番に作動させることによって行う。このように、座と背凭れのそれぞれの位置を変更するために複数のアクチュエータを順番に動かす構成であると、座と背凭れの双方の位置変更を完了するのに時間が掛かるという問題点があった。また、アクチュエータにより座と背凭れの位置を変更する椅子において、座と背凭れが同時に動くリクライニング動作を着座者に体感させることのできる技術の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、アクチュエータにより座と背凭れの位置を変更する椅子において、座と背凭れの位置を迅速に変更することができる椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る椅子は、基体と、前記基体に各々別のアクチュエータを介して傾動可能に設けた座支持体および背凭れ支持体と、前記座支持体にアクチュエータを介して前後移動可能に設けた座と、前記背凭れ支持体にアクチュエータを介して上下移動可能に設けた背凭れとを備える椅子であって、前記各アクチュエータを同時に作動して前記座と前記背凭れの位置を変更する制御手段を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る椅子は、上述した請求項1において、前記制御手段は、前記座と前記背凭れの位置を予め設定した位置に変更する場合に、前記座と前記背凭れの移動動作が同時に開始して同時に終了するように前記各アクチュエータを制御することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に係る椅子は、上述した請求項1または請求項2において、アクチュエータを介して前記基体を上下移動可能に支持する台座をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基体と、前記基体に各々別のアクチュエータを介して傾動可能に設けた座支持体および背凭れ支持体と、前記座支持体にアクチュエータを介して前後移動可能に設けた座と、前記背凭れ支持体にアクチュエータを介して上下移動可能に設けた背凭れとを備える椅子であって、前記各アクチュエータを同時に作動して前記座と前記背凭れの位置を変更する制御手段を有するので、座と背凭れの位置を迅速に変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明に係る椅子の好適な実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明に係る椅子の概略ブロック構成図である。図2は、椅子の斜視図であり、図3は椅子の側面図である。
【0012】
図1に示すように、本発明に係る椅子10は、基体12と、座支持体14と、背凭れ支持体16と、座18と、背凭れ20と、台座22と、アクチュエータとしてのサーボモータ24a〜24eと、制御手段としてのPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)26と、操作用のタッチパネル28とを備える。
【0013】
座支持体14および背凭れ支持体16は、図2および図3に示すように、各々別のサーボモータ24a、24bを介して基体12に傾動可能に設けてある。座18は、座支持体14にサーボモータ24cを介して前後移動可能に設けてある。背凭れ20は、背凭れ支持体16にサーボモータ24dを介して上下移動可能に設けてある。基体12は、台座22にサーボモータ24eを介して上下移動可能に支持されてある。座18の前方には、踏み台30が配置されてある。
【0014】
座18は、図3に示すように、上下(上昇・下降)、前後(前進・後退)、傾斜(前傾・後傾)の3つの動作軸を有し、サーボモータ24a、24c、24eを介して上下および前後方向の位置と、前後方向の傾斜角度とをそれぞれ独立して変更することができる。背凭れ20は、上下(上昇・下降)、傾斜(前傾・後傾)の2つの動作軸を有し、サーボモータ24d、24bを介して座18の面に対する背凭れ20自体の上下方向の位置と、上下方向の傾斜角度とをそれぞれ独立して変更することができる。
【0015】
図4−1〜図4−3は基体の詳細図、図5−1〜図5−3は基体のリフターの詳細図、図6−1〜図6−3は背凭れ支持体の詳細図、図7−1〜図7−3は座支持体の詳細図である。
【0016】
図4−1〜図4−3に示すように、基体12にはサーボモータ24a、24bが配置され、サーボモータ24a、24bは傾動機構32、34にそれぞれ接続されてある。傾動機構32は、サーボモータ24aの作動により上側のL字部材38を傾動させる。傾動機構34は、サーボモータ24bの作動によりアーム36を傾動させる。L字部材38の上側は座支持体14に接続され、アーム36の上端は背凭れ支持体16に連結されてある。
【0017】
また、図5−1〜図5−3に示すように、リフター40は、上側に設けられる基体12をサーボモータ24eで昇降するパンタグラフ式の昇降機構である。リフター40は、台座22上に設けられる。
【0018】
また、図6−1〜図6−3に示すように、背凭れ支持体16の背面には、上下に延びたネジ棒に螺合したナットを動かすことで背凭れ20を昇降する昇降機構42が配置される。サーボモータ24dは、その駆動源として用いられる。
【0019】
また、図7−1〜図7−3に示すように、座支持体14には、前後に延びたネジ棒に螺合したナットを動かすことで上側の座受け46を前後に摺動する摺動機構44が配置される。サーボモータ24cは、その駆動源として用いられる。座受け46上には図示しない座18が接続され、座18は、座受け46と一体的に前後に摺動可能とされてある。
【0020】
PLC26は、各サーボモータ24a〜24eをシーケンス制御し、座18と背凭れ20の位置や傾斜角度の変更動作を制御するものであり、各動作軸の現在座標を管理している。また、PLC26は、各動作軸を独立して制御可能である一方、各サーボモータ24a〜24eの少なくとも2つを同時に作動して、座18と背凭れ20の位置や傾斜角度の変更動作を制御可能である。さらに、座18と背凭れ20の位置や傾斜角度を、予め設定した位置や傾斜角度に変更する場合には、PLC26は、座18と背凭れ20の移動動作が同時に開始して同時に終了するように、各サーボモータ24a〜24eを制御する。
【0021】
この場合、図8に示すように、PLC26は、座傾斜A、座前後B、背傾斜C、背上下D、全体上下Eの各動作軸が、現在位置から目標位置へ移動する場合に、一番時間がかかる動作軸の移動終了時間に合わせて、各動作軸の動作速度を調整して、各動作軸が目標位置へ同時に到着する制御を行う。こうすることで、座18と背凭れ20のシンクロ動作を実現することができる。
【0022】
なお、PLC26には、身長や性別毎に設定した座18および背凭れ20の位置や傾斜角度に関するデータ26aが格納されてあり、PLC26は、このデータ26aを参照して各サーボモータ24a〜24eを制御することもできる。
【0023】
タッチパネル28は、座18と背凭れ20の位置や傾斜姿勢を変更操作するためのものである。タッチパネル28は、座18と背凭れ20の位置や傾斜姿勢の変更を指示する信号をPLC26に送る一方で、PLC26から各動作軸の状態を示す信号を受け取り、これらに応じたデータを表示する。タッチパネル28において座18と背凭れ20の位置や傾斜角度に関する情報を入力すると、この情報に基づいてPLC26を介してサーボモータ24a〜24eが作動し、座18と背凭れ20の位置や傾斜角度が変更される。
【0024】
上記構成の動作および作用について説明する。
タッチパネル28によって、座18と背凭れ20の位置や傾斜角度の変更を指示する操作を行うと、座18と背凭れ20がそれぞれ移動すべき目標位置が設定される。タッチパネル28で動作開始の指示操作を行うと、座18と背凭れ20は、例えば図9(a)に示す現在位置から、図9(b)に示す目標位置に向けて同時に動き出す。この場合、例えば、現在位置から目標位置に至るまでに、座18の移動距離が大きく、背凭れ20の移動距離が小さいときには、座18が現在位置から目標位置まで高速に移動するように各サーボモータ24a〜24eの動作がPLC26によって同時制御される。一方、背凭れ20が現在位置から目標位置まで低速に移動するように、各サーボモータ24a〜24eの動作がPLC26によって同時制御される。このようにすることで、座18と背凭れ20は目標位置に同時に到達して、位置変更の動きを同時に止めることができる。
【0025】
以上説明したように、座18と背凭れ20の位置変更の開始位置と終了位置とが予め設定され、位置変更を行うのに複数のサーボモータの動作を必要とする場合において、各サーボモータ24a〜24eの動作はPLC26で同時制御されるので、位置変更の動作開始から動作完了に至るまでの時間を従来の椅子に比べて短縮することができる。したがって、本発明の椅子10によれば、座18と背凭れ20の位置を所望の目標位置に迅速に変更することができる。
【0026】
また、サーボモータ24a〜24eの各動作軸が一斉に動作を開始して、各動作軸が目標位置に同時に到着する制御を行うことにより、座18と背凭れ20は、現在位置から同時に動き出し、目標位置に同時に到達して動きを止める。このため、座18と背凭れ20とがあたかも同調してリンク動作しているのと同様の自然で快適な動作を実現することができる。これにより、座18と背凭れ20が同時に動くリクライニング動作を着座者に体感させることができる。
【0027】
上記の実施形態において、座18と背凭れ20とを各1面で構成した場合について説明したが、座18が前後方向に並設した複数の座部材からなり、背凭れ20が上下方向に並設した複数の背凭れ部材からなる椅子であってもよく、各部材の傾斜姿勢や上下および前後方向の位置を各サーボモータで変更可能とし、各部材が同時に動くようにPLC26で各サーボモータを制御してもよい。この場合、例えば、図10の椅子の側面図に示すように、背凭れを上下に分割した2面20a、20bで構成するとともに、座を前後に分割した18a、18bで構成してもよい。
【0028】
この場合、サーボモータを背凭れ20a、20bの背面側に計7個、座18a、18bの下面側に計4個設け、背凭れ20a、20bを支持するフレーム48自体を傾動可能とする一方、背凭れ20a、20bがフレーム48に対して、上下、前後、傾斜の3軸それぞれ動作可能とすることができる。後方側の座18bについては、上下、前後、傾斜の3軸で動作可能とし、座の前方側18aが後方側18bに対して傾動可能とすることで、座の奥行きの長さを変更可能なようにしてもよく、各部材が同時に動くように各サーボモータを制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る椅子の一例を示す概略ブロック構成図である。
【図2】本発明に係る椅子の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る椅子の一例を示す側面図である。
【図4−1】基体の斜視図である。
【図4−2】基体の平面図である。
【図4−3】基体の側断面図である。
【図5−1】基体のリフターの斜視図である。
【図5−2】基体のリフターの平面図である。
【図5−3】基体のリフターの側断面図である。
【図6−1】背凭れ支持体の斜視図である。
【図6−2】背凭れ支持体の側断面図である。
【図6−3】背凭れ支持体の平断面図である。
【図7−1】座支持体の斜視図である。
【図7−2】座支持体の平面図である。
【図7−3】座支持体の側断面図である。
【図8】座と背凭れの位置変更の前後の状態を示す説明図である。
【図9】座と背凭れの位置変更の前後の状態を示す説明図であり、(a)は変更前の側面図、(b)は変更後の側面図である。
【図10】椅子の他の一例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 椅子
12 基体
14 座支持体
16 背凭れ支持体
18 座
20 背凭れ
22 台座
24a,24b,24c,24d,24e サーボモータ(アクチュエータ)
26 PLC(制御手段)
28 タッチパネル
30 踏み台
40 リフター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体に各々別のアクチュエータを介して傾動可能に設けた座支持体および背凭れ支持体と、
前記座支持体にアクチュエータを介して前後移動可能に設けた座と、
前記背凭れ支持体にアクチュエータを介して上下移動可能に設けた背凭れとを備える椅子であって、
前記各アクチュエータを同時に作動して前記座と前記背凭れの位置を変更する制御手段を有することを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記制御手段は、前記座と前記背凭れの位置を予め設定した位置に変更する場合に、前記座と前記背凭れの移動動作が同時に開始して同時に終了するように前記各アクチュエータを制御することを特徴とする請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
アクチュエータを介して前記基体を上下移動可能に支持する台座をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−104495(P2010−104495A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278210(P2008−278210)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】