説明

椅子

【課題】着座者の離着席時等に、座を不使用状態のときよりさらに大きく後上方に傾斜させることができるようにすることにより、離着席や、その場での起立を容易に行えるようにした椅子を提供する。
【解決手段】脚体4の上部に、後部リンク24を、その最大上向き回動範囲より小さい付勢可能範囲において上向きに付勢し、後部リンク24が付勢可能範囲を越えて上向きに回動したときは、後部リンク24から離間するようにした回動レバー25とガススプリング37とからなる回動付勢手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学校などの講義室や会議場等に設置され、使用状態と不使用状態とに変化させうるようにした椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
学校の講義室等に机と共に多数設置される椅子の中には、不使用状態において、椅子とその後方の机との間に人が通行しうる間隔が形成されるように、椅子全体を前方に傾動させるとともに、座を後上方に傾斜させうるようにしたものがある(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2927712号公報
【特許文献2】特許第3803642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び2に記載されている椅子は、いずれも、椅子を不使用状態から後方に傾動させるとともに、座を、リンク機構により、後下方に傾動させて、ほぼ水平とし、机の天板と座との間に、着座者の下肢が入り易いようにしてある。
【0005】
しかし、座の前端と机の天板の後端との間の前後方向の間隔は狭いか、または天板の下方に座の前端が潜入していることが多く、着座者が着座した姿勢から起立しようすると、下肢の後面と上肢の前上面が、それぞれ、座の前端と天板の後端に当たってしまう。このため、座者が発言する際などに、直立状態で立上ることができず、中腰姿勢となったり、膝を折り曲げた中腰姿勢で離席したりしなければならず、椅子の使い勝手が悪い。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、着座者の離着席時等に、座を不使用状態のときよりさらに大きく後上方に傾斜させることができるようにすることにより、離着席や、その場での起立を容易に行えるようにした椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次の各項のようにして解決される。
(1)ベースに、左右方向の枢軸をもって下端部が枢着され、かつ上端部が、前限位置から後限位置までの間を前後方向に回動可能とした脚体の上部と座の後部とを、後部リンクをもって連結するとともに、前記脚体の中間部またはそれより下方の部分と座の前部とを前部リンクをもって連結し、前記後部リンクと前部リンクとにより、前記座を、脚体が後限位置に位置している状態で、ほぼ水平の使用位置に保持しうるとともに、脚体が前限位置に位置している状態で、後端が前記後部リンクにより持ち上げられて、後上向き傾斜する不使用位置に保持しうるようにした椅子において、前記脚体の上部に、前記後部リンクを、その最大上向き回動範囲より小さい付勢可能範囲において上向きに付勢し、前記後部リンクが前記付勢可能範囲を越えて上向きに回動したときは、前記後部リンクから離間するようにした回動付勢手段を設ける。
【0008】
このような構成とすると、後部リンクは、普段は回動付勢手段により上向きに付勢され、その付勢可能範囲内で回動するだけであるが、例えば着座者が着座姿勢から起立したときの下肢等の外力により、座の前端が後方に押動されたときは、後部リンクが、回動付勢手段から離れて、付勢可能範囲を越えてさらに上向きに回動し、座は、不使用状態のときよりさらに大きく後上方に傾斜させられ、座の前方に、着座者が自由に動けるスペースが形成され、着座者の離着席や、その場での起立が容易に行えるようになる。
【0009】
(2)上記(1)項において、回動付勢手段を、脚体の上部に基端部が枢着され、かつ先端部が後部リンクの下面に当接して、後部リンクを上向き回動するように押動する回動レバーと、この回動レバーを上向きに付勢する付勢部材とを備えるものとする。
【0010】
このような構成とすると、回動付勢手段の構成を簡素化しうるとともに、回動付勢手段を脚体内に体裁よく収容することができる。
【0011】
(3)上記(2)項において、付勢部材を、脚体内を挿通し、上端部が回動レバーの中間部に左右方向の連結軸をもって枢着され、かつ下端部がベースにおける脚体の枢軸より後方の部分に左右方向の枢軸をもって連結されたガススプリングとする。
【0012】
このような構成とすると、ガススプリングにより、回動レバーを付勢できるだけでなく、ベースに対して、脚体を前限位置に向かって付勢することができ、1個の付勢手段で、複数の付勢機能を発揮することができ、好都合である。
【0013】
(4)上記(3)項において、ガススプリングに外嵌した筒体の上端部を、ガススプリングの上端部とともに、連結軸をもって回動レバーに枢着し、かつ前記筒体の下端が、脚体が後限位置に位置し、かつ座が使用位置に位置しているとき、ガススプリングの枢軸に当接して、回動レバーの下向き回動を規制するようにする。
【0014】
このような構成とすると、脚体が後限位置に位置し、かつ座が使用位置に位置しているとき、回動レバーと筒体とが、後部リンクの中間部とベースとの間に突張り杆として介在し、後部リンクを介して、座の後部を安定よく支持することができる。
【0015】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、後部リンクの下面における回動レバーの先端より前方に、後部リンクが回動レバーより上方に回動したときに、後部リンクと回動レバーとの間に形成される間隙の前方を閉塞するカバーの上端を止着する。
【0016】
このような構成とすると、後部リンクが回動レバーより上方に回動したときに、後部リンクと回動レバーとの間に形成される間隙に、着座者の衣服等が挟まれたり、中空とした脚体内に異物が入り込んだりするのを未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、着座者の離着席時等に、座を不使用状態のときよりさらに大きく後上方に傾斜させることができるようにすることにより、離着席や、その場での起立を容易に行えるようにした椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の椅子の一実施形態の分解斜視図である。
【図2】同じく、椅子を不使用状態としたときの側面図である。
【図3】同じく、使用状態まで傾動させたときの椅子の側面図である。
【図4】図3の状態において、着座したときの椅子の側面図である。
【図5】椅子の不使用状態時の一部切欠拡大側面図である。
【図6】椅子の使用状態時において、着座姿勢から起立したときの側面図である。
【図7】座を、不使用状態のときよりさらに大きく後上方に傾斜させたときの一部切欠拡大側面図である。
【図8】使用状態時において、椅子を若干前方に傾動させたときの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の椅子の分解斜視図、図2は、同じく、椅子を不使用状態としたときの側面図、図3は、同じく使用状態まで傾動させたときの椅子の側面図、図4は、図3の状態において着座したときの椅子の側面図、図5は、不使用状態時の椅子の一部切欠拡大側面図である。なお、本発明の椅子1は、床面Fに固定された前後方向(以下、図1の左方を前として説明する)に並ぶ机2、2の間に設置して使用されるものである。
【0020】
椅子1は、ベース3と、脚体4と、背凭れ5と、座6と、リンク機構7とを備えている。
ベース3は、下面と前端部を除く後部上面が開口されたケース状をなし、その前端部の上面に形成された段付孔8と、左右の側面板3a、3aの後端部に突設された固定片9の取付孔9aとに挿入したアンカボルト10により、前後の机2、2間において、前側の机2における天板2aの後端の真下よりもやや後方の床面Fに固定されている。
【0021】
脚体4は、ベース3の上面の開口より内部に嵌合可能な、上下両面が開口されたベース脚11と、このベース脚11の上面に下端が溶接により固着された角管よりなる脚杆12とからなり、ベース脚11の前後寸法は、脚杆12の前面より前方に突出するように、脚杆12の前後寸法よりも大とされ、また、その上面は、斜め前下方を向く傾斜面としてある。
【0022】
ベース脚11の左右の側面板11a、11aの前端部と、ベース3の両側面板3a、3aの中央部とには、左右方向を向く軸孔13、13が穿設され、それらの軸孔13に、左右方向を向く枢軸14を嵌合することにより、脚体4の前下端部が、枢軸14により前後方向に傾動可能に支持されている。なお、枢軸14の抜け外れを防止するために、その両端部は、ベース3側の軸孔13に圧嵌されている。
【0023】
ベース3内の前端部には、内部の隔壁3bを貫通して前方に突出するベース脚11の前端部下面が当接することにより、脚体4を、前限位置である前傾位置で停止させる前部ストッパ部材15が固着されている。また、ベース3内の後端部には、ベース脚11の後端部下面が当接することにより、脚体4を、後限位置である後傾位置で停止させる後部ストッパ部材16が固着されている(図5参照)。なお、床面Fと直角をなす垂直線に対する脚体4の前傾角度は、5度程度に、同じく後傾角度は、17度程度に設定されている。しかし、前傾角度を0度、すなわち脚体4が真上を向く位置を前限位置とすることもある。
【0024】
背凭れ5は、上端部前面に背板取付板17が固着された上下方向を向く背フレーム18と、背板取付板17の前面に下部がねじ止めされた背板19とからなっている。背フレーム18は、後面板18aと、下部が前方に延出する幅広部とされた左右の側面板18b、18bとにより、下方と前方に開口する平面視ほぼ前向きコ字状に形成され、下端部を脚杆12の上端部内に嵌合させた状態で、脚杆12の上端に溶接により固着されている。なお、背フレーム18は、脚体4の一部をなしている。
【0025】
座6は、図1に示すように、上面が解放され、かつ側面視において上方に外開き状に拡開する角形皿状をなす座フレーム20と、その左右の上縁に連設された外向片20a、20aにねじ止めされた座板21とからなり、座フレーム20の下面の左右方向の中央部には、前後方向に長い前後2個の矩形孔22、22が穿設されている。
【0026】
上述したリンク機構7は、座6の前部支持用の角管よりなる前部リンク23と、同じく座6の後部支持用の後部リンク24とからなり、後部リンク24の下方には、回動付勢手段の一部をなす短寸の回動レバー25が設けられる(詳細は後述する)。
前部リンク23の上下両端には、左右方向を向く軸孔26を有する左右1対ずつの枢着片23a、23aが突設されている。
下部の左右の枢着片23a、23aは、脚杆12の中間部前面に固着された平面視前向きコ字状のブラケット27の両側片27a、27a間に嵌合され、両側片27aに穿設された軸孔28と、両枢着片23aの軸孔26とに嵌合した左右方向の軸29をもって、前部リンク23の下端部は、実質的に脚杆12の中間部前面に、上下方向に回動しうるように枢着されている(図5参照)。なお、前部リンク23の下端部は、脚杆12の下部前面に枢着したり、ベース3に枢着したりしてもよい。
【0027】
上部の左右の枢着片23a、23aは、座フレーム20の前側の矩形孔22に挿通され、両枢着片23aの軸孔26と、座フレーム20の左右の側面板20b、20bの前端部に穿設された軸孔30、30とに、左右方向の軸31を嵌合することにより、前部リンク23の上端部は、座フレーム20の前端部に、これを支持するようにして、前後方向に回動可能に枢着されている。
【0028】
後部リンク24は、前後方向を向く上片24aと、その両側縁より垂下する、側面形が概ね逆三角形をなす左右1対のリンク片24b、24bとにより、正面視ほぼ下向きコ字状に形成され、前後寸法は、前部リンク23のそれよりも短寸とされている。
両リンク片24bの後部は、背フレーム18における左右の側面板18b間の下部に嵌合され、かつこの状態で、両リンク片24bの後端部と、背フレーム18の両側面板18bの下部とを、それらに穿設された軸孔32、32に左右方向の軸33を嵌合して枢着することにより、後部リンク24の後端部は、前部リンク23の後端部よりも後方において、背フレーム18の下部に、上下方向に回動可能に支持されている。
【0029】
後部リンク24における左右のリンク片24b、24bの前端部は、座フレーム20の後側の矩形孔22に挿通され、両リンク片24bの前端部と座フレーム20の両側面板20bの後端部に穿設された軸孔34、36に、左右方向の軸35を嵌合することにより、後部リンク24の前端部は、座フレーム20の後端部に、これを支持するようにして、前後方向に回動可能に枢着されている(図5参照)。
【0030】
回動レバー25は、方形の上片25aと、その両側縁より垂下する、側面形がほぼ扇状をなす左右1対の側片25b、25bとにより、後部リンク24内に嵌合可能な正面視ほぼ下向きコ字状に形成されている。後部リンク24内において、左右の側片25bに穿設された軸孔36に、上述した軸33を、後部リンク24の軸孔32に嵌合するのと同時に嵌合することにより、回動レバー25は、背フレーム18と後部リンク24に対し上下方向に回動しうるように枢着されている。
【0031】
脚体4の内部には、回動付勢手段の一部をなすガススプリング37と、このガススプリング37のシリンダケース37aに外嵌された筒体38とが挿入され、ガススプリング37の下方に突出する伸縮ロッド37bの下端部に穿設された左右方向を向く軸孔39と、ベース3の左右の側面板3aの後端部に穿設された軸孔40とに、左右方向を向く枢軸41を嵌合することにより、ガススプリング37の下端部は、ベース3に、前後方向に回動自在に、かつ脚体4の内部において前後に傾動しうるように支持されている。なお、ベース脚11の両側面板11aには、下方に開口する上向き凹状の長溝42、42が形成され、椅子1を使用状態まで後傾させた際に、ベース脚11が枢軸41と干渉しないようにしてある。
【0032】
ガススプリング37のシリンダケース37aと筒体38の上部は、脚杆12の上端より突出して、背フレーム18の下部まで延出されている。
シリンダケース37aと筒体38の上端部には、左右方向を向く軸孔43、43が形成され、これらの軸孔43と、回動レバー25における左右の側片25bの前端部に形成された軸孔44とに、左右方向を向く軸45を嵌合することにより、ガススプリング37と筒体38の上端部は、回動レバー25の前端部に、相対回動自在に枢着されている。これにより、回動レバー25は、ガススプリング37の伸縮ロッド37bが最大ストローク伸長することにより、常時上向きに付勢され、かつ回動レバー25の上片25aの上面が後部リンク24の上片24aの下面に当接することにより、後部リンク24の下向き回動が阻止されるので、座6は、斜め後上方を向く不使用位置に傾斜して保持される(図5参照)。なお、この状態においては、上部リンク24は、最大上向き回動範囲よりも小さい上向き回動位置で停止している。
【0033】
図5に示すように、筒体38の上下寸法は、その下部がシリンダケース37aの下端より所要寸法突出する長さとされ、筒体38の下端部の左右両側面には、下方に開口する側面視下向きU字状のストッパ溝46、46が形成されている。この両ストッパ溝46は、椅子1を使用状態まで後傾させて座6に着座した際に、ガススプリング37が圧縮させられることにより、ベース3の後部側の枢軸41に上方より嵌合するようになっている(詳細は後述する)。
【0034】
図5に示すように、後部リンク24における左右のリンク片24b、24b間の前後方向の中間部には、回動レバー25の前面の開口部を覆いうるように湾曲された、可撓性を有する合成樹脂またはステンレス鋼等の板材よりなる上下方向を向くカバー47の上部が嵌合され、両リンク片24bに穿設された軸孔48と、カバー47の上端部に形成された左右方向を向く支持孔49とに、左右方向の支持軸50を嵌合することにより、カバー47の上端部が、後部リンク24により、前後に回動しうるように吊支されている。このカバー47は、後部リンク24の前面の開口部の一部と、回動レバー25の前面の開口部とを体裁よく覆うとともに、後部リンク24が回動レバー25よりも上方に回動したときに、後部リンク24と回動レバー25との間に形成される間隙に、着座者Pの衣服等が挟まれたり、脚体4内に異物が入り込んだりするのを防止するためのものである。なお、カバー47の上下寸法は、その下端部が常に脚体4の内部に収容される長さとされている。
【0035】
次に、上記実施形態の椅子1の使用要領について説明する。
図2及び図5に示すように、椅子1を前傾させて不使用状態としているときは、椅子1の後面と後部の机2との間が大きく離間するので、椅子1と後部の机2との間を、人が自由に通行することができる。
【0036】
この際、脚体4の下端の枢支点は、ガススプリング37の下端の枢支点よりも後方に位置しているので、椅子1は、ガススプリング37の上向き付勢力により前向きに付勢されることとなり、従って、不使用状態にある椅子1が不意に後傾する恐れはない。
また、上述したように、ガススプリング37により回動レバー25を上向きに付勢することにより、後部リンク24が下向きに回動するのを阻止し、座6は、斜め後上方を向くように傾斜して保持されているので、机2と干渉することはない。
【0037】
図3に示すように、椅子1を後傾させて使用状態とすると、座板21の前面と机2の天板2aの後端との間に、椅子1の着座者Pが入り込める大きさの間隔が形成されるとともに、座6は、着座者Pが着座し易いように、不使用状態のときよりもやや後傾する。
【0038】
この状態で着座すると、図4に示すように、前部リンク23と、後部リンク24と、回動レバー25とが、ガススプリング37を圧縮させつつ、下向きに回動することにより、座6は前下方に移動し、筒体38の下端に設けたストッパ溝46が、枢軸41に上方より嵌合して当接することにより、座6は、ほぼ水平の使用位置で停止する。
すなわち、筒体38は、脚体4が後限位置に位置し、かつ座6が使用位置に位置しているとき、回動レバー25とともに、後部リンク24の中間部とベース3との間に介在して、後部リンク24の下向き回動を阻止する第1のストッパ手段をなす上下方向の突張り杆として作用する。
【0039】
なお、座6に着座した状態において、背フレーム18の後面板18aと、下向きに回動した回動レバー25の後下面、および後部リンク24の後下面との間に、若干の隙間Sが形成されるようにしてある。
ガススプリング37は強く圧縮された状態となっているので、着座状態から離席すると、椅子1は、ガススプリング37の上向き付勢力により、自動的に不使用状態まで戻される。
【0040】
着座時に、その場で立ち上がると、後部リンク24は、ガススプリング37と回動レバー25により、図3に示す位置まで上向きに回動させられ、さらにこの状態で起立し、着座者Pの下肢の後面により座6の前端が後方に押動されると、図6及び図7に示すように、後部リンク24が回動レバー25から上方に離れて、さらに上向きに回動することにより、座6は、図3の位置よりもさらに大きく斜め後上方に傾斜させられる。その結果、着座者Pは、着座姿勢から、その場で起立したり、離着席したりするのを容易に行えるようになる。
【0041】
図4に示すように、脚体4が後限位置に位置し、かつ座6が使用位置に保持され、着座者Pが着座している状態から、着座者Pが臀部を前方に引き寄せると、図8に示すように、脚体4が、座6とともに、中間位置まで前方に向かって回動し、椅子の後方に、他人が通行するため等の空間を簡単に形成することができる。
したがって、着座者Pは、離席したり、臀部を持ち上げたりする必要がなく、簡単な動作で、椅子の後方に他人が通行できる空間を形成することができる。
【0042】
このときの脚体4の前方への回動は、図4に示す状態において、背フレーム18の後面板18aと、回動レバー25の後下面、および後部リンク24の後下面との間に、隙間Sが形成されていることにより許容される。
脚体4が中間位置に達すると、この隙間Sが0となり、回動レバー25の後下面および後部リンク24の後下面、またはそれらのいずれか一方が、背フレーム18の後面板18aに当接し、それ以上の脚体4の前方への回動は阻止される。
【0043】
すなわち、背フレーム18の後面板18aは、脚体4が中間位置に位置しているとき、後部リンク24の後下面と回動レバー25の後下面とのいずれか一方または両方に当接して、後部リンク24を、脚体4に対する最大下向き角度で停止させ、座の後部を安定して支持する第2のストッパ手段をなしている。
【0044】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
上記実施形態では、後部リンク24の回動付勢手段として、回動レバー25とガススプリング37とを用いているが、これらのものに代えて、例えば後部リンク24の軸33に、後部リンク24を図2に示す位置まで付勢し、後部リンク24が図6に示す位置まで回動したときは、後部リンク24から離間して、後部リンク24の上向き回動を許容するようにした捩りコイルばね等とすることもできる。
【符号の説明】
【0045】
1 椅子
2 机
2a天板
3 ベース
3a側面板
3b隔壁
4 脚体
5 背凭れ
6 座
7 リンク機構
8 段付孔
9 固定片
9a取付孔
10 アンカボルト
11 ベース脚
12 脚杆
13 軸孔
14 枢軸
15 前部ストッパ部材
16 後部ストッパ部材
17 背板取付板
18 背フレーム
18a後面板
18b側面板
19 背板
20 座フレーム
20a外向片
20b側面板
21 座板
22 矩形孔
23 前部リンク
23a枢着片
24 後部リンク
24a上片
24bリンク片
25 回動レバー(回動付勢手段)
25a上片
25b側片
26 軸孔
27 ブラケット
27a側片
28 軸孔
29 軸
30 軸孔
31 軸
32 軸孔
33 軸
34 軸孔
35 軸
36 軸孔
37 ガススプリング(回動付勢手段)
37aシリンダケース
37b伸縮ロッド
38 筒体
39 軸孔
40 軸孔
41 枢軸
42 長溝
43 軸孔
44 軸孔
45 軸
46 ストッパ溝
47 カバー
48 軸孔
49 支持孔
50 支持軸
F 床面
P 着座者
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに、左右方向の枢軸をもって下端部が枢着され、かつ上端部が、前限位置から後限位置までの間を前後方向に回動可能とした脚体の上部と座の後部とを、後部リンクをもって連結するとともに、前記脚体の中間部またはそれより下方の部分と座の前部とを前部リンクをもって連結し、前記後部リンクと前部リンクとにより、前記座を、脚体が後限位置に位置している状態で、ほぼ水平の使用位置に保持しうるとともに、脚体が前限位置に位置している状態で、後端が前記後部リンクにより持ち上げられて、後上向き傾斜する不使用位置に保持しうるようにした椅子において、
前記脚体の上部に、前記後部リンクを、その最大上向き回動範囲より小さい付勢可能範囲において上向きに付勢し、前記後部リンクが前記付勢可能範囲を越えて上向きに回動したときは、前記後部リンクから離間するようにした回動付勢手段を設けたことを特徴とする椅子。
【請求項2】
回動付勢手段は、脚体の上部に基端部が枢着され、かつ先端部が後部リンクの下面に当接して、後部リンクを上向き回動するように押動する回動レバーと、この回動レバーを上向きに付勢する付勢部材とを備えている請求項1記載の椅子。
【請求項3】
付勢部材を、脚体内を挿通し、上端部が回動レバーの中間部に左右方向の連結軸をもって枢着され、かつ下端部がベースにおける脚体の枢軸より後方の部分に左右方向の枢軸をもって連結されたガススプリングとした請求項2記載の椅子。
【請求項4】
ガススプリングに外嵌した筒体の上端部を、ガススプリングの上端部とともに、連結軸をもって回動レバーに枢着し、かつ前記筒体の下端が、脚体が後限位置に位置し、かつ座が使用位置に位置しているとき、ガススプリングの枢軸に当接して、回動レバーの下向き回動を規制するようにした請求項3記載の椅子。
【請求項5】
後部リンクの下面における回動レバーの先端より前方に、後部リンクが回動レバーより上方に回動したときに、後部リンクと回動レバーとの間に形成される間隙の前方を閉塞するカバーの上端を止着した請求項1〜4のいずれかに記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−273767(P2010−273767A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127533(P2009−127533)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】